JP4689047B2 - 新規ポリペプチド - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、シアリルルイスa糖鎖を発現している大腸癌細胞、膵臓癌細胞等の消化器系癌細胞において、シアリルルイスa糖鎖等のタイプ1糖鎖の合成に関与するβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有する新規ポリペプチド、該ポリペプチドの製造法、該ポリペプチドをコードするDNA、該DNAが組み込まれた組換え体ベクター、該組換え体ベクターを保有する形質転換体、該ポリペプチドを認識する抗体、該ポリペプチドを用いたタイプ1糖鎖含有糖鎖および該糖鎖を含有する複合糖質の製造法、該組換え体ベクターを保有する形質転換体を用いたタイプ1糖鎖含有糖鎖および該糖鎖を含有する複合糖質の製造法に関する。
背景技術
糖鎖は、発生・分化、細胞認識といった生命現象に関与しているほか、炎症、癌、感染症、自己免疫疾患、およびその他多くの病気の発生、進行に深く関係していると考えられている〔木幡陽・箱守仙一郎・永井克孝編,グリコバイオロジーシリーズ▲1▼〜▲6▼,講談社,(1993年)、Glycobiology,,97(1993)〕。
糖鎖は、タンパク質や脂質に付加して、糖タンパク質、プロテオグリカン、または糖脂質として存在するほか、オリゴ糖としても存在する。
Galβ1−3GlcNAc構造を有する糖鎖はタイプ1糖鎖と呼ばれ、ルイス式血液型抗原や癌関連糖鎖抗原の骨格糖鎖を構成している。ルイス式血液型抗原としては、ルイスa糖鎖(Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc)およびルイスb糖鎖〔Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕が存在する。シアリルルイスa糖鎖〔NeuAcα2−3Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕およびシアリルルイスc糖鎖(NeuAcα2−3Galβ1−3GlcNAc)は、主に大腸癌や膵臓癌等の消化器巣の癌において高頻度に検出される癌関連糖鎖であり、シアリルルイスa糖鎖およびシアリルルイスc糖鎖に対する抗体は癌の血清診断に利用されている。
白血球の炎症部位への集積やリンパ球のリンパ節へのホーミングには、接着分子セレクチン(E−、P−、およびL−セレクチン)とその糖鎖リガンド(シアリルルイスx糖鎖またはその関連糖鎖)の接着が関与していることが明らかとなっている。
シアリルルイスx糖鎖〔NeuAcα2−3Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕の構造異性体であるシアリルルイスa糖鎖はセレクチンと結合することから、シアリルルイスa糖鎖は癌の転移に関与すると考えられている。また、大腸癌や膵臓癌におけるシアリルルイスa糖鎖の発現量が、癌の予後の悪さと相関しているという報告もある。
Galβ1−3GlcNAc構造は、GlcNAcβ1,3−ガラクトース転移酵素によって合成される。これまでに3種類のGlcNAcβ1,3−ガラクトース転移酵素(β3Gal−T1、β3Gal−T2、β3Gal−T3)の遺伝子がクローン化され、それぞれの酵素の受容基質特異性が解析されている〔特開平6−181759、J.Biol.Chem.,273,58−65(1998)、J.Biol.Chem.,273,433−440(1998)、J.Biol.Chem.,273,12770−12778(1998)〕。また、基質特異性の異なる別のβ1,3−ガラクトース転移酵素(β3Gal−T4)の遺伝子がクローン化されている〔J.Biol.Chem.,272,24794−24799(1997)、J.Biol.Chem.,273,12770−12778(1998)〕。β3Gal−T4はガングリオシドGA1、GM1またはGD1bを合成するが、Galβ1−3GlcNAc構造は合成しない。
大腸癌や膵臓癌等の消化器系の癌において、癌関連糖鎖であるシアリルルイスa糖鎖およびシアリルルイスc糖鎖の合成に関与するGlcNAcβ1,3−ガラクトース転移酵素が同定できれば、該酵素または該酵素遺伝子の発現量を調べることにより、より正確な癌の診断が可能になると推定される。また、該酵素活性、または該酵素遺伝子の転写・翻訳を抑制することにより、癌転移の抑制が可能になると期待される。しかし、これまでに該酵素または該酵素遺伝子は同定されていない。大腸癌細胞株Colo205からGlcNAcβ1,3−ガラクトース転移酵素が部分精製されているが、該酵素の単離、該酵素のアミノ酸配列の決定、ならびに該酵素遺伝子の単離には至っていない〔J.Biol.Chem.,262,15649−15658(1987)、Archi.Biochem.Biophys.270,630−646(1989)、Archi.Biochem.Biophys.274,14−25(1989)〕。
セレクチンに強い結合能を有する糖鎖は、セレクチンアンタゴニストとして、炎症や癌転移の治療および予防に有用である。従って、大腸癌や膵臓癌等の消化器系の癌においてシアリルルイスa糖鎖の合成に関与しているβ1,3−ガラクトース転移酵素は、セレクチンアンタゴニストの効率的合成にも利用可能と推定される。
ヒトの乳中には、様々なオリゴ糖が存在することが知られている〔Acta Paediatrica,82,903(1993)〕。ラクト−N−テトラオース(Galβ1−3GlcNAcβ1−3GlcNAcβ1−4Glc)は、ヒト乳中に多く含まれ、乳児がウイルスや微生物に感染するのを防いでいると考えられている。また、ラクト−N−テトラオースには良性の腸内細菌であるビフィズス菌の増殖を促す活性もある。一方、ウシやマウス等の動物の乳中に存在するオリゴ糖の種類は少なく、大部分がラクトースであり3糖以上のオリゴ糖はほとんど存在しない〔Acta Paediatrica,82,903(1993)、J.Biol.Chem.,270,29515(1995)〕。
ラクト−N−テトラオースを母核とする様々なオリゴ糖、あるいはそれらが含まれたミルクを効率よく生産することができれば、産業上非常に有用と思われる。したがって、これまでにクローン化されたGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素に比較して、ラクト−N−テトラオースを合成する活性のより高い酵素の開発は産業上重要な課題である。
発明の開示
本発明は、新規なβ1,3−ガラクトース転移酵素を有するポリペプチドを利用し、抗炎症、抗感染症、または癌転移抑制等の医薬品、乳製品等の食品、タンパク質の改善法、および癌等の疾患の診断法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の(1)〜(47)に関する。
(1) シアリルルイスa糖鎖を発現している大腸癌細胞に存在する、シアリルルイスa糖鎖の合成に関与するβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチド。
上記本発明の新規β1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドは、シアリルルイスa糖鎖を発現している大腸癌細胞のみならずシアリルルイスc糖鎖、ルイスa糖鎖、ルイスb糖鎖等のタイプ1糖鎖を発現している大腸癌細胞、膵臓癌細胞等の消化器系癌細胞にも存在する。また、これら消化器系癌細胞に存在するタイプ1糖鎖の効率的合成に関与するβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドも、本発明のポリペプチドである。本発明のポリペプチドは、公知のβ3Gal−T1、β3Gal−T2およびβ3Gal−T3とは異なる新規なβ1,3−ガラクトース転移酵素である。
(2) 以下の(a)、(b)および(c)からなる群より選ばれるポリペプチド:
(a)配列番号1記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号1記載のアミノ酸配列の31〜310番目のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(c)(a)または(b)のポリペプチドの有するアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGalβ1−3GlcNAc構造を合成可能なβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチド。
上記(a)または(b)のポリペプチドの有するアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ該ポリペプチドの有するGalβ1−3GlcNAc構造を合成可能なβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドは、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in MolecularBiology,John Wiley & Sons(1987−1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,488(1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。
欠失、置換もしくは付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異法等の周知の方法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数であり、1個から数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
また、本発明のポリペプチドがGalβ1−3GlcNAc構造を合成可能なβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するためには、配列番号1記載のアミノ酸配列と、BLAST〔J.Mol.Biol.,215,403(1990)〕やFASTA〔Methods in Enzymology,183,63−98(1990)〕等を用いて計算したときに(相同性の%を定義するための計算手段・方法等を記載する)、少なくとも60%以上、通常は80%以上、特に95%以上の相同性を有していることが好ましい。
上記の(a)または(b)のポリペプチドの有するアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつGalβ1−3GlcNAc構造を合成可能なβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドは、公知のβ3Gal−T1、β3Gal−T2およびβ3Gal−T3とは異なる新規なβ1,3−ガラクトース転移酵素である。
(3) β1,3−ガラクトース転移酵素活性が、糖鎖の非還元末端に存在するN−アセチルグルコサミン残基にβ1,3結合でガラクトースを転移する活性である上記(1)または(2)記載のポリペプチド。
(4) β1,3−ガラクトース転移酵素活性が、GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcの非還元末端に存在するN−アセチルグルコサミン残基、またはN−アセチルグルコサミン単糖にβ1,3結合でガラクトースを転移する活性である、上記(1)または(2)記載のポリペプチド。
(5) 以下の(a)、(b)、(c)および(d)からなる群より選ばれるDNA:
(a)上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするDNA、
(b)配列番号2で表される塩基配列の402〜1331番目の塩基配列を有するDNA、
(c)配列番号2で表される塩基配列の492〜1331番目の塩基配列を有するDNA、および
(d)(a)〜(c)いずれかに記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつGalβ1−3GlcNAc構造を合成可能なβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
上記の「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、上記(a)、(b)および(c)のDNAからなる群より選ばれるDNAをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/lのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/l塩化ナトリウム、15mmol/lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。
ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー サプルメント1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,OxfordUniversity Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
ハイブリダイズ可能なDNAとして具体的には、BLAST〔J.Mol.Biol.,215,403(1990)〕やFASTA〔Methods in Enzymology,183,63−98(1990)〕等を用いて計算したときに(相同性の%を定義するための計算手段・方法等を記載する)、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。該DNAのコードするGalβ1−3GlcNAc構造を合成可能なβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドは、公知のβ3Gal−T1、β3Gal−T2およびβ3Gal−T3とは異なる新規なβ1,3−ガラクトース転移酵素である。
