JP4295378B2 - 難燃性複合発泡体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂を主体とする難燃性複合発泡体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂発泡体は、軽量性、断熱性、柔軟性等に優れるため、各種断熱材、緩衝材、浮揚材等に幅広く用いられている。しかし、ポリオレフィン系樹脂発泡体は、例えばポリスチレン系樹脂発泡体と比較すると、発泡体の圧縮強度が小さいので、例えば、建物の屋上断熱材や床用断熱材等としては使用することができなかった。
この問題を解決すべく、例えば、特開平10−237205号公報には、熱分解型発泡剤を含有する発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを加熱発泡させる際に、生じる面内方向の発泡力を抑制し得る強度を有するシート状物が少なくとも片面に積層されてなる複合発泡体が提案されている。
【0003】
この複合発泡体を製造するには、例えば、ポリオレフィン系樹脂と、それと相溶しないシラン変性ポリオレフィンをブレンドし、このブレンド物に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、得られた発泡性樹脂組成物をシート状に賦形すると同時にこの発泡性シートの両面にポリエチレンテレフタレート製不織布を積層し、得られた発泡性複合シート中のシラン変性ポリオレフィンを水架橋させた後に加熱発泡させるのである。
こうして得られた発泡性樹脂シートは、発泡時に面内方向の発泡力を抑制しうる強度を有するシート状物が積層されているため、発泡時、面内の二次元方向には殆ど発泡せず、厚み方向にのみ発泡する。従って、この発泡体の気泡は、厚み方向にその長軸を配向した紡錘形、即ちシート厚み方向に直立し、丁度、ラグビーボール状になって並ぶ(模式的に示した斜視図である図1参照)。そのため、得られた発泡体は、シート厚み方向に圧縮力を受けると、紡錘形の長軸方向に力がかかることになるので、厚み方向に高い強度を示す。
【0004】
しかしながら、本発明者等の検討によれば上記技術には、次のような問題があることが判明した。
水架橋反応そのものに、通常1時間以上という長時間を要すると共に、発泡原反が濡れるので、乾燥が必要となるため、連続的な製造が困難であり工業的生産効率が極めて低い。
一次元方向に発泡させやすい様に樹脂の流動性を上げるために、架橋の程度を弱くしているので、溶融樹脂の融体強度が弱く、発泡時の発泡内圧に一部耐えきれず、破泡するために、独立気泡率が85%程度までしか上がらない。そのため、圧縮強度や断熱性の向上に限界がある。
また、ポリオレフィン系樹脂を主体としているので、従来からのポリオレフィン系樹脂の特性である易燃性はそのまま保持されている。
本発明の目的は、上述のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法における問題を解決すると共に、更にポリオレフィン系樹脂発泡体に難燃性を付与した難燃性複合発泡体の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ポリオレフィン系樹脂を変性用モノマーとしてキノン化合物と反応させて変性し、得られた変性樹脂とハロゲン系難燃剤と熱分解型化学発泡剤とを含有する混練発泡性樹脂組成物をシート状に賦形し、得られた発泡性シートの少なくとも片面に、このシートを加熱発泡させる際の面内方向への発泡を実質的に抑制し得る強度を有するシート状物を積層し、得られた発泡性複合シートを加熱発泡することを特徴とする難燃性複合発泡体の製造方法を提供する。
【0006】
本明細書全体を通して、「面内方向」とは、発泡性シートのシート面内にあるいかなる方向をも意味し、長さ方向、幅方向を含む。また、「シート」とは、厚さに基づく厳密な意味での形態をいうのでなく、通常フィルムと呼ばれる比較的薄手のものから通常板材と呼ばれる比較的厚手のものまで含むこととする。
【0007】
〔ポリオレフィン系樹脂〕
本発明方法におけるポリオレフィン系樹脂の主体をなすポリオレフィンは、オレフィン性モノマーの単独重合体、または主成分オレフィン性モノマーと他のモノマーとの共重合体であり、特に限定されるものではない。
例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ホモタイプポリプロピレン、ランダムタイプポリプロピレン、ブロックタイプポリプロピレン等のポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のエチレンを主成分とする共重合体などが例示され、またこれらの2以上の組合わせであってもよい。
