JP4270676B2 - 化粧材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂を主体とする積層体であり、雑貨の表面や家具の表面、もしくは屋内外において使用される建材の表面等に適用され、表面の装飾、下層の保護を目的として利用される人工的な化粧材として利用されるものに関する。
本発明の化粧材は、積層体を構成する層の幾つかに、紫外線吸収剤及び光安定剤からなる添加剤を含有するものである。
【0002】
【従来の技術】
化粧材として、種々の素材からなる物が使用されているが、その中にポリ塩化ビニル樹脂シートを素材とした、通称「塩ビ化粧材」がある。塩ビ化粧材の代表的なタイプの1つは、透明なポリ塩化ビニル樹脂シートの裏面に印刷し、続いて隠蔽層を設け、表側の面には必要に応じて塗装や凹凸を形成するエンボス加工を行なって得られる「バックプリントシート」である。又、代表的なもう1つのタイプは、着色されたポリ塩化ビニル樹脂シートに印刷し、印刷面を覆って透明なポリ塩化ビニル樹脂シートを熱融着させ、同時にエンボス加工等を行なって得られる「ダブリングエンボスシート」あるいは単に「ダブリングシート」と呼ばれるものである。
【0003】
塩ビ化粧材に使用されているポリ塩化ビニル樹脂シートは、通常、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体であり、接着性に寄与する酢酸ビニルの部分を有するために、接着に関する問題はあまりなく、印刷やラミネートの際に接着力が不足する事はほとんどない。ポリ塩化ビニル樹脂シートは、加熱により軟化するので、エンボス等の加工が容易である。又、ポリ塩化ビニル樹脂シートは、火災の際にも燃えているものが傍にない限り、自身では燃え出さない、即ち自燃性がない利点もある。更に又、ポリ塩化ビニル樹脂シートは、可塑剤を添加する事により硬軟の度合いを自在に調整できる利点があり、用途に合わせた固さを選択できる。
なお、ポリ塩化ビニル樹脂シートは、汎用されていて価格的にも安定している経済的な利点も持っている。
【0004】
ただ、ポリ塩化ビニル樹脂シートには上記の利点を有する反面、欠点もある。ポリ塩化ビニル樹脂は、構造中に塩素を含んでいるため、経時的に変褪色することが避けられない。燃焼時には有毒ガスが発生する可能性があり、燃えれば煙も発生する。又、可塑剤を含んでいることに起因する種々の問題もある。
【0005】
そこで、最近、ポリ塩化ビニル樹脂シートを、塩素を含まないポリオレフィン系樹脂シートで代替した、ポリオレフィン系樹脂化粧材が検討されている。しかし、ポリオレフィン系樹脂シートは、もともと接着性が乏しく、印刷や貼り合わせ等において問題があり、又、太陽光等の光に対する耐久性、耐候性が充分とは言えなかった。
【0006】
例えば、ポリオレフィン系樹脂シートを使用したバックプリントシートにおいては、裏面への印刷に先立って、プライマーコーティングを行なうと、ポリオレフィン系樹脂シートとプライマーとの間で剥離が生じ、又、表面に保護層を形成すると、セロハンテープを貼って、急に剥がす試験において、保護層が剥離してしまう欠点がある。
【0007】
ポリオレフィン系樹脂シートを使用したダブリングシートにおいては、熱融着が困難であるため、積層をドライラミネーションで行なうが、屋外暴露1年相当の紫外線耐候性試験により、表面のポリオレフィン系樹脂シートが剥離してしまう欠点があり、ポリオレフィン系樹脂シートの表面に上塗り層を設けておくと、バックプリントシートの場合と同様、上塗り層が剥離してしまう欠点がある。
【0008】
発明者が種々検討したところ、剥離しやすい部分は、
(1)バックプリントシートにおいては、
(a)ポリオレフィン系樹脂シートと印刷用プライマーとの間
(2)ダブリングシートにおいては、
(a)下地シートと印刷用プライマーとの間
(b)上地シートと接着剤との間
であることが判明した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明で解決しようとする課題は、上記したように、現在、ポリ塩化ビニル樹脂シートを使用して構成している化粧材を、塩素を含まないポリオレフィン系樹脂シートで代替する際に生じる、紫外線による劣化、特に各層間で発生する剥離を解消することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者は、剥離を起こしやすい部分の上層に、紫外線吸収剤に加えて、光安定剤及び/又は酸化防止剤からなる添加剤を含有させることにより、従来の技術で課題となっていた剥離が改善されることを見出し、本発明に至った。
【0011】
第1の発明は、表面側より上塗り層、透明ポリオレフィン系樹脂シート、接着剤層及び絵柄模様層からなる中間層、並びに基材シートが順次積層されており、前記上塗り層と前記透明ポリオレフィン系樹脂シートと前記接着剤層の3つの層に、光安定剤及び/又は酸化防止剤、並びに紫外線吸収剤からなる添加剤を含有することを特徴とする化粧材に関するものである。第2の発明は、第1の発明において、基材シートと絵柄模様層との間にプライマー層を積層してあることを特徴とする化粧材に関するものである。第3の発明は、第1又は第2いずれかの発明において、紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物からなる紫外線吸収剤であることを特徴とする化粧材に関するものである。第4の発明は、第1又は第2いずれかの発明において、光安定剤が、ヒンダードアミン系光安定剤であることを特徴とする化粧材に関するものである。第5の発明は、第1又は第2いずれかの発明において、酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤であることを特徴とする化粧材に関するものである。第6の発明は、第1又は第2いずれかの発明において、酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤、および亜リン酸芳香族エステル化合物からなる酸化防止剤の2種類からなることを特徴とする化粧材に関するものである。
