JP4269400B2 - 圧延機の圧延条件算出方法及び圧延条件算出装置 - Google Patents

圧延機の圧延条件算出方法及び圧延条件算出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は被圧延材を複数回のパスで開始板厚から目標板厚に圧延する圧延機にて、各パスの圧延条件を算出する圧延条件算出方法、及びその方法を実施するための圧延条件算出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上下に配置された円柱状のワークロールを備える可逆式圧延機に被圧延材を複数回通板し(以下パスという)、上下のワークロールにより被圧延材に荷重を加えることによって目標板厚に仕上げる可逆式圧延においては、少ないパス回数で平坦な形状の鋼板を仕上げることが重要である。
【0003】
パス回数を少なくするためには圧延荷重を大きくするのであるが、圧延荷重が大き過ぎる場合、ワークロールを支持する両端部に荷重がかかるので、被圧延材の縁部が過剰に圧延され耳波と呼ばれる形状不良が圧延途中に発生する。このような形状不良は絞り込み及び中割れ等のトラブルの原因となるため、形状不良が発生した場合には、以降のパスで安定して圧延することが非常に困難になる。
【0004】
図6は耳波が発生した被圧延材を示す斜視図である。図6に示すように圧延荷重が大き過ぎて耳波が発生した被圧延材においては、中央部は平坦であるが、縁部は波状になっている。
波の大きさは、式1に示す様にパラメータとして波高さt及び周期lを用いた急峻度λとして表し、急峻度λは許容急峻度、即ちトラブルを生じさせない範囲で最大の急峻度内に納めなければならない。
【0005】
λ=t/l…………………………………………………式1
但し、λ:急峻度
t:波高さ
l:周期
【0006】
また耳波が発生しない程度の荷重でも圧延荷重の大きさによっては、被圧延材の中央部より縁部が過剰に圧延される。このような被圧延材の形状を示す指標として、被圧延材の中央部と縁部との板厚の差である板クラウンCrが用いられる。
なお被圧延材に荷重を加えるワークロールは、ワークロールを支持する両端部にかかる荷重により撓むことを考慮して直径が一定ではなく端部より中央部の直径が大きい形状に形成されており、この形状はワークロールクラウンCwrとして、最も大きい中央部の直径と最も小さい端部の直径との差により示される。
【0007】
このような形状不良を防止し、しかも少ないパス回数で圧延するため、被圧延材の板厚が厚い先行パスの段階では、圧延荷重を大きくしてパス回数を少なくし、板厚が薄くなり形状不良が発生し易くなる後行パスの段階では、圧延荷重を小さくして被圧延材を平坦な形状に整える。このため平坦な形状の鋼板を少ないパス回数で仕上げるためには、圧延荷重等の圧延条件をパス毎に設定したパススケジュールを算出しなければならない。
【0008】
パス毎の圧延条件を算出する方法としては、以下に示す方法が特公昭61-32086号公報に開示されている。図7は従来の圧延条件算出方法を説明するグラフである。図7では横軸に被圧延材の板厚をとり、縦軸に被圧延材の板クラウンをとって、n回のパスでhn の目標板厚に圧延するための板厚と板クラウンとの関係を示している。
【0009】
図中△は先行パスの段階で圧延機の許容値内の最大荷重により圧延した場合の板厚と板クラウンとの関係を示しており、開始板厚ho から式2を用いて、各パスにおいて許容最大荷重P(i) に対するiパス目の出側板厚h(i) を求め、式3を用いて許容最大トルクTr(i) に対するiパス目の出側板厚h(i) を求めて、2つの出側板厚h(i) を比較する。そして大きい方を目標とする出側板厚h(i) とし、該出側板厚h(i) から式4を用いてiパス目の出側板クラウンCr(i) を算出してプロットしたものである。このパスを全負荷パスと呼び1パス目から順に計算する。
【0010】
P(i) =f1(h(i) ,h(i-1) ,kfm(i) ,W)……式2
但し、P(i) :iパス目の荷重
h(i) :iパス目の出側板厚
h(i-1) :iパス目の入側板厚(i−1パス目の出側板厚)
kfm(i) :iパス目の変形抵抗
W:板幅
【0011】
Tr(i) =f2(P(i) ,h(i) ,h(i-1) )……………式3
但し、Tr(i) :iパス目のトルク
【0012】
Cr(i) =f3(P(i) ,W,Cwr)…………………式4
但し、Cr(i) :板クラウン
Cwr:ワークロールクラウン
【0013】
