JP4251402B2 - N−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体 - Google Patents
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Description
さらに、本発明者らは、上記N−アセチルガラクトサミン転移酵素の各種類毎に、該酵素によるN−アセチルガラクトサミンを転移する酵素活性の大きさが異なることを発見した。即ち、pp−GalNAc−T8、T9、T17、およびT18の転移酵素活性は、他の酵素よりもその活性が著しく低かった。特定の酵素による活性が低い原因は不明であるが、受容基質の認識が厳密であり、本来の基質以外に対してGalNAcを転移することができない、転移酵素としての活性以外の別の機能を有する、あるいは別の活性化因子(サブユニット)が欠如しているためなどの理由が考えられる。
これらの酵素活性が低いことから、生体でこれらの酵素が作り出す糖タンパク質は非常に希少である可能性があり、それらの糖タンパク質の機能を解析することは困難であることが予想される。酵素活性の高い改変型活性化酵素を開発できれば、生体では微量にしか存在しない糖鎖(糖タンパク質)を大量に合成できる可能性がある。
なお、N−アセチルガラクトサミン転移酵素群の各アミノ酸配列、塩基配列は、先行技術文献に開示されるが、本明細書においては、アミノ酸配列および塩基配列を、各々、pp−GalNAc−T17では配列番号1と配列番号2、T9(Tobaら、2000)では配列番号3と配列番号4、T18では配列番号5と配列番号6、T8(Whiteら、2000)では配列番号7と配列番号8、T1(Whiteら、1995)では配列番号23と配列番号24、T13では配列番号25と配列番号26、T3(Bennetら、1996)では配列番号27と配列番号28、T6(Bennetら、1999)では配列番号29と配列番号30、T12では配列番号31と配列番号32、T4(Bennetら、1998)では配列番号33と配列番号34、T15では配列番号35と配列番号36、T10では配列番号37と配列番号38、T7(Bennetら、1999)では配列番号39と配列番号40、T5(GenBank Accession No.AY277591)では配列番号41と配列番号42、T11(Schwientekら、2002)では配列番号43と配列番号44、T14では配列番号45と配列番号46、T16では配列番号47と配列番号48、およびT2(Whiteら、1995)では配列番号49と配列番号50として開示した。
1)N−アセチルガラクトサミン転移酵素群のアミノ酸配列を、重複する部分の同一性が最大化するようにし、そして配列ギャップが最小化するように並列させ;
2)Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群が共通するアミノ酸残基(α)を有し、かつ、Wファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群がαに相当する位置においてαと異なる共通するアミノ酸残基(β)を有するような、アミノ酸残基を見出し;そして
3)前記アミノ酸残基の位置において、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基αをβに置換する、あるいはWファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基βをαに置換する
ことを含む方法によって製造され、並びに
タンパク質またはペプチドのセリンまたはスレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性が、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して、増加または減少している、前記改変体を提供することである。
さらに、本発明の目的は、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して、その活性が増加または減少しているN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体を製造する方法を提供する。
本発明者らは、N−アセチルガラクトサミン転移酵素群のアミノ酸配列を、重複する部分が同一性が最大化するようにし、そして配列ギャップが最小化するように並列させ、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群が共通するアミノ酸残基(α)を有し、かつ、Wファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群がαに相当する位置においてαと異なる共通するアミノ酸残基(β)を有するような、アミノ酸残基を見出し、アミノ酸残基(α)をβに置換することによって、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素の活性が改変前に比べて増加させることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、1)N−アセチルガラクトサミン転移酵素群のアミノ酸配列を、重複する部分の同一性が最大化するようにし、そして配列ギャップが最小化するように並列させ;2)Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群が共通するアミノ酸残基(α)を有し、かつ、Wファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群がαに相当する位置においてαと異なる共通するアミノ酸残基(β)を有するような、アミノ酸残基を見出し;そして、3)前記アミノ酸残基の位置において、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基αをβに置換する、あるいはWファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基βをαに置換することを含む方法によって製造され、並びにタンパク質またはペプチドのセリンまたはスレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性が、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して、増加または減少している、N−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体が提供される。
本発明の一態様において、本発明の改変体は、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体である。前記N−アセチルガラクトサミン転移酵素は、好ましくは、改変前のアミノ酸配列が配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、または配列番号7であるアミノ酸配列を有していてもよい。ここで、配列番号1、配列番号3、配列番号5、および配列番号7は、各々、pp−GalNAc−T17、T9、T18、およびT8のアミノ酸配列に相当する。
本発明の一態様において、本発明の改変体は、配列番号1のアミノ酸残基234に相当するアミノ酸、アミノ酸残基256に相当するアミノ酸残基、アミノ酸残基343に相当するアミノ酸残基、アミノ酸残基350に相当するアミノ酸残基、アミノ酸残基377に相当するアミノ酸残基のうちの1つまたは複数のアミノ酸残基が改変されていてもよい。好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基234に相当するアミノ酸残基TrpのAlaへの改変、アミノ酸残基256に相当するアミノ酸残基AlaのLeuへの改変、アミノ酸残基343に相当するアミノ酸残基LeuのTyrへの改変、アミノ酸残基350に相当するアミノ酸残基TyrのTrpへの改変、およびアミノ酸残基377に相当するアミノ酸残基AlaのGlyへの改変のうちの1つまたは複数のアミノ酸が改変されていてもよい。
本発明の一態様において、改変体の酵素活性が、対応する改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して増加している改変体が提供される。改変体の活性は、改変前と比較して、好ましくは100倍以上、より好ましくは50倍以上、さらにより好ましくは25倍以上、最も好ましくは10倍以上である。
本発明の一態様において、改変体の酵素活性が、対応する改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して減少している改変体が提供される。改変体の活性は、改変前と比較して、好ましくは、1/100以下、より好ましくは1/50以下、さらにより好ましくは1/25以下、最も好ましくは、1/10以下である。
本発明によれば、本発明のN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体を製造する方法が提供される。本発明の製造方法は、好ましくは、1)N−アセチルガラクトサミン転移酵素群のアミノ酸配列を、重複する部分の同一性が最大化するようにし、そして配列ギャップが最小化するように並列させ;2)Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群が共通するアミノ酸残基(α)を有し、かつ、Wファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群がαに相当する位置においてαと異なる共通するアミノ酸残基(β)を有するような、アミノ酸残基を見出し;そして、3)前記アミノ酸残基の位置において、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基αをβに置換する、あるいはWファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基βをαに置換する工程を含む。
