JP4254390B2 - 有機−無機ハイブリッドフィルムおよびその製造方法および有機−無機ハイブリッド材料からなる光学フィルムおよび偏光板 - Google Patents

有機−無機ハイブリッドフィルムおよびその製造方法および有機−無機ハイブリッド材料からなる光学フィルムおよび偏光板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロース誘導体と金属酸化物からなる、有機−無機ハイブリッド材料を主成分として構成される位相差フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルム等の光学フィルム、および前記光学フィルムを含む偏光板、および前記有機−無機ハイブリッドフィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロース誘導体フィルムは、光学的に優れた性質を有するため、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどの各種光学フィルムに利用されている。
【0003】
これらのセルロース誘導体フィルムには、セルロース誘導体フィルムの加工性や透湿性を改善するために可塑剤や紫外線吸収剤といった添加剤の添加が必須であるが、その一方、これらの添加剤を含むことにより、これらの添加剤のブリードアウトや、揮発がおこるために寸法安定性、保存安定性が悪化するという問題が生じていた。
【0004】
セルロース誘導体フィルムの用途の一例である偏光板は、偏光機能を有する二色性染料で着色後一軸延伸されたポリビニルアルコールからなる偏光子を、外光や水分から保護するために、一般にトリアセチルセルロースからなる偏光板用保護フィルムを2枚、前記偏光子の両側より貼り合わせることにより製造されているが、偏光板からなる液晶画像表示装置は、近年カーナビゲーション、携帯電話表示装置に代表されるように屋外で使用される機会が多くなり、様々な環境下での高い耐久性が強く求められている。しかしながら、これまでの偏光板は、偏光子保護フィルムの寸法が経時で変化することにより、偏光板の縁の部分が光を通すようになってしまう、縁の白抜けという現象が起きるという欠点があった。
【0005】
このような寸法安定性の不足は、その他の光学用途のフィルムからも改善が求められている。例えば位相差フィルムでは光学特性の安定性の観点から寸法安定性が求められている。また近年、ノートパソコン、携帯電話等のフルカラー化あるいはディスプレイの高精細化等に伴って反射防止機能、帯電防止機能等の付与された高機能の光学フィルムが求められており、高透過率材料であるセルロース誘導体フィルム上に直接あるいは他の層を介して金属酸化物等の機能層を設けることにより、これらの高機能光学フィルムが開発されているが、このような多層構成のフィルムでも基板の寸法変化により光学特性の悪化が生じるなどの不具合があった。
【0006】
なお本発明において光学フィルムとは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパーディスプレイ等の各種表示装置に用いられる機能フィルムのことであり、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角拡大フィルム、光学補償フィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、色補正フィルター、色分解フィルム、紫外線または赤外線カットフィルム、帯電防止フィルムあるいは導電性フィルム等を含む。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、透湿度が低く、寸法安定性が改善された偏光板保護フィルム、位相差フィルム等の光学フィルム、およびそれらの製造方法を提供することにある。さらに、位相差フィルムのリターデーション変動を抑制し、又、耐久性の優れた偏光板、反射防止フィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題に対し、鋭意検討を行った結果、基材であるセルロース誘導体とも、セルロース誘導体に含まれる可塑剤等の添加剤に対しても、水素結合によって相互作用することが可能な、金属酸化物をナノスケールでセルロース誘導体中に分散・混合する、有機−無機ハイブリッドとよばれる手法により達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の上記目的は下記の構成によって達成される。
1.セルロース誘導体と、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物を含有する有機−無機ハイブリッドフィルムにおいて、該フィルム中に可塑剤を1〜20質量%含有することを特徴とする有機−無機ハイブリッドフィルム。
【0010】
2.前記可塑剤が、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有する多価アルコールエステル、或いは分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するグリコレート系可塑剤であることを特徴とする前記1に記載の有機−無機ハイブリッドフィルム。
【0011】
3.前記加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物が、下記式(1)のように加水分解重縮合反応が完全に終了したと仮定した場合、その質量が有機−無機ハイブリッドフィルム支持体の全質量に対して0.1質量%から40質量%であることを特徴とする前記1または2に記載の有機−無機ハイブリッドフィルム。
【0012】
式(1) Apqr → Apqr/2
(但し、Mは中心金属を表し、qはその原子数を表す。Aは加水分解されない1価の置換基を表し、pはその置換基数を表す。Bは加水分解可能な置換基を表し、rはその置換基数を表す。)
4.前記加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物が、前記式(1)のように加水分解重縮合反応が完全に終了したと仮定した場合、その質量が有機−無機ハイブリッドフィルム支持体の全質量に対して0.5質量%から5質量%であることを特徴とする前記1または2に記載の有機−無機ハイブリッドフィルム。
【0013】
5.前記加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物が、Si、Ti、ZrまたはAlのアルコキシド、或いはSi、Ti、ZrまたはAlを含むダブル金属アルコキシドであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルム。
【0014】
6.前記セルロース誘導体が、セルロースエステルであることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルム。
【0015】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルムを用いて構成された位相差フィルムが、下記式(2)で定義する膜厚方向のリターデーション値(Rt値)が70〜300nmであるか、下記式(3)で定義する面内方向のリターデーション値(Ro値)が30〜1000nmであるか、またはRt値が70〜300nmであり、かつRo値が30〜1000nmのいずれかであることを特徴とする位相差フィルム。
【0016】
式(2) Rt値=((nx+ny)/2−nz)×d
式(3) Ro値=(nx−ny)×d
(但し、nxはフィルム面内の屈折率が最も大きい方向の屈折率、nyはnxに直角な方向でのフィルム面内の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)をそれぞれ表す。)
8.前記1〜6のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルムを用いて構成されていることを特徴とする偏光板保護フィルム。
【0017】
9.前記1〜6のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルムを支持体とし、該支持体と少なくとも1層の金属酸化物薄膜を有することを特徴とする反射防止フィルム。
【0018】
10.有機−無機ハイブリッドフィルム支持体と、金属酸化物薄膜の間に、紫外線硬化樹脂層が設けてあることを特徴とする前記9に記載の反射防止フィルム。
【0019】
11.少なくとも1層の金属酸化物薄膜が大気圧プラズマ処理によって形成されていることを特徴とする前記9又は10に記載の反射防止フィルム。
【0020】
12.前記金属酸化物薄膜が、大気圧または大気圧近傍の圧力下、対向する電極間に100kHz〜150MHzの高周波電圧で、かつ、1.0〜50W/cm2の電力を供給し放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、該プラズマ状態の反応性ガスに基材を晒すことによって形成される膜であることを特徴とする前記9〜11のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【0021】
13.前記7記載の位相差フィルム、前記8記載の偏光板保護フィルム及び前記9〜12のいずれか1項に記載の反射防止フィルムから選ばれる少なくとも1種のフィルムを含むことを特徴とする偏光板。
【0022】
14.前記1〜6のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルムを、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物、可塑剤及び溶剤を含有するセルロース誘導体溶液を支持体上に流延する溶剤キャスト法で製造することを特徴とする有機−無機ハイブリッドフィルムの製造方法。
【0023】
15.前記溶剤キャスト法が、0.01〜2.0%の水分を含むセルロース誘導体溶液を用いてなされていることを特徴とする前記14に記載の有機−無機ハイブリッドフィルムの製造方法。
【0024】
本発明を更に詳しく説明する。
<有機−無機ハイブリッド>
有機−無機ハイブリッド(または有機−無機ポリマーコンポジットまたはゾル・ゲル法などと呼ばれる手法が用いられるが、本発明では有機−無機ハイブリッドと呼称する)とは、有機ポリマーと無機化合物を組み合わせて、双方の特性を持った材料を合成する考え方であるが、有機ポリマーと無機化合物は相溶性に乏しいため、単純に両者を混合するだけでは有用な材料を得ることが難しい。近年になって、無機物を金属アルコキシドのような液体状態から合成する手法が開発されるに至り、溶液プロセスによって可視光の波長以下(〜約750nm以下)のナノスケールで有機物と無機物を混合することが可能となり、光学的にも透明で有用な材料が得られるようになってきている。
【0025】
本発明においても、鋭意検討した結果、有機ポリマーであるセルロース誘導体と無機化合物である金属酸化物をある一定の条件下で混合することにより、セルロース誘導体の透明性や光学特性を保ったまま、寸法安定性を向上させることが判明し、上記課題を達成する基材フィルムを得ることができた。さらに、金属酸化物をハイブリッド化することによって、同じ可塑剤の添加量であっても一層の透湿度の低減が可能であること、また位相差フィルムとして使用する場合には、膜厚あたりのリターデーションが増加することといった、予想外の効果を得ることができた。
【0026】
<有機ポリマー>
本発明においては、液晶表示用フィルムとして好ましい有機材料として、低複屈折・波長分散特性が正であるセルロース誘導体が、有機−無機ハイブリッドフィルムの有機ポリマーとして用いられる。
【0027】
ここで高分子化合物の波長分散特性が正であるとは、波長600nmにおける面内リターデーション値R(600)を波長450nmにおける面内リターデーション値R(450)で除した値が1より大きいことをいう。波長600nmにおける面内リターデーション値R(600)及び波長450nmにおける面内リターデーション値R(450)は、該高分子化合物を可溶な溶媒(例えば、アセトン、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、塩化メチレン及びこれらの混合溶媒)に溶解し、ガラス板上にフィルム厚みが100μmになるように流延し乾燥させたフィルムを作製し、波長600nmにおける面内リターデーション値R(600)と波長450nmにおける面内リターデーション値R(450)を測定することによって求めることができる。
【0028】
波長分散特性が正である基板フィルムにおいては、可視光の全波長領域で偏光の補償が可能であり、複屈折を利用した表示方法を採用している液晶パネルにおいては色ずれを防ぐことができ、また、有機EL表示素子においては良好なコントラストを得ることができる。
【0029】
本発明に用いられるセルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルセルロースなどのセルロースエーテル類と、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類が挙げられるが、好ましくはセルロースエステル類である。
【0030】