(6) 上記(5)記載のDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA。
(7) 組換え体DNAが、プラスミドpAMo−3GT5またはプラスミドpBS−3GT5(FERM BP−6645)である、上記(6)記載の組換え体DNA。
(8) 上記(5)に記載のDNA、(6)記載の組換え体DNA、または(7)記載の組換え体DNAを保有する形質転換体。
(9) 形質転換体が、微生物、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、非ヒトトランスジェニック動物およびトランスジェニック植物からなる群より選ばれる形質転換体である、上記(8)記載の形質転換体。
(10) 微生物が、Escherichia属に属する微生物である、上記(9)記載の形質転換体。
(11) 動物細胞が、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、CHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、Namalwa細胞、Namalwa KJM−1細胞、ヒト胎児腎臓細胞およびヒト白血病細胞から選ばれる動物細胞である、上記(9)記載の形質転換体。
(12) 昆虫細胞が、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞、Trichoplusia niの卵巣細胞およびカイコの卵巣細胞からなる群より選ばれる昆虫細胞である、上記(9)記載の形質転換体。
(13) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを保有する形質転換体を培養液中で培養し、該ポリペプチドを該培養物中に生成・蓄積させ、該培養物中より該ポリペプチドを採取することを特徴とする、該ポリペプチドの製造法。
(14) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを保有する非ヒトトランスジェニック動物を飼育し、該ポリペプチドを該動物中に生成・蓄積させ、該動物中より該ポリペプチドを採取することを特徴とする、該ポリペプチドの製造法。
(15) 生成・蓄積が動物のミルク中であることを特徴とする、上記(14)記載の製造法。
(16) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを保有するトランスジェニック植物を栽培し、該ポリペプチドを該植物中に生成・蓄積させ、該植物中より該ポリペプチドを採取することを特徴とする、該ポリペプチドの製造法。
(17) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするDNAを用い、in vitroでの転写・翻訳系により該ポリペプチドを合成することを特徴とする、該ポリペプチドの製造法。
(18) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドを酵素源として用い、
(a)該酵素源、
(b)i)N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、
ii)N−アセチルグルコサミン残基を非還元末端に有するオリゴ糖および
iii)N−アセチルグルコサミン残基を非還元末端に有する複合糖質から選ばれる受容基質、および
(c)ウリジン−5’−二リン酸ガラクトースを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に、該受容基質のN−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルグルコサミン残基にβ1,3結合でガラクトースが付与された反応産物を生成・蓄積させ、該水性媒体中より該反応産物を採取することを特徴とする、該反応産物の製造法。
(19) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドを酵素源として用い、
(a)該酵素源、
(b)i)グルコース、
ii)グルコース残基を非還元末端に有するオリゴ糖および
iii)グルコース残基を糖鎖の非還元末端に有する複合糖質からなる群より選ばれる受容基質、および
(c)ウリジン−5’−二リン酸ガラクトースを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に、該受容基質のグルコースまたはグルコース残基にβ1,3結合でガラクトースが付与された反応産物を生成・蓄積させ、該水性媒体中より該反応産物を採取することを特徴とする、該反応産物の製造法。
(20) 上記(9)記載の微生物、動物細胞、植物細胞および昆虫細胞由来の形質転換体からなる群より選ばれる形質転換体を培養液中で培養し、該培養物中に、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖を含有する複合糖質を生成・蓄積させ、該培養物中より該糖鎖または該複合糖質を採取することを特徴とする、該糖鎖または該複合糖質の製造法。
(21) 上記(9)記載の非ヒトトランスジェニック動物を飼育し、該動物中に、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖を含有する複合糖質を生成・蓄積させ、該動物中より該糖鎖または該複合糖質を採取することを特徴とする、該糖鎖または該複合糖質の製造法。
(22) 上記(9)記載のトランスジェニック植物を栽培し、該植物中に、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖を含有する複合糖質を生成・蓄積させ、該植物中より該糖鎖または該複合糖質を採取することを特徴とする、該糖鎖または該複合糖質の製造法。
(23) 複合糖質が、糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカン、グリコペプチド、リポ多糖、ペプチドグリカン、およびステロイド化合物等に糖鎖が結合した配糖体からなる群より選ばれる複合糖質である、上記(18)〜(22)のいずれか1つに記載の製造法。
(24) 生成・蓄積が動物のミルク中であることを特徴とする、上記(21)記載の製造法。
(25) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするDNAを用い、ハイブリダイゼーション法により、該ポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を定量する方法。
(26) 上記(5)に記載のDNAまたは配列番号2または3で表される塩基配列を有するDNAの有する塩基配列中の連続した5〜60塩基と同じ配列を有するオリゴヌクレオチド、該オリゴヌクレオチドと相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド、およびこれらオリゴヌクレオチドのオリゴヌクレオチド誘導体から選ばれるDNA。
(27) オリゴヌクレオチド誘導体が、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスフォアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体からなる群より選ばれるオリゴヌクレオチド誘導体である、上記(26)記載のオリゴヌクレオチド。
(28) 配列番号20または21で表される塩基配列を有するDNA。
(29) 上記(26)〜(28)のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドを用い、ポリメラーゼ・チェイン・リアクション法により、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を定量する方法。
(30) 上記(25)または(29)記載の方法を用いた癌または癌転移の検出法。
(31) 上記(5)、(26)〜(28)記載のDNAおよび配列番号2または3で表される塩基配列を有するDNAから得らばれるDNAを用い、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするDNAの転写またはmRNAの翻訳を抑制する方法。
(32) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドを認識する抗体。
(33) 上記(32)記載の抗体を用いる、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリペプチドの免疫学的検出法。
(34) 上記(32)記載の抗体を用い、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリペプチドを検出することを特徴とする免疫組織染色法。
(35) 上記(32)記載の抗体を含有する免疫組織染色剤。
(36) 上記(32)記載の抗体を含有する、癌または癌転移の診断薬。
(37) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドと被験試料とを接触させることを特徴とする、該ポリペプチドの有する活性を変動させる化合物のスクリーニング法。
(38) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドを発現する細胞と被験試料とを接触させ、抗シアリルルイスa抗体、抗ルイスa抗体、抗ルイスb抗体または抗シアリルルイスc抗体を用い、シアリルルイスa糖鎖、ルイスa糖鎖、ルイスb糖鎖またはシアリルルイスc糖鎖含量を測定することを特徴とする、該ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を変動させる化合物のスクリーニング法。
(39) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドを発現する細胞と被験試料とを接触させ、上記(32)記載の抗体を用い、該ポリペプチド含量を測定することを特徴とする、該ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を変動させる化合物のスクリーニング法。
(40) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードする遺伝子の転写を司るプロモーターDNA。
(41) プロモーターDNAが、小腸細胞、大腸細胞、膵臓細胞、胃細胞、大腸癌細胞、膵癌細胞および胃癌細胞からなる群より選ばれる細胞で機能しているプロモーターである、上記(40)記載のプロモーターDNA。
(42) プロモーターDNAが、ヒトまたはマウス由来のプロモーターDNAである、上記(40)または(41)記載のプロモーターDNA。
(43) プロモーターDNAが配列番号3で表される塩基配列の1〜5000番目の塩基配列中の連続する50〜5000bpのDNA配列を有する、上記(40)〜(42)のいずれか1つに記載のプロモーターDNA。
(44) 上記(40)〜(43)のいずれか1つに記載のプロモーターDNAおよび該プロモーターDNAの下流に連結させたレポーター遺伝子を含有するプラスミドを用いて動物細胞を形質転換し、該形質転換体と被験試料とを接触させ、該レポーター遺伝子の翻訳産物含量を測定することを特徴とする、該プロモータによる転写の効率を変動させる化合物のスクリーニング法。
(45) レポーター遺伝子が、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、β−グルクロニダーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、β−ラクタマーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、エクオリン遺伝子およびグリーン・フルオレッセント・プロテイン遺伝子より選ばれる遺伝子である、上記(44)記載のスクリーニング法。
(46) 上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするDNAを欠損または変異させたノックアウト動物。
(47) ノックアウト動物がマウスである、上記(46)記載のノックアウト動物。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)本発明のシアリルルイスa糖鎖等のタイプ1糖鎖を合成可能なβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有する新規ポリペプチドをコードするDNA(以下、新規β1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子と略すこともある)の取得、ならびに該DNAおよびオリゴヌクレオチドの製造
シアリルルイスa糖鎖またはシアリルルイスc糖鎖を発現している、大腸癌細胞または膵臓癌細胞等の消化器系癌細胞より、常法によりcDNAライブラリーを作製する。