本発明によれば、N−アセチルガラクトサミン転移酵素の活性を増加または減少させる方法が提供される。本発明の方法は、好ましくは、1)N−アセチルガラクトサミン転移酵素群のアミノ酸配列を、重複する部分の同一性が最大化するようにし、そして配列ギャップが最小化するように並列させ;2)Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群が共通するアミノ酸残基(α)を有し、かつ、Wファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群がαに相当する位置においてαと異なる共通するアミノ酸残基(β)を有するような、アミノ酸残基を見出し;そして、3)前記アミノ酸残基の位置において、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基αをβに置換する、あるいはWファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基βをαに置換する工程を含む。
本発明によれば、本発明の改変体をコードする核酸(以下、「本発明の核酸」という)が提供される。
本発明によれば、本発明の核酸を含み、宿主細胞中で該核酸を発現することができる組換えベクター(以下、「本発明の組換えベクター」という)が提供される。本発明の組換えベクターは、好ましくは発現ベクターである。
本発明によれば、本発明の核酸が導入され、該核酸を発現する宿主細胞が提供される。
本発明によれば、本発明の改変体を含む医薬組成物が提供される。
1.N−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体の作製
(1)N−アセチルガラクトサミン転移酵素
本発明者らのグループは、既に、N−アセチルガラクトサミン転移酵素としてpp−GalNAc−T10、T12、T14、T15、T16、T17、およびT18をコードする遺伝子のクローニングに成功し、その塩基配列および推定アミノ酸配列を決定している(国際公開WO03/057887)。これらN−アセチルガラクトサミン転移酵素をコードする核酸の塩基配列、推定アミノ酸配列、基質特異性、および組織における発現分布に関しては、国際公開WO03/057887に開示される。なお、pp−GalNAc−T10は、国際公開WO03/057887において開示するGalNAc−T13に該当し、pp−GalNAc−T12はGalNAc−T14、pp−GalNAc−T14はGalNAc−T12、pp−GalNAc−T15はGalNAc−T17、pp−GalNAc−T16はGalNAc−T11、pp−GalNAc−T17はGalNAc−T16に該当し、およびpp−GalNAc−T18はGalNAc−T15に該当する(表1参照)。その他全てのN−アセチルガラクトサミン転移酵素については、表1に記載の先行技術文献に開示されている。
本明細書においては、本発明の理解のために、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素一般の性質について以下に簡単に説明する。なお、N−アセチルガラクトサミン転移酵素の塩基配列および該核酸がコードする核酸配列の情報は、前述した表1の技術文献に記載されるとおりであるが、該酵素のうちpp−GalNAc−T17については、本明細書において、該酵素をコードしている核酸を配列番号2に記載し、該核酸がコードする推定アミノ酸配列を配列番号1に記載する。
N−アセチルガラクトサミン転移酵素は次の性質を有する。
作用: コアタンパク質とポリペプチドのセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する。触媒する反応を反応式で記載すると、
UDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン+ペプチド(セリン/スレオニン)⇔UDP+N−アセチル−β−D−ガラクトサミン−1−セリン/スレオニン−ペプチド)
基質特異性: コアタンパク質のポリペプチドのセリン、スレオニン残基の水酸基
本発明の改変体に使用されるN−アセチルガラクトサミン転移酵素は、本明細書に記載した特徴を有する限り、その起源、製法等は限定されない。即ち、N−アセチルガラクトサミン転移酵素は、天然産のタンパク質、遺伝子工学的手法により組換えDNAから発現されたタンパク質、または化学合成タンパク質の何れでもよい。
(2)N−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体
本発明のN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体(以下、単に「本発明の改変体」という)は、本明細書に記載した特徴を有する限り、その起源、製法などは限定されない。即ち、本発明の改変体は、遺伝子工学的手法によりDNAから発現させた組換えタンパク質、または化学合成タンパク質の何れであってもよい。あるいは、本明細書に記載した特徴を有する限り、人為的に改変を施したものでなく天然に得られたタンパク質であってもよい。あるいは、タンパク質レベルで天然由来のタンパク質に改変を施したものでもよい。
本発明によれば、1)N−アセチルガラクトサミン転移酵素群のアミノ酸配列を、重複する部分の同一性が最大化するようにし、そして配列ギャップが最小化するように並列させ;2)Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群が共通するアミノ酸残基(α)を有し、かつ、Wファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群がαに相当する位置においてαと異なる共通するアミノ酸残基(β)を有するような、アミノ酸残基を見出し;そして、3)前記アミノ酸残基の位置において、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基αをβに置換する、あるいはWファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基βをαに置換することを含む方法によって製造され、並びにタンパク質またはペプチドのセリンまたはスレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性が、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して、増加または減少している、N−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体が提供される。
ここで、本明細書において使用する用語「Yファミリー」とは、N−アセチルガラクトサミン転移酵素群のうち酵素活性が高い酵素群と低い酵素群とを大別した場合に、酵素活性が低い酵素群をいう。ここで、酵素活性が低い酵素群の活性は、高い酵素群と比較して、好ましくは10倍以下、より好ましくは25倍以下、さらにより好ましくは50倍以下、最も好ましくは100倍以下である。好ましくは、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素は、pp−GalNAc−T17、T9、T18、およびT8である。なお、本明細書において、pp−GalNAc−T17、T9、T18、およびT8のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1、配列番号3、配列番号5、および配列番号7に記載される。
本明細書において使用する用語「Wファミリー」とは、N−アセチルガラクトサミン転移酵素群のうち酵素活性が高い酵素群をいう。好ましくは、Wファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素は、pp−GalNAc−T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T10、T11、T12、T13、T14、T15、T16である。なお、pp−GalNAc−T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T10、T11、T12、T13、T14、T15、およびT16のアミノ酸配列は、表1に記載の各文献にアミノ酸配列および塩基配列は開示され、これら文献は全て本明細書において援用される。
本発明の改変体は、以下の工程によって作製することができる。即ち、1)N−アセチルガラクトサミン転移酵素群のアミノ酸配列を、重複する部分の同一性が最大化するようにし、そして配列ギャップが最小化するように並列させ;2)Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群が共通するアミノ酸残基(α)を有し、かつ、Wファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群がαに相当する位置においてαと異なる共通するアミノ酸残基(β)を有するような、アミノ酸残基を見出し;そして、3)前記アミノ酸残基の位置において、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基αをβに置換する、あるいはWファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基βをαに置換することを含む方法によって製造することができる。
本明細書において、N−アセチルガラクトサミン転移酵素群のアミノ酸配列を、重複する部分の同一性が最大化するようにし、そして配列ギャップが最小化するように並列させる方法は、目視検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この配列比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較する方法によってなされる。当業者により使用される配列比較のプログラムでは、例えば、GENETYX(SOFTWARE DEVELOPMENT CO.,LTD)、Clustal W.(Thompson,J.E.et al.,Nucleic Acids Research,22,4673−4680(1994))である。プログラムによる配列比較の各種条件(パラメーター)は、ソフトウェアに添付の仕様書、または専用サイトに詳説されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。なお、GENETYXは、核酸解析、タンパク質解析用の遺伝情報処理ソフトウェアで、通常のホモロジー解析やマルチアラインメント解析の他、シグナルペプチド予測やプロモーター部位予測、二次構造予測が可能である。また、本明細書で用いたホモロジー解析プログラムは、高速・高感度な方法として多用されているLipman−Pearson法[Lipman,D.J.&Pearson,W.R.,Science,277,1435−1441(1985)]を採用している。
