JPWO2003057887A1 - 新規udp−n−アセチル−d−ガラクトサミン:ポリペプチドn−アセチルガラクトサミン転移酵素及びこれをコードする核酸 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、コアタンパク質、ペプチド配列のセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)をα1結合で転移する活性を有する新規な酵素及びそれをコードする核酸、並びに該核酸を測定するための核酸および測定用キットに関する。
背景技術
これまでに、コアタンパク質やペプチド配列のセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性を有するヒトの酵素としては8種類が知られている[末尾の参考文献1−8を参照]。しかし、それぞれの遺伝子で発現組織や転移可能なアミノ酸配列や周囲のアミノ酸への糖修飾のパターンにより、使用される酵素は異なっている。即ち、全てのヒトのタンパク質にN−アセチルガラクトサミン修飾を施すには、あらゆる種類のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素が必要になると考えられる。さらに、コアタンパク質やペプチド配列のセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性を有する酵素はO−結合型糖鎖の根元酵素であり、この酵素の変化による細胞表面やタンパク質上の糖鎖密度の変化や糖鎖構造の欠如により、多数の疾患が引き起こされることが知られている。具体的な例としては、癌細胞の糖鎖修飾は正常細胞と比較して異なることが多い。最も特徴的な癌細胞の糖鎖変化は、ムチン型(O−結合型)糖鎖において起こり、これらの変化は癌細胞の浸潤や転移に関連し、癌細胞の脱分化や成長速度の上昇を反映する。そのO−結合型糖鎖の根元にはGalNAcが存在する。細胞表面のGalNAcの密度あるいは露出度の変化はGal/GalNAc特異的なCa2+依存性レクチンをもつマクロファージの癌細胞の認識や接着度合と関連している[末尾の参考文献9を参照]。さらに、合成したTn抗原を持つ多抗原性のO−結合型糖ペプチドは、免疫感作療法に使用され、腫瘍耐性マウスの生存率が増加するという報告もなされている[末尾の参考文献10を参照]。このように、糖転移酵素の解析は、疾患の診断や治療においても重要であると考えられる。
発明の開示
コアタンパク質やペプチド配列のセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性を有する酵素を単離し、その遺伝子の構造を明らかにすることにより、該酵素等の遺伝子工学的な生産、該酵素に基づくGalNAc修飾ペプチドあるいはGalNAc修飾タンパク質などの基質としての生産、該酵素に基づく未知O−結合型糖鎖の付加したタンパク質あるいは未知ペプチドのO−結合型糖鎖修飾位置の同定や、該遺伝子等に基づく疾患の診断が可能になる。しかしながら、従来のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素では受容体基質としないにもかかわらず、生体内に糖鎖構造が存在することから、未だ分離精製もされていない該酵素が存在し、かつ、該酵素の単離及び遺伝子の同定の手がかりはない。そのために、該酵素に対する抗体も作製されていない。
発明の詳細な説明
本発明は、配列表の配列番号1−7に示されるアミノ酸配列又は該アミノ配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ配列に1若しくは複数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ配列を有しコアタンパク質、ペプチド配列のセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性を有するタンパク質を提供する。また、本発明は、該タンパク質をコードする核酸を提供する。さらに、本発明は、該核酸を含み、宿主細胞中で該核酸を発現することができる組換えベクターを提供する。さらに、本発明は、該組換えベクターにより形質転換され、前記核酸を発現する細胞を提供する。さらに、本発明は、核酸と特異的にハイブリダイズする、該核酸の測定用核酸及び測定用キットを提供する。さらに、本発明は、ペプチドコア糖鎖構造を合成するため、他の糖転移酵素の基質及びその調製方法を提供する。本発明はまた、本発明のタンパク質を含む糖鎖合成キットを提供し、本発明キットは糖鎖合成装置及び糖鎖合成試薬とともに使用することができる。さらに、該酵素を用いて合成したTn抗原(GalNAc−Ser/Thr)を持つ多抗原性の糖ペプチドの免疫感作療法及び試薬、キット類を提供する。さらに、該酵素を用いた、未知O−結合型糖鎖の付加したタンパク質あるいは未知ペプチドのO−結合型糖鎖修飾位置の同定法及び試薬、キット類を提供する。
発明を実施するための最良の形態
(1)タンパク質
下記実施例において詳述する方法によりクローニングされた、本発明のタンパク質をコードする核酸は、配列表の配列番号8−14に示される塩基配列を有し、それがコードする推定アミノ酸配列が、該塩基配列の下に記載されている。配列番号1−7には、該アミノ酸配列のみを取り出して示す。
下記実施例で得られた本発明のタンパク質は、次の性質を有する酵素である。なお、各性質及びその測定方法は下記実施例において詳述されている。
作用: コアタンパク質とポリペプチドのセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する(EC 2.4.1.41、UDP−N−acetyl−D−galactosamine:polypeptide GalNAc−transferase)。触媒する反応を反応式で記載すると、
UDP−N−acetyl−D−galactosamine+peptide(S/T)<=>
UDP+N−acetyl−beta−D−galactosamine−1−S/T−peptide)
基質特異性: コアタンパク質のポリペプチドのセリン、スレオニン残基の水酸基。
なお、一般に、酵素のような生理活性を有するタンパク質において、そのアミノ酸配列のうち、1若しくは複数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ酸配列に1若しくは複数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加された場合であっても、該生理活性が維持されることがあることは周知である。従って、配列番号1−7に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ酸配列に1若しくは複数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、コアタンパク質、ペプチド中のセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で活性を有するタンパク質(以下、便宜的に「修飾タンパク質」)も本発明の範囲に含まれる。
ここで、「複数個」とは、好ましくは1−200個、より好ましくは1−100個、さらにより好ましくは1−50個、最も好ましくは1−20個である。一般的には、部位特異的な変異によってアミノ酸が置換された場合に、元々のタンパク質が有する活性は保持される程度に置換が可能なアミノ酸の個数は、好ましくは1−10個である。
このような修飾タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1−7に示されるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有することが好ましい。なお、アミノ酸配列の相同性は、FASTAのような周知のコンピューターソフトを用いて容易に算出することができ、このようなソフトはインターネットによっても利用に供されている。さらに、該修飾タンパク質としては、配列番号1−7に示されるアミノ酸配列又は該配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ酸配列に1若しくは数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ配列を有するものが特に好ましい。
本発明のタンパク質は、クローニングされた核酸の塩基配列からの推定に基づいて、配列番号1−7のアミノ酸配列を有するが、その配列を有するタンパク質のみに限定されるわけではなく、本明細書中に記載した特性を有する限り全ての相同タンパク質を含むことが意図される。
本願明細書において、同一性のパーセントは、例えば、Altschulら(Nucl.Acids.Res.25.,p.3389−3402,1997)に記載されているBLASTプログラム、あるいはPearsonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,p.2444−2448,1988)に記載されているFASTAを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。各プログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。なお、当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、使用可能である。
一般的に、同様の性質を有するアミノ酸同士の置換(例えば、ある疎水性アミノ酸から別の疎水性アミノ酸への置換、ある親水性アミノ酸から別の親水性アミノ酸への置換、ある酸性アミノ酸から別の酸性アミノ酸への置換、あるいはある塩基性アミノ酸から別の塩基性アミノ酸への置換)を導入した場合、得られる修飾タンパク質はもとのタンパク質と同様の性質を有することが多い。遺伝子組換え技術を使用して、このような所望の変異を有する組換えタンパク質を作製する手法は当業者に周知であり、このような修飾タンパク質も本発明の範囲に含まれる。
本発明のタンパク質は、例えば、後述の実施例に従って、本発明の核酸による配列番号2に記載のDNA配列を大腸菌、酵母、昆虫、または動物細胞に、それぞれの宿主で増幅可能な発現ベクターを用いて導入および発現させることにより、当該タンパク質を大量に得ることができる。
本発明によって、このタンパク質のアミノ酸配列およびそれをコードするDNA配列が開示されれば、当該配列またはその一部を利用して、ハイブリダイゼーション、PCR等の核酸増幅反応等の遺伝子工学的手法を用いて、他の生物種から同様の生理活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を容易に単離することができる。このような場合、それらの遺伝子がコードする新規タンパク質も本発明の範囲に含まれる。
なお、本発明のタンパク質は、そのアミノ酸配列が上述した通りのものであり、前記酵素活性を有するものであれば、タンパク質に糖鎖が結合していてもよい。
(2)核酸
本発明は、配列番号1−7で示されるアミノ酸配列をコードする核酸及び上記修飾タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸も提供する。本発明の核酸は、一本鎖および二本鎖型両方のDNA、およびそのRNA相補体も含む。DNAには、例えば、天然由来のDNA、組換えDNA、化学合成したDNA、PCRによって増幅されたDNA、およびそれらの組み合わせが含まれる。核酸としてはDNAが好ましい。なお、周知の通り、コドンには縮重があり、1つのアミノ酸をコードする塩基配列が複数存在するアミノ酸もあるが、上記アミノ酸配列をコードする塩基配列であれば、いずれの塩基配列を有するものも本願発明の範囲に含まれる。なお、下記実施例において実際にクローニングされたcDNAの塩基配列が配列番号2に示されている。配列2に示す塩基配列を有する核酸とストリンジェントな条件下(例えば、5 x Denhardt’s reagent,6 x SSC,0.5% SDS又は0.1% SDSといった一般的なハイブリダイゼーション溶液を用いて50〜65℃で反応を行なう)において、ハイブリダイズし、かつ、上記修飾タンパク質をコードする核酸も本発明の範囲内に入る。
本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、中程度又は高程度なストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度のストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Vol.1、7.42−7.45 Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(又は約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および約60℃、0.5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。一般的に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度及び/又は低い塩濃度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、及びおよそ68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。当業者は、温度および洗浄溶液塩濃度は、プローブの長さ等の要因に従って、必要に応じて調整可能であることを認識するであろう。