【0012】
本発明の化粧材1は、図1に示すように、図の上側(製品の表側に相当)から上塗り層2、透明ポリオレフィン系樹脂シート3、プライマー層4、絵柄模様層5a、隠蔽層5bとからなっていて、これら各層が、この順に積層したものである。図1に示すものが、バックプリントシートである。
又、図2に示すように、本発明の別のタイプの化粧材1は、図の上側から上塗り層2、透明ポリオレフィン系樹脂シート3、接着剤層6及び絵柄模様層5からなる中間層7、プライマー層4、基材シート8からなっていて、これら各層が、この順に積層したものである。図2に示すものは、エンボスが施されていれば、ダブリングエンボスシート、施されていなければ、ダブリングシートと呼ばれる事が多い。
【0013】
図1および図2に示す透明ポリオレフィン系樹脂シート3の上面には、上塗り層2の接着性の向上の目的で、コロナ放電処理を施してもよい。ダブリングエンボスシートの場合には、コロナ放電処理を行うのはエンボス加工後であることが好ましい。
なお、図示はしてないが、エンボス加工により木目導管溝等の凹部を形成し、その凹部に着色材を充填する方法、いわゆるワイピング塗装が施されていてもよい。
【0014】
上塗り層2は、適切なバインダー樹脂を含む塗料組成物を塗布、乾燥又は固化させて得られるものである。バインダー樹脂としては、熱可塑性のものも使用し得るが、熱硬化性樹脂を使用する熱硬化性樹脂組成物、あるいは紫外線又は電子線の照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂組成物を用い、塗布後に加熱したり、電離放射線を照射して架橋硬化させることにより更に物理的、化学的な諸性能を向上させることができる。例えば、アクリルポリオールとイソシアネート化合物からなるアクリルウレタン系等のポリウレタン系の塗料組成物を使用するとよい。
上塗り層2は、できるだけ設ける方がよいが、耐候性の要求度合いが低いときには、設けるのを省くことができる。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂シート3を構成するポリオレフィン系樹脂には、種々のものがあり、大別すると、非エラストマーであるポリオレフィン系樹脂と、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーがある。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂シート3を構成するポリオレフィン系樹脂の1つのタイプは非エラストマーであるが、具体的にはポリエチレン(低密度、又は高密度)、ポリプロピレン(イソタクチック型、シンジオタクチック型、又はこれらの混合型)、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/ブテン共重合体等の高結晶質のものである。
ポリオレフィン系樹脂シートを構成するポリオレフィン系樹脂のもう1つのタイプは、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであって、次の(1)〜(8)のようなものである。
【0017】
(1)主原料がハードセグメントである高密度ポリエチレン、又はアイソタクチックポリプロピレン等からなり、更に、ソフトセグメントとしてのエラストマー及び、必要に応じて無機充填剤を添加したもの。
【0018】
ここで、エラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が用いられる。
ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム等がある。
水素添加ジエンゴムは、上記のジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、ポリオレフィン系樹脂(本発明においては、高密度ポリエチレン又はポリプロピレン)の結晶化を抑え、柔軟性を向上させたものである。
オレフィンエラストマーとしては、2種類又は3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種加えた弾性共重合体であり、オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4−ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィン系共重合体ゴムとしては、例えばエチレン/プロピレン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。なお、これらのエラストマーは、必要に応じて有機過酸化物、硫黄等の架橋剤を用いて、適量架橋させてもよい。
【0019】
(2)ハードセグメントがアイソタクチックポリプロピレン、ソフトセグメントがアタクチックポリプロピレンであるもので、好ましくは、後者の割合が5重量%未満のもの(特公平6−23278号公報記載)。
