JP4277410B2 - 印刷インキ用ポリウレタン樹脂、印刷インキ用バインダーおよび印刷インキ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、印刷インキ用ポリウレタン樹脂、印刷インキ用バインダーおよび印刷インキに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、被包装物の多様化、包装技術の高度化に伴い、包装材料として各種のプラスチックフィルムが開発され使用されている。これら種々のプラスチックフィルムに印刷するため、印刷インキにはこれまでに無い高度な性能、品質が要求されるようになってきている。その中でポリウレタン樹脂は強靭で、各種の物性のコントロールが容易である事から、印刷インキ用樹脂として多用されている。
【0003】
しかしながら、ポリウレタン樹脂を主成分とする印刷インキは溶剤に対する溶解性が良くないため、版の画線部の箇所にインキが乾燥堆積する部分が生じ、特に版の浅い部分が詰まってしまう現象、すなわち「版づまり現象」が起こりやすいという大きな欠点を有している。特に環境問題からトルエンのような芳香族系溶剤を含まない、ケトン系溶剤やエステル系溶剤を主成分とする「ノントルエン型インキ」では、溶剤の蒸発スピ−ドが速いため、この「版づまり現象」が顕著に現れ易い。
【0004】
そこで「版づまり現象」を解消するために、低分子量のポリウレタン樹脂を使用したり、界面活性剤を併用したりするなどの方法が試みられている。しかしながら低分子量のポリウレタン樹脂を使用したインキや、界面活性剤を併用したインキを使用して得られた印刷物は、印刷インキの接着性が劣るという欠点を有する。このように「版づまり現象」と「接着性」を両立させた技術は今まで無かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術で解決しえなかった問題点即ち、「版づまり現象」と「接着性」を両立させた印刷インキ組成物を提供すべく好適なポリウレタン樹脂につき鋭意研究を行った。その結果、特定のポリウレタン樹脂を印刷インキ用樹脂として用いることにより前記問題点を悉く解決した。本発明は、かかる新しい知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、(a)数平均分子量500〜10000のポリオ−ル、(b)ジイソシアネ−ト化合物、(c)鎖伸長剤および(d)鎖長停止剤からなる印刷インキ用ポリウレタン樹脂において、(d)鎖長停止剤として下記一般式(1):
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、R:炭素数8〜18の飽和又は不飽和炭化水素基、X:水素原子、ヒドロキシエチル基、炭素数1〜18の飽和又は不飽和炭化水素基)で表されるモノアミン化合物を使用することを特徴とする印刷インキ用ポリウレタン樹脂;該ポリウレタン樹脂を含有してなる印刷インキ用バインダー;ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびアルコ−ル系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤を印刷インキ中の全溶剤分に対して90重量%以上含み、該印刷インキ用バインダーを含有してなる印刷インキに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のポリウレタン樹脂の構成成分である(a)数平均分子量500〜10000のポリオール成分としては特に制限されず、ポリウレタン樹脂の高分子ポリオールとして使用されている各種のものを使用できる。具体的には、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体であるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンジオール(ブロックおよび/またはランダム)ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール等の脂肪族ジオールやビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、m−およびp−キシリレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−ジフェニルプロパン等の環状基を有するジオール類等と、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、アゼライン酸、セバシン酸等脂肪族ジカルボン酸等を脱水縮合させて得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合してえられるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、等の各種公知の高分子ポリオールが例示される。
【0010】
本発明のポリウレタン樹脂の構成成分である(b)ジイソシアネート化合物としては特に制限されず、公知の芳香族、脂肪族及び脂環族のジイソシアネート類が使用できる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4− ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4− ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等がその代表例である。
【0011】
本発明のポリウレタン樹脂の構成成分である(c)鎖伸長剤としては各種公知のポリアミン化合物を使用することができる。具体的にはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジアミン等があげられる。また分子内に水酸基を有するジアミン類、例えば2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等のポリアミン化合物も使用できる。
【0012】