本発明の核酸は、例えば以下の方法により調製することが可能である。
公知のUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素遺伝子の塩基配列をクエリーとして塩基配列の検索を行い、EST配列を得ることができた。さらに、この配列から見出したゲノム配列又はその一部を利用して、ハイブリダイゼーションや核酸増幅反応等の遺伝子工学の基本的手法を用いてcDNAライブラリーなどから本発明核酸(例えば本発明DNA)を調製することができる。
ここで、核酸増幅反応は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)[Saiki R.K.et al.,Science,230,1350−1354(1985)],ライゲース連鎖反応(LCR)[Wu D.Y.et al.,Genomics,4,560−569(1989);Barringer K.J.et al.,Gene,89,117−122(1990);Barany F.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,189−193(1991)]、及び転写に基づく増幅[Kwoh D.Y.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,1173−1177(1989)]等の温度循環を必要とする反応、並びに鎖置換反応(SDA)[Walker G.T.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,392−396(1992);Walker G.T.et al.,Nuc.Acids Res.,20,1691−1696(1992)]、自己保持配列複製(3SR)[Guatelli J.C.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,1874−1878(1990)]、及びQβレプリカーゼシステム[リザイルディら、BioTechnology,6,1197−1202(1988)]等の恒温反応を含む。また、欧州特許第0525882号に記載されている標的核酸と変異配列の競合増幅による核酸配列に基づく増幅(Nucleic Acid Sequence Based Amplification: NASABA)反応等も利用可能である。好ましくはPCR法である。
後述する実施例に示すように、各種プライマーを使用した場合、PCR産物としてDNA断片が得られるので、これを例えばアガロースゲル電気泳動等の分子量によりDNA断片を篩い分ける方法で分離し、特定のバンドを切り出す方法等の常法に従って単離して本発明の核酸を得ることができる。
上記のようなハイブリダイゼーション、核酸増幅反応等を使用してクローニングされる相同な核酸は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列に対して少なくとも50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらになお好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有する。
同一性パーセントは、視覚的検査および数学的計算によって決定することが可能である。あるいは、2つの核酸配列の同一性パーセントは、Devereuxら,Nucl.Acids Res.,12,387(1984)に記載され、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラム、バージョン6.0を用いて、配列情報を比較することによって、決定可能である。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドに関する単一(unary)比較マトリックス(同一に対し1および非同一に対し0の値を含む)、並びにSchwartz及びDayhoff監修,Atlas of Protein Sequence and Structure,pp.353−358,National Biomedical Research Foundation(1979)に記載されるような、Gribskov及びBurgess,Nucl.Acids Res.,14,6745(1986)の加重比較マトリックス;(2)各ギャップに対する3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対しさらに0.10のペナルティ;及び(3)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、使用可能である。
なお、本発明のタンパク質は、そのアミノ酸配列が上記した通りのものであり、上記した酵素活性を有するものであれば、タンパク質に糖鎖が結合していてもよい。すなわち、本発明の「タンパク質」は「糖タンパク質」をも包含する。
(3)組換えベクターと形質転換体
本発明によれば、単離した本発明の核酸を含む組換えベクターが提供される。プラスミド等のベクターに本発明核酸のDNA断片を組込む方法としては、例えば、Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,1.1(2001)に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造製等)を用いることもできる。このようにして得られる組換えベクター(例えば、組換えプラスミド)は、宿主細胞(例えば、大腸菌DH5α、TB1、LE392、XL−392、又はXL−1Blue等)に導入される。
プラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,16.1(2001)に記載の塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃などを用いる方法などが挙げられる。
ベクターは、簡単には当業界において入手可能な組換え用ベクター(例えば、プラスミドDNA等)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるベクターの具体例としては、大腸菌由来のプラスミドとして、例えば、pFLAG−CMV1、pDONR201、pBluescript、pUC18、pUC19、pBR322等が例示されるが、これらに限定されない。
当業者であれば制限末端は発現ベクターに適合するように適宜選択することが可能である。発現ベクターは、「本発明酵素を発現させたい宿主細胞」に適したものを当業者であれば適宜選択することができる。このように本発明発現ベクターは上記の本発明核酸が目的の宿主細胞中で発現しうるように遺伝子発現に関与する領域(プロモーター領域、エンハンサー領域、オペレーター領域等)が適切に配列されており、さらに本発明核酸が適切に発現するように構築されていることが好ましい。また、発現ベクターの構築は、制限処理及び連結作業を必要としない、Gatewayシステム(インビトロジェン社)を用いることもできる。Gatewayシステムとは、PCR産物の方向性を維持したままクローニングができ、また、DNA断片を適切に改変した発現ベクターにサブクローニングを可能にした部位特異的な組換えを利用したシステムである。具体的には、PCR産物とドナーベクターとから部位特異的な組換え酵素であるBPクロナーゼによってエントリークローンを作成し、その後、このクローンと別の組換え酵素であるLBクロナーゼによって組換え可能なデスティネーションベクターにPCR産物を移入することにより、発現系に対応した発現クローンを調製するものである。最初にエントリークローンを作成すれば、制限酵素やリガーゼで作業する手間の係るサブクローニングステップが不要である点を特徴の一つとする。
発現ベクターの種類は、原核細胞および/または真核細胞の各種の宿主細胞中で所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、哺乳類用発現ベクターとしてpFLAG−CMV1、pcDNA3.1、pGreenLanternなどが好ましく、大腸菌用発現ベクターとしてpQE−30、pQE−60、pMAL−C2、pMAL−p2、pSE420などが好ましく、酵母用発現ベクターとしてpYES2(サッカロマイセス属)、pPIC3.5K、pPIC9K、pA0815(以上ピキア属)、昆虫用発現ベクターとしてpFastBacp、pBacPAK8/9、pBK283、pVL1392、pBlueBac4.5などが好ましい。
上記「本発明発現ベクター」を宿主細胞に組み込み、形質転換体を得ることができる。上記「宿主細胞」として真核細胞(哺乳類細胞、酵母、昆虫細胞等)であっても原核細胞(大腸菌、枯草菌等)であっても使用することができる。本発明の形質転換体をえるための宿主細胞は、特に限定されず、さらに、または、ヒト(例えば、HeLa、293T、SH−SY5Y)、マウス(例えば、Neuro2a、NIH3T3)、サル(例えば、COS−1)由来の培養細胞でもよい。これらはいずれも公知であり、市販されているか(例えば、大日本製薬社)、あるいは公共の研究機関(例えば、理研セルバンク)より入手可能である。あるいは、胚、器官、組織若しくは非ヒト個体も使用可能である。
ところで、「本発明の核酸」は、ヒトゲノムライブラリーから発見された核酸であるため、本発明においては真核細胞を本発明の形質転換体の宿主細胞として用いるとより天然物に近い性質を有した「本発明酵素」が得られる(例えば糖鎖が付加された態様など)と考えられる。従って、「宿主細胞」としては真核細胞、特に哺乳類細胞を選択することが好ましい。動物細胞としてはマウス由来、アフリカツメガエル由来、ラット由来、ハムスター由来、サル由来またはヒト由来の細胞若しくはそれらの細胞から樹立した培養細胞株などが例示される。
宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用いる場合、一般に発現ベクターは少なくとも、プロモーター/オペレーター領域、開始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターおよび複製可能単位から構成される。
宿主細胞として酵母、植物細胞、動物細胞または昆虫細胞を用いる場合には、一般に発現ベクターは少なくとも、プロモーター、関始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターを含んでいることが好ましい。またシグナルペブチドをコードするDNA、エンハンサー配列、所望の遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、選択マーカー領域または複製可能単位などを適宜含んでいてもよい。
本発明のベクターにおいて、好適な開始コドンとしては、メチオニンコドン(ATG)が例示される。また、終止コドンとしては、常用の終止コドン(例えば、TAG、TGA、TAAなど)が例示される。
複製可能単位とは、宿主細胞中でその全DNA配列を複製することができる能力をもつDNAを意味し、天然のプラスミド、入工的に修飾されたプラスミド(天然のプラスミドから調製されたプラスミド)および合成プラスミド等が含まれる。好適なプラスミドとしては、E.coliではブラスミドpQE30、pET又はpCAL若しくはそれらの人工的修飾物(pQE30、pET又はpCALを適当な制限酵素で処理して得られるDNAフラグメント)が、酵母ではプラスミドpYES2若しくはpPIC9Kが、また昆虫細胞ではプラスミドpBacPAK8/9等があげられる。
エンハンサー配列、ターミネーター配列については、例えば、それぞれSV40に由来するもの等、当業者において通常使用されるものを用いることができる。
選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができる。例えばテトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシンもしくはネオマイシン、ハイグロマイシンまたはスペクチノマイシン等の抗生物質耐性遺伝子などが例示される。
発現ベクターは、少なくとも、上述のプロモーター、開始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、およびターミネーター領域を連続的かつ環状に適当な複製可能単位に連結することによって調製することができる。またこの際、所望により制限酵素での消化やT4 DNAリガーゼを用いるライゲーション等の常法により適当なDNAフラグメント(例えば、リンカー、他の制限酵素部位など)を用いることができる。
本発明の発現ベクターの宿主細胞への導入[形質転換(形質移入)]は従来公知の方法を用いて行うことができる。
