JP4274018B2 - カテーテルチューブとその製造方法およびカテーテル - Google Patents

カテーテルチューブとその製造方法およびカテーテル Download PDF

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Description

本発明は、医療分野で用いられるカテーテルチューブとその製造方法およびカテーテルに関する。
治療や検査などの医療行為に用いられるカテーテルを構成するカテーテルチューブには、その目的に応じて種々の性能が要求されるが、特に重視される性能として、体内に挿入しやすい性能(挿入性)が挙げられる。
一般に高分子材料で構成されるカテーテルチューブの挿入性を向上させる手法として、例えば、特許文献1〜3に記載されているように、チューブに補強用部材を埋設し、さらに、体内に挿入する側の部分(先端部)を、手元側の部分(後端部)に比して柔軟に構成することが知られている。このような構成を有するカテーテルチューブでは、後端部が補強用部材により剛直になっているので後端側から与える押し込み力をカテーテルチューブ全体に伝達しやすい。また、先端部は比較的柔軟であり、血管などの体内管腔の湾曲に追従して比較的容易に湾曲することができる。
この補強用部材を埋設して備えるカテーテルチューブにおいて、先端部を、後端部に比して柔軟に構成するための具体的手法は種々知られている。例えば、特許文献1には、線状体を格子状に形成した補強用部材を備え、その補強用部材を形成する線状体の傾斜角度を変化させることで、剛性を変化させたカテーテルチューブが記載されている。
また、特許文献2には、補強用部材である編組層の編組ピッチを変化させることで編組層自体に硬度傾斜を持たせることに加えて、硬度の異なる複数のチューブを長さ方向に配列して一体化させることにより剛性を変化させたカテーテル用チューブが記載されている。さらに、特許文献3には、補強用部材としてコイルを用い、このコイルの巻張力を先端部で低くし、後端部で高くすることで、剛性変化を生じさせたカテーテルが記載されている。
特開平6−134034号公報 特開2001−178826号公報 特開平9−94296号公報
しかしながら、特許文献1〜3のいずれにおいても、具体例としてカテーテルチューブの長さ方向に沿って段階的に剛性が変化するカテーテルチューブが記載されているように、特許文献1〜3に記載の手法ではチューブの長手方向に沿って連続的で滑らかな剛性変化を設けることは、実際上困難であった。
カテーテルチューブの剛性変化が連続的でなく、段階的である場合は、剛性が急激に変化する境界部分において、チューブが局所的に屈曲し易くなる。このようなカテーテルチューブは、大きく湾曲した体内管腔に追従して湾曲することが困難であり、挿入性に劣る。
上記したような従来技術の事情に鑑み、本発明の目的は、挿入性に優れ、連続的で滑らかな剛性変化を容易に設けることができるカテーテルチューブおよびこれを備えてなるカテーテルを提供することにある。
本発明者は、補強用部材を埋設して備えるカテーテルチューブの構造について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明の第一によれば、高分子材料からなる基層と、前記基層を構成する高分子材料より圧縮弾性率が低い高分子材料からなり、前記基層に積層された柔軟層と、所定の厚みを有し、前記基層と前記柔軟層との境界位置に埋設された網状体と、を備えたカテーテルチューブであって、前記基層内に位置する前記網状体の厚みと前記柔軟層内に位置する前記網状体の厚みとの比率が、カテーテルチューブの長手方向に沿って変化しているカテーテルチューブが提供される。
本発明のカテーテルチューブでは、前記基層および前記柔軟層が、それぞれ実質的に均一な厚みを有し、前記網状体が、前記基層と前記柔軟層との境界面に対して、傾斜をもって埋設されていることが好ましい。
本発明のカテーテルチューブでは、前記基層内に位置する前記網状体の厚みと前記柔軟層内に位置する前記網状体の厚みとの比率が、カテーテルチューブの長手方向に沿って、単調関数的に変化していることが好ましい。
本発明の第二によれば、上述のカテーテルチューブを備えてなるカテーテルが提供される。
