JP4258317B2 - ポリウレタン樹脂およびそれを用いた接着剤 - Google Patents
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Description
本発明のポリウレタン樹脂は、官能基としてフェノール性水酸基および/またはイソシアヌル酸基を含有する第一のポリエステルジオールセグメントと、この第一のポリエステルジオールセグメントよりガラス転移温度が50℃以上低い第二のポリエステルジオールセグメントとが、有機ポリイソシアネート化合物で結合されている。このように高いガラス転移温度を有するポリエステルジオールと、低いガラス転移温度を有するポリエステルジオールとを、イソシアネートを用いてブロック状に結合させることにより、幅広い温度領域での接着性を達成することができたものである。
本発明における第一のポリエステルジオールセグメントにおいて、必須官能基であるフェノール性水酸基および/またはイソシアヌル酸基を導入するための原料としては、5−ヒドロキシイソフタル酸等のフェノール性水酸基含有二塩基酸成分や4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヴァレリック酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸等のフェノール性水酸基含有一塩基酸成分や2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−メチルフェノール、2,4−ビス(ヒドロキシメチル)−6−メチルフェノール等のフェノール性水酸基含有グリコール成分やビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレイト等のイソシアヌル酸基含有二塩基酸成分が挙げられる。これらのうち、フェノール性水酸基を導入するための原料としては5−ヒドロキシイソフタル酸、イソシアヌル酸基を導入するための原料としてはビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレイトが好ましい。
本発明における第二のポリエステルジオールセグメントに用いられる酸成分としては、上記第一のポリエステルジオールセグメントに用いられる二塩基酸成分として挙げたものと同様の化合物を用いる事が可能であり、好ましくは、セバシン酸、アゼライ酸等の脂肪族ジカルボン酸、およびテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸である。またグリコール成分も同様に上記第一のポリエステルジオールセグメントに用いられるグリコール成分として挙げた化合物を使用する事が出来、好ましくはエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオールである。
上記第一および第二のポリエステルジオールセグメントの共重合質量比率は第一セグメント:第二セグメント=85:15〜45:55であることが好ましい。第一のポリエステルジオールセグメントの第二のポリエステルジオールセグメントに対する共重合比率が85質量%より多くなると低ガラス転移温度セグメント本来の特性、すなわち室温および低温域での基材に対する接着性、樹脂塗膜の柔軟性等が失われる場合がある。一方、第二のポリエステルジオールセグメントの第一のポリエステルジオールセグメントに対する共重合比率が55質量%を超えると、樹脂の耐熱性が低下することがある。
本発明のポリウレタン樹脂において用いる有機ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、またはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの水添加物などの脂肪族、脂環族系ポリイソシアネートが挙げられる。これらのうち、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートは汎用性および得られるポリウレタン樹脂の溶剤溶解性を悪化させないといった観点から好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂は多価エポキシ化合物や多価イソシアナート化合物、あるいはメラミン系化合物等の硬化剤と併用して接着剤として用いることが好ましい。イソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートであってもよい。
本発明のポリウレタン樹脂において、第一のポリエステルジオールセグメントに必須の官能基として含まれるフェノール性水酸基および/またはイソシアヌル酸基は、これら硬化剤化合物と反応し、架橋点となる重要な反応性基である。これら官能基の樹脂中濃度は必要に応じ導入されるカルボン酸基と共に酸価として、滴定法により見積もる事が出来る。本発明のポリウレタン樹脂中の酸価は200eq/106g以上、好ましくは300eq/106g以上である。酸価が200eq/106g未満では硬化剤との反応が不十分なため、十分な耐熱性が得られない。上限は700eq/106g以下が好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂の数平均分子量は15000〜60000が好ましい。15000未満では十分な耐熱性と接着特性が得られないことがある。あるいは第一のポリエステルジオールセグメントと第二のポリエステルジオールセグメントとの相溶性の悪さから、溶剤中で2相分離を起こす場合もある。一方、数平均分子量が60000を超えると、溶液の粘度が高くなりすぎ、作業性を損ねるおそれがある。