本発明によれば、前述した配列比較によって、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群が共通するアミノ酸残基(α)を有し、かつ、Wファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群がαに相当する位置においてαと異なる共通するアミノ酸残基(β)を有するような、アミノ酸残基を見出し、その後、前記アミノ酸残基の位置において、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基αをβに置換する、あるいはWファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群の改変体の場合は、アミノ酸残基βをαに置換することよって製造することができる。
例えば、図3において、pp−GalNAc−T17のアミノ酸残基234番目の位置を基準にすると、YファミリーのT17、T9、T18、T8では全てTrp(α)として共通である。一方、このαに対応する位置において、WファミリーのT1、T13、T3、T6、T12、T4、T15、T10、T20、T7、T5、T11、T19、T14、T16、T2では全てAla(β)となっている。本発明は、例えばこの位置のα(Trp)をβ(Ala)にすることにより活性を変えるものである。
本発明の一態様としては、図3および図4に示すように、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素群が有する共通のアミノ酸残基(α)としては、限定されるわけではないが、アミノ酸残基Trp(ppGalNAc−T17の234番目)、Ala(256番目)(以上、図3)、Leu(343番目)、Tyr(350番目)、Ala(377番目)(以上、図4)が例示される。アミノ酸残基αに相当する位置にあり、αと異なる共通するWファミリーのアミノ酸残基(β)としては、各々、Ala(ppGalNAc−T1の197番目)、Leu(219番目)(以上、図3)、Tyr(309番目)、Trp(316番目)、Gly(343番目)(以上、図4)が相当する。
Wファミリーにおいては、アミノ酸残基βが全てのN−アセチルガラクトサミン転移酵素において共通している必要はなく、1つ程度異なっていてもよい。例えば、ppGalNAc−T7ではTyr(311番目)となっているが、これに相当する位置における他のWファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素では全てLeu(例えば、ppGalNAc−T1の219番目)となっている。このような態様である改変体も本発明に含まれる。
本発明の改変体に使用されるN−アセチルガラクトサミン転移酵素をコードする核酸、および該核酸がコードする推定アミノ酸は、前述のようにすでに公知となっている。したがって、本発明の改変体の発現、単離及び精製は、任意公知の技術を用いて行うことができる。例えば、非限定的に以下の手法を適用することができる。
本発明の改変体は、簡単には、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素をコードするcDNAを鋳型として、標的とするアミノ酸残基(例えば、Yファミリーのアミノ酸残基α)をコードする3塩基(コドン)を他のアミノ酸残基(例えば、Wファミリーのアミノ酸残基β)のコドンに置換したPCR用のプライマーを用いて行うことができる。同一のN−アセチルガラクトサミン転移酵素に点突然変異を複数箇所導入するには、各種プライマーの組み合わせによって達成される。このような特定の1つまたは複数のアミノ酸残基を置換させる方法は、公知の点突然変異法(Mullis,K.B.,In Les Prix Nobel(ed.T.Frangsmyr),p.107.Almqvist and Wilsell International,Stockholm,1993; Smith,M.,In Les Prix Nobel(ed.T.Frangsmyr),p.123.Almqvist and Wilsell International,Stockholm,1993)を参照して行うことも可能である。具体的には、後述する実施例2に記載したように、点突然変異を有する改変体を構築することができる。なお、本発明の改変体は、例えば、後述の実施例3に従って、点突然変異を施した核酸(好ましくはDNA)を大腸菌、酵母、昆虫細胞、または動物細胞に、それぞれの宿主で増幅可能な発現ベクターを用いて導入および発現させることにより大量に得ることができる。
本発明の一態様において、本発明の改変体は、好ましくは配列番号1のアミノ酸残基234に相当するアミノ酸残基、アミノ酸残基256に相当するアミノ酸残基、アミノ酸残基343に相当するアミノ酸残基、アミノ酸残基350に相当するアミノ酸残基、およびアミノ酸残基377に相当するアミノ酸残基のうちの1つまたは複数のアミノ酸残基が改変されている改変体である。このうち、配列番号1のアミノ酸残基234、および256番目に相当するアミノ酸残基は、図3に示されるGT1モチーフと呼ばれるドメインに属する(図3)。また、配列番号1のアミノ酸残基343、350、および377番目に相当するアミノ酸残基は、図4に示されるGal/GalNAc−Tモチーフと呼ばれるドメインに属する。したがって、本発明の改変体は、好ましくは、GT1モチーフ、および/またはGal/GalNAc−Tモチーフに属するアミノ酸残基の置換である。ここで、本明細書において、GT1モチーフとは、糖転移酵素(Glycosyl Transferase)に一般的に保存されている、二価カチオンMn+と結合するDXH配列を含む保存性の高い領域をいい、Gal/GalNAc−Tモチーフとは、GalNAc転移酵素−β1−4ガラクトース転移酵素間に強く保存されている領域をいう。本発明の改変体は、Yファミリーにおいて置換されているアミノ酸残基が、上記のドメインに限定されず、これら以外のドメインに属しているものであってよい。
より好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基234に相当するアミノ酸残基TrpのAlaへの改変、アミノ酸残基256に相当するアミノ酸残基AlaのLeuへの改変、アミノ酸残基343に相当するアミノ酸残基LeuのTyrへの改変、アミノ酸残基350に相当するアミノ酸残基TyrのTrpへの改変、およびアミノ酸残基377に相当するアミノ酸残基AlaのGlyへの改変のうち1つまたは複数のアミノ酸残基が改変されている改変体である。
さらにより好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基343に相当するアミノ酸残基LeuのTyrへの改変、アミノ酸残基350に相当するアミノ酸残基TyrのTrpへの改変、およびアミノ酸残基377に相当するアミノ酸残基AlaのGlyへの改変のうちの1つまたは複数のアミノ酸残基が改変されている改変体である。改変箇所は、1つでもよく、複数でもよい。
最も好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基343に相当するアミノ酸残基LeuがTyrに改変され、およびアミノ酸残基350に相当するアミノ酸残基TyrがTrpに改変されている改変体である。
本発明によれば、本発明の改変体は、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して、酵素活性が増加または減少している。
本発明の一態様では、Yファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体は、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して、酵素活性が増加することが好ましい。Yファミリーの酵素活性の増加は、好ましくは100倍以上、より好ましくは50倍以上、さらにより好ましくは20倍以上、最も好ましくは10倍以上である。具体的には、後述する実施例6に記載したように、Yファミリーに属するpp−GalNAc−T17のアミノ酸配列に2箇所の点突然変異を施した場合、酵素活性が約100倍増加している。
本発明の一態様では、Wファミリーに属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体は、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して、酵素活性が減少することが好ましい。Wファミリーの酵素活性の減少は、好ましくは1/100以下、より好ましくは1/50以下、さらにより好ましくは1/25以下、最も好ましくは1/10以下である。
(3)N−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体をコードする核酸
本発明によれば、N−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体をコードする核酸(以下、「本発明の核酸」という)が提供される。上記核酸は、一本鎖および二本鎖型両方のDNA、およびそのRNA相補体も含む。DNAには、例えば天然由来のDNA、組換えDNA、化学合成したDNA、PCRによって増幅されたDNA、およびそれらの組合せが含まれる。使用する核酸としては、DNAが好ましい。本明細書において、ある特定の塩基配列について記載する場合、特に言及しない限り、その相補鎖も含む。
本明細書では、配列番号1および配列番号2において、pp−GalNAc−T17のアミノ酸配列、およびそれをコードする塩基配列が開示されている。また、pp−GalNAc−T17以外の酵素のアミノ酸配列およびそれをコードする塩基配列は、WO03/057887、あるいは本明細書に記載した先行技術文献に開示されている。当該配列またはその一部を利用して、ハイブリダイゼーション、PCR等の核酸増幅反応などの遺伝子工学的手法により、他の生物種から同様の生理活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を容易に単離することができる。このような場合、それらの遺伝子、及び当該遺伝子がコードするタンパク質またはポリペプチドも、本発明のN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体を得るために利用可能である。