例えば、細菌(E.coli,Bacillus subtiliss等)の場合は、例えばCohenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168,111(1979)]やコンピテント法[J.Mol.Biol.,56,209(1971)]によって、Saccharomyces cervisiaeの場合は、例えばHinnenらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1927(1978)]やリチウム法[J.B.Bacteriol.,153,163(1983)]によって、植物細胞の場合は、例えばリーフディスク法[Science,227,129(1985)]、エレクトロポレーション法[Nature,319,791(1986)]によって、動物細胞の場合は、例えばGrahamの方法[Virology,52,456(1973)]、昆虫細胞の場合は、例えばSummerらの方法[Mol.Cell Biol.,3,2156−2165(1983)]によってそれぞれ形質転換することができる。
なお、組換えベクターの構築及びそれを用いて本発明の核酸を宿主細胞に導入する方法の具体例が下記実施例2に詳述されている。
(4)タンパク質の単離・精製
近年、遺伝子工学的手法として、形質転換体を培養、生育させて、その培養物、生育物から目的物質を単離・精製する手法が確立されている。
本発明のタンパク質は、上記の如く調整された発現ベクターを含む形質転換細胞を栄養培地で培養することによって発現(生産)することができる。栄養培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源、無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖、メタノールなどが、例示される。無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示される。また、所望により他の栄養素(例えば無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン等)など)を含んでいてもよい。培養は、当業界において知られている方法により行われる。培養条件、例えば温度、培地のpH及び培養時間は、本発明のタンパク質が大量に生産されるように適宜選択される。
本発明のタンパク質は、上記培養により得られる培養物より以下のようにして取得することができる。すなわち、本発明のタンパク質が宿主細胞内に蓄積する場合には、遠心分離やろ過などの操作により宿主細胞を集め、これを適当な緩衝液(例えば濃度が10〜100mM程度のトリス緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液などの緩衝液。pHは用いる緩衝液によって異なるが、pH5.0〜9.0の範囲が望ましい)に懸濁した後、用いる宿主細胞に適した方法で細胞を破壊し、遠心分離により宿主細胞の内容物を得る。一方、本発明のタンパク質が宿主細胞外に分泌される場合には、遠心分離やろ過などの操作により宿主細胞と培地を分離し、培養ろ液を得る。宿主細胞破壊液、あるいは培養ろ液はそのまま、または硫安沈殿と透析を行なった後に、本発明のタンパク質の単離・精製に供することができる。単離・精製の方法としては、以下の方法が挙げることができる。即ち、当該タンパクに6×ヒスチジンやGST、マルトース結合タンパクといったタグを付けている場合には、一般に用いられるそれぞれのタグに適したアフィニティークロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。一方、そのようなタグを付けずに本発明のタンパク質を生産した場合には、例えば後述する実施例に詳しく述べられている方法、即ちイオン交換クロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。また、これに加えてゲルろ過や疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィーなどを組み合わせる方法も挙げることができる。
本発明のタンパク質を、セリン、スレオニン残基を有するコアタンパク質、ペプチド配列、糖タンパク質、オリゴ糖または多糖等に作用させることにより、N−アセチルガラクトサミンがα1結合で転移される。従って、本発明のタンパク質は、糖タンパク質の糖鎖の修飾や、糖類の合成に用いることができる。さらに、このタンパク質を免疫原として動物に投与することにより、該タンパク質に対する抗体を作製することができ、該抗体を用いて免疫測定法により該タンパク質を測定することが可能になる。従って、本発明のタンパク質およびこれをコードする核酸は、このような免疫原の作製に有用である。
本発明のタンパク質はまた、精製および同定を容易にするために添加されるペプチドを含んでもよい。こうしたペプチドには、例えば、ポリ−Hisまたは米国特許第5,011,912号およびHoppら,Bio/Technology,6:1204,1988に記載される抗原性同定ペプチドが含まれる。こうしたペプチドの1つはFLAG(登録商標)ペプチド、Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号41)であり、該ペプチドは非常に抗原性であり、そして特異的なモノクローナル抗体が可逆的に結合するエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。4E11と称されるネズミハイブリドーマは、本明細書に援用される米国特許第5,011,912号に記載されるように、特定の二価金属陽イオンの存在下で、FLAG(登録商標)ペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生する。4E11ハイブリドーマ細胞株は、寄託番号HB 9259下に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)に寄託されている。FLAG(登録商標)ペプチドに結合するモノクローナル抗体は、Eastman Kodak Co.,Scientific Imaging Systems Division、コネチカット州ニューヘブンより入手可能である。
具体的には、後述される実施例2に記載されるように、本発明のタンパク質を発現する発現ベクターにFLAGのcDNAを挿入し、FLAG標識したタンパク質を発現させ、抗FLAG抗体によって、該タンパク質の発現を確認することができる。
(5)測定用核酸
本発明により、本発明の新規酵素のcDNAの塩基配列が明らかになったので、該酵素のmRNA又はcDNAと特異的にハイブリダイズする、前記本発明の測定用核酸(以下、単に「測定用核酸」)が本発明により提供された。ここで、「特異的」とは、検査対象となる細胞中に存在する他の核酸とハイブリダイズせず、上記本発明の核酸とのみハイブリダイズするという意味である。測定用核酸は、上記本発明の核酸に示される塩基配列を有する核酸中の部分領域と相同的な配列を有することが一般的に好ましいが、1〜2塩基程度の不一致があっても差し支えないことが多い。尚、「測定」には、検出、増幅、定量、および半定量のいずれもが包含される。
(a)プライマー
本発明測定用核酸を核酸増幅反応用のプライマーとして使用する場合、本発明測定用核酸は、オリゴヌクレオチドであって、
配列番号1−7に示すタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列から以下の条件を満たすように2つの領域を選択し:
1)各領域の長さが15−50塩基であること;
2)各領域中のG+Cの割合が40−70%であること;
上記領域と同じ塩基配列若しくは上記領域に相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAを製造し、または、上記一本鎖DNAによってコードされるアミノ酸残基を変化させないように遺伝子暗号の縮重を考慮した一本鎖DNAの混合物を製造し、さらに必要であれば上記タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列に対する結合特異性を失わないように修飾した上記一本鎖DNAを製造する
ことを含む方法により製造された当該オリゴヌクレオチドが提供される。
本発明のプライマーは、本発明核酸の部分領域と相同的な配列を有することが好ましいが、1または2塩基の不一致があっても差し支えない。
なお、本発明のプライマーの塩基数は15塩基以上、好ましくは18塩基以上、50塩基以下である。
(b)プローブ
本発明測定用核酸をプローブとして使用する場合、本発明測定用核酸は、配列番号8−14に記載の塩基配列の全体又は部分領域と相同的な配列を有することが好ましい。本発明の測定用核酸が、cDNAプローブの場合、塩基数は、15塩基以上、好ましくは20塩基以上で、それぞれ遺伝子のコード領域の全長以下が好ましい。配列番号8−14に記載した塩基配列又はその相補的な塩基配列と20%以下、好ましくは10%以下の不一致があっても、プローブとしての機能を果たし得る。また、本発明の測定用核酸が、合成オリゴヌクレオチドの場合、塩基数は15塩基以上、好ましくは20塩基以上である。合成オリゴヌクレオチドの場合、長さによるが、配列番号8−14に記載した塩基配列又はその相補的な塩基配列と1または2塩基程度の不一致があってもプローブとしての機能を果たし得る。また、前述のプライマーも本発明のプローブとして使用し得る。
本発明のプローブには、該プローブが標的配列とハイブリダイズしたことを検出または確認するために、蛍光標識、放射標識、ビオチン標識等の標識を付した標識プローブが含まれる。被検核酸またはその増幅物を固相化し、標識プローブとハイブリダイズさせ、洗浄後、固相に結合された標識を測定することにより、検体中に被検核酸が存在するかを決定することができる。
(c)マイクロアレイ
本発明測定用核酸は、マイクロアレイとして使用することができる。マイクロアレイは、ゲノム機能の大量で迅速な解析を可能にする手段である。具体的には、固相基盤、例えばガラス上に高密度に固定した多数の異なった核酸プローブに、標識した核酸をハイブリダイズさせ、各々のプローブからのシグナルを検出し、得られたデータを解析するものである。本明細書において「マイクロアレイ」というときは、固相基盤、例えば、メンブラン、フィルター、チップ、ガラス上に、本発明測定用核酸を配列したものをいう。
(d)被検核酸の測定
被検核酸の部分領域と相補的な配列を有する核酸をPCRのような遺伝子増幅法のプライマー、又はプローブとして用いて被検核酸を測定する方法自体は周知であり、下記実施例3には、ヒト細胞中の本発明のタンパク質のmRNAをノーザンブロット及びインサイチューハイブリダイゼーションにより測定した方法が具体的に詳述されている。また、被検核酸の測定には、前記マイクロアレイを使用することもできる。
PCRのような核酸増幅法自体は、この分野において周知であり、そのための試薬キット及び装置も市販されているので容易に行うことができる。上記した本発明の測定用核酸の一対をプライマーとして用い、被検核酸を鋳型として用いて核酸増幅法を行なうと、被検核酸が増幅されるのに対し、検体中に被検核酸が含まれない場合には増幅が起きないので、増幅産物を検出することにより検体中に被検核酸が存在するか否かを知ることができる。増幅産物の検出は、増幅後の反応溶液を電気泳動し、バンドをエチジウムブロミド等で染色する方法や、電気泳動後の増幅産物をナイロン膜等の固相に不動化し、被検核酸と特異的にハイブリダイズする標識プローブとハイブリダイズさせ、洗浄後、該標識を検出することにより行うことができる。また、クエンチャー蛍光色素とレポーター蛍光色素を用いたいわゆるリアルタイム検出PCRを行うことにより、検体中の被検核酸の量を定量することも可能である。なお、リアルタイム検出PCR用のキットも市販されているので、容易に行なうことができる。さらに、電気泳動バンドの強度に基づいて被検核酸を半定量することも可能である。なお、被検核酸は、mRNAでも、mRNAから逆転写したcDNAであってもよい。被検核酸としてmRNAを増幅する場合には、上記一対のプライマーを用いたNASBA法(3SR法、TMA法)を採用することもできる。NASBA法自体は周知であり、そのためのキットも市販されているので、上記一対のプライマーを用いて容易に実施することができる。
プローブとしては、上記測定用核酸に蛍光標識、放射標識、ビオチン標識等の標識を付した標識プローブを用いることができる。被検核酸又はその増幅物を固相化し、標識プローブとハイブリダイズさせ、洗浄後、固相に結合された標識を測定することにより、検体中に被検核酸が存在するか否かを調べることができる。あるいは、測定用核酸を固相化し、被検核酸をハイブリダイズさせ、固相に結合した被検核酸を標識プローブ等で検出することも可能である。このような場合、固相に結合した測定用核酸もプローブと呼ばれる。
本発明の酵素を、セリン、スレオニン残基を有するペプチト、コアタンパク質、糖タンパク質等に作用させることにより、N−アセチルガラクトサミンをα1結合させる。従って、本発明の酵素は、糖タンパク質の糖鎖の修飾や、糖類の合成に用いることができる。さらに、この酵素を免疫原として動物に投与することにより、該酵素に対する抗体を作製することができ、該抗体を用いて免疫測定法により該酵素を測定することが可能になる。従って、本発明の酵素及びこれをコードする核酸は、このような免疫原の作製に有用である。
実施例
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
遺伝子データベースの検索とGalNAc−T11の塩基配列決定