図中○は後行パスの段階で被圧延材の許容急峻度を維持できる範囲内で最大荷重により圧延した場合の板厚と板クラウンとの関係を示しており、目標板厚hn から式2、式4、式5、及び式6を用いて、各パスにおいて急峻度が最大急峻度λ(i) となる出側板厚h(i) 及び出側板クラウンCr(i) を算出してプロットしたものである。このパスを形状調整パスと呼び最終パスであるnパス目から遡って計算する。
【0014】
Δr(i) =Cr(i) /h(i) −Cr(i-1) /h(i-1) ………式5
但し、Δr(i) :iパス目の板クラウン比率変化
【0015】
λ(i) =f4(h(i) ,W)×√|Δr(i) |……………式6
但し、λ(i) :iパス目の急峻度
【0016】
このようにして先行側のパスの段階では全負荷パスにより圧延し、後行側のパスの段階では形状調整パスにより圧延する。全負荷パスから形状調整パスへ切り替わるパスをつなぎパスと呼び図7ではn−3パス目がこれにあたる。
ただし全負荷パスの計算により求めたつなぎパスと形状調整パスの計算により求めたつなぎパスとは通常一致することはなく、圧延条件を調整してこれらのつなぎパスを一致させなければならない。
即ち先行パス及び後行パスにおいて負荷する荷重を小さくして再計算をする。この再計算を図中●で示すようにつなぎパスが一致するまで繰り返し、一致した条件を最適なパススケジュールとする。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら特公昭61-32086号公報に開示された方法においては、最適なパススケジュールを算出するために、全てのパスにおける2通りの圧延条件を多数回再計算する必要があるため、計算に要する負荷が大きく計算時間が長くなるという問題がある。なお鋼板の開始板厚及び/又は目標板厚は毎回変わるため、鋼板毎にパススケジュールを算出する必要があり、計算時間の長さは生産サイクルの延長及び算出装置の独占等の悪影響をもたらす場合がある。
【0018】
また従来の算出方法で可逆式圧延プロセスにオンラインで適用する場合、計算時間を短縮するため高性能な算出装置が必要になりシステムのコストアップにつながるという問題がある。
【0019】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、最終パスから先行パスへ各パスにおける圧延荷重、圧延トルク、及び圧下量等の圧延条件を許容急峻度となるように遡って計算し、該圧延条件が予め設定されている圧延機の許容値から外れる場合に、当該パスの圧延条件を再計算し、1パス目に相当するパスの入側板厚が開始板厚と一致しないときに、その差異を吸収すべく、再計算したパスの圧延条件を調整する丸め処理を行うことにより、計算に要する負荷を従来の方法より軽減して計算時間を短縮し、算出装置を有効利用することができる圧延機の圧延条件算出方法及び圧延条件算出装置の提供を目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る圧延機の圧延条件算出方法では、被圧延材を複数回のパスで開始板厚から目標板厚に圧延する圧延機にて、入側板厚から出側板厚に圧延する各パスの圧延条件を算出する圧延条件算出方法において、目標板厚を出側板厚とする最終パスから先行側のパスへ各パスの圧延条件を計算し、該圧延条件が予め設定されている圧延機の許容値から外れる場合に、当該パスを限界パスとして該限界パスの圧延条件を許容値内に納めるべく再計算し、パスの入側板厚が開始板厚より厚くなったときに、入側板厚及び開始板厚の差を吸収すべく、前記再計算した限界パスより先行側のパスの圧延条件を調整することを特徴とする。
【0021】
第2発明に係る圧延機の圧延条件算出装置では、被圧延材を複数回のパスで開始板厚から目標板厚に圧延する圧延機にて、入側板厚から出側板厚に圧延する各パスの圧延条件を算出する圧延条件算出装置において、目標板厚を出側板厚とする最終パスから先行側のパスへ各パスの圧延条件を計算する手段と、計算した圧延条件が予め設定されている圧延機の許容値から外れる場合に、当該パスを限界パスとして該限界パスの圧延条件を許容値内に納めるべく再計算する手段と、パスの入側板厚が開始板厚より厚くなったときに、入側板厚及び開始板厚の差を吸収すべく、前記再計算した限界パスより先行側のパスの圧延条件を調整する手段とを備えることを特徴とする。
【0022】
