JP4276010B2 - 印刷機における駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多色印刷機または両面印刷機の印刷ユニットに設けられたインク装置または給水装置等を駆動するための印刷機における駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
[従来技術1]
例えば、多色印刷機においては、印刷する色数によっては必ずしも全ての印刷ユニットを駆動させる必要はなく、複数の印刷ユニットのうち一部の印刷ユニットを駆動しないことがある。このときは、駆動を要しない印刷ユニットのインク装置や給水装置の駆動を停止させるために、各印刷ユニットに駆動源との連結を切断および接続するための駆動断接手段が設けられている。また、この駆動断接手段による切断時における版胴の位相とインキ往復ローラの位相との関係を、接続時に正確に対応させないと印刷物の品質が低下するため、駆動断接手段による切断時におけるインキ往復ローラの往復動の位相と版胴の位相とをそれぞれ検知するロータリエンコーダと、この検知した位相を記憶する制御装置とが備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
[従来技術2]
図12ないし図15は、従来の印刷機における駆動装置に採用されている駆動断接手段を示し、図12は駆動断接手段の一部を破断して示す正面図、図13は同じく第1の歯車を示し、同図(a)は側断面図、同図(b)は第1の係合突起の配置状態を示す底面図、図14および図15は第1の歯車の係合突起および歯と第2の歯車の係合突起との相互の位相の関係を説明するためのモデル図であって、図14は第1の係合突起と第2の係合突起との係合が外れた直後の状態を示し、図15は再び第1の係合突起が第2の係合突起に係合するときの不都合な状態を示す。
【0004】
図12において、106は版胴の端軸に軸着された駆動歯車であって、駆動源となる本機モータに連結されており、本機モータの駆動によりこの歯車106を介して版胴が回転する。111は第1の歯車であって、フレーム102に植設された軸114に軸線方向の移動が規制された状態で、回転自在に軸支持されている。この第1の歯車111には、駆動歯車106の歯106aと常時噛合する34枚の歯111aが設けられ、側面には第1の歯車111の回転方向に等角度おいて4つの第1の係合突起111bが突設されている。したがって、図14(c)に示すこの第1の歯車111の隣接する歯111a,111a間の歯間角度θ2と、同図(b)に示すように、隣接する係合突起111b,111b間の突起間角度θ1とは異なり、かつθ2がθ1の整数倍でもない。
【0005】
図12において、112は第2の歯車であって、前記第1の歯車111と同軸上に軸支されるように、軸114の端部114aに回転自在かつ軸線方向に移動自在に支持されており、周面に被動歯車124の歯124aと常時噛合する歯112aが設けられ、側面に上記第1の歯車111の係合突起111bに係合する係合突起112bが突設されている。したがって、この係合突起112bは、図11(a)に示すように、円周方向に等角度θ1おいて4つ設けられている。被動歯車124には、インキ装置のインキローラを駆動する歯車(いずれも図示せず)に噛合しており、本機モータの駆動により版胴が回転するとともに、駆動歯車106、第1および第2の歯車111,112、被動歯車124を介してインキローラが同期して駆動する。
【0006】
図12において、113はエアシリンダーであって、フレーム102に対向するように固定されたブラケット116に補助ブラケット117を介して取り付けられており、ロッド118に上記第2の歯車112が取り付けられている。したがって、エアシリンダー113のロッド118が前進することにより、第2の歯車112の係合突起112bが第1の歯車111の係合突起111bに係合する。一方、エアシリンダー113のロッド118が後退することにより、第2の歯車112の係合突起112bと第1の歯車111の係合突起111bとの係合が解除する。なお、上述した従来技術のうち従来技術2は、出願人が出願時点で知る限りにおいて文献公知ではない。また、本出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに見付け出すことはできなかった。