既存のUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素遺伝子(X85018、X85019、X92689、Y08564、Y08565、AJ002744、AB032959、AB040672)と類似遺伝子の高い相同性を有するアミノ酸配列領域を用いて、遺伝子データベースから類似遺伝子の検索を行った。用いた配列はUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素遺伝子における配列番号:X85018、X85019、X92689、Y08564、Y08565、AJ002744、AB032959、AB040672である。また検索は、Blast[Altschul et al.,J.Mol.Biol.215,403−410(1990)]等のプログラムを利用した。
その結果、EST配列Gene Bank Accetion No.AB032956が見出された。AB032956の配列において、そのうちのヌクレオチド118−1745に新規遺伝子のORFが見出された。次に、表1で示すプライマー(配列番号15−17)を用いて、後述の実施例8で述べる方法で長さ1629塩基の遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定した。後述する実施例11及び12により、この新規遺伝子の翻訳産物がUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素活性を示したことから、この新規UDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素遺伝子をGalNAcT−11と命名した(配列番号8)。
実施例2
遺伝子データベースの検索とGalNAc−T12の塩基配列決定
実施例1と同様の検索法を用いて、EST配列Gene Bank Accetion No.AK022753が見出された。AK022753の配列において、ヌクレオチド62−1735に新規遺伝子のORF領域が見出された。表1で示すプライマー(配列番号18−20)を用いて、後述の実施例8で述べる方法で遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定したところ、長さ1659塩基の遺伝子が得られた。この遺伝子はGenBank No.AK022753と異なるAlternative splicing formであることが判明した。後述する実施例11及び12により、この新規遺伝子の翻訳産物がUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素活性を示したことから、この新規UDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素遺伝子をGalNAcT−12と命名した(配列番号9)。
実施例3
遺伝子データベースの検索とGalNAc−T13の塩基配列決定
実施例1で述べた同様な検索法を用いて、EST配列Gene Bank Accetion No.BG772195、BF359671,BF359677,BF359680,AK023782が見出された。これらのESTはGENETYX(SOFTWARE DEVELOPMENT CO.,LTD)を用いた塩基配列のアラインメント分析から同一遺伝子由来のESTであることが判明した。そのうちBG772195のヌクレオチド139−141に開始コドン、AK023782のヌクレオチド1276−1278に終止コドンを発見した。そして、表1で示すプライマー(配列番号21−23)を用いて、後述の実施例8で述べる方法で遺伝子をクロニーグし、塩基配列を決定したところ、長さ1812塩基の遺伝子が得られた。後述する実施例11及び12により、この新規遺伝子の翻訳産物をUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素活性が示したことから、この新規UDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素遺伝子をGalNAcT−13と命名した(配列番号10)。
実施例4
遺伝子データベースの検索とGalNAc−T14の塩基配列決定
実施例1と同様の検索法を用いて、Human EST配列GenBank Accetion No.AK024865、BE677813,AI800923,またはHuman Genome配列GenBank Accetion No.AL136084が見出された。GENETYXを用いた塩基配列のアラインメント解析から、AL136084のヌクレオチド5286−5658の塩基配列、ESTの AK024865、BE677813,AI800923の塩基配列は同一遺伝子由来の配列であることが判明した。そのうち、AL136084のヌクレオチド5286−5288に開始コドンが存在し、AK024865のヌクレオチド1317−1319に終止コドンが存在していることを発見した。そして、表1で示すプライマー(配列番号24−26)を用いて、後述の実施例8で述べる方法で遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定したところ、長さ1746bpsの遺伝子が得られた。実施例11及び12により、この新規遺伝子の翻訳産物がUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素活性を示したことから、この新規UDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素遺伝子をGalNAcT−14と命名した(配列番号11)。
実施例5
遺伝子データベースの検索とGalNAc−T15の塩基配列決定
実施例1と同様の検索法を用いて、Human EST配列GenBank Accetion No.BG420528、BG675527が見出された。以上のEST配列はMacaca fascicularisの脳由来のGenBank Accetion No.AB050513とそれぞれの部分に相同性を示したので、同一のHuman遺伝子由来の塩基配列であると考えられた。そのうちBG420528においては、ヌクレオチド19−21に翻訳開始コドンが存在した。しかし、この遺伝子の翻訳終止コドンが不明のため、CLONTECH社の肺のMarathon cDNAを用いて3’RACE(rapid amplification of cDNA ends)により情報を取得した。
具体的には、Marathon Lung cDNA(Clontech, Cat.7408−1)付属のAP1プライマーと(DNA断片の両側にAP1、AP2のアダプターがついている)、見出したBG675527配列のヌクレオチド731−755までの部分に設定したプライマーGP151(CCGGCTCATCGAATGCCGCTACGCC)(配列番号36)でPCR(94℃5秒、68℃4分、を40サイクル)を行った。常法により精製し、塩基配列を決定したところ終止コドンを発見した(配列番号12)。
そして、表1で示すプライマー(配列番号27−29)を用いて、後述の実施例8で述べる方法で遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定したところ、長さ1824塩基の遺伝子が得られた。後述する実施例11及び12により、この新規遺伝子の翻訳産物がUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素活性を示したことから、この新規UDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素をGalNAcT−15と命名した(配列番号12)。
実施例6
遺伝子データベースの検索とGalNAc−T16の塩基配列決定
実施例1と同様の検索法を用いて、Human EST配列GenBank Accetion No.BF527569、AU121279が見出された。さらに、ゲノム配列GenBank accetion No.NT−007799.4が見出され、上記2つのESTが同一遺伝子であることを見出した。しかし、翻訳開始点は不明であったので、CLONTECH社の胎児脳のMarathon cDNAを用いて5’RACEならびにクローニングを行った。
具体的には、Marathon Fetal brain cDNA付属のAP1プライマーと(DNA断片の両側にAP1、AP2のアダプターがついている)、見出した配列部分に設定したプライマーGP157(5’−AGAGCATTCCTCTTGGTGTAGAAGCC−3’)(配列番号37)でPCR(94℃5秒、68℃4分、を40サイクル)を行った。さらに、Marathon cDNA付属のAP2プライマーと、配列部分に設定したプライマーGP−158プライマー(5’−TTCCGCTCAATGTGGGCCACCCGTG−3’)(配列番号38)でnested PCR(94℃5秒、68℃4分、を40サイクル)を行った。目的とするフラグメントをゲルから切りだし、常法により精製し、塩基配列を決定した。
さらに、決定した配列の情報をもとに、再度5’RACEを行った。具体的にはAP1プライマーとGP−158プライマーでPCR(94℃5秒、68℃4分、を40サイクル)を行った。その後、AP2プライマーとO6−R3プライマー(5’−GGTCTCCGGCGTCCCACCAG−3’)(配列番号39)を用いてnested PCR(94℃5秒、68℃4分、を40サイクル)を行った。目的とするフラグメントをゲルから切りだし、常法により精製し、塩基配列を決定した。
最終的に、表1で示すプライマー(配列番号30−32)を用いて、後述の実施例8で述べる方法で遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定したところ、長さ1797塩基の遺伝子が得られた。後述する実施例11及び12により、この新規遺伝子の翻訳産物がUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素活性を示したことから、この新規UDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素遺伝子をGalNAcT−16と命名した(配列番号13)。
実施例7
遺伝子データベースの検索とGalNAc−T17の塩基配列決定
実施例1と同様の検索法を用いて、Human EST配列GenBank Accetion No.BG699346,BG714178,BG715977が見出された。これらのEST配列はヒトゲノム配列GenBank accetion No.AC090935と相同性が見出され、Genscan DNA解析予測ソフトにより、ヌクレオチド51185−51304の領域に、翻訳開始コドンを含むエキソンとヌクレオチド103445−103533の領域に翻訳終止コドンを含むエキソンを見出した。この情報に従い、表1で示すプライマー(配列番号33−35)を用いて、後述の実施例8で述べる方法で遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定したところ、長さ1920塩基の遺伝子が得られた。後述する実施例11及び12により、この新規遺伝子の翻訳産物がUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素活性を示したことから、この新規UDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素遺伝子をGalNAcT−17と命名した(配列番号14)。
実施例8
7種類のGalNAc−T遺伝子の発現ベクターへの組込み
7種類のGalNAc−T遺伝子の発現系を作成するため、まず7種類のGalNAc−T遺伝子全長あるいは遺伝子の一部をインビトロジェン社のGatewayシステムのpDONR(商標)201およびpFastBac由来のデスティネーションベクターに組込み、さらにインビトロジェン社のBac−to−BacシステムによるBacmidを作成した。以下に詳細を述べる。
(1)GatewayシステムによるpFastBacへの組込み
▲1▼エントリークローンの作成
上記の実施例1−7で得られた各遺伝子配列により、表1で示したプライマーセット及びDNAポリメラーゼとしてExpand High Fidelity PCR system(Roche Cat.No.1146 173)を用いて、94℃15秒、68℃3分を30サイクルの反応条件で各DNA断片を増幅した。目的の断片をアガロースゲル電気泳動後のゲルから切りだし、精製後BP Clonase反応によってpDONR201へ組込んだ。各遺伝子に対するプライマーF1とRで増幅されたDNA断片は各遺伝子の全長ORF、各遺伝子に対するプライマーF2とRで増幅されたDNA断片は活性測定用トランケート型遺伝子としてpDONR201へ組込み、「エントリークローン」を作成した。反応は目的とするDNA断片5μl、pDONR201 1μl(150ng)、反応緩衝液2μl、BP Clonase mix 2μlを25℃で1時間インキュベートして行った。Proteinase Kを1μl加えて37℃で10分おき反応を停止した。
その後上記mix全量(11μl)をコンピテントセル(大腸菌DH5α)100μlと混合し、ヒートショック法の後、カナマイシンを含むLBプレートにまいた。翌日コロニーをとり、直接PCRで目的DNAを確認し、ベクターを抽出・精製した。
▲2▼発現クローンの作成
