JP4092050B2 - 暖房機能付床下地材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は床暖房用の暖房機能付床下地材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、住居内の暖房システムは石油ファンヒーターや暖房空調機等のような温風吹き出し型のものが主流であったが、足元が寒く、騒音があり、室内の空気が汚れるなどの問題があった。そこで、このような欠点のない床暖房システムが近年注目されている。
一方、暖房の効率化や省エネルギー等の観点からも床暖房の使用比率が高まりつつあり、洋室の床下に温水配管や電熱ヒーターを配置することが行われるようになってきた。
床暖房用のものとして、特開平5−60335公報に平面状発熱体及び均熱板を使用した床暖房部材が開示されているが、このものは表面側からみて均熱板、平面状発熱体、断熱材、非通気性フィルム、底板等が積層され、多くの数の部材を必要とする。
又、和室においても床暖房の要望が高まり、これに対して特開平9−32250号公報、特開平9−306640号公報、特開平9−317138号公報には畳床材に温水パイプを通したり、面状発熱体を貼り合わせたりしたものが提案されている。しかしながら、上記公報に記載のものはいずれも部材数が多いために生産性が悪く、施工性もよくなかった。
【0003】
床暖房を行う上で昇温の効率化のために裏面の断熱性は重要であるが、断熱材として広く使用されているポリスチレン等の熱可塑性樹脂発泡体は、単体では圧縮強度が低いため形状回復性がなく、そのためタンス等の重量物を長期間設置しておくと凹みが起こるという問題があった。更に、耐熱性が悪いので電気式や温水等の床暖房システムにおいて、過昇温時に樹脂が溶融するという不安がつきまとっていた。
【0004】
又、マンション等の集合住宅ではコンクリート床の上に床下地材が設置されることになる。このため硬質の床板を使用した暖房機能付床下地材ではコンクリート表面と床板との間の不陸を吸収ことができず、床鳴りが生じたり歩行感が悪くなる。
【0005】
畳用の床暖房システムでは、インシュレーションボード等の畳床材に切り抜きや溝を設け、その中に温水パイプを通したり、平面状発熱体を畳床材の裏面に貼り合わせたりするが、畳床材の熱伝導率が低いために熱伝導率の高い線状物が併用されたりする。このため生産性が極めて悪く、連続生産に向かずコストも高いという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解消し、重量物の重さに耐えることができ、設置面の不陸を吸収でき、耐熱性、断熱性、防音性があり、且つ、軽量で一体成形できるので生産性のよい暖房機能付床下地材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明の暖房機能付床下地材は、表面および裏面が平坦な樹脂発泡体と、樹脂発泡体の表面側および裏面側に積層されたシート状物と、樹脂発泡体の表面側のシート状物に積層されかつ表面および裏面が平坦な平面状発熱体とからなり、樹脂発泡体が、ポリオレフィン系樹脂を変性用モノマーと反応させた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、シート状に成形された発泡性シートが加熱により発泡することで得られたものであり、シート状物は、予め発泡性シートに積層されることで、発泡する際に生じる面内方向の発泡力を抑制し、平面状発熱体は、発泡性シートが加熱されて得られた樹脂発泡体に連続して積層されて一体化されていることを特徴とするものである。
また、第2の発明の暖房機能付床下地材は、表面および裏面が平坦な樹脂発泡体と、樹脂発泡体の表面側に積層されかつ表面および裏面が平坦な平面状発熱体と、樹脂発泡体の裏面側に積層されたシート状物とからなり、樹脂発泡体が、ポリオレフィン系樹脂を変性用モノマーと反応させた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、シート状に成形された発泡性シートが加熱により発泡することで得られたものであり、平面状発熱体およびシート状物は、予め発泡性シートに積層されることで、発泡する際に生じる面内方向の発泡力を抑制していることを特徴とするものである。
【0008】
本発明で用いられる平面状発熱体は特に限定されるものではなく、例えば、ニクロム線が平面状に配置された発熱体でもよいが、カーボン繊維もしくはカーボン粉末が樹脂やセメント等に分散して固められた発泡体、チタン酸系発熱体等の平面状発熱体等が均一な床暖房ができるので好ましい。
【0009】