【0008】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂の主体をなすポリオレフィンとしては、上述したポリエチレンやポリプロピレンの1種もしくは2種以上の組みあわせが好ましい。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂は、上記ポリオレフィンの割合が、通常70〜100重量%である樹脂組成物を指す。ポリオレフィン系樹脂を構成するポリオレフィン以外の樹脂は限定されないが、例えば、ポリスチレン、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂中のポリオレフィンの割合が70重量%を下回ると、ポリオレフィンの特徴である軽量、耐薬品性、柔軟性、弾性等が発揮できないばかりか、発泡に必要な溶融粘度を確保することが困難となる場合があるからである。
【0009】
〔変性用モノマー〕
上記変性用モノマーとは、ポリオレフィン系樹脂をグラフト変性するためのもので、通常、ラジカル反応し得る官能基を2個以上有する化合物であり、例えばp−キノンジオキシム(化学式3)、p,p'−ジベンゾイルキノンジオキシム(化学式4)等のジオキシム化合物や、ヒドロキノン、p−ベンゾキノン、テトラクロロ−p−ベンゾキノン等が挙げられる。キノン化合物は2種以上の組合わせで使用することもできる。
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0028】
変性用モノマーの配合量は、その種類に応じて適宜選択すればよいが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して通常0.05〜5重量部であり、好ましくは0.2〜2重量部である。変性用モノマーの配合量が0.05重量部未満であると、発泡に必要な溶融粘度を付与できず、5重量部を越えると、架橋度が上がりすぎ、押出成形性が悪くなる(例えば、高負荷がかかる、メルトフラクチャーが発生する)傾向がある。さらには、後で添加する発泡剤を樹脂組成物中に均一に混練できず、不必要にゲル分率が上がりすぎ、リサイクル性を損なう。加えて、後に加熱発泡時の発泡圧力が高くなり過ぎ、面内方向の発泡を抑制するためのシート状物に引っ張り強度の小さいものが使用できなくなる場合がある。
【0029】
本発明においては、変性用モノマーと併せて有機過酸化物を使用してもよい。特にビニル化合物やアリル化合物を変性用モノマーとして使用する場合には、有機過酸化物を併用することが好ましい。
有機過酸化物はポリオレフィンのグラフト反応に一般的に用いられる任意のものであれば良く、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられ、これらが単独でまたは2種以上の組合わせで好適に用いられる。特に、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のうちの1種もしくは2種以上がより好適に用いられる。
【0030】
有機過酸化物の使用量は、少なすぎるとグラフト化反応の転化が不十分であり、多すぎるとポリプロピレンのいわゆるβ開裂が顕著に起こり、変性物の分子量が低すぎて物性の低下あるいは粘度低下による発泡不良に至ることがある。これらの点を考慮すると、有機過酸化物の使用量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.001〜0.5重量部であることが好ましく、0.005〜0.15重量部であることがより好ましい。
【0031】
変性樹脂を得るには、スクリュー押出機やニーダーなどの混練装置を用い、ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーを所定条件で溶融混和し反応させる。このときの反応温度は170℃以上かつポリオレフィン系樹脂の分解温度以下、好ましくは200℃〜250℃である。反応温度が170℃を下回ると変性が不十分で、最終的に得られる発泡体の発泡倍率が十分高くならないことがあり、約250℃を越えるとポリオレフィン系樹脂が分解し易くなる。
【0032】