上記エントリークローンは挿入部位の両側にラムダファージが大腸菌から切り出される際の組換部位であるattLを持つもので、LR Clonase(ラムダファージの組換酵素Int、IHF、Xisを混合したもの)とデスティネーションベクターと混合することで、挿入部位がデスティネーションベクターに移り、発現クローンが作成される。具体的工程は以下のとおりである。
まずエントリークローン1μl、pFBIFを0.5μl(75ng)、LR反応緩衝液2μl、TE4.5μl、LR Clonase mix 2μlを25℃で1時間反応させ、Proteinase Kを1μl加えて37℃10分インキュベートして反応を終了させた(この組換え反応でpFBIF−GalNAc−Tが生成される)。pFBIFは、pFastBac1にIgκ(MHFQVQIFSFLLISASVIMSRG)(配列番号40)とFLAGタグ(DYKDDDDK)(配列番号41)のシーケンスを加えたもので、OT3(5’−GATCATGCATTTTCAAGTGCAGATTTTCAGCTTCCTGCTAATCAGTGCCTCAGTCATAATGTCACGTGGAGATTACAAGGACGACGATGACAAG−3’)(配列番号42)を鋳型に、プライマーOT20(5’−CGGGA TCCAT GCATT TTCAA GTGCA G−3’)(配列番号43)と、OT21(5’−GGAAT TCTTGT CATCG TCGTC CTTG−3’)(配列番号44)を用いてPCRを行い、得られたDNA断片をBam H1とEco R1で挿入して得られたものである。Igκは発現タンパク質を分泌型にするため、FLAGタグは精製のため挿入した。
(2)Bac−to−BacシステムによるBacmidの作成
続いてBac−to−Bacシステム(インビトロジェン社)を用いて上記pFBIF−GalNAc−TとpFastBacとの間で組換えをさせ、昆虫細胞中で増殖可能なBacmidにGalNAc−Tその他の配列を挿入した。このシステムはTn7の組換部位を利用して、Bacmidを含む大腸菌(DH10BAC)に目的遺伝子を挿入させたpFastBacを導入するだけで、ヘルパープラスミドから産生される組換タンパク質によって目的とする遺伝子がBacmidへとりこまれるというものである。またBacmidにはlacZ遺伝子が含まれており、古典的な青(挿入なし)−白コロニー(挿入あり)による選択が可能である。
即ち、上記精製ベクター(pFBIF−GalNAc−T)をコンピテントセル(大腸菌DH10BAC)50μlと混合し、ヒートショック法の後、カナマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、Bluo−gal、及びIPTGを含むLBプレートにまき、翌日白い単独コロニーをさらに培養し、Bacmidを回収した。
実施例9
Bacmidの昆虫細胞への導入
上記白コロニーから得られたBacmidに目的配列が挿入していることを確認した後、このBacmidを昆虫細胞Sf21に導入した。即ち35mmのシャーレにSf21 cell 9x105 cell/2ml(抗生物質を含むSf−900II)を加え、27℃で1時間培養して細胞を接着した。(Solution A)精製したbacmid DNA 5μlに抗生物質を含まないSf−900II 100μlを加えた。(Solution B)Cell FECTIN Reagent 6μlに抗生物質を含まないSf−900II 100μlを加えた。その後、Solution AおよびSolution Bを丁寧に混合して15〜45分間、室温でインキュベートした。細胞が接着したことを確認して、培養液を吸引して抗生物質を含まないSf−900II 2mlを加えた。Solution AとSolution Bを混合して作製した溶液(lipid−DNA complexes)に抗生物質を含まないSf900II 800μlを加えて丁寧に混和した。細胞から培養液を吸引し、希釈したlipid−DNA complexes溶液を細胞に加え、27℃で5時間インキュベートした。その後、Transfection mixturesを除き、抗生物質を含むSf−900II培養液2mlを加えて27℃で72時間インキュベーションした。Transfectionから72時間後にピペッティングにより細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを3000rpm,10分間遠心し、上清を別のチューブに保存した(この上清が一次ウイルス液となる)。
T75培養フラスコにSf21細胞 1x107 cell/20ml Sf−900II(抗生物質入り)を入れて、27℃で1時間incubationした。細胞が接着したら一次ウイルスを800μl添加して、27℃で48時間培養した。48時間後にピペッティングにより細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを3000rpm,10分間遠心し、上清を別のチューブに保存する(この上清を二次ウイルス液とした)。
さらに、T75培養フラスコにSf21細胞 1×107 cell/20ml Sf−900II(抗生物質入り)を入れて、27℃で1時間インキュベートした。細胞が接着したら二次ウイルス液1000μlを添加して、27℃で72〜96時間培養した。培養後にピペッティングにより細胞を剥がし、細胞と培養液を回収した。これを3000rpm,10分間遠心し、上清を別のチューブに保存した(この上清を三次ウイルス液とした)。
加えて、100ml用スピナーフラスコにSf21細胞6x105cells/ml濃度で100mlを入れ、三次ウイルス液を1ml添加して27℃で約96時間培養した。培養後に、細胞及び培養液を回収した。これを3000rpm,10分間遠心し、上清を別のチューブに保存した(この上清を四次ウイルス液とした)。
一次から三次までのセルペレットをソニケーションし(ソニケーション緩衝液:20mM HEPES pH7.5、2% Triton X−100、1x Protease inhibitor cocktail)細胞粗抽出液をH2Oで20倍にし、常法によりSDS−PAGEによる電気泳動についてウエスタンブロッテイングを行ない、それぞれ目的とする各GalNAc−Tタンパク質の発現を確認した。FLAG配列のついたGalNAc−T(FLAG−GalNAc−T)に対する検出用抗体としては、抗FLAG M2−ペルオキシダーゼ(A−8592、SIGMA社)を用いた。各FLAG−GalNAc−Tはアミノ酸配列から計算した分子量とほぼ同じ位置にバンドが検出された。
実施例10
各GalNAc−Tのレジン精製
上記三次感染のボトルからさらに四次感染をさせ、両ボトルからペレットと上清を回収し、遠心分離後(5000rpm10分を2回)ペレットをソニケーションした(ソニケーション緩衝液:20mM HEPES pH7.5、2% Triton X−100、1x Protease inhibitor cocktail)、ペレット粗抽出液と上清についてタンパク質定量(BIO−RAD社DC Protein Assay Kit)し、タンパク量を調整の上SDS−PAGE、ウエスタンブロッテイングでGalNAc−T10の発現を確認した。この結果から精製には、もっとも相対的発現量の多い、FLAG−GalNAc−Tの上清を使用することとした。
四次感染の各FLAG−GalNAc−T上清20mlにNaN3(0.05%)、NaCl(150mM)、CaCl2(2mM)、抗M1レジン(Sigma社)(100μl)を混合し、4℃で一夜攪拌した。翌日遠心して(3000rpm 5分4℃)ペレットを回収し、2mMのCaCl2・TBSを900μl加えて再度遠心分離(2000rpm 5分4℃)し、ペレットを200μlの1mM CaCl2・TBSに浮遊させ活性測定のサンプル(各GalNAc−T酵素液)とした。
実施例11
GalNAc−Tの酵素活性の検出方法と受容体基質の調製
GalNAc−TによるUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素としての活性測定には、受容体基質として下記表2に記載したFITC(またはFAM)標識した合成ペプチド、および供与体基質(donor substrate)としてUDP−GalNAcを使用した。
反応液は、受容体基質(50pmol)、Tris−HCl緩衝液(pH7.4)(25mM)、MnCl2(5mM)、UDP−GalNAc(200nM)から成り、これにGalNAc−T酵素液を2.5μl加えて、さらにH2Oを加えて全量を20μlとした(カッコ内は最終濃度)。
上記反応混合液を37℃で6時間反応させ、反応終了後、H2Oを40μl加え、軽く遠心後、上清を取得した。得られた上清をMillipore社の簡易フィルター(Ultrafree−MC)を通して、20μl−40μlをHPLC分析に供した。HPLCカラムはCOSMOSIL 5C18−AR(ナカライテスク社Code No.378−66)を用いた。展開バッファーAは0.05%TFAを含むイオン交換水、展開バッファーBとしては受容体基質によって0.05%TFAの2−プロパノール:アセトニトリル=7:3と0.05%TFAのアセトニトリルを用いた。分離にはバッファーBの濃度勾配を用い、30分で50%まで上がるように勾配をかけた。検出条件は励起波長:492nm、蛍光波長:520nmとした。
ここで、例えば、FITC(またはFAM)標識した合成ペプチドである表2中のEA2を受容体基質として用いた場合の既知のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc−T10)の活性について検討した。上記の実験手法に従って得られた反応液をHPLCで分析し、転移酵素と反応させていない受容体基質EA2ピーク(保持時間20.27分)と、これとは0.72分の差を示した転移酵素反応後の単一の産物ピーク(保持時間19.55分)を分取した。次いで、凍結乾燥後、MALDI−TOF質量分析装置(BRUKER社、機種:REFLEXIII)で分析した。質量分析の結果、基質EA2(理論質量数:m/z 1675.37;実測質量数:m/z 1676.98)に対して(図1参照)、HPLC分析で保持時間19.55分ピークの産物の実測質量数は1879.80m/zであり、基質との差は202.82m/zであった。この質量数の差は、一つのN−アセチル−D−ガラクトサミン(GalNAc、理論質量数:203)に相当し、従って、基質EA2に1ヶ所GalNAcが付加されたことを示している(図2参照)。このようにGalNAc−T10によって受容体基質であるEA2にGalNAcが付加した産物をEA2−T10と命名した。
上記の具体的な実験手法に従えば、各種酵素と各種受容体基質との反応は、反応前後のHPLC分取、および主要なピークのMALDI−TOFへの供することによって確認することができる。さらに、反応後のGalNAc−Tが付加した受容体基質は、後述するような二次的GalNAc−T活性を測定するために使用することができる。
実施例12
各GalNAc−TのUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素活性の確認
本明細書ではGalNAc−T活性を以下の定義に従い2つに分類した。
GalNAcが結合してないペプチドを受容体基質として反応し、いくつかのGalNAcがペプチドと結合させる触媒活性を「一次GalNAc−T活性」と定義する。一方、すでに一ヶ所あるいは複数箇所にGalNAcが結合しているペプチドを受容体基質として、さらに新しいGalNAcを結合させる触媒活性を「二次GalNAc−T活性」と定義する。
上記の実施例のHPLC分析により、受容体基質ピークとは異なり、各GalNAc−Tとの反応後は新たな反応産物由来のピークが検出された。その具体的なピークの保持時間、受容体基質ピークの保持時間との差、さらに反応産物の生産量を表すピーク面積の比(パーセンテージ)を表3にまとめた。この結果により、受容体基質MUC1a’を用いた実験において、GalNAc−T11、GalNAc−T12、GalNAc−T14、GalNAc−T16、GalNAc−T17が一次GalNAcT活性を有することが明らかになった。受容体基質MUC2−Fを用いることにより、GalNAc−T11、GalNAc−T12、GalNAc−T14が一次GalNAcT活性を有することが明らかになった。受容体基質MUC7、MUC5AC、EA2を用いることにより、すべでのGalNAc−Tが一次GalNAcT活性を有することが明らかになった。受容体基質HPK−Fにおいて、GalNAc−T11、GalNAc−T12が一次GalNAcT活性を有することが明らかになった。受容体基質SDC284において、GalNAc−T11、GalNAc−T12、GalNAc−T13、GalNAc−T14、GalNAc−T17が一次GalNAcT活性を有することが明らかになった。
さらに、例えば、GalNAc−T6と反応させて得られた、GalNAcが一ヵ所付加されたEA2−T6受容体基質を用いると、GalNAc−T11、GalNAc−T12、GalNAc−T13、GalNAc−T16、GalNAc−T17との反応後は受容体基質ピークとは異なる保持時間に新たな反応産物由来のピークが検出された。その具体的なピークの保持時間、受容体基質ピークの保持時間との差、さらに反応産物の生産量を表すピーク面積の比(パーセンテージ)を表3にまとめた。この結果により、GalNAc−T11、GalNAc−T12、GalNAc−T13、GalNAc−T16、GalNAc−T17には二次GalNAcT活性があることが認められた。