本発明にあっては、最終パスから先行パスへ遡って各パスにおける圧延荷重、圧延トルク、及び圧下量等の圧延条件を許容急峻度となるように計算し、該圧延条件が予め設定されている許容値から外れる場合に、当該パスの圧延条件を再計算し、パスの入側板厚が開始板厚より厚くなったときに、その差異を吸収すべく、再計算したパスの圧延条件を調整することにより、先行側のパスで数回の再計算及び調整を行うだけでよく、従来の方法のように全てのパスで2通りの圧延条件を多数回再計算する必要がないため、計算に要する負荷を従来の方法より軽減して計算時間を短縮し、算出装置を有効利用することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は本発明の圧延条件算出装置を適用した可逆式圧延機を示す模式図である。図中1は板状の被圧延材であり、被圧延材11を搬送する複数のロールを有する第1テーブルローラ12及び第2テーブルローラ13が連続して配設されていいる。
これらの第1テーブルローラ12及び第2テーブルローラ13のロールを同方向へ回転させることにより、被圧延材11は第1テーブルローラ12側から第2テーブルローラ13側へ、又は第2テーブルローラ13側から第1テーブルローラ12側へ搬送される。
【0024】
第1テーブルローラ12と第2テーブルローラ13との間には、被圧延材11に荷重を加える上下一対のワークロール14,14と、それらを支持する上下一対のバックアップロール15,15が配設されており、第1テーブルローラ12側から第2テーブルローラ13側へ、又は第2テーブルローラ13側から第1テーブルローラ12側へ搬送されていく被圧延材11を圧延する。この一回の圧延を1パスという。
また夫々のワークロール14,14の回転軸14a,14aを介して被圧延材11に荷重を加える図示しない圧下装置が備えられており、該圧下装置は荷重を加えるために圧下位置を調整し、これにより板厚の制御が行われる。
被圧延材11が圧延されながら第1テーブルローラ12側から第2テーブルローラ13側へ搬送された後、逆方向へ同様の動作を行うことにより、被圧延材11は再度圧延されながら第2テーブルローラ13側から第1テーブルローラ12側へ搬送される。
【0025】
このように可逆式圧延機は被圧延材11を所定回数往復させて圧延を繰り返し、被圧延材11を目標板厚に仕上げるため、プロセスコンピュータ10に制御されており、プロセスコンピュータ10の制御は、通信回線16を介して圧延条件算出装置から送信されるパス毎の圧延荷重等の圧延条件を示すパススケジュールに基づいている。
【0026】
図2は本発明の圧延条件算出装置を示すブロック図である。図中20は本発明の圧延条件算出装置として用いられるパーソナルコンピュータ(以下パソコンという)であり、パソコン20は各パスの圧延条件を算出するためのプログラムを実行するCPU21を備え、CPU21にはプログラム及びデータ等の情報を記録するハードディスク22、CPU21の処理中に発生するデータを一時的に記憶するRAM23、マウス及びキーボード等の入力手段24、モニタ及びプリンタ等の出力手段25、並びに算出した圧延条件をプロセスコンピュータ10へ通信回線16を介して送信する通信インターフェース26が接続されている。
【0027】
なお決定したパススケジュールは通信インターフェース26から通信回線16を介して可逆圧延装置へ送信するだけでなく、出力手段25から出力される算出結果を確認し、作業者が可逆圧延装置のプロセスコンピュータ10へ入力してもよく、更にはプロセスコンピュータ10に圧延条件を算出するためのプログラムを実行させて、本発明の圧延条件算出装置として用いてもよい。
【0028】
次に本発明の圧延条件算出方法を図3の圧延条件算出装置の処理内容を示すフローチャートに基づいて説明する。先ず計算に用いる目標板厚ho 及び目標板クラウンCrO の入力を受け付け、最終パスの出側板厚h(1) 及び出側板クラウンCr(1) として設定し(ステップS1)、最終パスから計数したパス回数を示すカウンタJに”1”を設定する(ステップS2)。
【0029】
式4:Cr(i) =f3(P(i) ,W,Cwr)を用いてJパス目の出側板クラウンCr(J) 、板幅W、及びワークロールクラウンCwrからJパス目の圧延荷重P(J) を計算する(ステップS3)。最初の段階ではJ=1であるため製品板クラウンCr(1) 等のパラメータの数値から最終パスにおける圧延荷重P(1) を計算することになる。
【0030】
式2:P(i) =f1(h(i) ,h(i-1) ,kfm(i) ,W)を用いてJパス目の出側板厚h(J) 、圧延荷重P(J) 、変形抵抗kfm(J) 、及び板幅WからJパス目の入側板厚h(J+1) を計算する(ステップS4)。最初の段階ではJ=1であるため最終パスの入り側板厚、即ち最終パスから1つ前の出側板厚を計算することになる。
【0031】
式3:Tr(i) =f2(P(i) ,h(i) ,h(i-1) )を用いてJパス目の圧延荷重P(J) 、Jパス目の入側板厚h(J+1) 、及びJパス目の出側板厚h(J) からJパス目の圧延トルクTr(J) を計算する(ステップS5)。
【0032】