cDNAライブラリー作製法としては、モレキュラー・クローニング第2版やカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー サプルメント1〜38、A Laboratory Manual,2nd Ed.(1989)、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等に記載された方法、あるいは市販のキット、例えばスーパースクリプト・プラスミド・システム・フォー・cDNA・シンセシス・アンド・プラスミド・クローニング〔SuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning;ギブコBRL(Gibco BRL)社製〕やザップ−cDNA・シンセシス・キット〔ZAP−cDNA Synthesis Kit、ストラタジーン社製〕を用いる方法等があげられる。
シアリルルイスa糖鎖またはシアリルルイスc糖鎖を発現している大腸癌細胞または膵臓癌細胞等の消化器系癌細胞としては、例えば、シアリルルイスa糖鎖を発現しているヒト大腸癌細胞株であるColo205、Colo201、SW1116等、あるいはシアリルルイスa糖鎖を発現しているヒト膵臓癌細胞株であるCapan−2等を用いることができる。
cDNAライブラリーを作製するための、クローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自立複製できるものであれば、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる。
具体的には、ZAP Express〔ストラタジーン社製、Strategies,,58(1992)〕、pBluescript II SK(+)〔Nucleic Acids Research,17,9494(1989)〕、λZAP II(ストラタジーン社製)、λgt10、λgt11〔DNA Cloning,A Practical Approach,,49(1985)〕、λTriplEx(クローンテック社製)、λExCell(ファルマシア社製)、pT7T318U(ファルマシア社製)、pcD2〔Mol.Cell.Biol.,,280(1983)〕、pUC18〔Gene,33,103(1985)〕、pAMo〔J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)、別名pAMoPRC3Sc(特開平05−336963)〕等をあげることができる。
宿主微生物としては、大腸菌Escherichia coliに属する微生物であればいずれでも用いることができる。具体的には、Escherichia coli XL1−Blue MRF’〔ストラタジーン社製、Strategies,,81(1992)〕、Escherichia coli C600〔Genetics,39,440(1954)〕、Escherichia coli Y1088〔Science,222,778(1983)〕、Escherichia coli Y1090〔Science,222,778(1983)〕、Escherichia coli NM522〔J.Mol.Biol.,166,1(1983)〕、Escherichia coli K802〔J.Mol.Biol.,16,118(1966)〕、Escherichia coli JM105〔Gene,38,275(1985)〕、Escherichia coli SOLRTM Strain〔ストラタジーン社より市販〕、coli LE392(モレキュラー・クローニング第2版)等を用いることができる。
cDNAライブラリーとして、例えば、以下のようにして作製したcDNAライブラリーをあげることができる。
ヒト大腸癌細胞株Colo205由来のmRNAよりGIBCO BRL社製のcDNA合成システム(cDNA Synthesis System)キットを用いてcDNAを合成する。
該DNAの両末端にSfiIリンカーを付与した後、クローニングベクターpAMoのSfiI部位に挿入したプラスミドを作製する。
該プラスミドを用い、coli LE392を形質転換してcDNAライブラリーを作製する。
作製したcDNAライブラリーより目的とするDNAを含むクローンを以下の方法で選択する。
上記で作製したcDNAライブラリーから、常法あるいはキィアジェン(Qiagen)社製のプラスミド調製キットである/plasmid/maxi kit(商品番号41031)等のキットを用いてプラスミドを調製する。
既知の4種のβ1,3−ガラクトース転移酵素のアミノ酸配列を比較することにより、4種のβ1,3−ガラクトース転移酵素でアミノ酸配列がよく保存されている領域を2ヶ所以上見出す。
公知の方法〔Carl W.Dieffenbach,Gabriela S.Dveksler,”PCR Primer: A Laboratry Manual”,Cold Spring Harbor Lab.(1995)、井上純一郎・仙波憲太郎編,ザ・プロトコールシリーズ「cDNAクローニング」,羊土社,(1996年)、Science,241,42(1988)〕に従って各領域のアミノ酸配列に対応するDNA配列を有するdegenerateプライマーを設計し、上記で調製したcDNAライブラリーを鋳型としてポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PolymeraseChain Reaction;以下、PCRと略記する)〔モレキュラー・クローニング第2版およびPCRProtocols Academic Press(1990)〕を行い、増幅断片を適当なプラスミドにサブクローニングする。
PCR増幅断片のサブクローニングは、増幅DNA断片をそのまま、あるいは制限酵素やDNAポリメラーゼで処理後、常法によりベクターに組み込むことにより行うことができる。
ベクターとしては、pBluescript II SK(+)、pBluescript SK(−)(いずれもStratagene社製)、pDIRECT〔Nucleic Acids Research,18,6069(1990)〕、pCR−Script Amp SK(+)〔Stratagene社製、Strategies,,6264(1992)〕、pT7Blue〔Novagen社製〕、pCR II〔インビトロジェン社製、Biotechnology,,657(1991)〕、pCR−TRAP〔Genehunter社製〕、pNoTAT7(5’→3’社製)等をあげることができる。
サブクローン化されたPCR増幅断片の塩基配列を決定することにより、既知のβ1,3−ガラクトース転移酵素のアミノ酸配列とホモロジーを有するが完全には一致しないアミノ酸配列をコードするDNA断片を選択する。塩基配列は、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばサンガー(Sanger)らのジデオキシ法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463(1977)〕あるいは373A・DNAシークエンサー〔Perkin Elmer社製〕等の塩基配列分析装置を用いて決定することができる。
上記で作製したcDNAライブラリーに対して、該DNA断片をプローブとしてコロニーハイブリダイゼーションまたはプラークハイブリダイゼーション(モレキュラー・クローニング第2版)を行うことにより、既知のβ1,3−ガラクトース転移酵素とホモロジーを有するポリペプチドをコードするcDNAを取得することができる。プローブとしては、該DNA断片をアイソトープあるいはジゴキシゲニン(digoxigenin)標識したものを使用することができる。
上記の方法により取得されたDNAの塩基配列は、該DNA断片をそのままあるいは適当な制限酵素等で切断後、モレキュラー・クローニング第2版等に記載の常法によりベクターに組み込み、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばサンガー(Sanger)らのジデオキシ法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463(1977)〕あるいは373A・DNAシークエンサー〔パーキン・エルマー(Perkin Elmer)社製〕等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより決定することができる。
該方法により取得されるDNAとして、例えば、配列番号1で表されるポリペプチドをコードするDNA等をあげることができ、具体的には、配列番号2または3で表される塩基配列を有するDNA等をあげることができる。
配列番号2のDNAを含むプラスミドとしては、例えば、後述の実施例に記載したpAMo−3GT5、pBS−3GT5(FERM BP−6645)をあげることができる。
上記のようにして取得したDNAを発現ベクターに組み込み、発現プラスミドを構築する。得られた発現プラスミドを適当な動物細胞に導入後、抗シアリルルイスa糖鎖抗体または抗シアリルルイスc糖鎖抗体を用いたフルオレッセンス・アクティベーテッド・セル・ソーター(Fluorescence Activated Cell Sorter;以下、FACSと略記する)解析により、該DNAがシアリルルイスa糖鎖またはシアリルルイスc糖鎖の合成に関与するβ1,3−ガラクトース転移酵素をコードするかどうかを調べることができる。
該発現ベクターとしては、該cDNAを組み込んで動物細胞で発現できるベクターであればいかなるものでも用いることができ、例えば、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシ社より市販)、pAGE107〔特開平3−22979、Cytotechnology,,133(1990)〕、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103〔J.Biochem.,101,1307(1987)〕、pAMo、pAMoA〔J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)、別名pAMoPRSA(特開平05−336963)〕、pAS3−3(特開平2−227075)等を用いることができる。
cDNAを組み込んだ発現ベクターを、目的とするcDNAを選択可能な動物細胞に導入し、形質転換細胞を取得する。
該発現ベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Cytotechnology,,133(1990)〕、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)〕、Virology,52,456(1973)に記載の方法等の方法をあげることができる。
動物細胞としては、ヒトの細胞であるNamalwa細胞、Namalwa細胞のサブラインであるNamalwa KJM−1細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637(特開昭63−299)、大腸癌細胞株であるHCT−15等をあげることができ、好ましくは、Namalwa細胞、Namalwa KJM−1細胞またはHCT−15をあげることができる。
得られた形質転換細胞を常法により培養する。
具体的には、以下の形質転換体の培養方法をあげることができる。
形質転換体が動物細胞である場合、該細胞を培養する培地は、一般に使用されているRPMI1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)〕、EagleのMEM培地〔Science,122,501(1952)〕、DMEM培地〔Virology,,396(1959)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)〕またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
該培養により得られた細胞を、抗シアリルルイスa糖鎖抗体または抗シアリルルイスc糖鎖抗体を用いて蛍光染色した後、FACSを用いて解析することにより、該発現プラスミドを導入した細胞においてシアリルルイスa糖鎖またはシアリルルイスc糖鎖量が増加するかどうか検討する。シアリルルイスa糖鎖またはシアリルルイスc糖鎖量が増加していれば、該DNAはシアリルルイスa糖鎖またはシアリルルイスc糖鎖の合成に関与する新規β1,3−ガラクトース転移酵素をコードしていると考えることができる。
シアリルルイスa糖鎖またはシアリルルイスc糖鎖と反応する抗体であればいかなるものでも、抗シアリルルイスa糖鎖抗体または抗シアリルルイスc糖鎖抗体として用いることができ、例えば、抗シアリルルイスa糖鎖抗体である19−9(Fujirebio社製)やKM231(Kyowa Medex社製)、あるいは抗シアリルルイスc糖鎖抗体であるDU−PAN−2(Kyowa Medex社製)をあげることができる。
以上のようにして、大腸癌細胞、膵臓癌細胞等の消化器系癌細胞において、シアリルルイスa糖鎖等のタイプ1糖鎖に属する癌関連糖鎖の合成に関与する、β1,3−ガラクトース転移酵素活性を有する新規ポリペプチドをコードするDNAを取得することができる。
また、上記方法で取得したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを選択することにより、配列番号1記載のアミノ酸配列と比較して、1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする目的のDNAを取得することができる。
即ち、非ヒト動物、例えば、マウス、ラット、ウシ、サル等由来のcDNAライブラリーに対してスクリーニングを行うことにより、目的のDNAを取得することができる。
決定された新規β1,3−ガラクトース転移酵素ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて、該ポリペプチドをコードするDNAを化学合成することによっても目的のDNAを調製することができる。DNAの化学合成は、チオホスファイト法を利用した島津製作所社製のDNA合成機、フォスフォアミダイト法を利用したパーキン・エルマー社製のDNA合成機model392等を用いて行うことができる。
また、後述のオリゴヌクレオチドをセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーとして用い、これらDNAに相補的なmRNAを発現している細胞のmRNAから調製したcDNAを鋳型として、PCRを行うことによっても、目的とするDNAを調製することができる。
上述の方法で取得した本発明のDNAおよびDNA断片を用いて、モレキュラー・クローニング第2版等に記載の常法、あるいはDNA合成機により、本発明のDNAの一部の配列を有するアンチセンス・オリゴヌクレオチド、センス・オリゴヌクレオチド等のオリゴヌクレオチドを調製することができる。
該オリゴヌクレオチドとしては、上記DNAの有する塩基配列中の連続した5〜60塩基と同じ配列を有するDNAまたは該DNAと相補的な配列を有するDNAをあげることができ、具体的には、配列番号2または3で表される塩基配列中の連続した5〜60塩基と同じ配列を有するDNAまたは該DNAと相補的な配列を有するDNAをあげることができる。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーとして用いる場合には、両者の融解温度(Tm)および塩基数が極端に変わることのない上記記載のオリゴヌクレオチドが好ましい。具体的には、配列番号20,21等に示された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをあげることができる。
更に、これらオリゴヌクレオチドの誘導体(以下、オリゴヌクレオチド誘導体という)も本発明のオリゴヌクレオチドとして利用することができる。
該オリゴヌクレオチド誘導体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスフォアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、あるいはオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等をあげることができる〔細胞工学,16,1463(1997)〕。
(2)新規β1,3−ガラクトース転移酵素ポリペプチド(以下、本発明のポリペプチドともいう)の製造
本発明のポリペプチドは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー サプルメント1〜38等に記載された方法等を用い、例えば以下の方法により、本発明のDNAを宿主細胞中で発現させ、製造することができる。
本発明のポリペプチドをコードする全長DNAを基にして、必要に応じて、該ポリペプチドをコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。
また、該ポリペプチドをコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換したDNAを調製する。該DNAは該ポリペプチドの生産率を向上させるうえで有用である。
該DNA断片、または全長DNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換え体DNA(組換えベクター)を作製する。
該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、本発明のポリペプチドを生産する形質転換体を得ることができる。
宿主細胞としては、原核細胞、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。また、動物個体や植物個体を用いることができる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、新規β1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子の転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合、新規β1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子の発現ベクターは、原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、新規β1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子、転写終結配列、より構成されていることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
発現ベクターとしては、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社より市販)、pKK233−2(ファルマシア社)、pSE280(インビトロジェン社)、pGEMEX−1〔プロメガ(Promega)社製〕、pQE−8(キアゲン(QIAGEN)社製)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200〔Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)〕、pLSA1〔Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)〕、pGEL1〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4306(1985)〕、pBluescript II SK+(ストラタジーン社製)、pBluescript II SK(−)(ストラタジーン社製)、pTrs30(FERM BP−5407)、pTrs32(FERM BP−5408)、pGHA2(FERM BP−400)、pGKA2(FERM B−6798)、pTerm2(特開平3−22979、US4686191、US4939094、US5160735)、pEG400〔J.Bacteriol.,172,2392(1990)〕、pGEX(ファルマシア社製)、pETシステム(ノバジェン社製)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pTrxFus(Invitrogen社製)、pMAL−c2(New England Biolabs社製)、pUC19〔Gene,33,103(1985)〕、pSTV28(宝酒造社製)、pUC118(宝酒造社製)、pPA1(特開昭63−233798)等を例示することができる。
プロモーターとしては、大腸菌等の宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、Pプロモーター、Pプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrp x2)、tacプロモーター、lacT7プロモーター、letIプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
本発明のDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
宿主細胞としては、エシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属等に属する微生物、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coli W1485、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia co li No.49、Escherichia coli W3110、Escherichia coli NY49、Escherichia coli BL21(DE3)、Escherichia coli BL21(DE3)pLysS、Escherichia coli HMS174(DE3)、Escherichia coli HMS174(DE3)pLysS、Serratia ficariaSerratia fonticolaSerratia liquefaciensSerratia marcescensBacillus subtilisBacillus amyloliquefaciensBrevibacterium ammoniagenesBrevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticum ATCC14066、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATCC13869、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354、Pseudomonas sp.D−0110等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)〕、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、Gene,17,107(1982)やMolecular & General Genetics,168,111(1979)に記載の方法等をあげることができる。
酵母菌株を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15等を例示することができる。
プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいかなるものでもよく、例えば、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP 1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、クルイベロミセス属、トリコスポロン属、シワニオミセス属、ピチア属等に属する酵母菌株をあげることができ、具体的には、Saccharomyces cerevisiaeSchizosaccharomyces pombeKluyveromyces lactisTrichosporon pullulansSchwanniomyces alluviusPichia pastoris等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Methods.Enzymol.,194,182(1990)〕、スフェロプラスト法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)〕、酢酸リチウム法〔J.Bacteriol.,153,163(1983)〕、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法等をあげることができる。
動物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシ社より市販)、pAGE107〔特開平3−22979、Cytotechnology,,133(1990)〕、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103〔J.Biochem.,101,1307(1987)〕、pAMo、pAMoA〔J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)、別名pAMoPRSA(特開平05−336963)〕、pAS3−3(特開平2−227075)等を例示することができる。
プロモーターとしては、動物細胞中で発現できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、モロニー・ミュリン・ロイケミア・ウイルス(Moloney Murine Leukemia Virus)のロング・ターミナル・リピート・プロモーター(Long Terminal Repeat Promoter)、レトロウイルスのプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター、あるいはメタロチオネインのプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒトの細胞であるNamalwa細胞またはNamalwa KJM−1細胞、ヒト胎児腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト大腸癌細胞株等をあげることができる。
マウス・ミエローマ細胞としては、SP2/0、NSO等、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0等、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC: CRL−1573)等、ヒト白血病細胞としてはBALL−1等、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト大腸癌細胞株としてはHCT−15等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Cytotechnology,,133(1990)〕、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)〕、Virology,52,456(1973)に記載の方法等をあげることができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えば、バキュロウイルス・イクスプレッション・ベクターズ ア・ラボラトリー・マニュアル〔Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,NewYork(1992)〕、モレキュラー・バイオロジー ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Biology,A Laboratory Manual)、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー サプルメント1〜38(Current Protocols in Molecular Biology)、Bio/Technology,,47(1988)等に記載された方法によって、ポリペプチドを発現することができる。
