JP2005193193A - 半芳香族ポリアミド系多孔膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 純水透過性能や分画性能、強度のほかに、耐熱性、低吸水性、耐薬品性に優れ、さらに工程制御性、コスト性、孔形成性に優れた半芳香族ポリアミド系多孔膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の半芳香族ポリアミド系多孔膜は、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材からなり、膜表面の平均孔径が0.01〜10μmの範囲内である。この多孔膜は、膜表面に、平均孔径が3μm以上の微細孔を有し、純水透過速度が30000L/m2/hr/98kPa以上で、分画粒子径が1μm以上である。また、この多孔膜は、膜素材と溶剤との熱誘起相分離により形成されてなる。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明の半芳香族ポリアミド系多孔膜は、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材からなり、膜表面の平均孔径が0.01〜10μmの範囲内である。この多孔膜は、膜表面に、平均孔径が3μm以上の微細孔を有し、純水透過速度が30000L/m2/hr/98kPa以上で、分画粒子径が1μm以上である。また、この多孔膜は、膜素材と溶剤との熱誘起相分離により形成されてなる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、純水透過性能や分画性能、強度のほかに、耐熱性、耐薬品性、低吸水性に優れ、さらに工程制御性、コスト性、孔形成性に優れた半芳香族ポリアミド系多孔膜およびその製造方法に関する。
近年、選択透過性を有する分離膜を用いた分離手段の技術がめざましく進展している。このような分離操作の技術は、例えば飲料水、超純水および医薬品の製造工程、醸造製品の除菌・仕上げにおいて、分離手段、洗浄手段および殺菌手段等を含む一連の浄化システムとして実用化されている。これらの用途分野においては、水のファイン化(高度処理)や安全性向上、精度向上などが高いレベルで要求されており分離膜の利用が進んでいる。
分離膜に求められる特性には、透過性能や分画性能だけでなく、強度や耐熱性、耐薬品性に優れることや、さらに低吸水性であることなどが挙げられ、上記のような状況を鑑み、これらの要求特性はさらに高度化している。透過性能や分画性能に関しては、両者のバランスが重要であり、より高い透過速度でより小さな粒子を除去できることが望ましい。強度に関しては、濾過中はもとよりバブリングによる洗浄に耐えうる強度を有することが必要である。また、耐熱性に優れる分離膜は、熱水中の異物除去に利用できるなど適用範囲が広く、薬品洗浄を行なうにあたっては耐薬品性に優れていることも必要である。さらに、低吸水性の分離膜は濾過中の寸法安定性に優れ、より高度な濾過処理を実現することができる。
このような状況のもと、様々なポリマーからなる分離膜が製造されている。分離膜の強度や耐熱性、耐薬品性、吸水性等の性能は膜素材の特性に由来するところが大きいが、分離膜の透過性能や分画性能は製膜方法に大きく依存する。透過性能や分画性能に優れた分離膜を製造する方法として、相分離を利用する場合が多い。そのような相分離を利用した製造法は、非溶剤誘起相分離法と熱誘起相分離法に大きく分けることができる。
非溶剤誘起相分離法では、ポリマーと溶剤からなる均一なポリマー溶液が、非溶剤の進入や溶剤の外部雰囲気への蒸発による濃度変化によって相分離を起こす。このような非溶剤誘起相分離法を利用した分離膜の製造方法として、ポリスルホン系樹脂をN,N−ジメチルアセトアミド等の溶剤に溶解後に、凝固浴中で非溶剤誘起相分離を発現させることで分離膜を製造することができることが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、一般に非溶剤誘起相分離法は、非溶剤中での相分離制御が難しく、非溶剤が必須であるため製造コストがかかり、マクロボイド(粗大孔)が発生しやすいなど、膜物性、工程制御性およびコスト性の面で問題がある。
一方、熱誘起相分離法は通常、以下のステップよりなる。(1)ポリマーと高い沸点を持った溶剤の混合物を高温で溶融させる。(2)成形後、相分離を誘発させるために適当な速度で冷却させ、ポリマーを固化させる。(3)用いた溶剤を抽出する。
また、熱誘起相分離法が、非溶剤誘起相分離法と比較して有利な点は以下のとおりである。(a)膜の強度を弱める要因となるマクロボイドが発生しない。(b)非溶剤誘起相分離法では、溶剤のほかに非溶剤が必要であるため、製造工程における制御が困難であり、再現性も低い。一方、熱誘起相分離法では非溶剤が必要ないため工程制御性、コスト性に優れ、また再現性も高い。(c)孔径制御が比較的容易で、孔径分布がシャープで良好な孔を形成する孔形成性に優れる。
熱誘起相分離には固−液型と液−液型が存在し、どちらを発現するかは、ポリマーと溶剤の相容性に起因する。両者の相容性が非常に高い場合は固−液型を発現するが、相容性が低くなると液−液型を発現し、ついに両者は非相容となる。一般に、液−液型熱誘起相分離ではスピノーダル分解により相分離が進行するため、固−液型と比較して共連続構造が発現し易いという特徴を持ち、その結果、孔の連通性や均一性などの孔形成性に優れる分離膜を製造することができる。つまり、透過性能と分画性能に優れる分離膜を製造するには、液−液型熱誘起相分離を発現する適切なポリマーと溶剤の組み合わせを選択することが好ましい。しかし、一般にポリマーと溶剤が液−液型熱誘起相分離を発現する領域は狭いため、該方法により分離膜を製造する場合、ポリマーと溶剤の適切な組み合わせを選ぶことが極めて重要であることが知られている(例えば、非特許文献1)。
一方、熱誘起相分離を利用した分離膜の製造方法として、ナイロン11と炭酸エチレン、炭酸プロピレン、テトラメチレンスルホン等の溶剤からなる溶液を冷却することで熱誘起相分離を発現させ、その後溶媒を抽出することで微多孔膜を製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。該方法を用いれば、高強度でかつ孔の連通性が非常に高い分離膜が製造されると考えられるが、脂肪族ポリアミドであるナイロン11からなるため、耐熱性や耐薬品性に乏しく、さらに吸水性が高いために、濾過処理中の寸法安定性が悪いという問題点がある。一方、半芳香族ポリアミドは、脂肪族ポリアミドに比べて分子骨格が剛直となるために結晶化度が高くなり、その結果、耐熱性や耐薬品性に優れ、また低吸水性を有する。