本発明のポリウレタン樹脂の構成成分である(d)鎖長停止剤には一般式(1)で表される化合物を用いる必要がある。一般式(1)で表される化合物の具体例としては、Xが水素原子の場合n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどが掲げられる。Xが炭素数1〜18の飽和又は不飽和炭化水素基の場合、ジ−n−オクチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジステアリルアミンなどが掲げられる。Xがヒドロキシエチル基の場合オキシエチレンドデシルアミン、オキシエチレンステアリルアミンなどが掲げられる。これら(d)鎖長停止剤は単独で使用してもよく、また数種を併用してもよい。また、一般式(1)で表される化合物以外の鎖長停止剤も本発明の効果を逸脱しない範囲で併用することができる。一般式(1)で表される化合物以外の鎖長停止剤の具体例としてはジ−n−ブチルアミン、モノ−n−ブチルアミン、ジエタノ−ルアミン、モノエタノ−ルアミン等が掲げられる。
【0013】
一般式(1)で表される化合物は全鎖長停止剤中に30重量%以上、好ましくは50重量%以上含まれる必要がある。一般式(1)で表される化合物が全鎖長停止剤中30重量%未満では再溶解性が低下するため好ましくない。
【0014】
本発明のポリウレタン樹脂を製造する方法としては、例えば高分子ポリオールと過剰のジイソシアネート化合物より、高分子ポリオールの両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを調製し、更に鎖伸長剤及び鎖長停止剤と反応させる方法が掲げられる。
【0015】
この製造方法において、上記ポリウレタンプレポリマーの製造に際しては、高分子ポリオールの水酸基を1g当量としたとき、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基が1.3g当量を超え4.5g当量以下となるように配合のが好ましい。イソシアネ−ト基が1.5g当量を超え4.0g当量以下となるようジイソシアネート化合物を配合した場合が最適である。イソシアネート基が1.3g当量以下の場合、耐ブロッキング性が低下するため好ましくない。またイソシアネ−ト基が4.5g当量を超えた場合得られるポリウレタン樹脂の接着性が劣る傾向にある。
【0016】
両末端にイソシアネ−ト基を有するウレタンプレポリマ−と鎖伸長剤及び鎖長停止剤との反応に際しては、ウレタンプレポリマ−のイソシアネ−ト基の量を1g当量とした場合、鎖伸長剤及び鎖長停止剤中のアミノ基の合計が0.8〜1.20g当量とするのが好ましい。アミノ基が0.8g当量未満の場合は耐ブロッキング性が低下するため好ましくない。またアミノ基が1.20g当量を超える場合、鎖伸長剤が未反応のままポリウレタン樹脂中に残存し悪臭がするため好ましくない。
【0017】
また本発明におけるポリウレタン樹脂の製造は、溶剤の存在下または不存在下で行われる。使用できる溶剤としては通常、印刷インキ用の溶剤としてよく知られているベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤を単独または混合して使用できる。更に「ノントルエン型インキ」を得るためには、本発明のポリウレタン樹脂の製造に用いる溶剤はエステル系溶剤および/またはケトン系溶剤を主成分に使用するのが特に好都合である。溶剤の使用量は該ポリウレタンと溶剤の重量比が100/0〜10/90、好ましくは60/40〜20/80の範囲になる量である。
【0018】
叙上の如くして得られる本発明のポリウレタン樹脂は、鎖長停止剤のアミノ基がプレポリマーの末端のイソシアネート基と反応しウレア結合を形成した構造を有していると考えられる。本発明のポリウレタン樹脂の数平均分子量は、5000〜100000の範囲内とするのが好適である。数平均分子量が5000に満たない場合にはこれをビヒクルとして用いた印刷インキの「ブリード現象」が発生する傾向があり、一方100000を越える場合にはポリウレタン樹脂溶液の粘度が高くなり、「版かぶり現象」のが生じやすくなり好ましくない。
【0019】
上記の方法で得られたポリウレタン樹脂溶液に着色剤、溶剤、必要に応じてインキ流動性改良および表面皮膜改良のための界面活性剤、ワックス、その他の添加剤を適宜配合し、ボールミル、アトライター、サンドミル等の通常のインキ製造装置を用いて混練することによって本発明の目的に合致する印刷インキ組成物を収得することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の印刷インキは、「版かぶり現象」と「ブリード現象」共に優れた性質のものである。更に印刷インキの溶剤成分中にケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコ−ル系溶剤を90重量%以上含む「ノントルエン型インキ」においては特に顕著な「版づまり現象」の改善効果が得られるという特徴を有するものである。
【0021】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら各例に限定されるものではない。尚、各例中、部及び%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
【0022】
実施例1
攪拌機、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1000のポリ(3−メチルペンタンアジペート)ジオール525.1部とイソホロンジイソシアネート174.9部を仕込み、窒素気流下に130℃で6時間反応させプレポリマーを製造したのち、メチルエチルケトン300.0部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液1000部を得た。次いで、イソホロンジアミン37.3部、ドデシルアミン11.2部、メチルエチルケトン864.3部及びイソプロピルアルコール582.2部からなる混合物を前記ウレタンプレポリマー溶液に添加し、50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液Aは、樹脂固形分濃度が30%、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(以下数平均分子量はGPCによるものである。)は25000であった。