更に、温度の上昇に伴い抵抗値が増大する自己温度制御型発熱体(PTCサーミスタ)を平面状発熱体として用いると、局部的な異常発熱による火傷等を防止できるので好ましい。
【0010】
平面状発熱体の厚みは特に限定されないが、厚すぎると発熱体の曲げ剛性が大きくなるため2mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下である。
【0011】
本発明で用いられる樹脂発泡体は特に限定されるものではないが、圧縮強度が低すぎると重量物を設置した場合に凹みが生じたり、歩行感が悪くなることがあるので、JIS K 7220に準拠して測定された圧縮弾性率が4kg/cm2 以上であることが好ましく、より好ましくは5kg/cm2 以上である。
【0012】
樹脂発泡体に内在する気泡のアスペクト比(Dz/Dxy)の平均値は1.2以上、2.2以下であることが好ましい。該平均値の下限はより好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上であって、多くの気泡は厚み方向に長い紡錘状である(以下、樹脂発泡体内の気泡を「紡錘状気泡」と記述する)。
【0013】
上記のような樹脂発泡体としては、一般に発泡倍率が5〜25倍の硬質ポリウレタン発泡体、発泡倍率が10〜30倍のポリスチレン発泡体等が挙げられるが、本発明ではポリオレフィン系樹脂発泡体を用いる。
【0014】
上記構成の暖房機能付床下地材の表面には、畳表を接着剤で接着したり、縫い付けたり、編み込むなどして積層すれば暖房機能付畳として和室に使用することが可能である。
【0015】
本発明で使用されるポリオレフィン系樹脂は、オレフィン系モノマーの単独重合体、又はオレフィン系モノマーを主成分として他のモノマーとの共重合体であり、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ホモタイプのポリプロピレン、ランダムタイプのポリプロピレン、ブロックタイプのポリプロピレン等のポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のエチレンを主成分とする共重合体などが例示される。これらは単独でもよいが、2種以上の組み合わせのものが好ましい。
【0016】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂とは、上記ポリオレフィンの割合が70〜100重量%である樹脂組成物を指す。ポリオレフィン系樹脂を構成するポリオレフィン以外の樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂中のポリオレフィンの割合が70重量%よりも少ないと、ポリオレフィンの特徴である軽量、耐薬品性、柔軟性、弾性等が発揮されず、発泡に必要な溶融粘度を確保することが困難となる場合があるので好ましくない。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂を変性させるための変性モノマーとは、ラジカル反応し得る官能基を2個以上有する化合物であり、官能基としては、例えば、オキシム基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられ、更にキノン化合物等も挙げられる。
【0018】
分子内にオキシム基を2個有するジオキシム化合物としては、オキシム基又はその水素原子が他の原子団(主に炭化水素基)で置換された構造を分子内に2個有する化合物であり、例えば、p−キノンジオキシム、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム等が例示される。ジオキシム化合物は2種以上の組み合わせで使用することもできる。
【0019】
マレイミド基を分子内に2個有するビスマレイミド化合物としては、例えば、N,N′−p−フェニレンビスマレイミド、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジフェニルメタンビスマレイミド等が例示される。ビスマレイミド化合物は2種以上の組み合わせで使用することもできる。又、マレイミド構造を分子内に2個以上有するポリマレイミドも同じ効果を奏するのでビスマレイミド化合物の中に含まれる。
【0020】
分子内にビニル基を2個有するジビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられるが、2個のビニル基はオルト、メタ、パラのいずれの位置関係にあってもよい。
【0021】