【0007】
【特許文献1】
実用新案登録第2537504号公報(段落「0009」、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術のうち従来技術1においては、駆動源とインキ往復ローラとの連結の切断および接続を電磁クラッチで行う構造としているため、駆動を確実に伝達するのにはクラッチ板相互の面圧を高くする必要があり、電磁装置の容量が大きくなるため高価になるという問題があった。
【0009】
また、従来技術2においては、第1および第2の歯車111,112の係合突起111b,112bどうしを係合させることにより駆動力を伝達する構造であるため、エアシリンダー113のエアの圧力を比較的小さくすることができるから高価となることはない。しかしながら、第1の歯車111の歯111aの歯数と、この第1の歯車111と噛合する駆動歯車106の歯106aの歯数が異なると、第1の歯車111と第2の歯車112との連結が切断された後、再び連結されるときに、互いの係合突起111bと係合突起112bとの係合ができなくなるという問題があった。
【0010】
これを説明すると、第1の歯車111と第2の歯車112との連結が切断された直後は、図14(a)に示す第2の歯車112の4つの係合突起112bと、同図(b)に示す第1の歯車111の係合突起111bとが係合可能な位相関係になっている。また、同図(c)にハッチングを付した歯111aが、第1の歯車111と第2の歯車112との連結を切断したときの第1の歯車111の回転方向の便宜上の位相を示している。
【0011】
第1の歯車111と第2の歯車112との連結が切断されている間、駆動歯車106が回転しているので、この歯車106と噛合している第1の歯車111も回転する。再び、第1の歯車111と第2の歯車112とを接続するとき、切断したときと同じ版胴の位相で本機モータを停止させるため、駆動歯車106は切断したときと同じ位相で停止する。しかしながら、この駆動歯車106と、これと噛合している第1の歯車111とは、互いの歯数が異なるために、第1の歯車111は、ハッチングを付した歯111aで示すように、切断したときとは同じ位相に位置付けられない場合があり、図15(c)に示すように、θ2の整数倍の位相だけずれた位置で停止することがある。
【0012】
したがって、この第1の歯車111の係合突起111bも、同図(b)に示すように、第1の歯車111と第2の歯車112との連結が切断されたときの図14(b)に示す位相から、θ2の整数倍の角度だけずれた位相で停止する。上述したように、θ1がθ2と異なり、かつθ2がθ1の整数倍でもないから、θ2の整数倍だけずれた位相で停止した図15(b)に示す第1の歯車111の係合突起111bの位相は、図14(b)に示す連結を切断したときの位相と異なった位相に位置付けられる。したがって、この図15(b)に示す第1の歯車111の係合突起111bの位相が、同図(a)に示す第2の歯車112の係合突起112bの位相とは一致しなくなる。
【0013】
換言すれば、版胴の1回転当たりの第1の歯車111の回転数iが整数、すなわち版胴1回転で第1の歯車111が2回転、3回転となるように歯車106と第1の歯車111の歯数が設定されていれば、第1の歯車111と第2の歯車112との連結を切断したときと同じ版胴の位相で本機モータを停止させれば、第1の歯車111も切断したときと同じ位相で停止するから、第1の歯車111の係合突起111bの位相が、第2の歯車112の係合突起112bの位相と一致するので、互いの係合突起111b,112bとが係合可能となり問題はない。
【0014】
しかしながら、歯車106と第1の歯車111の歯数によってはiが整数にならない場合があり、この場合には、第1の歯車111の位相が切断時の位相に位置付けられないことがある。このため、再び、第1の歯車111と第2の歯車112とを接続するとき、これら係合突起111bと係合突起112bとが係合できなくなるという問題があった。
