JP4285886B2 - 棒状体用ハンマー - Google Patents

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成美 田頭
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、定着孔を有する物体に棒状体を定着させるための棒状体用ハンマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平8−81957号公報には、差し筋本体と、この差し筋本体に嵌められるスリーブとからなる棒状体定着部構造が記載されている。すなわち、差し筋本体の端部には径が先端に行くに従って漸次拡大してなるコーン状のテーパ部が形成され、スリーブにはその一端から軸方向に延びるスリットが形成されている。これは、スリーブを上記テーパ部に強制移動させることによって、このスリーブをスリット部分で拡開させて、コンクリート等の定着孔の壁面に食い付かせるというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のスリーブをテーパ部に強制移動させるにはこ、ハンマーを棒状体の周面に沿って打ち下ろしてスリーブの端面を叩くことになるが、棒状体が邪魔になるため、その作業が難しい。また、スリーブの端面の一部のみを叩くことになるため、スリーブに全周にわたって均等な力が加わらず、スリーブがテーパ部に向かって円滑に移動しないという問題もある。棒状体が細い線材である場合にはハンマーによる打撃作業が特に難しくなる。本発明はこのような問題を解決することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、棒状体に嵌められたスリーブを、該棒状体の末広がりになった部分に向かって強制移動させるための棒状体用ハンマーであって、
小径ロッド部と、この小径ロッド部の先端に段差面を介して続く大径部とを備え、該大径部は先細に形成されてその先端面が上記スリーブの端面に当てる当て面に形成され、上記棒状体を嵌め入れる溝が側面に開口し且つ全長にわたって延びているハンマー本体と、
上記小径ロッド部に嵌められ、該小径ロッド部をガイドとして上記段差面に衝突させて上記大径部を介して上記スリーブの端面に衝撃を与える筒状衝撃体とからなり、
上記筒状衝撃体に、上記棒状体を上記ハンマー本体の溝に導入するための軸方向全長にわたって延びるスリットが形成されていることを特徴とする。
【0005】
従って、この棒状体用ハンマーの場合は、筒状衝撃体をハンマー本体の小径ロッド部に嵌め、そのスリットをハンマー本体の溝に合致させた状態にして、棒状体を当該スリットから溝に嵌め入れ、しかる後に筒状衝撃体を回転させてそのスリットをハンマー本体の溝とは異なる位置に持ってくることになる。これにより、棒状体は棒状体用ハンマーの溝から外れないようになる。その状態で小径ロッド部をガイドとして筒状衝撃体を上記段差面にその自重等によって衝突させて大径部を介して上記スリーブの端面に衝撃を与えることになる。
【0006】
よって、スリーブの端面に対して大径部の当て面から全周にわたって均等な打撃力を簡単に与えることができ、スリーブがスムースにテーパ部に嵌合していって拡開する。
【0007】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、小径ロッド部の先端に段差面を介して続く大径部を備え且つ上記棒状体を嵌め入れる溝が側面に開口しているハンマー本体と、上記小径ロッド部をガイドとして上記段差面に衝突し上記大径部を介して上記スリーブに衝撃を与える筒状衝撃体とによって棒状体用ハンマーを構成したから、棒状体を上記溝に嵌め入れて筒状衝撃体により上記大径部を介してスリーブの端面に均等な打撃力を加えることができ、スリーブの拡開作業を簡単に且つ確実に行なうことができるという効果が得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
この実施形態は空石積み用の玉石とアンカー(棒状体)との結合に本発明に係る棒状体用ハンマーを採用したものである。
【0010】
図1において、1は道路又は河床、2は法面、3は天端であり、法面2はモルタルを使わないで積み上げられた玉石4によって保護されている。5は基礎コンクリート、6は天端コンクリートである。玉石4の背部には割栗石7が詰められ、割栗石7の部位と地山8との間には吸出し防止材9が設けられている。図2に示すように、玉石4からはその背部にアンカー11が突出しその先端にストッパ板12が取り付けられている。図1に示すようにアンカー11は割栗石7の部分を貫き、ストッパ板12は地山8と吸出し防止材9との間に配置されている。