分子内にアリル基を2個以上有するアリル系多官能モノマーとしては、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルクロレンデート等が例示される。アリル系多官能モノマーは2種以上の組み合わせで使用することもできる。
【0022】
分子内に(メタ)アクリル基を2個以上有する(メタ)アクリル系多官能モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を2〜4個有する化合物が挙げられる。(メタ)アクリロイルオキシ基が2個のものでは、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレングリコール付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレングリコール付加物ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリロイルオキシ基を3個有するものでは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加トリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリロイルオキシ基を4個有するものでは、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
又、キノン化合物としては、ヒドロキノン、p−ベンゾキノン、テトラクロロ−p−ベンゾキノン等が挙げられる。
【0025】
上記変性用モノマーの配合量はモノマーの種類に応じて適宜選択すればよいが、概ねポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.05〜5重量部であり、好ましくは0.2〜2重量部である。変性用モノマーの配合量が0.05重量部未満であると発泡に必要な溶融粘度を付与できず、5重量部を超えると架橋度が高くなりすぎて押出成形性が悪くなる(例えば、高負荷がかかる、メルトフラクチャーが発生する)。更には、この後で添加する発泡剤が樹脂組成物中に均一に混練されず、不必要にゲル分率が高くなりすぎ、リサイクル性が損なわれる。加えて、加熱発泡時の発泡圧力が高くなりすぎ、面内方向の発泡を抑制するためのシート状物として引張強度の小さいものを使用できなくなる。
【0026】
上記変性用モノマーに有機過酸化物を併用してもよい。特にビニル化合物やアリル化合物を変性用モノマーとして使用する場合には、有機過酸化物を併用することが好ましい。有機過酸化物はポリオレフィンのグラフト反応に一般的に用いられる任意のものであればよく、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられ、これらが単独又は2種以上の組み合わせで好適に用いられる。
【0027】
特に、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のうちの1種もしくは2種以上がより好適に用いられる。
【0028】
有機過酸化物の使用量は少なすぎるとグラフト化反応の転化が不充分であり、多すぎるとポリプロピレンのいわゆるβ解裂が顕著に起こり、変性物の分子量が低すぎて物性の低下あるいは粘度低下による発泡不良に至ることがある。
これらの点を考慮すると、有機過酸化物の使用量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対し0.001〜0.5重量部であることが好ましく、0.005〜0.15重量部であることがより好ましい。
【0029】
変性樹脂を得るには、スクリュー押出機やニーダーなどの混練装置を用いてポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーを所定条件で溶融混和して反応させる。このときの反応温度は170℃以上、且つポリオレフィン系樹脂の分解温度以下、好ましくは200〜250℃である。反応温度が170℃よりも低いと変性が不充分で、最終的に得られる発泡体の発泡倍率が不充分となることがあり、約250℃を超えるとポリオレフィン系樹脂が分解し易くなる。
【0030】
上記の反応に用いる装置は、スクリュー押出機の他、一般的にプラスチック成形加工で使用され得る溶融混練装置であればよく、例えば、ニーダー、ローター、連続混練機などが例示される。このうち、連続運転が可能なスクリュー押出機が好ましく、1軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、2本以上のスクリューを備えた多軸スクリュー押出機などがいずれも好適に用いられる。
【0031】