【0015】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、駆動力を確実に伝達できる廉価な印刷機の駆動装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、駆動源により駆動される第1の駆動装置と、この駆動装置と駆動連結される第2の駆動装置と、前記第1の駆動装置から前記第2の駆動装置への駆動伝達を断接する駆動断接手段とを備え、前記駆動断接手段は、回転可能に支持され前記第1の駆動装置または前記第2の駆動装置の一方と常時駆動連結された第1の係合部材と、回転可能に支持され前記第1の駆動装置または前記第2の駆動装置の他方と常時駆動連結され、前記第1の係合部材と係合可能な第2の係合部材とによって構成され、前記第1の係合部材はその外周に複数設けられた歯と、この歯と一体的に回転し複数設けられた第1の係合部とを備え、前記第2の係合部材は前記第1の係合部と係合する第2の係合部を備え、前記第1の係合部と前記第2の係合部とが係合することにより前記第1の駆動装置と前記第2の駆動装置とが駆動連結され、前記第1の係合部と前記第2の係合部の係合が外れることにより前記第1の駆動装置と前記第2の駆動装置との駆動が断たれ、前記複数の第1の係合部はそれぞれの形状が同一で前記第1の係合部材の回転方向に等間隔に配置されている印刷機における駆動装置において、前記第1の係合部の数を前記歯の歯数の整数倍に形成したものである。
したがって、駆動断接手段によって第1の駆動装置と第2の駆動装置とが駆動連結されるとき、第1の係合部材の位相が駆動系を切断したときと異なっていたとしても、その異なった位相分が互いに隣接する第1の係合部間の歯間角度の整数倍になるから、第1の係合部と第2の係合部との互いの位相関係が駆動系を切断したときと同じ状態になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る印刷機における駆動装置の一部を破断し展開して示す正面図、図2は同じく側面図、図3は同じく要部を拡大し一部を破断して示す正面図、図4は同じく第1の歯車を示し、同図(a)は側断面図、同図(b)は底面図、図5は同じく構成を示すブロック図、図6は同じく駆動断接手段において接続時おける版胴側の歯車の歯と、第1の歯車の外歯および内歯と、第2の歯車の歯の位置関係を示す模式図、図7および図8は同じく第1の歯車の内歯および外歯と第2の歯車の歯との相互の位相の関係を説明するための模式図であって、図7は第1の歯車の内歯と第2の歯車の歯との係合が外れた直後の状態を示し、図8は再び第1の歯車の内歯と第2の歯車の歯とが噛合するときの状態を示す。
【0018】
図1に符号1で示す第1の駆動装置としての版胴は、端軸3が左右のフレーム2,2(一方のフレーム2は図示を省略)に回転自在に支持されており、端軸3のフレーム2から突出した突出端部には、本機モータ5(図5参照)を駆動源として回転する駆動歯車4が軸着されている。6は駆動歯車4に一体に形成された中間歯車であって、周面に70枚の歯6aが設けられている。
【0019】
次に、図3および図4を用いて本発明の特徴である駆動断接手段10について説明する。
図3に示すように、駆動断接手段10は、中間歯車6と常時噛合する第1の係合部材としての第1の歯車11と、この第1の歯車11と噛合する第2の係合部材としての第2の歯車12と、第1の歯車11の第2の歯車12との噛合および噛合を解除させるクラッチ用アクチュエータとしてのエアシリンダー13とによって概ね構成されている。
【0020】
このうち、第2の歯車12は、フレーム2に植設された軸14に軸線方向の移動が規制され、かつ回転自在に支持されており、一端側には後述する被動歯車24に常時噛合する歯12aが設けられ、他端側に歯幅が小さく形成された34枚の第2の係合部としての歯12bが設けられている。
【0021】
第1の歯車11には、図4に示すように、外周に設けられ常時中間歯車6の歯6aと噛合する外歯11aと、内周に設けられ第2の歯車12の第2の係合部としての歯12bと噛合する第1の係合部としての内歯11bとがそれぞれ設けられており、内歯11bの歯数が外歯11aの歯数と同数の34枚に形成されている点が本発明の特徴である。また、第1の歯車11の34枚の各内歯11bの第1の歯車11の回転方向における位置、すなわち位相と、34枚の各外歯11aの位相とは、図4(b)に示すように一致している。