上記の反応に用いる装置は、スクリュー押出機の他、一般的にプラスチック成形加工で使用されうる溶融混練装置であればよく、例えばニーダー、ローター、連続混練機などが例示される。このうち連続運転が行えるスクリュー押出機が好ましく、1軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、3本以上のスクリューを備えた多軸スクリュー押出機などがいずれも好適に用いられる。1軸スクリュー押出機としては、一般的なフルフライト型スクリューに加え、不連続フライト型スクリュー、ピンバレル、ミキシングヘッドなどを有する押出機なども用いられる。また、上記2軸スクリュー押出機としては、噛み合い同方向回転型押出機、噛み合い異方向回転型押出機、非噛み合い異方向回転型押出機などが好適に使用し得る。なお、押出機の後段に真空ベントを設けることは、樹脂組成物中に揮発物が残存するのを防ぐのに効果的である。
【0033】
スクリュー押出機を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂は通常はホッパーから押出機へ投入されるが、定量性を増すため、スクリュー式フィーダー、重量管理式フィーダーなどを用いることも好ましい。
変性用モノマーは、ポリオレフィン系樹脂と同時にホッパーから押出機へ投入してもよいが、特にジビニルベンゼンやアリル系多官能モノマー等のいくつかは常温常圧で液体であるので、押出機にてポリオレフィン系樹脂が溶融する位置より後流部に設けられた液体注入孔から供給する方が、これを溶融樹脂中に均一に分散できるので好ましい。このとき液体モノマーは、プランジャーポンプなどの圧送式のポンプで送液することが望ましい。
【0034】
変性用モノマーに有機過酸化物を併用する場合は、有機過酸化物を変性用モノマーと予め混合してこれらを同時に投入する方法、あるいはモノマー投入と前後して有機過酸化物を別投入する方法などが適用できる。
該変性樹脂には、後にその流動性を改良する目的で、さらに同種あるいは異種の未変性のポリオレフィン系樹脂(以下これをブレンド用樹脂という)をブレンドし溶融しても良い。
このような変性樹脂とブレンド用樹脂とのブレンド物を用いることにより、得られる発泡性樹脂組成物の流動性が改善され、これによって、極めて薄い発泡原反が成形可能となり、その結果、薄い複合発泡シートの製造が可能となる。その上、流動性が紡錘形の気泡を形成するのに好適に働き、その結果として、より高圧縮強度の発泡体を得ることも可能となる。未変性のポリオレフィン系樹脂とは、変性樹脂の変性前のポリオレフィン系樹脂の定義で先に説明したものであって良い。
【0035】
ブレンド用樹脂の種類および使用量は、得られる発泡性複合シートの成形性、外観、シート状物との接着性、およびこれから得られる複合発泡体の発泡倍率、機械的物性、熱的物性、セル形状等によって適宜調整される。特に変性ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、同種または異種の未変性のポリオレフィン系樹脂50〜200重量部を新たに溶融ブレンドすることが好ましい。より好ましくは70〜130重量部をブレンドすることである。ブレンド用樹脂の割合が大きすぎると、発泡に必要な溶融張力が保持できないため、発泡倍率の低下を引き起こし、良好な発泡体が得られない。
【0036】
〔ハロゲン系難燃剤〕
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤とは、燃焼時に揮発性ハロゲン化合物となり、ラジカルトラップにより燃焼のラジカル連鎖サイクルを断ち切る作用を有するものである。
上記ハロゲン系難燃剤としては、例えば、パークロロペンタシクロデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジゲニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等の低分子臭素含有化合物や、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物、臭素化フェノキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA/塩素化シアヌル/臭素化フェノール縮合物、臭素化ポリスチレン等のハロゲン化されたポリマーやオリゴマー等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0037】
上記ハロゲン系難燃剤の添加量は、使用される樹脂100重量部に対して(従って、変性樹脂の他にブレンド用樹脂を用いる場合はその合計量100重量部に対して)、通常は0.1〜1 00重量部、好ましくは1〜50重量部である。この量が少すぎると、難燃化をもたらす効果が小さく、また、独立気泡率が上がらない。一方、多すぎると、樹脂の結晶化が阻害され、剛性、圧縮強度が弱くなり、ポリオレフィン系樹脂自体の性能が損なわれることとなる。
