JP4287373B2 - 多孔質膜 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は多孔質膜、特に医療用分離膜として有用な多孔質膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜は各分野で広く使用されている。このうち、医療用の分離膜、特に血液透析膜には、セルロース系等の天然高分子膜や、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアリルエーテルスルホン、ポリエステル系ポリマーアロイ等の合成高分子膜がある。
合成高分子膜の中でも、ポリアミドを使用した膜は、生体適合性に優れる点、人体への悪影響が懸念される環境ホルモンであるビスフェノールAを構成成分として含まない点等から、広く医療用途等に使用されている。
ところで、医療用分離膜においては必ず滅菌処理が行われるが、このうち、熱水で処理するオートクレーブ滅菌(AC滅菌)は、安全性が高いこと等から滅菌法の一つとして広く用いられている。しかしながら、ポリアミド膜は一般に吸水性が高く、吸水状態では力学特性が低下し、特に熱水で処理した場合は寸法や構造が変化することから、AC滅菌は困難であった。
特開平7−256067号公報には、含水率8wt%以上、かつ結晶化熱が30mJ/mg以下であるポリアミドからなる選択透過膜が記載されている。当該公報では、ポリアミド膜において、含水率が高くなると含水時の耐熱性が下がるためにAC滅菌耐性において不利になることを認めているが、含水率の高いポリアミドにおいても乾燥時の樹脂のガラス転移点が130℃以上であれば121℃でのAC滅菌が可能となるとしている。しかしながら、本発明者らの研究によれば、このようなポリアミドを用いて製造した膜においても、AC滅菌条件下での寸法安定性等は十分であるとは言えず、AC滅菌により膜性能が著しく低下してしまうことが判明した。
上記事情に鑑み、本発明の目的は、ポリアミドを主たる素材に用いて、熱水処理においても寸法変化が極めて小さく、特にAC滅菌処理可能な医療用分離膜等として有用である多孔質膜を提供することにある。
【発明の開示】
【0003】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、平衡吸水率の低いポリアミドを膜の素材に使用することで耐熱水性に優れた膜を得ることが可能であることを見出した。そして、特に、平衡吸水率が10%以下のポリアミドを主たる素材とした中空糸膜からなる医療用分離膜は、AC滅菌条件下において、高い寸法安定性を有することを突き止め、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
(1)平衡吸水率が10%以下のポリアミドを主たる素材として使用した中空糸膜であって、前記平衡吸水率が10%以下のポリアミドが、60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸成分と、60〜100モル%が1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンであるジアミン成分とからなるポリアミドである、中空糸膜、
(2)素材中の、平衡吸水率が10%以下のポリアミドの含有割合が50〜100重量%である、上記(1)記載の中空糸膜、
(3)素材がさらにポリビニルピロリドンを含む、上記(1)記載の中空糸膜、
(4)ジアミン成分中の1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとのモル比が100:0〜10:90である、上記(1)記載の中空糸膜、
(5)平衡吸水率が10%以下のポリアミドが、その分子鎖末端基の10%以上が末端封止剤により封止されている、上記(1)記載の中空糸膜、
(6)末端封止剤が安息香酸である、上記(5)記載の中空糸膜、
(7)平衡吸水率が10%以下のポリアミドのガラス転移点が60℃以上である、上記(1)記載の中空糸膜、
(8)平衡吸水率が10%以下のポリアミドの濃硫酸中30℃で測定した極限粘度が0.4〜3.0dl/gである、上記(1)記載の中空糸膜、
(9)膜厚が3〜2000μmである、上記(1)記載の中空糸膜、
(10)緻密層と支持層とからなる非対称膜である、上記(1)記載の中空糸膜、
(11)緻密層の表面の平均粗度が1〜10nmである、上記(10)記載の中空糸膜、
(12)支持層の表面が平均孔径0.01〜100μmの孔を有している、上記(10)記載の中空糸膜、