【0020】
(3)エチレン/プロピレン/ブテンの共重合体で、ブテンとして、1−ブテン、2−ブテン、またはイソブチレンの3種の構造異性体の1種を含むもの。次の(3a)〜(3c)が代表的である。
(3a)エチレン/プロピレン/ブテンの3元のランダム共重合体でありモノマー中のプロピレンが、好ましくは90重量%であるもの(特開平9−111055号公報記載)。
(3b)プロピレン成分含有率が50重量%以上である、エチレン/プロピレン/ブテンの3元の共重合体からなる非晶質と、結晶質ポリプロピレンからなるもの(特開平5−77371号公報記載)。
(3c)プロピレン及び/又は1−ブテンの含有量が50重量%以上の低結晶質と、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィンを含むものに、更に、油ゲル化剤を0.5重量%添加したもの(特開平7−316358号公報記載)。
【0021】
(4)ハードセグメントがポリエチレン、ポリプロピレン又はポリメチルペンテン等の結晶質であり、ソフトセグメントが部分架橋したエチレン/プロピレン非共役ジエン3元共重合体ゴム等のモノオレフィン共重合体ゴムであるもの(特公昭53−21021号公報記載)。
【0022】
(5)ハードセグメントとしてのオレフィン系共重合体(結晶質)とソフトセグメントとしての未架橋モノオレフィン共重合体ゴムとを加熱しつつ剪断応力を加え、部分架橋させてあるもの(特公昭53−34210号公報記載)。
【0023】
(6)過酸化物と混合・加熱すると分子量が減って流動性が増す過酸化物分解型オレフィン重合体、例えば、アイソタクチックポリプロピレン、プロピン/エチレン共重合体、又はプロピレン/ブテン−1共重合体をハードセグメントとし、同様な操作で流動性が減る過酸化物架橋型モノオレフィン重合体、例えば、エチレン/プロピレン共重合体ゴム、エチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合体ゴム等をソフトセグメントとし、更には、同様な操作で架橋せず、流動性も変わらない過酸化物非架橋型炭化水素ゴム、等を過酸化物の存在下で混合・加熱して得られるもの(特公昭56−15741号公報記載)。
【0024】
(7)エチレン/スチレン/ブタジエン共重合体(特開平2−139232号公報記載)。
【0025】
(8)水酸基又はカルボキシル基を持たせた上記(1)〜(7)のオレフィン系エラストマー。
【0026】
ポリオレフィン系樹脂シート3としては、延伸シート、未延伸シートのいずれも使用可能である。
ポリオレフィン系樹脂シート3には、又、必要に応じて、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、加工安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤を添加する。このようなポリオレフィン系樹脂シートの厚みは20〜300μm程度である。
また、ダブリングシートないしダブリングエンボスシートの場合には、基材シート8もポリオレフィン系樹脂シートで構成する場合があり、その場合には、染料又は顔料の着色剤を添加し、必要に応じて上記の添加剤も添加し、適宜な色彩の着色シートとする。
また、ポリオレフィン系樹脂シートは、そのままでは接着性が乏しいため、印刷又は接着に関与する面にコロナ放電処理を行なって、接着性を改善しておくとよい。
【0027】
プライマー層4は、透明ポリオレフィン系樹脂シート3、あるいは基材2が着色ポリオレフィン系樹脂シートであるとき、絵柄模様層5、又は5a等の密着性を高めるためのものであり、ポリオレフィン系樹脂シートは接着性が乏しいため、このプライマー層4を介在させるとよい。
プライマー層を構成する樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂等がある。
これらの樹脂は単独、若しくは混合して塗料組成物、又はインキ組成物とし、適宜な塗布手段、又は印刷手段を用いてプライマー層4を形成する。
【0028】
絵柄模様層5aは本発明の化粧材に、外観意匠的な価値を与えるためのものであり、通常、印刷法により形成する。接着性を考慮してのバインダーの選択範囲が広いグラビア印刷法が適しているが、これ以外の手法によってもよい。
絵柄模様層5aの絵柄模様は任意のものでよく、用途に合わせて選択する。
バックプリントシートの場合、絵柄模様層5aを設けたのとは反対側から眺めるものであるので、左右のある模様の場合は、左右を逆に作成した、いわゆる逆版を用いて印刷する。ダブリングエンボスシートの場合には、基材シート8側に印刷するのであれば、絵柄模様層5の左右の向きを考慮しなくてよいが、上側の透明ポリオレフィン系樹脂シートの裏側の面に印刷する場合には、逆版を用いて印刷する。
【0029】
バックプリントシートの場合、絵柄模様層5aの濃度の低い部分や、印刷の網点の間では、下層が透けて見えるので、絵柄模様層としてはパターン状の5aだけでなく、パターン状のものの下層側を覆う隠蔽層5bも形成するとよい。隠蔽層5bは絵柄模様のハイライトの部分に相当し、絵柄模様層の一部をなすものである。
【0030】
図2における各層の説明は、図1に示す化粧材の各層の説明と共通であるが、図1では登場しない、接着剤層6と基材シート8について説明する。
【0031】
