JP4299432B2 - (メタ)アクリル酸の精製方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン、アクロレイン、イソブチレンまたはターシャリーブタノールの気相酸化法によって得られる粗(メタ)アクリル酸中に不純物として含まれるアルデヒド類を効率良く除去することができる、アクリル酸および/またはメタクリル酸(以下、(メタ)アクリル酸と称する)の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロピレン、アクロレイン、イソブチレンまたはターシャリーブタノールを気相酸化させて(メタ)アクリル酸を得る場合、製造工程において、フルフラール、アクロレイン、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類やアセトン、アセトニルアセトン等のケトン類が副次的に生成し、(メタ)アクリル酸中に不純物として含まれてしまうことが知られている。そして、これらの不純物は、例えば、(メタ)アクリル酸を吸水性樹脂等の高分子体の原料として用いた場合に、重合反応時における反応の遅延、重合度の低下、重合物の着色等の問題を引き起こす。
【0003】
そこで、気相酸化法で得られた粗(メタ)アクリル酸は、一般に、蒸留等による精製処理を行って不純物を除去してから、各種用途に利用される。但し、前記不純物のうち、フルフラール等のアルデヒド類は、(メタ)アクリル酸と沸点が近く、蒸留での除去が困難であるため、蒸留する前に、例えばアミン類やヒドラジン類等のアルデヒド処理剤により薬剤処理を行って高沸点化させる技術が知られている。
このアルデヒド処理剤による処理においては、アルデヒド類とアルデヒド処理剤との反応が平衡反応であるために、通常、不純物として存在するアルデヒド類の量に対して過剰のアルデヒド処理剤が使用される。さらに、蒸留時にアルデヒド類が平衡により再生することを防止するためには、相当量の残存アルデヒド処理剤の存在下で蒸留を行わなければならない。しかし、余剰のアルデヒド処理剤は、蒸留工程において(メタ)アクリル酸の重合を引き起こす原因となり、ひいては蒸留塔内にポリマーが付着して、リボイラー伝熱面の伝熱性能を低下させたり、蒸留機能を阻害したり、蒸留塔内で閉塞を起こして運転を停止せざるを得なくなる等の問題を発生させる。
【0004】
そこで、(メタ)アクリル酸の重合を起こすことなく、アルデヒド類を効率よく除去することができる精製方法が要望され、種々の方法が提案されている。例えば、特開平9−316027号公報では、粗アクリル酸にヒドラジン化合物と硫酸とを添加してから蒸留する方法が、特開平7−228548号公報では、粗アクリル酸にヒドラジン化合物とジブチルカルバミン酸銅とを添加して100℃以下で蒸留する方法が、それぞれ提案されている。
しかし、これらの方法によれば、アルデヒド処理剤であるヒドラジン化合物に加えて硫酸やジブチルカルバミン酸銅を用いており、これらの物質は、蒸留塔や配管等の装置の内壁を構成する金属を腐食させるという問題があった。この問題に対処すべく、装置に耐腐食性の材料を用いたり、耐腐食処理を施したりすることは、装置コストの増大を招き、ひいてはアクリル酸の製造コストを増大させることになるので、工業的に簡便かつ安価な方法とは言えなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、不純物としてアルデヒド類を含有する粗(メタ)アクリル酸から、重合物の生成を抑制しつつ、工業的に簡便かつ安価な方法で、該不純物を効率よく除去することができる、(メタ)アクリル酸の精製方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、アルデヒド類はヒドラジン化合物と(メタ)アクリル酸中で低温で一定時間反応させることにより、完全に高沸点化され、しかも蒸留時に残存ヒドラジン化合物が存在しなくてもアルデヒド類の再生を防止できること、および、ヒドラジン化合物は(メタ)アクリル酸中で熱的に分解され易く、特に温度が上がるにつれ加速的に分解すること、を見いだした。