(13)β2−ミクログロブリンクリアランスが35mL/min以上である、上記(1)記載の中空糸膜。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明の多孔質膜は、平衡吸水率が10%以下のポリアミドを主たる素材として使用したことが特徴である。
ここで、「平衡吸水率」とは、後述の[実施例]中の(i)平衡吸水率で示される方法で測定される値を指す。また、「平衡吸水率が10%以下のポリアミドを主たる素材として使用する」とは、多孔質膜の素材(即ち、多孔質膜の骨格を形成するポリマー材料)が、平衡吸水率が10%以下のポリアミドからなるか、若しくは、当該ポリアミドとその他のポリマー(任意成分)からなることを意味する。
本発明で使用する平衡吸水率が10%以下のポリアミドは、平衡吸水率が7%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましい。
本発明において、平衡吸水率が10%以下のポリアミドは、例えば、60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸成分と、60〜100モル%が1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンであるジアミン成分とからなるポリアミドによって実現される。ジカルボン酸成分におけるテレフタル酸の量が60モル%未満であったり、ジアミン成分における1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンの量が60モル%未満である場合、そのようなポリアミドを用いた多孔質膜の耐熱水性は低下する傾向となる。
該ポリアミドにおいて、ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の量は75〜100モル%であるのが好ましく、90〜100モル%であるのがより好ましい。ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の量がかかる好ましい範囲にあることで、得られるポリアミドは耐熱性、力学特性等においてより優れたものとなり、目的の多孔質膜における熱水処理時の寸法安定性が一層向上する。また、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等を含有することができ、これらは1種または2種以上であってもよい。
一方、該ポリアミドにおいて、ジアミン成分中の1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンの量は75〜100モル%であるのが好ましく、90〜100モル%であるのがより好ましい。ジアミン成分中の1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンの量がかかる好ましい範囲にあることで、得られるポリアミドは低吸水性、耐熱性等においてより優れたものとなり、目的の多孔質膜における熱水処理時の寸法安定性が一層向上する。また、1,9−ノナンジアミン(NMDA)および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン(MODA)において、その割合は、NMDA:MODA(モル比)が、100:0〜10:90であるのが好ましく、95:5〜20:80であるのがより好ましく、90:10〜40:60がとりわけ好ましい。また、1,9−ノナンジアミンおよび2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外のジアミン成分としては、例えば、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖脂肪族ジアミン;2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐鎖状ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミン等を含有することができ、これらは1種または2種以上であってもよい。これらのうち、得られるポリアミドの各種特性が優れるという理由から、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンが好ましい。