【0011】
図3に示すように、アンカー11は、アンカー本体13と、このアンカー本体13に嵌められたスリーブ14とによって構成されている。アンカー本体13は亜鉛アルミニウム合金メッキ鉄線(メッキ線材)によって形成されていて、その一端にテーパ部15が形成され、他端には上記ストッパ板12の抜け止め16が形成されている。抜け止め16は当該線材をリング状に曲げ加工してなるものである。
【0012】
図4に示すように、スリーブ14は亜鉛アルミニウム合金メッキが施された鉄パイプによって形成されていて、その一端から軸方向に延びる2本のスリット17を備えている。この両スリット17はスリーブ14の軸心を挟んで相対する位置に設けられている。スリーブ14の内径はアンカー本体13のテーパ部15を除く本体部分の直径よりも若干大きく、従って、この本体部分を軸方向に移動することができる。
【0013】
図5に示すように、アンカー本体13の一端部は、軸心を挟んで相対する方向(軸心に直角な方向)から加圧治具で圧力を加える広げ加工が施されて、先端へ行くに従って漸次扁平となって広がっている。この扁平部の両側縁が先端へ行くに従って軸心からの距離が漸次遠くなる勾配のついたテーパ部15,15に形成されている。この両テーパ部15,15は軸心に対称となっている。
【0014】
従って、図6に示すように、スリット17をテーパ部15の存する側に配置してスリーブ14をアンカー本体13に嵌め、テーパ部15の存する方へ強制的に移動させると、スリーブ14はテーパ部15,15を摺動してスリット17の部分で拡開した状態になる。このことを利用してアンカー11は玉石4に結合されている。
【0015】
すなわち、図7に示すように、玉石4にはスリーブ14の外形よりも若干大径の定着孔19が形成されている。この定着孔19にアンカー本体のテーパ部15を挿入し、且つスリーブ14をそのスリット17がアンカー本体13のテーパ部15に対抗しないように位置付ける。その状態で上記スリーブ14をテーパ部15の存する方へ強制的に移動させると、このスリーブ14が拡開してその先端部が定着孔19の壁面に食い付く。これにより、アンカー11は定着孔19から抜けなくなる。この場合、アンカー本体13を定着孔19から抜く方向に引っ張ると、そのテーパ部15がスリーブ14を拡開する方向に働き、当該定着がより強固になる。
【0016】
また、このような定着部構造であれば、テーパ部15は広げ加工によって形成されるため、当該加工によってメッキが剥がれることが避けられる。また、軸方向から加圧ではなく軸直角方向から加圧であるから、必要な加圧力も小さくなり、1回のプレスで加工することができる。しかも、上記加工によって得られたアンカー本体13は、従来に比べて軽量となるから、その取り扱いも容易になる。
【0017】
図8及び図9は上記スリーブ14をテーパ部15に向かって強制的に移動させるための棒状体用ハンマー21を示している。
【0018】
図8に示すように、ハンマー21はハンマー本体22と筒状衝撃体23とからなる。ハンマー本体22は小径ロッド部24とこれに段差面25を介して続く大径部26とからなる。大径部26は下部(小径ロッド部24とは反対側の部分)が先細に形成されて、その先端面が上記スリーブ14の端面に当てる当て面27に形成されている。このハンマー本体22には上記アンカー本体13を嵌め入れる嵌入溝29が全長にわたって延び、ハンマー本体側面に開口している。嵌入溝29の底部はハンマー本体22の軸心部に達している。
【0019】
筒状衝撃体23は、内径が上記小径ロッド部24の外形よりも若干大径に形成されたものであり、上記小径ロッド部24に嵌められる。この筒状衝撃体23には、上記アンカー本体13を上記ハンマー本体22の嵌入溝29に導入するための軸方向全長にわたって延びるスリット31が形成されている。
【0020】
使用に際しては、図9に実線で示すように、筒状衝撃体23をハンマー本体22の小径ロッド部24に嵌め、筒状衝撃体23のスリット31をハンマー本体22の嵌入溝29に合わせる。その状態でアンカー本体13をスリット31から嵌入溝29に嵌め入れ、筒状衝撃体23を回転させて図9に2点鎖線で示すようにスリット31を嵌入溝29とは異なる部位に位置付ける。
【0021】
そうして、ハンマー本体22の当て面27をアンカー11のスリーブ14の端面に当て、小径ロッド部24をガイドとして筒状衝撃体23を上記段差面25に落下衝突させる。これにより、スリーブ14の端面には大径部26を介して当て面27から衝撃が全周にわたって均等に与えられることになり、スリーブ14はアンカー本体13のテーパ部15の存する方へスムースに移動して拡開する。
【0022】