1軸スクリュー押出機としては、一般的なフルフライト型スクリューに加え、不連続フライト型スクリュー、ピンバレル、ミキシングヘッドなどを有する押出機なども用いられる。又、上記2軸スクリュー押出機としては、噛み合い同方向回転型押出機、噛み合い異方向回転型押出機、非噛み合い異方向回転型押出機などが好適に使用できる。尚、押出機の後段に真空ベントを設けることは、樹脂組成物中に揮発物が残存するのを防ぐために効果的である。
【0032】
スクリュー押出機を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂は通常はホッパーから押出機内へ投入されるが、定量精度を高くするためにスクリュー式フィーダー、重量管理式フィーダーなどを用いることも好ましい。
【0033】
変性用モノマーは、ポリオレフィン系樹脂と同時にホッパーから押出機内へ投入してもよいが、特にジビニルベンゼンやアリル系多官能モノマー等のいくつかは常温常圧で液体であるから、押出機でポリオレフィン系樹脂が溶融する位置よりも後流部に設けられた液体注入孔から供給する方が溶融樹脂中に均一に分散できるので好ましい。この際、液体モノマーはプランジャーポンプなどの圧送式のポンプで圧送することが望ましい。
【0034】
変性用モノマーと有機過酸化物を併用する場合は、有機過酸化物を変性用モノマーと予め混合して同時に投入する方法、あるいは変性用モノマー投入と前後して有機過酸化物を投入する方法などが採用できる。
【0035】
上記変性用モノマーにより変性された変性樹脂は、その流動性を改良する目的で同種あるいは異種の未変性のポリオレフィン系樹脂(これを「ブレンド用樹脂」と総称する)と溶融ブレンドされてもよい。このような変性樹脂とブレンド用樹脂とのブレンド物を用いることにより、得られる発泡性樹脂組成物の流動性が改良されて極めて薄い発泡原反が成形可能となり、その結果、薄い複合発泡シートの製造が可能となる。
【0036】
その上、流動性は紡錘形の気泡を形成するために好適に作用し、その結果として、より高圧縮強度の発泡体を得ることも可能である。未変性のポリオレフィン系樹脂とは、変性樹脂の変性前のポリオレフィン系樹脂の定義で先に説明したものであってもよい。
【0037】
ブレンド用樹脂の種類及び使用量は、得られる発泡性複合シートの成形性、外観、シート状物との接着性、及びこれから得られる複合発泡体の発泡倍率、機械的物性、熱的物性、セル形状によって適宜調整される。特に変性ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、同種もしくは異種の未変性のポリオレフィン系樹脂50〜200重量部を新たに溶融ブレンドすることが好ましい。より好ましいブレンド量は70〜130重量部である。ブレンド用樹脂の量が多すぎると発泡に必要な溶融張力が保持できないため発泡倍率の低下をきたし、良好な発泡体が得られない。
【0038】
本発明で用いられる熱分解型化学発泡剤は、加熱により分解ガスを発生するものであれば特に限定されない。熱分解型化学発泡剤の代表的な例は、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)である。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。この中でもアゾジカルボンアミドが特に好適に用いられる。
【0039】
熱分解型化学発泡剤は変性樹脂100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは2〜35重量部の範囲で所望の発泡倍率に応じて適宜の量で使用される。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーとから得られた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を混練して発泡性樹脂組成物を得るには、反応用の溶融混練装置と、これとは別の発泡剤混和用の溶融混練装置(構造は反応用の溶融混練装置と同じであってもよい)とを用いて、同発泡剤が実質的に分解しない最高温度以下で両者を混合する。この溶融混練の態様としては下記のものがある。
【0041】
(a)反応用の回分式あるいは連続式の溶融混練装置において、ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーを溶融混和して反応し、得られた変性樹脂を同溶融混練装置から取り出して固化、造粒などを行った後、同樹脂組成物を発泡剤混和用の回分式あるいは連続式の混練装置に移し、これに発泡剤を投入して両者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