特開平11−104235号公報
特開昭62−64836号公報
「ケミカル・エンジニヤリング」 化学工業社 1998年6月号453ページ〜464ページ
本発明の目的は、純水透過性能や分画性能、強度のほかに、耐熱性、耐薬品性、低吸水性に優れ、さらに工程制御性、コスト性、孔形成性に優れた半芳香族ポリアミド系多孔膜およびそれを製造する方法を提供することにある。
上記の課題を解決する本発明の半芳香族ポリアミド系多孔膜は、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材からなり、膜表面の平均孔径が0.01〜10μmの範囲内であることを特徴とする。この多孔膜は、上記の膜素材と溶剤との熱誘起相分離、または上記膜素材と溶剤と無機粒子と凝集剤との熱誘起相分離、により形成されたものである。
上記した本発明の半芳香族ポリアミド系多孔膜は、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材と、該膜素材と特定の温度領域で相容して一相状態になりかつ温度変化により相分離を起こしうる溶剤を、該膜素材と溶剤が相容する温度で混練した混合液を原液として調製した後、冷却することで熱誘起相分離と該膜素材の析出とを起こさせ、次いで溶剤を抽出させることにより製造することができる。
本発明において用いられる多孔膜の半芳香族ポリアミドは、特定の温度領域で溶剤と相容して一相状態となり、かつ温度変化により熱誘起相分離を起こしうるものであれば特に制限はない。半芳香族ポリアミドは、耐熱性や耐薬品性に優れ、また吸水性が低いという特徴を有するポリマーであるが、半芳香族ポリアミドと溶剤とが相容して一相状態となる温度は通常高く、工程制御性が損なわれるため、本発明においては、半芳香族ポリアミドの融点が低いほど溶剤の選択範囲が広く、また工程制御性にも優れるため好ましい。上記した融点の低い半芳香族ポリアミドは、半芳香族ポリアミドの構成単位である主鎖のアルキル鎖の炭素数が多いものが相対的に水素結合の数が減少する点で好ましく、また上記した半芳香族ポリアミドの構成単位である主鎖のアルキル鎖の炭素数が奇数個である方が、同程度の偶数個の主鎖のアルキル鎖の炭素数を有するものより半芳香族ポリアミドの融点が低い。中でも、テレフタル酸と1,9−ノナンジアミンおよび/または2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなる半芳香族ポリアミドは耐熱性、耐薬品性、低吸水性、さらに工程制御性、コスト性にも優れるので好ましい。また、半芳香族ポリアミドの分子量は高いほど得られる多孔膜の強度が向上するので好ましいが、分子量により相分離形態が変化することに留意する必要がある。例えば、分子量が高くなるにつれて一般に溶剤との相容性が低くなるので、固−液型から液−液型を経てついには非相容となる。
該半芳香族ポリアミドにおいて、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等を含有することができ、これらは1種または2種以上であっても良い。
一方、該半芳香族ポリアミドにおいて、1,9−ノナンジアミンおよび2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外のジアミン成分としては、例えば、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖脂肪族ジアミン;2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐鎖状ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミン等を含有することができ、これらは1種または2種以上であっても良い。
また、該半芳香族ポリアミドは、分子量調節の目的でその分子鎖末端基の10%以上が末端封止剤により封止されているのが好ましく、その末端基の封止率は40%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのがさらに好ましく、70%以上であるのがとりわけ好ましい。末端封止剤としては、半芳香族ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止末端の安全性等の点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さ等の点から、モノカルボン酸がより好ましい。その他、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等も使用できる。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイン酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらのうち、反応性、封止末端の安全性、価格等の点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が特に好ましい。
末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらのうち、反応性、高沸点、封止末端の安定性および価格等の点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが特に好ましい。
該半芳香族ポリアミドは、結晶性半芳香族ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができる。例えば、芳香環を有する酸クロライドとジアミンを原料とする溶融重合法または界面重合法;芳香族ジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、固層重合法、溶融押出機重合法等の方法により製造することが可能である。半芳香族ポリアミドを製造する際に、重縮合速度の増加および重合時に生成した半芳香族ポリアミドが劣化するのを防止する目的で、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、またはそれらの塩、さらにはそれらのエステル等のリン系触媒を反応系に添加するのが好ましい。このうち、生成する半芳香族ポリアミドの品質の点から、次亜リン酸誘導体(次亜リン酸塩、次亜リン酸エステル等)が好ましく、特に、次亜リン酸ナトリウムが価格および取扱いの容易さから好ましい。これらのリン系触媒の添加量は、ジカルボン酸およびジアミンの合計重量に対して0.01〜5重量%であるのが好ましく、0.05〜2重量%であるのがより好ましく、0.07〜1重量%であるのがとりわけ好ましい。また、上記の末端封止剤の使用量は、用いる末端封止剤の反応性、沸点、反応装置、反応条件等によって変化するが、通常、芳香族ジカルボン酸とジアミンの総合計モル数に対して0.1〜15モル%の範囲で用いることができる。
