JP5083593B2 - 精巣に発現する糖鎖関連酵素調節因子o−16 - Google Patents

精巣に発現する糖鎖関連酵素調節因子o−16 Download PDF

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Description

本発明は、糖鎖関連酵素に会合し、該酵素の活性を調節する、精巣に特異的に発現するタンパク質、またはそれをコードする核酸を含む組成物に関する。
哺乳類の受精は、精子と卵子の細胞表面に発現するまたは細胞外に分泌されるタンパク質の種類や、糖タンパク質、糖脂質などの糖鎖構造の違いによって調節されている。受精は種特異的に行われ、主に卵透明帯の糖タンパク質に発現した糖鎖を識別して精子が結合することに基づいていると考えられている。一方、受精に関連する糖タンパク質等の発現や機能を制御する、精子や卵子の細胞内の作用機序も明らかになってきた。
糖タンパク質の糖鎖は、タンパク質またはペプチド上のアルギニン残基に結合するN結合型糖鎖、およびセリン/スレオニン残基に結合するO結合型糖鎖に分類され、糖鎖を構成する糖残基の種類や数によって糖鎖構造は様々である。このような糖鎖構造は、細胞内の糖転移酵素、糖鎖合成酵素、または糖鎖分解酵素のような糖鎖関連酵素によって、糖タンパク質の発現過程において精密に制御されている。さらに、このような糖鎖関連酵素もまた、細胞内の各種調節因子によって機能が制御されている。
これまでに、糖鎖関連酵素を調節する因子としては、Cosmc[Ju,T.Z.およびCummings,R.D.,(2005):非特許文献1]などが知られている。
また、糖転移酵素では、コアタンパク質やペプチド配列のセリン、スレオニン残基の水酸基にN−アセチルガラクトサミンを転移する活性を有するヒト糖転移酵素酵素としては14種類が知られている。GalNAc−T1、−T2[White,T.ら(1995):非特許文献2]、−T3[Bennet,E.P.ら(1996):非特許文献3]、−T4[Bennet,E.P.ら(1998):非特許文献4]、−T6[Bennet,E.P.ら(1999):非特許文献5]、−T7[Bennet,E.P.ら(1999):非特許文献6]、−T8[White,K.E.ら(2000):非特許文献7]、−T9[Toba,S.ら(2000):非特許文献8]、-T10[Cheng,L.ら(2002):非特許文献9]、-T11[Schwientek,T.ら(2002):非特許文献10]、-T12[Guo,J.−M.ら(2002):非特許文献11]、-T13[Zhang,Y.ら(2003):非特許文献12]、-T14[Wang,H.ら(2003):非特許文献13]、および-T15[Cheng,L.ら(2004):非特許文献14]が同定され、遺伝子構造について明らかにしている。が公知となっている。
マウスの組織に発現する糖転移酵素および糖合成酵素としては、少なくとも150種類が知られている[Young,W.W.ら(2003)(1):非特許文献15]。また、マウス組織の中で、精巣特異的に発現する糖転移酵素としては、GalNAc−T3およびTb[Young,W.W.ら(2003)(2):非特許文献16]が公知となっている。
糖鎖分解酵素で精巣特異的に発現するものとしては、PH−20[Lin,Y.,ら、(1993):非特許文献17]が知られている。
こうした糖鎖関連酵素の発現の有無、発現時期、発現量の変化に基づいて、細胞表面やタンパク質上の糖鎖構造や糖鎖密度が変化することに起因して、受精困難に伴う不妊症を
含む各種障害・疾患が引き起こされることが知られている[Akama,T.O.ら、(2002):非特許文献18、Honke,K.ら(2002):非特許文献19]。
このように受精において糖鎖は極めて重要な役割を果たしており、糖鎖構造を決定する糖鎖関連酵素、さらには糖鎖関連酵素の機能を調節するタンパク質、および遺伝子改変による組換えタンパク質の利用は、受精のメカニズムの分子レベルでの解明だけでなく、受精に関する各種障害・疾患などに重要な役割を果たすと考えられる。
Ju,T.Z.およびCummings,R.D.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:16613−16618(2002) White,T.,et al.,J.Biol.Chem.,270,24156−24165(1995) Bennett,E.P.,et al.,J.Biol.Chem.,271,17006−17012(1996) Bennett,E.P.,et al.,J.Biol.Chem.,273,30472−30481(1998) Bennett,E.P.,et al.,J.Biochem.,274,25362−25370(1999) Bennett,E.P.,et al.,FEBS Lett.,460,226−230(1999) White,K.E.,et al.,Gene,246,347−356(2000) Toba,S.,et al.,Biochim.Biophys.Acta.,1493,264−268(2000) Cheng,L.,et al.,FEBS Lett.,531,115−121 (2002) Schwientek,T.J.,et al.,J.Biol.Chem.,277,22623−22638(2002) Guo,J.M.,et al.,FEBS Lett.,524,211−218(2002) Zhang,Y.,et al.,J.Biol.Chem.,278,573−584(2003) Wang,H.,et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,300,738−744(2003) Cheng,L.,et al.,FEBS Lett.,566,17−24(2004) Young,W.W.et al.,Glycobiology Advance Access (published on March 19,2003),Oxford University Press Young,W.W.et al.,Glycobiology,13,549−557(2003) Lin,Y.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:10071−10075(1993) Akama,T.O.,et al.,Science,295:124−127(2002) Honke,K.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:4227−4232(2002)
糖転移酵素、糖鎖分解酵素、糖鎖合成酵素等の糖鎖関連酵素に会合し、該酵素の活性を調節する機能を有するタンパク質またはそれをコードする核酸を含む糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物を使用して、糖鎖関連酵素に基づく疾患の診断・治療を可能にすることを目的とする。
従って、本発明の目的は、精巣特異的に発現し、糖鎖関連酵素に会合し、該酵素の活性を調節するタンパク質、またはそれをコードする核酸を含む糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物を提供することである。
受精を制御する糖鎖関連酵素の発現または機能を調節するタンパク質またはそれをコードする核酸は、これまで知られていない。一般に、細胞に微量しか含まれないタンパク質を単離・精製することは容易ではない。従って、現在に至るまで単離されていないタンパク質を細胞から単離することは容易でないことが予測される。そこで、本発明者らは、目的のタンパク質と比較して作用が類似していると考えられる種々の遺伝子の塩基配列間に、同一性が高いと考えられる領域を標的として、その相同配列を有すると思われるタンパク質を単離および同定した。具体的には、公知のGalNAc−T11の塩基配列(GenBank Accession No.AK025287)をクエリー配列として遺伝子データベース(NCBI、blastn)を検索し、相同領域を有するEST配列を見出した。次に、このEST配列をもとにしてプライマーを設計し、精巣のcDNAライブラリー(Marathon、Clontech)からPCR法で全長のオープンリーディングフレーム(ORF)を同定した(実施例1)。さらに、PCRで該タンパク質の遺伝子のクローニングに成功し、その塩基配列および推定アミノ酸配列を決定することによって、本発明を完成するに至った。
本発明は、糖鎖関連酵素の活性を調節するタンパク質およびそれをコードする核酸を含む糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物を提供することにより、当該技術分野におけるこれらの多様な必要性を満たすのを援助する。
即ち、本発明によれば、精巣特異的に発現するタンパク質であって、糖鎖関連酵素に会合し、該糖鎖関連酵素の活性を調節するタンパク質を含む糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物が提供される。
本発明の糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物に使用されるタンパク質は、典型的には、配列番号1に記載の塩基配列から推定される配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する。
前記タンパク質には、配列番号2に記載のアミノ酸のみでなく、精巣特異的に発現するタンパク質であって、糖鎖関連酵素に会合し、該糖鎖関連酵素の活性を調節するという機能を有する限り、当該配列と少なくとも70%の同一性を有するものも含まれ、当該配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、または当該配列において1若しくは複数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質が含まれる。
本発明の糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物に使用されるタンパク質は、好ましくは配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
前記タンパク質には、細胞外へ分泌されないタンパク質が含まれる。ここで、「細胞外への分泌されない」とは、細胞において発現したタンパク質がその細胞外に全く分泌されないか、または細胞外に分泌されたとしてもプロテアーゼ等によって分解もしくは断片化してしまうため検出されないレベルをいう。本発明の組成物に使用されるタンパク質は、好ましくは、当該タンパク質のN末端の膜貫通領域を欠落させ、代わりにシグナルペプチドを連結させた形で発現させた場合においても、細胞外へ分泌されない。
本発明によれば、前記タンパク質をコードする核酸を含む糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物が提供される。
前記核酸は、典型的には、配列番号1に記載の塩基配列、前記配列中に1から複数個の塩基の置換、欠失、挿入および/または付加を有する塩基配列、あるいは前記塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、および上記配列に相補的な核酸も含む。限定されるわけではないが、配列番号1に記載の塩基配列におけるヌクレオチド1−1329を含む核酸もまた本発明の一態様である。
発明を実施するための形態
以下、本発明の説明のために、好ましい実施形態に関して詳述する。
本発明によれば、精巣に特異的に発現し、糖鎖関連酵素に会合するタンパク質またはそれをコードする核酸を含む、糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物が提供される。
(1)タンパク質
下記実施例において詳述する方法によりクローニングされた、本発明の糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物に使用されるタンパク質をコードする核酸は、配列表の配列番号1に示される塩基配列を有する。該核酸がコードする推定アミノ酸配列を配列番号2に記載する。なお、当該核酸のヌクレオチド配列および推定されるアミノ酸配列はすでに公知となっている(Young,W.W.,et al.,Glycobiology,13:549−557(2003))。
下記実施例で得られたタンパク質(本明細書では、「O−16」という)は、次の性質を有するタンパク質である。なお、該O−16タンパク質の性質およびその活性の測定方法は後述の実施例等において詳述されている。
本発明によれば、精巣特異的に発現するタンパク質であって、糖鎖関連酵素に会合し、該糖鎖関連酵素の活性を調節するタンパク質を含む糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物が提供される。ここで、該タンパク質は、本明細書に記載した特徴を有する限り、その起源、製法等は限定されない。即ち、該タンパク質は、天然産のタンパク質、遺伝子工学的手法により組換えDNAから発現されたタンパク質、または化学合成タンパク質の何れでもよい。
O−16タンパク質は、典型的には、配列番号2に記載したアミノ酸残基443個からなるアミノ酸配列を有する。しかしながら、天然のタンパク質の中には、それを生産する生物種の品種の違いや、生体型(ecotype)の違いによる遺伝子の変異、あるいはよく似たアイソザイムの存在等に起因して、1から複数個のアミノ酸変異を有する変異タンパク質が存在することは周知である。なお、本明細書で使用する用語「変異タンパク質」とは、配列番号2に示されたアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、または該アミノ酸配列に1若しくは複数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、精巣特異的に発現するタンパク質であって、糖鎖関連酵素と会合し、該糖鎖関連酵素の活性を調節する機能を有するタンパク質等を意味する。ここで、「複数個」とは、好ましくは1−300個、より好ましくは1−100個、最も好ましくは1−50個である。限定されるわけではないが、部位特異的な変異によってアミノ酸が置換された場合に、元々のタンパク質が有する活性は保存される程度に置換が可能なアミノ酸の個数は、一般的には、好ましくは1−10個である。
O−16タンパク質は、クローニングされた核酸の塩基配列からの推定に基づいて、配列番号2のアミノ酸配列を有するが、その配列を有するタンパク質のみに限定されるわけではなく、本明細書中に記載した特性を有する限り全ての相同タンパク質を含むことが意図される。同一性は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%である。