本発明に用いられるセルロース誘導体の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることが出来る。また、これらから得られたセルロース誘導体は、それぞれを単独あるいは任意の割合で混合使用することが出来るが、綿花リンターを50質量%以上使用することが好ましい。
【0031】
セルロースエステルフィルムの分子量が大きいと弾性率が大きくなるが、分子量を上げすぎるとセルロースエステルの溶解液の粘度が高くなりすぎるため生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で70,000〜200,000のものが好ましく、100,000〜200,000のものが更に好ましい。本発明で用いられるセルロースエステルはMw/Mn比が3.0未満であるが、好ましくは1.4〜2.3である。
【0032】
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
【0033】
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0034】
セルロースエステルの総アシル基置換度は2.3〜2.9が用いられ、2.6〜2.9が好ましく用いられる。総アシル基置換度はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0035】
<加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物>
次に本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムを構成する無機化合物である金属化合物について説明する。
【0036】
本発明において金属とは、「周期表の化学」岩波書店 斎藤一夫著 p.71記載の金属すなわち半金属性原子を含む金属である。
【0037】
本発明に用いられる加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物としては、例えば金属アルコキシド、金属ジケトネート、金属アルキルアセトアセテート、金属イソシアネート、反応性の金属ハロゲン化物が挙げられ、好ましくは金属種がケイ素、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムから選ばれるものであって、特に好ましくはケイ素である。
【0038】
このような加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は、中心金属をM、その原子数をq、加水分解されない置換基をA、その置換基数をp、加水分解可能な置換基をB、その置換基数をrとすると、理想的には下記の式(1)のように反応が完結し、金属酸化物が得られる。
【0039】
式(1) Apqr → Apqr/2
この金属酸化物の含有量は、有機−無機ハイブリッド材料を燃焼させた後、灰中の金属酸化物の含有量として求めることができる。この際灰中に金属酸化物以外の成分(例えばリン等)が含まれている場合は公知の方法で灰中の金属酸化物量を測定することができる。
【0040】
有機−無機ハイブリッド材料の無機物の含有量としては、有機−無機ハイブリッドフィルムの全質量に対して、0.1〜40質量%が好ましい。より好ましくは、0.5〜20質量%であり、更に好ましくは0.5〜5質量%である。無機物の添加量が0.1質量%より少ないと有機−無機ハイブリッドフィルムの物性改良効果が認められなくなり、40質量%を越えると有機−無機ハイブリッドフィルムが脆くなってしまうためである。
【0041】
本発明の有機−無機ハイブリッドフィルム中の重縮合物の平均粒子径の測定は透過型電子顕微鏡観察、X線小角散乱測定により得ることができる。好ましいのはX線小角散乱測定により求める方法である。X線小角散乱法の詳細については例えばX線回折ハンドブック第3版(理学電機株式会社2000年発行)を参照することができる。よく知られているように試料中に電子密度の異なる領域が存在すると入射X線方向に散漫な散乱が観測される。この散乱は散乱角0〜5°程度の範囲に観測されるため、これらの散乱は小角散乱と呼ばれる。この散乱曲線に対し、GuinierプロットあるいはFankuchen法を用いて重縮合物の平均粒子径を測定する。
【0042】
本発明における有機−無機ハイブリッドフィルム中の重縮合物の好ましい平均粒子径は1〜200nmである。より好ましくは1〜100nmさらに好ましくは1〜50nmで、1〜20nmが最も好ましい。本発明の重縮合物は従来の金属酸化物微粒子をセルロースエステル溶液中に分散して添加する方法に比べて凝集体を形成しにくく、小粒径の状態を安定に得られる点で優れている。
【0043】
加水分解重縮合可能な反応性金属化合物としては、p=0であるような、全てが加水分解可能な置換基で置換されていることが好ましいが、基材フィルムの透湿度を低減する観点から、加水分解されない置換基によって該金属1原子当たり1つまたは2つ、あるいは3つ置換されている化合物が含まれていても良い。このような加水分解されない置換基を有する金属化合物の添加量としては、添加される金属化合物の50モル%以下が好ましい。また、上記添加量の範囲で2種以上の異なる種類の金属アルコキシドを併用しても良い。
【0044】
このような加水分解されない置換基としては、置換または無置換のアルキル基、または置換または無置換のアリール基が好ましく該アルキル基またはアリール基の置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素環基(たとえばフラン、チオフェン、ピリジン等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、グリシジル基、ビニル基、フッ素原子含有アルキル基またはフッ素原子含有アリール基等が挙げられる。
【0045】
本発明に用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、ケイ素化合物として、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトライソシアナートシラン等が挙げられる。
【0046】
また加水分解されない置換基を有するケイ素化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、メチルトリイソシアナートシラン、フェニルトリイソシアナートシラン、ビニルトリイソシアナートシラン、等が挙げられる。
【0047】
また、これらの化合物が部分的に縮合した、多摩化学製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のような、数量体のケイ素化合物でもよい。
【0048】
またチタン化合物としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタン−n−ブトキシド、テトラクロロチタン、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
【0049】
またジルコニウム化合物としては、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウムトリ−n−ブトキシドアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、等が挙げられる。
【0050】
またアルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−n−ブトキシド、アルミニウム−s−ブトキシド、アルミニウム−ジ−s−ブトキシドエチルアセチルアセトナート、アルミニウム−t−ブトキシド、アルマトラン、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0051】
またその他の金属からなる化合物としては、例えば、バリウムイソプロポキシド、カルシウムエトキシド、銅エトキシド、マグネシウムエトキシド、マンガンメトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、錫エトキシド、亜鉛メトキシエトキシド、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、ビスマスt−ペントキシド、クロムイソプロポキシド、エルビウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド、鉄エトキシド、ランタンイソプロポキシド、ネオジウムメトキシエトキシド、プラセオジムメトキシエトキシド、サマリウムイソプロポキシド、バナジウムトリイソブトキシドオキシド、イットリウムイソプロポキシド、テトラメトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、テトラ−n−ブトキシゲルマン、セリウム−t−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウム−n−ブトキシド、テルルエトキシド、モリブデンエトキシド、ニオブエトキシド、ニオブ−n−ブトキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタル−n−ブトキシド、タングステン(V)エトキシド、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)フェノキシド等が挙げられる。
【0052】
また、本発明に用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、分子種内に2つの金属原子を持つダブル金属アルコキシドと呼ばれる化合物でも良い。このようなダブル金属アルコキシドとしては、例えば、ゲレスト社製のアルミニウム銅アルコキシド、アルミニウムチタンアルコキシド、アルミニウムイットリウムアルコキシド、アルミニウムジルコニウムアルコキシド、バリウムチタンアルコキシド、バリウムイットリウムアルコキシド、バリウムジルコニウムアルコキシド、インジウム錫アルコキシド、リチウムニッケルアルコキシド、リチウムニオブアルコキシド、リチウムタンタルアルコキシド、マグネシウムアルミニウムアルコキシド、マグネシウムチタンアルコキシド、マグネシウムジルコニウムアルコキシド、ストロンチウムチタンアルコキシド、ストロンチウムジルコニウムアルコキシド等が挙げられるが、少なくとも、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウムのいずれかの金属が含まれているものが好ましい。
【0053】
<加水分解触媒>
本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムにおいて、無機化合物である加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は、必要に応じて水と触媒を加えて加水分解を起こさせて縮合反応を促進してよい。
【0054】
しかしフィルムのヘイズ、平面性、製膜速度、溶剤リサイクルなどの生産性の観点から、水分はドープ中に0.01%以上2.0%以下の範囲内とすることが好ましい。また、疎水的な加水分解重縮合可能な反応性金属化合物に水を添加する場合には、加水分解重縮合可能な反応性金属化合物と水が混和しやすいように、メタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒も添加されていることが好ましい。また、セルロース誘導体とドープに加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を混合する際に、ドープからセルロース誘導体が析出しないよう、該セルロース誘導体の良溶媒も添加されていることが好ましい。
【0055】
反応性金属化合物の加水分解を促進させる触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸、レブリン酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が用いられる。酸を添加しゾル・ゲル反応が進行した後に塩基を加え中和しても良い。塩基を加え中和する場合、乾燥工程前でのアルカリ金属の含有量が5000ppm未満である事が好ましい(ここでアルカリ金属とは、イオン状態のものを含む)。又、ルイス酸、例えばゲルマニウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、錫などの金属の酢酸塩、その他の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩などを併用してもよい。
【0056】
また触媒として、このような酸類の代りに、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなど、DBU(ジアザビシクロウンデセン−1)、DBN(ジアザビシクロノネン)などのビシクロ環系アミン、アンモニア、ホスフィン、アルカリ金属アルコキシド、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の塩基を用いることができる。
【0057】
このような、酸またはアルカリ触媒の添加量としては特に制限はされないが、重縮合可能な反応性金属化合物の量に対して1.0〜20%が好ましい。また、酸及び塩基の処理を複数回行っても良い。必要な加水分解を行った後、触媒を中和してもよいし揮発性の触媒は減圧で除去してもよいし、分液水洗等により除去しても良い。