本発明の第三によれば、高分子材料からなる基層と、前記基層を構成する高分子材料より圧縮弾性率が低い高分子材料からなり、前記基層に積層された柔軟層と、所定の厚みを有し、前記基層と前記柔軟層との境界位置に埋設された網状体と、を備え、前記基層および前記柔軟層が、それぞれ実質的に均一な厚みを有していて、前記網状体が、前記基層と前記柔軟層との境界面に対して、傾斜をもって埋設されているカテーテルチューブを製造する方法であって、前記基層の高分子材料または前記柔軟層の高分子材料のいずれかを用いて実質的に均一な厚みを有する内管を形成するステップと、当該内管の外周面上に複数の線材を編組することにより前記網状体を設けるステップと、当該網状体を外周面上に設けた内管を、加熱されているダイに速度を変化させながら通過させて、前記内管に前記網状体の一部を埋め込むステップと、当該網状体が埋め込まれた内管の外周面上に、前記基層の高分子材料または前記柔軟層の高分子材料のいずれかであって、前記内管の高分子材料と異なる高分子材料を、実質的に均一な厚みで押し出すステップと、を有するカテーテルチューブの製造方法が提供される。
本発明によれば、挿入性に優れ、連続的で滑らかな剛性変化を容易に設けることができるカテーテルチューブおよびこれを備えてなるカテーテルを提供することができる。
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1は本発明のカテーテルチューブに係る一実施形態を示す図である。図1(A)は全体図であり、図1(B)は断面図であり、図1(C)は先端部における柔軟層を除いて示す図である。図2は、本発明の特徴を強調して示す概念図である。図2(A)は、図1に示すカテーテルチューブにおける中央部の断面の概念図であり、図2(B)は変形例に係る概念図である。
図1(A)〜(C)に示すカテーテルチューブ1は、基層2と柔軟層3と網状体10とから構成されている。基層2および柔軟層3は、それぞれ、高分子材料からなり全体として管状をなす層であり、柔軟層3は基層2に積層される。柔軟層3は、基層2に積層されていれば、基層2の外側、内側のいずれに位置しても良いが、図1に示す実施形態のように、基層2の外側に積層することが好ましい。
基層2を構成する材料は、高分子材料であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエステルポリアミド、ABS樹脂、AS樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等の各種樹脂や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、なかでも、樹脂が好ましい。なお、これらの材料のうち2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
柔軟層3を構成する材料は、基層2を構成する高分子材料より圧縮弾性率が低い高分子材料である。なお、本発明において圧縮弾性率とは、ASTM D695にしたがって測定した物性値である。柔軟層3を構成する高分子材料の具体例としては、上述の基層2と同様の各種樹脂および各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、2種以上の材料を組み合わせて使用することも可能である。
また、基層2および柔軟層3には、それぞれ、基層2と柔軟層3の境界面と反対側の面に異なる材料からなる層を積層してもよい。さらに、基層2および柔軟層3には、本発明を逸脱しない限り、必要に応じて、アロイ化剤、相溶化剤、硬化剤、安定剤、着色剤等の各種添加物を配合してもよく、X線透視により体内のカテーテルチューブ1を確認できるようにX線不透過物質を配合してもよい。X線不透過物質としては、例えばタングステン、硫酸バリウム、酸化ビスマス、金、白金等が挙げられる。
本発明のカテーテルチューブ1では、網状体10が、基層2と柔軟層3との境界位置に埋設される。網状体10は、所定の厚みを有し、厚み方向に貫通する網目11を有していれば、その全体がなす形状は、管状であっても、板状であってもよい。なかでも、図1に示すように網状体10が管状である場合は、基層2と柔軟層3との境界面全周に網状体10を位置させることができるので好ましい。また、網状体10を形成する手法も特に限定されず、複数の線材を編組して形成しても良いし、板材に網目11となる貫通孔を穿孔して形成しても良いが、生産性の観点からは、複数の線材を編組して形成することが好ましい。