【0038】
上記難燃剤には、難燃助剤として酸化アンチモン類が併用されるのが好ましい。酸化アンチモン類としては、特に限定されるものではないが、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
上記酸化アンチモン系難燃助剤の添加量は、特に限定されるものではないが、ハロゲン系難燃剤100重量部に対して、酸化アンチモン系難燃助剤1〜200重量部であることが好ましく、20〜100重量部であることが好ましい。中でもハロゲン系難燃剤のハロゲン原子2〜5個当たり、アンチモン原子1個の割合で添加するのが特に好ましい。
【0039】
〔熱分解型化学発泡剤〕
本発明で用いる熱分解型化学発泡剤は、加熱により分解ガスを発生するものであれば特に限定されるものではない。熱分解型化学発泡剤の代表的な例は、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)である。これらは単独で用いてもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。その中でもアゾジカルボンアミドが特に好適に用いられる。
熱分解型化学発泡剤は、使用される樹脂100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは2〜35重量部の範囲で所望の発泡倍率に応じて適宜の量で使用される。
【0040】
〔混練〕
このようにしてポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーから得られた変性樹脂を用い、該変性樹脂とハロゲン系難燃剤と熱分解型化学発泡剤とを含有する混練発泡性樹脂組成物を得る方法について説明する。
先ず、変性樹脂と熱分解型化学発泡剤とを混練する具体的方法については、上述の反応用の溶融混練装置と、これとは別の発泡剤混練用の溶融混練装置(構造は反応用の溶融混練装置のそれと同じであってもよい)とを用いて、発泡剤が実質的に分解しない最高温度以下で変性樹脂と発泡剤を混練する。この溶融混練の態様としては下記のものがある。
【0041】
(a) 反応用の回分式あるいは連続式の溶融混練装置において、ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーを溶融混和して反応させ、得られた変性樹脂を溶融混練装置から取り出して固化、造粒などを行った後、樹脂組成物を発泡剤混和用の回分式あるいは連続式の混練装置に移し、これに発泡剤を投入し両者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
(b) 反応用の回分式の溶融混練装置において、ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーを溶融混和して反応を行い、得られた変性樹脂を同混練装置内で、発泡剤が多量に分解しない温度まで冷却した後、これに発泡剤を投入し両者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
【0042】
(c) 反応用のスクリュー押出機(連続式の溶融混練装置)において、ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーを170℃以上の温度で溶融混和して反応を行い、得られた変性樹脂を発泡剤が多量に分解しない温度まで降温させた後、さらに同スクリュー押出機の途中に設けた供給口より発泡剤を投入し、両者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
(d) 連続操作のもう一つの形態では、2台のスクリュー押出機などを連結して、1台目でポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーを溶融混和して反応を行い、得られた変性樹脂を上記と同様に降温させた後、同樹脂組成物を2台目に移し、これに発泡剤を投入し、両者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
【0043】
一方、ハロゲン系難燃剤の投入方法は、ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーの反応を阻害しない方法ならば、特に限定されないが、(イ)樹脂に混練したマスターバッチを予め用意しておく、(ロ)発泡剤とドライブレンドした後、同時に投入する、方法が特に効率的でよいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