実施例13
GalNAc−TのFAM(5−carboxyfluorescein succinimidyl ester:5−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)ラベルした受容体基質の調製
Muc1、Muc2、Muc5AC、Muc7、およびEA2由来のオリゴペプチドにFAMラベルしたものを株式会社サワディ(東京、日本)から入手し、受容体基質として用いた。一つのGalNAc基が付加したMuc1a、Muc2、Muc5AC、Muc7、およびEA2は、GalNAc−T2[末尾の参考文献11を参照]、−T6[末尾の参考文献12を参照]、または−T10によるGalNAcの付加後、HPLCにより精製して、GalNAc−TアッセイのGalNAc−糖ペプチド受容体基質とした。調製した基質を表4に示す。
実施例14
GalNAc−TのFAMラベルした受容体基質への活性の検出法
GalNAc−Tアッセイは、25mM Tris−HCl(pH7.4)、5mM MnCl2、0.2%Triton X−100、0.25mM UDP−GalNAc(Sigma)、適当な5−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(FAM)−ラベルした受容体基質、および精製した酵素を含む20μlの混合物中で37℃で行った。図3および図4では50pmolの受容体基質および125ngの酵素を経時反応に用い、図5および図6ではその1/10の基質および酵素を一次GalNAc−T活性および二次GalNAc−T活性を検出する反応に用いた。反応は3分間煮沸することで停止させ、そして以前に示したように[末尾の参考文献13を参照]逆相C18カラム(Cosmosil 5C18−AR、4.6x250mm;ナカライテスク社)を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で受容体基質および反応生成物のピークを検出・分析した。
実施例15
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI−TOF)マススペクトロメトリーによる糖ペプチド生成物のアミノ酸配列解析法
Gal−T14の反応の生成物のグリコシル化部位を決定するために、HPLCにより単離した糖ペプチドは、REFLEX(登録商標)IV(ブルカーダルトニクス)を用いてMALDI−TOFマススペクトロメトリーで分子量解析すると共に、プロテインシークエンサーPPSQ−23A(島津製作所)上でエドマン分解を行うことによりアミノ酸配列を解析した。マススペクトロメトリー(MALDI−TOF)およびアミノ酸配列決定の方法は以前に示した[末尾の参考文献13を参照]。
実施例16
GalNAc−T14のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素活性の確認
実施例12と同様にGalNAc−Tを二つに分類して定義した。GalNAc−T14の酵素活性の測定は実施例14に示したように行い、基質には実施例13に示したものを用いた。
Muc1aペプチド誘導体(FAM−AHGVTSAPDTR)(配列番号52)をGalNAc−T14と共にインキュベートし、HPLCにより解析した。図3に示したように、GalNAc−Tの反応のインキュベーション時間と共に基質のピーク(Sで示した)が徐々に消費されて他のピーク(Pで示した)が現れ、GalNAc−T14がGalNAcをMuc1aペプチドに転移したことを示した。GalNAc−T14とのインキュベーションによりMuc1aペプチドにおいてはシフトしたピークが一つだけ現れた。これは一つのSer/Thr部位のみがGalNAc修飾されたことを示している。生成物をHPLCにより単離し、実施例15に示したようにMALDI−TOFマススペクトロメトリーおよびプロテインシークエンシングにかけ、生成物は5番目のトレオニンにGalNAcを一つ有することを同定した。
一方、図4に示したように、Muc5ACペプチド誘導体(FAM−GTTPSPVPTTSTTSA)(配列番号54)に対する反応においては、生成物は複数ピークとして現れた。GalNAc−T14との短いインキュベーションの後には、HPLC上でMuc5ACペプチドのシフトした高いピークが一つ現れたが、このピークは徐々に消費され、インキュベーション時間が増えるにつれて複数のピークが現れた。この結果は、GalNAc−T14はMuc5ACペプチドの複数の部位にGalNAcを転移したことを示すものである。
さらに、pp−GalNAc−T14はEA2ペプチドには酵素活性を示したが、Muc2およびMuc7についてはごくわずかな活性しか示さなかった(図5)。
GalNAc−T14がMuc5Acペプチドの複数の部位にGalNAcを転移したことは、GalNAc−T14は二次GalNAc−T活性を有することを示している。このことを確認するために、実施例13に示したGalNAcが一つ転移したペプチドを基質として用いてGalNAc−Tアッセイを行った。図6に示したように、GalNAc−T14とのインキュベーションにより、GalNAc−Muc5ACペプチドを基質としたときのみシフトしたピークが生じ、その他のGalNAcが転移したEA2、Muc1a、Muc2、およびMuc7を基質としたときにはシフトしたピークが現れないか、または現れてもごくわずかであった。
実施例17
リアルタイムPCRによるヒト組織および細胞系列におけるGalNAc−T14転写物の定量解析による分布の解析
GalNAc−T14転写物の定量解析には、TaqMan(登録商標)Universal PCR Master MixおよびABI PRISM 7700 Sequence Detection System(アプライドバイオシステム社)を用い、定量リアルタイムPCRを行った。種々のヒト組織のMarathon Ready(登録商標)cDNAはクロンテックより購入した。ヒト組織cDNAとしては、脳全体、大脳皮質、小脳、胎児脳、骨髄、甲状腺、胸腺、脾臓、白血球、心臓、骨格筋、肺、肝臓、食道、胃、小腸、大腸、膵臓、腎臓、副腎、乳腺、子宮、胎盤、卵巣、精巣、および前立腺に由来するものを用いた。種々のガン細胞系列からのcDNAは以前に示した方法で調製した[末尾の参考文献14を参照]。ガン細胞系列のcDNAとしては、GOTO(神経芽腫)、SCCH−26(神経芽腫)、T98G(膠芽腫)、U25I(膠芽腫)、白血病プロミエロサイト、黒色腫、HL−60(前黒色腫)、K562(白血病)、Daudi(B細胞(Burkitt’s))、Namalwa(B細胞白血病)、PC−1(肺扁平上皮細胞)、EBC−1(肺扁平上皮細胞)、PC7(肺腺癌)、HepG2(肝臓)、MKN45(胃)、KATO III(胃)、HSC43(胃)、Colo205(大腸)、HCT15(大腸)、LSC(大腸)、LSB(大腸)、SW480(大腸)、およびSW1116(大腸)に由来するものを用いた。
GalNAc−T14のプライマーセットおよびプローブは以下のものである;フォーワードプライマー、5’−CGTGCCCGCTTGGAAC−3’(配列番号57)、リバースプライマー、5’−TGTTCTGGAGCATCCCGAAG−3’(配列番号58)、およびプローブ、マイナーグルーブバインダーを持つ5’−TGGGGATGTGACAGAGAGGAAGCAGCT−3’(配列番号59)[末尾の参考文献15を参照]。PCR条件は、50℃、2分間を1サイクル、95℃、10分間を1サイクル、95℃、15秒間、および60℃1分間を50サイクルで行った。GalNAc−T14の転写物の相対量は、同じcDNA中のGADPH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase:グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)転写物の量により標準化した。
リアルタイムPCR法により、種々のヒト組織および細胞系列におけるGalNAc−T14転写物の発現レベルを決定した。GalNAc−T14は、そのレベルは異なるものの、殆どの組織中(図7)、および種々の細胞系列中(図8)で発現した。かなり高いレベルの発現がみられた組織は、小腸、胃、膵臓、および大腸であった。中程度の発現が、精巣、甲状腺、および脾臓で観察された。試験したその他の組織の発現レベルは、非常に低い、または検出不可能であった。GalNAc−T14は試験した細胞系列においては比較的低いレベル、または検出不可能である程度に発現した。大腸癌および胃癌細胞系列におけるGalNAc−T14の発現レベル(図7)は、それぞれ大腸および胃のそれら(図8)と比較して低かった。
実施例18
GalNAc−T13のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素活性の確認
実施例12と同様にGalNAc−Tを二つに分類して定義した。GalNAc−T13の酵素活性の測定は実施例14に示したように行い、基質には実施例13に示したものを用いた。
Muc1a、Muc2、Muc5AC、Muc7、およびEA2由来のオリゴペプチドにFAMラベルしたペプチド誘導体(実施例13参照)をGalNAc−T13と共にインキュベートし、HPLCにより解析した。図9に示したように、GalNAc−T13の反応前(上段)と反応後(下段)で、Muc1、Muc5AC、Muc7、およびEA2の基質ピーク(Sで示した)が消費されて他のピーク(Pで示した)が現れ、GalNAc−T13がGalNAcを各ペプチドに有意に転移したことを示した。しかしながら、Muc2を基質とした場合には、GalNAc−T13の転移活性はごくわずかであった。
さらに、一次GalNAc−T13活性を評価するために、Muc1をGalNAc−T13と共に反応時間を変えてインキュベートし、反応混合物をHPLCにより解析した。図10に示すように、GalNAc−T13はMuc1aペプチドを効率的に利用し、インキュベーション時間が延長されるにつれてシフトした一本の生成物ピーク“P”が現れた。EA2ペプチドは、7個の可能な糖鎖修飾位置を含み、ラットの顎下腺ムチンリピート由来である。GalNAc−T13とEA2ペプチドとの反応生成物は独特のパターンの複数ピークを示した(図11)。生成物ピークP1及びP2は、基質ピークに近接し、反応時間を通して非常に低かった。これに対しピークP3、P4及びP5は逐次的に現れ、より多くの糖鎖修飾ペプチドであると推定でき、また、P1及びP2より高かった。
以上の結果は、GalNAc−T13がEA2ペプチドに複数個のGalNAcを転移したことを示唆している。そこで、GalNAc−T13によるEA2ペプチドに転移したGalNAcの数を決定する試みを行った。まず、生成物ピークをHPLCで精製し、画分を質量分析アッセイに供した。図12パネルBに示したように、ピークP3、P4およびP5(T13で生じた)、並びにP1’およびP2’(T6で生じた)に対応する生成物について測定した分子量は、それぞれFAMラベルしたEA2ジ−、トリ−、テトラ−およびモノ−糖ペプチドと予想される分子量に合致していた。GalNAc−T13によって生じたP1及びP2の生成量は非常に小さく、質量分析用として回収することはできなかった。P2及びP1’の保持時間が同じであったので、以上の結果は、GalNAc−T13によって生じたP1及びP2の両方とも一つのGalNAc残基を異なった部位に結合したことを強く示唆している。同時に、この結果は、GalNAc−T13がEA2ペプチドのThr又はSer部位に最初に一つのGalNAcを効率の悪い方法で転移し、その後、すぐに他の部位に別のGalNAcを転移することを示した。これは、GalNAc−T13がEA2に対して強い二次的なGalNAc糖ペプチド転移活性、及び相対的に弱い一次的なポリペプチドGalNAc−転移活性を有することを示唆した。
GalNAc−T13の二次活性を確かめるために、GalNAc−T13アッセイ用に受容体基質としてGalNAcを転移したEA2モノ−糖ペプチドを調製した。図13パネルBに示すように、基質ピーク(S”)は急速に消費され、さらにシフトしたピークP1”がGalNAc−T13との短いインキュベーション後に現れた。その後、P1”は徐々に消費され、さらにシフトしたピークがインキュベーションの時間経過とともに現れた。
また、GalNAc−T13の酵素反応8時間後に残存したEA2基質の量は、たった10分間の酵素反応におけるGalNAc−EA2基質の残存量と殆ど同等であった(図13)。この結果は、GalNAc−T13がEA2よりモノ−GalNAc−EA2に対してより選択的な活性を有することを示唆している。即ち、GalNAc−T13は、弱い一次活性と強い二次活性を併せ持つ糖転移酵素であることを示している。
これまでの研究では、in vitroのO−結合型糖鎖修飾の速度論において、近接および遠隔のO−グリカンの、ネガティブ及びポジティブな相対的効果を示している[末尾の参考文献16−18を参照]。EA2へのGalNAcの付加は、ペプチド構造を変化させる可能性があり、GalNAc−T13に対する特定の受容体部位に接近することに影響している。従来の刊行物では、遠隔部位と同様に糖鎖修飾部位に近いペプチド骨格構造に対するO−型糖鎖修飾の効果を同定している[末尾の参考文献19−21を参照]。他に可能な作用機序としては、GalNAc−T13のレクチンドメインがGalNAcを付加したペプチドに結合し、EA2糖ペプチドの糖鎖修飾を触媒するようGalNAc−T13の能力に貢献するということが挙げられる。これは、ヒトGalNAc−T4に見出される作用機序と同様である[末尾の参考文献22を参照]。