前述したN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体におけるアミノ酸残基αおよびβ以外のアミノ酸残基は、活性を変更しない限り、変更することが可能である。相同遺伝子のスクリーニングのために使用するハイブリダイゼーション条件は特に限定されないが、一般的にはストリンジェントな条件下で行うことが好ましい。ここで、「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高程度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,第6−7章,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および約60℃、0.5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。好ましくは中程度にストリンジェントな条件は、約50℃、2×SSCのハイブリダイゼーション条件を含む。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。一般に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度でのハイブリダイゼーション(例えば、約65℃、6×SSCないし0.2×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、最も好ましくは0.2×SSCのハイブリダイゼーション)および/または洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、およびおよそ68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液では、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)にSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を代用することが可能であり、洗浄はハイブリダイゼーションが完了した後で15分間行う。当業者に知られていて、以下にさらに記載したように、ハイブリダイゼーション反応と二本鎖の安定性を支配する基本原理を適用することによって望ましい度合いのストリンジェンシーを達成するためには、洗浄温度と洗浄塩濃度を必要に応じて調整することが可能であると理解すべきである(例えば、Sambrookら、2001を参照されたい)。核酸を未知配列の標的核酸へハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドの長さはハイブリダイズする核酸のそれであると仮定される。既知配列の核酸をハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドの長さは核酸の配列を並列し、最適な配列相補性をもつ単数または複数の領域を同定することによって決定可能である。50塩基対未満の長さであることが予測されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)より5−25℃低くなければならず、Tmは、以下の等式により決定される。長さ18塩基対未満のハイブリッドに関して、Tm(℃)=2(A+T塩基数)+4(G+C塩基数)。18塩基対を超える長さのハイブリッドに関しては、Tm=81.5℃+16.6(log10[Na+])+41(モル分率[G+C])−0.63(%ホルムアミド)−500/nであり、ここで、Nはハイブリッド中の塩基数であり、そして[Na+]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオン濃度である(1×SSCの[Na+]=0.165M)。好ましくは、こうしたハイブリダイズする核酸は各々、少なくとも8ヌクレオチド(または、より好ましくは、少なくとも15ヌクレオチド、または少なくとも20ヌクレオチド、または少なくとも25ヌクレオチド、または少なくとも30ヌクレオチド、または少なくとも40ヌクレオチド、または最も好ましくは少なくとも50ヌクレオチド)、またはそれがハイブリダイズする核酸の長さの少なくとも1%(より好ましくは少なくとも25%、または少なくとも50%、または少なくとも70%、そして最も好ましくは少なくとも80)である長さを有し、それがハイブリダイズする核酸と少なくとも50%(より好ましくは少なくとも70%、少なくとも 75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、または少なくとも99%、そして最も好ましくは少なくとも99.5%)の配列同一性を有する。ここで配列同一性は、上記により詳しく記載されるように、重複部分と同一性を最大化する一方、配列ギャップを最小化するように並列された、ハイブリダイズする核酸の配列を比較することによって決定される。
核酸増幅反応は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saiki R.K.,et al.,Science,230,1350−1354(1985))、ライゲース連鎖反応(LCR)(Wu D.Y.,et al.,Genomics,4,560−569(1989); Barringer K.J.,et al.,Gene,89,117−122(1990); Barany F.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,189−193(1991))および転写に基づく増幅(Kwoh D.Y.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,1173−1177(1989))等の温度循環を必要とする反応、並びに鎖置換反応(SDA)(Walker G.T.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,392−396(1992); Walker G.T.,et al.,Nuc.Acids.Res.,20,1691−1696(1992))、自己保持配列複製(3SR)(Guatelli J.C.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,1874−1878(1990))およびQβレプリカーゼシステム(Lizardiら、BioTechnology 6,p.1197−1202(1988))等の恒温反応を含む。また、欧州特許第0525882号に記載されている標的核酸と変異配列の競合増幅による核酸配列に基づく増幅(Nucleic Acid Sequence Based Amplification:NASABA)反応等も利用可能である。好ましくはPCR法である。
核酸の同一性パーセントは、視覚的検査および数学的計算によって決定することが可能である。あるいは、2つの核酸配列のパーセント同一性は、目視検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マジソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereuxら、1984、Nucl.Acids Res.12:387)。この「GAP」プログラムの使用により、2つの核酸配列の比較の他に、2つのアミノ酸配列の比較、核酸配列とアミノ酸配列との比較を行うことができる。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、および非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、SchwartzおよびDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide SequenceおよびStructure)」国立バイオ医学研究財団、353−358頁、1979により記載されるような、GribskovおよびBurgess,Nucl.Acids Res.14:6745,1986の加重アミノ酸比較マトリックス;または他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;またはヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:および(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW−BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry,1993)により決定されれ;WoottonおよびFederhen,1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol.266:544−71も参照されたい)、または、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry,1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、および(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE−スコア(KarlinおよびAltschul,1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE−スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または1e−100である。
(3)組換えベクターと形質転換体
プラスミド等のベクターに本発明の改変体をコードする核酸のDNA断片を組込む方法としては、例えば、Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,1.1(2001)に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造製等)を用いることもできる。このようにして得られる組換えベクター(例えば、組換えプラスミド)は、宿主細胞(例えば、大腸菌DH5α、DH10BAC、TB1、LE392、XL−LE392、またはXL−1Blue等)に導入される。
プラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,16.1(2001)に記載の塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃などを用いる方法などが挙げられる。
ベクターは、簡単には当該技術分野において入手可能な組換え用ベクター(例えば、プラスミドDNA等)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるベクターの具体例としては、大腸菌由来のプラスミドとして、例えば、pDONR(商標)201、pBluescript、pUC18、pUC19、pBR322、pTAPlus、pDrive、pETBlue−1等が例示されるが、これらに限定されない。