網状体10を構成する材料は、特に限定されないが、比較的剛性高い材料が好ましく、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、アルミニウム、錫、亜鉛などの金属単体や、ステンレス鋼、ニクロム鋼、ニッケル−チタン合金、チタン系合金などの合金が挙げられる。これらのなかでも、加工性、強度、耐食性、体内における安全性の観点より、ステンレス鋼を用いることが好ましい。また、網状体10を複数種の材料を組み合わせて構成してもよく、さらに、網状体10に、メッキやコーティングを施してもよい。
本発明のカテーテルチューブ1は、図2(A)に概念的に示すように、基層2内に位置する網状体10の厚みと柔軟層3内に位置する網状体10の厚み(T1)との比率(以下、厚み比率と記載する場合がある)が、カテーテルチューブ1の長手方向に沿って変化していることを特徴とし、この特徴に基づき、チューブ1の長手方向に沿って剛性が変化している。すなわち、本発明のカテーテルチューブ1は、埋設された網状体10の網目11内に圧縮弾性率が高い材料(基層2)が多く含まれる箇所においては、網状体10の変形時に網目11内の材料が圧縮され、その反発力が大きくなるので剛性が高くなる。反対に、網目11内に圧縮弾性率が低い材料(柔軟層3)が多く含まれる箇所においては、カテーテルチューブ1の剛性が低くなる。なお、本発明においては、網状体10の厚みとは、網状体10が網目11の部分においても、その周囲の網状体10と同様の厚みを有しているものとして扱う概念である。
カテーテルチューブ1における厚み比率は、目的とするカテーテルの用途に応じて、チューブ1の剛性を高くする必要のある箇所においては、基層2内に位置する網状体10の厚みの比率を高くして、チューブ1の剛性を低くする必要のある箇所においては、柔軟層3内に位置する網状体10の厚みの比率を高くすればよい。但し、本発明のカテーテルチューブ1においては、厚み比率が、カテーテルチューブ1の長手方向に沿って、単調関数的に変化していることが好ましい。カテーテルチューブ1をこのような構成にすることで、チューブ1の一端側が最も剛直となり、この一端から他端に向かって柔軟になるカテーテルチューブ1が得られる。すなわち、このようなカテーテルチューブ1を用いて、先端側が柔軟なカテーテルを構成することで、挿入性に優れるカテーテルを得ることができる。なお、図1に示す本実施形態のカテーテルチューブ1においては、厚み比率が、先端部4及び後端部6においてそれぞれ一定となっていて、中央部5においてカテーテルチューブ1の長手方向に沿って一次関数的に変化している。そして、この構成により、本実施形態のカテーテルチューブ1は、先端部4が一様に柔軟となり、後端部6が一様に剛直となり、中央部5において連続的な剛性変化を有している。
本発明のカテーテルチューブ1において、厚み比率をカテーテルチューブ1の長手方向に沿って変化させるための構造としては、例えば、図2(A)に示す構造と、図2(B)に示す構造が挙げられる。
図2(A)に示すカテーテルチューブ1では、基層2および柔軟層3が、それぞれ実質的に均一な厚みを有していて、この基層2と柔軟層3との境界面に対して、網状体10が傾斜をもって埋設されている。本発明のカテーテルチューブ1をこのような構造にすれば、基層2および柔軟層3がそれぞれ実質的に均一な厚みを有しているので、押出量不変の押出成形法によりチューブ1を製造可能であり、生産性がよく好ましい。なお、網状体10を基層2と柔軟層3との境界面に対して傾斜をもたせて埋設することは、本発明のカテーテルチューブの製造方法として下述する方法により容易に行うことができる。
図2(B)に示すカテーテルチューブ1の変形例では、基層2および柔軟層3の厚みがそれぞれカテーテルチューブ1の長手方向に沿って、相互補完的に変化していて、基層2と柔軟層3との境界面が、カテーテルチューブ1の軸に対して傾斜した面となっている。そして、網状体10が、カテーテルチューブ1の軸に対して略水平に埋設されている。本発明のカテーテルチューブ1をこのような構造にすれば、厚み比率が変化する構成と基層2および柔軟層3の厚みが相互補完的に変化する構成との両方の構成により、カテーテルチューブ1の剛性変化が生じるので、より大きな剛性変化を設けることができる。