そしてステップS3〜ステップS5で計算された圧延荷重P(J) 及び圧延トルクTr(J) 、並びに入側板厚と出側板厚との差である圧下量h(J+1) −h(J) の全ての圧延条件が、予め設定されている可逆式圧延機の許容値内であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0033】
ステップS6において、全ての圧延条件の値が予め設定されている可逆式圧延機の許容値内である場合、Jパス目の圧延設定は設備能力上可能と判断し(ステップS6:Y)、入側板厚h(J+1) が圧延開始板厚hs より大きいか否かを判定する(ステップS9)。
【0034】
ステップS6において、圧延荷重P(J) 、圧延トルクTr(J) 、及び圧下量h(J+1) −h(J) の値の内いずれか一つでも可逆式圧延機の許容値から外れる場合、Jパス目の圧延設定は設備能力上不可能と判断し(ステップS6:N)、当該パス番号Jを限界パスJmax として記憶し(ステップS7)、圧延荷重P(J) 、圧延トルクTr(J) 、及び圧下量h(J+1) −h(J) が小さくなるように入側板厚h(J+1) を小さくして、これらの値が全て許容値内に納まる最大の入側板厚h(J+1) を求めるように再計算する(ステップS8)。
なおこの再計算は許容値から外れる項目の値を許容値の値にして入側板厚h(J+1) を求めれば良いので許容値と比較する圧延条件の数、即ち3回より多く再計算することはなく、この再計算により計算回数が著しく増加することはない。
また限界パスJmax は特公昭61-32086号公報に開示された方法のつなぎパスに相当し、このため最初に記憶したパス番号から変わることがないように、Jパス目以降でJmax の値が更新されないように設定されている。
【0035】
そして再計算により求められた入側板厚h(J+1) が圧延開始板厚hs より大きいか否かを判定する(ステップS9)。
ステップS9において入側板厚h(J+1) が圧延開始板厚hs より小さい場合、J+1回以上の圧延が必要と判断し(ステップS9:N)、式5:Δr(i) =Cr(i) /h(i) −Cr(i-1) /h(i-1) 、及び式6:λ(i) =f4(h(i) ,W)×√|Δr(i) |を用いて出側板厚h(J) 、出側板クラウンCr(J) 、入側板厚h(J+1) 、及び許容急峻度λ(J) から入側板クラウンCr(J+1) を算出する(ステップS10)。
【0036】
なおステップS10における式5及び式6を用いた計算では、必ずCr(J+1) >Cr(J) の関係が成り立ち、ステップS3における式4ではCr(J) はP(J) に比例していて必ずP(J+1) >P(J) となり、カウンタJが増加する方向、即ち後行パスから先行パスへ行くほど圧延荷重P(J) は増加する。これによりJmax パス目以降の計算では全てのパスがステップ6において圧延荷重P(J) 及び/又は圧延トルクCr(J) の許容値を超えることになり、ステップ8において再計算が行われる。このためJmax パス目より先行側のパスは特公昭61-32086号公報に開示された方法の全負荷パスに相当し、後行側のパスは形状調整パスに相当する。
【0037】
そしてカウンタJに”1”を加えて(ステップS11)、ステップS3に戻り、一つ先行側のパスについての圧延条件を計算する。
【0038】
ステップS9において入側板厚h(J+1) が圧延開始板厚hs より大きい場合、圧延はJ回で完了と判断する(ステップS9:Y)。
そして入側板厚h(J+1) と圧延開始板厚hs との差である過剰圧下量Δhを吸収すべく、ステップS8における再計算により最大荷重で圧下するように設定されているJmax パス目からJパス目までの夫々のパスに、予め設定されている所定の規則に従って過剰圧下量Δhの振り分けることにより、過剰圧下量Δhを吸収し、Jmax パス目からJパス目までの圧下量を調整する丸め処理を行う(ステップS12)。
【0039】
図4は本発明の圧延条件算出方法における圧下量を調整する丸め処理を概念的に示す説明図である。図4には縦軸に板厚をとり、圧延開始板厚hs から製品板厚ho までの板厚の変化を階段状のグラフで示したものであり、グラフ(a)が丸め処理前の板厚の変化を示し、グラフ(b)が丸め処理後の板厚の変化を示す。
グラフ(a)に示すように丸め処理前では、製品板厚ho から遡って計算したJパス目の出側板厚h(J) は圧延開始板厚ho より薄く、Jパス目の入側板厚h(J+1) は圧延開始板厚ho よりΔh厚い。
【0040】