本明細書において、アミノ酸配列のパーセント同一性は、重複部分と同一性を最大化する一方で、配列ギャップを最小化するように並列した場合のタンパク質(またはポリペプチド)のアミノ酸配列を比較することによって決定される。2つのアミノ酸配列のパーセント同一性は、目視検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。当業者により使用される配列比較プログラムでは、例えば、国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bl2.htmlにより使用が可能なBLASTPプログラム(バージョン2.2.7)が使用可能である。プログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳説されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。なお、当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、使用可能である。
一般的に、同様の性質を有するアミノ酸同士の置換(例えば、ある疎水性アミノ酸から別の疎水性アミノ酸への置換、ある親水性アミノ酸から別の親水性アミノ酸への置換、ある酸性アミノ酸から別の酸性アミノ酸への置換、あるいはある塩基性アミノ酸から別の塩基性アミノ酸への置換)を導入した場合、得られる変異タンパク質はもとのタンパク質と同様の性質を有することが多い。遺伝子組換え技術を使用して、このような所望の変異を有する組換えタンパク質を作製する手法は当業者に周知であり、このような変異タンパク質も本発明の範囲に含まれる。
本発明の糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物に使用されるタンパク質は、例えば、後述する実施例に従って、本発明の核酸による配列番号1のDNA配列を大腸菌、酵母、昆虫細胞、または動物細胞に、それぞれの宿主で増幅可能な発現ベクターを用いて導入および発現させることにより、当該タンパク質を大量に得ることができる。
本発明によって、このタンパク質のアミノ酸配列およびそれをコードするDNA配列に基づいて、当該配列またはその一部を利用して、ハイブリダイゼーション、PCR等の核酸増幅反応等の遺伝子工学的手法を用いて、他の生物種から同様の生理活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を容易に単離することができる。
なお、本発明の糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物に使用されるタンパク質は、そのアミノ酸配列が上述した通りのものであり、糖鎖関連酵素に会合し、該酵素の活性を調節する活性を有するものであれば、タンパク質に糖鎖が結合していてもよい。本明細書で使用する用語「会合」とは、分子間相互作用により2またはそれ以上の分子が1つの分子のように挙動することを意味する。「会合」には、結合、凝集、捕捉、融合、接触、共局在などが例示される。
より具体的には、O−16タンパク質は、哺乳動物の精巣に発現するタンパク質である限り特に限定されないが、精子形成細胞において発現するタンパク質であることが好ましい。ここで、精子形成細胞とは、精巣の曲精細管を構成する精上皮から精子細胞を分化・発生するまでの全過程において現れる細胞の総称をいい、精祖細胞、精母細胞、精子細胞が例示される。さらに好ましい態様において、O−16タンパク質は、精子細胞(spermatocyte)に発現する。
本発明によれば、糖鎖関連酵素の活性を調節する機能を有するタンパク質を含む糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物が提供される。ここで、糖鎖関連酵素の活性の「調節」には、活性の抑制、増強、消失、および維持のいずれもが包含される。好ましくは、抑制である。
糖鎖関連酵素の活性の抑制は、好ましくは約50%抑制、より好ましくは約70%抑制、さらにより好ましくは約90%抑制、最も好ましくは約100%抑制である。
前記タンパク質が会合する糖鎖関連酵素は、糖転移酵素、糖鎖分解酵素、糖鎖合成酵素が含まれるが、該タンパク質が会合するタンパク質である限り特に限定されない。
糖転移酵素は、ガラクトース転移酵素、グルコース転移酵素、N−アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc転移酵素)、N−アセチルグルコサミン転移酵素(GlcNAc転移酵素)、フコース転移酵素、シアル酸転移酵素、グルクロン酸転移酵素、マンノース転移酵素、キシロース転移酵素、β−1,4−ガラクトース転移酵素、Core1 β−1,3−ガラクトース転移酵素、好ましくは、N−アセチルガラクトサミン転移酵素、β−1,4−ガラクトース転移酵素、Core1 β−1,3−ガラクトース転移酵素、である。より好ましくは、N−アセチルガラクトサミン糖転移酵素、β−1,4−ガラクトース転移酵素である。最も好ましくは、N−アセチルガラクトサミン糖転移酵素である。
糖鎖分解酵素は、糖鎖加水分解酵素、エステラーゼ、ヒアルロニダーゼである。好ましくはヒアルロニダーゼである。
糖鎖合成酵素は、コンドロイチン硫酸合成酵素、ヘパリン/ヘパラン硫酸合成酵素、ヒアルロン産合成酵素である。好ましくは、コンドロイチン硫酸合成酵素である。
また本発明のタンパク質は、細胞外へ分泌されないことを特徴とする。ここで、「細胞外への分泌されない」とは、細胞において発現したタンパク質がその細胞外に全く分泌されないか、または細胞外に分泌されたとしてもプロテアーゼ等によって分解もしくは断片化してしまうため検出されないレベルをいう。本発明のタンパク質は、好ましくは、当該タンパク質のN末端の膜貫通領域を欠落させ、代わりにシグナルペプチドを連結させた形で発現させた場合においても、細胞外へ分泌されない。
本発明によれば、本発明の糖鎖関連酵素活性調節用組成物タンパク質が糖鎖関連酵素と会合する特徴を有することを利用して、試料中の未知の糖鎖関連酵素を検出する方法が提供される。
本発明によれば、精子形成および/または受精を調節するための組成物が提供される。精子形成、受精を調節することには、精子形成異常および/または受精困難による不妊症の治療または予防が含まれる。
(2)核酸
本発明の糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物に使用される核酸は、一本鎖および二本鎖型両方のDNA、およびそのRNA相補体も含む。DNAには、例えば、天然由来のDNA、組換えDNA、化学合成したDNA、PCRによって増幅されたDNA、およびそれらの組み合わせが含まれる。本発明の核酸としては、DNAが好ましい。本明細書において、ある特定の塩基配列について記載する場合、特に言及しない限り、その相補鎖も含む。
前記核酸は、配列番号2に示されるアミノ酸をコードする核酸(その相補体を含む)である。典型的には、配列番号1の塩基配列(その相補体を含む)を有するが、これは本発明の一例を示すにすぎない下記の実施例で得られたクローンの塩基配列である。天然の核酸の中には、それを生産する生物種の品種の違いや、生態型の違いに起因する少数の変異やよく似たアイソザイムの存在に起因する少数の変異が存在することは当業者に周知である。従って、前記核酸は、配列番号1に記載の塩基配列を有する核酸のみに限定されるわけではなく、本発明の糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物に使用されるタンパク質をコードする全ての核酸を包含する。
特に、本発明によってこのタンパク質のアミノ酸配列およびそれをコードするDNA配列が開示されれば、この配列またはその一部を利用して、ハイブリダイゼーションや核酸増幅反応等の遺伝子工学の基本的手法を用いて、他の生物種から同様の生理活性を有するタンパク質をコードする核酸を容易に単離することができる。このような場合、そのような核酸も本発明の範囲に含まれる。
本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高程度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Vol,第6−7章,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および約60℃、0.
5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。ホルムアミドを含まない場合、適当なハイブリダイゼーション温度は前記より10℃〜20℃高くなる。好ましくは中程度にストリンジェントな条件は、約50℃、2×SSCのハイブリダイゼーション条件を含む。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。一般に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度でのハイブリダイゼーション(例えば、約65℃、0.2×SSCのハイブリダイゼーション)および/または洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、およびおよそ68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液では、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)にSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaHPO、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を代用することが可能であり、洗浄はハイブリダイゼーションが完了した後で15分間行う。当業者に知られていて、以下にさらに記載したように、ハイブリダイゼーション反応と二本鎖の安定性を支配する基本原理を適用することによって望ましい度合いのストリンジェンシーを達成するためには、洗浄温度と洗浄塩濃度を必要に応じて調整することが可能であると理解すべきである(例えば、Sambrookら、2001を参照されたい)。核酸を未知配列の標的核酸へハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドの長さはハイブリダイズする核酸のそれであると仮定される。既知配列の核酸をハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドの長さは核酸の配列を並列し、最適な配列相補性をもつ単数または複数の領域を同定することによって決定可能である。50塩基対未満の長さであることが予測されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(T)より5−10℃低くなければならず、Tは、以下の等式により決定される。長さ18塩基対未満のハイブリッドに関して、T(℃)=2(A+T塩基数)+4(G+C塩基数)。18塩基対を超える長さのハイブリッドに関しては、T(℃)=81.5+16.6(log10[Na])+0.41(G+C%)−(600/N)であり、ここで、Nはハイブリッド中の塩基数であり、そして[Na]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオン濃度である(1×SSCの[Na]=0.165M)。好ましくは、こうしたハイブリダイズする核酸は各々、少なくとも15ヌクレオチド(または、より好ましくは、少なくとも18ヌクレオチド、または少なくとも20ヌクレオチド、または少なくとも25ヌクレオチド、または少なくとも30ヌクレオチド、または少なくとも40ヌクレオチド、または最も好ましくは少なくとも50ヌクレオチド)、またはそれがハイブリダイズする本発明の核酸の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、そして最も好ましくは少なくとも80%)である長さを有し、それがハイブリダイズする本発明の核酸と少なくとも60%(より好ましくは少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、または少なくとも99%、そして最も好ましくは少なくとも99.5%)の配列同一性を有し、ここで配列同一性は、上記により詳しく記載されるように、重複部分と同一性を最大化する一方、配列ギャップを最小化するように並列された、ハイブリダイズする核酸の配列を比較することによって決定される。
核酸増幅反応は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)[Saiki R.K.,et al.,Science,230,1350−1354(1985)]、ライゲース連鎖反応(LCR)[Wu D.Y.,et al.,Genomics,4,560−569(1989); Barringer K.J.,et al.,Gene,89,117−122(1990); Barany F.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,189−193(1991)]および転写に基づく増幅[Kwoh D.Y.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,1173−1177(1989)]等の温度循環を必要とする反応、並びに鎖置換反
応(SDA)[Walker G.T.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,392−396(1992); Walker G.T.,et al.,Nuc.Acids.Res.,20,1691−1696(1992)]、自己保持配列複製(3SR)[Guatelli J.C.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,1874−1878(1990)]およびQβレプリカーゼシステム[リザイルディら、BioTechnology 6,p.1197−1202(1988)]等の恒温反応を含む。また、欧州特許第0525882号に記載されている標的核酸と変異配列の競合増幅による核酸配列に基づく増幅(Nucleic Acid Sequence Based Amplification:NASABA)反応等も利用可能である。好ましくはPCR法である。
上記のようなハイブリダイゼーション、核酸増幅反応等を使用してクローニングされる相同な核酸は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列に対して少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。