GalNAc−T13はまたGalNAc−Muc5ACに対しても強力にGalNAc−糖ペプチド転移酵素活性を示した。
GalNAc−T13は、ラットGalNAc−T9[末尾の参考文献23を参照]のオルソロガス異性体である。しかしながら、ヒトGalNAc−T13はラットGalNAc−T9とは異なった基質特異性を示した。ラットGalNAc−T9は、Muc1a、EA2、Muc2及びMuc5ACを含む未修飾ペプチド基質に対しては、GalNAcを転移しないことが報告されている[末尾の参考文献16を参照]。ところが、ヒトGalNAc−T13は未修飾ポリペプチド基質に対して明らかな触媒活性を示した。GalNAc−T13及びラット−T9の両方とも、EA2及びMuc5AC糖ペプチドに対して強力な二次活性を示した。以上の結果は、GalNAc−T13およびラット−T9がin vitroにおいて異なった受容体基質特異性を有することを示している。
実施例19
リアルタイムPCRによるヒト組織および細胞系列におけるGalNAc−T13転写物の定量解析による分布の解析
GalNAc−T13転写物の定量解析は、実施例17に記載の方法に準じて行った。ヒト組織cDNAは、脳全体、小脳、大脳皮質、胎児脳、副腎、甲状腺、胸腺、肺、心臓、乳腺、肝臓、食道、胃、小腸、大腸、膵臓、脾臓、腎臓、子宮、胎盤、精巣、卵巣、骨格筋、および骨髄に由来するものを用いた。ガン細胞系列のcDNAとしては、SCCH−26(神経芽腫)、GOTO(神経芽腫)、T98G(膠芽腫)、U25I(膠芽腫)、YKG−1(膠芽腫)、M118−MG(膠芽腫)、A172(膠芽腫)、PC−1(肺扁平上皮細胞)、EBC−1(肺扁平上皮細胞)、PC7(肺腺癌)、HSC43(胃)、MKN45(胃)、KATO III(胃)、A431(扁平上皮)、Colo205(大腸)、LSC(大腸)、LSB(大腸)、SW480(大腸)、SW116(大腸)、HepG2(肝臓)、Capan−2(膵臓)、KHM−1B(IgA骨髄腫)、Namalwa(B細胞白血病)、Daudi(B細胞 Burkitt’s)、K562(白血病)、U266(骨髄腫)、HL−60(前骨髄腫白血病)、および黒色腫に由来するものを用いた。また、GalNAc−T13のプライマーセットおよびプローブは以下のものである;フォーワードプライマー、5’−CGCGTAGGAAATGGAGAACAA−3’(配列番号60)、リバースプライマー、5’−TCGGTATGCCTGATCCACTCT−3’(配列番号61)、およびプローブ、5’−AGACCTTACCCCATGACCGATGCTGA−3’(配列番号62)。
GalNAc−T13は試験した全ての組織中に発現していたが、発現レベルは組織に応じて異なっていた(図14)。転写物の発現レベルが最も高い組織は小腸であり、中程度レベルのものは、胃、膵臓、卵巣、胸腺および脾臓であった。上記以外の組織では、微量ないしより低いレベルであった。ヒトGalNAc−T異性体、即ち、GalNAc−T1、−T2、−T4、−T7および−T8はいたるところに発現している[末尾の参考文献5−8を参照]。複数のGalNAc−Tが一つの組織に発現している理由はまだ明らかにされていない。酵素は基質特異性を有するので[末尾の参考文献24−26を参照]、細胞内では受容体基質全体の糖鎖修飾に対して、GalNAc−T間で競争および協調があるのかもしれない。即ち、組織内で複数のGalNAc−Tの発現は、タンパク質の一連のプロセッシングに必要であり、または適切なタンパク質の糖鎖修飾を確実にするために過剰に提供しているのかもしれない。
また、GalNAc−T13の発現レベルは、試験したほとんどの腫瘍細胞系列において低くく(図15)、細胞系列間の特異的な発現パターンは見出すことができなかった。
実施例20
GalNAc−T12転写物のAlternatively Spliced Isoformの同定
各発現組織または細胞系列におけるGalNAc−T12転写物の多数のAlternatively Spliced Isoformを決定するために、2つのプライマー(si−3:5’−GTCGGCTGGTTCTGCCAGTCTTCG−3’(配列番号63)およびsi−4:5’−TGGAAGGTCCGTGCAATACACCAG−3’(配列番号64))を用いてRT−PCRを行った。PCRプログラムは、95℃5分での最初の変性、続いて95℃30秒、58℃30秒、72℃30秒の50サイクル、および72℃5分での最終のインキュベーションからなる。PCR産物を4つの制限エンドヌクレアーゼ:Hae II、Hinf I、Hae IIIおよびNci Iによって消化し、次いで、10% PAGEで電気泳動によって解析し、エチジウムブロマイド(0.5μg/ml)によって染色した。
GalNAc−T12のcDNA配列とGenome Project Databaseに寄託されたゲノム配列との比較によって、2つの酵素、GalNAc−T12および−T2の染色体位置、並びにゲノム構造を決定した(図16パネルA)。GalNAc−T12(受入れ番号NT005194)のゲノム配列は染色体2に位置し、228kbの長さであり、少なくとも17個のエキソンを含み、各エキソンの長さはGalNAc−T2(受入れ番号NT021973)とほぼ同等であった。本発明者らが取得した新規配列(番号AB078144)は、登録された配列(No.AK022753)および図16パネルA−Bとは異なっていたが、これらはGalNAc−T12の2つのAlternatively spliced isoformであることは明らかである。第一のisoform(No.AB078144)は15個のエキソンを含み、第二のisoform(No.AK022753)は16個のエキソンを含む(図16パネルB)。
実施例21
GalNAc−T12のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素活性の確認
GalNAc−T12の酵素活性の測定は実施例14に示したように行い、基質にはMuc5AC、Muc2、およびMuc13−58由来のペプチド(表2を参照)を用いた。
上記ペプチドをGalNAc−T12及びGalNAc−T2とともに48時間インキュベートし、反応生成物をそれぞれ異なる時間でHPLCによって解析した(図17)。図17パネルA、カラムIに示したように、Muc5ACの50%が反応によって消化された場合、GalNAc−T12および−T2の両方とも3本のピーク(GalNAc−T12に対してはP1、P2およびP3(上段)、GalNAc−T2に対してはP1’、P2’およびP3’(下段))を同じ保持時間(20.33分、20.92分および20.60分)が現れた。GalNAc−T12における主要な生成物ピーク(P2)、およびGalNAc−T2における主要な生成物ピーク(P1’)は異なる保持時間で現れた。その後、はじめのMuc5ACの80%が反応によって消費された場合、保持時間が延長されるにつれて(図17パネルA、カラムII)、それぞれの主要な生成物ピークが保持された。ここで、新規な糖ペプチド種をHPLCによって単離し、MALDI−TOF質量分析によって確認した。付加されたGalNAc残基の数は、P1およびP1’は一つ、P2およびP2’もまた一つであったが、P3およびP3’は二つのGalNAcが付加していることが分かる。以上の結果より、P2およびP1’は異なる保持時間で現れたが、一つのGalNAcが付加されているので、GalNAc−T12および−T2はMuc5ACの異なる位置に最初のGalNAcを主に付加したことを示している。また、図17パネルA、カラムIIIでは、全ての元々の基質がちょうどすっかり消失した場合、2つの酵素の反応生成物パターンは非常に異なり、GalNAc−T12は多種のGalNAc−T付加産物を生成していることが分かる。
Muc2に対するGalNAc−T12および−T2の活性をHPLCで比較すると、生成物ピークP1(T12について)とP1’(T2について);P2(T12)とP2’(T2)は、それぞれ同じ保持時間:20.99分と20.58分に現れていることが分かる(図17パネルB)。MALDI−TOF質量分析によって、P1とP1’はモノ−GalNAc糖ペプチドであり、P2とP2’はジ−GalNAc糖ペプチドであった。GalNAc−T2は、GalNAc−T12より速くMuc2に第二のGalNAcを付加する傾向にあることが図17パネルBから見出すことができる。従って、GalNAc−T12は、GalNAc−T2とは異なる保持時間を示し、GalNAc−T2とは異ったGalNAc付加産物を生成するという特徴を有している。
これは、50%および20%の基質が消化された場合に、P2はまだ検出できないが、一方、P2’は現われ、そのピークが増大したことによる。全ての基質がちょうど消化された場合、P2は非常に小さいが、P2’は高レベルであり、そして保持時間がP2’より小さい、多くのピーク(三つのGalNAcが含まれることがMALDI−TOFによって確かめられているが、データは示さず)がGalNAc−T2について現れた。GalNAc−T12については、最初の基質が完全に消化された後に、反応生成物を試験した(データ示さず)。保持時間が延長されるにつれて、P1は減少し、その代りにP2が増大し、そして、意図時間がP2よりも短い、より多くのピーク(3個のGalNAc残基を含むことがMALDI−TOFによって確かめられているが、データは示さず)が現れた。また、GalNAc−T12は、Muc2により多くのGalNAcを付加させることができる。
Muc13は、上皮細胞及び血液細胞に発現するヒト細胞表面ムチンである。本発明者が設計したペプチド基質であるMuc13−58はTSPAPボックスを有し、これはムチンボックス(XTPXP)に類似しているが少し異なる。Muc13−58に対するGalNAc−T12および−T2の活性は、ほぼ同等であった(図17パネルC)。P1(T12について)およびP1’(T2について);P2(T12)およびP2’(T2)は、それぞれ同じ保持時間:22.96分および23.29分で現れた。各生成物ピークの大きさは、消化される最初の基質量に応じて互いに均等であった。
実施例22
リアルタイムPCRによるヒト組織および細胞系列におけるGalNAc−T12転写物の定量解析による分布の解析
多種のヒト正常組織および細胞系列におけるGalNAc−T12の発現レベルを定量的リアルタイムPCRを用いて調べた。
GalNAc−T13転写物の定量解析は、実施例17に記載の方法に準じて行った。ヒト組織cDNAは、脳全体、大脳皮質、胸腺、肺、心臓、乳腺、肝臓、胃、小腸、大腸、膵臓、脾臓、腎臓、膀胱、子宮、胎盤、精巣、卵巣、骨格筋、白血球、B細胞、骨髄、胎児脳、胎児胸腺、胎児肺、胎児肝臓、胎児小腸、胎児脾臓、胎児腎臓、胎児骨格筋、および胎児に由来するものを用いた。ガン細胞系列のcDNAとしては、NAGAI、NB−9、SCCH−26、IMR32、SK−N−SH、GOTO、NT2−R10、SK−N−MC、A172、KG−1−C、YKG−1、T98G、U25I、PC−1、EBC−1、PC−7、SBC−1、MKN−45、KATO III、HSC43、Colo205、HCT15、LSC、LSB、SW480、SW1116、HepG2、Capan−2、HL60、K562、Namalwa、Jurkat、U937、Raji、およびRamosに由来するものを用いた。
また、GalNAc−T12のプライマーセットおよびプローブは以下のものである;フォーワードプライマー(エキソン5にコードされる):5’−TGAGATGCACACTGCTGGTGTATTG−3’(配列番号65)、リバースプライマー(エキソン5−6にコードされる):5’−GGGTGCGGTTTAATACACTGCG−3’(配列番号66)、およびプローブ(エキソン5における):5’−AACGAGGCCCGCTCCACGCTGCT−3’(配列番号67)。PCRは、95℃30秒、60℃15秒、72℃30秒を50サイクルで行った。
GalNAc−T12転写物は、試験した全てのヒト成人および胎児組織によって普遍的に発現している。特に、腎臓と胎児腎臓において発現が高かった(図18パネルA)。しかしながら、試験した細胞系列における発現パターンは、組織よりも制限され、神経芽腫、ある種の腺癌(PC−7)、胃癌(MKN45)、白血病(HL60、Namalwa、Jurkat)、およびバーキット病(Ramos、Raji、Dudi)に限定される(図18パネルB)。続いて、6種の組織(腎臓、胎児腎臓、脳、胎児脳、骨髄および胎児肝臓)、および6種の細胞系列(HL−60、MKN45、GOTO、Namalwa、Daudi、SCCH−26)においてGalNAc−T12転写物の2つのAlternatively spliced isoformの存在を確認した。そこで、エキソン2、3または4を含んでいるはずの断片を増幅した。エキソン2、3および4は、それぞれHae II、Hinf I、またはHae IIIとNci I部位を含むため、isoformを確認するために上記4つの制限エンドヌクレアーゼを用いて増幅した断片を消化した。図16パネルCに見られるように、増幅されたバンドは、Hae IIIおよびNci Iによってのみ消化されたが、しかしながら、Hae IIまたはHinf Iによって消化された断片は検出できなかった。上記の結果は、isoform 1が主な転写物であり、一方、isoform 2が副産物であることを示している。