〔シート状の賦形〕
上記混練発泡性樹脂組成物は、シート状に賦形されて発泡性シートとされる。賦形の方法は押出成形の他、プレス成形、ブロー成形、カレンダリング成形、射出成形など、プラスチックの成形加工で一般的に行われる方法が適用可能である。
特に、上記(a)(b)の方法にしたがって得られる発泡性樹脂組成物を、回分式の発泡剤混和用混練装置より取り出し、これをスクリュー押出機に投入して連続的にシート形状に賦形する方法、あるいは、上記(a)(c)(d) の方法にしたがって、スクリュー押出機より吐出する発泡性樹脂組成物を、直接賦形する方法が、生産性の観点より好ましい。
【0045】
〔シート状物及びその積層〕
本発明において、上記発泡性シートの少なくとも片面に、このシートを加熱発泡させる際の面内方向への発泡を実質的に抑制し得る強度を有するシート状物を構成する材料は、紙、布、木材、鉄、非鉄金属、プラスチック、ガラス、無機物など自由に選べ、特に限定されるものではない。またシート状物は発泡性シートと積層・一体化させる場合には、発泡性シートとの間にある程度の接着性を発現するものが望ましいが、接着性が無いシート状物であっても物理的なアンカー効果によって接着可能なもの、粘着剤や接着剤を適宜用いることで発泡性シートに接着可能なものであればよい。
【0046】
但し、面内方向の発泡を抑制するためのシート状物の強度が低すぎると、発泡に際してシート状物が裂けてしまい、発泡性シートの面内方向の発泡を充分に抑制することができないことがある。従って上記面内発泡を抑制するためのシート状物としては、発泡体の倍率が10倍である場合は、引張り強度が0.1kgf/cm以上のものであることが好ましい。ただしこれは実測した樹脂の発泡圧力から求めた値であり、発泡倍率によって変化するため、これに限られない。
【0047】
本発明で好適に使用しうるシート状物としては、ガラスクロス、寒冷紗、織布または不織布、ニードルパンチ、紙などが挙げられる。
ガラスクロスとは、ガラス繊維を抄造して得られるサーフェイスマット、ガラスロービングが織られてなるものをいう。また寒冷紗、不織布、ニードルパンチは、主にポリエステルやナイロン等の合成樹脂繊維からなるものである。織布は一般的な天然繊維や合成繊維からなるものも含まれる。
【0048】
なお、サーフェイスマットについてはガラス短繊維同士を結着するためのバインダーが含まれてもよい。バインダーとしては、シート状物の引張強度が上記範囲を満たすものであれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、飽和ポリエステル、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂が挙げられる。
織布、不織布を構成する有機繊維としてはポリエステル繊維、綿、アクリル繊維、ナイロン繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
これらのシート状物を使用することによって、軽量で圧縮強度を有するポリオレフィン系樹脂複合発泡体を得ることができる。また、適切な強度のシート状物を用いることによって、同発泡体をポリオレフィン系樹脂の融点以上の温度に再加熱することで二次賦形が可能となる。よって、得られた複合発泡体は自動車用の成型天井材や内装パネルの芯材などに好適に使用することができる。
【0049】
また本発明ではシート状物が、鉄製シート、またはアルミニウム、チタン、銅等の非鉄金属シート等の金属からなるものであってもよい。鉄製シートには溶融亜鉛鋼板や溶融亜鉛アルミニウム合金鋼板、ステンレス鋼板等が含まれる。このような金属製のシート状物としては、厚み0.01mm〜2mmの圧延された薄いシートが特に好適に使用される。この場合、これらの金属は任意にメッキされている、あるいは有機塗料、無機塗料等で塗装されていてもよく、あるいは粘接着剤が塗布されていてもよい。
これらの金属製シート状物を使用する場合、得られるポリオレフィン系樹脂複合発泡体は軽量の金属複合板となり得る。これは、厚さ1〜5mmの金属板や、中間層としてポリエチレン層などを配した金属複合板と比較して、実用上極端な強度不足を来たさずに、さらに軽量化と低コスト化が図れるメリットを有する。またこの複合発泡体は発泡性複合シートを発泡させて製造されるため、発泡体に後から金属シート状物を貼付した金属複合板と比較して、表面平滑性が極めて優れたものになる。