核酸の同一性パーセントは、視覚的検査および数学的計算によって決定することが可能である。あるいは、2つの核酸配列のパーセント同一性は、目視検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マジソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereuxら、1984、Nucl.Acids Res.12:387)。この「GAP」プログラムの使用により、2つの核酸配列の比較の他に、2つのアミノ酸配列の比較、核酸配列とアミノ酸配列との比較を行うことができる。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、および非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、SchwartzおよびDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide SequenceおよびStructure)」国立バイオ医学研究財団、353−358頁、1979により記載されるような、GribskovおよびBurgess,Nucl.Acids Res.14:6745,1986の加重アミノ酸比較マトリックス;または他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;またはヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:および(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW−BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry,1993)により決定されれ;WoottonおよびFederhen,1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol.266:544−71も参照されたい)、または、短周期性
の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry,1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、および(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE−スコア(KarlinおよびAltschul(1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE−スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または1e−100である。
(3)タンパク質の単離・精製
本明細書において、本発明の糖鎖関連酵素の活性を調節するための組成物に使用することができるタンパク質を「本タンパク質」と称することがある。
本タンパク質は、上記の核酸を組み込むことにより調製された発現ベクターを含む形質転換細胞を栄養培地で培養することによって発現(生産)することができる。栄養培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源、無機窒素源若しくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖、メタノールなどが、例示される。無機窒素源若しくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示される。また、所望により他の栄養素(例えば無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン等)など)を含んでいてもよい。培養は、当業界において知られている方法により行われる。培養条件、例えば温度、培地のpHおよび培養時間は、本発明のタンパク質が大量に生産されるように適宜選択される。
本タンパク質は、上記培養により得られる培養物より以下のようにして取得することができる。すなわち、本タンパク質が宿主細胞内に蓄積する場合には、遠心分離やろ過などの操作により宿主細胞を集め、これを適当な緩衝液(例えば濃度が10〜100mM程度のトリス緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液などの緩衝液。pHは用いる緩衝液によって異なるが、pH5.0〜9.0の範囲が望ましい)に懸濁した後、用いる宿主細胞に適した方法で細胞を破壊し、遠心分離により宿主細胞の内容物を得る。一方、本タンパク質が宿主細胞外に分泌される場合には、遠心分離やろ過などの操作により宿主細胞と培地を分離し、培養ろ液を得る。宿主細胞破壊液、あるいは培養ろ液はそのまま、または硫安沈殿と透析を行なった後に、本発明のタンパク質の単離・精製に供することができる。単離・精製の方法としては、以下の方法が挙げることができる。即ち、当該タンパクに6×ヒスチジンやGST、マルトース結合タンパクといったタグを付けている場合には、一般に用いられるそれぞれのタグに適したアフィニティークロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。一方、そのようなタグを付けずに本発明のタンパク質を生産した場合には、例えば後述する実施例に詳しく述べられている方法、即ちイオン交換クロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。また、これに加えてゲルろ過や疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィーなどを組み合わせる方法も挙げることができる。
本タンパク質を免疫原として動物に投与することにより、該タンパク質に対する抗体を作製することができ、該抗体を用いて免疫測定法により該タンパク質を測定することが可能になる。従って、本発明のタンパク質およびこれをコードする核酸は、このような免疫原の作製に有用である。
本タンパク質はまた、精製および同定を容易にするために添加されるペプチドを含んでもよい。こうしたペプチドには、ポリ−Hisまたは米国特許第5,011,912号およびHoppら,Bio/Technology,6:1204,1988に記載される抗原性同定ペプチドが含まれるが、これらに限定さるものではない。こうしたペプチドの1つはFLAG(登録商標)ペプチド(Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号10)、Mycペプチド(Met−Glu−Glu−Lys−Leu−Ile−Ser−Glu−Glu−Asp−Leu(配列番号11))であり、該ペプチドは非常に抗原性であり、そしてそれぞれに特異的なモノクローナル抗体が可逆的に結合するエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。また、4E11と称されるネズミハイブリドーマは、本明細書に援用される米国特許第5,011,912号に記載されるように、特定の二価金属陽イオンの存在下で、FLAG(登録商標)ペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生する。4E11ハイブリドーマ細胞株は、寄託番号HB 9259下に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)に寄託されている。FLAG(登録商標)ペプチドに結合するモノクローナル抗体は、Sigma Co.,米国ミズーリ州セントルイス、より入手可能である。また、Mycペプチドに結合するモノクローナル抗体は、BAbCOより入手可能である。
具体的には、後述される実施例5に記載されるように、本タンパク質を発現する発現ベクターにMycタグ(またはFLAGタグ)のcDNAを挿入し、および糖鎖関連酵素を発現する発現ベクターにFLAGタグ(またはMycタグ)のcDNAを挿入し、それぞれ標識したタンパク質および糖鎖関連酵素を発現させ、抗Myc抗体または抗FLAG抗体を用いて、該タンパク質および該糖鎖関連酵素の発現を確認することができる。
なお、本タンパク質は、O−16タンパク質であることが好ましい。
(4)組成物
本発明において使用されるタンパク質は、精巣特異的に発現し、糖鎖関連酵素の活性を調節する効果を有することが明らかにされた。具体的には、後述する実施例5および実施例6に記載したように、本発明のタンパク質は、糖鎖関連酵素、例えば、GalNAc−T3、GalNAc−T1などに結合し、これらの活性を抑制することが示された。また、本発明のタンパク質は、実施例7に記載したように、精巣特異的に発現していることが示された。これらの事実は、O−16タンパク質は、精子形成細胞において、受精に必要とされる糖タンパク質等の発現を制御していることを示唆している。
このことは、O−16タンパク質は、精巣で発現し、受精に関与すると思われる糖鎖関連酵素に結合し、さらに該糖鎖関酵素の活性を調節することを初めて明らかにし、有効なO−16タンパク質を含む組成物を提供するものである。
本発明の前記タンパク質を含む組成物は、精子形成および/または受精を調節するために利用することができる。したがって、本発明の組成物を用いることによって、精子形成および受精を調節することに基づいた、精子形成異常および/または受精困難による不妊症の治療または予防を可能にする。また、本発明の組成物は、正常な妊娠を目的とした健康維持および増進のためのサプリメントとして使用することもできる。
本発明の組成物は、特に、医薬用組成物として有用である。具体的には、精子形成の異常に基づく不妊症の治療または予防のために使用可能である。
本発明の組成物は、薬学的に受容可能な担体との混合物中に、前記タンパク質を治療上有効な量を含む。本発明の組成物は、全身的にまたは局所的に、好ましくは静脈内、皮下内、筋肉内に非経口的に投与し得る。非経口的に投与可能な本発明の組成物は、pH、等張性、安全性等を考慮し、当業者の技術的範囲において行い得る。
本発明の組成物の用量用法は、薬剤の作用、例えば、患者の症状の性質および/若しくは重度、体重、性別、食餌、投与の時間、並びに他の臨床的作用を左右する種々の因子を考慮し、診察する医師により決定され得る。当業者は、これらの要素に基づき、本発明の組成物の用量を決定することができる。
(5)抗体
本発明により、本発明の組成物に使用されるタンパク質に免疫反応性である抗体が提供される。抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。こうした抗体は、(非特異的結合と対照的に)抗体の抗原結合部位を介して、該タンパク質に特異的に結合し得る。具体的には、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはその断片、変異体若しくは融合タンパク質などを、それぞれに免疫反応性である抗体を産生するための免疫原として使用することが可能である。
より具体的には、タンパク質、断片、変異体、融合タンパク質などは、抗体形成を引き出す抗原決定基またはエピトープを含むが、これら抗原決定基またはエピトープは、直鎖でもよいし、より高次構造(断続的)でもよい。なお、該抗原決定基またはエピトープは、当該技術分野に知られるあらゆる方法によって同定できる。したがって、本発明は、本発明のタンパク質の抗原性エピトープにも関する。こうしたエピトープは、以下により詳細に記載されるように、抗体、特にモノクローナル抗体を作成するのに有用である。
本発明のエピトープは、アッセイにおいて、そしてポリクローナル抗体(若しくは抗血清)または培養ハイブリドーマ由来の上清などの物質から特異的に結合する抗体を精製するための研究試薬として使用可能である。こうしたエピトープまたはその変異体は、固相合成、タンパク質の化学的または酵素的切断などの当該技術分野において公知の技術を用いて、あるいは組換えDNA技術を用いて産生することができる。
前記タンパク質によってあらゆる態様の抗体が誘導される。該タンパク質のポリペプチド全部若しくは一部またはエピトープが単離されていれば、慣用的技術を用いてポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれも調製可能である。例えば、Kennetら(監修),Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A
New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York,1980;Burdonら編「生化学実験法10 モノクローナル抗体」東京化学同人、1989を参照されたい。
本発明によれば、本発明のタンパク質に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株も提供される。こうしたハイブリドーマは、慣用的技術によって産生し、そして同定することが可能である。こうしたハイブリドーマ細胞株を産生するための1つの方法は、動物を本発明の酵素タンパク質で免疫し、免疫された動物から脾臓細胞を採取し、該脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させ、それによりハイブリドーマ細胞を生成し、そして該酵素に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することを含む。モノクローナル抗体は、慣用的技術によって回収可能である。
本発明のモノクローナル抗体には、キメラ抗体、例えば、ネズミモノクローナル抗体のヒト化型が含まれる。こうしたヒト化型抗体は、ヒトに投与されて免疫原性を減少させるという利点を有する。
また本発明によれば、上記抗体の抗原結合断片も提供される。慣用的技術によって産生可能な抗原結合断片の例には、FabおよびF(ab’)断片が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子工学技術によって産生可能な抗体断片および誘導体もまた提供される。
本発明の抗体は、in vitroおよびin vivoのいずれにおいても、本発明のタンパク質またはそのポリペプチド断片の存在を検出するためのアッセイに使用可能である。また本発明の抗体は、免疫アフィニティークロマトグラフィーによって該タンパク質またはそのポリペプチド断片を精製することにも使用することができる。
さらに本発明の抗体は、糖鎖関連酵素への本発明のタンパク質の会合を遮断することが可能な遮断抗体として提供されてよく、そのような抗体の結合により当該タンパク質および/または糖鎖関連酵素の活性を調節することができる。こうした遮断抗体は、糖鎖関連酵素を発現している特定の細胞への該タンパク質の結合を阻害する能力に関して抗体を試験するなど、あらゆる適切なアッセイ法を用いて同定することができる。
また遮断抗体は、糖鎖関連酵素に結合している本発明のタンパク質から生じる生物学的影響を阻害する能力に関するアッセイにおいても同定可能である。こうした抗体は、in
vitro法で使用するかまたはin vivoで投与して、抗体を生成した実体によって仲介される生物活性を阻害し得る。従って、本発明によれば、本発明のタンパク質と糖鎖関連酵素との間の直接または間接的な相互作用に起因して引き起こされるかまたは悪化する障害を治療するための抗体も提供され得る。こうした療法は、糖鎖関連酵素を介した生物学的活性を阻害するのに有効な量の遮断抗体を哺乳動物にin vivo投与することを含むであろう。一般に、こうした療法の使用にはモノクローナル抗体が好ましく、1つの態様として抗原結合抗体断片が使用される。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。当業者は、本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾、変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。