当業者であれば制限末端は発現ベクターに適合するように適宜選択することが可能である。発現ベクターは、本発明の改変体を発現させたい宿主細胞に適したものを当業者であれば適宜選択することができる。このように発現ベクターは、本発明の改変体が目的の宿主細胞中で発現し得るように遺伝子発現に関与する領域(プロモーター領域、エンハンサー領域、オペレーター領域等)が適切に配列されており、さらに本発明の改変体をコードする核酸が適切に発現するように構築されていることが好ましい。また、発現ベクターの構築は、制限処理および連結作業を必要としない、Gatewayシステム(インビトロジェン社)を用いても行うことができる。Gatewayシステムとは、PCR産物の方向性を維持したままクローニングができ、また、DNA断片を適切に改変した発現ベクターにサブクローニングを可能にした部位特異的な組換えを利用したシステムである。具体的には、PCR産物およびドナーベクターから部位特異的な組換え酵素であるBPクロナーゼによってエントリークローンを作成し、その後、このクローンと別の組換え酵素であるLBクロナーゼによって組換え可能なデスティネーションベクターにPCR産物を移入することにより、発現系に対応した発現クローンを調製するものである。最初にエントリークローンを作成すれば、制限酵素やリガーゼで作業する手間のかかるサブクローニングステップが不要である点を特徴の一つとする。
発現ベクターの種類は、原核細胞および/または真核細胞の各種の宿主細胞中で所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、大腸菌用発現ベクターとして、pQE−30、pQE−60、pMAL−C2、pMAL−p2、pSE420等が好ましく、酵母用発現べクターとしてpYES2、pAUR123(サッカロマイセス属)、pPIC3.5K、pPIC9K、pA0815(以上ピキア属)、昆虫細胞用発現ベクターとしてpFastBac、pBacPAK8/9、pBK283、pVL1392、pBlueBac4.5、哺乳類細胞用発現ベクターとしてpDEST12.2、pcDNA3.1、pFLAG−CMV1、pFLAG−CMV3、pDON−AIなどが好ましい。
上記発現ベクターを宿主細胞に組み込み、形質転換体を得ることができる。上記「宿主細胞」として真核細胞(哺乳類細胞、酵母、昆虫細胞等)であっても原核細胞(大腸菌、枯草菌等)であっても使用することができる。該形質転換体を得るための宿主細胞は、特に限定されず、さらに、または、ヒト(例えば、HT1080 FP−10、293、293T、HeLa、SH−SY5Y)、マウス(例えば、Neuro2a、NIH3T3)等由来の培養細胞でもよい。これらはいずれも公知であり、市販されているか(例えば、大日本製薬)、あるいは公共の研究機関(例えば、理研セルバンク)より入手可能である。あるいは、胚、器官、組織若しくは非ヒト個体も使用可能である。
ところで、N−アセチルガラクトサミン転移酵素をコードする核酸は、哺乳類のゲノムライブラリーから発見された核酸であるため、真核細胞を形質転換体の宿主細胞として用いることより天然物に近い性質を有したN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体が得られる(例えば、糖鎖が付加された態様など)と考えられる。従って、宿主細胞としては真核細胞、特に哺乳類細胞を選択することが好ましい。哺乳類細胞としては、具体的には、ヒト由来、ラット由来、マウス由来、アフリカツメガエル由来、ハムスター由来、またはサル由来の細胞若しくはそれらの細胞から樹立した培養細胞株などが例示される。また、宿主細胞としての大腸菌、酵母または昆虫細胞は、具体的には、大腸菌(DH5α、DH10BAC、M15M、JM109、BL21等)、酵母(INVSc1(サッカロマイセス属)、GS115、KM71(以上ピキア属)など)、昆虫細胞(Sf21、Sf9、BmN4、カイコ幼虫等)などが例示される。
宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用いる場合、一般に発現べクターは少なくとも、プロモーター/オペレーター領域、開始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターおよび複製可能単位から構成される。
宿主細胞として酵母、植物細胞、動物細胞または昆虫細胞を用いる場合には、一般に発現べクターは少なくとも、プロモーター、関始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターを含んでいることが好ましい。またシグナルペブチドをコードするDNA、エンハンサー配列、所望の遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、選択マーカー領域または複製可能単位などを適宜含んでいてもよい。
発現べクタ−において、好ましい開始コドンとしては、メチオニンコドン(ATG)が例示される。また、終止コドンとしては、常用の終止コドン(例えば、TAG、TGA、TAAなど)が例示される。
複製可能単位とは、宿主細胞中でその全DNA配列を複製することができる能力をもつDNAを意味し、天然のプラスミド、人工的に修飾されたプラスミド(天然のプラスミドから調製されたプラスミド)および合成プラスミド等が含まれる。好ましいプラスミドとしては、大腸菌ではプラスミドpQE30、pETまたはpCAL若しくはそれらの人工的修飾物(pQE30、pETまたはpCALを適当な制限酵素で処理して得られるDNAフラグメント)が、酵母ではプラスミドpYES2若しくはpPIC9Kが、また昆虫細胞ではプラスミドpFastBac、pBacPAK8/9等があげられる。
エンハンサー配列、ターミネーター配列については、例えば、それぞれSV40に由来するもの等、当業者において通常使用されるものを用いることができる。
選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができる。例えばジェネティシン(G−418)、テトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシン若しくはネオマイシン、ハイグロマイシンまたはスペクチノマイシン等の抗生物質耐性遺伝子などが例示される。
発現べクターは、少なくとも、上述のプロモータ−、開始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、およびターミネーター領域を連続的かつ環状に適当な複製可能単位に連結することによって調製することができる。またこの際、所望により制限酵素での消化やT4 DNAリガーゼを用いるライゲーション(連結)等の常法により適当なDNAフラグメント(例えば、リンカー、他の制限酵素部位など)を用いることができる。
発現べクターの宿主細胞への導入[形質転換(形質移入)]は従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、細菌(E.coli,Bacillus subtilis等)の場合は、例えばCohenらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972))、プロトプラスト法(Mol.Gen.Gent.,168,111(1979))やコンピテント法(J.Mol.Biol.,56,209(1971))によって、Saccharomyces cervisiarの場合は、例えばHinnenらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1927(1978))やリチウム法(J.B.Bacteriol.,153,163(1983))によって、植物細胞の場合は、例えばリーフディスク法(Science,227,129(1985))、エレクトロポレ−ション法(Nature,319,791(1986))によって、動物細胞の場合は、例えばGrahamの方法(Virology,52,456(1973))、昆虫細胞の場合は、例えばSummerらの方法(Mol.Cell Biol.,3,2156−2165(1983))によってそれぞれ形質転換することができる。なお、組換えベクターの構築およびそれを用いて本発明の核酸を宿主細胞に導入する方法の具体例が実施例4に詳述されている。
(4)タンパク質の単離・精製
近年、遺伝子工学的手法として、形質転換体を培養、生育させて、その培養物、生育物から目的物質を単離・精製する手法が確立されている。
本発明の改変体は、上記の如く調製された発現ベクターを含む形質転換細胞を栄養培地で培養することによって発現(生産)することができる。栄養培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源、無機窒素源若しくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖、メタノールなどが、例示される。無機窒素源若しくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示される。また、所望により他の栄養素(例えば無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン等)など)を含んでいてもよい。培養は、当業界において知られている方法により行われる。培養条件、例えば温度、培地のpHおよび培養時間は、本発明の改変体が大量に生産されるように適宜選択される。
本発明の改変体は、上記培養により得られる培養物より以下のようにして取得することができる。すなわち、本発明の改変体が宿主細胞内に蓄積する場合には、遠心分離やろ過などの操作により宿主細胞を集め、これを適当な緩衝液(例えば、濃度が10〜100mM程度のトリス緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液などの緩衝液であり、pHは用いる緩衝液によって異なるがpH5.0〜9.0の範囲が望ましい)に懸濁した後、用いる宿主細胞に適した方法で細胞を破壊し、遠心分離により宿主細胞の内容物を得る。一方、本発明の改変体が宿主細胞外に分泌される場合には、遠心分離やろ過などの操作により宿主細胞と培地を分離し、培養ろ液を得る。宿主細胞破壊液、あるいは培養ろ液はそのまま、または硫安沈殿と透析を行なった後に、本発明の改変体の単離・精製に供することができる。単離・精製の方法としては、以下の方法が挙げることができる。即ち、当該タンパクに6×ヒスチジンやGST、マルトース結合タンパクといったタグを付けている場合には、一般に用いられるそれぞれのタグに適したアフィニティークロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。一方、そのようなタグを付けずに本発明の改変体を生産した場合には、イオン交換クロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。また、これに加えてゲルろ過や疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィーなどを組み合わせる方法も挙げることができる。
