JP2006233043A - 光学フィルム用ドープの調製方法、その方法を利用した光学フィルムの製造方法、光学フィルム、及びそれを用いた偏光板 - Google Patents

光学フィルム用ドープの調製方法、その方法を利用した光学フィルムの製造方法、光学フィルム、及びそれを用いた偏光板 Download PDF

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【課題】 液晶表示装置(LCD)等に用いられる偏光板用保護フィルム等にも利用することができ、かつ安定性が大幅に改善された光学フィルム用ドープの調製方法を提供する。そのドープ調製方法を利用して、寸法安定性に優れた光学フィルムを製造する光学フィルムの製造方法を提供する。また、寸法特性に優れかつフィルム強度が高く、タフネス性がアップした光学フィルム、さらには該光学フィルムを用いて寸法安定性に優れた偏光板を提供する。
【解決手段】 金属アルコキシドの加水分解物とセルロースエステル系樹脂を混合してドープを調製するとき、セルロースエステル系樹脂が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合する。該金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものである。この光学フィルム用ドープを、溶液流延製膜法により金属支持体上に流延して、光学フィルムを製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光学フィルム用ドープの調製方法、その方法を利用した光学フィルムの製造方法、光学フィルム、及びそれを用いた偏光板に関する。より詳しくは、特に液晶表示装置(LCD)等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルムまた有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等にも利用することができる光学フィルム用ドープの調製方法、その調製方法を利用した光学フィルムの製造方法、及びその製造方法を用いて製造した光学フィルム、及びその光学フィルムを用いた偏光板に関するものである。
近年、液晶表示装置(LCD)は、省スペース、省エネルギーであることから、TV、パソコン、携帯電話などへの液晶ディスプレイの利用が増大している。このようなLCDの需要の伸びに基づき、LCDの供給も伸びており、光学フィルムの生産量の増大に伴って、フィルムの表面物性など、フィルムの品質が重要になってきている。
特に、TVの大画面化、高画質化が進み、また使用場所の拡大、汎用化、および多様化により、液晶ディスプレイは、より高品質であることが求められ、表示機能、視認機能のさらなる向上が求められている。
LCDの偏光板用の保護フィルムとしては、主にセルロースエステルフィルムが用いられているが、液晶表示装置(LCD)の視認性は、表示ディスプレイや偏光板の安定性(経時、熱、タフネス)に関係し、特に寸法の安定性が必要である。これには、光学フィルムの寸法安定性が重要になってくる。
光学フィルムの寸法安定化の検討は、従来から行なわれているが、液晶表示装置(LCD)の大画面化、使用形態、使用環境の多様化などにより、より高い寸法安定性が求められている。
偏光板保護用フィルムには、上記のように、一般的にセルローストリアセテートフィルムが広く使用されているが、従来のセルローストリアセテートフィルムでは、寸法安定性(特に高温下での寸法安定性)が不足することが分った。
上記の課題を解決するために、セルロースエステルに、架橋化合物(金属アルコキシドの加水分解物)を添加し、最終的に架橋を促進させて重合させたフィルムが、例えばつぎの特許文献1及び2において提案されている。
特開2004−99631号公報 この特許文献1には、セルロースアセテートフィルムよりなる光学フイルムが開示されており、この特許文献1では、溶液流延方法により、セルロースアシレート、光により酸を発生する化合物、ヒドロキシアリール基を含有するオリゴマー、及び酸により架橋する化合物を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と、光照射の工程とを含む工程により、セルロースアシレートフィルムを作製している。 特開2004−148811号公報 この特許文献2には、セルロースアシレートフィルムよりなる光学フイルムが開示されており、この特許文献2では、セルロースアシレート、環状構造脂肪族炭化水素基を有するラジカル重合性モノマー、及び光重合開始剤を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と、光照射の工程とを含む一連の工程により、セルロースアシレートフィルムを作製している。
しかしながら、特許文献1及び2記載の方法では、いずれの場合も、流延工程以降の工程で光照射によりポリマーの架橋を行なうため、光照射のばらつきにより、ポリマーの重合度にばらつきが生じたり、光照射による異物が析出するなどの課題があり、充分な光エネルギーを与えることができず、フィルムの寸法安定性についても充分良好なものではないという問題があった。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、液晶表示素子すなわち偏光板の保護フィルムとして用いられる光学フィルムを作製するためのドープ(樹脂溶液)であって、ドープの安定性を改善することができるとともに、ドープの劣化が無く、金属アルコキシドの加水分解物がセルロースエステル系樹脂と混合し、フィルムを製膜した際に、安定な擬似架橋ができて、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、製造後の光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果し得る光学フィルム用ドープの調製方法を提供すること、そのドープ調製方法を利用して、寸法安定性に優れた光学フィルムを製造することができる光学フィルムの製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記の方法により製造された光学フィルムであって、寸法特性に優れかつフィルム強度が高く、タフネス性がアップした光学フィルムを提供すること、さらには、該光学フィルムを用いた偏光板であって、寸法安定性に優れた偏光板を提供し、ひいては液晶表示装置(LCD)の品質(寸法安定性)の改善が可能である偏光板を提供することにある。
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、金属アルコキシドの加水分解物を含有する光学フィルムとしてのセルロースエステル系樹脂フィルムのドープ(樹脂溶液)の調製方法において、ドープ調整時に既に上記加水分解物の擬似架橋反応が起こり、この時点で、光学フィルムの擬似架橋の出来上がり状態の大部分が決まることを見出した。そして、このドープの調製方法に基づいて光学フィルムの製造方法を検討した結果、このドープの安定性が、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果たすことができ、さらには、該光学フィルムを用いた偏光板の寸法安定性を改善することができ、これが、ひいては液晶表示装置(LCD)の表示パネルの寸法安定性に効くことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
上記の目的を達成するために、請求項1記載の光学フィルム用ドープの調製方法の発明は、少なくとも一種の金属アルコキシドの加水分解物を含有する光学フィルムとしてのセルロースエステル系樹脂フィルムのドープ(樹脂溶液)の調製方法であって、金属アルコキシドの加水分解物とセルロースエステル系樹脂を混合してドープを調製するとき、セルロースエステル系樹脂が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合すること、該金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものであることを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の光学フィルム用ドープの調製方法であって、セルロースエステル系樹脂と共に、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合すること、該金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものであることを特徴としている。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の光学フィルム用ドープの調製方法であって、金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応を5時間以上行なっているものであることを特徴としている。
請求項4記載の光学フィルム用ドープの発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の光学フィルム用ドープの調製方法であって、金属アルコキシドが、シリカアルコキシドであることを特徴としている。
請求項5記載の光学フィルムの製造方法の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の光学フィルム用ドープの調製方法で調製された光学フィルム用ドープ(樹脂溶液)を、溶液流延製膜法により金属支持体上に流延することを特徴としている。
請求項6記載の光学フィルムの発明は、請求項5に記載の製造方法で製造されたことを特徴としている。
請求項7記載の偏光板の発明は、請求項6に記載の光学フィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものであることを特徴としている。