また、本発明で使用する半芳香族ポリアミドは濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.4〜3.0dl/gの範囲であるのが好ましく、0.6〜2.0dl/gの範囲であるのがより好ましい。極限粘度[η]が上記範囲より低い場合、目的の多孔膜の機械的強度が低下する傾向がある。また、極限粘度[η]が上記範囲より高い場合、溶剤と非相容となったり、製膜原液の粘度が上昇して、製膜性が低下する傾向となる。
なお、ここでの極限粘度[η]は、半芳香族ポリアミドを濃硫酸に溶解し、濃度が0.05、0.1、0.2、0.4g/dlの試料溶液をそれぞれ調製し、各濃度の試料溶液の30℃における流下時間(秒)を測定し、下記試料の固有粘度(ηinh)を下記の式(1)から求め、これを濃度0に外挿した値である。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c …(1)
ただし、式(1)中、ηinhは固有粘度(dl/%)、t0は溶媒の流下時間(秒)を表し、t1は試料溶液の流下時間(秒)を表し、cは溶液中の試料の濃度(%/dl)を表す。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c …(1)
ただし、式(1)中、ηinhは固有粘度(dl/%)、t0は溶媒の流下時間(秒)を表し、t1は試料溶液の流下時間(秒)を表し、cは溶液中の試料の濃度(%/dl)を表す。
本発明においては、上記半芳香族ポリアミドに他のポリマーをブレンドすることもできる。半芳香族ポリアミドにブレンドするポリマーは、半芳香族ポリアミドと相容するポリマーであれば特に制限はなく、例えば、脂肪族ポリアミドを挙げることができ、さらに半芳香族ポリアミド同士をブレンドすることも可能である。脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン6/10、ナイロン6/12などを用いることができる。これらのポリマーをブレンドすることで、膜物性や取扱性、さらに工程制御性などの向上が期待できる。
なお、上記ブレンドポリマーは、二軸混練機等を用いて予め製造することも可能であるが、工程制御性およびコスト性を考慮すると、膜製造時に各ポリマーと溶剤を同時に投入することが好ましい。また、該ブレンドポリマー中における半芳香族ポリアミドの割合は、得られる多孔膜の靭性や耐熱性、耐薬品性、低吸水性、さらに工程制御性およびコスト性を踏まえて決定することができる。上記物性を考慮すると、50重量%以上が好ましく、さらに好ましくは60重量%以上である。
本発明において用いられる溶剤は、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材と特定の温度領域で相容し、かつ温度変化により半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材と熱誘起相分離を起こすものが用いられる。相分離には固−液型と液−液型が存在するが、テレフタル酸と1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミン(両アミンの割合は50:50)からなる半芳香族ポリアミド([η] = 0.86dl/g)の場合、固−液型熱誘起相分離を起こす溶剤としては、N−アセチルピペリジンやホルミルピペリジンなどのピペリジン類、N−アセチルモルホリンやホルミルモルホリンなどのモルホリン類、1,4−ブタンジオールや1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキルジオール類、N−メチルベンゼンスルホン酸アミドやN−ブチルベンゼンスルホン酸アミドなどのアルキルベンゼンスルホン酸アミド類、さらにアンチピリン、エチレングリコールモノベンジルエーテル、トリルスルホキシド、スルホランなどを例示することができる。また液−液型熱誘起相分離を起こす溶剤としてはジフェニルスルホン、炭酸プロピレンを例示することができる。これらの中で、得られる多孔膜の透過性能や分画性能の点において、液−液型を発現するジフェニルスルホンや炭酸プロピレンが特に好ましい。さらに、溶剤に(熱誘起相分離温度+30)℃における30秒間での重量減量率が10%以下のものを用いると、膜表面における開孔性(開孔率)がより良好となるため好ましい。この溶剤の重量減量率は、例えば示差熱・熱重量測定装置(以下、TG(熱重量)−DTA(示差熱)と略記することがある)を用いて測定される。このような溶剤としては、例えば、ジフェニルスルホンが挙げられる。
本明細書において熱誘起相分離温度は以下のように定義する。半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材と溶剤からなる混合液において、相分離形態が固−液熱誘起相分離の場合は、混合液が一相状態である温度から10℃/minの速度で冷却する過程において、膜素材が結晶性ポリマーの場合、該膜素材の結晶化温度を熱誘起相分離温度と定義し、膜素材が非晶性ポリマーの場合、該膜素材ポリマーのガラス転移温度を熱誘起相分離温度と定義する。また液−液熱誘起相分離の場合は、混合液が一相状態である温度から10℃/minの速度で冷却する過程においてスピノーダル分解を起こし始める温度を熱誘起相分離温度と定義する。
ポリマー溶液が発現する相分離状態が、固−液型熱誘起相分離と液−液型熱誘起相分離のいずれであるかを判断する方法としては、顕微鏡下で観察される滴構造形成温度と、示差走査熱量計(以下、DSCと略記することがある)により観察される結晶化温度またはガラス転移温度を比較する方法が一般的である。まず、所定の組成比率のポリマーと溶剤からなる混練物をプレパラート上に調製し、これをホットプレート上に置き、高温側から所定の冷却速度で冷却しつつ、顕微鏡を用いて滴構造形成温度を測定する。またDSCを用いて、同混練物を高温側から所定の冷却速度で冷却することで結晶化温度またはガラス転移温度を測定する。膜素材が結晶性ポリマーの場合、両測定より得られた滴構造形成温度と結晶化温度がほぼ同じであれば固−液型熱誘起相分離であり、滴構造形成温度の方が高い場合は液−液型熱誘起相分離であると判断することができる。また膜素材が非晶性ポリマーの場合、滴構造形成温度とガラス転移温度がほぼ同じであれば固−液型熱誘起相分離であり、滴構造形成温度の方が高い場合は液−液型熱誘起相分離であると判断することができる。なお構造制御の観点から、相分離状態は液−液型熱誘起相分離であることが好ましく、さらに膜素材が結晶性ポリマーの場合は滴構造形成温度と結晶化温度の温度差が、また膜素材が非晶性ポリマーの場合は滴構造形成温度とガラス転移温度の温度差が5℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは10℃以上である。