また、該ポリアミドは、分子量調節の目的でその分子鎖末端基の10%以上が末端封止剤により封止されているのが好ましく、その末端基の封止率は40%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのがさらに好ましく、70%以上であるのがとりわけ好ましい。末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止末端の安全性等の点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取り扱いの容易さ等の点から、モノカルボン酸がより好ましい。その他、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等も使用できる。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイン酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらのうち、反応性、封止末端の安全性、価格等の点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が特に好ましい。
末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらのうち、反応性、高沸点、封止末端の安定性および価格等の点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが特に好ましい。
該ポリアミドは、結晶性ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができる。例えば、酸クロライドとジアミンを原料とする溶融重合法または界面重合法;ジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、固相重合法、溶融押出機重合法等の方法により製造することが可能である。ポリアミドを製造する際に、重縮合速度の増加および重合時に生成したポリアミドが劣化するのを防止する目的で、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、またはそれらの塩、さらにはそれらのエステル等のリン系触媒を反応系に添加するのが好ましい。このうち、生成するポリアミドの品質の点から、次亜リン酸誘導体(次亜リン酸塩、次亜リン酸エステル等)が好ましく、特に、次亜リン酸ナトリウムが価格および取扱いの容易さから好ましい。これらのリン系触媒の添加量は、ジカルボン酸およびジアミンの合計重量に対して0.01〜5重量%であるのが好ましく、0.05〜2重量%であるのがより好ましく、0.07〜1重量%であるのがとりわけ好ましい。また、上記の末端封止剤の使用量は、用いる末端封止剤の反応性、沸点、反応装置、反応条件等によって変化するが、通常、ジカルボン酸とジアミンの総合計モル数に対して0.1〜15モル%の範囲で用いることができる。
本発明で使用するポリアミドは、乾燥時のガラス転移点が高いほうがよく、ガラス転移点が60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがとりわけ好ましい。ガラス転移点が60℃以上であることで、目的の多孔質膜は耐熱性においてより優れたものになり、熱水処理時の寸法安定性が一層向上する。ここで、ガラス転移点は、DSC(メトラー社製:DSC30)を用い、30℃から200℃まで10℃/分で昇温したときのガラス転移温度付近に観察される2つの変曲点を測定し、その中間温度とした。
また、本発明で使用するポリアミドは濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.4〜3.0dl/gの範囲であるのが好ましく、0.6〜2.0dl/gの範囲であるのがより好ましく、0.8〜1.8dl/gの範囲であるのがとりわけ好ましい。極限粘度[η]が上記範囲より低い場合、目的の多孔質膜の機械的強度が低下する傾向がある。また、極限粘度[η]が上記範囲より高い場合、後述の製膜原液作製時の溶媒への溶解性が低下したり、製膜原液の粘度が上昇して、製膜性が低下する傾向となる。
なお、ここでの極限粘度[η]は、ポリアミドを濃硫酸に溶解し、濃度が0.05、0.1、0.2、0.4g/dlの試料溶液をそれぞれ調製し、各濃度の試料溶液の30℃における流下時間(秒)を測定し、下記試料の固有粘度(ηinh)を以下の式から求め、これを濃度0に外挿した値である。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c
〔式中、ηinhは固有粘度(dl/g)、t0は溶媒の流下時間(秒)を表し、t1は試料溶液の流下時間(秒)を表し、cは溶液中の試料の濃度(g/dl)を表す。〕
本発明の多孔質膜の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法で好適に製造することができる。