請求項1記載の光学フィルム用ドープの調製方法の発明は、金属アルコキシドの加水分解物とセルロースエステル系樹脂を混合してドープを調製するとき、セルロースエステル系樹脂が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液(該金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものである)をインラインで添加して混合するもので、本発明の光学フィルム用ドープの調製方法によれば、予め、セルロースエステル系樹脂が溶剤に溶解されているため、セルロースエステル系樹脂が均一に溶解し、分子レベルではセルロースエステル系樹脂が散らばった状態を保っており、このセルロースエステル系樹脂のドープに、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合するため、両者が混合停滞される時間が短く、直ちにフィルムが製膜されるため、ドープの劣化が無く、金属アルコキシドの加水分解物がセルロースエステル系樹脂と混合し、フィルムを製膜した際に、安定な擬似架橋ができて、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、製造後の光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果し得るという効果を奏する。またこのとき、金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものであるから、本発明の光学フィルム用ドープの調製方法によれば、セルロースエステル系樹脂ドープ中に金属アルコキシドの加水分解物が60%以上安定に存在しており、光学フィルム用ドープの安定性をより一層改善することができるという効果を奏する。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の光学フィルム用ドープの調製方法であって、セルロースエステル系樹脂と共に、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液(該金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものである)をインラインで添加して混合するもので、本発明の光学フィルム用ドープの調製方法によれば、同様に、予め、セルロースエステル系樹脂と共に、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤が溶剤に溶解されているため、セルロースエステル系樹脂と共に、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤が均一に溶解し、分子レベルではセルロースエステル系樹脂と共に、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤が散らばった状態を保っており、この可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含むセルロースエステル系樹脂のドープに、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合するため、両者が混合停滞される時間が短く、直ちにフィルムが製膜されるため、ドープの劣化が無く、金属アルコキシドの加水分解物がセルロースエステル系樹脂並びに可塑剤及び/又は紫外線吸収剤と混合し、フィルムを製膜した際に、安定な擬似架橋ができて、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、製造後の光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果し得るという効果を奏する。またこのとき、金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものであるから、本発明の光学フィルム用ドープの調製方法によれば、セルロースエステル系樹脂ドープ中に金属アルコキシドの加水分解物が60%以上安定に存在しており、光学フィルム用ドープの安定性をより一層改善することができるという効果を奏する。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の光学フィルム用ドープの調製方法であって、金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応を5時間以上行なっているものであるから、本発明の光学フィルム用ドープの調製方法によれば、セルロースエステル系樹脂ドープ中に多くの金属アルコキシドの加水分解物が安定に存在しており、同様に、光学フィルム用ドープの安定を改善することができるとともに、セルロースエステル系樹脂ドープにインライン添加された後、直ちにフィルムが製膜されるため、ドープの劣化が無く、金属アルコキシドの加水分解物がセルロースエステル系樹脂と混合し、フィルムを製膜した際に、安定な擬似架橋ができて、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、製造後の光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果し得るという効果を奏する。
上記請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の光学フィルム用ドープの調製方法においては、金属アルコキシドが、Si、Ti、ZrまたはAlよりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属のアルコキシドであることが好ましく、特に、シリカアルコキシドであることが望ましい。
請求項5記載の光学フィルムの製造方法の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の光学フィルム用ドープの調製方法で調製された光学フィルム用ドープ(樹脂溶液)を、溶液流延製膜法により金属支持体上に流延するもので、光学フィルムの基材であるセルロースエステル系樹脂に対して、水素結合によって相互作用することが可能である金属アルコキシドの加水分解物を、ナノスケールでセルロースエステル系樹脂中に分散・混合する、いわゆる有機−無機ハイブリッドと呼ばれる手法により作製されたドープを、金属支持体上に流延するものであるから、光学フィルム用ドープの安定性が、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、製造後の光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果し得るという効果を奏する。
請求項6記載の光学フィルムの発明は、請求項5に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたものであるから、光学フィルムは寸法安定性に優れており、優れたフィルム強度、及びタフネス性を具備するという効果を奏する。
また、本発明の光学フィルムによれば、上記に加えて、光学フィルムのリターデーションの安定性(湿度変動耐性、温度変動耐性)も向上することが判明した。
請求項7記載の偏光板の発明は、請求項6に記載の光学フィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものであるから、偏光板の寸法安定性を改善することができ、ひいては液晶表示装置(LCD)の表示パネルの寸法安定性を改善することができるという効果を奏する。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、本発明は、特に液晶表示装置(LCD)の偏光板用保護フィルム等に利用することができる光学フィルム用ドープの調製方法に係るものである。
本発明による光学フィルム用ドープの調製方法は、金属アルコキシドの加水分解物とセルロースエステル系樹脂を混合してドープを調製するとき、セルロースエステル系樹脂が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合するものである。なおこのとき、金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものである。
ところで、近年になって、無機物を金属アルコキシドのような液体状態から合成する手法が開発されるに至り、溶液プロセスによって可視光の波長以下(〜約750nm以下)のナノスケールで有機物と無機物を混合することが可能となり、光学的にも透明で有用な材料が得られるようになってきている。
有機−無機ハイブリッドは、また有機−無機ポリマーコンポジットまたはゾル・ゲル法などと呼ばれる手法として用いられるが、本明細書では、これらを有機−無機ハイブリッドと呼称するものとする。
有機−無機ハイブリッドとは、有機ポリマーと無機化合物を組み合わせて、双方の特性を持った材料を合成する考え方であるが、有機ポリマーと無機化合物は相溶性に乏しいため、単純に両者を混合するだけでは有用な材料を得ることが難しい。
本発明においても、鋭意検討した結果、有機ポリマーであるセルロースエステル系樹脂と、無機化合物である金属アルコキシドの加水分解物を特定の条件下でインライン添加して混合することにより、セルロースエステルの透明性や光学特性を保ったまま、フィルムの寸法安定性を向上させることが判明し、上記課題を達成する光学フィルムを得ることができたものである。
本発明においては、液晶表示用フィルムとして好ましい有機材料として、低複屈折・波長分散特性が正であるセルロースエステル系樹脂が、有機−無機ハイブリッドフィルムの有機ポリマーとして用いられる。
ここで、高分子化合物の波長分散特性が正であるとは、波長600nmにおける面内リタデーション値R(600)を、波長450nmにおける面内リタデーション値R(450)で除した値が、1より大きいことをいう。