実施例1 遺伝子データベースの検索とO−16の塩基配列決定
既存のUDP−N−アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc−T11)遺伝子(GenBank Accetion No.AK025287)(配列番号3)と類似遺伝子の高い相同性を有するアミノ酸配列領域を用いて、BLASTPおよびBLASTNのプログラムにより遺伝子データベース(NCBI)から類似遺伝子を検索した。その結果、EST配列GenBank Accetion No.BC022021(配列番号4)が見出された。このBC022021において、ヌクレオチド229−1560に新規遺伝子のオープン・リーディング・フレーム(ORF)が見出された。次に、後述の実施例2において、上記EST配列に基づいて作成したプライマー(配列番号5−7)を用いて長さ1332塩基の遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定した(配列番号1)。

実施例2 O−16遺伝子を組み込んだ発現ベクターの作成
O−16遺伝子の発現系を作成するため、O−16遺伝子の全長、あるいはN末端より36アミノ酸をコードする核酸配列を欠く配列をヒト精巣cDNAよりRT−PCRにより増幅してDNA断片を精製後、Gateway PCR cloning system(Invitrogen)によって、pDONRTM201(Invitrogen)
に組み込んだ。その後、シグナルペプチド(SP)を付加したSP−FLAG−O−16の発現は、発現ベクター(pFLAG−CMV3,Sigma)にN末端より36アミノ酸をコードする核酸配列を欠くヒトO−16遺伝子の配列を組み込んだものを用いた。シグナルペプチドとMycタグを付加したO−16(以下、「SP−Myc−O−16」という)を発現させるためにpMyc−CMV3(後述)を使用した。
(1)クローニングベクターへの組み込み
上記の実施例1で得られたEST塩基配列(BC022021)に基づいて作成したプライマーF1(配列番号5: 5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCATGAGAAATGCCATAATTCAAGGTT−3’)(配列番号5の塩基配列のうちヌクレオチド32−56が、配列番号1の塩基配列のヌクレオチド1−25に対応する)、またはプライマーF2(配列番号6: 5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCAAGAAAAGCCAGGAGCCTCTGTCAGC−3’)(配列番号6の塩基配列のうちヌクレオチド32−57が、配列番号1の塩基配列のヌクレオチド109−134に対応する)、およびプライマーR(配列番号7: 5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCTCACAGGCTGTTCACAGATGCC−3’)(配列番号7の塩基配列のうちヌクレオチド31−52が、配列番号1の塩基配列のヌクレオチド1311−1332に対応する)、並びにDNAポリメラーゼとしてExpand High Fidelity PCR system(Roche Cat.No.1146 173)を用いて、94℃15秒、68℃3分を30サイクルの反応条件でPCRを行った。プライマーF1およびプライマーRの組合せでPCRを行った場合は、O−16遺伝子の全長を含むDNA断片が増幅され、プライマーF2およびプライマーRの組合せでPCRを行った場合は、N末端の36アミノ酸をコードする核酸配列を欠くO−16遺伝子を含むDNA断片が増幅される。
PCR産物をアガロースゲル電気泳動後、予想されたサイズのDNA断片をゲルから切りだし、凍結後、メンブレンフィルターカラムの中に入れて遠心してDNA断片を精製した。精製したDNA断片はGatewayエントリーベクター(pDONRTM201,Invitrogen)に導入して大腸菌にトランスフォームしてクローニングし、各クローンのプラスミドDNAをミニプレップキット(Promega)にて精製後、pDONRTM201特異的プライマー(5’−TCGCGTTAACGCTAGCATGGATCTC−3’(配列番号8)および5’−GTAACATCAGAGATTTTGAGACAC−3’(配列番号9))を用い、BigDye system(ABI)を用いてDNAシークエンサー(ABI)で塩基配列を決定した。
(2)発現ベクターへの組み込み
発現ベクターpFLAG−CMV3(Sigma)のプレプロトリプシンのシグナル配列とFLAGエピトープの下流に、N末より36アミノ酸をコードする核酸配列を欠くヒトO−16遺伝子配列を組み込み、シグナル配列およびFLAGエピトープとO−16のアミノ酸配列がin frameになるような発現ベクターを構築した。また、pFLAG−CMV3を改変し、シグナル配列の下流のFLAGエピトープをMycエピトープに置換した発現ベクター(pMycCMV3)を作製し、上記と同様に、N末より36アミノ酸をコードする核酸配列を欠くヒトO−16遺伝子配列を組み込んで、Mycエピトープタグを有するO−16タンパク質を発現する発現ベクターを構築した。

