JP4286920B2 - 絵付成形用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輛内外装品、航空機内装品、家電製品の表面材、雑貨、家具、建材、建具等のプラスチック部品を加飾するための絵付成形用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、樹脂成形品の表面に絵柄を設ける方法として各種方法が知られているが、その中の代表的な方法が所謂「射出成形同時絵付法」である。この方法は、射出成形の雌雄両型間に絵付成形用シートを挿入し、両型を係合、型締した後、熔融樹脂をキャビティ内に射出充填し、樹脂成形品の表面に該絵付成形用シートを貼り合わせる方法である(特公昭50−19132号公報、特開平6−315950号公報等参照)。そして、この成形同時加飾方法では、絵付成形用シートとして、分子配向したシート、或いはアクリル樹脂のように比較的硬くて脆い樹脂シートが使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来使用されている上記の如き絵付成形用シートは、引き裂きやすく切れやすいため、印刷工程、スリット工程、検査工程、さらには成形工程等の各種加工時に張力がかかると断紙を起こしやすい。このような加工時に張力FがかかってシートSが側端部から破断する様子(Bのように)を図1に示してある。そこで、シートSにかかる張力Fを落とすことも考えられるが、弛みが生じて印刷しにくくなったり、金型クランプした際にシワになりやすくなる。また、張力Fを落とすと、これとは別に印刷工程等で溶剤を吸収して膨潤した際にもタルミやシワを生じると言った問題点がある。また、高張力でも破断させないように厚くすると、シートコストが増加する上に、シートに強度が出て印刷、成形等が行いにくくなる。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シートの各種加工時における搬送速度を上げることができ、シートの厚みを薄くできる絵付成形用シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の絵付成形用シートは、少なくとも装飾層を有した熱可塑性樹脂シートからなる長尺帯状の絵付成形用シートであって、図2に示すように、該シートSの両側端部aに沿ってしかも両側端縁に達する位置まであるようにしてストライプ状の耐破断層Aが印刷により設けられているものである。すなわち、絵付成形用シートの破断はシートの側端部aから発生しているので、この部分に沿ってストライプ状の耐破断層Aを設けることにより破断のきっかけを無くすようにした。
【0006】
【発明の実施の形態】
熱可塑性樹脂シートとしては、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール等からなる厚さ20〜300μm程度の長尺帯状シートが用いられる。特に、本発明で有効であるのは、アクリル樹脂シート、或いは一軸延伸により長さ方向に分子配向している熱可塑性樹脂シートを用いる場合である。
【0007】
装飾層としては、木目柄、石目柄、文字、図柄等を形成するだけではなく、単なる全面ベタ着色層でもよいし、透明樹脂層だけでもよい。装飾層の形成方法は、グラビア印刷、オフセット印刷、ロールコート、スクリーン印刷等の公知の手法によればよい。また、意匠外観を付与する層の他、蒸着等により形成した金属薄膜層、熱線反射層、導電体層、硬質塗膜層、紫外線吸収層等の機能性層も包含される。
【0008】
装飾層の上に必要に応じて接着剤層を設ける。接着剤としては感熱接着剤を用いる。具体的には、アクリル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等より選択される1種又は2種以上の混合体からなる樹脂をグラビア印刷、オフセット印刷、ロールコート、スクリーン印刷等公知の手法を用いて積層することで接着剤層を形成する。なお、装飾層自体に接着性が有る場合はこの接着剤層を省略できる。
【0009】
耐破断層は、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネートプレポリマーからなる湿気硬化型の1液硬化型ウレタン系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル系樹脂、或いは2液硬化型ウレタン樹脂等の可撓性と強度を有する樹脂バインダーからなるインキを用いて形成される。これらの樹脂バインダーの中でも、特に2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。2液硬化型樹脂は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が用いられる。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2−4トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4−4ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環族)イソシアネートが用いられる。耐破断層によるブロッキングが予想されるときはインキ中に、表面処理されたシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の微粒子からなるマット剤を添加してもよい。
【0010】
耐破断層は、破断しにくくするためシートの両側端縁(両サイドの余剰部をスリットする場合はスリット後のシートの両側端縁)に達する位置まであるようにする。シート両側端の余白部に、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等により、幅1〜10mm程度のストライプ状に、厚さは1〜10μm程度に印刷して形成する。