【0058】
尚、金属化合物の加水分解重縮合は、塗布前の溶液状態で反応を完結させても良いし、フィルム状に流延してから反応を完結させても良いが塗布前に反応を完結させるのが良い。用途によって反応は完全に終了しなくても良いが、できれば完結していたほうが良い。加水分解重縮合の反応状態はNMRにて確認することができる。反応性金属化合物としてシリコンアルコキシドを用いる場合は、シリコンアルコキシドあるいはオルガノアルコキシシランを加水分解すると、OR基がOHに置換し、さらに他のSi−OHあるいはSi−ORと縮合する反応が起こるが、29−Si−NMRスペクトルには、それぞれに対応するピークが現れる。具体的には、シリコンアルコキシド(Si(OR)4)は4つのOR基を持つが、これらがOHと置換しても一つも縮合していない場合はQ0と呼ばれるピークが現れる。四つの内一つが縮合した時にはQ1、二つが縮合した時にはQ2のピークが現れる。
【0059】
図1にSi(OC254(テトラエトキシシラン:TEOS)および、加水分解後の29−Si−NMRスペクトルを示す。縦軸はシグナルの相対速度を、横軸は周波数を表している。周波数の間隔は用いた磁場の強さによって変わるので、試料と基準のTMSとの共鳴周波数の差を装置発信器の周波数に対するppmで示した値を横軸の単位として用いるのが一般的であり、この図もそれに準じている。Si(OC254のSiによるピークQ0が見られるのに対し、加水分解後はピークQ0が消失し、Q1、Q2に帰属される様々なピークが現れた。これにより反応状態の確認を行うことが好ましい。
【0060】
<溶媒>
本発明のセルロース誘導体および加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は溶媒に溶解させてドープを形成し、これを基材上に流延しフィルムを形成させる。この際に押し出しあるいは流延後に溶媒を蒸発させる必要性があるため、揮発性の溶媒が好ましい。更に、反応性金属化合物や触媒等と反応せず、かつ流延用基材を溶解しないものである。又、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。また、セルロースエステルと加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を各々別の溶媒に溶解し後に混合しても良い。
【0061】
ここで、上記セルロース誘導体に対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
【0062】
良溶媒の例としてはアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレン、アセト酢酸メチルなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチルおよび塩化メチレンが好ましい。
【0063】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらは、ドープを金属支持体に流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることでウェブ(支持体上にセルロース誘導体のドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、ウェブを丈夫にし金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロース誘導体の溶解を促進したりする役割もあり、反応性金属化合物のゲル化、析出、粘度上昇を抑える役割もある。
【0064】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることが出来る。これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロース誘導体に対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
【0065】
このような条件を満たし好ましい高分子化合物であるセルロース誘導体を高濃度に溶解する溶剤として最も好ましい溶剤は塩化メチレン:エチルアルコールの比が95:5〜80:20の混合溶剤である。あるいは、酢酸メチル:エチルアルコール60:40〜95:5の混合溶媒も好ましく用いられる。
【0066】
<添加剤>
本発明における有機−無機ハイブリッドフィルムには、フィルムに加工性・柔軟性・防湿性を付与する可塑剤、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)、フィルムのリターデーションを調整するリターデーション調整剤等を含有させても良い。
【0067】
<可塑剤>
用いられる可塑剤しては特に限定はないが、フィルムにヘイズを発生させたりフィルムからブリードアウト或いは揮発しないように、セルロース誘導体や加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物と水素結合などによって相互作用可能である官能基を有していることが好ましい。
【0068】
このような官能基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられるが、好ましくはカルボニル基、エステル基、ホスホニル基である。
【0069】
このような可塑剤の例として、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコール系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることが出来るが、特に好ましくは多価アルコール系可塑剤、グリコレート系可塑剤である。
【0070】
多価アルコールエステルは2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
【0071】
本発明に用いられる多価アルコールは次の一般式(1)で表される。
一般式(1) R1−(OH)n
(ただし、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものをあげることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0072】
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0073】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0075】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0076】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0077】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
【0078】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロース誘導体との相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0079】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0080】
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を示す。
【0081】
【化1】
Figure 0004254390
【0082】
【化2】
Figure 0004254390
【0083】
【化3】
Figure 0004254390
【0084】
【化4】
Figure 0004254390
【0085】
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するグリコレート系可塑剤を好ましく用いることができる。好ましいグリコレート系可塑剤としては、例えばブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を用いることができる。
【0086】
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等を用いることができる。
【0087】
これらの可塑剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。可塑剤の使用量は、セルロース誘導体に対して1質量%未満ではフィルムの透湿度を低減させる効果が少ないため好ましくなく、20質量%を越えるとフィルムから可塑剤がブリードアウトし、フィルムの物性が劣化するため、1〜20質量%が好ましい。6〜16質量%が更に好ましく、特に好ましくは8〜13質量%である。
【0088】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収機能は、液晶の劣化防止の観点から、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどの各種光学フィルムに付与されていることが好ましい。このような紫外線吸収機能は、紫外線を吸収する材料をセルロース誘導体中に含ませても良く、セルロース誘導体からなるフィルム上に紫外線吸収機能のある層を設けてもよい。
【0089】
このような紫外線吸収機能のある紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばトリアジン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。又、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0090】
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチル−フェノール<<チヌビン(TINUVIN)171>>、2−オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物<<チヌビン(TINUVIN)109>>、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール<<チヌビン234>>、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール<<チヌビン326>>等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。また、上記のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン326等チヌビンは何れもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の市販品で、好ましく使用出来る。
【0091】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
【0092】
また、本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムに用いることのできる紫外線吸収剤は、後述のプラズマ処理工程の汚染が少なく、また、各種塗布層の塗布性にも優れる為、特開2000−187825に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤を含むことが好ましく、特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0093】
また、特開平6−148430号及び特開2002−47357号記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)を好ましく用いることができる。特開平6−148430号の一般式(1)、あるいは一般式(2)、あるいは特開2002−47357号の一般式(3)(6)(7)記載の高分子紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0094】
これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して質量割合で0.1〜5.0%が好ましく、0.5〜1.5%が更に好ましい。
【0095】
<酸化防止剤>
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合には、有機−無機ハイブリッドフィルムの劣化が起こる場合がある。酸化防止剤は、例えば、有機−無機ハイブリッドフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により有機−無機ハイブリッドフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記有機−無機ハイブリッドフィルム中に含有させるのが好ましい。
【0096】
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることが出来る。特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
【0097】
これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0098】
<マット剤>
本発明におけるセルロース誘導体には、滑り性を付与するためにマット剤等の微粒子を添加することができる。微粒子としては、無機化合物の微粒子又は有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0099】
微粒子の添加量は、有機−無機ハイブリッドフィルム1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.5gがより好ましく、0.08〜0.3gが更に好ましい。これにより、有機−無機ハイブリッドフィルム表面に0.1〜1μmの凸部が形成されることが好ましく、フィルムに滑り性が付与される。
【0100】
有機−無機ハイブリッドフィルム中に添加される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。中でもケイ素を含むものが濁度が低くなり、また、フィルムのヘイズを小さく出来るので好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0101】
二酸化珪素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどを挙げることが出来る。
【0102】
二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させて得ることが出来る。
【0103】
二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下、見掛比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmであるのがより好ましく、5〜12nmであるのが更に好ましい。これらの微粒子はフィルム中で2次凝集体を形成してフィルム表面に凹凸を形成することによって滑り性を付与している。1次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く好ましい。見掛比重は90〜200g/L以上がより好ましく、さらに100〜200g/L以上がより好ましい。見掛比重が大きい程、高濃度の微粒子分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、大きな凝集物の発生が少なく好ましい。なお、本発明において、リットルをLで表すこととする。
【0104】
好ましい二酸化珪素の微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製のアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されているものを挙げることが出来、アエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812を好ましく用いることが出来る。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、何れも使用することが出来る。
【0105】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルTT600が本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムの濁度を低くし、且つ摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
【0106】
有機化合物の微粒子の例としては、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。これらのうちシリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(東芝シリコーン(株)製)を挙げることが出来る。
【0107】
微粒子の1次平均粒子径の測定においては、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とすることができる。
【0108】
また、上記記載の見掛比重は、二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出することができる。
【0109】
見掛比重(g/L)=二酸化珪素質量(g)/二酸化珪素の容積(L)
ここで添加される無機微粒子は、フィルム表面に滑り性を付与することができるが、本発明で用いられる反応性金属化合物の重縮合物の添加によって得られる寸法安定性の効果は得られない。又、多量の無機微粒子の添加は凝集物の増加や、ヘイズの著しい上昇を伴う点が異なる
<製膜>
以下、本発明に係わる有機−無機ハイブリッドフィルムの好ましい製膜方法について述べる。有機−無機ハイブリッドフィルムは溶液流延製膜方法により作製できる。
【0110】
1)溶解工程
はじめにセルロース誘導体を含むドープの作製法から解説する。
【0111】
セルロース誘導体(フレーク状の)に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で該セルロース誘導体、ポリマーや添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいはセルロース誘導体溶液にポリマー溶液や添加剤溶液を混合してドープを形成する工程である。
【0112】
セルロース誘導体の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることが出来るが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0113】
ドープ中のセルロース誘導体の濃度は10〜35質量%が好ましい。溶解中または後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
【0114】
次に重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープの作製法を解説する。重縮合可能な反応性金属化合物は、前記セルロース誘導体のドープに添加する際に、セルロース誘導体が析出しないようにセルロース誘導体のドープの主溶剤によって10質量%〜50質量%に希釈されていることが好ましい。また同様の観点から、この主溶剤にセルロース誘導体が希薄に(10質量%以下)溶解されていても構わない。
【0115】
また、重縮合可能な反応性金属化合物に触媒・水などを添加する際には、重縮合可能な反応性金属化合物と混和しやすくなるように、メタノール、エタノール、メチルセロソルブのようなアルコール系の溶媒を、全溶媒量に対して50%以下の割合で添加しても良い。
【0116】
また、可塑剤や紫外線吸収剤のような添加剤の全量または一部を、こちらのドープに添加しても良い。全ての材料が溶解後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
【0117】
次に、前記のセルロース誘導体と重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープの混合について解説する。
【0118】
別々の釜にて調製された、セルロース誘導体のドープと、重縮合可能な反応性金属化合物のドープは、それぞれろ過後に混合されることが好ましい。混合の順番には特に制限はないが、セルロース誘導体のドープをゆっくりと攪拌しながら、反応性金属化合物のドープを少量ずつ混合することが好ましい。2つのドープの混合終了後、再び濾材で濾過し脱泡して送液ポンプで次工程に送り、最終ドープとする。
【0119】
2)流延工程
ドープを送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0120】
ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造の有機−無機ハイブリッドフィルムを得ることが好ましい。
【0121】
3)溶媒蒸発工程
ウェブを金属支持体上で加熱し、金属支持体からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
【0122】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または金属支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。
【0123】
4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。なお、剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させ過ぎてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0124】
ここで、製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離することで製膜速度を上げることが出来る)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。例えば、ドープ中にセルロース誘導体に対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。
【0125】
金属支持体上でのウェブの乾燥が条件の強弱、金属支持体の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
【0126】
また、該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量を10〜150質量%とすることが好ましく、更に10〜120質量%とすることが好ましい。
【0127】
残留溶媒量は下記の式で表すことが出来る。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0128】
5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置、及び/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いて、ウェブを乾燥する。
【0129】
本発明においては、クリップ間の幅手方向に対して1.0〜2.0倍延伸する方法として、テンター装置を用いて延伸することが好ましい。更に好ましくは縦及び横方向に2軸延伸されたものである。延伸倍率は目的の光学特性(Ro、Rt)に応じて設定される。又、位相差フィルムを製造する場合、長尺方向に一軸延伸することもできる。本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムはRo0〜1000nm、Rt0〜500nmのフィルムを得ることが出来る。
【0130】
驚くべきことに、金属重縮合物をセルロース誘導体に添加することによって、延伸されたフィルムの膜厚あたりのRo、Rtを大きくできることが判明した。これにより、位相差フィルムとして、高温もしくは高温高湿条件下でもRo、Rtの変動の少ない耐久性に優れ、より薄いフィルムを提供することができる。
【0131】
乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃の範囲で行われる。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
【0132】
フィルムの厚さは特に限定されないが、例えば、10μm〜1mm程度のもの等任意の厚さのフィルムを作製することができる。好ましくは乾燥、延伸等の処理が終わった後の膜厚で10〜500μmが好ましく、特に30〜120μmが好ましい。
【0133】
<機能性薄膜>
本発明で得られたフィルムには、フィルムに機能性を付与しうる、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、有機物重合体等の薄膜をセルロースフィルム上に形成してもよく、これらの皮膜は複数積層されていてもよい。
【0134】
上記の金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物としては、特に限定されないが、ケイ素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、錫、ニオブ等から選ばれる1種類以上の元素の酸化物あるいは窒化物、酸窒化物を用いることができ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素が特に好ましい。
【0135】
金属化合物層は、塗布、蒸着、スパッタ、プラズマCVD、真空プラズマ等の各種方法により形成することができるが、後述する大気圧プラズマ処理によって形成するのが好ましい。
【0136】
上記の有機物重合体としては、熱硬化樹脂、または紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などのような活性線硬化樹脂が挙げられるが、紫外線硬化樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0137】
このような薄膜の機能としては、反射防止機能、防眩機能、ハーフミラー機能、ガスバリア機能、透明導電機能、帯電防止機能、視野角拡大機能、色補正フィルター機能、色分解機能、紫外線または赤外線カット機能、防汚機能、ハードコート機能等があげられる。