先ず、ポリマーと溶剤からなる製膜原液、若しくは、これらにさらに必要に応じて添加剤を配合した製膜原液を作製する。ここで用いるポリマーは平衡吸水率が10%以下のポリアミドだけでもよく、必要に応じて他のポリマーを加えてもよい。製膜原液における当該ポリアミドの濃度組成は、製膜可能でかつ膜として性能を有する範囲であればよく、5〜50重量%が好ましい。特に、医療用分離膜(特に中空糸膜からなるもの)とする場合、高い透過性と機械的強度を兼ね備えたものが得られるので、ポリアミドの濃度は10〜30重量%が好ましい。一方、親水性付与、生体適合性向上、粘度向上等の目的で他のポリマーを添加する場合、製膜原液中に0〜20重量%加えてもよく、好ましくは0〜10重量%加えてもよい。該ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエステル、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールの共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロースの水溶性誘導体、ポリソルベート、ポリメトキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート等の群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
溶剤は、ポリマー、又は、ポリマー及び添加剤を溶解するものであればいずれでもよく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルモルホリンオキサイド(NMMO)等であり、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
添加剤は、製膜原液の相分離温度および粘度の調整や製膜性の向上のために添加するものであり、例えば、水等が挙げられる。水の濃度範囲は製膜原液中0〜10重量%であり、好ましくは0〜5重量%である。また、製膜原液の溶解状態の制御、製膜性の向上という目的から塩等を添加してもよく、該塩の種類としては、例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、酢酸リチウム及び硝酸リチウムから選ばれる1種または2種以上を挙げることができる。該塩の添加量はポリマー、溶剤、添加剤の組み合わせにより随時加えればよい。
製膜原液は、ポリマーと溶剤(これらと必要に応じて添加する添加剤)を高温(通常60〜150℃)下で混合して調製する。そして、調製した製膜原液を、例えば中空糸の場合は、二重環状ノズルから内部に後述する凝固液または非凝固性の溶媒(製膜原液を凝固させない溶媒)等の中空形成剤を注入しながら二重環状ノズルから押出し、必要に応じて凝固液中に導入することにより製膜する。製膜原液への凝固液の接触は、中空糸の内側のみ、外側のみ、両側のいずれであってもよい。また、平膜の場合は製膜原液をキャスト板上に流延させ凝固液に浸漬させること等により製膜することができる。
凝固液としては、膜素材となるポリマーを凝固させる作用を有し、かつ製膜原液の溶媒と混和性があるものであれば特に制限なく用いることができる。凝固液の種類としては、例えば、水;NMP、DMAc、DMSO、DMF、NMMO等の水溶性溶媒と水との混合物等を挙げることができる。また、必要に応じて、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、酢酸リチウム、硝酸リチウム等の塩;PVP、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエステル、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールの共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロースの水溶性誘導体、ポリソルベート、ポリメトキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート等の高分子類を含有する水溶液等を使用することもできる。なお、製膜原液への凝固液の接触が中空糸の内側のみの場合、中空糸の外側には窒素、空気等の気体またはヘキサン等の非凝固性の溶媒等を用いることができ、該凝固液の接触が中空糸の外側のみの場合、中空糸の内側には窒素、空気等の気体またはヘキサン等の非凝固性の溶媒等を用いることができる。凝固液と接触後の膜は、水洗され、必要に応じて乾燥、熱処理が施される。そして、公知の方法でモジュールに組み込まれて、各種の工業用又は医療用膜として使用される。