実施例3 糖鎖関連酵素の酵素ドメインをコードするDNAを組み込んだ発現ベクターの作成
(1)クローニングベクターへの組み込み
N−アセチルガラクトサミン転移酵素であるGalNAc−T1、−T2、−T3、−
T4、−T6、−T10、−T12、−T14、および−T15、糖転移酵素であるβ3−GalNAc−T2、糖転移酵素であるβ4GalT1、精子特異的ヒアルロニダーゼ、ならびに、コンドロイチン硫酸合成酵素であるCSS1およびCSS3の各遺伝子について、各糖鎖関連酵素の細胞内ドメインをコードするDNAを、それぞれ以下に示すプライマーを用いてヒトcDNAよりRT−PCRで増幅し、アガロースゲル電気泳動および切り出し精製の後、Gateway cloning systemを用いてpDONRTM201に、あるいは、pCR II Topo(Invitrogen)に組み換えた。
糖鎖関連酵素の酵素ドメインをクローニングするために使用したプライマー対は以下の通りである:
1.GalNAc−T1(GenBank accession No.NM 020474)
5’プライマー(配列番号12: 5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCAGAGGACTTCCTGCTGGAGATGTT−3’)
3’プライマー(配列番号13: 5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCCTAGAATATTTCTGGCAGGGTGACGTT−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸40位以降の部分をコードするDNA断片が得られる)

2.GalNAc−T2(GenBank accession No.NM 004481)
5’プライマー(配列番号14: 5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCAAAAAGAAAGACCTTCATCACAGC−3’)
3’プライマー(配列番号15: 5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCCTACTGCTGCAGGTTGAGCGTGAACTT−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸52位以降の部分をコードするDNA断片が得られる)

3.GalNAc−T3(GenBank accession No.NM 004482)
5’プライマー(配列番号16: 5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCTCAAGGATGGAAAGGAACATG−3’)
3’プライマー(配列番号17: 5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCCTAATCATTTTGGCTAAGTATCCATTT−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸51位以降の部分をコードするDNA断片が得られる)

4.GalNAc−T4(GenBank accession No.NM 003774)
5’プライマー(配列番号18: 5’− GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCTTTCATGCCTCCGCAGGAGCCGGC−3’)
3’プライマー(配列番号19: 5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCCTATTTCTCAAAACTCCAAATTTGATT−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸33位以降の部分をコードするDNA断片が得られる)

5.GalNAc−T6(GenBank accession No.NM 007210)
5’プライマー(配列番号20: 5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCGTCCTGGACCTCATGCTGGAGGCC−3’)
3’プライマー(配列番号21: 5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCCTAGACAAAGAGCCACAACTGATGGGG−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸53位以降の部分をコードするDNA断片が得られる)

6.GalNAc−T10(GenBank accession No.NM 198321)
5’プライマー(配列番号22: 5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCCAGCCCGACGGCACCCCTGGGGGA−3’)
3’プライマー(配列番号23: 5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCTCAGTTCCTATTGAATTTTTCCAA−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸35位以降の部分をコードするDNA断片が得られる)

7.GalNAc−T12(GenBank accession No.NM 024642)
5’プライマー(配列番号24: 5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCCGGCGCGAGCCGGTCATGCCGCGGC−3’)
3’プライマー(配列番号25: 5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCTCATAACATGCGCTCTTTGAAGAACCA−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸60位以降の部分をコードするDNA断片が得られる)

8.GalNAc−T14(GenBank accession No.NM 024572)
5’プライマー(配列番号26: 5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCGTGCAGACCCCTAAGCCTTCGGACGCTG−3’)
3’プライマー(配列番号27: 5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCCTAAGAGCTCACCATGTCCCAGTGCTG−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸39位以降の部分をコードするDNA断片が得られる)

9.GalNAc−T15(GenBank accession No.AB078149)
5’プライマー(配列番号28: 5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCGCCAGGTACCGCCTGGACTTTGGGG−3’)
3’プライマー(配列番号29: 5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCCTCATCGTTCATCCACAGCATTGATCT−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸55位以降の部分をコードするDNA断片が得られる)

10.β3−GalNAc−T2(GenBank accession No.BC029564)
5’プライマー(配列番号30: 5’−CCCAAGCTTGGGCCTGCAGATCAGTTGGCCTTATTTC−3’)
3’プライマー(配列番号31: 5’−AACGCGGATCCGCGCTGTTATCTTGCTTGACATCGACAAGGA−3’)