【0138】
<反射防止膜>
本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムには、機能性薄膜の一例として、反射防止層を設けることもできる。反射防止層の構成としては、単層、多層等各種知られているが、多層のものとしては高屈折率層、低屈折率層を交互に積層した構造のものが一般的である。尚、ここでいう低屈折率層は有機−無機ハイブリッドフィルムより屈折率が低い層であり、屈折率1.3〜1.5が好ましく、高屈折率層は有機−無機ハイブリッドフィルムより屈折率が高い層であり、屈折率1.8〜2.5が好ましく、中屈折率層は低屈折率層と高屈折率層との中間の屈折率を有する層である。
【0139】
構成の例としては、透明基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層の順のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明基材或いはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましい構成である。あるいはさらに表面に防汚層を設けることも好ましい。
【0140】
基材面に(中屈折率層を設ける場合もある)高屈折率層、空気に向かって低屈折率層を順に積層し、高屈折率層及び低屈折率層の光学膜厚を光の波長に対し所定の値に設定することにより光学干渉層を作り、反射防止積層体としたものが反射防止層としては特に好ましく、屈折率と膜厚は分光反射率の測定より計算して算出し得る。
【0141】
<大気圧プラズマ処理>
大気圧プラズマ処理とは、大気圧または大気圧近傍の圧力下において、対向する電極間に放電することにより反応ガスをプラズマ状態とし、有機−無機ハイブリッドフィルムをプラズマ状態の反応ガスにさらすことにより、有機−無機ハイブリッドフィルム上に金属化合物層を形成する処理である。
【0142】
大気圧プラズマ処理では、高いプラズマ密度を得て製膜速度を大きくするため、高周波電圧で、ある程度大きな電力を供給するのが好ましく、対向する電極間に、100kHz以上の高周波電圧で、1W/cm2以上の電力を供給して、反応ガスを励起してプラズマを発生させるのが好ましい。このようなハイパワーの電界を印加することによって、緻密で、膜厚均一性の高い高機能性を有する薄膜を、生産効率高く得ることが出来る。
【0143】
対向する電極間に印加する高周波電圧の周波数は、150MHz以下である。また、高周波電圧の周波数は、好ましくは200kHz以上、さらに好ましくは800kHz以上である。また、対向する電極間に供給する電力は、好ましくは1.2W/cm2以上であり、50W/cm2以下、より好ましくは20W/cm2以下である。なお、対向する電極における電圧の印加面積(/cm2)は、放電が起こる範囲の面積のことを示している。
【0144】
対向する電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、本発明の効果を高く得るためには、連続したサイン波であることが好ましい。
【0145】
また、溶液流延法によりセルロース誘導体製膜工程終了後、有機−無機ハイブリッドフィルムを巻き取る前に、大気圧プラズマ処理によって金属化合物層を連続的に形成するのが好ましい。
【0146】
<プラズマ放電処理装置>
以下、大気圧プラズマ処理によって金属化合物層の薄膜を形成するのに用いられるプラズマ放電処理装置の一例を、図2を参照して説明する。
【0147】
プラズマ放電処理装置1は、回転電極2と、これに対向して配置された複数の対向電極3を有している。図示していない元巻きロールまたは前工程から搬送されて来る基材フィルムF(本発明の有機−無機ハイブリットフィルム)は、ガイドロール4、ニップロール5を経て、回転電極2に導かれ、回転電極2に接した状態で回転電極2の回転と同期しながら移送されるようになっている。
【0148】
大気圧もしくはその近傍の圧力下にある放電部6には、反応ガス発生装置7で調製された反応ガスGが給気管8から供給されるようになっており、対向電極3に対向している側の基材フィルムF表面に薄膜(金属化合物層)が形成されるようになっている。
【0149】
図2では図示を省略しているが、基材フィルムFの幅手方向において、均一な濃度、流量で反応ガスGを供給出来るようにするため、それぞれの対向電極3の間に反応ガスGを導入する給気管8が複数設けられていることが望ましい。
【0150】
回転電極2と対向電極3には、プラズマ放電を発生させるための電圧を印加出来る電源9が、電圧供給手段10と11を介して接続されている。回転電極2、対向電極3、放電部6はプラズマ放電処理容器12で覆われており、外界と遮断されている。処理に使用された排ガスG′は、処理容器の上部にあるガス排気口13から排出されるようになっている。また、対向電極3の間に設けられたガス排気口(図示略)から、排ガスG′を排気することも出来るようになっている。
【0151】
プラズマ放電処理された基材フィルムFは、ニップロール14及びガイドロール15を経て、次工程または図示してない巻き取りロールへ搬送されるようになっている。外界から基材フィルムFに同伴して侵入してくる空気を遮断し、また出口においても、内部に空気が侵入するのを防止するため、プラズマ放電処理容器12の出入り部分のニップロール5と14のところには、外界との仕切板16と17が設けられていることが望ましい。
【0152】
上述の同伴される空気は、プラズマ放電処理容器12内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、0.1体積%以下に抑えることがより好ましい。このことは、ニップロール5により達成することが可能である。
【0153】
プラズマ放電処理容器12内の圧力は、高くすることが好ましく、外に対して+0.1kPa以上、更には0.3〜10kPa圧力を高くすることが好ましい。なお、図示はしてないが、必要に応じて、回転電極2及び対向電極3は、温度調節のため、温度制御された媒体を循環するようになっている。媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料を好ましく用いることができる。
【0154】
電源9より対向電極3に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.5〜10kV程度で、電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整されていることが好ましい。ここで、電圧の印加法としては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良いが、連続モードの方がより緻密で良質な薄膜を得ることができる。
【0155】
対向する電極間に電圧を印加する電源9としては、例えば、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用出来るが、特にこれらに限定されるものではない。
【0156】
放電部6の電極間隔は、電極の母材に設置した固体誘電体(図示略)の厚さ、印加電圧や周波数、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されている。上記電極(電極2及び3)の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の最短距離は、均一な放電を行う観点から、何れについても0.5〜20mmが好ましく、更に好ましくは0.5〜5mmであり、特に好ましくは1±0.5mmである。
【0157】
プラズマ放電処理容器12にはパイレックス(R)ガラス製あるいはプラスティック製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、この金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。
【0158】
また、放電プラズマ処理の際、基材フィルムの温度によって得られる薄膜の物性や組成が変化することがあり、基材フィルムへの影響を最小限に抑制するために、放電プラズマ処理時の基材フィルムの温度を適宜制御することが好ましい。基材フィルムの温度は処理条件によって異なるが、室温〜200℃が好ましく、より好ましくは室温〜120℃である。より詳細には、常温(15〜25℃)以上、200℃未満の温度に調整することが好ましく、更に好ましくは50℃以上、150℃未満に調整することであり、更に好ましくは60℃以上、120℃未満に調整することである。上記の温度範囲に調整する為、必要に応じて電極、基材フィルムは冷却手段で冷却あるいは加熱しながら放電プラズマ処理される。
【0159】
上記の放電プラズマ処理は、大気圧または大気圧近傍で行われる。ここで、大気圧近傍とは、20〜200kPaの圧力を表す。本発明に記載の効果を好ましく得るためには、90〜110kPa、特に93〜104kPaが好ましい。
【0160】
また、大気圧プラズマ処理に使用する放電用の電極(電極2及び3)において、電極の少なくとも基材フィルムFと接する側の表面は、JIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整されていることが好ましく、更に、表面粗さの最大値が8μm以下であるのが好ましく、特に7μm以下であるのが好ましい。
【0161】
上記電極の表面は固体誘電体で被覆されていることが望ましく、特に金属等の導電性母材に対し固体誘電体で被覆されていることが望ましい。固体誘電体としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスティック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物等を挙げることが出来る。特に、セラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体であることが望ましい。ここで、金属等の導電性母材としては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等を挙げることが出来るが、加工の観点からステンレスが好ましい。また、ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。
【0162】
上記電極は、その裏面側(内側)から、必要に応じて、加熱あるいは冷却することが出来るようになっている。電極がベルトの場合には、その裏面より気体で冷却することも出来るが、ロールを用いた回転電極2では、内部に媒体を供給して電極表面の温度及び基材フィルムの温度を制御することが好ましい。
【0163】
プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材フィルムの温度ムラが出来るだけ生じないようにするため、ロールを用いた回転電極2の内部の温度を制御することが望ましい。温度ムラは±10℃以内であることが好ましく、更に好ましくは±5℃以内であり、より好ましくは±1℃以内であり、最も好ましくは±0.1℃以内である。
【0164】
<反応性ガス>
大気圧プラズマ処理で使用する反応ガスGは、基材フィルムF上に設けた薄膜の種類によって異なるが、基本的には、放電ガスと、薄膜を形成するための反応性ガスとが混合された反応ガスである。反応性ガスは、反応ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。
【0165】
上記放電ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、もしくは窒素等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴン、窒素が好ましく用いられる。
【0166】
反応性ガスとしては、金属化合物が用いられ、金属水素化合物、金属アルコキシド等の有機金属化合物が好ましく用いられる。取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。
【0167】
また、これらの有機金属化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体何れの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入でき、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。上記金属化合物ガスは、反応ガス中0.01〜10体積%含有されることが好ましく、0.1〜5体積%含有されるのがより好ましい。
【0168】
反応性ガスは、放電空間でプラズマ状態となり、薄膜を形成する成分を含有するものであり、有機金属化合物、有機化合物、無機化合物、またこれら直接薄膜を形成する化合物と水素ガス、酸素ガス、炭酸ガス等補助的に使用するガスとがある。
【0169】
<高屈折率層形成用反応性ガス>
高屈折率層形成用反応性ガスに使用するチタン化合物としては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエチルチタン、トリメチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジアセトアセトナート、エチルチタントリアセトアセトナート等、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等が挙げられる。