また、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材と、該膜素材と特定の温度領域で相容して一相状態となり、かつ温度変化により相分離を起こしうる溶剤との混合液に、さらに無機粒子、および無機粒子と親和性を有する凝集剤を添加し、該膜素材と溶剤が相容する温度で混練させた混合液を紡糸原液として調製し、押出した後、冷却することで熱誘起相分離と該膜素材の析出とを起こさせて、該膜素材以外の成分である溶剤、無機粒子および凝集剤を抽出させることにより、膜表面に平均孔径が3μm以上の微細孔を有し、純水透過速度が30000L/m2/hr/98kPa以上で、分画粒子径が1μm以上である半芳香族ポリアミド系多孔膜を製造することができる。
本発明において用いられる無機粒子は、多孔膜が大きな孔径を有するための核となるものであり、薬品などによる抽出が容易で粒径分布の比較的狭い微粒子が望ましい。その例として、例えば、シリカ、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、鉄、亜鉛などの金属酸化物または水酸化物、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩類などを例示することができる。特に、凝集性を有する無機粒子は、通常であれば半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材と溶剤とが相分離してしまうような組成に添加することで半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材と溶剤とが相容状態にあるときの安定性が向上する結果、均質な多孔膜を製造することが可能となり、より大きな孔径を有する多孔膜を製造することができる。このような凝集性の点から無機粒子としてはシリカが最良である。また多孔膜の孔径制御、特に孔の連通性を向上させることを目的として、異なる凝集粒子径を有する無機粒子を混合することもできる。
本発明において用いられる凝集剤とは、無機粒子と親和性があり、さらに無機粒子の凝集性を向上させる働きを有する化合物をいう。凝集剤は、このような要件に加えて、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材と溶剤とが相容する温度以上の沸点を有することが必要である。なお、無機粒子の凝集性を向上させる点から、凝集剤は親水基を有する化合物であることがより好ましい。ただし、溶剤が上記凝集剤の要件をも満たす場合は、新たに凝集剤を添加する必要はない。凝集剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、モノラウリン酸デカグリセリルのようなポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリンのようなポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテルやポリオキシエチレンセチルエーテルのようなポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルのようなポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのようなポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタンのようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類などが挙げられる。ただし、分子中にアミド結合やエステル結合を有する凝集剤は、混練時に膜素材ポリマーとアミド交換やエステル交換を起こすおそれがあるため、これらの構造を有しない、例えば多価アルコール類やポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が好ましい。さらに、無機粒子の凝集状態を制御するためや、系全体の溶融状態を安定化させるためにこれらを任意の割合で混合することもできる。
半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマーおよび溶剤、または半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマー、溶剤、無機粒子および凝集剤、からなる混合液の組成は熱誘起相分離を発現し、より好ましくは液−液型熱誘起相分離を発現する組成範囲内である必要がある。さらに製造された多孔膜が実用に耐える強度を持ち、所望の透過性能と分画性能を満たす範囲内で自由に設定することができる。混合液の組成は上記した各構成成分の化学構造等により異なるが、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマーと溶剤からなる混合液の場合、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマー:溶剤=5〜60:95〜40の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは10〜40:90〜60の範囲内である。また、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマーと溶剤、さらに無機粒子と凝集剤からなる混合液の場合、半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマー:溶剤:無機粒子:凝集剤=15〜30:25〜80:5〜30:5〜40の範囲内にあることが望ましい。混合液の組成がこの範囲を外れると、成形安定性が低下して均質な多孔膜を製造することが困難となり、また、膜素材ポリマーの量が上記した量より多いときには、均質な多孔膜を製造することは可能であっても得られる多孔膜の空隙率が低く、また孔径が小さくなるので、所望の透過性能を得ることが困難となる傾向にある。
上記した半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材と溶剤からなる混合液には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、親水化剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、増粘剤などの各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