【0022】
図3において、16はフレーム2に対向するようにフレーム2に取り付けられたブラケットであって、このブラケット16にエアシリンダー13が補助ブラケット17を介して固定されている。19は略円筒状に形成された移動部材であって、エアシリンダー13のロッド18に軸線方向への移動が規制されかつ回転自在に支持されており、この移動部材19は軸14の端部14aに、軸受を介して回転自在かつ軸線方向に移動自在に支持されている。
【0023】
この移動部材19の下端部のフランジ19aには、上記第1の歯車11が固定されており、エアシリンダー13のロッド18を前進させることにより、移動部材19を介して第1の歯車11が図中左方に移動する。したがって、第1の歯車11の内歯11bが第2の歯車12の歯12bと噛合し、中間歯車6の回転がこの第1の歯車11を介して第2の歯車12に伝達される。一方、エアシリンダー13のロッド18を後退させることにより、第1の歯車11の内歯11bと第2の歯車12の歯12bとの噛合が解除され、中間歯車6から第2の歯車12への回転伝達が遮断される。
【0024】
図1において、20は第2の駆動装置としてのインキ装置であって、2本の振りローラ21,22が備えられており、それぞれの軸21a,22aが図示を省略した軸受を介してフレーム2に軸線方向に移動自在かつ回転自在に支持されている。23は回転伝達軸であって、両端部がフレーム2とブラケット16とに回転自在に支持されており、上記した第2の歯車12と常時噛合した被動歯車24が軸着されている。なお、図1には説明の便宜上、被動歯車24が第2の歯車12と常時噛合した状態を示すために、二点鎖線によって被動歯車24を図示している。
【0025】
回転伝達軸23の突出端部には、傾斜した軸芯を有する首振り軸部23aが設けられており、この首振り軸部23aには、駆動用振りレバー25の中央部が首振り軸部23aの軸方向への抜けを規制されて回転自在に嵌装されている。この駆動用振りレバー25の両端部は、上記振りローラ21,22の軸21a,22aの先端部のそれぞれに、軸方向への抜けが規制された状態で係合している。
【0026】
図2において、27は回転伝達軸23の端面に固定されたドグ、28はドグを検出する原点センサであって、ブラケット16に取り付けられている。図5において、29は本機の位相を検出する本機エンコーダ、30は制御装置であって、原点センサ28によって検出子を検出したときに本機エンコーダ29によって検出された本機の位相を記憶し、この記憶した位相に基づき、上記した駆動断接手段10を接続するときに、本機モータ5の駆動とエアシリンダーー13の駆動を制御する。
【0027】
次に、図1ないし図6を用いて、このような構成の印刷機における駆動装置の駆動動作について説明する。
【0028】
先ず、印刷動作中においては、図3に示すように、エアシリンダー13のロッド18が前進し、第1の歯車11の内歯11bが第2の歯車12の歯12bに噛合している。したがって、本機モータ5の駆動によって駆動歯車4が回転することにより、版胴1が回転するとともに、この駆動歯車4の回転は、中間歯車6および第1の歯車11を介して第2の歯車12に伝達されるから、この第2の歯車12に噛合している被動歯車24が回転し、図1における回転伝達軸23が回転する。
【0029】
この回転伝達軸23の回転によって、傾斜した軸芯を有する首振り軸部23aに中央部が回転自在に嵌装されている駆動用振りレバー25の両端部は、交互に矢印A−B方向に移動するため、振りローラ21,22も交互に矢印A−B方向に往復動する。
【0030】
ここで、使用しない印刷ユニットがあるときは、該当する印刷ユニットにおいて、原点センサ28によってドグ27を検出するまで本機モータ5を駆動し、原点センサ28によってドグ27を検出したら、制御装置30においては本機モータ5の駆動を停止させるように制御する。このとき、本機エンコーダ29によって、本機の位相が検出され、その位相、すなわち駆動断接手段10の切断時の位相が制御装置30に記憶される。同時に、エアシリンダー13のロッド18が後退し、第1の歯車11の内歯11bと第2の歯車12の歯12bとの噛合を解除するため、第1の歯車11と第2の歯車12との連結が切断される。したがって、本機モータ5からの回転伝達軸23への駆動が遮断されるから、振りローラ21,22の往復動が停止する。