【0170】
<中屈折率層形成用反応性ガス>
中屈折率層形成用反応性ガスに使用する錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることが出来る。なお、このようにして、形成された酸化錫層は表面比抵抗値を1011Ω/cm2以下に下げることが出来るため、帯電防止層としても有用である。
【0171】
<低屈折率層形成用反応性ガス>
低屈折率層形成用反応性ガスに使用する珪素化合物としては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲン化珪素化合物等を挙げることが出来、有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジアセトアセトナート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等、ハロゲン化珪素化合物としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等を挙げることが出来る。また、これらの反応性ガスを2種以上同時に混合して使用することが出来る。
【0172】
<活性線硬化樹脂層>
本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムにおいて、上記の高屈折率層・中屈折率層・低屈折率層のような金属化合物層をフィルム上に直接形成させてもよいが、他の中間層を少なくとも1層設けた上に形成させてもよい。他の層として、防眩層やクリアハードコート層等を好ましく用いることが出来、これらの層が紫外線等活性線により硬化する活性線硬化樹脂層であることが好ましい。
【0173】
この中間層は、大気圧プラズマ処理により金属酸化物層を形成する場合、接着性向上及びプラズマダメージ軽減の作用を有する。このように、中間層を設けることによって、基材上に直接、金属化合物層を形成する場合に比して金属化合物層の特性を上げることができる。また、この中間層によって基材と金属化合物層との間の密着性を向上させることができる。
【0174】
防眩層及びクリアハードコート層の活性線硬化樹脂層は、エチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層で、活性線硬化樹脂層である。ここで、活性線硬化樹脂層とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0175】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に示す「部」は、特に断りのない限り「質量部」を意味している。
【0176】
実施例1
<ドープの調製>
ドープは3つの釜を用いて調製した。3つの釜の名をA、B、Cとすると、A釜とB釜はそれぞれろ過器を経由してC釜につながっており、A釜とB釜のドープをC釜で混合できるようになっている。C釜はろ過器を経由してダイスにつながっている。
【0177】
以下に記載の素材を各釜で溶解を確認しつつ記載順に密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過後、製膜を行い下記フィルム101〜115を調製した。なお、二酸化珪素微粒子(アエロジルR972V)はエタノールに分散した後に添加した。2次粒子の平均粒径は0.44μmであった。
【0178】
<本発明のフィルム101の作製>
A釜には、下記の材料を溶解し、ドープ1Aを作製した。
塩化メチレン 432.0部
エタノール 38.0部
セルローストリアセテート(以下TAC、置換度2.88) 30.0部
チタニウムテトラエトキシド 5.5部
(酸化チタン含量 1.9部、全TAC量に対して1.5%)
B釜には、下記の材料を溶解し、ドープ1Bを作製した。
エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG) 1.8部
塩化メチレン 368.0部
エタノール 32.0部
TAC 100.0部
アエロジル R972V(日本アエロジル(株)製) 0.17部
C釜には先にドープ1Bを全量投入し、その後ドープ1Aをゆっくりと混合することで、ドープ1Cを作製した。ドープ1Cを濾過した後、ベルト流延装置を用い、ドープ温度34℃で33℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。支持体上で60秒間乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からウェブを剥離した。ステンレスバンド支持体から剥離した後、80℃の雰囲気でロール搬送し、縦方向に5%延伸される程度の搬送張力をかけながら乾燥させ、さらにロール搬送しながら120℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルムロール状に巻き取り、本発明のフィルム101を作製した。膜厚は41μmだった。
【0179】
<本発明のフィルム102の作製>
A釜では、ドープ1Aと同様のものを作製し、ドープ2Aとした。
【0180】
B釜は、ドープ1BのEPEGをトリメチロールプロパントリベンゾエート(化合物例16の可塑剤、以下化16)3.6部に変更し、ドープ2Bとした。
【0181】
C釜でドープ2Bにドープ2Aを混合してドープ2Cを作製し、101と同様の条件で成膜し、本発明のフィルム102とした。膜厚は41μmだった。
【0182】
<本発明のフィルム103の作製>
A釜では、ドープ1Aと同様のものを作製し、ドープ3Aとした。
【0183】
B釜は、ドープ1BのEPEGをジシクロヘキシルフタレート(製、以下DCP)7.3部に変更し、ドープ3Bとした。
【0184】
C釜でドープ3Bにドープ3Aを混合してドープ3Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム103とした。膜厚は41μmだった。
【0185】
<本発明のフィルム104の作製>
A釜では、ドープ1Aと同様のものを作製し、ドープ4Aとした。
【0186】
B釜は、ドープ1BのEPEGの量を7.3部とし、さらに化16を7.3部追加し、ドープ4Bとした。
【0187】
C釜でドープ4Bにドープ4Aを混合してドープ4Cを作製し、101と同様の条件で成膜し、本発明のフィルム104とした。膜厚は41μmだった。
【0188】
<本発明のフィルム105の作製>
A釜には、下記の材料を溶解し、ドープ5Aを作製した。
塩化メチレン 0.45部
エタノール 0.45部
テトラエトキシシラン 0.90部
(酸化ケイ素含量 1.9部、全TAC量に対して0.2%)
13%トリフルオロ酢酸水溶液 0.15部
B釜には、下記の材料を溶解し、ドープ5Bを作製した。
エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG) 7.3部
トリメチロールプロパントリベンゾエート(化16) 7.3部
チヌビン−326(以下T326) 1.3部
塩化メチレン 777.1部
エタノール 66.3部
TAC 130.0部
アエロジル R972V(日本アエロジル(株)製) 0.17部
C釜でドープ5Bにドープ5Aを混合してドープ5Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム105とした。膜厚は41μmだった。
【0189】
<本発明のフィルム106の作製>
A釜には、下記の材料を溶解し、ドープ6Aを作製した。
塩化メチレン 4.9部
エタノール 1.7部
テトラエトキシシラン 6.6部
(酸化ケイ素含量 1.9部、全TAC量に対して1.5%)
13%トリフルオロ酢酸水溶液 1.1部
B釜は、ドープ5Bと同様のものを作製し、ドープ6Bとした。
【0190】
C釜でドープ6Bにドープ6Aを混合してドープ6Cを作製し、101と同様の条件で成膜し、本発明のフィルム106とした。膜厚は41μmだった。
【0191】
<本発明のフィルム107の作製>
A釜には、下記の材料を溶解し、ドープ7Aを作製した。
塩化メチレン 45.1部
エタノール 45.1部
テトラエトキシシラン 90.2部
(酸化ケイ素含量 1.9部、全DAC量に対して20%)
13%トリフルオロ酢酸水溶液 14.7部
B釜には、下記の材料を溶解し、ドープ7Bを作製した。
エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG) 7.3部
トリメチロールプロパントリベンゾエート(化16) 7.3部
チヌビン−326(以下T326) 1.3部
塩化メチレン 344.2部
アセトン 344.2部
ジアセチルセルロース(以下DAC、置換度2.33) 130.0部
アエロジル R972V(日本アエロジル(株)製) 0.17部
C釜でドープ7Bにドープ7Aを混合してドープ7Cを作製し、支持体上での乾燥時間を300秒とした以外は101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム107とした。膜厚は41μmだった。
【0192】
<本発明のフィルム108の作製>
A釜は、ドープ1Aのチタニウムテトラエトキシドを、ジルコニウムトリブトキシドモノアセチルアセトネート(松本油脂製、オルガチックスZC−540)6.3部(酸化ジルコニウム含量1.9部、全TAC量に対して1.5%)に変更し、ドープ8Aとした。
【0193】
B釜は、ドープ4Bと同様のものを作製し、ドープ8Bとした。
C釜でドープ8Bにドープ8Aを混合してドープ8Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム108とした。膜厚は41μmだった。
【0194】
<本発明のフィルム109の作製>
A釜は、ドープ1Aのチタニウムテトラエトキシドを、アルミニウムジ−s−ブトキシド エチルアセトアセテート(酸化アルミニウム含量1.9部、全TAC量に対して1.5%)11.3部(酸化アルミニウム含量1.9部、全TAC量に対して1.5%)に変更し、ドープ9Aとした。
【0195】
B釜は、ドープ4Bと同様のものを作製し、ドープ9Bとした。
C釜でドープ9Bにドープ9Aを混合してドープ9Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム109とした。膜厚は41μmだった。
【0196】
<本発明のフィルム110の作製>
A釜は、ドープ1AのTACをセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.70、以下CAP)30.0部に変更し、ドープ10Aとした。
【0197】
B釜は、ドープ4BのTACをCAP100.0部に変更し、ドープ10Bとした。
【0198】
C釜でドープ10Bにドープ10Aを混合してドープ10Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム110とした。膜厚は41μmだった。
【0199】
<本発明のフィルム111の作製>
A釜は、ドープ4AのTACをエチルセルロース(和光純薬製、以下EC)30.0部に変更し、ドープ11Aとした。
【0200】
B釜は、ドープ4BのTACをEC100.0部に変更し、ドープ11Bとした。
【0201】
C釜でドープ11Bにドープ11Aを混合してドープ11Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム111とした。膜厚は41μmだった。
【0202】
<比較例のフィルム112の作製>
ドープ5Bと同様の組成のドープを作製し、そのまま101と同様の条件で製膜し、比較例のフィルム112とした。膜厚は41μmだった。
【0203】
<比較例のフィルム113の作製>
A釜は、ドープ1Aと同様のドープを作製し、ドープ13Aとした。
【0204】
B釜は、ドープ1BからEPEGを添加せずにドープを作製し、ドープ13Bとした。
【0205】
C釜でドープ13Bにドープ13Aを混合してドープ13Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、比較例のフィルム113とした。膜厚は41μmだった。
【0206】
<比較例のフィルム114の作製>
ドープ5BのTAC130部をCAP130部に変更したドープ14Cを作製し、そのまま101と同様の条件で製膜し、比較例のフィルム114とした。膜厚は41μmだった。
【0207】
<比較例のフィルム115の作製>
A釜は、ドープ10Aと同様のドープを作製し、ドープ15Aとした。
【0208】
B釜は、ドープ10BからEPEG、化16を添加せずにドープを作製し、ドープ15Bとした。
【0209】
C釜でドープ15Bにドープ15Aを混合してドープ15Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、比較例のフィルム115とした。膜厚は41μmだった。
【0210】
<本発明のフィルム116の作製>
A釜には、下記の材料を溶解し、ドープ16Aを作製した。
塩化メチレン 6部
テトラメトキシシラン 5部
(酸化ケイ素含量 1.9部、全TAC量に対して2%)
アルミニウムジ−s−ブトキシド エチルアセトアセテート