本発明の改変体はまた、精製および同定を容易にするために添加されるペプチドを含んでもよい。こうしたペプチドには、ポリ−Hisまたは米国特許第5,011,912号およびHoppら,Bio/Technology,6:1204,1988に記載される抗原性同定ペプチドが含まれるが、これらに限定さるものではない。こうしたペプチドの1つはFLAG(登録商標)ペプチド(Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号9))であり、該ペプチドは非常に抗原性であり、そしてそれぞれに特異的なモノクローナル抗体が可逆的に結合するエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。また、4E11と称されるネズミハイブリドーマは、本明細書に援用される米国特許第5,011,912号に記載されるように、特定の二価金属陽イオンの存在下で、FLAG(登録商標)ペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生する。4E11ハイブリドーマ細胞株は、寄託番号HB 9259下に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)に寄託されている。FLAG(登録商標)ペプチドに結合するモノクローナル抗体は、Eastman Kodak Co., Scientific Imaging Systems Division、コネチカット州ニューヘブンより入手可能である。
具体的には、本発明の改変体を発現する発現ベクターにFLAGタグのcDNAを挿入し、標識した改変体を発現させ、抗FLAG抗体を用いて改変体の発現を確認することができる。
(5)医薬組成物
本発明において、本発明の改変体は、タンパク質またはペプチドのセリンまたはスレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性が、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して増加することが明らかとなった。したがって、本発明のN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体を含む医薬組成物は、タンパク質のO−グリカンの修飾パターンを変えることができる。
本発明の医薬組成物は、薬学的に受容可能な担体との混合物中に、本発明の改変体を治療上有効な量を含む。本発明の医薬組成物は、全身的にまたは局所的に、好ましくは静脈内、皮下内、筋肉内に非経口的に投与し得る。非経口的に投与可能な改変体の溶液の調剤は、pH、等張性、安全性等を考慮し、当業者の技術範囲内において行い得る。
本発明の医薬組成物の用量用法は、薬剤の作用、例えば、患者の症状の性質および/若しくは重度、体重、性別、食餌、投与の時間、並びに他の臨床的作用を左右する種々の因子を考慮し、診察する医師により決定され得る。当業者は、これらの要素に基づき、本発明の医薬組成物の用量を決定することができる。
あるいは、N−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体をコードする核酸を組込んだ発現ベクターを作製し、生体内の標的部位で発現させるか、あるいは当該発現ベクターを組み込んだ細胞を標的部位に輸送させることにより、標的部位のタンパク質のO−グリカンの修飾パターンを改変し、さらには、その結果として糖タンパク質の高次構造を改変することも可能である。
本発明によれば、改変型N−アセチルガラクトサミン転移酵素を導入することにより、O−グリカンの修飾パターンを変化させることができ、その結果としてO−グリカンの異常によって引き起こされる疾患を予防、または治療するための医薬組成物が提供される。O−グリカンの異常によって引き起こされる疾患とは、例えば、IgA腎症、HEMPAS、Tnポリアグルチネーション症候群、糖尿病および高血糖症に伴うコア2GlcNAc転移酵素誘導による心疾患である。
(6)本発明の改変体を認識する抗体
本発明により、本発明の改変体に免疫反応性である抗体が提供される。こうした抗体は、(非特異的結合と対照的に)抗体の抗原結合部位を介して、該タンパク質に特異的に結合し得る。例えば、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはその断片、変異体若しくは融合タンパク質などを、それぞれに免疫反応性である抗体を産生するための免疫原として使用することが可能である。
より具体的には、タンパク質、断片、変異体、融合タンパク質などは、抗体形成を引き出す抗原決定基またはエピトープを含むが、これら抗原決定基またはエピトープは、直鎖でもよいし、より高次構造(断続的)でもよい。なお、該抗原決定基またはエピトープは、当該技術分野に知られるあらゆる方法によって同定できる。したがって、本発明は、本発明の改変体の抗原性エピトープにも関する。こうしたエピトープは、以下により詳細に記載されるように、抗体、特にモノクローナル抗体を作成するのに有用である。
前記のエピトープは、アッセイにおいて、そしてポリクローナル抗体(若しくは抗血清)または培養ハイブリドーマ由来の上清などの物質から特異的に結合する抗体を精製するための研究試薬として使用可能である。こうしたエピトープまたはその変異体は、固相合成、タンパク質の化学的または酵素的切断などの当該技術分野において公知の技術を用いて、あるいは組換えDNA技術を用いて産生することができる。
本発明の改変体によってあらゆる態様の抗体が誘導される。該タンパク質のポリペプチド全部若しくは一部またはエピトープが単離されていれば、慣用的技術を用いてポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれも調製可能である。例えば、Kennetら(監修),Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York,1980;Burdonら編「生化学実験法10 モノクローナル抗体」東京化学同人、1989を参照されたい。
本発明によれば、本発明のタンパク質に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株も提供される。こうしたハイブリドーマは、慣用的技術によって産生し、そして同定することが可能である。こうしたハイブリドーマ細胞株を産生するための1つの方法は、動物を本発明の酵素タンパク質で免疫し、免疫された動物から脾臓細胞を採取し、該脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させ、それによりハイブリドーマ細胞を生成し、そして該酵素に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することを含む。モノクローナル抗体は、慣用的技術によって回収可能である。こうしたモノクローナル抗体には、キメラ抗体、例えば、ネズミモノクローナル抗体のヒト化型が含まれる。こうしたヒト化型抗体は、ヒトに投与されて免疫原性を減少させるという利点を有する。
また、本発明によれば、上記抗体の抗原結合断片も提供される。慣用的技術によって産生可能な抗原結合断片の例には、FabおよびF(ab’)2断片が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子工学技術によって産生可能な抗体断片および誘導体もまた提供される。このような抗体は、in vitroおよびin vivoのいずれにおいても、本発明の改変体またはそのポリペプチド断片の存在を検出するためのアッセイに使用可能である。また本発明の抗体は、免疫アフィニティークロマトグラフィーによって該タンパク質またはそのポリペプチド断片を精製することにも使用することができる。
実施例1 N−アセチルガラクトサミン転移酵素のYファミリーおよびWファミリーの分類法
Hagenらは、N−アセチルガラクトサミン転移酵素の分子構造から酵素活性領域にはGT1モチーフとGal/GalNAc−Tモチーフが含まれ、触媒活性に関与していると推定している(Hagen,F.K.et al.,J.Biol.Chem.,274,6797−6803,1999)。我々は、18種類のN−アセチルガラクトサミン転移酵素のアミノ酸配列をGENETYX(SOFTWARE DEVELOPMENT CO.,LTD)によりマルチアライメント分析を行い系統樹(図1)を得た。さらに、N−アセチルガラクトサミン転移酵素のアミノ酸配列のマルチアライメント分析(図2)から、少なくとも、pp−GalNAc−T8、T9、T17、およびT18の4つの酵素は、他のpp−GalNAc−Tと比べて、GT1モチーフ領域において2ヶ所(図3)、Gal/GalNAc−Tモチーフ領域において3ヶ所の共通なアミノ酸置換があることを見つけた(図4)。
pp−GalNAc−T17のアミノ酸配列(配列番号1)を参考にして、具体的なアミノ酸残基の置換について以下に説明する:
(1)234番目のトリプトファン(W)は、Wファミリーの相応する位置のアラニン(A)に対応する。
(2)256番目のアラニン(A)は、Wファミリーの相当する位置のロイシン(L)に対応する。
(3)343番目のロイシン(L)は、Wファミリーの相当する位置のチロシン(T)に対応する。
(4)350番目のチロシン(Y)は、Wファミリーの相当する位置のトリプトファン(W)に対応する。
(5)377番目のアラニン(A)は、Wファミリーの相当する位置のグリシン(G)に対応する。
ここで、上記(4)の350番目に相当するアミノ酸残基がチロシン(Y)であるN−アセチルガラクトサミン転移酵素をYファミリーと命名し、それ以外のN−アセチルガラクトサミン転移酵素をWファミリーと命名した。
実施例2 Yファミリーのpp−GalNAc−T17を用いた点突然変異体の構築
pp−GalNAc−T17の点突然変異は、実施例1に示した5ヶ所のアミノ酸残基の全てか、またはそのうちのいくつかを相当する位置のWファミリーのアミノ酸残基に置換するものである。このような点突然変異体の作製は、PCR法を用いて行った(図5参照)。