波長600nmにおける面内リタデーション値R(600)及び波長450nmにおける面内リタデーション値R(450)は、該高分子化合物を可溶な溶媒、例えば、アセトン、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、塩化メチレン及びこれらの混合溶媒に溶解し、ガラス板上にフィルム厚みが100μmになるように流延し、乾燥させて、フィルムを作製し、波長600nmにおける面内リタデーション値R(600)と波長450nmにおける面内リタデーション値R(450)を測定することによって求めることができる。
波長分散特性が正である基板フィルムにおいては、可視光の全波長領域で偏光の補償が可能であり、複屈折を利用した表示方法を採用している液晶パネルにおいては、色ずれを防ぐことができ、また、有機EL表示素子においては、良好なコントラストを得ることができる。
本発明による光学フィルムは、フィルム基材(高分子化合物)が、セルロースエステル系樹脂であるのが、好ましい。
ここで、セルロースエステル系樹脂フィルムの主原料であるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のセルローストリアセテートは、ベース強度が強いので、より好ましい。セルローストリアセテートは、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテート及び木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを、単独あるいは混合して用いることができる。
溶液流延製膜法による場合、駆動回転ステンレス鋼製エンドレスベルト(または駆動回転ステンレス鋼製ドラム)よりなる支持体上からの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートを多く使用した方が、生産性効率が高く好ましい。
セルロースエステル系樹脂フィルムを製造する場合、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートの比率が60重量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため、60重量%以上が好ましく、より好ましくは85重量%以上、さらには、単独で使用することが最も好ましい。
本発明においては、金属アルコキシドの加水分解物とセルロースエステル系樹脂を混合してドープを調製するとき、セルロースエステル系樹脂が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液(該金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものである)をインラインで添加して混合することにより、ドープを形成し、これを基材上に流延し、フィルムを形成させる。この際に押し出しあるいは流延後に溶媒を蒸発させる必要性があるため、揮発性の溶媒が好ましい。さらに、溶媒は、金属アルコキシドや触媒等と反応せず、かつ流延用基材を溶解しないものである。また、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。通常、セルロースエステルと加水分解可能な金属アルコキシドを各々別の溶媒に溶解した後に混合する。
ここで、上記セルロースエステル系樹脂に対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
良溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレン、アセト酢酸メチルなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチル及び塩化メチレンが好ましい。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40重量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらは、ドープを金属支持体に流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることで、ウェブ(支持体上にセルロースエステル系樹脂のドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、ウェブを丈夫にして、金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステル系樹脂の溶解を促進したりする役割もあり、金属アルコキシドのゲル化、析出、粘度上昇を抑える役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、かつ毒性がないことなどからエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロースエステル系樹脂に対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
このような条件を満たす好ましい高分子化合物であるセルロースエステル系樹脂を高濃度に溶解する溶剤として最も好ましい溶剤の比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95重量%、その他の溶剤は30〜5重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないように定められる。
つぎに、本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムを構成する無機化合物である金属アルコキシドについて説明する。
本発明において金属とは、「周期表の化学」岩波書店 斎藤一夫著 p.71に記載の金属すなわち半金属性原子を含む金属である。
本発明に用いられる加水分解可能な金属アルコキシドとしては、好ましくは金属種がケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属であって、特に好ましくはケイ素(Si)である。
このような加水分解可能な金属アルコキシドは、中心金属をM、その原子数をq、加水分解されない置換基をA、その置換基数をp、加水分解可能な置換基をB、その置換基数をrとすると、理想的には下記の式(1)のように反応が完結し、金属酸化物が得られる。
式(1) A → Ar/2
この金属酸化物の含有量は、有機−無機ハイブリッド材料を燃焼させた後、灰中の金属酸化物の含有量として求めることができる。
本発明では、金属酸化物の含有量は、有機−無機ハイブリッドフィルムを500℃に加熱燃焼させた後の残渣に含まれる金属酸化物の重量をGm、燃焼前のフィルムの重量をGfとしたときに、下記の式(2)で表わされる。
式(2) Gm/Gf×100
金属酸化物の重量は、セイコー電子工業株式会社製SPS−4000を用いて、ICP−AES分析法(誘導結合プラズマ発行分光分析)により測定することができる。この際、灰中に金属酸化物以外の成分(例えばリン等)が含まれている場合は、公知の方法で灰中の金属酸化物量を測定することができる。
有機−無機ハイブリッド材料の無機物の含有量としては、有機−無機ハイブリッドフィルムの全重量に対して、0.1〜40重量%が好ましい。より好ましくは、0.5〜20重量%であり、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
ここで、無機物の添加量が0.1重量%より少ないと、有機−無機ハイブリッドフィルムの物性改良効果が認められなくなり、40重量%を越えると、有機−無機ハイブリッドフィルムが脆くなってしまうためである。
本発明の有機−無機ハイブリッドフィルム中の加水分解物の平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡観察、X線小角散乱測定により得ることができる。好ましいのは、X線小角散乱測定により求める方法である。
X線小角散乱法の詳細については、例えばX線回折ハンドブック第3版(理学電機株式会社2000年発行)を参照することができる。よく知られているように、試料中に電子密度の異なる領域が存在すると入射X線方向に散漫な散乱が観測される。この散乱は散乱角0〜5°程度の範囲に観測されるため、これらの散乱は小角散乱と呼ばれる。
この散乱曲線に対し、GuinierプロットあるいはFankuchen法を用いて、加水分解物の平均粒子径を測定する。
本発明における有機−無機ハイブリッドフィルム中の加水分解物の好ましい平均粒子径は、1〜200nmである。より好ましくは1〜100nmさらに好ましくは1〜50nmで、1〜20nmが最も好ましい。
本発明に用いられる加水分解物は、従来の金属酸化物微粒子をセルロースエステル溶液中に分散して添加する方法に比べて凝集体を形成しにくく、小粒径の状態を安定に得られる点で優れている。
加水分解可能な金属アルコキシドとしては、上記の式(1)で示されているAにおいて、p=0であるような、全てが加水分解可能な置換基で置換されていることが好ましいが、基材フィルムの透湿度を低減する観点から、加水分解されない置換基によって該金属1原子当たり1つまたは2つ、あるいは3つ置換されている化合物が含まれていても良い。
このような加水分解されない置換基を有する金属アルコキシドの添加量としては、添加される金属アルコキシドの50モル%以下が好ましい。また、上記添加量の範囲で2種以上の異なる種類の金属アルコキシドを併用しても良い。
このような加水分解されない置換基としては、置換または無置換のアルキル基、または置換または無置換のアリール基が好ましく該アルキル基またはアリール基の置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素環基(たとえばフラン、チオフェン、ピリジン等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、グリシジル基、ビニル基、フッ素原子含有アルキル基またはフッ素原子含有アリール基等が挙げられる。
本発明に用いられる加水分解可能な金属アルコキシドとしては、ケイ素化合物として、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトライソシアナートシラン等が挙げられる。