(酸化アルミニウム含量1.9部、全TAC量に対して0.45%)2.3部
B釜には、下記の材料を溶解し、ドープ16Bを作製した。
エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG) 5.5部
トリメチロールプロパントリベンゾエート(化16) 5.0部
チヌビン−326(以下T326) 0.2部
チヌビン−109(以下T109) 0.5部
チヌビン−171(以下T171) 0.6部
塩化メチレン 480部
エタノール 40部
TAC 100.0部
アエロジル R972V(日本アエロジル(株)製) 0.17部
C釜でドープ16Bにドープ16Aを混合してドープ16Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム116とした。膜厚は41μmだった。
【0211】
<本発明のフィルム117の作製>
A釜には、下記の材料を溶解し、ドープ17Aを作製した。
塩化メチレン 6部
テトラメトキシシラン 5部
(酸化ケイ素含量 1.9部、全TAC量に対して2%)
アルミニウムジ−s−ブトキシド エチルアセトアセテート
(酸化アルミニウム含量1.9部、全TAC量に対して0.45%)2.3部
B釜には、下記の材料を溶解し、ドープ17Bを作製した。
エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG) 2.3部
トリフェニルフォスフェート(TPP) 9.0部
チヌビン−326(以下T326) 0.2部
チヌビン−109(以下T109) 0.5部
チヌビン−171(以下T171) 0.6部
塩化メチレン 480部
エタノール 40部
TAC 100.0部
アエロジル R972V(日本アエロジル(株)製) 0.17部
C釜でドープ17Bにドープ17Aを混合してドープ17Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム117とした。膜厚は41μmだった。
【0212】
<本発明のフィルム118の作製>
A釜には、下記の材料を溶解し、ドープ18Aを作製した。
塩化メチレン 6部
テトラメトキシシラン 5部
(酸化ケイ素含量 1.9部、全TAC量に対して2%)
アルミニウムジ−s−ブトキシド エチルアセトアセテート
(酸化アルミニウム含量1.9部、全TAC量に対して0.45%)2.3部
B釜には、下記の材料を溶解し、ドープ18Bを作製した。
エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG) 11.5部
トリメチロールプロパントリベンゾエート(化16) 10.4部
チヌビン−326(以下T326) 0.2部
チヌビン−109(以下T109) 0.5部
チヌビン−171(以下T171) 0.6部
塩化メチレン 480部
エタノール 40部
TAC 100.0部
アエロジル R972V(日本アエロジル(株)製) 0.17部
C釜でドープ18Bにドープ18Aを混合してドープ18Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム118とした。膜厚は41μmだった。
【0213】
<本発明のフィルム119の作製>
A釜には、下記の材料を溶解し、ドープ19Aを作製した。
塩化メチレン 6部
エタノール 1部
テトラメトキシシラン 5部
(酸化ケイ素含量 1.9部、全TAC量に対して2%)
アルミニウムジ−s−ブトキシド エチルアセトアセテート 2.3部
(酸化アルミニウム含量1.9部、全TAC量に対して0.45%)
TAC 2.0部
B釜には、下記の材料を溶解し、ドープ19Bを作製した。
エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG) 5.5部
トリメチロールプロパントリベンゾエート(化16) 5.0部
チヌビン−326(以下T326) 0.2部
チヌビン−109(以下T109) 0.5部
チヌビン−171(以下T171) 0.6部
塩化メチレン 480部
エタノール 40部
TAC 100.0部
アエロジル R972V(日本アエロジル(株)製) 0.17部
C釜でドープ19Bにドープ19Aを混合してドープ19Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム119とした。膜厚は41μmだった。
【0214】
<本発明のフィルム120の作製>
A釜には、下記の材料を溶解し、ドープ20Aを作製した。
塩化メチレン 6部
エタノール 1部
テトラメトキシシラン 5部
(酸化ケイ素含量 1.9部、全TAC量に対して2%)
30%酢酸水溶液 1.7部
TAC 2.0部
B釜には、下記の材料を溶解し、ドープ20Bを作製した。
エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG) 11.5部
トリメチロールプロパントリベンゾエート(化16) 10.4部
チヌビン−326(以下T326) 0.2部
チヌビン−109(以下T109) 0.5部
チヌビン−171(以下T171) 0.6部
塩化メチレン 480部
エタノール 40部
TAC 100.0部
アエロジル R972V(日本アエロジル(株)製) 0.17部
C釜でドープ20Bにドープ20Aを混合してドープ20Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム120とした。膜厚は41μmだった。
【0215】
<比較例のフィルム121の作製>
ドープ17Bと同様の組成のドープを作製し、そのまま101と同様の条件で製膜し、比較例のフィルム121とした。膜厚は41μmだった。
【0216】
<比較例のフィルム122の作製>
ドープ17BのTAC100部をCAP100部に変更したドープを作製し、そのまま101と同様の条件で製膜し、比較例のフィルム122とした。膜厚は41μmだった。
【0217】
<本発明のフィルム123の作製>
C釜でドープ16Bにドープ16Aを混合してドープ16Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム123とした。膜厚は57μmだった。
【0218】
<比較例のフィルム124の作製>
ドープ17Bと同様の組成のドープを作製し、そのまま101と同様の条件で製膜し、比較例のフィルム124とした。膜厚は57μmだった。
【0219】
<本発明のフィルム125の作製>
C釜でドープ16Bにドープ16Aを混合してドープ16Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム125とした。膜厚は80μmだった。
【0220】
<本発明のフィルム126の作製>
C釜でドープ20Bにドープ20Aを混合してドープ20Cを作製し、101と同様の条件で製膜し、本発明のフィルム126とした。膜厚は80μmだった。
【0221】
<比較例のフィルム127の作製>
ドープ17Bと同様の組成のドープを作製し、そのまま101と同様の条件で製膜し、比較例のフィルム127とした。膜厚は80μmだった。
作製した本発明のフィルム101〜111、116〜120、123、125、126および比較例のフィルム112〜115、121、122、124、127について、下記の評価を行った。
【0222】
<透過率・ヘイズの測定>
東京電色製TURBIDITY METER T−2600DAで測定した。
【0223】
<透湿度評価>
透湿度はJIS−Z−0208に記載の条件A(25℃、90%RH)で測定した。
【0224】
<高温寸法変化率H5h(%)の測定>
各有機−無機ハイブリッドフィルム試料を幅手方向(TD方向)150mm×長手方向(MD方向)120mmサイズに裁断し、該有機−無機ハイブリッドフィルム表面に、幅手方向及び長手方向それぞれに100mm間隔で2カ所カミソリで十文字型の印を付ける。該有機−無機ハイブリッドフィルムを23±3℃、55±3%RHの環境下で24時間以上調湿し、測定顕微鏡で十文字の印の間隔の距離L0を測定した。次に該試料を電気恒温槽中で、105℃の環境下に5時間曝した。この高温に曝した試料を、再び前記23±3℃、55±3%RHの環境下で24時間以上調湿し、測定顕微鏡で十文字の印の間隔の距離L1を測定した。下記式(11)により高温寸法変化率H5h(%)を求めた。
式(11) H5h(%)={(L1−L0)/L0}×100
<重縮合物の平均粒子径>
以下の条件でX線小角散乱測定を行った。
【0225】
装置:理学電機製RINT2500/PC 小角広角X線回折装置
ターゲット:銅
出力:40kV−200mA
1stスリット:0.04mm
2ndスリット:0.03mm
受光スリット:0.1mm
散乱スリット:0.2mm
測定法:2θ FTスキャン法
測定範囲:0.1から6°
サンプリング:0.04°
計数時間:30秒
上記条件にて透過法で小角散乱測定を行った。得られたスペクトルに対し、空気散乱補正、スリット補正を行い、ギニエプロットにより粒径分布解析を行った。尚、慣性半径は球として求めた。
【0226】
【表1】
Figure 0004254390
【0227】
【表2】
Figure 0004254390
【0228】
【表3】
Figure 0004254390
【0229】
表1〜3に示されるように、比較例のフィルム113、115には可塑剤が入っていないため透湿度が大きく好ましくない。比較例のフィルム112、114は、可塑剤が入っており透湿度が低減されているが、金属酸化物がTACにハイブリッド化されていないため、可塑剤の固定化効果がなく寸法変化率が大きいという課題がある。
【0230】
一方本発明のフィルム104、116では、TACに金属酸化物がハイブリッド化され、かつ可塑剤も添加することで、単にTACに可塑剤を添加するよりも透湿度が低下し、さらに経時での質量・寸法の変化がほとんどなく、安定なフィルムになることがわかった。
【0231】
他の可塑剤を用いた本発明のフィルム101〜103、他のセルロース誘導体をもちいた本発明のフィルム107、110、111、金属酸化物の添加量の異なる本発明のフィルム105〜107、116〜120、123、125、126においても同様に、透湿度・寸法変化率の低いフィルムが得られた。
【0232】
実施例2
実施例1で得られたフィルムを用いて、偏光子を作製した。実施例1のフィルム101〜127を、2mol/Lの水酸化カリウム溶液に37℃で90秒間浸漬し、次いで90秒間水洗後、乾燥させて、鹸化処理を行った。
【0233】
鹸化処理された有機−無機ハイブリッドフィルムを偏光板用保護フィルムとして用い、下記の方法に従って、下記の表4、5に記載された偏光板201〜227を作製した。
【0234】
<偏光膜の作製>
厚さ120μmの長尺なポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これを、ヨウ素0.08g、ヨウ化カリウム5g、水100gの比率からなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gの比率からなる68℃の水溶液に浸漬した。その後、これを水洗、乾燥して、長尺な偏光膜を得た。
【0235】
<偏光板の作製>
次いで、下記工程1〜5に従って、得られた偏光膜と、ケン化処理されたフィルムとを貼り合わせて、偏光板を作製した。
【0236】
工程1:本発明または比較例のフィルムを、偏光板保護フィルムとして、前述の方法で各々鹸化処理した。
【0237】
工程2:前述の長尺な偏光膜を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
【0238】
工程3:工程2で偏光膜に過剰に付着した接着剤を軽く取り除き、これを表4、5の組み合わせで偏光板保護フィルムの鹸化処理面で挟み込んで、積層配置した。
【0239】
工程4:2つの回転するローラにより、20〜30N/cm2の圧力、約2m/minの速度で、偏光膜と本発明または比較例のフィルムを貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意した。
【0240】
工程5:工程4で作製した試料を80℃の乾燥機中で乾燥処理し、偏光板を作製した。
【0241】
<偏光板耐久性テスト>
100mm×100mmの偏光板試料2枚を、熱処理(条件:90℃で100時間放置する)し、直行状態にした時の縦又は横の中心線部分のどちらか大きいほうの縁の白抜け部分の長さを測定し、下記のレベルに判定した。縁の白抜けとは直行状態で光を通さない偏光板の縁の部分が光を通す状態になることで、目視で判定できる。偏光板の状態では縁の部分の表示が見えなくなり故障となる。
◎:縁の白抜けが5%未満(偏光板として問題ないレベル)
○:縁の白抜けが5%以上10%未満(偏光板として問題ないレベル)
△:縁の白抜けが10%以上20%未満(偏光板として何とか使えるレベル)
×:縁の白抜けが20%以上(偏光板として問題のあるレベル)
【0242】
【表4】
Figure 0004254390
【0243】
【表5】
Figure 0004254390
【0244】
本発明の有機−無機ハイブリッドフィルム101〜111、116〜120、123、125、126を偏光板保護フィルムとして用いた偏光板201〜211、216〜220、223、225、226は、高温処理を行っても白抜けの発生が起きず、耐久性に優れた好ましい偏光板であることが確認された。これは本発明のフィルムが寸法安定性に優れ、偏光板の偏光軸が安定化されているためと推測される。