これらの知見に基づき、アルデヒド処理の際に、低温で長時間処理するか、あるいは、初めに低温で短時間処理させた後に高温で処理することにより、アルデヒド類を完全に高沸点化処理するとともに余剰のヒドラジン化合物を分解させることができ、このようにして余剰のヒドラジン化合物を分解させて一定量以下とすることによって、アルデヒド類を完全に除去すると同時に、蒸留工程における重合物の生成を抑制しうることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の(メタ)アクリル酸の精製方法は、不純物としてアルデヒド類を含有する粗(メタ)アクリル酸にアルデヒド処理剤を作用させることによりアルデヒド処理を施した後に、蒸留を行う(メタ)アクリル酸の精製方法であって、前記アルデヒド処理剤としてヒドラジン化合物を用い、当該ヒドラジン化合物の添加量を、前記粗(メタ)アクリル酸に含まれるアルデヒド類1モルに対して1.5〜10モルとし、かつ、前記アルデヒド処理を、50℃以下で処理した後、さらに60℃以上で処理することにより行い、前記アルデヒド処理後の残存ヒドラジン化合物の含有量を100重量ppm以下とすることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の一形態について詳しく説明する。
本発明において用いられる粗(メタ)アクリル酸は、プロピレン、アクロレイン、イソブチレンまたはターシャリーブタノールの気相酸化法による製造工程で得られる(メタ)アクリル酸であり、製造工程において副生あるいは混入する不純物を含有するものである。該不純物とは、例えば、フルフラール、アクロレイン、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類や、アセトン、アセトニルアセトン等のケトン類等であるが、本発明は、特に、フルフラールやアクロレイン等のアルデヒド類を不純物として含有する粗(メタ)アクリル酸を効率よく精製するものである。気相酸化法による(メタ)アクリル酸の製造は、特に制限されるものではなく、公知の原料、反応方法、および製造条件によって行われる。得られる粗(メタ)アクリル酸は、水等の溶媒に溶解された溶液状態であってもよい。
【0009】
本発明においては、前記粗(メタ)アクリル酸を蒸留によって精製する前に、該粗(メタ)アクリル酸にアルデヒド処理剤によるアルデヒド処理を施すのであるが、該アルデヒド処理剤としてヒドラジン化合物を用いることが重要である。アルデヒド処理剤としてヒドラジン化合物を用い、該ヒドラジン化合物をアルデヒド類と(メタ)アクリル酸中で反応させることにより、アルデヒド類を完全に高沸点化させ、しかも蒸留時に残存ヒドラジン化合物が存在しなくても平衡反応によるアルデヒド類の再生を防止することができるのである。
前記ヒドラジン化合物としては、具体的には、例えば、ヒドラジン、ヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)、フェニルヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等が挙げられる。これらの中でも特に、ヒドラジン、ヒドラジンヒドラートが好ましく、さらに、取扱い易さの点からはヒドラジンヒドラートが好ましい。なお、ヒドラジン化合物は、通常、液体として添加されるが、粉体等の固体で添加されてもよい。また、ヒドラジン化合物の添加方法は、特に制限されるものではなく、例えば、前記粗(メタ)アクリル酸に直接添加する方法や、適当な溶媒に溶解して添加する方法等が採用される。
【0010】
本発明において、アルデヒド処理の際のヒドラジン化合物の添加量は、前記粗(メタ)アクリル酸に含まれるアルデヒド類1モルに対して1.5〜10モルとすることが好ましい。さらに好ましくは、2.0〜7.0モルとするのがよい。ヒドラジン化合物の添加量がアルデヒド類1モルに対して1.5モル未満であると、アルデヒド類の処理が完全に行われず、アルデヒド類が除去されにくくなる。一方、ヒドラジン化合物の添加量がアルデヒド類1モルに対して10モルを越えると、もはやアルデヒド処理に対する効果がさらに向上することはないため経済的に不利となり、しかも過剰のヒドラジン化合物を分解するのに時間がかかることとなる。
【0011】
本発明においては、アルデヒド処理後の残存ヒドラジン化合物の含有量が100重量ppm以下となるようにすることが重要である。好ましくは80重量ppm以下、さらに好ましくは50重量ppm以下、最も好ましくは10重量ppm以下とするのがよい。残存ヒドラジン化合物の含有量を100重量ppm以下にすることによって、蒸留工程における重合物の生成を抑制することができるのである。アルデヒド処理後の残存ヒドラジン化合物の含有量が100重量ppmを越えると、蒸留工程において装置内に(メタ)アクリル酸の重合物が付着する等の問題を生じるため、該装置の長期連続運転が不可能となり、ひいては作業的にも煩雑で、かつ、(メタ)アクリル酸の精製にかかるコストが増大することとなる。