また加水分解されない置換基を有するケイ素化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、メチルトリイソシアナートシラン、フェニルトリイソシアナートシラン、ビニルトリイソシアナートシラン、等が挙げられる。
また、これらの化合物が部分的に縮合した、多摩化学製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のような、数量体のケイ素化合物でもよい。
本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムにおいて、無機化合物である加水分解可能な金属アルコキシドは、必要に応じて水と触媒を加えて加水分解を起こさせて縮合反応を促進してよい。
しかし、フィルムのヘイズ、平面性、製膜速度、溶剤リサイクルなどの生産性の観点から、水分はドープ中に0.01重量%以上2.0重量%以下の範囲内とすることが好ましい。
また、疎水的な加水分解可能な金属アルコキシドに水を添加する場合には、加水分解可能な金属アルコキシドと水が混和しやすいように、メタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒も添加されていることが好ましい。また、セルロースエステル系樹脂のドープに金属アルコキシドの加水分解物をインライン添加する際に、ドープからセルロースエステル系樹脂が析出しないよう、該セルロースエステル系樹脂の良溶媒も添加されていることが好ましい。
金属アルコキシドの加水分解を促進させる触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸、レブリン酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が用いられる。酸を添加し、ゾル・ゲル反応が進行した後に、塩基を加え中和しても良い。塩基を加え中和する場合、乾燥工程前でのアルカリ金属の含有量が5000ppm未満であることが好ましい(ここで、アルカリ金属とは、イオン状態のものを含む)。また、ルイス酸、例えばゲルマニウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、錫などの金属の酢酸塩、その他の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩などを併用してもよい。
また触媒として、このような酸類の代りに、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなど、DBU(ジアザビシクロウンデセン−1)、DBN(ジアザビシクロノネン)などのビシクロ環系アミン、アンモニア、ホスフィン、アルカリ金属アルコキシド、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の塩基を用いることができる。
このような、酸またはアルカリ触媒の添加量としては特に制限はされないが、加水分解可能な金属アルコキシドの量に対して1.0〜20重量%が好ましい。また、酸及び塩基の処理を複数回行なっても良い。必要な加水分解を行なった後、触媒を中和してもよいし揮発性の触媒は減圧で除去してもよいし、分液水洗等により除去しても良い。
本発明による光学フィルム用ドープの調製方法では、金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものであるのが、好ましい。
また、本発明による光学フィルム用ドープの調製方法では、金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応を5時間以上行なっているものであるのが、好ましい。
従って、金属アルコキシドの加水分解は、流延前の溶液状態で反応を完結させても良いし、フィルム状に流延してから反応を完結させても良いが、流延前に反応を完結させるのが、好ましい。
用途によって、反応は完全に終了しなくても良いが、できれば完結していた方が良い。加水分解の反応状態はNMRにて確認することができる。
金属アルコキシドとしてシリカアルコキシドを用いる場合は、シリカアルコキシドあるいはオルガノアルコキシシランを加水分解すると、OR基がOHに置換し、さらに他のSi−OHあるいはSi−ORと縮合する反応が起こるが、赤外線吸収スペクトルの場合、Si−OR、Si−OH、Si−OR(縮重合体)で、それぞれに対応するピークが現れる。29−Si−NMRスペクトルには、それぞれに対応するピークが現れる。
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
本発明における有機−無機ハイブリッドフィルムには、フィルムに加工性・柔軟性・防湿性を付与する可塑剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤、フィルムのリタデーションを調整するリタデーション調整剤等を含有させても良い。
本発明において使用する可塑剤しては、特に限定はないが、フィルムにヘイズを発生させたり、フィルムからブリードアウトあるいは揮発しないように、セルロースエステル系樹脂や金属アルコキシドの加水分解物と、水素結合などによって相互作用可能である官能基を有していることが好ましい。
このような官能基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられるが、好ましくはカルボニル基、エステル基、ホスホニル基である。
このような可塑剤の例として、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができるが、特に好ましくは多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等の非リン酸エステル系可塑剤である。
例えばリン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェイト、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートも好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。分子量の大きい可塑剤は、押し出し成形の際の揮発が抑制でき好ましい。これらの例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類などが挙げられる。上記可塑剤は、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールは、つぎの一般式(3)で表される。
一般式(3) R−(OH)n
(式中、Rはn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
好ましい多価アルコールの例としては、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させると、セルロースエステル系樹脂との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は、特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが、さらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステル系樹脂との相溶性の点では、小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
これらの可塑剤は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
上述した可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して1〜30重量%含有させることが好ましい。可塑剤をこの範囲で含有させることにより、セルロースエステルフィルムの湿熱下での寸法安定性を向上することができる。なお、可塑剤の使用量が、セルロースエステル系樹脂に対して1重量%未満では、フィルムの透湿度を低減させる効果が少ないため、好ましくなく、30重量%を越えると、フィルムから可塑剤がブリードアウトし、フィルムの物性が劣化するため、好ましくない。
本発明では、フィルムの滑り性を付与するために、微粒子を添加してもよい。本発明で用いられる微粒子としては、無機微粒子または有機微粒子のどちらでもよい。
本発明では樹脂との屈折率差小さくするため、有機微粒子が好ましく用いられる。有機微粒子としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル系樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂が好ましく用いられる。
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン株式会社製)等の商品名を有する市販品が使用できる。また架橋PMMA粒子も好ましく用いられ、例えば、MX−150、同300、同500、同1000、同1500H(綜研化学株式会社製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
また、本発明では、樹脂との屈折率差を0.04以下の微粒子を用いることによりフィルムのヘイズが低く抑えられ透明性が高いフィルムが得られるため好ましい。そのような微粒子としては、屈折率1.49のエポスターMA、屈折率1.52のエポスターGP(以上、株式会社日本触媒社製)、屈折率が任意に調整可能な積水化成品工業製テクポリマーのMSXシリーズ等と樹脂との組み合わせにより達成できる。
一方、無機微粒子としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機微粒子や酸化ジルコニウムである。中でも、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。二酸化ケイ素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル株式会社製)等の商品名を有する市販品が好ましく使用できる。