本発明の多孔質膜における主たる素材(ポリマー)は、平衡吸水率が10%以下のポリアミド(例えば、60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸成分と、60〜100モル%が1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンであるジアミン成分とからなるポリアミド)であり、他のポリマーとしてPVP、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエステル、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールの共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロースの水溶性誘導体、ポリソルベート、ポリメトキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート等の群から選択されるポリマーが含まれていてもよい。
多孔質膜を構成する全ポリマーのうち、該ポリアミドの含有割合は50〜100重量%であるのが好ましく、60〜100重量%であるのがより好ましく、70〜100重量%であるのがさらに好ましい。
本発明の多孔質膜は中空糸膜であってもよく平膜であってもよいが、単位容積当たりの膜面積を大きくでき、小型化が可能なことから、医療用分離膜としては中空糸膜が好ましい。中空糸膜の場合、膜厚は曳糸性および機械的強度の確保ならびに膜の透過性の観点から3〜2000μmの範囲内にあることが好ましく、10〜1000μmの範囲内にあることがより好ましく、10〜400μmの範囲内にあることがさらに好ましい。また、中空糸膜の外径は、好ましくは40〜5000μm、より好ましくは40〜3000μm、さらに好ましくは100〜1000μmの範囲内である。なお、平膜の場合、膜厚は3〜2000μmの範囲内が好ましく、10〜1000μmの範囲内がより好ましく、10〜400μmの範囲内がとりわけ好ましい。
本発明の多孔質膜における空孔率(%)は、膜の透過性と機械的強度の観点から、20〜90%が好ましく、より好ましくは60〜90%である。なお、ここでの空孔率(%)は、以下の式で計算される値である。
空孔率(%)
={(WW−WD)/ρW}/{WD/ρE+(WW−WD)/ρW}×100
[式中、WWは含水膜の重量、WDは乾燥膜の重量、ρWは水の比重、ρEは多孔質膜を構成するポリマーの比重を表す。]
また、空孔の大きさは、多孔質膜の用途によっても異なるが、平均孔径が0.2〜50μmの範囲内にあるのが好ましく、0.3〜3μmの範囲内にあるのがより好ましい。なお、ここでいう、平均孔径とは、製膜方向(製膜原液の押出方向又は流延方向)に垂直な断面の電子顕微鏡写真(最大倍率6000倍)において、膜表面に対して垂直な直線を引き、当該直線上にあるすべての空孔について、その直線が空孔を通過した部分の長さを測定し、その測定した長さを平均した値である。
本発明の多孔質膜の構造は、均質(多孔質構造)膜であっても非対称(多孔質構造)膜であってもよいが、医療用分離膜である場合、分画性能をきめる緻密層と、機械的強度を有しつつ高い透過性を有し、かつ、上記緻密層の支持体としても働く支持層とからなる非対称膜が好ましく、さらに中空糸膜からなる医療用分離膜である場合、内層が緻密層、外層が支持層であることが好ましい。なお、汚染物質等の侵入を防止するために、最外層を緻密にする、即ち、緻密層(内層)−支持層(中間層)−緻密層(外層)の膜構造にすることも可能である。非対称膜を構成する支持層の構造としては、例えば、内層である緻密層から外側に向かって孔径が増大する網目状傾斜構造、孔径が膜厚方向全域にわたって概ね均一である網目状均一構造、指状の粗大孔を有するフィンガーボイド構造等が挙げられるが、これらの中でも、医療用分離膜の場合には網目状傾斜構造であることが好ましい。
本発明において、多孔質膜を非対称膜とする場合、緻密層の厚みは、0.05〜10μm程度が好ましく、0.1〜2μm程度がより好ましい。また、緻密層の平均孔径は1〜2000nmの範囲にあるのが好ましく、5〜500nmの範囲にあるのがより好ましい。なお、ここでいう緻密層の平均孔径とは、製膜方向(製膜原液の押出方向又は流延方向)に垂直な断面の電子顕微鏡写真(最大倍率60000倍)において、膜表面に対して垂直な直線を引き、緻密層中の当該直線上にある全ての空孔についてその直線が空孔を通過した部分の長さを測定し、その測定した長さを平均した値である。また、緻密層の表面は、実質的に凹凸がなくても、凹凸があってもよいが、緻密層の構造は分画性に影響する箇所であり、高い透過性を得るためには表面が複数の突起による凹凸を有する状態に形成されているのが好ましい。特に、医療用分離膜として用いられる場合、当該緻密層の表面の平均粗度は1〜10nmの範囲内にあることが好ましく、3〜10nmの範囲内にあることがさらに好ましい。