(b)反応用の回分式の溶融混練装置において、ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーとを溶融混和して反応を行い、得られた変性樹脂を同混練装置内で発泡剤が分解しない温度まで冷却した後、これに発泡剤を投入して両者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
(c)反応用のスクリュー押出機(連続式の溶融混練装置)において、ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーとを170℃以上の温度で溶融混和して反応を行い、得られた変性樹脂を発泡剤が多量に分解しない温度まで降温させた後、更に同スクリュー押出機の途中に設けた供給口より発泡剤を投入して両者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
(d)連続操作のもう一つの形態では、2台のスクリュー押出機などを連結し、1台目でポリオレフィン系樹脂と変性用モノマーとを溶融混和して反応させ、得られた変性樹脂を上記と同様に降温させた後、同樹脂組成物を2台目に移し、これに発泡剤を投入して両者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
【0042】
混合物に熱分解型化学発泡剤を混練してなる発泡性樹脂組成物はシート状に賦形される。賦形の方法は押出成形の他、プレス成形、カレンダリング成形、射出成形など、プラスチックの成形加工で一般的に行われる方法が適用可能である。
特に、上記(a)(b)の方法に従って得られる発泡性樹脂組成物を回分式の発泡剤混和用混練装置より取り出し、これをスクリュー押出機に投入して連続的にシート形状に賦形する方法、あるいは上記(a)(c)(d)の方法に従って、スクリュー押出機より吐出する発泡性樹脂組成物を直接賦形する方法が生産性において好ましい。
【0043】
本発明で用いるシート状物の材料は特に限定されず、紙、布、木材、鉄、非鉄金属、プラスチック、ガラス等、有機物や無機物の中から選ぶことができる。
シート状物は発泡性シートと積層一体化されるために、発泡性シートとの間にある程度の接着性を発現するものが好ましいが、接着性がないシート状物であっても物理的なアンカー効果により接着可能なものであればよい。
【0044】
但し、面内方向の発泡を抑制するためのシート状物と平面状発熱体の強度が低すぎると発泡に際してシート状物と平面状発熱体が裂け、発泡性シートの面内方向の発泡を充分に抑制することができないことがある。従って、上記シート状物と平面状発熱体としては、発泡体の発泡倍率が10倍である場合は引張強度が0.1kgf/cm以上のものであることが好ましい。但し、この値は実測した樹脂の発泡圧力から求めたものであり、発泡倍率によって変化するので一つの参考値である。
【0045】
シート状物の材料は、例えば、ガラスクロスとして、ガラス繊維を抄造して得られるサーフェイスマットやガラスロービングが織られたものがある。サーフェイスマットはバインダーによりガラス短繊維同士が結着されたものであってもよい。バインダーとしてはシート状物の引張強度が上記範囲のものであれば特に限定はなく、例えば、ポリビニルアルコール、飽和ポリエステル、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が挙げられる。織布もしくは不織布を構成する有機繊維としては、ポリエステル繊維、綿、アクリル繊維、ナイロン繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
これらを用いたシート状物と平面状発熱体を用いることにより、軽量で圧縮強度の高いポリオレフィン系樹脂複合発泡体を得ることができる。
【0046】
又、シート状物の材料が、鉄製シート、アルミニウム、チタン、銅等の非鉄金属シート等の金属であってもよい。鉄製シートには亜鉛鋼板や亜鉛アルミニウム合金鋼板、ステンレス板等が含まれる。このような金属製のシート状物は厚み0.01〜2mmの圧延された薄いシートが好適に使用される。これらの金属はメッキ、有機塗料、無機塗料で任意に塗装されていてもよい。
【0047】
金属製シート状物を使用して得られるポリオレフィン系樹脂複合発泡体は軽量の金属複合板となり得る。このものは厚さ1〜5mmの金属板や、中間層としてポリエチレン層などを配した金属複合板と比較して、実用上極端な強度低下を来たさず、軽量化と低コスト化が図れるという利点がある。又、この複合発泡体は発泡性複合シートを発泡させて製造されるので、発泡体に後から金属シート状物を貼付した金属複合板と比較して表面平滑性が極めて優れたものとなる。