本発明において、酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル株式会社製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
本発明では、フィルム中での微粒子の粒径を円相当径で0.05〜5.0μmにすることでフィルム同士の滑り性を持たせることができる。本発明で用いる微粒子は単分散粒子を用いる場合は、粉体での微粒子の平均粒径がフィルム中での平均粒径となるため、添加する微粒子の平均粒径の選択をすることで上記範囲の粒径が達成できる。粒径が0.05μm未満の場合はフィルムからの突起高さが低いためフィルム同士がくっつき変形を生じるため好ましくない。5.0μmを越えると、樹脂と微粒子の屈折率差が小さくても、ヘイズの上昇を抑えられず、フィルムの透明性が損ねられるため、液晶用部材として好ましくない。
フィルム中での微粒子の含有量は0.05〜0.5重量%がフィルム同士の滑り性を持たせるために好ましい。含有量が0.05重量%未満の場合はフィルムからの突起数が少ないためフィルム同士がくっつき変形を生じるため好ましくない。0.5重量%を越えると樹脂と微粒子との屈折率差が小さくてもヘイズの上昇を抑えられず、フィルムの透明性が損ねられるため液晶用部材として好ましくない。
ところで、本発明による光学フィルムは、液晶材料の保護などのために紫外線吸収剤を含有している。
すなわち、本発明による光学フィルムは、25℃において液状の紫外線吸収剤を含有する。液状の紫外線吸収剤は、いわゆる常温で液体の紫外線吸収剤である。ここで、「常温で液体」とは25℃において「化学大事典(1963)共立出版」等に定義される如く、一定の形を持たず、流動性があり、ほぼ一定の体積を有するものを示す。従って、上記性質を有するものであれば融点は限定されないが、融点30℃以下、特に好ましくは15℃以下である化合物が好ましい。
液状の紫外線吸収剤は単一化合物であっても混合物であってもよく、混合物としては構造異性体群から構成されるものを好ましく用いることができる。
紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明において、有用な紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、紫外線吸収剤の市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を、好ましく使用できる。
また、本発明において使用し得る紫外線吸収剤であるベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明において、これらの紫外線吸収剤の配合量は、セルロースエステル系樹脂に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。紫外線吸収剤の使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不充分の場合があり、紫外線吸収剤の多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合があるので、好ましくない。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の使用量は、紫外線の吸収効果、透明性の観点からセルロースエステルに対する含有量が0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜3重量%、より好ましくは0.5〜2重量%である。
セルロースエステルのアセチル基の置換度が低いと、耐熱性が低下する場合がある。この場合、酸化防止剤を配合することが有効である。
本発明の光学フィルムとしての有機−無機ハイブリッドフィルムに用いることのできる酸化防止剤は、一般に、劣化防止剤ともいわれるが、光学フィルムとしての有機−無機ハイブリッドフィルム中に含有させるのが好ましい。すなわち、液晶表示装置などが高湿高温の状態に置かれた場合には、光学フィルムとしての有機−無機ハイブリッドフィルムの劣化が起こる場合がある。酸化防止剤は、例えば有機−無機ハイブリッドフィルム中の残留溶媒中のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸などにより有機−無機ハイブリッドフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、有機−無機ハイブリッドフィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロースエステル系樹脂に対して重量割合で1ppm〜1.0重量%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
また、本発明は、光学フィルム用ドープの調製方法を利用した光学フィルムの製造方法に関するものである。
以下、本発明に係わる光学フィルムとしての有機−無機ハイブリッドフィルムの好ましい製膜方法について述べる。有機−無機ハイブリッドフィルムは、溶液流延製膜方法により作製できる。
本発明の光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜方法によるドープ調製工程、流延工程、乾燥工程、及び巻取り工程を含むものである。以下、これらを順に説明する。
はじめに、セルロースエステル系樹脂を含むドープの調製法を説明する。
本発明においては、セルロースエステル系樹脂(フレーク状の)に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で該セルロースエステル系樹脂、ポリマーや添加剤を攪拌しながら溶解して、ドープを形成したり、あるいはセルロースエステル系樹脂溶液にポリマー溶液や添加剤溶液を混合してドープを形成した後、セルロースエステル系樹脂のドープに金属アルコキシドの加水分解物の溶液をインライン添加する工程である。
セルロースエステル系樹脂の溶解には、常圧で行なう方法、主溶媒の沸点以下で行なう方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行なう方法、冷却溶解法で行なう方法、高圧で行なう方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行なう方法が好ましい。
このときの温度は、溶媒の沸点〜80℃未満が好ましい。ドープ中のセルロースエステル系樹脂の濃度は、10〜35重量%であるのが好ましい。
なお、セルロースエステル系樹脂の主ドープへの紫外線吸収剤の添加液の添加は、主ドープ仕込み釜に直接添加しても良いし、あるいはまた添加液溶解釜で作成した紫外線吸収剤添加液を濾過した後、この紫外線吸収剤添加液をスタティックミキサーの手前に導入して、セルロースエステル系樹脂のドープにインライン添加する場合もある。
また、主ドープへの微粒子の添加は、主ドープ仕込み釜に粉体のまま直接添加しても良いし、添加液溶解釜において溶媒に分散して微粒子添加液を調整した後、主ドープ仕込み釜に添加しても良いが、凝集物等の発生を抑えるためには、予め溶媒などに分散して添加するのが好ましい。
添加液溶解釜において調整した微粒子添加液は、濾過器で濾過した後、主ドープ仕込み釜へ導入して、セルロースエステル系樹脂のドープに溶解時に添加するか、またはインライン添加する。
その後、可塑剤、紫外線吸収剤、及び微粒子を含むセルロースエステル系樹脂ドープを、濾過器に導いて濾過する。濾過器では、セルロースエステル系樹脂のを、濾紙あるいは金属焼結フィルターなどの濾材で濾過する。
つぎに、金属アルコキシドの加水分解物を含む溶液の作製法を説明する。
本発明においては、加水分解可能な金属アルコキシドの仕込釜で、金属アルコキシドの加水分解物の溶液を調製し、この金属アルコキシドの加水分解物の溶液を濾過器に導き、濾過器で金属アルコキシドの加水分解物の溶液を濾過して、凝集物を除去した後、濾過後の金属アルコキシドの加水分解物の溶液をセルロースエステル系樹脂の溶液(ドープ)にインライン添加する。この場合、金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものである。
金属アルコキシドの加水分解物の溶液は、セルロース誘導体のドープにインライン添加する際に、セルロースエステル系樹脂が析出しないように、セルロースエステル系樹脂のドープの主溶剤によって10〜50重量%に希釈されていることが好ましい。また同様の観点から、金属アルコキシドの加水分解物の溶液に、セルロースエステル系樹脂が希薄に(10重量%以下)溶解されていても構わない。
また、加水分解可能な金属アルコキシドに触媒・水などを添加する際には、金属アルコキシドと混和しやすくなるように、メタノール、エタノール、メチルセロソルブのようなアルコール系の溶媒を、全溶媒量に対して50%以下の割合で添加しても良い。
なお、可塑剤や紫外線吸収剤のような添加剤の全量または一部を、こちらの溶液に添加する場合もある。
つぎに、セルロースエステル系樹脂のドープと金属アルコキシド加水分解物の溶液の混合について説明する。
本発明による光学フィルム用ドープの調製方法は、金属アルコキシドの加水分解物とセルロースエステル系樹脂を混合してドープを調製するとき、セルロースエステル系樹脂が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合するものである。
別々の釜にて調製された、セルロースエステル系樹脂のドープと、金属アルコキシドの加水分解物の溶液をそれぞれ濾過した後、セルロースエステル系樹脂のドープの流送管内の流れの中に、好ましくはスタティックミキサーの手前において、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインライン添加して混合することが好ましい。