即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウィルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、ポリペプチドを発現させることができる。
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(すべてインビトロジェン社製)等をあげることができる。
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞、Trichoplusia niの卵巣細胞、カイコ卵巣由来の培養細胞等を用いることができる。
Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞としてはSf9、Sf21(バキュロウイルス・イクスプレッション・ベクターズ ア・ラボラトリー・マニュアル)等、Trichoplusia niの卵巣細胞としてはHigh 5、BTI−TN−5B1−4(インビトロジェン社製)等、カイコ卵巣由来の培養細胞としてはBombyx mori N4等をあげることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)〕等をあげることができる。
また、動物細胞にDNAを導入する方法と同様の方法を用いて、昆虫細胞にDNAを導入することもでき、例えば、エレクトロポレーション法〔Cytotechnology,,133(1990)〕、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)〕等をあげることができる。
植物細胞または植物個体を宿主として用いる場合には、公知の方法〔組織培養,20(1994)、組織培養,21(1995)、Trends in Biotechnology,15,45(1997)〕に準じてポリペプチドを生産することができる。
発現ベクターとして、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等をあげることができる。
遺伝子発現に用いるプロモーターとしては、植物細胞中で発現できるものであればいずれも用いることができ、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等をあげることができる。また、プロモーターと発現させる遺伝子の間に、トウモロコシのアルコール脱水素酵素遺伝子のイントロン1等を挿入することにより、遺伝子の発現効率をあげることもできる。
宿主細胞としては、ポテト、タバコ、トウモロコシ、イネ、アブラナ、大豆、トマト、ニンジン、小麦、大麦、ライ麦、アルファルファ、亜麻等の植物細胞等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等をあげることができる。
遺伝子を導入した植物の細胞や器官は、ジャーファーメンターを用いて大量培養することができる。
培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH5〜9、20〜40℃の条件下で3〜60日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
また、遺伝子導入した植物細胞を再分化させることにより、遺伝子が導入された植物個体(トランスジェニック植物)を造成することもできる。
動物個体を用いて本発明のポリペプチドを生産することもできる。例えば、公知の方法〔American Journal of Clinical Nutrition 63,639S(1996)、American Journal of Clinical Nutrition,63,627S(1996)、Bio/Technology,,830(1991)〕に準じて、遺伝子を導入した動物中に本発明のポリペプチドを生産することができる。
プロモーターとしては、動物で発現できるものであればいずれも用いることができるが、例えば、乳腺細胞特異的なプロモーターであるαカゼインプロモーター、βカゼインプロモーター、βラクトグロブリンプロモーター、ホエー酸性プロテインプロモーター等が好適に用いられる。
本発明のポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微生物、動物細胞、あるいは植物細胞由来の形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、該ポリペプチドを生成・蓄積させ、該培養物より該ポリペプチドを採取することにより、該ポリペプチドを製造することができる。
形質転換体が動物個体または植物個体の場合は、通常の方法に従って、飼育または栽培し、該ポリペプチドを生成・蓄積させ、該動物個体または植物個体より該ポリペプチドを採取することにより、該ポリペプチドを製造することができる。
即ち、動物個体の場合、例えば、本発明のDNAを保有する非ヒトトランスジェニック動物を飼育し、該組換え体DNAのコードする新規β1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドを該動物中に生成・蓄積させ、該動物中より該ポリペプチドを採取することにより、新規β1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドを製造することができる。該動物中の生成・蓄積場所としては、例えば、該動物のミルク、卵等をあげることができる。
植物個体の場合、例えば、本発明のDNAを保有するトランスジェニック植物を栽培し、該組換え体DNAのコードする新規β1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドを該植物中に生成・蓄積させ、該植物中より該ポリペプチドを採取することにより、新規β1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドを製造することができる。
本発明のポリペプチド製造用形質転換体が大腸菌等の原核生物、酵母菌等の真核生物である場合、これら本発明の形質転換体を培地に培養し、培養物中に本発明のポリペプチドを生成・蓄積させ、該培養物から採取することにより、本発明のポリペプチドを製造することができる。
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、該生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。
培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。
培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。
また培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
本発明のポリペプチド製造用形質転換体が動物細胞である場合、該細胞を培養する培地は、一般に使用されているRPMI1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)〕、EagleのMEM培地〔Science,122,501(1952)〕、DMEM培地〔Virology,,396(1959)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)〕またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明のポリペプチド製造用形質転換体が昆虫細胞である場合、該細胞を培養する培地としては、一般に使用されているTNM−FH培地(ファーミンジェン社製)、Sf−900 II SFM培地(ギブコBRL社製)、ExCell400、ExCell405〔いずれもJRHバイオサイエンシーズ社製〕、Grace’s Insect Medium〔Nature,195,788(1962)〕等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜7、25〜30℃等の条件下で、1〜5日間行う。
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
遺伝子の発現方法としては、ポリペプチド全長を発現させる以外に、β1,3−ガラクトース転移酵素活性を有する領域を含む部分ポリペプチドとして発現させることもできる。糖転移酵素は、一般にタイプ2型の膜タンパク質のトポロジーを有し、N末端の数から数十アミノ酸からなる細胞質領域、疎水性の高いアミノ酸配列を有する膜結合領域、数から数十アミノ酸からなる幹領域(stem region)、および触媒領域を含む残りの大半のC末端部分からなっている。幹領域と触媒領域を含む残りの大半のC末端部分は、ゴルジ体内腔に露出していると考えられる。幹領域と触媒領域の境界は、N末端を欠失させたポリペプチドを作製し、どこまで欠失させると活性がなくなるかを検討することにより、実験的に求めることができる。一方、幹領域と触媒領域に関する知見のある類似の糖転移酵素とアミノ酸配列を比較することにより、幹領域と触媒領域を予想することもできる。
本発明の新規β1,3−ガラクトース転移酵素の構造も、他の糖転移酵素と同様の構造を有している。
例えば、配列番号1で示されたアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドの場合、N末端の7アミノ酸からなる細胞質領域、それに続く19アミノ酸からなる疎水性に富む膜結合領域、少なくとも4アミノ酸からなる幹領域、および触媒領域を含む残りの大半のC末端部分からなる。他のβ1,3−ガラクトース転移酵素とのアミノ酸配列上の相同性の比較、ならびに他のβ1,3−ガラクトース転移酵素の幹領域と触媒領域に関する知見〔特開平6−181759〕を基に、幹領域は少なくとも4アミノ酸からなると予想される。従って、31番目から310番目のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、触媒領域を含むと考えられる。 上記のポリペプチド全長またはβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有する領域(触媒領域)を含む部分ポリペプチドは、直接発現させる以外に、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌タンパク質または融合タンパク質として発現させることもできる。融合させるタンパク質としては、β−ガラクトシダーゼ、プロテインA、プロテインAのIgG結合領域、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、ポリ(Arg)、ポリ(Glu)、プロテインG、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、ポリヒスチジン鎖(His−tag)、Sペプチド、DNA結合タンパク質ドメイン、Tac抗原、チオレドキシン、グリーン・フルオレッセント・プロテイン、および任意の抗体のエピトープ等があげられる〔山川彰夫,実験医学,13,469−474(1995)〕。
本発明のポリペプチドの生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、あるいは宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞や、生産させるポリペプチドの構造を変えることにより、該方法を選択することができる。
本発明のポリペプチドが宿主細胞内あるいは宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法〔J.Biol.Chem.,264,17619(1989)〕、ロウらの方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,,1288(1990)〕、または特開平05−336963、WO94/23021等に記載の方法を準用することにより、該ポリペプチドを宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
すなわち、遺伝子組換えの手法を用いて、本発明のポリペプチドの活性部位を含むポリペプチドの手前にシグナルペプチドを付加した形で発現させることにより、本発明のポリペプチドを宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
具体的には、触媒部位を含むと考えられる31番目から310番目までのアミノ酸配列を有するポリペプチドの手前に、シグナルペプチドを付加して発現させることにより、本発明のポリペプチドを宿主細胞外に積極的に分泌させることができると考えられる。さらに、シグナルペプチドと触媒領域を含むポリペプチドの間、または触媒領域を含むポリペプチドのC末端に、精製・検出用のタグを付加することもできる。精製・検出用のタグとしては、β−ガラクトシダーゼ、プロテインA、プロテインAのIgG結合領域、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、ポリ(Arg)、ポリ(Glu)、プロテインG、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、ポリヒスチジン鎖(His−tag)、Sペプチド、DNA結合タンパク質ドメイン、Tac抗原、チオレドキシン、グリーン・フルオレッセント・プロテイン、および任意の抗体のエピトープ等があげられる〔山川彰夫,実験医学,13,469−474(1995)〕。