なお、ここで述べている平均粗度は、原子間力顕微鏡装置(例えば、デジタルインスツルメント社製 Dimension3100)を用いて、表面(観察領域は5μm角)の形状をタッピングモードで、測定周波数0.5Hzで測定し、得られた測定データを、装置に付属のデータ処理ソフトウエアにより解析して求められる。すなわち、装置の測定ソフトウエアをOff−line Modeに切り替えModify/Flatten命令により、データの大きなうねりを平滑化した後、Analysis/Section命令によって、測定データから断面形状を得て、その際に計算される平面方向長さ5μmにおける粗さ(Ra)を平均粗度とする。
また、本発明の多孔質膜を非対称膜(緻密層と支持層からなる膜)とする場合、支持層の平均孔径は0.2〜50μmの範囲内にあるのが好ましく、0.3〜3μmの範囲内にあるのがより好ましい。なお、ここでいう平均孔径とは、製膜方向(製膜原液の押出方向又は流延方向)に垂直な断面の電子顕微鏡写真(最大倍率6000倍)において、膜表面に対して垂直な直線を引き、支持層中の当該直線上にあるすべての空孔について、その直線が空孔を通過した部分の長さを測定し、その測定した長さを平均した値である。また、支持層の表面は、高い拡散透過性を保持するために、支持層の構造の一部が開孔してできた平均孔径0.01〜100μmの孔を有していることが好ましく、平均孔径0.1〜10μmの孔を有していることがより好ましい。なお、ここで述べている、支持層表面の孔の平均孔径は、表面の電子顕微鏡写真(最大倍率6000倍)において、孔の最も長い径と最も短い径を測定し平均した値である。
本発明の多孔質膜は、高い分画性、高い透過性を有しており、特に医療用分離膜として有用であり、中でも血液透析膜として極めて有用である。本発明の膜は、血液と接触させた場合、実用上問題になるような溶血や血栓を生じず、医療用として十分な血液適合性を有する。本発明の多孔質膜を血液透析膜として用いた場合、アルブミンの高い阻止率と尿素の高い透過性を両立し得、好ましくはアルブミンの高い阻止率と尿素及びβ2−ミクログロブリン(β2−MG)の高い透過性を両立し得る。具体的には、アルブミン阻止率は好ましくは90%以上を達成でき、より好ましく97%以上、さらに好ましくは99%以上を達成できる。また、尿素のクリアランスは125mL/min以上を達成でき、より好ましくは175mL/min以上、さらに好ましくは185mL/min以上を達成できる。β2−MGのクリアランスは好ましくは35mL/min以上を達成でき、より好ましくは45mL/min以上を達成できる。なお、ここで示した性能(高いアルブミンの阻止率、高い尿素透過性、高いβ2−MG透過性)は、いずれも、後述の実施例における、(iv)尿素のクリアランス、β2−MGクリアランス及びアルブミンの阻止率の測定法で計った値である。
本発明の多孔質膜は、従来のこの種の多孔質膜に比べて、主たる素材のポリアミドの吸水性が低いので、良好な耐熱水性を有する。従って、特に医療用分離膜として用いる場合、AC滅菌条件下において以下の優れた特徴が現れる。
(1)熱水処理による寸法変化が小さい。
(2)熱水処理しても膜同士の膠着は起こらない。
(3)熱水処理により膜性能は変わらない。
【実施例】
【0005】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。なお、平衡吸水率、糸長変化率、内径変化率、膜厚変化率および膜性能は以下の方法で評価した。
(i)平衡吸水率
チップ状樹脂を縦73.0mm×横12.5mm×厚み2.0mmの短冊状に射出成形した。これを128℃、2時間熱水中で加熱した後、25℃、2日間水中で静置した。熱水処理前後の重量を測定した。
平衡吸水率[%]=(W−D)/W×100
W:熱水処理後の重量
D:熱水処理前の重量
(ii)糸長変化率
含水した中空糸を長さ20cmに切り取り、121℃の熱水中に20分間静置(AC滅菌)後再度糸の長さを測定した。
糸長変化率[%]=(L−20)/20×100
L:熱水中に静置後の中空糸の長さ(cm)
(iii)内径変化率、膜厚変化率
121℃の熱水中に20分間静置(AC滅菌)前後の中空糸膜をカミソリで切断し、断面の形状を光学顕微鏡で観察し、内径、膜厚を測定した。
内径変化率[%]=(Li,a−Li,b)/Li,b×100
膜厚変化率[%]=(Lt,a−Lt,b)/Lt,b×100
Li,a:熱水静置(AC滅菌)前の中空糸内径
Lt,a:同中空糸厚み
Li,b:熱水中に静置(AC滅菌)後の中空糸内径
Lt,b:同中空糸厚み
(iv)尿素のクリアランス(UREA CL)、β2−MGクリアランス(β2−MG CL)、アルブミンの阻止率(Rej):