【0011】
耐破断層は絵付成形用シートの層構成中どこの位置に形成してもよく、図3に耐破断層を形成した絵付成形用シートの複数例を断面図で示す。図中1は熱可塑性樹脂シート、2は装飾層、3は接着剤層、Aは耐破断層である。図3(a)は接着剤層3の外側に形成した場合、図3(b)は装飾層2と接着剤層3との間に積層した場合、図3(c)は装飾層2と熱可塑性樹脂シート1の間に設けた場合、図3(d)は熱可塑性樹脂シート1の表面に設けた場合をそれぞれ示している。なお、図示はしないが、耐破断層を複数層、例えば熱可塑性樹脂シート1の表裏両面に設けることもできる。
【0012】
成形同時絵付法は公知の技術であり、射出成形の際、雌雄両型間に挿入した絵付成形用シートを注入樹脂と一体化させ、成形品の表面に絵付けをする方法であって、絵付成形用シートとしては、成形品の表面に全層が接着一体化して化粧層となる貼り合わせ装飾シートを用いるものである。絵付成形用シートを成形品の形状に良好に追従させるためには、射出成形に先立って絵付成形用シートを射出成形用雌型の内部形状と同形状となるように、真空成形法或いは真空圧空成形法により予備成形を行うことが望ましい。予備成形法としては、予め別の型で予備成形された絵付成形用シートを射出成形用雌型内に装着する方法或いは射出成形用雌型にて直接絵付成形用シートを予備成形する方法とがあるが、通常は後者の方法が多用される。勿論、成形品(型)形状の絞りが浅く(凹凸の段差が小)、又は凹凸の曲率が小さい場合、或いは絵付成形用シートの成形性(熱可塑性)が十分大きい場合は、この予備成形工程は省略し、射出樹脂の熱と圧力とによって絵付成形用シートを型形状に追従成形せしめてもよい。
【0013】
図4に絵付成形用シートの予備成形を射出成形用雌型にて直接行う場合の例を示している。この態様の射出成形機10では、雌型20は、真空吸引成形に適用可能なように真空ポンプに連結した真空吸引孔21などが設けられた構造を有するものであり、雄型30と合体させて射出成形により成形される成形品の形状の一部が賦形されている。雄型30は固定盤31に固定されると共にタイバー40(計4本ある)にも固定されている。一方、雌型20は可動盤22に固定され、可動盤22はタイバー40に摺動可能に貫通されている。この予備成形を行うにあたっては、雌雄両型間に挿入した絵付成形用シートSを可動盤22に装着した雌型20にシートクランプ50にて固定し、熱盤60でシートSを加熱軟化せしめた後、雌型20の真空吸引孔21を通してシートSを雌型20内のキャビティ面に吸引密着させる。絵付成形用シートSの上端側はシートチャック70で挟持してシートカッター80で切断する。シートカッター80としては、刃物、加熱線絛等が用いられる。しかる後、該シートSを冷却せしめることによりシートSの予備成形が完了する。(或いは、シートSの冷却を待たず、樹脂の射出を行ってもよい。)熱盤60としては、絵付成形用シートSと密着して接触し、熱伝導にて加熱する接触加熱式のもの、或いはシートSから離れた位置からの輻射熱、又は誘電加熱にて加熱する非接触式のもののいずれでもよい。
【0014】
絵付成形用シートの予備成形を別途真空成形法又は真空圧空成形法により予め行う場合は、射出成形用雌型と同形状の型を用いて、シートを赤外線ヒーターなどで加熱軟化せしめた上、真空又は真空圧空成形にて型の内部形状に成形させた後に離型し、成形されたシートを雌型の所定箇所に装着させることにより予備成形工程が完了する。
【0015】
図4に示す如く絵付成形用シートSの予備成形を終えた後、図5に示すように、流体圧シリンダー90によりピストン91を作動させることで、シートSが密着したままの雌型20をタイバー40に摺動させつつ雄型30に合体させて型締めさせてから、両型20,30によって形成されるキャビティC内に、流動状態の成形品形成用樹脂Pを雄型のゲート32を通して充填させて射出成形を行う。そして、射出樹脂Pを固体化し、絵付成形用シートSと樹脂成形品P’とを積層せしめた後、図6に示すように雌雄両型20,30を開き、シートSにより表面化粧の施された樹脂成形品P’を型外に取り出す。なお、雌型20と雄型30は鉄等の金属又はセラミックスにて形成される。
【0016】
雄型側のゲートから射出する流動状態の樹脂は射出成形用の樹脂であり、実際には製品の要求物性、コスト等により選択される。具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の樹脂を使用し、これを加熱熔融して射出し、冷却して固体化させる場合と、ポリオールとイソシアネート架橋剤とからなるポリウレタン樹脂、アミンを硬化剤とするエポキシ樹脂、イソシアネート、有機スルホン酸塩、過酸化ベンゾイル等を硬化剤とする不飽和ポリエステル等の2液反応硬化型樹脂の未硬化の液状組成分を射出し、化学反応で固体化させる場合とがある。
【0017】
絵付成形用シートは、熱可塑性樹脂シートとその上に積層された装飾層からなり、熱可塑性樹脂シートを成形品と密着一体化させたまま最終製品として使用する貼り合わせ積層シート(ラミネートシート)、或いは一旦絵付成形用シートと成形品とを一体化させた後、装飾層(転写層)のみを成形品側に残して熱可塑性樹脂シート(支持体シート)を剥離する転写シートのいずれの形態も使用することができる。
【0018】
絵付成形用シートが転写シートの場合は、必要に応じて剥離層を設ける。剥離層としては、支持体シートである熱可塑性樹脂シートと剥離性を有し、かつ転写終了後は転写層の表面保護層として所望の物性を有する樹脂組成を選定する。特に、表面の耐擦傷性、耐薬品性、耐汚染性を要する場合は、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂が通常よく用いられる。また、膜厚も所望の物性等により選定するが、通常0.1〜10μmである。
【0019】