なお、セルロースエステル系樹脂ドープに対する金属アルコキシドの加水分解物の配合量は、セルロースエステル系樹脂100重量部に対し、金属アルコキシドが加水分解の結果、生成するケイ酸換算で、0.3〜7.0重量部、好ましくは0.5〜5.0重量部を与える金属アルコキシドの加水分解物を添加する。
本発明によれば、光学フィルムとしてのセルロースエステル系樹脂フィルムのドープの調製方法において、予め、セルロースエステル系樹脂が溶剤に溶解されているため、セルロースエステル系樹脂が均一に溶解し、分子レベルではセルロースエステル系樹脂が散らばった状態を保っており、このセルロースエステル系樹脂のドープに、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合するため、両者が混合停滞される時間が短く、直ちにフィルムが製膜されるため、ドープの劣化が無く、金属アルコキシドの加水分解物がセルロースエステル系樹脂と混合し、このドープ調整時に既に上記加水分解物の擬似架橋反応が起こり、この時点で、光学フィルムの擬似架橋の出来上がり状態の大部分が決まるものである。これにより、フィルムを製膜した際に、安定な擬似架橋ができて、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、製造後の光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果し得るものである。
また、本発明による光学フィルム用ドープの調製方法は、セルロースエステル系樹脂と共に、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合するものであるから、本発明の光学フィルム用ドープの調製方法によれば、同様に、予め、セルロースエステル系樹脂と共に、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤が溶剤に溶解されているため、セルロースエステル系樹脂と共に、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤が均一に溶解し、分子レベルではセルロースエステル系樹脂と共に、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤が散らばった状態を保っており、この可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含むセルロースエステル系樹脂のドープに、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合するため、両者が混合停滞される時間が短く、直ちにフィルムが製膜されるため、ドープの劣化が無く、金属アルコキシドの加水分解物がセルロースエステル系樹脂並びに可塑剤及び/又は紫外線吸収剤と混合し、フィルムを製膜した際に、安定な擬似架橋ができて、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、製造後の光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果し得るものである。
本発明の光学フィルム用ドープの調製方法においては、金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものである。
また、本発明の光学フィルム用ドープの調製方法においては、金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応を5時間以上行なっているのが、好ましい。
このように、本発明の光学フィルム用ドープの調製方法によれば、セルロースエステル系樹脂ドープ中に金属アルコキシドの加水分解物が60%以上安定に存在しており、あるいはまたセルロースエステル系樹脂ドープ中に多くの金属アルコキシドの加水分解物が安定に存在しており、光学フィルム用ドープの安定性をより一層改善することができるとともに、セルロースエステル系樹脂ドープにインライン添加された後、直ちにフィルムが製膜されるため、ドープの劣化が無く、金属アルコキシドの加水分解物がセルロースエステル系樹脂と混合し、フィルムを製膜した際に、安定な擬似架橋ができて、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、製造後の光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果し得るものである。
本発明においては、上記のドープの調製方法に基づいて光学フィルムの製造方法を検討した結果、セルロースエステル系樹脂のドープに、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合すると、両者が混合停滞される時間が短く、直ちにフィルムが製膜されるため、ドープの劣化が無く、金属アルコキシドの加水分解物がセルロースエステル系樹脂と混合し、フィルムを製膜した際に、安定な擬似架橋ができて、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果たすことができ、さらには、該光学フィルムを用いた偏光板の寸法安定性を改善することができ、これが、ひいては液晶表示装置(LCD)の表示パネルの寸法安定性に効くことを見出した。
本発明による光学フィルムの製造方法の発明は、上記の光学フィルム用ドープの調製方法で調製された光学フィルム用ドープ(樹脂溶液)を用い、以下に説明する溶液流延製膜法による流延工程を経てセルロースエステルフィルムを得ることができる。
この流延工程では、金属アルコキシド加水分解物、可塑剤、紫外線吸収剤添加液、及び微粒子を含むセルロースエステル系樹脂のドープを、例えば加圧型定量ギヤポンプなどの送液ポンプを通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレス鋼製ベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。
金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために、加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造の有機−無機ハイブリッドフィルムを得ることが好ましい。
ウェブ(ドープ膜)を金属支持体で加熱し、金属支持体からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または金属支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が、乾燥効率がよく、好ましい。また、上記の方法を組み合わせる方法も、好ましい。なお、裏面液体伝熱の方法による場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で、加熱するのが好ましい。
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブ(フィルム)を、剥離位置で剥離ロールにより剥離する。剥離されたウェブは、次工程に送られる。なお、剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると、剥離し難かったり、逆に、金属支持体上で充分に乾燥させ過ぎてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
ここで、製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離することで製膜速度を上げることができる)としては、ゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。例えば、ドープ中にセルロースエステル系樹脂に対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体上でゲル化させ、剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め、製膜速度を上げることができるのである。
また、本発明では、ドープの状態で擬似的な架橋状態をつくることで、膜強度が強くなり、剥離が容易になるために、製膜速度を上げることができる。
金属支持体上でのウェブ乾燥条件の強弱、金属支持体の長さ等により、ウェブの残留溶媒量が5〜150重量%の範囲で、ウェブを剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると、剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生しやすいため、経済速度とフィルム品質との兼ね合いで、ウェブ剥離時の残留溶媒量が決められる。
本発明においては、金属支持体上の剥離位置における温度を、−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
また、金属支持体上の剥離位置におけるウェブの残留溶媒量を10〜150重量%とすることが好ましく、さらに10〜120重量%とすることが好ましい。
残留溶媒量は、下記の式で表わすことができる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の重量である。
剥離後、ウェブを、クリップ若しくはピンでウェブの両端を把持して搬送するテンター装置、及び/または乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置を用いて、ウェブを乾燥する。
本発明においては、幅手方向に対して1.0〜2.0倍延伸することが好ましく、テンター装置を用いて延伸することが好ましい。さらに好ましくは、縦及び横方向に2軸延伸されたものである。延伸倍率は目的の光学特性(面内方向リタデーションRo、厚み方向リタデーションRt)に応じて設定される。また、位相差フィルムを製造する場合、長尺方向に一軸延伸することもできる。