本発明のポリウレタン系接着剤には先に述べた硬化剤の他、シランカップリング剤や種々粘着性樹脂成分をブレンドする事も出来る。また、難燃化を目的とし、各種難燃剤を併用する事が出来る。難燃剤としては例えばリン酸エステル、リン酸アミド、有機フォスフィンオキサイド等の有機リン系難燃剤や赤リン、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、トリアジン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤、ポリスチレンスルフォン酸アルカリ金属塩等の金属塩系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系難燃剤、その他無機系難燃剤等が挙げられる。その他添加剤としては硬化剤との反応性促進のための種々触媒化合物、あるいは耐熱性をより向上させる目的で無機シリカ粒子を配合しても良い。さらには種々使用目的により、タルク、雲母、ポリエチレン、着色顔料、その他有機・無機充填剤等が挙げられる。
温度計、撹拌機、還流式冷却管および蒸留管を具備した反応容器に、テレフタル酸109.6部、イソフタル酸132.8部、5−ヒドロキシイソフタル酸98.3部、エチレングリコール191.0部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(日本乳化剤(株)製 商品名:BA−2グリコール)294.4部を投入し、1.5kgf/cm2の加圧下のもと4時間かけて230℃まで徐々に昇温し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。エステル化反応終了後放圧し、チタンテトラブトキシド0.14部を上記反応容器に投入して10分間攪拌した。続いてこれを30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで昇温し、更に1mmHg以下で60分間後期重合を行いポリエステルジオールセグメントを得た。このようにして得られたポリエステル樹脂の特性値を表1に示した。
(1)樹脂組成の測定
核磁気共鳴スペクトル分析により、酸成分、アルコール成分のモル比を求めた。
(2)数平均分子量
テトラハイドロフランを溶媒として、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定した。
(4)酸価
ポリエステル樹脂0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定し、樹脂トン当たりの当量(当量/t)を求めた。指示薬はフェノールフタレインを用いた。
(5)フェノール性水酸基またはイソシアヌル酸基濃度
ポリエステル組成から計算値で求めた。
合成例1と同様にして、表1に示す原料を用いて、ポリエステルジオールを得た。この特性値を表1に示した。
温度計、撹拌機、還流式冷却管および蒸留管を具備した反応容器に、テレフタル酸116.2部、イソフタル酸139.4部、5−ヒドロキシイソフタル酸83.7部、エチレングリコール136.4部、ネオペンチルグリコール124.8部、トリシクロデカンジメタノール117.6部を投入し、1.5kgf/cm2の加圧下のもと4時間かけて230℃まで徐々に昇温し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。エステル化反応終了後放圧し、チタンテトラブトキシド0.14部を上記反応容器に投入して10分間攪拌した。続いてこれを30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで昇温し、更に1mmHg以下で60分間後期重合を行い、系内を常圧に戻し、窒素雰囲気下で200℃まで冷却を行い、無水トリメリット酸3.8部を上記反応容器に投入し、200℃、窒素雰囲気下にて30分撹拌し、酸末端変性ポリエステルジオールセグメントを得た。このようにして得られたポリエステル樹脂の特性値を表1に示した。
合成例1と同様にして、表2に示す原料を用いて、ポリエステルジオールを得た。この特性値を表2に示した。なお、樹脂特性値については第一のポリエステルジオールセグメントにおいて用いた方法と同一の方法を用いて測定した。
合成例1と同様にして、表3に示す原料を用いて、ポリエステルジオールを得た。この特性値を表3に示した。
合成例1と同様にして、表4に示す原料を用いて、ポリエステルジオールを得た。この特性値を表4に示した。
合成例1と同様にして、表5に示す原料を用いて、ポリエステルジオールを得た。この特性値を表5に示した。
温度計、撹拌機および蒸留管を具備した反応容器に、第一のポリエステルジオールセグメントの合成例1で得られたポリエステルジオールセグメントを65部、第二のポリエステルジオールセグメントの合成例1で得られたポリエステルジオールセグメントを35部、トルエンを150部を投入し、溶解後トルエン116.7部を蒸留させトルエンおよび水の共沸により反応系の脱水を行った。60℃まで冷却後、メチルエチルケトン33.3部および1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを2.5部を上記反応容器に投入し、60℃にて1時間撹拌後、ジブチルチンジラウレート0.1部を加え、80℃に昇温し反応させ、反応終了後、メチルエチルケトン172.5部を加えて固形分濃度を30%に調整し、ポリウレタン樹脂を得た。この溶液を室温にて12時間真空乾燥を行うことにより、溶剤を除き、第一のポリエステルジオールセグメントの合成例1と同様に特性値を測定した。この結果を表6に示す。
ポリウレタン樹脂の合成例1と同様に、表1に示した第一のポリエステルジオールセグメントと表2に示した第二のポリエステルジオールセグメントを用いてポリウレタン樹脂を得た。これらの特性値を表6に示す。
ポリウレタン樹脂の合成例1と同様に、表3に示した第一のポリエステルジオールセグメントと表4に示した第二のポリエステルジオールセグメントを用いてポリウレタン樹脂を得た。これらの特性値を表7に示す。