本発明のカテーテルチューブ1において、基層2内に位置する網状体10の厚みの百分率が、チューブ全長において、20ポイント以上の幅をもって変化することが好ましく、40ポイント以上の幅をもって変化することが特に好ましい。基層2内に位置する網状体10の厚みの百分率がチューブ全長において、このような幅で変化していれば、十分な剛性変化を有するカテーテルチューブ1が得られる。また、チューブ全長における基層2内に位置する網状体10の厚みの百分率が変化する幅の上限は、特に限定されないが、製造の容易さの観点からは、80ポイント以下であることが好ましい。
本発明のカテーテルチューブ1において、基層2を形成する材料の圧縮弾性率は、100〜700MPaであることが好ましく、200〜500MPaであることが特に好ましい。また、柔軟層3を形成する材料の圧縮弾性率は、基層2の材料の圧縮弾性率に対して、5〜80%であることが好ましく、5〜60%であることが特に好ましい。柔軟層3を形成する材料の圧縮弾性率が、これらの範囲であれば、十分に剛性変化させることができるカテーテルチューブ1を得ることができる。
本発明のカテーテルチューブ1の外径および肉厚は、特に限定されず、カテーテルチューブ1により構成するカテーテルの用途に応じて選定すればよく、外径は、通常、0.5〜2.5mmであり、肉厚は、通常、0.05〜0.20mmである。また、基層2及び柔軟層3の厚みは、それぞれ、0.01〜0.15mmであることが好ましい。
本発明のカテーテルチューブ1における網状体10の一つの網目11の大きさは、0.2〜4.0mmであることが好ましく、0.3〜2.5mmであることが特に好ましい。網状体10の表面において、網目11が占める面積の割合は、70〜99%であることが好ましく、80〜97%であることが特に好ましい。
また、網状体10の厚みは、カテーテルチューブ1の肉厚に対して、30〜90%であることが好ましく、40〜80%であることが特に好ましい。網状体10の厚みがカテーテルチューブ1の肉厚に対して薄すぎると、カテーテルチューブ1に十分な剛性変化を設けることが困難となったり、カテーテルチューブ1の強度が不足したりするおそれがあり、厚すぎると、厚み比率を変化させることが困難となる。
本発明のカテーテルチューブ1を製造する方法は特に限定されない。カテーテルチューブ1を製造する方法として、特に好ましい方法である、本発明のカテーテルチューブの製造方法については下述する。
本発明のカテーテルは、上述のカテーテルチューブ1を備えてなり、カテーテルチューブ1と同様の作用効果を発揮するカテーテルである。カテーテルチューブ1からカテーテルを構成するためには、カテーテルチューブ1を例えば500〜3000mm程度の所定長に切断して、必要に応じて各種加工を加えた上で、そのカテーテルの用途に応じて必要な部材を取り付ければよく、取り付ける部材としては、例えば、コネクタ、把手、ストレインリリーフ、造影用リング、バルーン、先端チップなどが挙げられる。また、本発明のカテーテルの用途は特に限定されず、例えば、ガイディングカテーテル、マイクロカテーテル、造影用カテーテル、吸引用カテーテル、狭窄貫通用カテーテル、薬液注入用カテーテル等として使用することができる。
次に、上述のカテーテルチューブを製造する方法として、好ましい方法である本発明のカテーテルチューブの製造方法について説明する。図3は、本発明のカテーテルチューブの製造方法に係る一実施形態において、網状体を外周面上に設けた内管をダイに通過させている状態を示す概略図である。
本発明のカテーテルチューブの製造方法では、まず、上述のカテーテルチューブにおける基層および柔軟層の内、内側に位置する層を形成する高分子材料を用いて、押出し成形法等により、実質的に均一な厚みを有する内管20を形成する。この内管20の形成においては、銅線などの金属線の周囲に高分子材料を押し出す、いわゆる電線押出し成形法を用いることが好ましい。内管20を形成した後、ブレーダー装置等により、内管20の外周面上において、複数の線材を編組して、全体として管状をなす網状体10を設ける。