【0031】
第1の歯車11と第2の歯車12との連結が切断された直後は、第2の歯車12の図7(a)に示す歯12bの位相と、同図(b)に示す第1の歯車11の内歯11bとの位相が図6に示すように互いに一致し、内歯11bと歯12bとが係合可能な位相関係になっている。このとき、同図(c)にハッチングを付した外歯11aが、第1の歯車11と第2の歯車12との連結を切断したときの第1の歯車11の便宜上の位相を示している。
【0032】
この状態としてから、本機モータ5を駆動することにより、使用する印刷ユニットにおいては印刷動作が行われるが、使用しない印刷ユニットにおいては、版胴1が回転し、振りローラ21,22の往復動が停止するため、印刷動作は行われない。このとき、中間歯車6と常時噛合している第1の歯車11は、本機モータ5の駆動によって回転している。
【0033】
次いで、使用していない印刷ユニットを再び使用する場合には、制御装置30において記憶した本機の位相を本機エンコーダ29によって検出し、本機の位相が駆動断接手段10の切断時の位相になったら制御装置30は本機モータ5を停止させる。
【0034】
このとき、中間歯車6の歯6aの歯数と第1の歯車11の外歯11aの歯数とが異なることにより、第1の歯車11が、ハッチングを付した外歯11aが示すように、第1の歯車11と第2の歯車12との連結を切断したときの図7(c)に示した位相から、図8(c)に示すようにθの整数倍の角度だけずれた位相に位置付けられることがある。したがって、第1の歯車11の内歯11bも、図8(b)に示すように、第1の歯車11と第2の歯車12との連結が切断されたときの図7(b)に示した位相から、θの整数倍の角度だけずれた位相に位置付けられている。
【0035】
ここで、第1の歯車11の互いに隣接する内歯11b間の歯間角度が、互いに隣接する外歯11a間の歯間角度と同じ歯間角度θに形成されている。したがって、第1の歯車11と第2の歯車12との連結を再び接続するときにおける第1の歯車11の図8(b)に示す内歯11bの位相が、連結を切断したときの図7(b)に示す内歯11bの位相と一致している。このため、第1の歯車11と第2の歯車12との連結を再び接続するときの第1の歯車11の図8(b)に示す内歯11bの位相と、第2の歯車12の図8(a)に示す歯12bの位相との関係が、連結を切断したときにおける図7(a),(b)と同じ位相関係になっている。すなわち、第1の歯車11の内歯11bと第2の歯車12の歯12bとは、第1の歯車11と第2の歯車12との連結を切断したときと同じ状態である図6に示すように、互いに噛合可能なように対向する。
【0036】
したがって、この状態で、エアシリンダー13のロッド18が前進することにより、第1の歯車11の内歯11bと第2の歯車12の歯12bとが確実に噛合するから、駆動断接手段10によって本機モータ5の駆動がインキ装置20の被動歯車24に伝達されるため印刷動作が開始される。
【0037】
このように、駆動断接手段10による切断および接続を、第1の歯車11の内歯11bと第2の歯車12の歯12bとの噛合および噛合の解除によって行うようにしたから、エアシリンダー13を駆動する駆動力を大きくすることがないため、エアシリンダー13として相対的に廉価なものを使用することができる。
【0038】
なお、上述した第1の実施の形態においては、第1の歯車11の回転方向における34枚の各内歯11bの位相と、34枚の各外歯11aの位相とが一致しているが、必ずしも一致していなくてもよく、内歯11bと外歯11aの歯数が同一であればよい。また、第1の歯車11の内歯11bの替わりに、係合突起等の係合部としてもよく、その場合には、これら複数の係合部はそれぞれの形状が同一で第1の歯車11の回転方向に等間隔に配置され、これら係合部を第1の歯車11の外歯11aと同数に形成するとともに、第2の歯車12にもこの係合部と係合可能な係合部を形成する。