【0050】
発泡性シートの少なくとも片面にシート状物を積層する方法は特に限定されるものではないが、例えば、(イ)一旦冷却固化した発泡性シートにシート状物を加熱しながら貼付する方法、(ロ)発泡性シートを溶融状態になるまで加熱しておき、これをシート状物に熱融着する方法、(ハ)発泡性シートにシート状物を接着剤で貼り合わせる方法などが挙げられる。
【0051】
発泡性複合シートの厚み精度を確保するには方法(イ)又は(ハ)が最も好ましい。方法(ロ)の熱融着では、例えば、Tダイから押し出された直後の溶融状態の発泡性シートの少なくとも片面に、シート状物を軽く積層した状態で、これらを対向状の冷却ロール間を通過させ、ロールの押圧力で両者を一体化する方法が好ましい。
なお、上記のように発泡性シートとシート状物を積層して一体化するとは、発泡性シートとシート状物とを両者の界面において剥離しようとした場合に、高い割合で材料破壊が生じる程度に両者が固着されている状態を意味するものとする。
【0052】
〔加熱発泡〕
こうして得られた発泡性複合シートは、適切な温度条件で加熱することにより、常圧あるいは一定加圧下で所望の発泡倍率に発泡させることができる。上記加熱は、通常は熱分解型化学発泡剤の分解温度から、分解温度+100℃までの温度範囲で行われる。特に連続式発泡装置としては、加熱炉の出口側で発泡体を引き取りながら発泡させる引き取り式発泡器の他、ベルト式発泡器、縦型または横型発泡炉、熱風恒温槽や、あるいはオイルバス、メタルバス、ソルトバスなどの熱浴が用いられる。
【0053】
(作用)
シート状物が積層されたポリオレフィン系樹脂シートを加熱発泡させる際、シート状物が面内方向の発泡を抑制しつつ、積極的に厚み方向に発泡する様に導くには、発泡性シートを構成する樹脂は良好な流動性を有する必要がある。
本発明の製造方法によれば、ポリオレフィン系樹脂とグラフト変性用モノマーとを反応して得られた変性樹脂は、この厚み方向への発泡の他、変性樹脂と発泡剤との混練、及びシートへの賦形が充分可能な溶融流動性を維持しつつ、同時に発泡が可能な程度の融体強度を持たせることが可能となる。
【0054】
その機構の理論的詳細は未だ十分には解明されていない面もあるが、ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーとを反応させることによりグラフト変性樹脂が得られ、この際、温度条件等によっては一部架橋反応も生じている場合もあり、更に発泡性複合シートを加熱発泡させる際の加熱により架橋反応が生じると共に発泡に耐え得る溶融粘度を維持し得ると考えられ、また、加熱架橋が可能であるので、反応に長時間を要する水架橋に比較して高い生産性をもって所望の発泡体を製造し得るのである。
【0055】
また、本発明で用いられる発泡性シートは発泡圧が低くなるため、例えば0.3kg/cmという非常に小さな強度の面材を用いても、破損することなく面内方向の発泡を抑制することができる。この結果この発泡性シートを加熱発泡することで、厚み方向にのみ発泡し、厚み方向に長軸を有する紡錘形のセルを有する発泡体となる。
また、ハロゲン系難燃剤を用いることで、難燃性を付与させることができると共に、予期せぬことながら独立気泡率が上がることが判明した。
【0056】
この理由は、おそらく、ハロゲン系難燃剤は可塑剤となり得るものが多いため、発泡剤混練時のポリオレフィン系樹脂溶融粘度を下げ、発泡剤の分散度を向上させて、局所発泡による連泡化を抑制すると共に気泡径が小さくなり、さらに、併用されることが多い酸化アンチモン類が熱分解型化学発泡剤の分解を促進させ、発泡開始時間の分布を小さくし、連続気泡化を抑制することなどが総合的に寄与しているものと推察される。
また発泡原反の製造時に新たに未変性の樹脂をブレンドした場合は、さらに流動性が向上するため発泡圧は更に低下すると同時に、球形と比べてより変形歪みが伴う紡錘形の気泡が形成され易くなる。
【0057】
【実施例】
本発明を実施例によってより具体的に説明する。
(1) 変性ポリオレフィン系樹脂の調製
変性用スクリュー押出機として、BT40(プラスチック工学研究所社製)同方向回転2軸スクリュー押出機を用いた。これはセルフワイピング2条スクリューを備え、そのL/Dは35、Dは39mmである。シリンダーバレルは押出機の上流から下流側へ第1〜4バレルからなり、ダイは3穴ストランドダイであり、揮発分を回収するため第4バレルに真空ベントが設置されている。
操作条件は下記の通りである。
【0058】