なお、以上の実施形態の説明では、専ら射出成形同時絵付法の場合を例示したが、本発明の絵付成形用シートは、この他、特公昭60−58014号公報、特公昭56−45768号公報等に開示されるような、成形品側からの真空吸引によって絵付成形用シートを成形品表面に成形・積層する所謂真空成形積層法等の各種の絵付成形法に適用することが可能である。
【0020】
【実施例】
(実施例1)
厚さ40μmのポリスチレンシートの片面にウレタン樹脂をバインダーとしたインキにより装飾層を設けた後、その上からアクリル系接着剤を積層して絵付成形用シートを得た。このシートの接着剤層上の両側端部及びスリット予定部付近に、アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートからなる2液硬化型ウレタン系樹脂をバインダーとしたインキにより厚さ2μmで巾20mmの耐破断層を設け、図3(a)の如き構成の絵付成形用シートを得た。
【0021】
(実施例2)
厚さ100μmのアクリル樹脂シートの片面にアクリル系樹脂をバインダーとしたインキにより装飾層を設けた後、その上からアクリル系接着剤を積層して絵付成形用シートを得た。このシートの装飾層と接着剤層との層間の両側端部及びスリット予定部付近に、アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートからなる2液硬化型ウレタン系樹脂をバインダーとしたインキにより厚さ3μmで巾10mmの耐破断層を設け、図3(b)の如き構成の絵付成形用シートを得た。
【0022】
(実施例3)
厚さ80μmのトリアセチルセルロースシートのシートの装飾層側の両側端部及びスリット予定部付近に、アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートからなる2液硬化型ウレタン系樹脂をバインダーとしたインキにより厚さ1μmで巾20mmの耐破断層を設けた。そして、耐破断層の表面にアクリル系樹脂をバインダーとしたインキにより装飾層を設けた後、その上からアクリル系接着剤を積層して図3(c)の如き構成の絵付成形用シートを得た。
【0023】
(実施例4)
厚さ100μmのアクリル樹脂シートの片面の両側端部及びスリット予定部付近に、アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートからなる2液硬化型ウレタン系樹脂をバインダーとしたインキにより厚さ3μmで巾20mmの耐破断層を設けた。次に、耐破断層とは反対面にアクリル系樹脂をバインダーとしたインキにより装飾層を設けた後、その上にアクリル系接着剤を積層して図3(d)の如き構成の絵付成形用シートを得た。
【0024】
(比較例1〜4)
上記実施例1〜4においてそれぞれ耐破断層を設けない以外は同様にして絵付成形用シートを得た。
【0025】
上記で得られた絵付成形用シートをシート両側部スリット(切り取り)時、後加工時(射出成形同時絵付を行うためのシート送り)について各々300mを調査した。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
実施例1〜4の絵付成形用シートは、スリット時、後加工時において破断を生じることなく良好に搬送できた。これに対して、比較例1〜4の従来シートは、スリット時、後加工時に破断やバリが発生し作業適性に劣るものであった。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の絵付成形用シートは、少なくとも装飾層を有した熱可塑性樹脂シートからなる長尺帯状の絵付成形用シートであって、該シートの両側端部に沿ってしかも両側端縁に達する位置まであるようにしてストライプ状の耐破断層が2液硬化型ウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いて印刷により設けられている構成としたことにより、シートの側端部から発生する破断のきっかけが無くなり、シートが破断しにくくなるためシート搬送速度を上げることができる。また、シートの厚みを薄くできるためコストダウンも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】絵付成形用シートの加工時に張力がかかってシートが破断する様子を示す説明図である。
【図2】本発明に係る絵付成形用シートを示す斜視図である。
【図3】本発明の絵付成形用シートの複数例を示す断面図である。
【図4】装飾シートの予備成形を射出成形用雌金型にて直接行う場合の例を示す射出成形機の一部破断図である。
【図5】装飾シートの予備成形を終えた後で成形用樹脂を射出する様子を示す射出成形機の一部破断図である。
【図6】射出成型後に雌雄両金型を開いて樹脂成形品を取り出す様子を示す射出成形機の一部破断図である。
【符号の説明】
S 絵付成形用シート
A 耐破断層
1 熱可塑性樹脂シート
2 装飾層
3 接着剤層
10 射出成形機
20 雌金型
21 吸引孔
22 可動盤
30 雄金型
31 固定盤
32 ゲート
40 タイバー
50 シートクランプ
60 熱盤
70 シートチャック
80 シートカッター
90 流体圧シリンダー
91 ピストン
C キャビティ
P 成形品形成用樹脂
P’ 樹脂成形品
Claims (2)
- 少なくとも装飾層を有した熱可塑性樹脂シートからなる長尺帯状の絵付成形用シートであって、該シートの両側端部に沿ってしかも両側端縁に達する位置まであるようにしてストライプ状の耐破断層が2液硬化型ウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いて印刷により設けられていることを特徴とする絵付成形用シート。
- 前記熱可塑性樹脂シートが長さ方向に分子配向していることを特徴とする請求項1に記載の絵付成形用シート。
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