11.精子特異的ヒアルロニダーゼ(GenBank accession No.NM
003117)
5’プライマー(配列番号32: 5’−GAAGATCTCCTCCTGTTATTCCAAATGT−3’)
3’プライマー(配列番号33: 5’−ATGCGGCCGCTACAAACTCGCTACAGAAGAAATGA−3’)

12.コンドロイチン硫酸合成転移酵素CSS1(GenBank accession
No.NM 014918)
5’プライマー(配列番号34: 5’−AAGGAAAAAAGCGGCCGCGGGCTGCCGGTCCGGGCAG−3’)
3’プライマー(配列番号35: 5’−GCTCTAGACATTAGGCTGTCCTCACTGA−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸47位〜802位の部分をコードするDNA断片が得られる)

13.コンドロイチン硫酸合成酵素CSS3(GenBank accession No.NM 175856)
5’プライマー(配列番号36: 5’−CCCAAGCTTGCCGAGGGGGAGCCCGA−3’)
3’プライマー(配列番号37: 5’−GCTCTAGACTGTCAGGAGAGAGTTCGATT−3’)
(このプライマー対により、アミノ酸130位〜883位の部分をコードするDNA断片が得られる)

また、N−アセチルガラクトサミン転移酵素であるGalNAc−T7(GenBank accession No.NM 017423)の酵素ドメイン;Core1合成酵素であるCore1−Gal−T1(C1)(GenBank accession No.NM 020156)の酵素ドメインとしてアミノ酸32位以降の部分;Core1−Gal−T1特異的シャペロンであるCosmc(C2)(GenBank accession No.NM 00101155)の酵素ドメインとしてアミノ酸37位以降の部分;および、Core2合成酵素であるCore2−GlcNAc−T1(GenBank accession No.NM 001490)の酵素ドメイン;についても同様に、Gateway cloning systemを用いてpDONRTM201に、あるいは、pCR II Topo(Invitrogen)に組み換えた。

(2)発現ベクターへの組み込み
また、発現ベクター、pCLN−IF−attR、はpCLNCX(RetroMaxTM System,IMGENEX)のCMVプロモーター下流にヒト免疫グロブリンkappa軽鎖のシグナルペプチド、FLAGのエピトープ、および、Gateway Destination ベクター(Invitrogen)のattR1サイトからattR2サイトまでを組み込んでおり、Gateway Vector Convers
ion system(Invitrogen)を用いてpDONR201などのエントリーベクターにクローニングした遺伝子がコードするタンパク質をシグナルペプチドおよびFLAGエピトープと結合した形で発現することができる。
シグナルペプチドおよびFLAGエピトープ部分のDNA配列は5’−ATGCATTTTCAAGTGCAGATTTTCAGCTTCCTGCTAATCAGTGCCTCAGTCATAATGTCACGTGGAGATTACAAGGACGACGATGACAAG−3’(配列番号38)である。
O−16以外の遺伝子では、C1(Core1Gal−T1)、C2(Cosmc)がpFLAG−CMV3を、その他の遺伝子はpCLN−IF−attRを発現ベクターとして用いた。GalNAc−T10、−T12、−T14、および−T15の各遺伝子では、非特許文献に記載のN末の膜貫通ドメインを欠く各遺伝子の配列を、エントリークローンよりGateway Vecor Conversion systemを用いてpCLN−IF−attRに組換えて、シグナルペプチド付きFLAGエピトープ付き糖転移酵素の発現ベクターとして用いた。

実施例4 O−16遺伝子と糖鎖関連酵素遺伝子のHEK−293細胞へのコトランスフェクション
HEK−293細胞は、ATCC(寄託番号:CRL−1573)から購入した。細胞は、10%胎児仔牛血清および20μM ゲンタマイシンを含むDMEM培地で培養した。実施例2において作成したO−16を組み込んだ発現ベクター、および実施例3において作成した糖鎖関連酵素遺伝子を組み込んだいずれか1つの発現ベクターをLipofectamine2000(Invitrogen)と混合後、培養液に加えることによって細胞にトランスフェクトした。

実施例5 ウェスタンブロッティングによる発現タンパク質の解析
各発現ベクターを組み込んだHEK−293細胞におけるタンパク質の発現を各タンパク質に付加したMycタグまたはFLAGタグに対する抗体を用いて検出した。
(1)試料の調製
各遺伝子導入された各HEK−293細胞の培養液を回収し、PBSで1回洗浄した。回収した培養液を「培養上清」の試料として保存した。その後、可溶化バッファー(1%
NP−40、50mM Tris−HCl、pH 8.0、140mM NaCl、10mM NaF、2mM ポリリン酸ナトリウム、20mM イオドアセトアミド、0.2U/ml アプロニチン、1μg/ml ペプスタチンA、1mM PMSF、および0.4mM オルトバナジン酸ナトリウム)を各培養ディッシュ(直径10cm)に氷上で0.5mlずつ添加した。氷上で、スクラッペンで可溶化した細胞をかき集め、1.5mlの遠心用チューブに回収した。さらに、氷上で15分放置した後、遠心分離した(15,000rpm×10分、4℃)。遠心後、上清を別のチューブに移した。この上清を「溶解産物(lysate)」の試料として保存した。
(2)免疫沈降
上記で保存した培養上清と溶解産物の各200μlに対して、(i)抗FLAG抗体結合ビーズ(M1−ビーズ、SIGMA)、または(ii)抗Myc抗体(9E10、BAbCO)およびプロテインA結合ビーズ(Amersham)をそれぞれ30μl添加し、4℃で3−4時間、回転させながら撹拌させた。遠心分離(10,000rpm×2分)によって各ビーズを沈降させ、ビーズを洗浄液(1% NP−40、50mM Tris−HCl、pH 8.0、および140mM NaCl)で4回洗浄した。さらに、Lameli(sample)バッファー(2% SDS、10%グリセロール、60mM
Tris(pH6.8),0.001%ブロモフェノールブルー、100mM DTT)を添加し、5分間煮沸後、各試料をSDS−PAGEに用いた。
(3)ウェスタンブロッティング
免疫沈降後の試料中のタンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。電気泳動による分離条件は以下の通りである。
・電気泳動装置:ミニプロティアン3セル(BioRad)
・ゲル:9% アクリルアミドゲル
・電圧:120V
・泳動時間:約2時間
・分子量マーカー:RPN800(Amersham)
分離したタンパク質をニトロセルロース膜に転写した(ミニトランスブロットセル転写装置(BioRad、条件:70Vで2時間、または20Vで一晩)。イムノブロットは、HRP標識したマウス抗FLAGモノクロナル抗体、または抗Myc マウスIg抗体(9E10、BAbCo)および抗マウスIg抗体(Amersham)を用いて行った。その後、分離したタンパク質をケミルミネッセンス試薬(ECL、Amersham)を用いて検出した。ウェスタンブロットの結果を図1−3に示す。
(4)結果
(a)O−16タンパク質の発現
HEK−293細胞におけるO−16タンパク質の発現のウエスタンブロットの結果を図1に示す。図1のパネルAとパネルBに示される各レーンの説明と検出されたバンドの結果については、それぞれ表1Aと表1Bにまとめた。以下、ウェスタンブロットの結果は、表に基づいて説明する。
図1のパネルA(表1A)のレーン6−9は、シグナルペプチド付き(SP)−Myc−O−16を単独で発現させ、HEK−293細胞の溶解産物中(lysate)および培養上清中(sup)に存在するMyc−O−16を抗Myc抗体(レーン7、9)あるいは抗FLAG抗体(レーン6、8)で免疫沈降を試みた後、タグのMycエピトープに対する抗Myc抗体を用いたウエスタンブロットで検出したものである。レーン7は、溶解産物を抗Myc抗体で免疫沈降した試料を調べたものであるが、ウェスタンブロットにおいて同抗体で検出されている(表1中、「+」で表示される)ことから、HEK−293細胞の溶解産物中には、O−16が発現されたことを示す。図1のパネルAでは、約45kDaのバンドとして検出されている。一方、レーン9は、同細胞の培養上清を試料とし、レ−ン7と同様に同抗体で検出したものであるが、O−16の存在は確認されなかった(「−」で表示される)。以上の結果から、O−16は、細胞外に全く分泌されないか、または細胞外に分泌されたとしてもプロテーアーゼ等によって分解若しくは断片化してしまうため検出されないと考えられる。
(b)O−16タンパク質と糖鎖関連酵素との会合
O−16と糖鎖関連酵素とをHEK−293細胞に発現させる系において、各タンパク質の発現をウエスタンブロットで解析した(図1および2)。図1および2に示されるレーンの説明と検出されたバンドの結果については、図1については上記の表1に、図2については表2にまとめた。以下、ウェスタンブロットの結果は、これら表に基づいて説明する。
図1のパネルB(表1B)のレーン2−5は、SP−Myc−O−16とSP−FLAG−GalNAc−T3遺伝子をHEK−293細胞にトランスフェクション後、細胞の溶解産物と培養上清を抗FLAG抗体あるいは抗Myc抗体で免疫沈降した試料を用いて、抗FLAG抗体を用いてウェスタンブロットした結果を示す。レーン3は、細胞の溶解産物を抗Myc抗体で免疫沈降後、抗FLAG抗体で検出したものであり、約70kDaにバンドが観察された。この結果から、溶解産物を抗Myc抗体で免疫沈降し、さらに抗FLAG抗体で検出できたことから、Myc−O−16とFLAG−GalNAc−T3が会合していることが示唆された。さらに、この結果を裏付けるために、図1のパネルA(表1A)のレーン2−5では、同発現系において、抗Myc抗体を用いてウェスタンブロットを行った。このうち、レーン2は溶解産物を抗FLAG抗体で免疫沈降後、抗Myc抗体で検出したものであり、約45kDaにバンドが観察された。上記の結果から、O−16とGalNAc−T3は、細胞内で発現後、会合することが示唆された。
一方、図1のパネルA(表1A)のレーン5では、共発現系での細胞の培養上清を抗Myc抗体で免疫沈降後、ウェスタンブロットにおいて抗Myc抗体で検出したものであるがバンドは観察されなかった。この結果から、共発現系においてもO−16は細胞外に分泌されないことを示唆している。
図2(抗FLAG抗体ウェスタンブロット)に示すようにSP−FLAG−T3は単独でHEK293細胞に発現させた場合、抗Myc抗体で免疫沈降させても沈澱しないが(レーン3)、SP−Myc−O−16と共発現させた場合には抗Myc抗体を用いた免疫沈降で沈澱して抗FLAG抗体ウェスタンブロットで検出されており(レーン8)、図1でみられたT3とO−16の会合をより強く示唆している。
さらに、GalNAc−T3以外の糖鎖関連酵素についても上記と同様にO−16と会合するのかどうかについて、同様にウェスタンブロッティングで検討した(図3)。
試料は全て細胞の溶解産物であり、抗FLAG抗体または抗Myc抗体で免疫沈降後、ウェスタンブロッティングでは、抗FLAG抗体(図3のパネルA)または抗Myc抗体(図3のパネルB)を用いた。パネルAにおいて、O−16と会合していることを示すレーンは、抗Myc抗体で免疫沈降した試料であって、抗FLAG抗体で検出されたものである。GalNAc−T1(レーン9)、GalNAc−T4(レーン11)、GalNAc−T6(レーン13)、GalNAc−T7(レーン17)、GalNAc−T12(レーン21)、GalNAc−T14(レーン23)、およびGalNAc−T15(O14:レ−ン25)については、それぞれがO−16と会合していることを示唆するバンドが観察された。また、Core1−Gal−T1(C1:レーン3)、β3−GalNAc−T2(G34:レーン7)、GalNAc−T10(レーン19)、およびCo
re2−GlcNAc−T1(Core2:レーン15)についても弱いバンドが観察され、これらもO−16と会合することが示唆された。なお、図3のパネルBは抗Myc抗体を用いた対照試験であり、観察されたバンドはいずれも共発現系におけて発現したO−16を示す。
また、コンドロイチン硫酸合成酵素であるCSS1およびCSS3についても同様の実験を行ったところ、これら二つの酵素はそれぞれO−16と会合することが明らかとなった。