【0245】
実施例3
実施例1のドープ10Cを、製膜時に未延伸で乾燥後に100μm厚フィルムとなるようにダイスのギャップを調整し直して、得られた100μm厚のフィルムを本発明のフィルム301とした。
【0246】
さらに、フィルムを搬送後、テンターで、残留溶媒量10%のときに80℃の雰囲気内で幅方向に15%延伸して得られたフィルムを、本発明のフィルム302とした。また30%延伸したフィルムを本発明のフィルム303とした。
【0247】
同様に、ダイスのギャップを調整後、ドープ14Cを製膜時に延伸倍率を0%、15%、30%としたフィルムを作製し、それぞれ304、305、306とした。
【0248】
同様に、ドープ15Cを延伸倍率を0%、15%、30%としたフィルムを作製し、それぞれ307、308、309とした。
【0249】
得られたフィルム301〜309について、下記の測定を行った。結果を表6に示す。
【0250】
<複屈折変化率測定>
自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで複屈折率測定を行い、膜厚方向のリターデーション値Rtと面内方向のリターデーション値Roを求めた。また、膜厚1μmあたりのリターデーション値を算出した。
【0251】
製膜直後のリターデーション値を測定後、これらのサンプルを、35℃、80%RHに72時間放置した後、同様に複屈折率測定を行い、リターデーション値Rt、Roを求め、高温高湿処理前後の変化値を求めた。
【0252】
【表6】
Figure 0004254390
【0253】
CAP中に酸化チタンをハイブリッド化させた本発明のフィルム301〜303、比較例のフィルム307〜309では、酸化チタンがハイブリッド化されていない比較例のフィルム304〜306よりもRo値、Rt値ともに膜厚あたりで大きい値が得られており、必要なRo、Rt値をより薄い膜厚・低い延伸倍率で達成できるため、好ましい。
【0254】
しかし高温高湿条件下では、可塑剤の入っていないフィルム307〜309ではRo値、Rt値の変動が大きいため、好ましい位相差フィルムは本発明のフィルム301〜303であった。
【0255】
実施例4
実施例1で作製した本発明または比較例のフィルム101〜127に、ワイヤーバーコータを用いて下記の防眩層組成物を塗布し、乾燥し、UV照射し、更にその上に図2に示したような大気圧プラズマ処理で金属酸化物層を含む反射防止層を形成し、表7、8に示すような反射防止フィルム401〜427を得た。
【0256】
<防眩層組成物>
平均粒径0.5μmの合成シリカ微粒子15部(質量部、以下同じ)、平均粒径1.4μmの合成シリカ微粒子10部、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂(ユニディック17−806、大日本インキ(株)製)100部、コロネートL(ポリイソシアネート化合物、日本ポリウレタン(株)製)1部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)3部を溶剤(酢酸エチル)にてホモジナイザーにより混合して揮発分濃度50%の均質な分散液を調製した。
【0257】
<大気圧プラズマ放電処理>
対向する電極間に下記の放電条件で放電することにより、下記の各層に対応する反応ガスをプラズマ状態とし、このプラズマ状態の反応ガスにフィルムを晒すことにより、フィルムの表面に金属酸化物層を形成した。
【0258】
放電条件
電源周波数 2MHz(パール工業製高周波電源CF−50000−2M)
電力 6W/cm2
気圧 大気圧+0.1kPa
<中屈折率層形成用反応ガス:酸化錫層>
希ガス(ヘリウム) 98.8体積%
反応性ガス(酸素ガス) 1.0体積%
反応性ガス(テトラブチル錫) 0.2体積%
<高屈折率層形成用反応ガス:酸化チタン層>
希ガス(ヘリウム) 98.8体積%
反応性ガス(水素ガス) 1.0体積%
反応性ガス(テトライソプロポキシチタン) 0.2体積%
<低屈折率層形成用反応ガス:酸化珪素層>
希ガス(ヘリウム) 98.7体積%
反応性ガス(水素ガス) 1.0体積%
反応性ガス(テトラエトキシシラン) 0.3体積%
<防汚層形成用反応ガス>
希ガス(ヘリウム) 98.7体積%
反応性ガス(水素ガス) 1.0体積%
反応性ガス(メチルトリエトキシシラン) 0.3体積%
なお、上記反応ガス蒸気はリンテック(株)製の気化器を使用して気化後、ヘリウムガス中に混合した。
【0259】
連続的に大気圧プラズマ処理して、順に酸化錫層(屈折率1.7、膜厚67nm)、酸化チタン層(屈折率2.14、膜厚110nm)、酸化珪素層(屈折率1.44、膜厚87nm)、防汚層(膜厚30nm)の4層を設け、反射防止フィルム401〜427を得た。
【0260】
得られた反射防止フィルム401〜427について下記の評価を行った結果を表7、8に示す。
【0261】
<反射率>
分光光度計(日立製作所(株)製U−4000型)を用い、反射防止フィルム試料の反射防止層の裏面を粗面化した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、裏面での光の反射を防止して5度の正反射の条件にて450〜650nmにおける各反射率を測定し、その平均反射率を求めた。
【0262】
<クラック>
反射防止フィルム試料を23±2℃、55±5%RHの環境下で12時間放置した後、80±3℃、90±2%RHの条件に12時間放置し、再び23±2℃、55±5%RHで12時間放置、80±3℃、90±2%RHで12時間放置と交互に繰り返し10回行い、最後に23±2℃、55±5%RHの環境下で12時間放置した後、試料を光学顕微鏡でクラックの状態を観察し、下記の基準で評価した。
【0263】
A:クラックがほとんど認められない
B:短いクラックが認められる
C:全面に短いクラックが多数発生している
D:全面に無数のクラックが認められる
C、Dは実用に適さない。
【0264】
【表7】
Figure 0004254390
【0265】
【表8】
Figure 0004254390
【0266】
表7、8によれば、大気圧プラズマ処理によって、いずれも低反射率な反射防止フィルムが得られているが、比較例のフィルム412〜415、421、422、424、427では短いクラックが見られたのに対し、本発明のフィルム401〜411、416〜420、423、425、426では、多量のクラック発生は観測されず、良好な反射防止フィルムであった。
【0267】
【発明の効果】
本発明によれば透湿度が低く、寸法安定性、リターデーション安定性の高い、有機−無機ハイブリッドフィルムが得られた。
【0268】
また、本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムを用いることにより、白抜けの発生しない耐久性に優れた偏光板や、膜厚あたりのリターデーションが大きい位相差フィルム、クラックの発生しにくい反射防止フィルムが作製できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリカアルコキシドの加水分解前後の29−Si−NMRスペクトルである。
【図2】大気圧プラズマ処理によって金属化合物層の薄膜を形成するのに用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 プラズマ放電処理装置
2 回転電極
3 対向電極
4、15 ガイドロール
5、14 ニップロール
6 放電部
7 反応ガス発生装置
8 給気管
9 電源
10、11 電圧供給手段
12 プラズマ放電処理容器
13 ガス排気口
16、17 仕切板
F 基材フィルム
G 反応ガス
G′ 排ガス

Claims (15)

  1. セルロース誘導体と、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物を含有する有機−無機ハイブリッドフィルムにおいて、該フィルム中に可塑剤を1〜20質量%含有することを特徴とする有機−無機ハイブリッドフィルム。
  2. 前記可塑剤が、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有する多価アルコールエステル、或いは分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するグリコレート系可塑剤であることを特徴とする請求項1に記載の有機−無機ハイブリッドフィルム。
  3. 前記加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物が、下記式(1)のように加水分解重縮合反応が完全に終了したと仮定した場合、その質量が有機−無機ハイブリッドフィルム支持体の全質量に対して0.1質量%から40質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機−無機ハイブリッドフィルム。
    式(1) Apqr → Apqr/2
    (但し、Mは中心金属を表し、qはその原子数を表す。Aは加水分解されない1価の置換基を表し、pはその置換基数を表す。Bは加水分解可能な置換基を表し、rはその置換基数を表す。)
  4. 前記加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物が、前記式(1)のように加水分解重縮合反応が完全に終了したと仮定した場合、その質量が有機−無機ハイブリッドフィルム支持体の全質量に対して0.5質量%から5質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機−無機ハイブリッドフィルム。
  5. 前記加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物が、Si、Ti、ZrまたはAlのアルコキシド、或いはSi、Ti、ZrまたはAlを含むダブル金属アルコキシドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルム。
  6. 前記セルロース誘導体が、セルロースエステルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルムを用いて構成された位相差フィルムが、下記式(2)で定義する膜厚方向のリターデーション値(Rt値)が70〜300nmであるか、下記式(3)で定義する面内方向のリターデーション値(Ro値)が30〜1000nmであるか、またはRt値が70〜300nmであり、かつRo値が30〜1000nmのいずれかであることを特徴とする位相差フィルム。
    式(2) Rt値=((nx+ny)/2−nz)×d
    式(3) Ro値=(nx−ny)×d
    (但し、nxはフィルム面内の屈折率が最も大きい方向の屈折率、nyはnxに直角な方向でのフィルム面内の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)をそれぞれ表す。)
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルムを用いて構成されていることを特徴とする偏光板保護フィルム。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルムを支持体とし、該支持体と少なくとも1層の金属酸化物薄膜を有することを特徴とする反射防止フィルム。
  10. 有機−無機ハイブリッドフィルム支持体と、金属酸化物薄膜の間に、紫外線硬化樹脂層が設けてあることを特徴とする請求項9に記載の反射防止フィルム。
  11. 少なくとも1層の金属酸化物薄膜が大気圧プラズマ処理によって形成されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の反射防止フィルム。
  12. 前記金属酸化物薄膜が、大気圧または大気圧近傍の圧力下、対向する電極間に100kHz〜150MHzの高周波電圧で、かつ、1.0〜50W/cm2の電力を供給し放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、該プラズマ状態の反応性ガスに基材を晒すことによって形成される膜であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
  13. 請求項7記載の位相差フィルム、請求項8記載の偏光板保護フィルム及び請求項9〜12のいずれか1項に記載の反射防止フィルムから選ばれる少なくとも1種のフィルムを含むことを特徴とする偏光板。
  14. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機−無機ハイブリッドフィルムを、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物、可塑剤及び溶剤を含有するセルロース誘導体溶液を支持体上に流延する溶剤キャスト法で製造することを特徴とする有機−無機ハイブリッドフィルムの製造方法。
  15. 前記溶剤キャスト法が、0.01〜2.0%の水分を含むセルロース誘導体溶液を用いてなされていることを特徴とする請求項14に記載の有機−無機ハイブリッドフィルムの製造方法。
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