【0039】
また、第2の歯車12の歯12bの歯数を第1の歯車11の内歯11bの歯数と同数の34枚としたが、必ずしも同数とする必要はなく少なくとも1枚形成されていればよい。また、第1の歯車11の外歯11aの歯数と内歯11bの歯数とを同一としたが、内歯11bの歯数を外歯11aの歯数の整数倍としても同じ作用効果が得られる。また、第1の歯車11を版胴1側の駆動歯車6と噛合させたが、インキ装置20側の被動歯車24と噛合させ、第2の歯車12を駆動歯車6と噛合させるようにしてもよい。また、第2の歯車12の第2の歯12bの歯数を複数としたが、第1の歯車11の複数の内歯11bのいずれか一つに噛合できるように少なくとも1つ形成すればよい。また、第1の歯車11を版胴側の中間歯車6に噛合させたが、インキ装置20の被動歯車24に噛合させ、第2の歯車12を版胴側の中間歯車6に噛合させるようにしてもよい。
【0040】
図9は本発明の第2の実施の形態を示し、同図(a)は第1の係合部材としての第1の歯車の側断面図、同図(b)は底面図である。
【0041】
この第2の実施の形態においては、第1の歯車11の内周面にスプラインの溝11cを設け、この溝11cと係合する第2の歯車12の歯12bをスプラインの歯とし、溝11cの数を17とした点が上述した第1の実施の形態と異なる。
【0042】
この第2の実施の形態を用いて、第1の係合部としての溝11cの数を、版胴1の1回転当たりの第1の歯車11の回転数に基づき決めることにより、上述した第1の実施の形態と同様に、第1の歯車11の溝11cが切断時と同じ位置に位置付けられることを説明する。
【0043】
すなわち、版胴1の1回転当たりの第1の歯車11の回転数をiとすると、第1の歯車11は版胴1が1回転するとi回転することになる。上述したように、中間歯車6が版胴1と一体形成され、第1の歯車11がこの中間歯車6と噛合している場合、中間歯車6の歯6aの歯数Z1 が70で、第1の歯車11の歯11aの歯数Z2 が34であるとき、版胴1の1回転当たりの第1の歯車11の回転数はi=Z1/Z2=70/34となる。
【0044】
したがって、版胴1が1回転すると、第1の歯車11はi=70/34=35/17回転する。換言すれば、版胴1が1回転すると第1の歯車11は360°を17等分した角度の35倍の角度である2回転と1/17回転することになる。すなわち、版胴1の1回転により第1の歯車11は360°を17等分した角度の整数倍だけずれることになる。したがって、この第2の実施の形態のように、第1の歯車11のスプラインの溝11cの数を17とすることにより、この溝11cを切断時と同じ位置に位置付けることができる。
【0045】
これを一般論に当てはめると、胴の1回転当たりの第1の係合部の回転数iはi=B/A(A,Bは整数)と表すことができ、これらA,Bの最大公約数をNとすると、i=B/A=b*N/a*N=b/aと約分することができる。ここで、aとbとは互いに素の関係になっている。これは、胴の1回転により第1の係合部材は360°をa等分した角度の整数倍だけずれることを意味しているから、第1の係合部材の第1の係合部を360°をa等分するa個またはa個の整数倍設けることにより、第1の係合部を切断時と同じ位置に位置付けることができるということになる。
【0046】
図10は本発明の第3の実施の形態を示す印刷機における駆動装置の要部を拡大し一部を破断して示す正面図である。
【0047】
この第3の実施の形態においては、版胴1と一体的に設けられた中間歯車6と第1の歯車11との間に他の中間歯車40,41を介在させている。この第3の実施の形態においても、上述した第2の実施の形態と同様に、版胴1の1回転当たりの第1の歯車11の回転数iに基づき第1の歯車11の内歯11bの歯数を決めることにより、第2の実施の形態と同様な効果が得られる。
【0048】
図11は本発明の第4の実施の形態を示し、同図(a)は印刷機における駆動装置の要部を拡大し一部を破断して示す正面図、同図(b)は同じくプーリの径を説明するためのモデル図、同図(c)は第1の係合部材の第1の係合部の数を説明するためモデル図である。なお、同図において、上述した図12に示す従来技術において説明した同一または同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0049】