【0012】
本発明において、アルデヒド処理は、50℃以下(好ましくは0〜50℃、さらに好ましくは20〜50℃)で処理した後、さらに60℃以上(好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃)で処理する。処理時間は、ヒドラジン化合物の添加量および処理温度によって適宜決定すればよく、アルデヒド類が完全に高沸点化処理され、残存ヒドラジン化合物の含有量が100ppm以下となれば特に限定されるものではないが、50℃以下で好ましくは5分以上、さらに好ましくは10分以上処理した後、60℃以上で好ましくは5分以上、さらに好ましくは10分以上処理するのがよい。このように、初めに50℃以下の低温で短時間処理した後に60℃以上の高温で処理することにより、アルデヒド類を完全に高沸点化処理するとともに、余剰のヒドラジン化合物を分解させて、アルデヒド処理後の残存ヒドラジン化合物の含有量を100重量ppm以下とすることができる。なお、アルデヒド処理は、例えば、粗アクリル酸にヒドラジン化合物を添加し、上記の処理温度および処理時間になるような滞留槽を用いて反応させることにより行うことができる。また、アルデヒド処理の際の反応は、バッチ式、連続式のいずれで行ってもよく、特に制限されないが、工業的には連続式で行うのが好ましい。
【0013】
本発明においては、蒸留の際に、従来公知の重合防止剤を添加することもできる。該重合防止剤としては、具体的には、例えば、フェノール、ハイドロキノン、メトキノン、カテコール、クレゾール等のフェノール化合物が挙げられる。これらの添加量は、特に制限されないが、通常、(メタ)アクリル酸に対して10〜500ppm程度とすることが好ましい。
本発明において、蒸留の方法は、特に制限されるものではなく、例えば、単蒸留、精密蒸留等の種々の方法を採用することができる。該蒸留は、バッチ式、連続式のいずれで行ってもよいが、工業的には、連続式で行うのが好ましい。また、蒸留装置については、特に制限されるものではなく、腐食対策等を要することなく既存の設備をそのまま使用することができる。
【0014】
蒸留の際の条件については、特に制限されるものではないが、具体的には、滞留時間が1〜15時間、蒸留温度が40〜100℃、濃縮倍率が4〜100倍となるように設定するのがよい。
本発明の精製方法で得られる(メタ)アクリル酸は、好ましくはアルデヒド類の含有量が10重量ppm以下である。これは、(メタ)アクリル酸中においてヒドラジン化合物とアルデヒド類とを反応させて、アルデヒド類を高沸点化させると同時に、平衡により再び元のアルデヒド類に戻ることを防止することによりはじめて達成される。このように、本発明で得られる(メタ)アクリル酸は、不純物であるアルデヒド類の含有量が10重量ppm以下と純度が高いので、吸水性樹脂等の高分子体の原料として用いた場合にも、重合反応時における反応の遅延、重合度の低下、重合物の着色等の問題を引き起こすことなく、各種用途に有用なものである。
【0015】
【実施例】
以下、本発明に係る実施例および比較例について説明するが、本発明は該実施例により何ら制限されるものではない。
なお、フルフラール、アクロレイン、および残存ヒドラジン化合物の含有量は、以下の方法にて測定した。
(フルフラール、アクロレインの含有量)
試料をガスクロマトグラフィーで分析することにより、定量した。
(残存ヒドラジンの含有量)
試料1mlと、0.1重量%のp−ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液(溶媒;10vol%の塩酸含有エタノール)40mlとを褐色瓶中で混合し、25℃で10分間放置した後、UV測定装置を用いて波長458nmでの吸収強度を測定することにより、定量した。
【0016】
〔参考例1〕
フルフラール450重量ppm、アクロレイン50重量ppmを含む粗アクリル酸に、粗アクリル酸に対して419重量ppm(アルデヒド類1モルに対して1.5モル相当)のヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)を添加し、滞留温度が50℃、滞留時間が30分になるような滞留槽を用いて連続抜き出し反応を行うことによりアルデヒド処理を施した。このアルデヒド処理後の粗アクリル酸中のヒドラジン濃度を測定したところ、残存ヒドラジンの含有量は100重量ppmであった。