この過剰圧下量Δhを吸収すべく、Jmax パス目からJパス目までの夫々のパスに予め設定されている所定の規則に従って過剰圧下量Δhを振り分ける丸め処理を行ったのがグラフ(b)であり、Jmax パス目以降の板厚が夫々丸め処理前の板厚より薄くなっており、丸め処理後のJパス目の入側板厚h'(J+1)は圧延開始圧hs に一致する。
【0041】
このようにして計算した各パスの圧延条件を示すパススケジュールを、通信インターフェース26から通信回線16を介してプロセスコンピュータ10へ送信及び/又は出力手段25から出力し処理を完了する。
【0042】
図5は本発明の圧延条件算出方法により計算を行った結果を示す一覧の図表である。なお前提条件は、圧延開始スラブサイズ:板厚92.85mm×板幅1554mm×板長1221mm、製品サイズ:板厚6.02mm×板幅1554mm×板長18832mm、製品板クラウン:0.06mm、許容急峻度:全パス±3%以内、圧延開始温度:941℃、最大許容荷重:5600ton 、及び最大許容トルク:550 ton・m に設定している。
【0043】
図5は全8回のパスにおける出口板厚、圧延荷重、トルク、板クラウン、及び急峻度をパス毎に示したものであり、図5においてJmax パスは5パス目であり、全てのパスにおいて許容急峻度内に納まっており、8パス目での製品板クラウンも目標通りになっている。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明に係る圧延機の圧延条件算出方法及び圧延条件算出装置においては、最終パスから先行パスへ遡って各パスにおける圧延荷重、圧延トルク、及び圧下量等の圧延条件を許容急峻度となるように計算し、該圧延条件が予め設定されている許容値から外れる場合に、当該パスの圧延条件を再計算し、1パス目に相当するパスの入側板厚が開始板厚と一致しないときに、その差異を吸収すべく再計算したパスの圧延条件を調整する丸め処理を行うことにより、先行側のパスで数回の再計算及び調整を行うだけでよく、計算に要する負荷を従来の方法より軽減して計算時間を短縮し、算出装置を有効利用することができる等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧延条件算出装置を適用した可逆式圧延機を示す模式図である。
【図2】本発明の圧延条件算出装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の圧延条件算出装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の圧延条件算出処理方法における圧下量を調整する丸め処理を概念的に示す説明図である。
【図5】本発明の圧延条件算出方法により計算を行った結果を示す一覧の図表である。
【図6】耳波が発生した被圧延材を示す斜視図である。
【図7】従来の圧延条件算出方法を説明するグラフである。
【符号の説明】
10 プロセスコンピュータ
11 被圧延材
12 第1テーブルローラ
13 第2テーブルローラ
14,14 ワークロール
15,15 バックアップロール
16 通信回線
20 圧延条件算出装置(パーソナルコンピュータ)
21 CPU
22 ハードディスク
23 RAM
24 入力手段
25 出力手段
26 通信インターフェース

Claims (2)

  1. 被圧延材を複数回のパスで開始板厚から目標板厚に圧延する圧延機にて、入側板厚から出側板厚に圧延する各パスの圧延条件を算出する圧延条件算出方法において、
    目標板厚を出側板厚とする最終パスから先行側のパスへ各パスの圧延条件を計算し、
    該圧延条件が予め設定されている圧延機の許容値から外れる場合に、当該パスを限界パスとして該限界パスの圧延条件を許容値内に納めるべく再計算し、
    パスの入側板厚が開始板厚より厚くなったときに、入側板厚及び開始板厚の差を吸収すべく、前記再計算した限界パスより先行側のパスの圧延条件を調整する
    ことを特徴とする圧延機の圧延条件算出方法。
  2. 被圧延材を複数回のパスで開始板厚から目標板厚に圧延する圧延機にて、入側板厚から出側板厚に圧延する各パスの圧延条件を算出する圧延条件算出装置において、
    目標板厚を出側板厚とする最終パスから先行側のパスへ各パスの圧延条件を計算する手段と、
    計算した圧延条件が予め設定されている圧延機の許容値から外れる場合に、当該パスを限界パスとして該限界パスの圧延条件を許容値内に納めるべく再計算する手段と、
    パスの入側板厚が開始板厚より厚くなったときに、入側板厚及び開始板厚の差を吸収すべく、前記再計算した限界パスより先行側のパスの圧延条件を調整する手段と
    を備えることを特徴とする圧延機の圧延条件算出装置。
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