接着剤層6は、基材シート8上に、プライマー層を介するか介さないで形成した絵柄模様層と、透明ポリオレフィン系樹脂シートとを、張り合わせるものである。この貼り合わせにおいては、接着されるいずれの側にも接着剤の浸透性が無いため、接着剤を被着面の一方あるいは両方に塗布した後、一旦乾燥させ、再び重ねて加圧し、圧着するドライラミネーションが適している。接着剤としては、アクリルポリオールとイソシアネートからなるアクリルウレタン系等のポリウレタン系のものを使用する事が好ましい。
【0032】
図2において、ダブリングシートにおける接着剤層6と絵柄模様層5は、基材シート(プライマー層が積層してある場合あり)と、プライマー層4が設けられた透明ポリオレフィン系樹脂シートの裏側との間に位置している。
前述したように、絵柄模様層5は基材シート側8に形成しても、透明ポリオレフィン系樹脂シート3の裏側に設けてもよいので、接着剤層6と絵柄模様層5とは、上下が逆になることもあり得る。絵柄模様層5を透明ポリオレフィン系樹脂シートの側に形成するときは、基材シートとしての着色ポリオレフィン系樹脂シートの色相を変えたものを幾つか準備しておけば、絵柄模様が共通で、地色の異なる化粧材とすることができる。
【0033】
基材シート8は、図2に示す化粧材に厚みと剛性を与え、貼る対象との接着性を高め、化粧材全体に必要な程度の強度を与える、あるいは曲げ加工等の加工の容易さを与える、等の目的で最下層を占めている。前述した隠蔽層のような役割も有しており、通常、適当な色彩になるよう、着色を施しておいて使用する。
基材シート8としては、基体1としては、通常、化粧材に用いられている素材であれば、いずれも使用可能であり、大別すれば、各種の紙類、プラスチックフィルム又はプラスチックシート、金属箔、金属シート等の各群である。これら各群に含まれる素材は単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラチスチックフィルムの複合体等、これら素材の任意の組合わせによる積層体も利用できる。これらの基体は、色彩を整える意味で製造時に着色されていたり、塗装を施されていてもよい。
【0034】
基材シート8の素材として使用し得る各種の紙類としては、以下のものが代表的なものとして例示される。即ち、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、予め紙間の強化の目的で樹脂を含侵してある樹脂含浸紙も使用できる。これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い一群の原反が挙げられる。更には、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられる次の紙類も使用可能である。即ち、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等である。又、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ次のような各種繊維の織布や不織布も基材シート8として利用できる。各種繊維とは即ち、ガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成繊維である。
【0035】
基材シート8の素材として使用し得るプラスチックフィルムないしシートとしては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等である。
ポリオレフィン系樹脂シート3の素材として前述したものも使用できる。
ただ、ポリオレフィン系樹脂シートで表面を構成する場合には、基材シートを塩素を含まないポリオレフィン系樹脂で構成した方が、ポリ塩化ビニル樹脂シートを代替した意義が損なわれないので、好ましい。
【0036】
基材シート8として使用し得る金属箔、金属シートの金属としては、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等である。しばしばめっき等を施して使用することがある。
【0037】
本発明においては、剥離の起きやすい層の上層に、紫外線吸収剤に加えて、光安定剤もしくは酸化防止剤からなる添加剤を含ませておく。
バックプリントシートの場合、上塗り層2、透明ポリオレフィン系樹脂シート3のいずれか、又は両方に、添加剤を添加する。
ダブリングシートないしダブリングエンボスシートの場合には、上塗り層2、透明ポリオレフィン系樹脂シート3、又は接着剤層6の3つの層のうちの1つ又はそれ以上に、上記の添加剤を添加しておく。
いずれの層に添加するかであるが、1つの層にのみ添加する場合、2つの層に添加する場合があり、ダブリングシートないしダブリングエンボスシートの場合には、3つの層にも添加し得る。
1つの層に添加剤を添加するよりも2つの層に添加した方が、化粧材全体としての添加効果があり、ダブリングシートにおいては、3つの層に添加すると最も良い結果を生む。
【0038】
上塗り層2、及び接着剤層6に紫外線吸収剤と光安定剤とからなる添加剤を適用するには、これらの層を形成するための塗料組成物又はインキ組成物中に適量を混練又は分散させた後、それらを用いて塗布又は印刷する。
又、ポリオレフィン系樹脂シート3、あるいは基材シートが着色ポリオレフィン系樹脂シートである場合には、シートを製造する際に、ポリオレフィン系樹脂のペレットと共に添加剤を加熱溶融して混合するか、あるいは、少量の樹脂ペレットに予め、添加剤を溶融混合しておいたものを必要な量の樹脂ペレットと溶融混合する方法によってもよい。
【0039】
紫外線吸収剤としては、次の(1)〜(5)のような群に分類されるものから選択して使用できる。