実施例6 発現タンパク質の精製と活性
(1)タンパク質の精製
HEK293細胞に発現ベクターをlipofectamine2000(Invitrogen)などを用いてトランスフェクションしてタグ付きタンパク質を発現させ、タグに対する抗体とビーズを用いた免疫沈降と洗浄によりタンパク質を精製した。免疫沈降した試料の一部をLameli(sample)バッファーを加えて煮沸後SDS−PAGEで展開、メンブレンに転写して抗FLAG抗体を用いたウエスタンブロッティングにより解析して免疫沈降試料に含まれるFLAG−T3の量を調べ、FLAG−T3の密度が同じになるようにビーズを加えて調整した。
(2)酵素活性の測定
O−16および糖鎖関連酵素によるUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミン転移酵素としての活性測定には、受容体基質としてFITC標識したMuc5AC(FITC−GTTPSPVPTTSTTA(配列番号39))と、供与体基質(donor substrate)としてUDP−GalNAcを使用した。
反応液は、受容体基質(50pmol)、Tris−HCl緩衝液(pH7.4)(25mM)、MnCl(5mM)、UDP−GalNAc(200nM)から成り、これに酵素液を2.5μl加えて、さらにHOを加えて全量を20μlとした(カッコ内は最終濃度)。酵素液は、培養上清の場合には最大40倍に希釈して使用し、溶解産物の場合には最大2倍に希釈して使用した。
上記反応混合液を37℃で4時間反応させ、反応終了後、HOを40μl加え、軽く遠心後、上清を取得した。得られた上清をMillipore社の簡易フィルター(Ultrafree−MC)を通して、20μl−40μlをHPLC分析に供した。HPLCカラムはCOSMOSIL 5C18−AR(ナカライテスク社Code No.378−66)を用いた。展開バッファーAは0.05% TFAを含むイオン交換水、展開バッファーBとしては受容体基質によって0.05% TFAの2−プロパノール:アセトニトリル = 7:3と0.05% TFAのアセトニトリルを用いた。分離にはバッファーBの濃度勾配を用い、30分で50%まで上がるように勾配をかけた。検出条件は励起波長:492nm、蛍光波長:520nmとした。
(3)結果
O−16によるGalNAc−T3の糖転移酵素活性の抑制
HEK−293細胞にFLAG−GalNAc−T3を単独で発現させた場合、およびMyc−O−16との共発現させた場合のそれぞれの酵素活性を測定した。
図4のパネルAは、FLAG−GalNAc−T3を細胞に単独で発現させた場合の溶出パターンを示す。パネルBおよびCは、それぞれ共発現系において発現させたFLAG−GalNAc−T3とMyc−O−16の溶出パターンを示す。各チャートにおいて、
「S」は基質のMuc5ACのピークであり、「P」は酵素によって基質にGalNAc残基が付加した産物を示す。
パネルAとBを比較すると、共発現系におけるGalNAc−T3による産物を示すピークの高さが、単独で発現させたGalNAc−T3による産物を示すピークよりも低いことが分かる。また、Sピークの面積率を比較すると、パネルAは42.71%であり、パネルBは50.03%であることから、単独で発現させたGalNAc−T3の方が基質の残存量が小さくなっている。この結果より、O−16との共発現によって、GalNAc−T3の活性が何らかの機構によって抑制させていることが示唆された。
以上の結果は、O−16と会合するT1、T2によっても同様であった。
これらの結果から、O−16は、糖鎖関連酵素と細胞内で会合し、O−16によって一度会合した糖鎖関連酵素は酵素本来の活性が抑制される傾向にあるといえる。

実施例7 リアルタイムPCRを用いたヒト組織におけるO−16転写物の定量解析
O−16転写物の定量解析には、TaqMan(登録商標) Universal PCR Master MixおよびABI PRISM 7700 Sequence Detection System (アプライドバイオシステム社)を用い、定量リアルタイムPCRを行った。種々のヒト組織のMarathon Ready(登録商標)cDNAはクロンテックより購入した。ヒト組織cDNAとしては、気管、脳全体、肝臓、骨格筋、子宮、腎臓、心臓、胎児脳、小脳、唾液腺、脊髄、胎児肝臓、胎盤、精巣、前立腺、乳腺、膵臓、副腎、甲状腺、小腸、骨髄、脾臓、胸腺、に由来するものを用いた。
O−16のプライマーセットおよびプローブは以下のものである;フォーワードプライマー、5’−GAAGCTTGGGCATCGAAA−3’(配列番号40)(配列番号1の塩基配列323−340に対応する)、リバースプライマー、5’−GCGGGCTGGGTAATGTT−3’(配列番号41)(配列番号1の塩基配列396−380に対応する)、およびプローブ、マイナーグルーブバインダーを持つ5’−AGTGCCAGATACCAGGAGTAAAATGCGTCTT−3’(配列番号42)(配列番号1の塩基配列345−375に対応する)。PCR条件は、50℃、2分間を1サイクル、95℃、10分間を1サイクル、95℃、15秒間、および60℃1分間を50サイクルで行った。GalNAc−T14の転写物の相対量は、同じcDNA中のGADPH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase:グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)転写物の量により標準化した。
リアルタイムPCR法により、種々のヒト組織および細胞系列におけるO−16転写物の発現レベルを決定した。O−16は、そのレベルは異なるものの、殆どの組織中(図2)で発現した。かなり高いレベルの発現がみられた組織は、精巣であった。中程度の発現が、骨格筋、肝臓、気管、および前立腺で観察された。試験したその他の組織の発現レベルは、非常に低い、または検出不可能であった。