本発明の光学フィルムとしての有機−無機ハイブリッドフィルムは、面内方向リタデーション(Ro)が0〜1000nm、厚み方向リタデーション(Rt)が0〜500nmのフィルムを得ることができる。
金属アルコキシドの加水分解物をセルロースエステル系樹脂のドープにインライン添加することによって、延伸されたフィルムの膜厚あたりのリタデーション値Ro、Rtを大きくすることができ、これにより、位相差フィルムとして、高温若しくは高温高湿条件下でも、リタデーション値Ro、Rtの変動が少なく耐久性に優れ、より薄いフィルムを提供することができる。
乾燥の手段は、ウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代りにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は、でき上がりのフィルムの平面性を損ねやすいので、好ましくない。全体を通して、通常、ウェブの乾燥温度は40〜250℃の範囲で行なわれる。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量、及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて、乾燥条件を適宜選べばよい。
ウェブ(フィルム)中の残留溶媒量が2重量%以下となってからセルロースエステルフィルムとして巻き取る。残留溶媒量を0.4重量%以下にすることにより、寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。
本発明の方法によって製造される光学フィルムの厚さは、20〜150μmの厚みで使用されるが、液晶表示装置の薄肉化、軽量化が要望から、30〜100μmであることが好ましい。光学フィルムの厚さが20μm未満に薄い場合は、フィルムの腰の強さが低下するため、偏光板作成工程上でシワ等の発生によるトラブルが発生しやすく、また、光学フィルムの厚さが150μmを超えて厚い場合は、液晶表示装置の薄膜化に対する寄与が少ない。
本発明による光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、本発明において使用される膜厚範囲は20〜100μmで、最近の薄手傾向にとっては40〜100μmの範囲が好ましい。膜厚は、所望の厚さになるように、押し出し流量、ダイスの口金のスリット間隙、冷却ドラムの速度等をコントロールすることで調整できる。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて、調節するのが好ましい。
本発明の光学フィルムは、幅1〜4mのものが好ましく用いられる。
本発明の構成により、寸法安定性にも優れた光学フィルムが得られるため、広幅のセルロースエステルフィルムで著しい効果が認められる。特にフィルム幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくはフィルム幅1.4〜2mである。フィルム幅が4mを超えると、搬送が困難となる。
本発明では、フィルムを巻き取る前に、製品となる幅にフィルムの端部をスリットして裁ち落とし、フィルム巻き中のクッツキや、すり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施す。ナール加工の方法は、凸凹のパターを側面に有する金属リングを加熱及び/または加圧により加工することができる。
本発明による光学フィルムにおいて、ナーリング高さa(μm)とフィルム膜厚d(μm)の関係は、ナーリング高さa(μm)のフィルム膜厚d(μm)に対する比率X(%)を
X(%)=(a/d)×100
としたとき、比率Xが、2〜25%の範囲にあることが好ましい。
ここで、ナーリング高さ(a)とフィルム膜厚(d)との比a/dが、2%未満の場合は、フィルム同士がくっつき、フィルムが変形したり、表面に傷がつくため、好ましく無い。また、比a/dが25%を越えると、長尺で巻いた際に幅手の中央部分の窪みが大きくなり、これも巻き変形を発生させ、フィルムの変形になるため、好ましくない。
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、光学フィルムの基材であるセルロースエステル系樹脂に対して、水素結合によって相互作用することが可能である金属アルコキシドの加水分解物を、ナノスケールで、セルロースエステル系樹脂中に分散・混合する、いわゆる有機−無機ハイブリッドと呼ばれる手法により作製されたドープであって、セルロースエステル系樹脂のドープに金属アルコキシドの加水分解物溶液がインライン添加された後、直ちにフィルムが製膜されるため、ドープの劣化が無く、金属アルコキシドの加水分解物がセルロースエステル系樹脂と混合し、該ドープを金属支持体上に流延して、フィルムを製膜した際に、安定な擬似架橋ができて、製造後の光学フィルムの寸法安定性に寄与し、製造後の光学フィルムの強度アップ、タフネス性アップを果し得る。
そして、本発明の光学フィルムの製造方法で製造された光学フィルムは、寸法安定性に優れており、優れたフィルム強度、及びタフネス性を具備するものである。
また、本発明の光学フィルムによれば、上記に加えて、光学フィルムのリターデーションの安定性(湿度変動耐性、温度変動耐性)も向上することが判明した。 上記のようにして製造された本発明による光学フィルムは、特に液晶表示装置(LCD)等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルムまた有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等にも利用することができるものである。
つぎに、本発明による偏光板は、上記の光学フィルムを、偏光膜(偏光フィルム)の少なくとも片面に貼り合わせることにより作製することができる。
すなわち、本発明による偏光板は、偏光膜、及びその両側に配置された2枚の偏光板保護フィルムからなる偏光板であって、2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方が、上記の光学フィルムによって構成されているものである。
なお、偏光膜のもう一方の面には、本発明による光学フィルムを貼り合わせても、別の偏光板用保護フィルムを貼り合わせてもよい。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如きの延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光膜自身では、充分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
偏光膜に光学フィルムを貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行なうことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。
さらに、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光膜(偏光フィルム)と長尺の本発明の光学フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板は、その片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
本発明による偏光板は、上記の光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものであるから、偏光板の寸法安定性を改善することができ、ひいては液晶表示装置(LCD)の表示パネルの寸法安定性を改善することができるものである。
本発明の偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1〜3
溶液流延製膜法により目標ドライ膜厚40μmの本発明のセルローストリアセテートフィルムを製造するにあたり、まず、セルローストリアセテートのドープを調製した。
(ドープ組成)
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート 100重量部
(数平均分子量150000)
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート(可塑剤) 2重量部
UV−23L(紫外線吸収剤) 0.75重量部
UV−28L(紫外線吸収剤) 0.75重量部
AEROSIL 200V(微粒子) 0.1重量部
メチレンクロライド 475重量部
エタノール 25重量部
上記組成のドープを調製するにあたり、まず、ドープ溶解釜に溶剤を添加した。つぎに、上記の溶剤の入ったドープ溶解釜にセルローストリアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、さらに微粒子、可塑剤、及び紫外線吸収剤を添加、分散あるいは溶解させた。その後、微粒子、可塑剤、及び紫外線吸収剤を含むドープを濾過した。
〈シリカアルコキシドの加水分解物溶液の調製〉
テトラエトキシシラン(シリカアルコキシド) 48.4重量部
アンバーリスト15dry(触媒、オルガノ社製) 9.5重量部
エタノール 48.4重量部
水 (最後に添加) 8.4重量部
上記の材料を、加水分解可能なシリカアルコキシドの仕込釜で、室温で混合し、12時間攪拌して加水分解物溶液を調製した(反応率90%)。
つぎに、上記のセルローストリアセテートのドープに対して、シリカアルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合した。
このとき、シリカアルコキシドの加水分解物の配合量が、セルローストリアセテート100重量部に対し、シリカアルコキシドが加水分解の結果、生成するケイ酸換算で、0.5重量部を与えるように、上記のセルローストリアセテートのドープに対して、シリカアルコキシド加水分解物溶液をインラインで添加して混合した。