(1)ベンゾフェノン系;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン−5−スルホン酸。
(2)ベンゾトリアゾール系;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(市販品;チバガイギー社製、チヌビンP)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(市販品;チバガイギー社製、チヌビン326)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(市販品;チバガイギー社製、チヌビン327)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール](市販品;チバガイギー社製、チヌビン360)、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α、α’−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(市販品;チバガイギー社製、チヌビン234)、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(市販品;チバガイギー社製、チヌビン320)、
2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(市販品;チバガイギー社製、チヌビン327)、2−(3’,5’−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(市販品;チバガイギー社製、チヌビン328)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(市販品;チバガイギー社製、チヌビン329)。
【0040】
(3)アクリレート系;エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート。
(4)サリシレート系;フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート。
(5)オキザニリド系;2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシドビスアニリド、2−エトキシン−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシドビスアニリド。
【0041】
上記の紫外線吸収剤の各群のうち、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を、ポリオレフィン系樹脂シートの製造時に配合して使用すると、紫外線吸収剤が揮散することが少ないので、シートとしたときに十分効果があり、揮散を見込んで多量に配合する必要がなく、また揮散によりミストが生じて、シート製造装置や加工機、およびそれらの周辺を汚染することが無く、特に、熱が多くかかるエンボス加工時に、エンボス版もしくはエンボスロール等を汚染することが少ない利点がある。エンボス版もしくはエンボスロール等に汚染が生じると、化粧シートの表面に汚染物質が付着し、製品の外観を損なうからである。ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の中でも、特に、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール](市販品;チバガイギー社製、チヌビン360)が上記の各利点が大きい。この理由は、このものが、2量体に構造を有することから、他のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤にくらべて、約2倍の分子量を有しているためと考えられる。
これらの紫外線吸収剤を添加する割合は、添加する対象の層の樹脂分に対し、好ましくは、0.1〜2重量%、より好ましくは1重量%以下である。0.1重量%未満では添加効果が乏しく、2重量%を超えても、効果の向上が見られない。
【0042】
光安定材としては、ヒンダードアミン系である、次のような化合物が使用できる。
ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(市販品;チバガイギー社製、チヌビン123)、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、[コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン]縮合物(市販品;チバガイギー社製、チヌビン622)、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]}(市販品;チバガイギー社製、チマソルブ944)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(市販品;チバガイギー社製、チマソルブ119)。
【0043】
これらの光安定剤を添加する割合は、添加する対象の層の樹脂分に対し、好ましくは、0.1〜2重量%、より好ましくは1重量%以下である。0.1重量%未満では添加効果が乏しく、2重量%を超えても、効果の向上が見られない。
なお、紫外線吸収剤と光安定剤は、それぞれを単独で使用した場合でも効果はあるが、併用した方が、理由は定かではないが、相乗的に効果が向上するため、併用する事が望ましい。
【0044】