次いで、図3に示すように、この外周面に網状体10を設けた内管20を、内管20の外径より僅かに大きな内径を有する、加熱されたダイ30に挿入して、引取機31等により引き取ってダイ30を通過させることで、内管20に網状体10の一部を埋め込む。この際、引取機31の引取速度を制御して、内管20がダイを通過する速度を変化させることで、埋め込まれる網状体10の厚みが内管20の長手方向に沿って変化している内管20を得ることができる。すなわち、ダイを通過する速度を速くすると、内管20への加熱量が小さくなるので、網状体10の埋め込まれる厚みが小さくなり、ダイを通過する速度を遅くすると、内管への加熱量が大きくなるので、網状体の埋め込まれる厚みが大きくなる。なお、ダイ30の加熱温度およびダイ30を通過させる内管20の速度は、網状体10が内管20に埋め込まれる厚みを見ながら調整すればよい。ダイ30の加熱温度は、内管20を構成する高分子材料の融点より10〜30℃高い温度であることが好ましく、ダイを通過する内管20の速度は、通常、1〜20mm/sec程度の範囲で調整すればよい。
最後に、網状体10が埋め込まれた内管20の外周面上に、上述のカテーテルチューブにおける基層および柔軟層の内、外側に位置する層を形成する高分子材料を押し出すことにより、内管20から露出した網状体10を覆いながら、外側の層を形成する。そして、内管20から金属線を抜くことでカテーテルチューブが得られる。本発明のカテーテルチューブの製造方法では、ダイ30を通過させる内管20の速度を変化させるだけで、容易にカテーテルチューブにおける基層内に位置する網状体の厚みと柔軟層内に位置する網状体の厚みとの比率を調整することができる。したがって、カテーテルチューブに所望の連続的で滑らかな剛性変化を設けることができる。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
まず、電線押出機を用いて、φ0.5mmの銅線上に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(圧縮弾性率400MPa)を、厚み0.04mmで押し出して、PTFE製の内管を得た。次に、ブレーダー装置を用いて、16本のステンレス鋼(SUS304)線をピッチ1mm、張力2MPaで編組して、PTFE製内管の外周面上に厚み0.04mmの網状体(一つの網目の大きさ0.75mm、網状体表面における網目11が占める面積の割合94%)を設けた。次いで、内径0.6mmで、350℃に加熱された熱風吹き出し孔を備えるダイに、2500mm長に切断した網状体を設けたPTFE製内管を挿入して、引取機により引き取ることでダイを通過させた。この際、引取機の引取速度を制御することにより、挿入時における内管の通過速度を1mm/secとして、その速度を内管の挿入端から1100mmの位置がダイを通過するまで維持した。そして、その位置から内管の挿入端から1400mmの位置がダイを通過するまで一次関数的に内管の通過速度を上昇させて、内管の挿入端から1400mmの位置の通過速度を5mm/secとし、その後、その位置から内管がダイから排出されるまでその速度を維持した。この操作により、網状体を埋め込んだ内管が得られ、その埋め込まれた網状体の厚みは、内管のダイに挿入した側の端からその端より1100mmの位置までの範囲において、0.01mmの厚み(厚み全体の25%)、内管のダイに挿入した側の端より1400mmの位置から2500mmの位置(ダイに挿入した側と反対の端)までの範囲において、0.03mmの厚み(厚み全体の75%)となり、内管のダイに挿入した側の端より1100mmの位置から1400mmの位置までの範囲においては、0.01mmから0.03mmまで一次関数的に埋め込まれた厚みが変化していた。次いで、電線押出機を用いて、網状体を埋め込んだ内管上に、ポリアミド系エラストマー(PEBAX3533、圧縮弾性率25MPa)を、厚み0.06mmで押し出した後に、内管から銅線を抜いて、実施例1のカテーテルチューブを得た。なお、実施例1のカテーテルチューブでは、内側のPTFE層が基層となり、外側のポリアミド系エラストマー層が柔軟層となる。
得られた実施例1のカテーテルチューブについて、以下に述べる5点において、曲げ応力を測定した。曲げ応力の測定は、測定点を中心として40mmの長さでチューブを切断して測定サンプルとし、各測定サンプルを測定点が中心となるように間隔20mmにて2点支持して、測定点を1mm/secの速度にて下方に押し込み、1秒後(1mm押し込まれた際)の曲げ応力を測定した。この曲げ応力は、ダイに挿入した側の端から1080mmの点(基層内に位置する網状体の厚み0.03mm)で9.0mN、1175mmの点(基層内に位置する網状体の厚み0.025mm)で7.9mN、1250mmの点(基層内に位置する網状体の厚み0.02mm)で7.0mN、1325mmの点(基層内に位置する網状体の厚み0.015mm)で5.9mN、1420mmの点(基層内に位置する網状体の厚み0.01mm)の点で4.9mNであった。