【0023】
実施例2
実施例1と同様の反応装置を用い、実施例1と同様のウレタンプレポリマー溶液1000部を調製した後、イソホロンジアミン36.7部、オキシエチレンドデシルアミン15.6部、メチルエチルケトン870.2部及びイソプロピルアルコール585.0部からなる混合物を添加し、50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液Bは、樹脂固形分濃度が30%、ポリウレタン樹脂の数平均分子量は22000であった。
【0024】
実施例3
実施例1と同様の反応装置を用い、実施例1と同様のウレタンプレポリマー溶液1000部を調製した後、イソホロンジアミン37.1部、ドデシルアミン6.9部、オキシエチレンドデシルアミン6.1部、メチルエチルケトン866.8部及びイソプロピルアルコール583.4部からなる混合物を添加し、次いで50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液Cは、樹脂固形分濃度が30%、ポリウレタン樹脂の数平均分子量は23000であった。
【0025】
実施例4
実施例1と同様の反応装置を用い、実施例1と同様のウレタンプレポリマー溶液1000部を調製した後、イソホロンジアミン37.6部、ドデシルアミン5.5部、ジ−n−ブチルアミン3.7部、メチルエチルケトン861.5部及びイソプロピルアルコール581.0部からなる混合物を添加し、次いで50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液Dは、樹脂固形分濃度が30%、ポリウレタン樹脂の数平均分子量は26000であった。
【0026】
比較例1
実施例1と同様の反応装置を用い、実施例1と同様のウレタンプレポリマー溶液1000部を調製した後、イソホロンジアミン37.8部、モノエタノールアミン3.1部、メチルエチルケトン852.5部及びイソプロピルアルコール576.3部からなる混合物を添加し、次いで50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液Eは、樹脂固形分濃度が30%、ポリウレタン樹脂の数平均分子量は27000であった。
【0027】
比較例2
実施例1と同様の反応装置を用い、実施例1と同様のウレタンプレポリマー溶液1000部を調製した後、イソホロンジアミン37.8部、モノエタノールアミン1.5部、ジ−n−ブチルアミン3.7部、メチルエチルケトン855.8部及びイソプロピルアルコール577.8部からなる混合物を添加し、次いで50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液Fは、樹脂固形分濃度が30%、ポリウレタン樹脂の数平均分子量は27000であった。
【0028】
実施例1〜4及び比較例1〜2
チタン白(ルチル型)40部、実施例1〜4および比較例1〜2で得られたポリウレタン樹脂溶液A〜F40部、酢酸エチル20部からなる組成の混合物をそれぞれペイントシェイカーで練肉し、白色印刷インキを調製し、表1に示す6点の白色インキを作製した。
【0029】
(再溶解性試験)
得られた白色インキをガラス板に塗布し10秒風乾後、溶剤(酢酸エチル/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール=2/2/1)に浸漬し、再溶解性を目視観察した。結果を表1に示す。
評価基準
○:インキ皮膜の80%以上が溶解
○△:インキ皮膜の60〜80%未満が溶解
△:インキ皮膜の40〜60%未満が溶解
△×:インキ皮膜の20〜40%未満が溶解
×:ほとんど溶解ぜず残った
【0030】
(接着性試験)
得られた白インキをポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ナイロンフィルム(NY)の片面にバーコータ(No.4)を使用して印刷し、40〜50℃で乾燥し、印刷フィルムを得た。そして得られた印刷フィルムの印刷面上にニチバン株式会社製の18mm幅の粘着テープ(登録商標セロテープ)を貼り付け、この粘着テープの一端を印刷面に対して直角方向に急速に引き剥がした時の印刷面の状態を目視観察した。
評価基準
○:インキ皮膜の80%以上がフィルムに残った。
△:インキ皮膜の40%以上80%未満がフィルムに残った。
×:インキ皮膜の40%未満がフィルムに残った。
【表1】
Claims (5)
- (a)数平均分子量500〜10000のポリオ−ル、(b)ジイソシアネ−ト化合物、(c)鎖伸長剤および(d)鎖長停止剤からなる印刷インキ用ポリウレタン樹脂において、(d)鎖長停止剤として下記一般式(1):
- 一般式(1)で示される(d)鎖長停止剤が全鎖長停止剤成分中に30重量%以上含まれる請求項1記載の印刷インキ用ポリウレタン樹脂。
- 請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂を含有してなる印刷インキ用バインダー。
- 請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂をケトン系溶剤、エステル系溶剤およびアルコ−ル系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤に溶解させたことを特徴とする請求項3に記載の印刷インキ用バインダー。
- ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびアルコ−ル系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤を印刷インキ中の全溶剤分に対して90重量%以上含み、請求項3または4に記載の印刷インキ用バインダーを含有してなる印刷インキ。
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