また、特開平2−227075に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。
本発明ポリペプチド製造用形質転換体の培養物から、本発明のポリペプチドを単離・精製するには、通常の酵素の単離・精製法を用いることができる。
例えば、本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、該細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。
該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
また、該ポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈殿画分より、通常の方法により該ポリペプチドを回収後、該ポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。該可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、該ポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
細胞外に該ポリペプチドが分泌される場合には、該培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。該可溶性画分から、上記無細胞抽出液上清からの単離精製法と同様の手法により、該ポリペプチドの精製標品を得ることができる。
また、通常の糖転移酵素の精製方法〔Methods in Enzymology,83,458〕に準じて精製できる。
また、本発明のポリペプチドを他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる〔山川彰夫,実験医学,13,469−474(1995)〕。
例えば、ロウらの方法〔Proc.Natl,Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,,1288(1990)〕、特開平05−336963、WO94/23021に記載の方法に準じて、本発明のポリペプチドをプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
また、本発明のポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる〔Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,,1288(1990)〕。
更に、該ポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。
本発明のポリペプチドは、公知の方法〔J.Biomolecular NMR,,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.110,166−168(1991)〕に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
上記で取得されたポリペプチドのアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても本発明のポリペプチドを製造することができる。また、アドバンスト・ケムテック(Advanced ChemTech)社、パーキン・エルマー社、ファルマシアバイオテク社、プロテイン・テクノロジー・インストゥルメント(Protein Technology Instrument)社、シンセセル・ベガ(Synthecell−Vega)社、パーセプティブ(PerSeptive)社、島津製作所等のペプチド合成機を利用し化学合成することもできる。
精製した本発明のポリペプチドの構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、例えば遺伝子クローニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、1993年)に記載の方法により実施可能である。
本発明のポリペプチドのβ1,3−ガラクトース転移酵素活性は、公知の測定法〔J.Biol.Chem.,258,9893−9898(1983)、J.Biol.Chem.,262,15649−15658(1987)、Archi.Biochem.Biophys.,270,630−646(1989)、Archi.Biochem.Biophys.,274,14−25(1989)、特開平06−181759、J.Biol.Chem.,273,58−65(1998)、J.Biol.Chem.,273,433−440(1998)、J.Biol.Chem.,273,12770−12778(1998)〕に準じて測定することができる。
(3)ガラクトースがβ1,3結合で、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖および該糖鎖を含有する複合糖質の製造
上記(2)で取得した微生物、動物細胞、植物細胞および昆虫細胞由来の形質転換体からなる群より選ばれる形質転換体を培養液中で培養し、該培養物中に、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖を含有する複合糖質を生成・蓄積させ、該培養物中より該糖鎖または該複合糖質を採取することにより、該糖鎖または該複合糖質を製造することができる。
ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン残基に付加した構造を含有する糖鎖として、シアリルルイスa構造を含有する糖鎖、シアリルルイスc構造を含有する糖鎖、ルイスa構造を含有する糖鎖、ルイスb構造を含有する糖鎖、Galα1−3Galβ1−3GlcNAc構造を含有する糖鎖、Galα1−3(Fucα1−2)Galβ1−3GlcNAc構造を含有する糖鎖、GalNAcα1−3(Fucα1−2)Galβ1−3GlcNAc構造を含有する糖鎖等をあげることができる。
培養は上記(2)に準じて行うことができる。
上記形質転換体において、本発明のポリペプチドと任意の組換え糖タンパク質(例えば医薬用組換え糖タンパク質)を、糖鎖合成可能な形質転換体中で同時に生産させることにより、該組換え糖タンパク質に、ガラクトースがβ1,3結合で、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖を付加することができる。
また、上記(2)で取得した動物個体または植物個体を用い、上記(2)の方法に準じて、ガラクトースがβ1,3結合で、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖の付加した複合糖質を製造することができる。
即ち、動物個体の場合、例えば、本発明のDNAを保有する非ヒトトランスジェニック動物を飼育し、該動物中に、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖の付加した複合糖質を生成・蓄積させ、該動物中より該生成物を採取することにより、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖の付加した複合糖質を製造することができる。
該動物中の生成・蓄積場所としては、例えば、該動物のミルク、卵等をあげることができる。
植物個体の場合、例えば、本発明のDNAを保有するトランスジェニック植物を栽培し、該植物中に、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖の付加した複合糖質を生成・蓄積させ、該植物中より該生産物を採取することにより、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖の付加した複合糖質を製造することができる。
上記(2)記載の方法で取得される本発明のポリペプチドを酵素源として用い、水性媒体中で、糖鎖の非還元末端に存在するN−アセチルグルコサミン残基またはN−アセチルグルコサミン単糖にβ1,3結合でガラクトースが付与された反応産物を、以下の方法で製造することができる。
即ち、N−アセチルグルコサミン単糖、N−アセチルグルコサミン残基を非還元末端に有するオリゴ糖、またはN−アセチルグルコサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する複合糖質を受容基質として、上記(2)記載の方法で取得される本発明のポリペプチドを酵素源として用い、該受容基質、該酵素源およびウリジン−5’−二リン酸ガラクトース(UDP−Gal)を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に、該受容基質のN−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルグルコサミン残基にβ1,3結合でガラクトースが付与された反応産物を生成・蓄積させ、該水性媒体中より該反応産物を採取することにより、該反応産物を製造することができる。
上記(2)記載の方法で取得される本発明のポリペプチドを酵素源として用い、水性媒体中で、糖鎖の非還元末端に存在するグルコース残基またはグルコース単糖にβ1,3結合でガラクトースが付与された反応産物を、以下の方法で製造することができる。
即ち、グルコース単糖、グルコース残基を非還元末端に有するオリゴ糖、またはグルコース残基を糖鎖の非還元末端に有する複合糖質を受容基質として、上記(2)記載の方法で取得される本発明のポリペプチドを酵素源として用い、該受容基質、該酵素源およびUDP−Galを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に、該受容基質のグルコースまたはグルコース残基にβ1,3結合でガラクトースが付与された反応産物を生成・蓄積させ、該水性媒体中より該反応産物を採取することにより、該反応産物を製造することができる。
酵素源は、アガラクトラクト−N−ネオテトラオース(agalact lacto−N−neotetraose,GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc)を基質として、37℃で1分間に1μモルのラクト−N−テトラオース(lacto−N−tetraose,Galβ1−3GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc)を生成することのできる活性を1単位(U)として、0.1mU/l〜10,000U/lであり、好ましくは1mU/l〜1,000U/lの濃度で用いる。
水性媒体としては、水、りん酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ほう酸塩、クエン酸塩、トリス等の緩衝液、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、アセトアミド等のアミド類等をあげることができる。また、酵素源として用いた微生物の培養液を水性媒体として用いることができる。更に、上記(2)記載の培養により得られた形質転換体の培養液、上記(2)記載の非ヒトトランスジェニック動物より得られたミルクを水性媒体として用いることもできる。
水性媒体に、必要に応じて界面活性剤あるいは有機溶媒を添加してもよい。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン・オクタデシルアミン(例えばナイミーンS−215、日本油脂社製)等の非イオン界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウム・ブロマイドやアルキルジメチル・ベンジルアンモニウムクロライド(例えばカチオンF2−40E、日本油脂社製)等のカチオン系界面活性剤、ラウロイル・ザルコシネート等のアニオン系界面活性剤、アルキルジメチルアミン(例えば三級アミンFB、日本油脂社製)等の三級アミン類等、Gal含有糖質の生成を促進するものであればいずれでもよく、1種または数種を混合して使用することもできる。
界面活性剤は、通常0.1〜50g/lの濃度で用いられる。
有機溶剤としては、キシレン、トルエン、脂肪族アルコール、アセトン、酢酸エチル等が挙げられ、通常0.1〜50ml/lの濃度で用いられる。
UDP−Galとしては、市販品の他、微生物等の活性を利用して生成した反応液あるいは該反応液から精製したものを用いることができる。該UDP−Galは0.1〜500mmol/lの濃度で用いることができる。
上記において、N−アセチルグルコサミン残基を非還元末端に有するオリゴ糖としては、GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc、GlcNAcβ1−3Galβ1−4GlcNAc、GlcNAcβ1−3(GlcNAcβ1−6)Galβ1−4Glc、GlcNAcβ1−3(GlcNAcβ1−6)Galβ1−4GlcNAc、GlcNAcβ1−3GalNAc、GlcNAcβ1−6GalNAc、またはこれらオリゴ糖の構造のいずれか一つの構造を糖鎖の非還元末端に有するオリゴ糖等をあげることができる。