上記構成の変性用スクリュー押出機に、まず、後述するポリオレフィン系樹脂およびジオキシム化合物をその後端ホッパーから別々に投入し両者を溶融混和し、変性樹脂を得た。このとき、押出機内で発生した揮発分は真空ベントにより真空引きした。
【0059】
ポリオレフィン系樹脂はポリプロピレンランダム共重合体(日本ポリケム製「EG8」、MI;0.8、密度;0.9g/cm3 )であり、その供給量は10kg/時間とした。
変性用モノマーはp−キノンジオキシム(大内新興化学社製「バルノックGM−P」)であり、その供給量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1.0重量部とした。
ポリオレフィン系樹脂とジオキシム化合物の溶融混和によって得られた変性樹脂を、ストランドダイから吐出し、水冷し、ペレタイザーで切断して、変性樹脂のペレットを得た。
【0060】
(2) 発泡性樹脂組成物の調製
発泡剤混練用スクリュー押出機はTEX−44型(日本製鋼所社製)同方向回転2軸スクリュー押出機であり、これはセルフワイピング2条スクリューを備え、そのL/Dは45.5、Dは47mmである。シリンダーバレルは押出機の上流から下流側へ第1〜12バレルからなり、成形ダイは7穴ストランドダイである。温度設定区分は下記の通りである。
【0061】
第1バレルは常時冷却
第1ゾーン;第2〜4バレル
第2ゾーン;第5〜8バレル
第3ゾーン;第9〜12バレル
第4ゾーン;ダイおよびアダプター部
発泡剤を供給するために第6バレルにサイドフィーダーが設置され、揮発分を回収するため第11バレルに真空ベントが設置されている。操作条件は下記の通りである。
【0062】
【0063】
上述のようにして得られた変性樹脂及びホモタイプのポリプロピレン(日本ポリケム製「EA7」、MI;1.2、密度;0.9g/cm3)を、それぞれ10kg/hの供給量で、発泡剤混練用スクリュー押出機に供給した。また、発泡剤(アゾジカルボンアミド(ADCA))、ハロゲン系難燃剤(デカブロモジフェニルエーテル(DBDPE))及び三酸化アンチモン(Sb2O3)を、それぞれ1kg/h、1.2kg/h、0.6kg/hの供給量で、同押出機にサイドフィーダーから供給した。
こうして変性樹脂と発泡剤の混練によって得られた発泡性樹脂組成物を、幅350mm×リップ開度1.1mmのTダイから押し出し、シート状成形体を得た。
【0064】
(3) 発泡性複合シートの調製
上記のようにして得られた発泡性樹脂組成物シートの両面に、ポリエチレンテレフタレート製の不織布(東洋紡績社製、「スパンボンド エクーレ 6301A」、秤量30g/m2 、引張り強度:縦1.6kg/cm、横1.2kg/cm)を積層し、プレス成形機を用い、180℃、200kgf/cm2で賦形し、厚み1mmの発泡性複合シートを得た。得られた発泡性複合シートから縁部を取り除き、一辺300mmの正方形サンプルを得た。
【0065】
(4) 発泡
タルクを敷き付けたステンレススチール製バットを熱風オーブン内に置き、上記発泡性シートサンプルをタルク上に置き、同サンプルを230℃で約5分間加熱発泡させ、複合発泡体を得た。図1に模式的に示す様に、得られた複合発泡体1は、気泡2が発泡体の厚み方向にその長軸を配向した紡錘形のものであった。
【0066】
(5) 性能評価
得られた複合発泡体を下記の項目について性能評価し、表1に示した。
〔発泡倍率〕:
複合発泡体よりシート状物をカッターで削り取った後、JIS K6767に従い発泡体の発泡倍率を測定した。
【0067】
〔独立気泡率〕:
複合発泡体の重量、体積をそれぞれ、A(g)、Vb(cc)、空気式比重計を用いて測定した複合発泡体の体積をVc(cc)とし、以下の式に基づき独立気泡率を算出した。但し、d(g/cc)はPPの密度とする。
独立気泡率(%)=(Vc−A/d)/(Vb−A/d)
【0068】
〔圧縮弾性率〕:
複合発泡体を5cm角にカットし、JIS K 7220に基づき、10mm/minの速さで圧縮させ、弾性変形領域のカーブから圧縮弾性率を計算した。
〔セル形状〕:
複合発泡体を厚み方向にカットし、厚み方向の中心部のカット断面を光学顕微鏡で観察し、紡錘形の発泡セルの長軸長と短軸長を基準スケールを用いて測定した。
〔難燃性〕:
JIS K7201に基づき、酸素指数の測定を行った。
【0069】
(実施例2)
上述の発泡性樹脂組成物の調製工程(2)において、ハロゲン系難燃剤として、ヘキサブロモベンゼンを供給量1.8kg/時間で供給したこと以外は、実施例1と全く同様の方法で発泡性複合シートを得、さらにこれを同様の方法で加熱発泡させて複合発泡体を得た。複合発泡体中の気泡の形状は実施例1と同様の紡錘形であった。