【0048】
発泡性シートの少なくとも一面にシート状物を積層する方法は特に限定されないが、例えば、(イ)一旦冷却固化した発泡性シートにシート状物を加熱しながら貼付する方法、(ロ)発泡性シートを溶融状態になるまで加熱し、これをシート状物に熱融着する方法などが挙げられる。上記(イ)の方法によると発泡性複合シートの厚み精度が確保されるので最も好ましい。(ロ)の熱融着による方法では、例えば、Tダイから押し出された直後の溶融状態の発泡性シートの両面に、線状材が貼付されたシート状物を軽く積層した状態で一対の冷却ロールの間を通過させ、ロールの押圧力で両者を一体化する方法が好ましい。
【0049】
尚、発泡性シートとシート状物を積層して一体化するとは、発泡性シートが貼付されたシート状物を両者の界面で剥離しようとした場合に、高い割合で材料破壊が生じる程度に両者が固着されている状態を意味するものとする。
【0050】
このようにして得られた発泡性複合シートは適切な温度条件で加熱することにより、常圧もしくは一定加圧下で所望の発泡倍率に発泡させることができる。加熱は通常、熱分解型化学発泡剤の分解温度から、分解温度+100℃までの温度範囲で行われる。特に連続式発泡装置としては、加熱炉の出口側で発泡体を引き取りながら発泡させる引き取り式発泡機の他、ベルト式発泡機、縦型もしくは横型発泡炉、熱風恒温槽、オイルバス、メタルバス、ソルトバスなどの熱浴が用いられる。
【0051】
本明細書において「アスペクト比(Dz/Dxy)」とは、樹脂発泡体中の気泡における定方向最大径の比の個数(算術)平均値であり、以下のようにして求められる。図4及び図5はアスペクト比を求める方法を説明するための説明図であり、図5は図4のA部拡大図である。図4において樹脂発泡体1の厚み(Z)方向に平行な一部の断面部分1z の10倍拡大写真を撮り、図5に示すように無作為に選ばれる少なくとも50個の気泡の定方向最大径を下記Dz、Dxyの2方向で測定し、個数平均値を算出する。
Dz:樹脂発泡体中の気泡のz方向に平均な最大径
Dxy:樹脂発泡体中の気泡の発泡体幅又は長さ方向、即ちz方向に垂直な面(xy)方向と平行な最大径
【0052】
気泡毎のDz/Dxyの平均値が1よりも大きい場合は高い圧縮強度を有する発泡体となるが、これは紡錘形の長軸方向(z方向)に力を受けるからである。気泡毎のDz/Dxyの平均値は1.2以上であることが好ましく、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上である。1.2よりも低いと気泡はほぼ球形となり、紡錘形状に起因する圧縮強度の向上が得られない。
【0053】
(作用)
本発明の暖房機能付床下地材は樹脂発泡体の表面側に平面状発熱体が積層されているので、全面が平均した温度で床暖房することができ、発泡体により床下地の凹凸を吸収する不陸調整が可能である。又、樹脂発泡体が用いられているので全体が軽量であり、耐熱性、断熱性、防音性、制震性も優れるので、床下地材として好適に使用できる。又、表面側に畳表を積層すれば暖房用の畳床材として和室に使用することもできる。
【0054】
樹脂発泡体と平面状発熱体を樹脂発泡体の製造時に貼り合わせることにより、1工程で一体成形でき能率的に製造することができる。
【0055】
発泡体の気泡が厚さ方向に長い紡錘形であるから圧縮強度が高く、ポリオレフィン系樹脂を用いた発泡体を床下地材として使うことが可能となった。
【0056】
樹脂発泡体が、ポリオレフィン系樹脂を変性用モノマーと反応させた変性樹脂に発泡剤を添加した発泡シートが加熱発泡されたものであり、これにシート状物が積層されたものである。そのために、加熱発泡の際に発泡シートの面内方向への発泡が抑制されるとともに、発泡シートの厚み方向へ発泡が導かれるために必要な溶融流動性が維持され、同時に発泡シートの溶融状態において発泡可能な程度の樹脂粘度が付与される。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
(1)発泡性樹脂組成物の調整
(i)変性ポリオレフィン系樹脂の調整
▲1▼変性用スクリュー押出機
ポリオレフィン系樹脂を変性用モノマーと反応させて変性樹脂とするためにスクリュー押出機(プラスチック工学研究所製,BT40,同方向回転2軸スクリュー型)を用いた。これはセルフワイピング2条スクリューを備え、L/Dは35、Dは39mmである。シリンダーバレルは押出機の上流から下流側へ第1〜6バレルからなり、ダイは3穴ストランドダイで、揮発分を回収するため第4バレルに真空ベントが設置されたものである。
【0058】
操作条件を次の通りに設定した。
・ダイ設定温度:220℃