【0017】
次いで、このアルデヒド処理後の粗アクリル酸を、精製蒸留塔の塔底部に11kg/hrの速度で供給し、連続操作による蒸留精製を行った。用いた精製蒸留塔は、段数5段、段間隔147mmのシーブトレーを備え、さらに、塔頂上部には留出管および還流管を備え、塔底部には原料供給管および塔底液抜き出し管を備えたものである。蒸留条件は、塔頂圧55hPa、還流比0.5、塔頂からの留出量は10kg/hr、塔底からの缶出量は1kg/hrとした。なお、蒸留の際には、アクリル酸に対して250ppmのメトキシフェノールを重合防止剤として還流液から添加し、かつ、塔底液中に酸素を吹き込みながら蒸留を行った。
【0018】
留出液として得られた精製アクリル酸中のフルフラールの含有量は0.5重量ppm、アクロレインの含有量は0.1重量ppm以下であった。また、上記精製操作を20日間連続稼働にて行った後、精製蒸留塔を点検したが、塔内のアクリル酸ポリマー等の付着物は極わずかであった。
【0020】
〔実施例1〕
フルフラール450重量ppm、アクロレイン50重量ppmを含む粗アクリル酸に、粗アクリル酸に対して1397重量ppm(アルデヒド類1モルに対して5モル相当)のヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)を添加し、滞留温度が50℃、滞留時間が10分になるような第一の滞留槽を用いて連続抜き出し反応を行い、続いて、滞留温度が60℃、滞留時間が10分になるような第二の滞留槽を用いて連続抜き出し反応を行うことによりアルデヒド処理を施した。このアルデヒド処理後の粗アクリル酸中のヒドラジン濃度を測定したところ、残存ヒドラジンの含有量は30重量ppmであった。
【0021】
次いで、このアルデヒド処理後の粗アクリル酸を用い、参考例1と同様にして蒸留精製を行った。
留出液として得られた精製アクリル酸中のフルフラールの含有量は0.2重量ppm、アクロレインの含有量は0.1重量ppm以下であった。また、上記精製操作を20日間連続稼働にて行った後、精製蒸留塔を点検したが、塔内にアクリル酸ポリマー等の付着物は認められなかった。
〔実施例2〕
第一の滞留槽の滞留時間が5分、第二の滞留槽の滞留時間が5分になるようにした以外は、実施例1と同様にして精製操作を行った。なお、アルデヒド処理後の粗アクリル酸中のヒドラジン濃度を測定したところ、残存ヒドラジンの含有量は70重量ppmであった。
【0022】
留出液として得られた精製アクリル酸中のフルフラールの含有量は1.0重量ppm、アクロレインの含有量は0.1重量ppmであった。また、上記精製操作を20日間連続稼働にて行った後、精製蒸留塔を点検したが、塔内にアクリル酸ポリマー等の付着物は認められなかった。
〔実施例3〕
ヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)の添加量を、粗アクリル酸に対して1955重量ppm(アルデヒド類1モルに対して7モル相当)とした以外は、実施例1と同様にして精製操作を行った。なお、アルデヒド処理後の粗アクリル酸中のヒドラジン濃度を測定したところ、残存ヒドラジンの含有量は50重量ppmであった。
【0023】
留出液として得られた精製アクリル酸中のフルフラールの含有量は0.1重量ppm、アクロレインの含有量は0.1重量ppm以下であった。また、上記精製操作を20日間連続稼働にて行った後、精製蒸留塔を点検したが、塔内にアクリル酸ポリマー等の付着物は認められなかった。
〔実施例4〕
ヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)の添加量を、粗アクリル酸に対して2515重量ppm(アルデヒド類1モルに対して9モル相当)とし、滞留温度が50℃、滞留時間が10分になるような第一の滞留槽を用いて連続抜き出し反応を行い、続いて、滞留温度が60℃、滞留時間が30分になるような第二の滞留槽を用いて連続抜き出し反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして精製操作を行った。なお、アルデヒド処理後の粗アクリル酸中のヒドラジン濃度を測定したところ、残存ヒドラジンの含有量は80重量ppmであった。
【0024】
留出液として得られた精製アクリル酸中のフルフラールの含有量は0.1重量ppm以下、アクロレインの含有量は0.1重量ppm以下であった。また、上記精製操作を20日間連続稼働にて行った後、精製蒸留塔を点検したが、塔内にアクリル酸ポリマー等の付着物は認められなかった。