実施例1と同様にして、複合発泡体の性能を評価し、表1に示した。
【0070】
(比較例1)
上述の発泡性樹脂組成物の調整工程(2)において、ハロゲン系難燃剤及び三酸化アンチモンを用いないこと以外は、実施例1と全く同様の方法で発泡性複合シートを得、さらにこれを同様の方法で加熱発泡させて複合発泡体を得た。実施例1と同様にして、複合発泡体の性能を評価し、表1に示した。
【0071】
(比較例2)
原料組成
(1) 高密度ポリエチレン(日本ポリケム社製、商品名:JY20、密度=0.951g/cm3、MI=9.0g/10分)を50重量部、
(2) ポリプロピレン(日本ポリケム社製、商品名:MH8、密度=0.900g/cm3、MI=0.30g/10分)を25重量部、
(3) シラン変性ポリプロピレン(三菱化学社製、商品名:XPM800HM、密度=0.912g/cm3、MI=11g/10分)を25重量部、
(4) シラン架橋触媒(ジブチル錫ジラウレートのマスターバッチ:三菱化学社製、商品名 PZ−10S)を1.5重量部、
(5) 熱分解型発泡剤(実施例1と同じもの)を5重量部、
を用いた。
【0072】
混練押出
上記(1) 〜(5) の原料を先の実施例1と同じTEX44型2軸スクリュ押出機に供給して、温度180℃、スクリュ回転数60rpm、供給量30kg/時間の条件で溶融混練し、幅350mm×リップ開度1.1mmのTダイから押し出して発泡性シートを得た。
【0073】
面材積層
実施例1における複合シートの調製工程(3) と同様の方法で発泡性複合シートを得た。
熱水養生
上記発泡性複合シートを99℃の熱湯に2時間浸漬して水架橋させた後、乾燥させた。
加熱発泡
実施例1と同様の方法で加熱発泡して複合発泡体を得た。
【0074】
評価
実施例1と同様にして、複合発泡体の性能を評価し、表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
*以上のように、シラン変性ポリオレフィンを水架橋させた後に加熱発泡させる従来技術の製法を用いれば、熱水養生工程及び乾燥工程が加わり、煩雑となることが明らかである。
【0077】
【発明の効果】
本発明の難燃性複合発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂を変性用モノマーとしてキノン化合物と反応させて変性し、得られた変性樹脂とハロゲン系難燃剤と熱分解型化学発泡剤とを含有する混練発泡性樹脂組成物をシート状に賦形し、得られた発泡性シートの少なくとも片面に、このシートを加熱発泡させる際の面内方向への発泡を実質的に抑制し得る強度を有するシート状物を積層し、得られた発泡性複合シートを加熱発泡するので、本発明によれば、その製造過程において得られる発泡性複合シートの加熱発泡時の溶融粘度が上述の如く適宜なものとなされ、これを発泡させた際に発泡体の気泡が紡錘形になり、その長軸が厚み方向に配向した複合発泡体が得られるため、圧縮強度が従来の発泡体に比較して格段に高く、上述した従来技術の欠点を解決した優れた性能を有する複合発泡体を、効率的かつ容易に製造することが出来る。
【0078】
しかも、上記混練発泡性樹脂組成物にはハロゲン系難燃剤が含有されているので、本発明によれば、従来の発泡体と比較して、酸素指数が高く、難燃性を保有する他に、上述した如く独立気泡率が向上し、気泡径が細かく、高い圧縮強度を発現し得る、種々の優れた特性を兼ね備えた複合発泡体の製造が可能である。
また、本発明における難燃性複合発泡体の製造方法の過程で得られる発泡性樹脂複合シート、及びこれから得られた複合発泡体は、高い溶融流動性を有するので実質的にリサイクルが可能であるという実用的効果も奏し得る。
【0079】
【図面の簡単な説明】
【図1】紡錘形気泡が、発泡体の厚み方向にその長軸を配向した本発明により得られた複合発泡体の模式的斜視図である。
【符号の説明】
1:複合発泡体
2:気泡
Claims (1)
- ポリオレフィン系樹脂を変性用モノマーとしてキノン化合物と反応させて変性し、得られた変性樹脂とハロゲン系難燃剤と熱分解型化学発泡剤とを含有する混練発泡性樹脂組成物をシート状に賦形し、得られた発泡性シートの少なくとも片面に、このシートを加熱発泡させる際の面内方向への発泡を実質的に抑制し得る強度を有するシート状物を積層し、得られた発泡性複合シートを加熱発泡することを特徴とする難燃性複合発泡体の製造方法。
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