上記した混合液は、二軸混練設備、プラストミル、ミキサーなどを用いて混練される。混練温度は半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマーと溶剤とが相容し、かつ混合液の各成分が分解しない範囲で設定する。混合液は混練された後、十分に気泡が除去され、ギヤポンプなどの計量ポンプで計量した後、シートダイや二重環構造のノズルより押出し、所望の形状に成形される。中空糸状にするときは、二重環構造のノズルの中心部から、空気、窒素などの気体、または上記混合液の押出し温度以上の沸点を有する液体を同時に押出す必要がある。上記二重環構造のノズルの中心部から押出すのに用いられる液体としては、ポリマーを溶解させなければ特に制限はなく、テトラエチレングリコールやプロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類や、膜素材ポリマーと熱誘起相分離を起こす能力を有する溶剤であっても良い。これらを用いると、得られる中空糸の内表面構造を制御することが容易になるためより効果的である。
シートダイやノズルより押し出された押出成形物は、例えば冷却といった温度の変化により半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマーと溶剤とが熱誘起相分離を起こした後、膜素材ポリマーが固化する。混合液が、膜素材ポリマーの貧溶媒中との接触により固化する時には、上記混合物と貧溶媒の界面にあたる部分が緻密なスキン層を形成し、得られる多孔膜が不均一な構造となり、高い分離精度が得られないおそれがある。冷却の方法は、空気中で行なう方法、液体中に導入する方法、一旦空気中を通した後に液体中に導入する方法などがありいずれの方法を用いても良いが、冷却の速度が多孔膜の強度や伸度、さらに孔径制御に大きく影響するので冷却速度をコントロールできるように雰囲気温度を温風で制御したり、冷却に用いられる液体の温度を制御することが望ましい。冷却に用いられる液体としては工業的には水が好ましいが、溶剤を用いたり、また溶剤と相容する有機液体を用いることも可能である。
次いで、上記より形成された成形物から溶剤等を抽出して多孔膜を得る。これら成分の抽出は、押出、固化などの操作と共に工程中で連続して行なうことができるし、成形物を一旦枠やカセなどに巻き取った後に行なっても、あるいは成形物を所定の形状のケースに収納してモジュール化した後に行なっても良い。抽出に用いる抽出剤は、抽出温度において膜素材ポリマーの非溶剤であることが必要である。例えば溶剤がジフェニルスルホンの場合は、アセトンやメタノールなどが挙げられる。多孔膜はこれらの処理を行なった後に、例えば枠やカセに巻き取った状態で乾燥される。
また、本発明において多孔膜の強度を向上させるために延伸処理を行なうことも可能である。延伸の方法としては、熱延伸、冷延伸、熱固定などの方法を目的とする強度に応じて適宜組み合わせて実施することができる。但し、延伸の程度が過ぎると、得られた多孔膜がフィブリル化を起こして孔がスリット状になり、分離精度が低くなったり、延伸方向に対して垂直方向に対する強度が逆に低下してしまうために好ましくない。膜の濾過においてはあらゆる方向の強度が重要であるため、膜の表面がスリット状の孔にならず円形または楕円形を保持する範囲内で延伸比率を制御する必要がある。延伸は成形後に溶剤等が存在している状態で行なっても、溶剤等を抽出した後で行なっても良い。このような延伸を行なうことで、強度が向上するだけでなく空隙率が高くなる。
このように半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマーと溶剤を原液として得られた本発明の半芳香族ポリアミド系多孔膜は、純水透過速度が100L/m2/hr/98kPa以上である。さらに、無機粒子と凝集剤を原液に添加することで、平均孔径が3μm以上の微細孔を有し、純水透過速度が30000L/m2/hr/98kPa以上で、分画粒子径が1μm以上の多孔膜を製造することができる。孔径が大きくなると湿潤状態でも100kPa以下の低い圧力で空気などの気体が透過できるようになるため、気体逆洗などの物理的手段による洗浄が可能となる。また、膜の断面は網目状の構造が望ましいが、対称構造や非対称構造、またはフィンガーライク構造やボイドを有していても良い。また、多孔膜内の空間の体積比である空隙率は40〜95%、好ましくは60〜90%である。空隙率が40%よりも小さくなると十分な純水透過速度を得ることが困難であり、95%を超えると膜の強度が低下し、膜濾過の実施中に多孔膜の破断や折れが発生して、分離膜としての耐久性に欠ける。
乾燥後の多孔膜を所定本数ずつ束ねて所定形状のケースに収納した後、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等で端部を固定化することによって膜モジュールが得られる。例えば中空糸膜の場合、膜モジュールとしては、中空糸膜の両端が開口固定されているタイプのもの、中空糸膜の一端が開口されかつ他端が密封されているが固定化されていないタイプのもの等、種々の形態のものが公知である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれによってなんら限定を受けるものではない。
実施例1
半芳香族ポリアミドとしてPA9MT(株式会社クラレ製、ジェネスタ、[η] = 1.92dl/g)と、溶剤としてジフェニルスルホン(丸善ケミカル株式会社製)と、増粘剤としてシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)とを、重量比で20:80:10の割合になるように二軸混練押出機中に添加した。この混合液の組成を表1に示す。二軸混練押出機中で加熱混練(温度260℃)して、押出機先端のヘッド(温度230℃)内の押出口に装着した中空糸膜成形用紡口の押出し面にある外径2.0mm、内径1.1mmの二重環構造ノズルから押出した。このとき流動パラフィン(中央化成株式会社製、350−S)を押出物の中空部内に注入した。
半芳香族ポリアミドとしてPA9MT(株式会社クラレ製、ジェネスタ、[η] = 1.92dl/g)と、溶剤としてジフェニルスルホン(丸善ケミカル株式会社製)と、増粘剤としてシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)とを、重量比で20:80:10の割合になるように二軸混練押出機中に添加した。この混合液の組成を表1に示す。二軸混練押出機中で加熱混練(温度260℃)して、押出機先端のヘッド(温度230℃)内の押出口に装着した中空糸膜成形用紡口の押出し面にある外径2.0mm、内径1.1mmの二重環構造ノズルから押出した。このとき流動パラフィン(中央化成株式会社製、350−S)を押出物の中空部内に注入した。