簡単には、置換アミノ酸残基をコードするヌクレオチドを含むプライマーを設計し、2段階のPCRによって目的の点突然変異体を作製する。第一のPCRでは、プライマーF(5’-GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCATGGCTTCACTGAGAAGAGTCAAAG-3’(配列番号10):下線部は配列番号2のヌクレオチド1−25に相当する)とプライマーA、およびプライマーBとプライマーR(5’-
GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCCTACTTGATGGAGTTCTTAATGGTCCAC- 3’(配列番号11):下線部は配列番号2のヌクレオチド1797−1770に相当する)によってそれぞれ5’側の断片および3’側の断片を増幅する。プライマーAとプライマーBとは、下記に示すように、置換アミノ酸をコードするヌクレオチドを含むものであり、互いに14−30塩基の相補的な配列を有する。さらに、アニーリング、増幅を行った後、第二のPCRを行う。この第二のPCRでは、前記のプライマーFとプライマーRを用いて点突然変異体の全長を増幅する。
以下、pp−GalNAc−T17の各点突然変異体の作製に使用したプライマーAとプライマーBを示す。各プライマーの下線を施したヌクレオチドは変異箇所である。
(1)配列番号1のアミノ酸残基343と350の二置換体(以下、「O6DM」と称する)
1)プライマーA(O6DMR1059)
5’-TTC TCC TCC CCA TAC ATC CAT GCC AGG ATC GTA AAG ACC AAT TTC- 3’(配列番号12)
353-Glu Gly Gly Trp Val Asp Met Gly Pro Asp Tyr Leu Gly Ile Glu-339
(配列番号2のヌクレオチド1015−1059、アンチセンス)
2)プライマーB(O6DMF1018)
5’-TT GGT CTT TAC GAT CCT GGC ATG GAT GTA TGG GGA GGA GAA AAT- 3’(配列番号13)
341-Gly Leu Tyr Asp Pro Gly Met Asp Val Trp Gly Gly Glu Asn-354
(配列番号2のヌクレオチド1019−1062、センス)
(2)配列番号1のアミノ酸残基343の置換体(以下、「O6LY」と称する)
1)プライマーA(O6LY1046R)
5’-AC ATC CAT GCC AGG ATC GTA AAG ACC AAT TTC- 3’(配列番号14)
348-Asp Met Gly Pro Asp Tyr Leu Gly Ile Glu-339
(配列番号2のヌクレオチド1015−1046、アンチセンス)
2)プライマーB(O6LY1005F)
5’-G TTC TTC GGT GAA ATT GGT CTT TAC GAT CCT GG- 3’(配列番号15)
336-Phe Phe Gly Glu Ile Gly Leu Tyr Asp Pro-345
(配列番号2のヌクレオチド1005−1037、センス)
(3)配列番号1のアミノ酸残基350の置換体(以下、「O6YW」と称する)
1)プライマーA(O6YW1068R)
5’-TTC AAT ATT TTC TCC TCC CCA TAC ATC CAT GCC- 3’(配列番号16)
356-Glu Ile Asn Glu Gly Gly Trp Val Asp Met Gly-346
(配列番号2のヌクレオチド1036−1068、アンチセンス)
2)プライマーB(O6YW1029F)
5’-GAT CCT GGC ATG GAT GTA TGG GGA GGA GAA AAT- 3’(配列番号17)
344-Asp Pro Gly Met Asp Val Typ Gly Gly Glu Asp-354
(配列番号2のヌクレオチド1030−1068、センス)
(4)配列番号1のアミノ酸残基377の置換体(以下、「O6AG」と称する)
1)プライマーA(O6AG1149R)
5’-CTT CTT CCG CTC AAT GTG GCC CAC CCG T- 3’(配列番号18)
383-Lys LysArg Glu Ile His Gly Val Arg-375
(配列番号2のヌクレオチド1122−1149、アンチセンス)
2)プライマーB(O6AG1108F)
5’-TC CTT CCT TGC TCA CGG GTG GGC CAC ATT GAG- 3’(配列番号19)
371-Leu Pro Cys Ser Arg Val Gly His Ile Glu-380
(配列番号2のヌクレオチド1109−1140、センス)
(5)配列番号1のアミノ酸残基234と256の二置換体(以下、「O6−2N」と称する)
1)プライマーA(O6WA747R)
5’-CAC GTG GGC ATC AAA GAA GCC AGT GAC CTG CCC GGT AGC CAC CTT CGC GCC CTC AAT- 3’(配列番号20)
249-Val His Ala Asp Phe Phe Gly Thr Val Gln Gly Thr Ala Val Lys Ala Gly Glu Ile-231
(配列番号2のヌクレオチド691−747、アンチセンス)
2)プライマーB(O6AL721F)
5’-GTC ACT GGC TTC TTT GAT GCC CAC GTG GAA TTC ACC GCT GGC TGG CTT GAG CCG GTT- 3’(配列番号21)
241-Val Thr Gly Phe Phe Asp Ala His Val Glu Phe Thr Ala Gly Trp Leu Glu Pro Val-259
(配列番号2のヌクレオチド721−777、センス)
上記のようなプライマーの設計により各種点突然変異体を作製することができるが、O6DMの改変体の作製を一例として説明する。
野生型pDONR201−RO6プラスミドを鋳型とし、第一のPCR−1ではプライマーFとプライマーO6DMR1059、第一のPCR−2ではプライマーO6DMF1018とプライマーRを用いて行った。増幅は25μlの反応系において、1ng/μlの鋳型DNA、10μMの各プライマー、5 Units Expand High Fidelity PCR system(Roche Cat.No.1146 173)を用いて、95℃30秒、58℃45秒、72℃1分を20サイクル行う反応条件で増幅し、それぞれ957bpと782bpのDNA断片を得た。増幅されたDNA断片はSR−400ゲルろ過カラム(アマシャム社)を用いて精製した。第一のPCRによって得られたPCR精製産物(各1μl)を鋳型DNAとし、第二のPCRを行った。第2のPCRでは、まず、10μlの反応系として、第一のPCRによるDNA断片をアニーリング(98℃、5分)し、鋳型DNAを伸長(72℃、10分、Expand High Fidelity PCR system(Roche Cat.No.1146 173))した。その後、前述のプライマーFとプライマーRをそれぞれの最終濃度が10μMとなるように添加し、最終反応系が25μlになるように調製し、95℃30秒、58℃45秒、72℃2分を20サイクル行った。得られたDNA断片を精製し、GATAWAY SYSTYEM pDONR201のドナーベクター(インビトロジン社)にクローニングし、配列を確認した。
実施例3 発現ベクターの構築
(1)GatewayシステムによるpFastBacへの組込み
(i)エントリークローンの作製
上記の実施例2で得られた各種改変体のDNA断片を精製した後、BP Clonase反応によってpDONR201に組み込み、エントリークローンを作成した。目的のDNA断片5μl、pDONR201 1μl(150ng)、反応緩衝液2μl、BP Clonase mix 2μlを25℃で1時間インキュベートして反応させた。Proteinase Kを1μl加えて37℃で10分間インキュベートした後、反応を停止した。その後、全量(11μl)をコンピテントセル(大腸菌DH5α)100μlと混合し、ヒートショックの後、カナマイシンを含むLBプレートにまいた。翌日コロニーをとり、直接PCRで目的DNAを確認し、ベクターを抽出および精製した。変異遺伝子の塩基配列の全長を確認した。
(ii)発現クローンの作製
エントリークローンは、DNA挿入部の両側にラムダファージが大腸菌から切り出される際の組換え部位であるattLを有するため、LR Clonase(ラムダファージの組換え酵素Int、IHF、Xisを混合したもの)とデスティネーションベクターと混合することにより、DNA挿入部がデスティネーションベクターに移り、発現クローンが作製される。具体的な工程は以下のとおりである。
まず、エントリークローン1μl、pFBIFを0.5μl(75ng)、LR反応緩衝液2μl、TE 4.5μl、LR Clonase mix 2μlを25℃で1時間反応させた。その後、Proteinase Kを1μl加えて37℃で10分間インキュベートさせ、反応を終了させた(この組換え反応でpFBIF−GalNAc−Tが生成される)。
(2)Bac−to−BacシステムによるBacmidの作製
続いて、Bac−to−Bacシステム(インビトロジェン社)を用いて上記pFBIF−GalNAc−TとpFastBacとの間で組換えを起こさせ、昆虫細胞中で増殖可能なBacmidにGalNAc−Tその他の配列を挿入した。このシステムはTn7の組換部位を利用して、Bacmidを含む大腸菌(DH10BAC)に目的遺伝子を挿入したpFastBacを導入するだけで、ヘルパープラスミドから産生される組換えタンパク質によって目的の遺伝子がBacmidへ取り込まれるというものである。またBacmidにはlacZ遺伝子が組み込まれており、古典的な青(挿入なし)−白(挿入あり)コロニーによる選択が可能である。
上記の精製ベクター(pFBIF−GalNAc−T)をコンピテントセル(大腸菌DH10BAC)50μlと混合し、ヒートショック後、カナマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、Bluo−gal、及びIPTGを含むLBプレートにまいた。翌日、白い単独コロニーをさらに培養し、Bacmidを回収した。
実施例4 昆虫細胞へのBacmidの導入