紫外線吸収剤と共に用いるもう一つの添加剤が酸化防止剤である。この酸化防止剤の概念のものの中には、使用する意義に由来して加工安定剤、熱安定剤等と呼ばれるものもある。
酸化防止剤としては次に挙げるヒンダードフェノール系化合物、もしくはリン系化合物(亜リン酸エステル)がある。
【0045】
(1)ヒンダードフェノール系;2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(市販品;チバガイギー社製、イルガノックス565)、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(市販品;チバガイギー社製、イルガノックス1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(市販品;チバガイギー社製、イルガノックス1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(市販品;チバガイギー社製、イルガノックス1076)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(市販品;チバガイギー社製、イルガノックス1330)。
(2)リン系(亜リン酸芳香族エステル);トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(市販品;チバガイギー社製、イルガフォス168)。
【0046】
上記のヒンダードフェノール系化合物の酸化防止剤は単独で用いても効果が大きいが、リン系化合物(亜リン酸エステル)の酸化防止剤と併用すると、大きな効果が得られる利点がある。また、リン系化合物(亜リン酸エステル)の酸化防止剤は加工安定剤と呼ばれることもある。
上記の酸化防止剤を添加する割合は、添加する対象の樹脂分に対し、好ましくは、0.05〜0.2重量%である。
【0047】
以上の本発明の化粧材は、雑貨の表面や家具の表面、もしくは屋内外において使用される建材の表面等に適用され、表面の装飾、下層の保護を目的として利用される人工的な化粧材として利用され、対象物に対して手貼りしたり、板状の対象へのラミネータによる機械貼りで貼ったり、真空及び/又は圧空による成形を利用して貼るか、あるいは、搬送されるサッシ等の異形断面の対象に搬送に伴って、シートを少しずつ折り曲げて沿わせて貼る方法等により、貼り付けられるものである。
【0048】
【実施例】
(実施例1)
バックプリントシート、及びダブリングシートの各層に添加剤を添加した試料を作成し、評価した結果について説明するため、まず、試料の調整、試験方法について、以下に順に説明する。
【0049】
(バックプリントシート試料の作成)
ハードセグメントとしてのポリプロピレンランダム共重合体と、ソフトセグメントとしての水素添加スチレン/ブタジエンゴムからなるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの透明シート(厚み80μm)を準備し、両面をコロナ放電処理により、臨界表面張力が38dyn/cmになるよう調整した。
この透明シートの片面にポリエステルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートを樹脂分とするポリエステルウレタン系のプライマー形成用組成物を使用し、グラビアコーティングにより厚み2μmの皮膜を形成し、プライマー層とした。
【0050】
続いて、プライマー層上に、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートをバインダーとするインキ組成物を使用するグラビア印刷法により、絵柄模様層と隠蔽層を形成した。
この後、透明シートの絵柄模様層、及び隠蔽層を形成したのとは反対側の面にアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートを樹脂分とする上塗り層形成用組成物を使用してグラビアコーティングにより、厚み3μmの上塗り層を形成した。
【0051】
なお、上記において、上塗り層、透明シートには、紫外線吸収剤として、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾールと光安定剤として、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケートとからなる添加剤を各層に添加した。
添加剤の添加効果を見るため、上塗り層にのみ添加したもの、透明シートにのみ添加したもの、上塗り層と透明シートの両方に添加したもの、及び比較のため、いずれにも添加しないものの、合計4通りを調整した。なお、添加量は、各層の樹脂分に対して紫外線吸収剤が0.8重量%になるようにし、又、光安定剤が0.4重量%になるようにした。
【0052】
(ダブリングシート試料の調整)
透明シートはバックプリントシートの場合と同じものを準備し、着色シートとしては、透明シートと同じ樹脂に顔料を添加して着色した同じ厚みのものを準備し、バックプリントシートの場合と同様に、両シートのいずれも両面にコロナ放電処理を施した。
まず、着色シートの片面に、いずれもバックプリントシートの場合と同様な組成物と手段を用い、プライマー層と絵柄模様層を順次、形成した。
【0053】
次に、着色シートの絵柄模様層側と、透明シートの片面とをアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートを樹脂分とするアクリルウレタン系接着剤を使用して、乾燥時塗布量が15g/m2 になるよう塗布し、ドライラミネーションにより貼り合わせを行なった。