ダイアライザー性能評価基準(佐藤威他:各種の血液浄化法の機能と適応−血液浄化器の性能評価法と機能分類、透析会誌29(8):1231〜1245頁、1996年発行)に従い、牛血系(濾過流量QF’=10mL/min/m2)で測定した。膜面積は1.6m2とした。
【実施例1】
【0006】
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジアミン成分としてNMDAとMODA、末端封止剤として安息香酸(モル比;テレフタル酸:安息香酸:NMDA:MODA=1.97:0.06:1:1)、触媒として亜リン酸(原料に対して0.1重量%)から得られた、極限粘度[η]が1.37dl/g、ガラス転移点が125℃のポリアミド(PA9MT)の平衡吸水率を測定した。次いで、このポリアミド15重量%、PVP(BASF社、K−90)3重量%、水2重量%、LiCl5重量%、NMP75重量%を含有する製膜原液を調製した。この溶液を60℃で紡糸口金より、中空形成剤として水を用いて空気中に吐出させ、水中に導いて固化、水洗、乾燥を行った。
得られた中空糸束から中空糸1を抜き取り長さ20cmに切り取った。残りの中空糸束から中空糸2を抜き取り公知の方法によりモジュール化し、モジュール1、モジュール2を得た。さらに残りの中空糸束から中空糸3を抜き取り、内径、膜厚及び緻密層内表面の平均粗度の測定、並びに、膜構造の観察を行った。走査型電子顕微鏡(日立サイエンスシステムズ社製、S−3500N)で膜の構造を観察したところ、内層は緻密層であり、外層は、上記緻密層の支持体としても働く、上記緻密層から外側に向かって孔径が増大する網目状傾斜構造を持つ支持層であり、支持層の外表面には平均孔径が1.0μmの孔が形成されていた。また緻密層内表面の平均粗度は5.1nmであった。膜構造の詳細(支持層の構造、支持層外表面の平均孔径、緻密層内表面の平均粗度)および中空糸の寸法(外径、内径、膜厚)を表3に示す。
中空糸1とモジュール2を20分間、121℃の水中で静置(AC滅菌)した。熱水処理(AC滅菌)後の中空糸1を用いて糸長、内径、膜厚を測定した。
熱水処理(AC滅菌)前のモジュール1、処理後のモジュール2を用いて膜性能(尿素のクリアランス、β2−MGクリアランスおよびアルブミンの阻止率)を測定した。この時、実用上問題になるような溶血や血栓は生じなかった。
熱水処理(AC滅菌)前後の膜性能、熱水処理による寸法(糸長・内径・膜厚)の変化率を表4に記す。なお、熱水処理(AC滅菌)による中空糸膜同士の膠着は起こらなかった。
【実施例2〜9】
【0007】
実施例1と同様にして、表1に示すモル比のジカルボン酸成分(テレフタル酸)、ジアミン成分(NMDA、MODA)および末端封止剤(安息香酸)から得られたポリアミドの平衡吸水率を測定した。次いでこのポリアミドを用いて、表2に示す各成分を所定の重量%で配合して製膜原液を調製し、この製膜原液から中空糸束を作製した。次いで、実施例1と同様に、この中空糸束から得られた中空糸およびモジュールについて、膜構造の詳細(支持層の構造、支持層外表面の平均孔径、緻密層内表面の平均粗度)および中空糸の寸法(外径、内径、膜厚)を表3に、熱水処理(AC滅菌)前後の膜性能(尿素のクリアランス、β2−MGクリアランスおよびアルブミンの阻止率)、熱水処理(AC滅菌)による寸法(糸長、内径、膜厚)の変化率、および溶血や血栓の発生の有無を表4に示す。なお、熱水処理(AC滅菌)による中空糸膜同士の膠着は起こらなかった。
[比較例1]
「トロガミド T−5000」(トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(PA6−3−T)、DegussaAG社、ガラス転移点148℃)の平衡吸水率を測定した。次いで、このポリアミド15重量%、PVP(BASF社、K−90)3重量%、水2重量%およびDMSO80重量%を含有する製膜原液を調製した。この溶液を用いて実施例1と同様の方法で中空糸束を得た。次いで、実施例1と同様に、この中空糸束から得られた中空糸およびモジュールについて、膜構造の詳細(支持層の構造、支持層外表面の平均孔径、緻密層内表面の平均粗度)および中空糸の寸法(外径、内径、膜厚)を表3に、熱水処理(AC滅菌)前後の膜性能(尿素のクリアランス、β2−MGクリアランスおよびアルブミンの阻止率)、熱水処理(AC滅菌)による寸法(糸長、内径、膜厚)の変化率、および溶血や血栓の発生の有無を表4に示す。なお、熱水処理(AC滅菌)により中空糸膜同士の膠着が生じた。
[比較例2]