ノズルから空気中に押出した押出成形物を、20cmの空中走行距離を経て、水浴中(温度70℃)に入れ、約80cm水浴中を通過させて冷却固化させた。次いで、得られた中空糸を40℃のヘキサン中で60分の浸漬を2回繰り返して注入液(流動パラフィン)を抽出除去し、次いで40℃のアセトン中で60分の浸漬を2回繰り返して溶剤(ジフェニルスルホン)を抽出除去した後に、水洗、乾燥工程を経て中空糸膜を得た。製造した中空糸膜について以下の手法に従って試験を行なった。試験結果を表2に示す。なお、PA9MTと溶剤のジフェニルスルホンを重量比で20:80の割合からなる混合液の熱誘起相分離温度は210℃、また溶剤のジフェニルスルホンの240℃における30秒間の重量減量率は1.1%であった。
(平均孔径)
中空糸膜を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−3000N)を用いて写真撮影し、写真の視野範囲内に見えるすべての孔の内半径を計測し、計測する孔数が100個以上になるまで上記操作を行なった。その後、上記計測した内半径の平均値を求め、これを平均孔径とした。なお、孔径が0.1μmより小さいため内半径を計測できない場合は、<0.1μmと表記される。
中空糸膜を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−3000N)を用いて写真撮影し、写真の視野範囲内に見えるすべての孔の内半径を計測し、計測する孔数が100個以上になるまで上記操作を行なった。その後、上記計測した内半径の平均値を求め、これを平均孔径とした。なお、孔径が0.1μmより小さいため内半径を計測できない場合は、<0.1μmと表記される。
(分画粒子径)
異なる粒子径を有する少なくとも2種類の粒子の阻止率を測定し、その測定値を元にして下記の近似式(2)において、Rが90となるSの値を求め、これを分画粒子径とした。
R=100/(1−m×exp(−a×log(s))) …(2)
(2)式中、aおよびmは中空糸膜によって定まる定数であって、2種類以上の阻止率の測定値をもとに算出される。なお、0.01μm径の粒子の阻止率が90%以上の場合の分画粒子径は、<0.01μmと表記される。
異なる粒子径を有する少なくとも2種類の粒子の阻止率を測定し、その測定値を元にして下記の近似式(2)において、Rが90となるSの値を求め、これを分画粒子径とした。
R=100/(1−m×exp(−a×log(s))) …(2)
(2)式中、aおよびmは中空糸膜によって定まる定数であって、2種類以上の阻止率の測定値をもとに算出される。なお、0.01μm径の粒子の阻止率が90%以上の場合の分画粒子径は、<0.01μmと表記される。
(純水透過速度)
有効長が3cmの片端開放型の中空糸膜モジュールを用いて、原水として純水を利用し、濾過圧力が50kPa、温度が25℃の条件で中空糸膜の外側から内側に濾過(外圧濾過)して時間当たりの透水量を測定し、単位膜面積、単位時間、単位圧力当たりの透水量に換算した数値で算出した。
有効長が3cmの片端開放型の中空糸膜モジュールを用いて、原水として純水を利用し、濾過圧力が50kPa、温度が25℃の条件で中空糸膜の外側から内側に濾過(外圧濾過)して時間当たりの透水量を測定し、単位膜面積、単位時間、単位圧力当たりの透水量に換算した数値で算出した。
(強度)
引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAGS−100G)を用いて測定した。測定は20℃の水中で実施し、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/分とし、破断時の荷重を膜断面積で割ることで強度を決定した。
引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAGS−100G)を用いて測定した。測定は20℃の水中で実施し、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/分とし、破断時の荷重を膜断面積で割ることで強度を決定した。
(吸水率)
中空糸膜約2gを真空乾燥機にて乾燥(60℃で6時間)した後に、調湿されたデシケーター(95%RH)中に一週間放置した。調湿後の重量変化を測定し、下記の式(3)により吸水率を算出した。
吸水率(%)=[(w−w1)/w1]×100 …(3)
ただし、式(3)中、wは調湿後の中空糸膜重量(g)、w1は絶乾時の中空糸膜重量(g)を表す。
中空糸膜約2gを真空乾燥機にて乾燥(60℃で6時間)した後に、調湿されたデシケーター(95%RH)中に一週間放置した。調湿後の重量変化を測定し、下記の式(3)により吸水率を算出した。
吸水率(%)=[(w−w1)/w1]×100 …(3)
ただし、式(3)中、wは調湿後の中空糸膜重量(g)、w1は絶乾時の中空糸膜重量(g)を表す。
(耐熱水性)
中空糸膜を80℃の熱水中に7日間浸漬した後に、上記と同様の方法にて強度を測定し、浸漬前後での強度より強度保持率を決定した。
中空糸膜を80℃の熱水中に7日間浸漬した後に、上記と同様の方法にて強度を測定し、浸漬前後での強度より強度保持率を決定した。
(耐酸性)
中空糸膜を23℃の酸(10%硫酸)中に7日間浸漬した後に、上記と同様の方法にて強度を測定し、浸漬前後での強度より強度保持率を決定した。
中空糸膜を23℃の酸(10%硫酸)中に7日間浸漬した後に、上記と同様の方法にて強度を測定し、浸漬前後での強度より強度保持率を決定した。
(熱誘起相分離温度)