・スクリュー回転数:150rpm
▲2▼ポリオレフィン系樹脂:ポリプロピレンランダム共重合体(日本ポリケム社製,商品名「EX6」,メルトイッデックス1.8,密度0.9g/cm3 )を使用した。
▲3▼変性用モノマー:ジビニルベンゼン(ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5重量部)
▲4▼有機過酸化物:2,5−ジメチルェ2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(ポリオレフィン系重量部100重量部に対して0.1重量部)
【0059】
変性用スクリュー押出機の後端ホッパーからポリオレフィン系樹脂を供給量10kg/hで投入し、第3バレルからジビニルベンゼンと有機過酸化物の混合物を注入し、これらを溶融混練して変性樹脂を得た。この際、押出機内で発生した揮発分は真空ベントから真空排出した。
得られた変性樹脂をストランドダイから吐出して水冷し、ペレタイザーで切断して変性樹脂のペレットを得た。
【0060】
(ii) 発泡性シートの調整
発泡剤混練用スクリュー押出機:
変性樹脂と発泡剤を混練するためにスクリュー押出機(日本製鋼所社製,商品名「TEX−44型」,同方向回転2軸スクリュー型)を使用した。これはセルフワイピング2条スクリューを備え、L/Dは45、Dは47mmである。シリンダーバレルは押出機の上流から下流側へ第1〜12バレルからなり、成形ダイは7穴ストランドダイである。発泡剤を供給するために第6バレルにサイドフィーダーが設置され、揮発分を回収するため第11バレルに真空ベントが設置されている。
【0061】
温度設定区分とシリンダーバレル温度設定は次の通りとした。
・第1バレル:常時冷却
・第1ゾーン:第2〜4バレル 150℃
・第2ゾーン:第5〜8バレル 170℃
・第3ゾーン:第9〜12バレル 180℃
・第4ゾーン:ダイ及びアダプター部 160℃
・スクリュー回転数:40rpm
【0062】
前記変性樹脂とホモタイプのポリプロピレン(日本ポリケム社製,商品名「FY4」,メルトイッデックス5.0,密度0.9g/cm3 )をそれぞれ10kg/hの供給量で上記発泡剤混練用スクリュー押出機に供給した。発泡剤(アゾジカルボンアミド)は1.5kg/hの供給量でサイドフィーダーから押出機に供給し、発泡性樹脂組成物を得た。上記発泡性樹脂組成物をTダイから押し出し、幅350mm、厚み3.1mmの発泡性シートを得た。
【0063】
(2)発泡性複合シートの作製
上記発泡性シートの両面にポリエチレンテレフタレート繊維よりなる不織布(東洋紡績社製,商品名「スパンボンド エクーレ 6301A」,坪量30g/m2 ,引張強度;縦1.6kg/cm,横1.2kg/cm)を積層し、プレス成形機を用いて180℃、200kgf/cm2 で賦形し、厚み1mmの発泡性複合シートを得た。この発泡性複合シートから縁部を取り除き、一辺300mmの正方形の試料を得た。
【0064】
(3)発泡
得られた試料を230℃のオーブン中で約5分間加熱して発泡させ、複合発泡体を得た。その表面側に変性シリコーン系接着剤を塗布し、炭素系PTCサーミスタ2(オーシージャパン社製,商品名「エマールヒータ」,1辺300mmの正方形)を接着した。
【0065】
図1は上記の方法で得られた暖房機能付床下地材の断面図であり、1は複合発泡体、2は不織布、3は平面状発熱体(炭素系PTCサーミスタ)である。
【0066】
(実施例2)
発泡性複合シートの表面側に不織布を積層しなかったこと以外は実施例1と同様にして発泡性複合シートを作製した。
図2は上記発泡性複合シートの断面図であり、複合発泡体1の裏面に不織布2が、表面側に平面状発熱体3が積層されたものである。
【0067】
(実施例3)
図3は実施例2の複合発泡体表面側の平面状発熱体3の上に畳表4が積層され、畳床暖房用とした実施例を示す断面図である。
【0068】
(実施例4)
図6は暖房機能付床下地材の製造において、押出機6のダイ61から押出成形された発泡性シート10の片面に不織布2を、他の面に平面状発熱体3を同時に供給し、ピンチロール7により貼り合わせて積層する方法を示す略図である。
【0069】
(比較例1)
図7に示すように、発泡体としてポリスチレン発泡体11(厚さ45mm,発泡倍率15倍)の上面に溝12を設け、この中に温水用配管9を配置し、その表面に均熱板として使用されているアルミニウム箔5を積層接着した。
【0070】
〔性能評価〕
実施例1、2及び比較例1で得た暖房機能付床下地材の性能を下記の項目で評価した。
(1) 発泡倍率の測定
複合発泡体よりシート状物をカッターで削り取った後、JIS K 6767に準じて発泡体の発泡倍率を測定した。