「Novamid X−21」(ヘキサメチレンジアミン単位からなるジアミン単位と、テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位からなるジカルボン酸単位とからなるポリアミド(PA6IT)、三菱エンジニアリングプラスチック社、ガラス転移点124℃)の平衡吸水率を測定した。次いで、このポリアミド13重量%、PVP(BASF社、K−90)2重量%およびDMSO85重量%を含有する製膜原液を調製した。この溶液を用いて実施例1と同様の方法で中空糸束を得た。次いで、実施例1と同様に、この中空糸束から得られた中空糸およびモジュールについて、膜構造の詳細(支持層の構造、支持層外表面の平均孔径、緻密層内表面の平均粗度)および中空糸の寸法(外径、内径、膜厚)を表3に、熱水処理(AC滅菌)前後の膜性能(尿素のクリアランス、β2−MGクリアランスおよびアルブミンの阻止率)、熱水処理(AC滅菌)による寸法(糸長、内径、膜厚)の変化率、および溶血や血栓の発生の有無を表4に示す。なお、熱水処理(AC滅菌)により中空糸膜同士の膠着が生じた。
【0008】
【表1】
【0009】
【表2】
【0010】
【表3】
【0011】
【表4】
【0012】
実施例1〜9および比較例1〜2の中空糸はいずれも、内層が緻密層であり、外層が該緻密層の支持体としても働く支持層である膜構造を有していた。これら支持層は、それぞれ表3に示す構造を有していた。
表4から明らかなように、実施例1〜9で作製した中空糸は、いずれも平衡吸水率が10%以下のポリアミドを原料に用いていたため、AC滅菌後においても寸法変化率が極めて小さく(高い寸法安定性を有する)、膜性能はほとんど変化しなかった。さらに、熱水処理(AC滅菌)による中空糸膜同士の膠着は起こらなかった。一方、比較例1および2で作製した中空糸は、平衡吸水率が10%よりも大きいポリアミドを原料に用いていたため、AC滅菌後の寸法安定性が不十分となり(寸法変化率が大きい)、膜性能が著しく低下した(実際には、中空糸の潰れやリークが多発したため、尿素のクリアランス、β2−MGクリアランスおよびアルブミンの阻止率を測定することができなかった)。さらに、熱水処理(AC滅菌)により中空糸膜同士の膠着が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0013】
以上の説明により明らかなように、本発明によれば、ポリアミドを素材に用いて耐熱水性に優れた多孔質膜を提供できる。本発明で得られる多孔質膜は、熱水処理においても寸法変化が極めて小さく、AC滅菌処理可能な医療用分離膜となる。また、血液と接触しても溶血や血栓も生じないので、医療用分離膜の中でも、特に血液透析膜として有用なものとなる。
本出願は、日本で出願された特願2002−204733を基礎としておりそれらの内容は本明細書に全て包含される。
Claims (13)
- 平衡吸水率が10%以下のポリアミドを主たる素材として使用した中空糸膜であって、前記平衡吸水率が10%以下のポリアミドが、60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸成分と、60〜100モル%が1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンであるジアミン成分とからなるポリアミドである、中空糸膜。
- 素材中の、平衡吸水率が10%以下のポリアミドの含有割合が50〜100重量%である、請求項1記載の中空糸膜。
- 素材がさらにポリビニルピロリドンを含む、請求項1記載の中空糸膜。
- ジアミン成分中の1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとのモル比が100:0〜10:90である、請求項1記載の中空糸膜。
- 平衡吸水率が10%以下のポリアミドが、その分子鎖末端基の10%以上が末端封止剤により封止されている、請求項1記載の中空糸膜。
- 末端封止剤が安息香酸である、請求項5記載の中空糸膜。
- 平衡吸水率が10%以下のポリアミドのガラス転移点が60℃以上である、請求項1記載の中空糸膜。
- 平衡吸水率が10%以下のポリアミドの濃硫酸中30℃で測定した極限粘度が0.4〜3.0dl/gである、請求項1記載の中空糸膜。
- 膜厚が3〜2000μmである、請求項1記載の中空糸膜。
- 緻密層と支持層とからなる非対称膜である、請求項1記載の中空糸膜。
- 緻密層の表面の平均粗度が1〜10nmである、請求項10記載の中空糸膜。
- 支持層の表面が平均孔径0.01〜100μmの孔を有している、請求項10記載の中空糸膜。
- β2−ミクログロブリンクリアランスが35mL/min以上である、請求項1記載の中空糸膜。
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