この第4の実施の形態においては、歯車106にプーリ44が一体形成され、第1の係合部材111にプーリ111cが一体に形成されており、これらプーリ44とプーリ111cとの間にベルト45が張設され、このベルト45を介して本機モータ5の駆動が第1の係合部材111に伝達される。
【0050】
この場合、版胴1の1回転当たりの第1の係合部材111の回転数iは、プーリ44の径をd1とし、プーリ111の径をd2とすると、i=d1/d2となる。このようにプーリの径からiを算出することもできる。また、i=2.125のように減速比の値が分数で表されていない場合でも、i=2125/1000=17×125/8×125=17/8のようにiを分子、分母が互いに素の関係にある整数となる分数で表すことができ、例えば、この場合は、同図(c)に示すように、第1の係合部材111の係合部111bの数を8個とすることにより、この係合部111bを切断時と同じ位相に位置付けることができる。また、この場合、係合部111bの数を8の整数倍である16個または24個としてもよい。
【0051】
なお、本実施の形態においては、第1の駆動装置を版胴1とし、第2の駆動装置をインキ装置20としたが、第2の駆動装置を給水装置としてもよい。また、第1の駆動装置を印刷機とし、第2の駆動装置を折機とし、印刷の準備作業のために両装置の駆動を断接する場合にも適用できる。また、第1の駆動装置を印刷機とし、第2の駆動装置を給紙装置としたり、第1の駆動装置を印刷機とし、第2の駆動装置を排紙装置としてもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、駆動力の接続が確実に行えるとともに廉価になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る印刷機における駆動装置の一部を破断し展開して示す正面図である。
【図2】 本発明に係る印刷機における駆動装置の側面図である。
【図3】 本発明に係る印刷機における駆動装置の要部を拡大して一部を破断して示す正面図である。
【図4】 本発明に係る印刷機における駆動装置の第1の歯車を示し、同図(a)は側断面図、同図(b)は底面図である。
【図5】 本発明に係る印刷機における駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図6】 本発明に係る印刷機における駆動装置の駆動断接手段において接続時おける版胴側の歯車の歯と、第1の歯車の外歯および内歯と、第2の歯車の歯の位置関係を示す模式図である。
【図7】 本発明に係る印刷機における駆動装置の第1の歯車の内歯および外歯と第2の歯車の歯との相互の位相の関係を説明するための模式図であって、第1の歯車の内歯と第2の歯車の歯との係合が外れた直後の状態を示す。
【図8】 本発明に係る印刷機における駆動装置の第1の歯車の内歯および外歯と第2の歯車の歯との相互の位相の関係を説明するための模式図であって、再び第1の歯車の内歯と第2の歯車の歯とが噛合するときの状態を示す。
【図9】 本発明の第2の実施の形態を示し、同図(a)は第1の係合部材としての第1の歯車の側断面図、同図(b)は底面図である。
【図10】 本発明の第3の実施の形態を示す印刷機における駆動装置の要部を拡大し一部を破断して示す正面図である。
【図11】 同図(a)は本発明の第4の実施の形態を示す印刷機における駆動装置の要部を拡大し一部を破断して示す正面図、同図(b)は同じくプーリの径を説明するためのモデル図、同図(c)は第1の係合部材の第1の係合部の数を説明するためモデル図である。
【図12】 従来の印刷機における駆動装置に採用される駆動断接手段の一部を破断して示す正面図である。
【図13】 従来の印刷機における駆動装置に採用される駆動断接手段における第1の歯車を示し、同図(a)は側断面図、同図(b)は第1の係合突起の配置状態を示す底面図である。
【図14】 従来の駆動断接手段における第1の歯車の係合突起および歯と第2の歯車の係合突起との相互の位相の関係を説明するための模式図であって、第1の係合突起と第2の係合突起との係合が外れた直後の状態を示す。