貼り合わせ後、透明シートの表面に、バックプリントシートの場合と同様な組成物と手段により厚み3μmの上塗り層を形成した。
【0054】
このダブリングシートの場合には、上塗り層、透明シート、及び接着剤層に紫外線吸収剤と光安定剤とからなる添加剤を各層に添加した。
添加した添加剤はいずれもバックプリントシートの場合と同じであり、添加効果を見るため、添加剤を上塗り層、透明シート、又は接着剤層のいずれか1つの層にのみ添加したもの、いずれか2つの層に添加したもの、3つの層に添加したもの、及びいずれの層にも添加しないものの各組み合わせの、合計8種類の試料を調整した。なお、添加剤を添加する割合は、バックプリントシートにおけるのと同じとした。
【0055】
上記のようにして調整した試料の試験と評価は次のような試験A、試験B、及び試験Cにより行なった。
(試験A)
試験Aは、上塗り層の耐候密着強度を見るもので、バックプリントシート、ダブリングシートに共通で行なう。
試料の化粧材を紫外線耐候性試験機(岩崎電気(株)製、スーパーUVテスター、SUV−W13型)を使用して試験を行ない、条件は、ブラックパネル温度63℃、湿度70%RHの状態で、紫外線を20時間照射し、その後4時間結露した状態で放置する合計24時間を1サイクルとし、5サイクル分、即ち120時間の試験(屋外暴露で2年に相当)を行なう。
試験後、試料の上塗り層側からカッターナイフを使用し、透明シートに達する切り込みを、2mm間隔の碁盤目状になるよう形成し、碁盤目状の切り込みの上にセロハンテープを貼り、勢いよく剥がし、その際に上塗り層が剥離するかどうかを観察する。
評価の基準は、セロハンテープに上塗り層が取られて剥離するものを×、剥離しないものを○とする。
【0056】
(試験B)
試験Bは、バックプリントシートの絵柄模様層の耐候密着性を見るためのものである。
試料の化粧材をMDF(=中密度繊維板)の表面にポリ酢酸ビニル樹脂のエマルジョンにイソシアネートを添加した接着剤を使用して貼り付けて試料片とし、試験Aにおけるのと同様、紫外線耐候性試験機で120時間の試験を行なう。
その後、試料片から透明シートを剥離し、その際の絵柄模様層の剥離状況を観察する。
評価の基準は、絵柄模様層が基材側に付着したまま残留するのを×、透明シートに付着したまま剥がれるのを○、その中間を△とする。
【0057】
(試験C)
試験Cは、ダブリングシートの2枚のシート間の耐候密着強度を見るものである。
試料の化粧材を試験A、試験Bと同様、紫外線耐候性試験機で120時間の試験を行なう。
試験後、透明シートと着色シートの間を剥離し、その際の剥離強度を見る。
評価の基準としては、剥離強度が0.5Kg/25mm未満を×、0.5Kg/25mm以上1.0Kg/25mm未満を△、1.0Kg/25mm以上を○とする。
【0058】
バックプリントシートの各層への添加材の添加の有無、試験結果を「表1」に掲げる。「表1」に示すように、1つの層にのみ添加した場合には、その層と下層との密着強度が改善され、両方に添加した場合には、いずれもが満足すべき結果となっている。
【0059】
【表1】
【0060】
ダブリングシートの各層への添加材の添加の有無、試験結果を「表2」に掲げる。「表2」に示すように、上塗り層に添加してあるものは上塗り層の密着強度が改善され、透明シート、又は接着剤層のいずれかに添加した場合には、絵柄模様層の密着強度が充分ではないものの改善され、透明シート、及び接着剤層の両方に添加した場合には、絵柄模様層の密着強度が満足すべき結果となり、上塗り層、透明シート、及び接着剤層のすべてに添加した場合には、上塗り層の密着強度及びび絵柄模様層の密着強度のいずれもが満足すべき結果となった。
【0061】
【表2】
【0062】
(実施例2)
製造時に熱の影響を受けやすいダブリングエンボスシートの、上側の透明ポリオレフィン樹脂系シートに、紫外線吸収剤およびその他の添加剤を加えたものを種々作製し、評価を行った。
【0063】
基材シートとして、厚み0.06mmの着色ポリオレフィン樹脂シート(三菱化学MKV(株)製、PB013)を使用し、プライマー塗装に続いて、絵柄模様を印刷形成し、印刷シートを得た後、印刷面に、二液硬化型のポリエステル系樹脂接着剤をグラビアリバースコーティングにより塗布し、接着剤層を形成した。
別に、ポリプロピレン樹脂(出光石油化学(株)製、E2900)、および紫外線吸収剤等の添加剤を準備し、所定の組成になるよう配合して溶融し、既に準備した印刷シートの接着剤層を形成した上に、Tダイのスリットから押出し、溶融コーティングし、コーティング直後に、クーリングロールで冷却し、シートの端の部分のみを連続的にカットして、除去し、複合シートを得た。
【0064】
その後、複合シートを加熱ロールで予熱し、さらに、赤外線過熱により、複合シートのポリプロピレン樹脂塗布面の表面温度を160℃になるよう急激に過熱し、加熱された状態で、エンボスロールを作用させ、圧着と同時に複層シートを冷却し、表面に凹凸を形成した。
【0065】
表面に凹凸を形成した後、凹凸を有する側にコロナ放電処理を施し、処理面にアクリル樹脂系塗料(昭和インク社製、OP−A4)をグラビア法により、乾燥時塗布量が2g/m2になるよう塗布して、化粧シートの製品を得た。
得られた化粧シートの評価は、(1)サンシャインウェザオメーターでの2000時間曝露試験、(2)サンシャインUVメーターでの240時間の試験(紫外線曝露時間の合計は200時間)、および(3)エンボスロールおよび化粧シートの汚染状況のチェックによって行なった。