実施例23
GalNAc−T11のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素活性の確認
GalNAc−T11の酵素活性の測定は実施例14に示したように行い、基質にはMuc1a、Muc2、Muc5AC、Muc7、Muc13(58)、SDC284、およびEA2由来のペプチドを用いた。
図19は、各受容体基質に対するGalNAc−T11の反応前(パネル上段)および反応後(パネル下段)のHPLCチャートを示している。酵素反応時間はそれぞれ6時間であるが、Muc5Acについては48時間反応させたものについても示した。
実施例24
リアルタイムPCRによるヒト組織および細胞系列におけるGalNAc−T11転写物の定量解析による分布の解析
多種のヒト正常組織および細胞系列におけるGalNAc−T12の発現レベルを定量的リアルタイムPCRを用いて調べた。
GalNAc−T13転写物の定量解析は、実施例17に記載の方法に準じて行った。ヒト組織cDNAは、脳全体、大脳皮質、小脳、胎児脳、骨髄、甲状腺、胸腺、脾臓、白血球、心臓、細胞骨格、肺、肝臓、食道、胃、小腸、大腸、膵臓、腎臓、副腎、乳腺、子宮、胎盤、卵巣、精巣、および前立腺に由来するものを用いた(図20参照)。
また、GalNAc−T11のプライマーセットおよびプローブは以下のものである;フォーワードプライマー:5’−AGCGTCATCATCACCTTCCA−3’(配列番号68)、リバースプライマー:5’−TTCGGTTCAGGACACTCTTCAC−3’(配列番号69)、およびプローブ:5’−CCGTTCCACCCTGCGCGC−3’(配列番号70)。
GalNAc−T11とGAPDHに対する標準曲線を各プラスミドDNAの連続的な希釈によって作成した。GalNAc−T11転写物の発現レベルは、同じcDNAで測定したGAPDH転写物の発現レベルによって標準化した。発現レベルは、全RNAの1μgにおける標的遺伝子のコピー数として表した(図20)。なお、データは3回の実験から得たものであり、平均値±標準偏差として示した。
実施例25
GalNAc−T17のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素活性の確認
GalNAc−T17の酵素活性の測定は実施例14に示したように行い、基質にはEA2、Muc1a、Muc2、Muc13(58)、Muc5AC、SDC284、およびHRP由来のペプチドを用いた。
図21は、各受容体基質に対するGalNAc−T17の反応前(パネル上段)および反応後(パネル下段)のHPLCチャートを示している。酵素反応時間はそれぞれ6時間である。
実施例26
リアルタイムPCRによるヒト組織および細胞系列におけるGalNAc−T17転写物の定量解析による分布の解析
多種のヒト正常組織および細胞系列におけるGalNAc−T17の発現レベルを定量的リアルタイムPCRを用いて調べた(図22)。
GalNAc−T13転写物の定量解析は、実施例17に記載の方法に準じて行った。ヒト組織cDNAは、実施例17に記載した組織に由来するものを用いた(図22パネルA参照)。ガン細胞系列のcDNAとしては、実施例17に記載したほかに、U266(骨髄腫)、A431(扁平上皮)、SW116(大腸)、およびCapan−2(膵臓)に由来するものを用いた(図22パネルB参照)。
また、GalNAc−T11のプライマーセットおよびプローブは以下のものである;フォーワードプライマー:5’−GGATGTGCTCGTCTTCATGGA−3’(配列番号71)、リバースプライマー:5’−GATACCACTCGGCTCCTGTCA−3’(配列番号72)、およびプローブ:5’−CTGGAGCCCCTCCTCAGCAGAATAGC−3’(配列番号73)。
産業上の利用の可能性
本発明により、コアタンパク質やペプチド配列のセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンをα1結合で転移する活性を有する酵素が単離され、その遺伝子の構造が明らかにされた。したがって、該酵素等の遺伝子工学的な生産、該酵素に基づくGalNAc修飾ペプチドあるいはGalNAc修飾タンパク質などの基質としての生産、該酵素に基づく未知O−結合型糖鎖の付加したタンパク質あるいは未知ペプチドのO−結合型糖鎖修飾位置の同定や、該遺伝子らに基づく疾患の診断が可能になった。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、FITCラベルしたEA2サンプルをHPLC分析で保持時間20.27分のピークとして分取し、凍結乾燥後、MALDI−TOF質量分析装置で分析した結果を示すチャートである。
図2は、EA2を受容体基質として、既知のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc−T10)と反応させて得られた反応液をHPLC分析し、受容体基質EA2ピーク(保持時間20.27分)と0.72分差を示す単一の産物ピーク(保持時間19.55分)を分取し、凍結乾燥後、MALDI−TOF質量分析装置で分析した結果を示すチャートである。
図3は、FAMラベルされたMuclaペプチドを基質としたGalNAc−T14の反応の経時変化の追跡を示すHPLCチャートである。
図4は、FAMラベルされたMuc5ACペプチドを基質としたGalNAc−T14の反応の経時変化の追跡を示すHPLCチャートである。
図5は、種々のFAMラベルされた受容体基質を用いたGalNAc−T14の一次GalNAc−T活性の測定における、反応前と反応後のHPLCチャートである:Sは反応前の基質ピークを表し、Pは生成物ピークを示す。
図6は、一箇所GalNAc化を受けた種々のFAMラベルされた受容体基質を用いたGalNAc−T14の二次GalNAc−T活性の測定における、反応前と反応後のHPLCチャートである:Sは反応前の基質ピークを表し、Pは生成物ピークを示す。
図7は、リアルタイムPCRによる種々のヒト組織におけるGalNAc−T14転写物の定量解析の結果を示すグラフである。
図8は、リアルタイムPCRによる種々のヒト細胞系列におけるGAlNAc−T14転写物の定量解析の結果を示すグラフである。
図9は、種々のFAMラベルされた受容体基質を用いたGalNAc−T13の反応前と反応後のHPLCチャートである:Sは反応前の基質ピークを表し、Pは生成物ピークを示す。
図10は、FAMラベルされたMuclaペプチドを基質としたGalNAc−T13(パネルA)及びGalNAc−T6(パネルB)の反応の経時変化の追跡を示すHPLCチャートである。
図11は、FAMラベルされたMuclaペプチドを基質としたGalNAc−T13(パネルA)及びGalNAc−T6(パネルB)の反応の経時変化の追跡を示すHPLCチャートである。
図12は、EA2ペプチド(S)及びGalNAc−T13(P1ないしP5)及び−T6(P1’ないしP2’)によって生じた反応生成物のHPLCチャート(パネルA)、及び単離した各ピークに対するMALDI−TOF質量分析スペクトル(パネルB)を示す:ジ、ジ−糖ペプチド;トリ、トリ−糖ペプチド;テトラ、テトラ−糖ペプチド。
図13は、EA2糖ペプチド基質及びGalNAc−T13によって生じた反応生成物のHPLCチャートである。S”は、GalNAc−T13の二次活性アッセイ用の糖ペプチド基質として使用されるモノGalNAc−EA2に対応する。P1”、P2”及びP3”は、GalNAc−EA2を用いてGalNAc−T13によって生じた生成物に対応する。
図14は、リアルタイムPCRによる種々のヒト組織におけるGalNAc−T13転写物の定量解析の結果を示すグラフである。
図15は、リアルタイムPCRによる種々のヒト細胞系列におけるGalNAc−T13転写物の定量解析の結果を示すグラフである。
図16は、GalNAc−T12転写物のAlternatively Spliced Isoformの同定について示す。
図17は、FAMラベルされた受容体基質(Muc5AC(パネルA)、Muc2(パネルB)およびMuc13−58(パネルC))を用いたGalNAc−T12の一次GalNAc−T活性の測定における、反応前と反応後のHPLCチャートである。各基質の残存量が、I:50%、II:20%、およびIII:0%である場合のHPLCチャートを示す。
図18は、リアルタイムPCRによる種々のヒト組織(パネルA)および細胞系列(パネルB)におけるGalNAc−T12転写物の定量解析を示すグラフである。
図19は、種々のFAMラベルされた受容体基質を用いたGalNAc−T11の一次GalNAc−T活性の測定における、反応前と反応後のHPLCチャートである。
図20は、リアルタイムPCRによる種々のヒト組織におけるGalNAc−T11転写物の定量解析を示すグラフである。
図21は、種々のFAMラベルされた受容体基質を用いたGalNAc−T17の一次GalNAc−T活性の測定における、反応前と反応後のHPLCチャートである。
図22は、リアルタイムPCRによる種々のヒト組織(パネルA)および細胞系列(パネルB)におけるGalNAc−T17転写物の定量解析を示すグラフである。
Claims (19)
- 配列表の配列番号1−7に示されるアミノ酸配列又は該アミノ配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ配列に1若しくは複数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、タンパク質あるいはペプチドのセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)をα1結合で転移する活性を有するタンパク質。
- 前記タンパク質は、配列番号1−7に示されるアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する請求項1記載のタンパク質。
- 前記タンパク質は、配列番号1−7に示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有する請求項1記載のタンパク質。
- 前記タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列又は該配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ配列に1若しくは数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ酸配列を有する請求項1記載のタンパク質。
- 前記タンパク質は、配列番号1−7に示されるアミノ酸配列を有する請求項4記載のタンパク質。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする核酸。
- 配列番号8−14に示される塩基配列を有する核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、請求項1記載のタンパク質をコードする核酸。
- 配列表の配列番号8に示される塩基配列の1nt〜1629nt、配列番号9に示される塩基配列の1nt〜1659nt、配列番号10に示される塩基配列の1nt〜1812nt、配列番号11に示される塩基配列の1nt〜1746nt、配列番号12に示される塩基配列の1nt〜1824nt、配列番号13に示される塩基配列の1nt〜1797ntおよび配列番号14に示される塩基配列の1nt〜1920ntまでの塩基配列を有する請求項6記載の核酸。
- 請求項6ないし8のいずれか1項に記載の核酸を含み、宿主細胞中で該核酸を発現することができる組換えベクター。
- 請求項6ないし8のいずれか1項に記載の核酸が導入され、該核酸を発現する細胞。
- 請求項6ないし8のいずれか1項に記載の核酸、又は当該核酸の塩基配列と相補的な塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを特徴とする測定用核酸。
- 請求項8記載の核酸中の部分領域と相補的な配列を有する請求項11記載の測定用核酸。
- プローブ又はプライマーである請求項11又は12記載の測定用核酸。
- 塩基数が15塩基以上である請求項13記載の測定用核酸。
- 請求項11ないし14のいずれか1項に記載の測定用核酸のうち少なくとも一つ含むマイクロアレイ。
- 請求項11ないし14のいずれか1項に記載の測定用核酸及び測定説明書を含む測定用キット。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質を含む糖鎖合成キット。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質を用いて合成したTn抗原(GalNAc−Ser/Thr)を持つ多抗原性の糖ペプチドを用いた免疫感作療法。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質を用いた、未知O−結合型糖鎖の付加したタンパク質あるいは未知ペプチドのO−結合型糖鎖修飾位置の同定法。
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