(2) 圧縮強度の測定
複合発泡体をJIS K 6767に従い、厚み方向に圧力を加えた際の25%圧縮強度を測定した。
(3) 表面平滑性
表面に手を触れ、平滑さを感じたものは○を、平滑さを感じなかったものは×で表した。
(4) 表面の温度ムラ
輻射温度測定器を使用して多数の位置で表面温度を測定し、最高温度の部分と最低温度の部分との温度差を温度ムラとして表した。
以上の結果を表1に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1から明らかな通り、実施例1、2で得られた暖房機能付床下地材は、平面状発熱体を使用しない比較例1のものよりも圧縮強度、表面平滑性、温度分布において良好な性能を示している。
【0073】
【発明の効果】
本発明の暖房機能付床下地材は以上の構成であるから、ムラのない床暖房が可能であり、樹脂発泡体により床下地によくなじんで段差も床鳴りもない。更に圧縮強度が高く、表面が平滑であるから歩行感もよい。
又、発泡体が変性ポリオレフィン系樹脂であるから軽量であり、防音性、制震性もよいので床下地材として好適であり、耐熱性、断熱性もよいので床暖房の昇温速度が早く、熱エネルギー効率が高く、無駄な電力消費がない。
樹脂発泡体と平面状発熱体を製造時に貼り合わせことができるので、連続生産することができ、安定した品質のもが得られる。
特に、平面状発熱体の上に畳表を積層すれば従来の畳と比べ、軽量であるから運搬、生産時や施工時の取り扱いが容易である。畳芯材として一体成形できるので寸法取りが簡素化されて時間とコストが削減される。更に、縫い合わせ加工が不要で裁断作業が容易である、などの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の暖房機能付床下地材の実施例を示す断面図。
【図2】本発明の暖房機能付床下地材の他の実施例を示す断面図。
【図3】本発明の暖房機能付床下地材と畳表を用いた実施例を示す断面図。
【図4】アスペクト比を求める方法を説明するための説明図。
【図5】図4のA部拡大図。
【図6】本発明暖房機能付床下地材の製造方法の例を示す略図。
【図7】従来の暖房機能付床下地材の例を示す断面図。
【符号の説明】
1 :複合発泡体
2 :不織布
3 :平面状発熱体
4 :畳表
5 :アルミニウム箔
6 :押出機
7 :ピンチロール
8 :暖房機能付床下地材
9 :温水用配管
10:発泡性シート
11:ポリスチレン発泡体
12:溝
61:ダイ
Claims (5)
- 表面および裏面が平坦な樹脂発泡体と、樹脂発泡体の表面側および裏面側に積層されたシート状物と、樹脂発泡体の表面側のシート状物に積層されかつ表面および裏面が平坦な平面状発熱体とからなり、
樹脂発泡体が、ポリオレフィン系樹脂を変性用モノマーと反応させた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、シート状に成形された発泡性シートが加熱により発泡することで得られたものであり、
シート状物は、予め発泡性シートに積層されることで、発泡する際に生じる面内方向の発泡力を抑制し、平面状発熱体は、発泡性シートが加熱されて得られた樹脂発泡体に連続して積層されて一体化されていることを特徴とする暖房機能付床下地材。 - 表面および裏面が平坦な樹脂発泡体と、樹脂発泡体の表面側に積層されかつ表面および裏面が平坦な平面状発熱体と、樹脂発泡体の裏面側に積層されたシート状物とからなり、
樹脂発泡体が、ポリオレフィン系樹脂を変性用モノマーと反応させた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、シート状に成形された発泡性シートが加熱により発泡することで得られたものであり、
平面状発熱体およびシート状物は、予め発泡性シートに積層されることで、発泡する際に生じる面内方向の発泡力を抑制していることを特徴とする暖房機能付床下地材。 - 平面状発熱体の表面側に畳表が積層されていることを特徴とする請求項1又は2記載の暖房機能付床下地材。
- 樹脂発泡体が、JIS K 7220に準拠して測定された圧縮弾性率が4kg/cm2 以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の暖房機能付床下地材。
- 樹脂発泡体内の気泡のアスペクト比(Dz/Dxy)の平均値が1.2以上2.2以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の暖房機能付床下地材。
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