半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマーと溶剤からなる混合液の滴構造形成温度と結晶化温度またはガラス転移温度を測定することで、熱誘起相分離温度を決定した。滴構造形成温度は、温度コントローラー(Limkam社製、TH−600PM)付きの光学顕微鏡(株式会社ニコン製、ECLIPSE E600POL)を用いて測定した。予め混練しておいた混合液を、混練時の温度で2分間ホールドすることで溶解した後、10℃/分で冷却し、その過程で観察される滴構造形成の温度を測定した。一方結晶化温度とガラス転移温度は、DSC(PERKIN ELMER社製、Pyris1)を用いて測定した。予め混練しておいた混合液を、90℃/分で室温から混練温度まで加熱した後に、混練温度で2分間ホールドし、次いで10℃/分で冷却し、その過程で観察される吸熱ピークから結晶化温度とガラス転移温度を見積もった。なお、両測定とも少なくとも2回以上実施し、その平均値から両温度を決定した。膜素材ポリマーが結晶性ポリマーの場合、上記測定より得られた滴構造形成温度と結晶化温度の差が±5℃の範囲であれば固−液型熱誘起相分離と判断し、結晶化温度を熱誘起相分離温度とし、一方、滴構造形成温度が結晶化温度よりも5℃以上高ければ液−液型熱誘起相分離と判断し、滴構造形成温度を熱誘起相分離温度とした。膜素材ポリマーが非晶性ポリマーの場合、上記測定より得られた滴構造形成温度とガラス転移温度の差が±5℃の範囲であれば固−液型熱誘起相分離と判断し、ガラス転移温度を熱誘起相分離温度とし、一方、滴構造形成温度がガラス転移温度よりも5℃以上高ければ液−液型熱誘起相分離と判断し、滴構造形成温度を熱誘起相分離温度とした。
半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材ポリマーと溶剤からなる混合液の滴構造形成温度と結晶化温度またはガラス転移温度を測定することで、熱誘起相分離温度を決定した。滴構造形成温度は、温度コントローラー(Limkam社製、TH−600PM)付きの光学顕微鏡(株式会社ニコン製、ECLIPSE E600POL)を用いて測定した。予め混練しておいた混合液を、混練時の温度で2分間ホールドすることで溶解した後、10℃/分で冷却し、その過程で観察される滴構造形成の温度を測定した。一方結晶化温度とガラス転移温度は、DSC(PERKIN ELMER社製、Pyris1)を用いて測定した。予め混練しておいた混合液を、90℃/分で室温から混練温度まで加熱した後に、混練温度で2分間ホールドし、次いで10℃/分で冷却し、その過程で観察される吸熱ピークから結晶化温度とガラス転移温度を見積もった。なお、両測定とも少なくとも2回以上実施し、その平均値から両温度を決定した。膜素材ポリマーが結晶性ポリマーの場合、上記測定より得られた滴構造形成温度と結晶化温度の差が±5℃の範囲であれば固−液型熱誘起相分離と判断し、結晶化温度を熱誘起相分離温度とし、一方、滴構造形成温度が結晶化温度よりも5℃以上高ければ液−液型熱誘起相分離と判断し、滴構造形成温度を熱誘起相分離温度とした。膜素材ポリマーが非晶性ポリマーの場合、上記測定より得られた滴構造形成温度とガラス転移温度の差が±5℃の範囲であれば固−液型熱誘起相分離と判断し、ガラス転移温度を熱誘起相分離温度とし、一方、滴構造形成温度がガラス転移温度よりも5℃以上高ければ液−液型熱誘起相分離と判断し、滴構造形成温度を熱誘起相分離温度とした。
(溶剤の重量減量率)
溶剤をTG−DTA(理学電機株式会社製、Thermo Plus TG8120)に10mgセットし、(熱誘起相分離温度+30)℃まで500℃/分で昇温後、(熱誘起相分離温度+30)℃で30秒間ホールドし、この時間内における溶剤のTG(熱重量)の重量減量率を見積もった。
溶剤をTG−DTA(理学電機株式会社製、Thermo Plus TG8120)に10mgセットし、(熱誘起相分離温度+30)℃まで500℃/分で昇温後、(熱誘起相分離温度+30)℃で30秒間ホールドし、この時間内における溶剤のTG(熱重量)の重量減量率を見積もった。
実施例2
半芳香族ポリアミドとしてPA9MT(株式会社クラレ製、ジェネスタ、[η] = 1.92dl/g)と、脂肪族ポリアミドとしてナイロン6/12(宇部興産株式会社製、UBE7024B)と、溶剤としてジフェニルスルホン(丸善ケミカル株式会社製)と、増粘剤としてシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)とを、重量比で16:4:80:10とした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。この中空糸膜の製造に用いた混合液の組成を表1に、試験結果を表2に示す。なお、PA9MTとナイロン6/12、溶剤のジフェニルスルホンを重量比で16:4:80の割合からなる混合液の熱誘起相分離温度は195℃、また溶剤のジフェニルスルホンの225℃における30秒間の重量減量率は0.1%未満(<0.1%)であった。
半芳香族ポリアミドとしてPA9MT(株式会社クラレ製、ジェネスタ、[η] = 1.92dl/g)と、脂肪族ポリアミドとしてナイロン6/12(宇部興産株式会社製、UBE7024B)と、溶剤としてジフェニルスルホン(丸善ケミカル株式会社製)と、増粘剤としてシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)とを、重量比で16:4:80:10とした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。この中空糸膜の製造に用いた混合液の組成を表1に、試験結果を表2に示す。なお、PA9MTとナイロン6/12、溶剤のジフェニルスルホンを重量比で16:4:80の割合からなる混合液の熱誘起相分離温度は195℃、また溶剤のジフェニルスルホンの225℃における30秒間の重量減量率は0.1%未満(<0.1%)であった。
実施例3
半芳香族ポリアミドとしてPA9MT(株式会社クラレ製、ジェネスタ、[η] = 1.92dl/g)と、溶剤としてジフェニルスルホン(丸善ケミカル株式会社製)と、無機粒子としてシリカ1(株式会社トクヤマ製、ファインシールX−45、平均凝集粒子径4.0〜5.0μm)およびシリカ2(株式会社トクヤマ製、ファインシールX−30、平均凝集粒子径2.5〜4.0μm)と、凝集剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(日光ケミカルズ株式会社製、NP−5)との混合液を用い、かつ、PA9MT:ジフェニルスルホン:シリカ1:シリカ2:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを重量比で20:80:2.5:7.5:10としたこと以外は、実施例1と同様にして押出成形物を得た。次いで、溶剤と注入液を抽出した後に、乾熱延伸機により240℃で繊維方向に原長の約1.5倍長となるように延伸処理をした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。この中空糸膜の製造に用いた混合液の組成を表1に、試験結果を表2に示す。