N−アセチルグルコサミン残基を糖鎖の非還元末端に有する複合糖質としては、上記オリゴ糖の構造のいずれか一つの構造を糖鎖の非還元末端に有する糖鎖を含有する複合糖質、あるいはアシアロアガラクト複合型N結合型糖鎖を含有する複合糖質等をあげることができる。
受容基質は0.01〜500mmol/lの濃度で用いることができる。
該生成反応において、必要に応じてMnCl等の無機塩、β−メルカプトエタノール、ポリエチレングリコール等を添加することができる。
生成反応は水性媒体中、pH5〜10、好ましくはpH6〜8、20〜50℃の条件で1〜96時間行う。
上記方法により生産される糖鎖または複合糖質より、公知の酵素的手法または化学的手法により糖鎖の一部を切り出すことができる〔日本生化学会編,続生化学実験講座,第4巻,複合糖質研究法I,II,東京化学同人,(1986年)、谷口直之・鈴水明身・古川清・菅原和幸監修,グリコバイオロジー実験プロトコール,秀潤社,(1996年)〕。
(4)本発明のポリペプチドを認識する抗体の作製
(i)ポリクローナル抗体の作製
上述(2)の方法により取得したポリペプチドの全長または部分断片精製標品、あるいは本発明のポリペプチドの一部のアミノ酸配列を有するペプチドを抗原として用い、動物に投与することによりポリクローナル抗体を作製することができる。
投与する動物として、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、ハムスター等を用いることができる。
該抗原の投与量は動物1匹当たり50〜100μgが好ましい。
ペプチドを用いる場合は、ペプチドをスカシガイヘモシアニン(keyhole limpet haemocyanin)や牛チログロブリン等のキャリア蛋白に共有結合させたものを抗原とするのが望ましい。抗原とするペプチドは、ペプチド合成機で合成することができる。
該抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行う。各投与後、3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、該血清が免疫に用いた抗原と反応することを酵素免疫測定法〔酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊 1976年、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lavoratory(1988)〕等で確認する。
免疫に用いた抗原に対し、その血清が充分な抗体価を示した非ヒトほ乳動物より血清を取得し、該血清より、下記方法によりポリクローナル抗体を分離、精製することができる。
抗体を分離、精製する方法としては、遠心分離、40〜50%飽和硫酸アンモニウムによる塩析、カプリル酸沈殿〔Antibodies,A Laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)〕、またはDEAE−セファロースカラム、陰イオン交換カラム、プロテインAまたはG−カラムあるいはゲル濾過カラム等を用いるクロマトグラフィー等を、単独または組み合わせて処理する方法があげられる。
(ii)モノクローナル抗体の作製
(a)抗体産性細胞の調製
免疫に用いた本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに対し、その血清が十分な抗体価を示したラットを抗体産生細胞の供給源として供する。
該抗体価を示したラットに抗原物質を最終投与した後3〜7日目に、脾臓を摘出する。該脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、1,200rpmで5分間遠心分離した後、上清を捨てる。
得られた沈殿画分の脾細胞をトリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理し赤血球を除去した後、MEM培地で3回洗浄し、得られた脾細胞を抗体産生細胞として用いる。
(b)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスまたはラットから取得した株化細胞を使用する。
例えば、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(以下、P3−U1と略す)〔Curr.Topics.Microbiol.Immunol.,81,1(1978)、Europ.J.Immunol.,,511(1976)〕、SP2/0−Ag14(SP−2)〔Nature,276,269(1978)〕、P3−X63−Ag8653(653)〔J.Immunol.,123,1548(1979)]、P3−X63−Ag8(X63)〔Nature,256,495(1975)〕等を用いることができる。これらの細胞株は、8−アザグアニン培地〔RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mmol/l)、2−メルカプトエタノール(5×10−5mol/l)、ジェンタマイシン(10μg/ml)および牛胎児血清(FCS)(CSL社製、10%)を加えた培地(以下、正常培地という)に、さらに8−アザグアニン(15μg/ml)を加えた培地〕で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地で培養し、融合には該細胞を2×10個以上用いる。
(c)ハイブリドーマの作製
(a)で取得した抗体産生細胞と(b)で取得した骨髄腫細胞をMEM培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸−カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、1,200rpmで5分間遠心分離した後、上清を捨てる。
得られた沈澱画分の細胞群をよくほぐし、該細胞群に、攪拌しながら、37℃で、10抗体産生細胞あたり、ポリエチレングライコール−1000(PEG−1000)2g、MEM 2mlおよびジメチルスルホキシド(DMSO)0.7mlを混合した溶液を0.2〜1ml添加し、更に1〜2分間毎にMEM培地1〜2mlを数回添加する。
添加後、MEM培地を加えて全量が50mlになるように調製する。該調製液を900rpmで5分間遠心分離後、上清を捨てる。
得られた沈殿画分の細胞を、ゆるやかにほぐした後、メスピペットによる吸込み、吹出しでゆるやかにHAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10−4mol/l)、チミジン(1.5×10−5mol/l)およびアミノプテリン(4×10−7mol/l)を加えた培地〕100ml中に懸濁する。
該懸濁液を96穴培養用プレートに100μl/穴ずつ分注し、5% COインキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。
培養後、培養上清の一部をとりアンチボディズ〔Antibodies,A Laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14(1988)〕等に述べられている酵素免疫測定法により、本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに特異的に反応するハイブリドーマを選択する。
酵素免疫測定法の具体的例として、以下の方法をあげることができる。
免疫の際、抗原に用いた本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドを適当なプレートにコートし、ハイブリドーマ培養上清もしくは後述の(d)で得られる精製抗体を第一抗体として反応させる。さらに第二抗体としてビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物等で標識した抗ラットまたは抗マウスイムノグロブリン抗体を反応させた後に標識物質に応じた反応を行なう。本発明のポリペプチドに特異的に反応するものを本発明のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマとして選択する。
該ハイブリドーマを用いて、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し〔1回目は、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を使用する〕、安定して強い抗体価の認められたものを本発明のポリペプチドの抗ポリペプチド抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
(d)モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理〔2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mlを腹腔内投与し、2週間飼育する〕した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、(c)で取得した本発明のポリペプチドモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞5〜20×10細胞/匹を腹腔内に注射する。10〜21日間でハイブリドーマは腹水癌化する。
該腹水癌化したマウスから腹水を採取し、3,000rpmで5分間遠心分離して固形分を除去する。
得られた上清より、ポリクローナルで用いた方法と同様の方法でモノクローナル抗体を精製、取得することができる。
抗体のサブクラスの決定は、マウスモノクローナル抗体タイピングキットまたはラットモノクローナル抗体タイピングキットを用いて行う。抗体のクラスとは抗体のアイソタイプのことで、ヒトでは、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEがあげられる。サブクラスとは、クラス内のアイソタイプのことで、マウスでは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、ヒトでは、IgG1、IgG2、1gG3、1gG4があげられる。
抗体のタンパク質量は、ローリー法あるいは280nmでの吸光度より算出する。
(5)本発明のDNAまたはオリゴヌクレオチドを用いた疾患の治療や診断等への利用
本発明のDNAは、アンチセンスRNA/DNA技術〔バイオサイエンスとインダストリー,50,322(1992)、化学,46,681(1991)、Biotechnology,,358(1992)、Trends in Biotechnology,10,87(1992)、Trends in Biotechnology,10,152(1992)、細胞工学,16,1463(1997)〕あるいはトリプル・ヘリックス技術〔Trends in Biotechnology,10,132(1992)〕を用いた癌転移抑制等の疾病の治療、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法を用いたそれら癌の診断に利用することが可能である。
例えば、上記(1)記載の本発明のDNA、オリゴヌクレオチドまたはその誘導体を投与することにより、本発明のポリペプチドの生産を抑制することができる。
即ち、本発明のDNA、オリゴヌクレオチドまたはその誘導体を用いて、本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写の抑制、本発明のポリペプチドをコードするmRNAの翻訳の抑制を行うことが可能である。
また、本発明のDNAあるいは該DNAより調製した上記オリゴヌクレオチドを用い、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法により、本発明のポリペプチドをコードするDNAの発現量を定量することができる。
更に、本発明のDNAをプローブとして、公知の方法〔東京大学医科学研究所制癌研究部編、新細胞工学実験プロトコール、秀潤社(1993年)〕を用いて、該遺伝子のプロモーター領域を取得することが可能である。
現在、多くの機能未知のヒト染色体遺伝子の配列がデータベースに登録されている。したがって、本発明のポリペプチドをコードするヒトcDNAの配列と、データベースに登録されてるヒト染色体遺伝子の配列とを比較することにより、本発明のポリペプチドをコードするヒト染色体遺伝子を同定し、該遺伝子の構造を明らかにできる可能性がある。cDNAの配列と一致する染色体遺伝子配列が登録されていれば、cDNAの配列と染色体遺伝子の配列を比較することにより、本発明のポリペプチドをコードする染色体遺伝子のプロモーター領域、エクソンおよびイントロン構造を決定することができる。
プロモーター領域としては、哺乳動物細胞において本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の転写に関与するすべてのプロモーター領域があげられる。例えば、ヒト大腸癌細胞あるいはヒト膵臓癌細胞で、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の転写に関与するプロモータ領域をあげることができる。具体的には、例えば、配列番号3で表される塩基配列の1〜5000番目の塩基配列中の連続する50〜5000bpの配列を有するプロモーターDNAをあげることができる。該プロモーターは後述のスクリーニング法に利用することができる。
糖転移酵素遺伝子には多型や変異が存在することが知られている。例えば、ABO式血液型の決定に関与する糖転移酵素に関しては、遺伝子多型に基づくアミノ酸配列の違いにより以下の3種の酵素が生成される。
A型抗原の合成に関与するα1,3−N−アセチルガラクトサミン転移酵素、B型抗原の合成に関与するα1,3−ガラクトース転移酵素、およびO(H)型糖鎖の生成に関与する活性を持たない酵素〔Nature,345,229−233(1990)〕。