白コロニーから得られたBacmidに目的とする配列が挿入されていることを確認した後、Bacmidを昆虫細胞(Sf21)に導入した。35mmのシャーレにSf21細胞9×105 cell/2ml(抗生物質を含むSf−900II)を加え、27℃で1時間培養することによって細胞を接着させた。(1)溶液A:精製したbacmid DNA 5μlに抗生物質を含まないSf−900II 100μlを加えたものである。(2)溶液B:CellFECTIN Reagent 6μlに抗生物質を含まないSf−900II 100μlを加えたものである。その後、溶液Aおよび溶液Bを丁寧に混合して15〜45分間、室温でインキュベートした。細胞が接着したことを確認して、培養液を吸引・除去し、抗生物質を含まないSf−900II 2mlを加えた。溶液Aと溶液Bを混合して調製した溶液(lipid−DNA complexes)に抗生物質を含まないSf900II 800μlを加えて丁寧に混和した。培養液を吸引・除去し、細胞に希釈したlipid−DNA complexes溶液を添加し、27℃で5時間インキュベートした。その後、Transfection mixturesを除き、抗生物質を含むSf−900II培養液2mlを加えて27℃で72時間インキュベーションした。Transfectionから72時間後にピペッティングにより細胞を剥がし、細胞懸濁液を回収した。この細胞懸濁液を3000rpmで10分間遠心し、上清をチューブに保存した(上清を一次ウイルス液とした)。
T75培養フラスコにSf21細胞1×107 cell/20ml Sf−900II(抗生物質入り)を加えて、27℃で1時間インキュベートした。細胞が接着したことを確認後、前記の一次ウイルスを800μl添加して、27℃で48時間培養した。48時間後にピペッティングにより細胞を剥がし、細胞懸濁液を回収した。この細胞懸濁液を3000rpm、10分間遠心し、上清をチューブに保存した(上清を二次ウイルス液とした)。
さらに、T75培養フラスコにSf21細胞1×107 cell/20ml Sf−900II(抗生物質入り)を加えて、27℃で1時間インキュベートした。細胞が接着したことを確認したのち、二次ウイルス液1000μlを添加して、27℃で72〜96時間培養した。培養後にピペッティングにより細胞を剥がし、細胞懸濁液を回収した。この細胞懸濁液を3000rpm、10分間遠心し、上清をチューブに保存した(上清を三次ウイルス液とした)。
さらに、100ml用スピナーフラスコにSf21細胞を6×105cells/ml濃度で100mlを加え、三次ウイルス液を1ml添加した。27℃で約96時間培養した後に、細胞懸濁液を回収した。この細胞懸濁液を3000rpm、10分間遠心し、上清をチューブに保存した(この上清を四次ウイルス液とした)。
一次ウイルス液から三次ウイルス液を調製するまでに得られるセルペレットをソニケーションし(ソニケーション緩衝液:20mM HEPES pH7.5、2% Triton X−100、1×Protease inhibitor cocktail)、細胞粗抽出液をH2Oで20倍に希釈し、常法によりSDS−PAGEによる電気泳動を行った。その後、ウエスタンブロッテイングを行い、それぞれ目的とする改変体の発現を確認した。FLAGで標識された改変体(FLAG−改変体)に対する検出用抗体として、抗FLAG M2−ペルオキシダーゼ(A−8592、SIGMA社)を用いた。各改変体は、推定アミノ酸配列から計算した分子量とほぼ同じ位置にバンドとして検出された(データ示さず)。
実施例5 各改変体のレジン精製
前記で調製した三次感染のボトルからさらに四次感染をさせ、両ボトルからペレットと上清を回収し、遠心分離後(5000rpm、10分を2回)、ペレットをソニケーションした(ソニケーション緩衝液:20mM HEPES pH7.5、2% Triton X−100、1×Protease inhibitor cocktail)、ペレット粗抽出液と上清についてタンパク質定量(BIO−RAD社、DC Protein Assay Kit)した。タンパク量を調整した後、SDS−PAGE、ウエスタンブロッテイングで改変体の発現を確認した。この結果から精製には、もっとも相対的に発現量の多い、四次感染のFLAG−改変体の上清を使用することとした。上清20mlにNaN3(0.05 %)、NaCl(150mM)、CaCl2(2mM)、抗M1レジン(Sigma 社)(100μl)を混合し、4℃で一夜攪拌した。翌日、遠心(3000rpm、5分、4℃)してペレットを回収し、TBSを900μl加えて2回洗浄遠心分離(2000rpm、5分、4℃)した。ペレットを200μlの2−4mM EDTA・TBSに12時間浮遊させ、Millipore社の簡易フィルター(Ultrafree−MC)を通して、この上清を活性測定用の酵素源とした。上記のように精製した改変体をウエスタンブロッテイングでタンパク質定量を行った。なお、0−450ngのFLAG−BPA(シグマ社)タンパク質を検量タンパク質とした。
実施例6 各改変体の受容体基質へ活性測定
改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素の活性と比較して、各改変体の活性変化を測定するために、N末端にFAMで標識した合成ペプチドMuc1a(FAM−AHGVTSAPDTR(配列番号22)(サワディー・テクノロジー社)を受容体基質として、供与体基質としてUDP−GalNAc(シグマ社)を用いて酵素活性を測定した。
反応液は、受容体基質(50μM)、Tris−HCl緩衝液(pH7.4)(25mM)、MnCl2(10mM)、UDP−GalNAc(250nM)(カッコ内は最終濃度を示す)とした。この反応液にGalNAc−T酵素液を10μl加えて、さらにH2Oを加えて全量を20μlとした。
上記反応混合液を37℃で60分、120分、210分、360分反応させ、0.5M
EDTAで反応を終了させた。反応終了後、H2Oを40μl加え、軽く遠心後、上清を回収した。得られた上清をMillipore社の簡易フィルター(Ultrafree−MC)を通して、20μl−40μlをHPLC分析に供した。HPLC用カラムはCOSMOSIL 5C18−AR(ナカライテスク社 Code No.378−66)を用いた。展開バッファーAは、0.05% TFAを含むイオン交換水とし、展開バッファーBは、受容体基質によって0.05% TFAのアセトニトリルを用いた。分離には展開バッファーBの濃度勾配を用い、30分で50%まで上昇するようにした。検出条件は、励起波長:492nm、蛍光波長:520nmとした。
HPLC分析により、受容体基質Muc1aのピーク(保持時間19.616分)とは異なり、反応後には新たな反応産物由来のピーク(保持時間18,930分)が検出された(データ示さず)。さらに反応産物の生産量を表すピーク面積の比(パーセンテージ)により各改変体の相対活性を算出した。各変異体の相対活性の結果は図6に示す。受容体基質MUC1a’を用いた実験結果により、各変異体はGalNAcT活性を有することが明らかになった。また野生型O6(O6WT)に対し、点変異酵素はより強い相対活性があることが分かった。より具体的には、O6WRの活性を1とした場合に、一置換体であるO6YWでは活性が約25倍まで増加した。また、一置換体であるO6LYでは約90倍まで増加した。さらに、これらのアミノ酸残基の置換体を有する二置換体のO6DMでは、相乗効果として約138倍まで活性が増加した。また、改変体の活性は、Wファミリーに属する野生型T2やT13(それぞれT2WT、T13WT)と同程度まで回復した。
Claims (8)
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列中の234位に相当するアミノ酸残基がTrpであり、同256位に相当するアミノ酸残基がLeuであり、同343位に相当するアミノ酸残基がLeuであり、同350位に相当するアミノ酸残基がTyrであり、同377位に相当するアミノ酸残基がAlaである、N−アセチルガラクトサミン転移酵素群(Yファミリー)に属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素のアミノ酸配列において、少なくとも前記アミノ酸残基のLeu(343位)をTyrに、Tyr(350位)をTrpに、又はAla(377位)をGlyに変異させる、いずれかの置換がなされた改変体であって、タンパク質またはペプチドのセリンまたはスレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性が、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して増加している、N−アセチルガラクトサミン転移酵素改変体。
- 前記N−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変前のアミノ酸配列が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、および配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の改変体。
- 請求項1又は2に記載のN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体をコードする、核酸。
- 請求項3に記載の核酸を含み、宿主細胞中で該核酸を発現することができる組換えベクター。
- 請求項3に記載の核酸が導入され、N−アセチルガラクトサミン転移酵素改変体を発現する形質転換体。
- 請求項1又は2に記載のN−アセチルガラクトサミン転移酵素の改変体を含む、医薬組成物。
- N−アセチルガラクトサミン転移酵素をコードする遺伝子に基づく疾患を予防、診断、または治療するための、請求項6に記載の医薬組成物。
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列中の234位に相当するアミノ酸残基がTrpであり、同256位に相当するアミノ酸残基がLeuであり、同343位に相当するアミノ酸残基がLeuであり、同350位に相当するアミノ酸残基がTyrであり、同377位に相当するアミノ酸残基がAlaである、N−アセチルガラクトサミン転移酵素群(Yファミリー)に属するN−アセチルガラクトサミン転移酵素のアミノ酸配列において、少なくとも前記アミノ酸残基のLeu(343位)をTyrに、Tyr(350位)をTrpに、又はAla(377位)をGlyに変異させる、いずれかの置換を行う工程を含む改変体の製造方法であって、タンパク質またはペプチドのセリンまたはスレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性が、改変前のN−アセチルガラクトサミン転移酵素と比較して増加している、N−アセチルガラクトサミン転移酵素改変体の製造方法。
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