実施例1で得られたポリウレタン樹脂溶液100部に硬化剤としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)社製、商品名:HP7200H)4.6部、硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7の4級化テトラフェニルボレート塩(サンアプロ(株)社製 商品名:U−CAT5002)0.06部を加え、室温にて撹拌および溶解し目的とする接着剤溶液を得た。
当該接着剤溶液について、耐マイグレーション試験用フレキシブルプリント配線板(以下FPCと略す場合がある)の作製および試験を次の通りに行った。上記接着剤溶液を25μmのポリイミドフィルムに、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、120℃で3分乾燥した。このようにして得られた接着性フィルムを30μmの圧延銅箔と貼り合わせる際、圧延銅箔の酸処理面が接着剤と接するようにして、140℃で5kg/cm2の加圧下に1分間プレスし、接着した。得られた接着サンプルを140℃に4時間熱処理して硬化させた。このようにして銅貼り積層板を得た。この銅貼り積層板を常法により銅箔面にフォトレジスト塗布、パターン露光、現像、銅箔パターンエッチング、フォトレジスト剥離行程をへて、銅線間が0.1mmとなるようにパターン基板を作製した。
(試験結果判定)○:短絡、変色なし
×:短絡もしくは変色を起こす。
耐ハンダ性、剥離強度試験用サンプルの作製および試験方法を次のように行った。上記接着剤溶液を175μmのポリイミドフィルムに、乾燥後の厚みが30μmとなる様に塗布し、120℃で3分乾燥した。このようにして得られた接着性フィルムを30μmの圧延銅箔と貼り合わせる際、圧延銅箔の酸処理面が接着剤と接するようにして、140℃で5kg/cm2の加圧下に1分間プレスし、接着した。得られた接着サンプルを140℃に4時間熱処理して硬化させた。条件および試験結果判定は次のとおりである。
・耐ハンダ性
常態:サンプルを120℃にて30分乾燥した後、各温度でハンダ浴に1分間浸漬し膨れの有無を観察した。膨れ発生が起こらない上限の温度を確認した。
加湿:サンプルを40℃、80%加湿下にて2日間放置後、各温度でハンダ浴に1分間浸漬し膨れの有無を観察した。膨れ発生が起こらない上限の温度を確認した。なお、ハンダの融点が200℃のため、200℃においても膨れが生じ、膨れ発生が起こらない上限の温度を測定できない場合は×と記入する。
・剥離強度
25℃および120℃の雰囲気下において、引張速度100mm/minで90゜剥離試験を行った。
シェルフライフ試験用サンプルの作製および試験方法を次のように行った。上記接着剤溶液を耐マイグレーション試験用には25μmのポリイミドフィルム、耐ハンダ性、剥離強度試験用には175μmのポリイミドフィルムに、それぞれ乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、120℃で3分乾燥した。このようにして得られた接着性フィルムを20℃雰囲気中に6ヶ月放置し、この接着フィルムを、耐マイグレーション試験用FPCの作製および試験、耐ハンダ性、剥離強度試験用サンプルの作製および試験方法と同様に評価を行った。
ポリウレタン樹脂の合成例で得られた表6に示されるポリウレタン樹脂を用いて、表8に示すように、実施例6と同様に配合し、サンプルを調製した。得られたサンプルの各評価を実施例6と同様に行った。この試験結果を表10に示す。
日本ゼオン(株)社製Nipol1072J 25部、日本化薬(株)社製BREN−S 20部、東都化成(株)社製YDB400 20部、東都化成(株)社製YD014 30部、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物 5部、新日本理化(株)社製リカシッドTMTA−C 4部、四国ファインケミカルズ(株)社製C11Z−AZINE 0.5部、四国ファインケミカルズ(株)社製2PHZ−CN 0.5部、水酸化アルミニウム 30部をメチルエチルケトンを用いて固形分濃度が40%となるように溶解し、接着剤溶液を得た。このようにして得られた接着剤溶液を用いて、実施例6と同様に試験を行った。この試験結果を表11に示す。
ポリウレタン樹脂の比較合成例で得られた表7に示されるポリウレタン樹脂およびポリエステル比較合成例表9で得られたポリエステル樹脂を用いて、表9に示す様に、実施例1と同様に配合し、サンプルを作成した。得られたサンプルの各評価を実施例5と同様に行った。この試験結果を表11に示す。
Claims (6)
- 官能基としてフェノール性水酸基および/またはイソシアヌル酸基を含有する第一のポリエステルジオールセグメントと、該第一のポリエステルジオールセグメントよりガラス転移温度が50℃以上低い第二のポリエステルジオールセグメントとが、有機ポリイソシアネート化合物で結合されて形成されるポリウレタン樹脂であって、該ポリウレタン樹脂の酸価が200〜700eq/106gであることを特徴とする、ポリウレタン樹脂。
- 第一のポリエステルジオールセグメントと第二のポリエステルジオールセグメントとの質量比率が、85:15〜45:55であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂。
- 数平均分子量が15000〜60000であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂。
- 第一のポリエステルジオールセグメントのガラス転移温度が50℃以上であるか、または、第二のポリエステルジオールセグメントのガラス転移温度が20℃未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
- 第一のポリエステルジオールセグメントの数平均分子量が2000以上であり、かつ、第二のポリエステルジオールセグメントの数平均分子量が3000以上である請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン樹脂を用いた接着剤。
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