実施例7 精巣におけるO−16転写物のin situ発現解析
O−16転写物の、精巣におけるin situ発現解析を行った。
マウス O−16 cDNA(GenBankアクセッション番号 NM 026449)のヌクレオチド242−616位に対応する375bpDNAフラグメント(配列番号43)を、pGEMT−Easyベクター(プロメガ)にサブクローニングし、そしてセンスまたはアンチセンスRNAプローブの産生に用いた。ジゴキシゲニン標識したRN
AプローブをDIG RNA labeling Mix(ロシュ)で調製した。
in situハイブリダイゼーション(ISH)のためのパラフィン包埋したマウス精巣の塊または切片を、Genostaffより入手した。精巣を、それ専用の手法により、灌流の後切開し、Tissue Fixative(Genostaff)で固定化し、およびパラフィン中に包埋し、そして8μmの切片に切開した。
ISHのために、組織切片は、キシレンで脱ワックスし、そしてエタノールの系列およびPBSを通して再水和した。切片は、PBS中4%パラホルムアルデヒドで固定化し、PBSで洗浄し、PBS中4%パラホルムアルデヒドで再度固定化し、再度PBSで洗浄し、そして0.2N HCl中に10分間置いた。PBSで洗浄後、切片を0.1M トリエタノールアミン−HCl、pH8.0、0.25% 無水酢酸、中での10分間のインキュベーションによりアセチル化した。PBSで洗浄後、切片をエタノールの系列を通して脱水した。プローブで、ハイブリダイゼーションをProbe Diluent(Genostaff)中、300ng/mlの濃度で、60℃、16時間行った。ハイブリダイゼーション後、切片を、5xSSCと等価な、5x HybriWash(Genostaff)中、60℃で20分間洗浄し、そして次いで、50%ホルムアミド、2x HybriWash中、60℃で20分間、続いて、10mM Tris−HCl,pH8.0,1M NaClおよび1mM EDTA中の50μg/ml RNaseA中、30分間、37℃でのRNase処理を行った。次いで、切片は、2x HybriWashで60℃、20分間の洗浄を2回行い、そしてTBST(TBS中、0.1% Tween20)で1回洗浄した。TBST中0.5% ブロッキング試薬(ロシュ)で30分間処理した後、切片を、TBSTで1:1000に希釈した抗DIG APコンジュゲート(ロシュ)とともに2時間インキュベートした。切片をTBSTで2回洗浄し、次いで100mM NaCl、50mM MgCl、0.1% Tween20、100mM Tris−HCl、pH9.5中でインキュベートした。染色反応をBM purple AP基質(ロシュ)とともに一晩行い、そしてPBSで洗浄した。切片はKernechtrot染色溶液(Mutoh)で対比染色し、脱水し、次いでMalinolを重層した(Mutoh)。
結果
結果を図6に示す。O−16転写物は、アンチセンスRNAプローブ(Anti−S)によって検出され、精巣において青く発色した。また、発色の局在から、O−16転写物は精子細胞において強く発現していることが明らかとなった。なお、ネガティブコントロールであるセンスRNAプローブ(Sense)で処理した場合は、発色は見られなかった。
本発明により、精巣に特異的に発現するタンパク質であって、糖鎖関連酵素に会合し、該糖鎖関連酵素の活性を調節するタンパク質が単離され、その遺伝子の構造が明らかにされた。したがって、該タンパク質やその変異体の遺伝子工学的な生産、該タンパク質に会合する糖鎖関連酵素の同定や、該タンパク質またはそれをコードする遺伝子を用いた精子形成異常または受精困難による不妊症の予防、診断、または予防が可能になった。
図1は、HEK−293細胞に発現させたMyc−O−16とFLAG−GalNAc−T3のウェスタンブロッティングによる検出結果を示す。発現タンパク質は、溶解産物および培養上清から精製し、Mycタグに対する抗Myc抗体、またはFLAGタグに対する抗FLAG抗体を用いて免疫沈降後、抗Myc抗体(パネルA)または抗FLAG抗体(パネルB)を用いてイムノブロットした。 図2は、HEK−293細胞に発現させたMyc−O−16とFLAG−GalNAc−T3(またはFLAG−GalNAc−T1)のウェスタンブロッティングによる検出結果を示す。発現タンパク質は、溶解産物および培養上清から精製し、Mycタグに対する抗Myc抗体、またはFLAGタグに対する抗FLAG抗体を用いて免疫沈降後、抗FLAG抗体を用いてイムノブロットした。 図3は、HEK−293細胞に発現させたMyc−O−16と各種糖鎖関連酵素のウェスタンブロッティングによる検出結果を示す。細胞の溶解産物を試料とし、Mycタグに対する抗Myc抗体、またはFLAGタグに対する抗FLAG抗体を用いて免疫沈降後、抗FLAG抗体(パネルA)または抗Myc抗体(パネルB)を用いてイムノブロットした。 図4は、Muc5AC受容体基質を用いたO−16とGalNAc−T3の糖転移酵素活性の測定におけるHPLCチャートである。パネルAは、HEK−293細胞にGalNAc−T3を単独で発現させ、溶解産物を試料として抗FLAG抗体を用いて免疫沈降後、精製したGalNAc−T3を用いてMuc5ACと反応した場合のチャートを示す。パネルBは、O−16とGalNA−T3を共発現させ、溶解産物を試料として抗FLAG抗体を用いて免疫沈降後、精製したGalNAc−T3とMuc5ACの反応結果を示す。パネルCは、同共発現の溶解産物を試料として抗Myc抗体を用いて免疫沈降後、精製したO−16とMuc5ACの反応結果を示す。図中、SはMuc5ACの基質ピークを表し、Pは生成物ピークを表す。 図5は、リアルタイムPCRによる種々のヒト組織におけるGalNAc−T18転写物の定量解析の結果を示すグラフである。 図6は、精巣におけるO−16転写物のin situ発現解析の結果を示す写真である。Anti−Sは、アンチセンスRNAプローブで処理した結果を示し、青く発色している箇所はO−16転写物が局在する箇所に一致する。SenseはセンスRNAプローブで処理したネガティブコントロールである。

Claims (8)

  1. N−アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc転移酵素)の活性を抑制するための組成物であって、配列番号2に示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1−10個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ酸配列に1−10個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、精巣に特異的に発現し、GalNAc転移酵素に会合するタンパク質を含む、前記組成物。
  2. 前記タンパク質が配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記タンパク質が、細胞外へ分泌されないタンパク質であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
  4. N−アセチルガラクトサミン転移酵素が、GalNAc−T1、GalNAc−T2又はGalNAc−T3である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. N−アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc転移酵素)の活性を抑制するための組成物であって、配列番号2に示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1−10個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ酸配列に1−10個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ酸配列を有する、精巣に特異的に発現し、GalNAc転移酵素に会合するタンパク質、をコードする核酸を含む、前記組成物。
  6. N−アセチルガラクトサミン転移酵素が、GalNAc−T1、GalNAc−T2又はGalNAc−T3である、請求項5に記載の組成物。
  7. N−アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc転移酵素)の活性を抑制するための組成物であって、以下:
    配列番号1に示される塩基配列を有する核酸;または
    配列番号1に示される塩基配列を有する核酸と65℃、0.2×SSCの条件下でハイブリダイズする核酸であって、精巣に特異的に発現し、GalNAc転移酵素に会合するタンパク質をコードする前記核酸;
    を含む、前記組成物。
  8. N−アセチルガラクトサミン転移酵素が、GalNAc−T1、GalNAc−T2又はGalNAc−T3である、請求項7に記載の組成物。
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