半芳香族ポリアミドとしてPA9MT(株式会社クラレ製、ジェネスタ、[η] = 1.92dl/g)と、溶剤としてジフェニルスルホン(丸善ケミカル株式会社製)と、無機粒子としてシリカ1(株式会社トクヤマ製、ファインシールX−45、平均凝集粒子径4.0〜5.0μm)およびシリカ2(株式会社トクヤマ製、ファインシールX−30、平均凝集粒子径2.5〜4.0μm)と、凝集剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(日光ケミカルズ株式会社製、NP−5)との混合液を用い、かつ、PA9MT:ジフェニルスルホン:シリカ1:シリカ2:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを重量比で20:80:2.5:7.5:10としたこと以外は、実施例1と同様にして押出成形物を得た。次いで、溶剤と注入液を抽出した後に、乾熱延伸機により240℃で繊維方向に原長の約1.5倍長となるように延伸処理をした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。この中空糸膜の製造に用いた混合液の組成を表1に、試験結果を表2に示す。
比較例1
膜素材として脂肪族ポリアミドであるナイロン66(旭化成株式会社製)と、溶剤としてグリセリン(花王株式会社製)とエチレングリコール(株式会社日本触媒製)とを、重量比で20:60:20とし、加熱混練温度を170℃、押出機先端のヘッド温度を150℃とした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。この中空糸膜の製造に用いた原液組成を表1に、試験結果を表2に示す。
膜素材として脂肪族ポリアミドであるナイロン66(旭化成株式会社製)と、溶剤としてグリセリン(花王株式会社製)とエチレングリコール(株式会社日本触媒製)とを、重量比で20:60:20とし、加熱混練温度を170℃、押出機先端のヘッド温度を150℃とした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。この中空糸膜の製造に用いた原液組成を表1に、試験結果を表2に示す。
試験結果により、半芳香族ポリアミド(PA9MT)から製造された中空糸膜はナイロン66から製造された中空糸膜と比較して、吸水率が低く、また耐熱性や耐酸性に優れることが分かった。
Claims (16)
- 半芳香族ポリアミドを主たる成分とする膜素材からなり、膜表面の平均孔径が0.01〜10μmの範囲内であることを特徴とする半芳香族ポリアミド系多孔膜。
- 膜素材が、半芳香族ポリアミドを50重量%以上含有するブレンドポリマーを主たる成分とするものである請求項1に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜。
- 膜表面に、平均孔径が3μm以上の微細孔を有し、純水透過速度が30000L/m2/hr/98kPa以上で、分画粒子径が1μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜。
- 膜素材と溶剤との熱誘起相分離により形成されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜。
- 膜素材と溶剤との熱誘起相分離の後、延伸処理されてなることを特徴とする請求項4に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜。
- 膜素材中の少なくとも1種の半芳香族ポリアミドの構成単位であるアルキル鎖の炭素数が奇数個であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜。
- アルキル鎖の炭素数が9つであることを特徴とする請求項6に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜。
- 溶剤が、(熱誘起相分離温度+30)℃における30秒間での重量減量率が10%以下のものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜。
- 多孔膜が中空糸膜であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜。
- 半芳香族ポリアミドを主たる成分とする、または半芳香族ポリアミドを50重量%以上含有するブレンドポリマーを主たる成分とする膜素材と、該膜素材と特定の温度領域で相容して一相状態となり、かつ温度変化により相分離を起こしうる溶剤とを、該膜素材と溶剤が相容する温度で混練させた混合液を調製した後、冷却することで熱誘起相分離と該膜素材の析出を起こさせ、次いで溶剤を抽出させることを特徴とする半芳香族ポリアミド系多孔膜の製造方法。
- 半芳香族ポリアミドを主たる成分とする、または半芳香族ポリアミドを50重量%以上含有するブレンドポリマーを主たる成分とする膜素材と、該膜素材と特定の温度領域で相容して一相状態となり、かつ温度変化により相分離を起こしうる溶剤と、無機粒子と、無機粒子と親和性を有する凝集剤とを、該膜素材と溶剤が相容する温度で混練させた混合液を調製した後、冷却することで熱誘起相分離と該膜素材の析出とを起こさせ、次いで溶剤、無機粒子および凝集剤を抽出させることを特徴とする半芳香族ポリアミド系多孔膜の製造方法。
- 熱誘起相分離と該膜素材の析出とを起こさせた後、延伸処理されることを特徴とする請求項10または11に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜の製造方法。
- 溶剤が、ε−カプロラクトン、ジフェニルスルホン、炭酸プロピレン、1,10−デカンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ベンジルアルコール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、ホルミルピペリジンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜の製造方法。
- 溶剤が、(熱誘起相分離温度+30)℃における30秒間での重量減量率が10%以下のものであることを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜の製造方法。
- 凝集剤が親水基を有する化合物であることを特徴とする請求項11に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜の製造方法。
- 多孔膜が中空糸膜であることを特徴とする請求項10から15のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド系多孔膜の製造方法。
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