図10の(a)及び(b)はアンカー11の他の実施形態を示す。この実施形態は、アンカー本体13のテーパ部15が周方向に等間隔をおいて3箇所に、つまり120度のピッチで形成されているものであり、他は先の実施形態と同じである。この3つのテーパ部15は、アンカー本体13の端部に対して、周方向に角度120度ずれた位置から加圧治具で軸直角方向に圧力を加えることにより形成することができる。
【0023】
本実施形態の場合は、スリーブ14の2つのスリット17は周方向に180度のピッチで形成されているのに対し、アンカー本体13の3つのテーパ部15は周方向に120度のピッチで形成されている。従って、この3つのテーパ部15のうちの1つがスリット17の1つに対抗する位置関係になることがあっても、残り2つのテーパ部15はスリット17からは必ず位置がずれた関係になる。よって、スリーブ14をテーパ部15の存する存する方へ移動させると、このスリーブ14が必ず拡開することになる。つまり、全てのスリット17がテーパ部15に嵌まってスリーブ14が予定通りに拡開しないという事態を避けることができる。
【0024】
図11の(a)及び(b)はアンカー11の他の実施形態を示す。この実施形態は、アンカー本体13のテーパ部15が周方向に90度のピッチで4箇所に形成されているものであり、他は先の実施形態と同じである。この4つのテーパ部15は、アンカー本体13の端部に対して、周方向に角度90度ずれた位置から加圧治具で軸直角方向に圧力を加えることにより形成することができる。本実施形態の場合も、図10の例と同様にスリーブ14をテーパ部15の存する方へ移動させると、このスリーブ14が必ず拡開することになる。
【0025】
なお、アンカー本体13のテーパ部15は周方向に間隔をおいて5箇所以上に形成するようにしてもよい。また、スリーブ14のスリット17も2箇所に限らず1箇所にしてもよく、或いは周方向に間隔をおいて3箇所以上に形成するようにしてもよい。
【0026】
また、上記定着部構造は、上記アンカー11に限らず、他の定着孔を有する物体と棒状体との結合に用いることができる。
【0027】
また、アンカー11及びスリーブ14には亜鉛メッキなど他のメッキを施してもよい。
【0028】
また、上記棒状体及びスリーブは、塑性変形する金属材によって形成されていればよく、メッキを施さない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る空石積み工を示す断面図。
【図2】 同実施形態に係る玉石とアンカーとストッパ板との関係を示す斜視図。
【図3】 同実施形態に係るアンカーの正面図。
【図4】 同アンカーのスリーブの斜視図。
【図5】 同アンカーの本体先端部を示す斜視図。
【図6】 同アンカーのスリーブをテーパ部分に嵌め込んだ状態(スリーブが拡開した状態)を示す斜視図。
【図7】 同アンカーを玉石に定着させた状態を示す斜視図。
【図8】 本発明の実施形態に係るハンマーの分解斜視図。
【図9】 同ハンマーを上記アンカーに適用した状態を示す斜視図。
【図10】 (a)は本発明の他の実施形態に係るアンカーの要部を示す正面図。(b)は同実施形態に係るアンカー本体をテーパ部側から軸方向に見た図。
【図11】 (a)は本発明のさらに他の実施形態に係るアンカーの要部を示す正面図。(b)は同実施形態に係るアンカー本体をテーパ部側から軸方向に見た図。
【符号の説明】
1 道路又は河床
2 法面
3 天端
4 玉石(定着孔を有する物体)
5 基礎コンクリート
6 天端コンクリート
7 割栗石
8 地山
9 吸出し防止材9
11 アンカー
12 ストッパ板
13 アンカー本体
14 スリーブ
15 テーパ部
16 抜け止め
17 スリット
19 定着孔
21 ハンマー
22 ハンマー本体
23 筒状衝撃体
24 小径ロッド部
25 段差面
26 大径部
27 当て面
29 嵌入溝
31 スリット

Claims (1)

  1. 棒状体に嵌められたスリーブを、該棒状体の末広がりになった部分に向かって強制移動させるための棒状体用ハンマーであって、
    小径ロッド部と、この小径ロッド部の先端に段差面を介して続く大径部とを備え、該大径部は先細に形成されてその先端面が上記スリーブの端面に当てる当て面に形成され、上記棒状体を嵌め入れる溝が側面に開口し且つ全長にわたって延びているハンマー本体と、
    上記小径ロッド部に嵌められ、該小径ロッド部をガイドとして上記段差面に衝突させて上記大径部を介して上記スリーブの端面に衝撃を与える筒状衝撃体とからなり、
    上記筒状衝撃体に、上記棒状体を上記ハンマー本体の溝に導入するための軸方向全長にわたって延びるスリットが形成されていることを特徴とする棒状体用ハンマー。
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