[実施例2]
網状体の埋め込みを行ったPTFE製内管上に押出しする樹脂を、ポリアミド11(リルサンBESN O TL、圧縮弾性率800MPa)とした以外は、実施例1と同様にカテーテルチューブを製造して、実施例2のカテーテルチューブを得た。なお、実施例2のカテーテルチューブでは、内側のPTFE層が柔軟層となり、外側のポリアミド層が基層となる。
実施例2のカテーテルチューブの曲げ応力を、実施例1と同様に測定したところ、ダイに挿入した側の端から1080mmの点(基層内に位置する網状体の厚み0.01mm)で113mN、1175mmの点(基層内に位置する網状体の厚み0.015mm)で127mN、1250mmの点(基層内に位置する網状体の厚み0.02mm)で141mN、1325mmの点(基層内に位置する網状体の厚み0.025mm)で155mN、1420mmの点(基層内に位置する網状体の厚み0.03mm)の点で169mNであった。
図1は本発明のカテーテルチューブに係る一実施形態を示す図である。図1(A)は全体図であり、図1(B)は断面図であり、図1(C)は先端部における柔軟層を除いて示す図である。 図2は、本発明の特徴を強調して示す概念図である。図2(A)は、図1に示すカテーテルチューブにおける中央部の断面の概念図であり、図2(B)は変形例に係る概念図である。 図3は、本発明のカテーテルチューブの製造方法に係る一実施形態において、網状体を外周面上に設けた内管をダイに通過させている状態を示す概略図である。
符号の説明
1 カテーテルチューブ
2 基層
3 柔軟層
10 網状体
11 網目
20 内管
30 ダイ
31 引取機

Claims (6)

  1. 高分子材料からなる基層と、前記基層を構成する高分子材料より圧縮弾性率が低い高分子材料からなり、前記基層に積層された柔軟層と、所定の厚みを有し、前記基層と前記柔軟層との境界位置に埋設された網状体と、を備えたカテーテルチューブであって、
    前記基層内に位置する前記網状体の厚みと前記柔軟層内に位置する前記網状体の厚みとの比率が、カテーテルチューブの長手方向に沿って変化していて、
    前記網状体が、前記基層と前記柔軟層との境界面に対して、傾斜をもって埋設されているカテーテルチューブ。
  2. 前記基層および前記柔軟層が、それぞれ実質的に均一な厚みを有している請求項1に記載のカテーテルチューブ。
  3. 前記基層の厚みおよび前記柔軟層の厚みが、それぞれカテーテルチューブの長手方向に沿って、相互補完的に変化していて、前記基質と前記柔軟層との境界面が、カテーテルチューブの軸に対して傾斜した面となっている請求項1に記載のカテーテルチューブ。
  4. 前記基層内に位置する前記網状体の厚みと前記柔軟層内に位置する前記網状体の厚みとの比率が、カテーテルチューブの長手方向に沿って、単調に変化している請求項1〜3のいずれかに記載のカテーテルチューブ。
  5. 請求項1〜4に記載のカテーテルチューブを備えてなるカテーテル。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のカテーテルチューブを製造する方法であって、
    前記基層の高分子材料または前記柔軟層の高分子材料のいずれかを用いて実質的に均一な厚みを有する内管を形成するステップと、
    当該内管の外周面上に複数の線材を編組することにより前記網状体を設けるステップと、
    当該網状体を外周面上に設けた内管を、加熱されているダイに速度を変化させながら通過させて、前記内管に前記網状体の一部を埋め込むステップと、
    当該網状体が埋め込まれた内管の外周面上に、前記基層の高分子材料または前記柔軟層の高分子材料のいずれかであって、前記内管の高分子材料と異なる高分子材料を、実質的に均一な厚みで押し出すステップと、
    を有するカテーテルチューブの製造方法。
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