なお、実施例2と3においては、ドープ構成材料の添加順序などは実施例1と同様に実施したが、実施例2では、シリカアルコキシドの加水分解物の配合量が、セルローストリアセテート100重量部に対し、シリカアルコキシドが加水分解の結果、生成するケイ酸換算で、2.0重量部を与えるるように、実施例3では、シリカアルコキシドの加水分解物の配合量が、セルローストリアセテート100重量部に対し、シリカアルコキシドが加水分解の結果、生成するケイ酸換算で、5.0重量部を与えるように、それぞれ上記のセルローストリアセテートのドープに対して、シリカアルコキシド加水分解物溶液をインラインで添加して混合し、これらの製造条件を下記の表1に示した。
そしてつぎに、上記実施例1〜3のシリカアルコキシド加水分解物溶液のインラインで添加後の各ドープを用い、溶液流延製膜装置により、セルローストリアセテートフィルムを以下のようにして製造した。
上記のようにして調製したシリカアルコキシドを含むセルローストリアセテートの溶液(ドープ)を、流延ダイから、鏡面処理された表面を有する駆動回転ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体上に流延して、ドープ膜すなわちウェブを得、ウェブがエンドレスベルトよりなる支持体の下面に至り、ほぼ一巡したところで、剥離ロールにより剥離した。
つぎに、剥離ロールにより剥離されたウェブを、乾燥ゾーンを通過する間に乾燥風により乾燥してフィルムとした後、巻取りロールに巻き取り、目標ドライ膜厚40μmのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
実施例1〜3において得られた光学フィルムとしてのセルローストリアセテートフィルムについて、寸法変化率、及び厚み方向リタデーション(Rt)の偏差を評価し、得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。
ここで、寸法変化率の評価は、各セルローストリアセテートフィルムの製造直後の寸法(幅手方向長さ)に対し、温度90℃の環境下に120時間保持した後に変化した寸法(幅手方向長さ)の百分率をとって、評価した。また、厚み方向リタデーション(Rt)の偏差の評価は、各セルローストリアセテートフィルムの温度23℃、湿度20%RHの環境下に24時間保持したとき厚み方向リタデーション(Rt)値に対し、温度23℃、湿度80%RHの環境下に24時間保持した後のフィルムの厚み方向リタデーション(Rt)値との差を求めて、評価した。
比較例1
比較のために、実施例1の場合と同様のドープ構成材料を使用して、セルローストリアセテートフィルムを製造するが、比較例1では、ドープ構成材料の添加方法を実施例1の場合と異なり、まず、ドープ溶解釜にドープ溶解釜に溶剤を添加した。つぎに可塑剤及び紫外線吸収剤を添加して溶解させるとともに、セルローストリアセテートを攪拌しながら投入した。これらを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解させた。その後、ドープ溶解釜中のセルローストリアセテートのドープに対して、シリカアルコキシド加水分解物の溶液を添加して混合した。そして、混合完了後、12時間静置した後に、この比較例のドープを用い、溶液流延製膜装置により、セルローストリアセテートフィルムを、上記実施例1の場合と同様に製造した。
なお、比較例1では、シリカアルコキシドの加水分解物の配合量が、実施例2の場合と同様に、セルローストリアセテート100重量部に対し、シリカアルコキシドが加水分解の結果、生成するケイ酸換算で、2.0重量部を与えるように、シリカアルコキシドの加水分解物の溶液を使用した。
比較例1のその他の点は、上記実施例1の場合と同様であり、その製造条件を下記の表1にあわせて示した。
得られた比較例1の光学フィルムとしてのセルローストリアセテートフィルムについて、寸法変化率を実施例1の場合と同様にして評価し、得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。
Figure 2006233043
Figure 2006233043
上記表2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜3において、セルローストリアセテートが溶剤と混合、溶解している溶液に対して、テトラエトキシシラン(シリカアルコキシド)の加水分解物の溶液をインライン添加して調製した光学フィルム用ドープを用いて、溶液流延製膜法により作製したセルローストリアセテートフィルムは、寸法変化率が非常に小さく、優れた寸法安定性を有するものであった。
これに対し、比較例1において、実施例1の場合と異なり、ドープ溶解釜中のセルローストリアセテートのドープに対して、シリカアルコキシド加水分解物の溶液を添加して混合することにより調製した光学フィルム用ドープは、ドープ安定性が非常に劣るものであった。そして、この比較例1において調製した光学フィルム用ドープを、溶液流延製膜法により金属支持体上に流延することにより作製したセルローストリアセテートフィルムは、寸法変化率が非常に大きく、寸法安定性に劣るものであった。
なお、加水分解可能なシリカアルコキシドの仕込釜で、室温で混合し、1時間攪拌して加水分解物溶液を調製した(反応率20%)シリカアルコキシド加水分解物の溶液を、セルローストリアセテートのドープに対してインラインで添加して混合したところ、実施例1のような改善効果は、みられなかった。
(偏光板の作製)
上記実施例1〜3において得られた各セルローストリアセテートフィルムを、それぞれ60℃、2mol/リットルの濃度の水酸化ナトリウム水溶液中に2分間浸漬し水洗した後、100℃で10分間乾燥しアルカリ鹸化処理セルローストリアセテートフィルムを得た。
また、別に、厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1重量部、ホウ酸4重量部を含む水溶液100重量部に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を作った。この偏光膜の両面に前記アルカリ鹸化処理セルローストリアセテートフィルムを完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として各々貼り合わせ偏光板を作製した。
つぎに、得られた偏光板について、寸法変化率を評価した。ここで、寸法変化率の評価は、得られた偏光板の製造直後の寸法(幅手方向長さ)に対し、温度90℃の環境下に120時間保持して、強制劣化試験を実施した試験後に変化した偏光板の寸法(幅手方向長さ)の百分率をとって、評価した。その結果、上記実施例1〜3において得られた各セルローストリアセテートフィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板は、寸法変化が非常に少なく、例えばこれらの偏光板を用いた液晶表示装置(LCD)が長期間使用され続けた場合や、高温時や高温高湿下で使用され続けた場合にも、LCDの視認性の劣化が生じるおそれがないものである。
これに対し、比較例1で得られたセルローストリアセテートフィルムを偏光板用保護フィルムとして用いて作製した偏光板は、寸法変化が非常に大きく、例えばこの比較例1の偏光板を用いたLCDが長期間使用され続けた場合や、高温時や高温高湿下で使用され続けた場合に、LCDの視認性の劣化が生じるおそれがある。

Claims (7)

  1. 少なくとも一種の金属アルコキシドの加水分解物を含有する光学フィルムとしてのセルロースエステル系樹脂フィルムのドープ(樹脂溶液)の調製方法であって、金属アルコキシドの加水分解物とセルロースエステル系樹脂を混合してドープを調製するとき、セルロースエステル系樹脂が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合すること、該金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものであることを特徴とする、光学フィルム用ドープの調製方法。
  2. セルロースエステル系樹脂と共に、可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を溶剤が溶剤と混合、溶解している溶液に対して、金属アルコキシド加水分解物の溶液をインラインで添加して混合すること、該金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応が60%以上進行しているものであることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム用ドープの調製方法。
  3. 金属アルコキシド加水分解物の溶液は、金属アルコキシドの加水分解反応を5時間以上行なっているものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学フィルム用ドープの調製方法。
  4. 金属アルコキシドが、シリカアルコキシドであることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の光学フィルム用ドープの調製方法。
  5. 請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の光学フィルム用ドープの調製方法で調製された光学フィルム用ドープ(樹脂溶液)を、溶液流延製膜法により金属支持体上に流延することを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
  6. 請求項5に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、光学フィルム。
  7. 請求項6に記載の光学フィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものであることを特徴とする偏光板。
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