〔参考例2〕
アセトニルアセトン210重量ppmを含む粗メタクリル酸に、粗メタクリル酸に対して460重量ppm(アルデヒド類1モルに対して5.0モル相当)のヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)を添加し、滞留温度が50℃、滞留時間が1時間になるような滞留槽を用いて連続抜き出し反応を行うことによりアルデヒド処理を施した。このアルデヒド処理後の粗メタクリル酸中のヒドラジン濃度を測定したところ、残存ヒドラジンの含有量は75重量ppmであった。
【0025】
次いで、このアルデヒド処理後の粗メタクリル酸を、参考例1と同様の精製蒸留塔の塔底部に11kg/hrの速度で供給し、連続操作による蒸留精製を行った。蒸留条件は、塔頂圧45hPa、還流比2.0、塔頂からの留出量は10kg/hr、塔底からの缶出量は1kg/hrとした。なお、蒸留の際には、メタクリル酸に対して250ppmのメトキシフェノールを重合防止剤として還流液から添加し、かつ、塔底液中に酸素を吹き込みながら蒸留を行った。
留出液として得られた精製メタクリル酸中のアセトニルアセトンの含有量は0.1重量ppm以下であった。また、上記精製操作を20日間連続稼働にて行った後、精製蒸留塔を点検したが、塔内にメタクリル酸ポリマー等の付着物は認められなかった。
【0026】
〔比較例1〕
アルデヒド処理の際の滞留時間が10分になるようにした以外は、参考例1と同様にして精製操作を行った。なお、アルデヒド処理後の粗アクリル酸中のヒドラジン濃度を測定したところ、残存ヒドラジンの含有量は160重量ppmであった。
留出液として得られた精製アクリル酸中のフルフラールの含有量は0.5重量ppm、アクロレインの含有量は0.1重量ppm以下であった。しかし、上記精製操作を3日間連続稼働にて行うと、精製蒸留塔内にアクリル酸ポリマー等が付着して、安定運転が困難となった。
〔比較例2〕
アルデヒド処理の際の滞留時間が20分になるようにした以外は、参考例1と同様にして精製操作を行った。なお、アルデヒド処理後の粗アクリル酸中のヒドラジン濃度を測定したところ、残存ヒドラジンの含有量は140重量ppmであった。
留出液として得られた精製アクリル酸中のフルフラールの含有量は0.5重量ppm、アクロレインの含有量は0.1重量ppm以下であった。しかし、上記精製操作を5日間連続稼働にて行うと、精製蒸留塔内にアクリル酸ポリマー等が付着して、安定運転が困難となった。
〔比較例3〕
アルデヒド処理の際の滞留時間が10分になるようにした以外は、参考例2と同様にして精製操作を行った。なお、アルデヒド処理後の粗メタクリル酸中のヒドラジン濃度を測定したところ、残存ヒドラジンの含有量は190重量ppmであった。
留出液として得られた精製メタクリル酸中のアセトニルアセトンの含有量は0.1重量ppm以下であった。しかし、上記精製操作を10日間連続稼働にて行うと、精製蒸留塔内にメタクリル酸ポリマー等が付着して、安定運転が困難となった。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、不純物としてアルデヒド類を含有する粗(メタ)アクリル酸から、重合物の生成を抑制しつつ、工業的に簡便かつ安価な方法で、該不純物を効率よく除去することができる。また、重合物の生成を抑制できることから、蒸留の際、装置内に重合物が付着する等の問題を生じることなく、長期に渡り連続して該装置を運転することができる。
Claims (2)
- 不純物としてアルデヒド類を含有する粗(メタ)アクリル酸にアルデヒド処理剤を作用させることによりアルデヒド処理を施した後に、蒸留を行う(メタ)アクリル酸の精製方法であって、前記アルデヒド処理剤としてヒドラジン化合物を用い、当該ヒドラジン化合物の添加量を、前記粗(メタ)アクリル酸に含まれるアルデヒド類1モルに対して1.5〜10モルとし、かつ、前記アルデヒド処理を、50℃以下で処理した後、さらに60℃以上で処理することにより行い、前記アルデヒド処理後の残存ヒドラジン化合物の含有量を100重量ppm以下とすることを特徴とする(メタ)アクリル酸の精製方法。
- アルデヒド類の含有量が10重量ppm以下である(メタ)アクリル酸を得る、請求項1に記載の(メタ)アクリル酸の精製方法。
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