紫外線吸収剤等の添加剤の配合を表3に、また、上記の評価の結果を表4にまとめて示す。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
(実施例3)
なお、基材シートを厚み0.1mmのポリオレフィン系樹脂の合成紙(タツノ化学社製、タフパー)に変更した以外、上記の実施例2と同様にして得た化粧シートについても、実施例2で得た化粧シートと同様の評価結果を得た。
実施例2と同様に、ただし、表面に凹凸を形成した後、凹部に着色インキを充填するワイピング塗装を施し、その後、コロナ放電処理、表面塗装を行ったものについても、実施例2で得た化粧シートと同様の評価結果を得た。
実施例2でポリプロピレン樹脂を溶融コーティングしたのに代えて、厚み80μmのポリプロピレン樹脂フィルム(添加剤は溶融コーティングの場合と同様な割合で添加)を、基材シートの印刷面に塗布した二液硬化型のポリエステル系樹脂接着剤の層を利用してドライラミネート方式により貼り合わせ、そのほかは実施例2と同様にして得た化粧シートについても、実施例2で得た化粧シートと同様の評価結果を得た。
【0069】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、透明ポリオレフィン系樹脂シートを使用して構成したダブリングシートにおいて、上塗り層と透明ポリオレフィン系樹脂シートと接着剤層の3つの層に、光安定剤及び/又は酸化防止剤、並びに紫外線吸収剤からなる添加剤を含有するので、上塗り層に添加したことにより上塗り層の耐候密着性が向上し、透明ポリオレフィン系樹脂シート、又は接着剤層に添加したことにより、透明ポリオレフィン系樹脂シートと基材シートとの密着強度が向上する。請求項2の発明によれば、透明ポリオレフィン系樹脂シートを使用して構成したダブリングシートにおける、請求項1の発明の効果に加え、基材シートと絵柄模様層との間にプライマー層を積層してあるので、絵柄模様層の密着強度が一層向上する。請求項3の発明によれば、請求項1又は2いずれかの発明の効果に加え、ベンゾトリアゾール系化合物からなる紫外線吸収剤を含有するため、紫外線吸収剤の揮散が少ないので、シートとしたときに十分効果があり、揮散を見込んで多量に配合する必要がなく、また揮散によりミストが生じて、シート製造装置や加工機、特に、熱が多くかかるエンボス加工時に、エンボス版もしくはエンボスロール等を汚染することが少ない利点があり、化粧材の表面を汚染することがごく少ない。請求項4の発明によれば、ヒンダードアミン系光安定剤を用いているので、光による劣化に対する抵抗性が高まることに加え、紫外線吸収剤の効果を助長するので、紫外線吸収剤の効果が長期間持続する利点がある。請求項5の発明によれば、請求項1又は2いずれかの発明の効果に加え、ヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤を含有するために、高温での加工の回数の多い化粧材の加工時の劣化が防止されると共に、経年的劣化に対する抵抗性が高まる。請求項6の発明によれば、請求項1又は2いずれかの発明の効果に加え、ヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤と亜リン酸エステルからなる酸化防止剤とを併用しているため、双方の効果が相乗され、高温での加工の回数の多い化粧材の加工時の劣化の防止性、および経年的劣化に対する抵抗性がより一層高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】バックプリントシート仕様の化粧材の断面図である。
【図2】ダブリングシート仕様の化粧材の断面図である。
【符号の説明】
1 化粧材
2 上塗り層
3 透明ポリオレフィン系樹脂シート
4 プライマー層
5 絵柄模様層
6 接着剤層
7 中間層
8 基材シート
Claims (6)
- 表面側より上塗り層、透明ポリオレフィン系樹脂シート、接着剤層及び絵柄模様層からなる中間層、並びに基材シートが順次積層されており、前記上塗り層と前記透明ポリオレフィン系樹脂シートと前記接着剤層の3つの層に、光安定剤及び/又は酸化防止剤、並びに紫外線吸収剤からなる添加剤を含有することを特徴とする化粧材。
- 基材シートと絵柄模様層との間にプライマー層を積層してあることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
- 紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物からなる紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の化粧材。
- 光安定剤が、ヒンダードアミン系光安定剤であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の化粧材。
- 酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の化粧材。
- 酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤、および亜リン酸芳香族エステル化合物からなる酸化防止剤の2種類からなることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の化粧材。
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