【図15】 従来の駆動断接手段における第1の歯車の係合突起および歯と第2の歯車の係合突起との相互の位相の関係を説明するための模式図であって、再び第1の係合突起が第2の係合突起に係合するときの不都合な状態を示す。
【符号の説明】
1…版胴、4…駆動歯車、5…本機モータ、10…駆動断接手段、11…第1の歯車(第1の係合部材)、11a…外歯、11b…内歯(第1の係合部)、12…第2の歯車、12b…歯(第2の係合部)、13…エアシリンダー、18…ロッド、20…インキ装置、21,22…振りローラ、24…被動歯車、27…検出子、28…原点センサ、29…本機エンコーダ、30…制御装置、40,41…中間歯車、44,111c…プーリ、45…ベルト。

Claims (4)

  1. 駆動源により駆動される第1の駆動装置と、
    この駆動装置と駆動連結される第2の駆動装置と、
    前記第1の駆動装置から前記第2の駆動装置への駆動伝達を断接する駆動断接手段とを備え、
    前記駆動断接手段は、回転可能に支持され前記第1の駆動装置または前記第2の駆動装置の一方と常時駆動連結された第1の係合部材と、回転可能に支持され前記第1の駆動装置または前記第2の駆動装置の他方と常時駆動連結され、前記第1の係合部材と係合可能な第2の係合部材とによって構成され、
    前記第1の係合部材はその外周に複数設けられた歯と、この歯と一体的に回転し複数設けられた第1の係合部とを備え、
    前記第2の係合部材は前記第1の係合部と係合する第2の係合部を備え、
    前記第1の係合部と前記第2の係合部とが係合することにより前記第1の駆動装置と前記第2の駆動装置とが駆動連結され、前記第1の係合部と前記第2の係合部の係合が外れることにより前記第1の駆動装置と前記第2の駆動装置との駆動が断たれ、
    前記複数の第1の係合部はそれぞれの形状が同一で前記第1の係合部材の回転方向に等間隔に配置されている印刷機における駆動装置において、
    前記第1の係合部の数を前記歯の歯数の整数倍に形成したことを特徴とする印刷機における駆動装置。
  2. 請求項1記載の印刷機における駆動装置において、
    前記第1の係合部を前記第1の係合部材の内周に設けた内歯歯車の歯とし、第2の係合部を前記第2の係合部材の外周に設けた外歯歯車の歯としたことを特徴とする印刷機における駆動装置。
  3. 請求項1記載の印刷機における駆動装置において、
    前記第1の係合部を第1の係合部材の内周に設けたスプラインの溝とし、前記第2の係合部をスプラインの歯としたことを特徴とする印刷機における駆動装置。
  4. 駆動源により駆動される第1の駆動装置と、
    この駆動装置と駆動連結される第2の駆動装置と、
    前記第1の駆動装置から前記第2の駆動装置への駆動伝達を断接する駆動断接手段とを備え、
    前記駆動断接手段は、回転可能に支持され前記第1の駆動装置または前記第2の駆動装置の一方と常時駆動連結された第1の係合部材と、回転可能に支持され前記第1の駆動装置または前記第2の駆動装置の他方と常時駆動連結され、前記第1の係合部材と係合可能な第2の係合部材とによって構成され、
    前記第1の係合部材は複数の第1の係合部を備え、
    前記第2の係合部材は前記第1の係合部と係合する第2の係合部を備え、
    前記第1の係合部と前記第2の係合部とが係合することにより前記第1の駆動装置と前記第2の駆動装置とが駆動連結され、前記第1の係合部と前記第2の係合部の係合が外れることにより前記第1の駆動装置と前記第2の駆動装置との駆動が断たれ、
    前記複数の第1の係合部はそれぞれの形状が同一で前記第1の係合部材の回転方向に等間隔に配置されている印刷機における駆動装置において、
    前記第1の係合部の数を、
    i=b/a
    iは前記第1の駆動装置の1回転当たりの前記第1の係合部材の回転数とし、
    a,bは互いに素の関係にある整数
    を満たす整数aの整数倍に形成したことを特徴とする印刷機の駆動装置。
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