またルイス式血液型の決定に関与するα1,3−フコース転移酵素(Fuc−TIII)の場合も、遺伝子多型に基づくアミノ酸配列の違いにより、活性が低下または消失した酵素が生成することが知られている〔J.Biol.Chem.,269,29271−29278(1994)、Blood,82,2915−2919(1993)、J.Biol.Chem.,269,20987−20994(1994)、J.Biol.Chem.,272,21994−21998(1997)〕。
Fuc−TIII遺伝子の多型は、大腸癌における癌関連糖鎖抗原であるシアリルルイスa糖鎖の発現と密接な関係があることが知られている〔Cancer Res.,56,330−338(1996)、Cancer Res.,58,512−518(1998)〕。
従って、Fuc−TIIIの多型を調べることにより、病気の診断や予後の予測を行うことができると考えられる。
本発明の新規β1,3−ガラクトース転移酵素は、大腸癌や膵臓癌においてシアリルルイスa糖鎖またはシアリルルイスc糖鎖の合成に関与することから、本遺伝子の多型を調べることにより、大腸癌や膵臓癌の診断や予後の予測に利用できる。
また、本遺伝子の多型と、本遺伝子が発現している臓器(胃、空腸、大腸、膵臓など)における疾患との関連を調べることにより、他の疾患の診断にも利用できる。
本遺伝子の多型解析は、本遺伝子の遺伝子配列情報を用いて行うことができる。具体的には、サザンブロット法、ダイレクトシークエンス法、PCR法、DNAチップ法などを用いて遺伝子多型を解析することができる〔臨床検査,42,1507−1517(1998)、臨床検査,42,1565−1570(1998)〕。
(6)本発明のポリペプチドの利用
(a)本発明の抗体作製への利用
本発明のポリペプチドを用い、上記(4)の方法により本発明の抗体を作製することができる。
(b)本発明のポリペプチドを用いる糖鎖、複合糖質製造への利用
本発明のポリペプチドを用い、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖の付加した複合糖質を製造することができる。
(c)本発明のポリペプチドの活性に関与する物質のスクリーニングへの利用
本発明のポリペプチドは、下記(8)の(a)の方法により、該ポリペプチドの活性を増強または阻害する化合物をスクリーニングすることができる。
(7)本発明の抗体の利用
(a)本発明の抗体を用いる本発明のポリペプチドの免疫学的検出および定量
本発明のポリペプチドの免疫学的検出法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法等をあげることができる。
免疫学的定量法としては、液相中で本発明のポリペプチドと反応する抗体のうちエピトープが異なる2種類のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法、126I等の放射性同位体で標識した本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドを認識する抗体とを用いるラジオイムノアッセイ法等をあげることができる。
上記検出あるいは定量法は、大腸癌、膵臓癌等の診断に利用することができる。
(b)本発明の抗体を含有する医薬
本発明の抗体は、医薬、例えば大腸癌、膵臓癌等の疾患の治療薬として用いることができる。
本発明の抗体を含有する医薬は、治療薬として該化合物単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内等の非経口投与をあげることができる。投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤等があげられる。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等があげられる。例えば乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造できる。カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。例えば、注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製する。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製される。また、噴霧剤は該化合物そのもの、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該化合物を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製する。担体として具体的には乳糖、グリセリン等が例示される。該化合物および用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜8mg/kgである。
(8)スクリーニング法への応用
本発明の新規β1,3−ガラクトース転移酵素ポリペプチドは、大腸癌細胞や膵臓癌細胞等の消化器系癌細胞において、シアリルルイスa糖鎖、シアリルルイスc糖鎖、ルイスa糖鎖、ルイスb糖鎖等のタイプ1糖鎖の合成に関与することから、該ポリペプチドの活性を増強または阻害する化合物を用いて、細胞におけるタイプ1糖鎖の合成量を増加または低下させることが可能である。
また、該ポリペプチドをコードする遺伝子の転写過程、あるいは転写産物からタンパク質への翻訳過程を促進または抑制する化合物は、該ポリペプチドの発現を制御し、細胞におけるタイプ1糖鎖の合成量を制御することが可能である。
タイプ1糖鎖の合成量を抑制する化合物は、癌転移抑制に有用と考えられる。一方、タイプ1糖鎖の合成量を増加させる化合物は、タイプ1糖鎖の合成に有用と考えられる。
上記の化合物は、以下(a)〜(e)に示す方法により取得可能である。
(a)上記(2)で記載した方法を用いて調製した本発明の新規β1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチド(精製物あるいは該ポリペプチドを発現する形質転換体の細胞抽出液または培養上清)を酵素として用い、被験試料の存在下、公知の方法〔J.Biol.Chem.,258,9893−9898(1983)、J.Biol.Chem.,262,15649−15658(1987)、Archi.Biochem.Biophys.,270,630−646(1989)、Archi.Biochem.Biophys.,274,14−25(1989)、特開平06−181759、J.Biol.Chem.,273,58−65(1998)、J.Biol.Chem.,273,433−440(1998)、J.Biol.Chem.,273,12770−12778(1998)〕を用いてβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を測定し、β1,3−ガラクトース転移酵素活性を増加または低下させる活性を有する化合物を選択・取得する。
(b)本発明のポリペプチドを発現する細胞または上記(2)で記載した形質転換体を、被験試料の存在下、上記(2)の培養法で2時間から1週間培養後、細胞表面のシアリルルイスa糖鎖、シアリルルイスc糖鎖、ルイスa糖鎖、ルイスb糖鎖等のタイプ1糖鎖の量を、それぞれの糖鎖に対する抗体を用いて測定し、該糖鎖量を増加または低下させる活性を有する化合物を選択・取得する。
上記抗体を用いた測定法としては、例えば、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色等を用いた検出法をあげることができる。
(c)本発明のポリペプチドを発現する細胞を、被験試料の存在下、上記(2)の培養法で2時間から1週間培養後、細胞中の該ポリペプチド量を、上記(4)で記載した本発明の抗体を用いて測定し、該ポリペプチド量を増加または低下させる活性を有する化合物を選択・取得する。
本発明の抗体を用いた測定法としては、例えば、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色等を用いた検出法をあげることができる。
(d)本発明のポリペプチドを発現する細胞を、被験試料の存在下、上記(2)で記載の培養法で2時間から1週間培養後、細胞中の該ポリペプチドをコードする遺伝子転写産物の量を、上記(5)で記載したノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法等の方法を用いて測定し、該転写産物量を増加または低下させる活性を有する化合物を選択・取得する。
(e)上記(4)で取得したプロモーターの下流にレポーター遺伝子を連結したDNAを組み込んだプラスミドを公知の方法により作製し、上記(2)記載の動物細胞に、上記(2)記載の方法に準じて導入し、形質転換体を取得する。該形質転換体を、被験試料の存在下、上記(2)記載の培養法で2時間から1週間培養後、細胞中のレポーター遺伝子の発現量を、公知の方法〔東京大学医科学研究所制癌研究部編,新細胞工学実験プロトコール,秀潤社(1993),Biotechniques,20,914(1996)、J.Antibiotics,49,453(1996)、Trends in Biochemical Sciences,20,448(1995)、細胞工学,16,581(1997)〕を用いて測定し、該発現量を増加または低下させる活性を有する化合物を選択・取得する。
レポーター遺伝子としては、例えば、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、β−グルクロニダーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、β−ラクタマーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、エクオリン遺伝子またはグリーン・フルオレッセント・プロテイン(GFP)遺伝子等をあげることができる。
(9)ノックアウト非ヒト動物の作製
本発明のDNAを含むベクターを用い、目的とする非ヒト動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ニワトリ、マウス等の胚性幹細胞(embryonic stem cell)において染色体上の本発明のポリペプチドをコードするDNAを公知の相同組換えの手法〔例えば、Nature,326,6110,295(1987)、Cell,51,3,503(1987)等〕により不活化または任意の配列と置換した変異クローンを作成することができる〔例えば、Nature,350,6315,243(1991)〕。
このようにして作成した胚性幹細胞クローンと、非ヒト動物の受精卵の胚盤胞(blastcyst)を用い、注入キメラ法または集合キメラ法等の手法により胚性幹細胞クローンと正常細胞からなるキメラ個体を作成することができる。
該キメラ個体と正常個体の掛け合わせにより、全身の細胞の染色体上の本発明のポリペプチドをコードするDNAに任意の変異を有する個体を得ることができ、さらにその個体の掛け合わせにより相同染色体の双方に変異が入った、ホモ個体(ノックアウト非ヒト動物)を得ることができる。
このようにして動物個体において、染色体上の本発明のポリペプチドをコードするDNAの任意の位置へ変異の導入が可能である。例えば染色体上の本発明のポリペプチドをコードするDNAの翻訳領域中への塩基置換、欠失、挿入等の変異を導入することにより、その産物の活性を変化させることができる。
またその発現制御領域への同様な変異の導入により、発現の程度、時期、組織特異性等を改変させることも可能である。さらにCre−loxP系との組合せにより、より積極的に発現時期、発現部位、発現量等を制御することも可能である。
このような例として、脳のある特定の領域で発現されるプロモータを利用して、その領域でのみ目的遺伝子を欠失させた例〔Cell,87,7,1317(1996)〕やCreを発現するアデノウィルスを用いて、目的の時期に、臓器特異的に目的遺伝子を欠失させた例〔Science,278,5335,(1997)〕が知られている。
従って染色体上の本発明のポリペプチドをコードするDNAについてもこのように任意の時期や組織で発現を制御できる、または任意の挿入、欠失、置換をその翻訳領域や、発現制御領域に有するノックアウト非ヒト動物を作製することが可能である。
このようなノックアウト非ヒト動物は任意の時期、任意の程度または任意の部位で、本発明のポリペプチドに起因する種々の疾患の症状を誘導することができる。
従って、本発明のノックアウト非ヒト動物は、本発明のポリペプチドに起因する種々の疾患の治療や予防において極めて有用な動物モデルとなる。特にその治療薬、予防薬、また機能性食品、健康食品等の評価用モデルとして非常に有用である。
発明を実施するための最良の形態
以下実施例を示す。遺伝子操作的手法として、断らない限りモレキュラー・クローニング第2版に記載された方法を用いた。
実施例1 各種細胞株におけるタイプ1糖鎖の発現量と既知β1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子の発現量の測定
各種ヒト癌細胞株におけるタイプ1糖鎖(シアリルルイスa糖鎖、ルイスa糖鎖、ルイスb糖鎖)の発現量と既知のヒトβ1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子の発現量を測定することにより、大腸癌細胞株あるいは膵臓癌細胞株でタイプ1糖鎖の合成に関与するβ1,3−ガラクトース転移酵素の同定を試みた。
各種細胞株におけるタイプ1糖鎖(シアリルルイスa糖鎖、ルイスa糖鎖、ルイスb糖鎖)の発現量の測定は、抗シアリルルイスa糖鎖抗体、抗ルイスa糖鎖抗体、または抗ルイスb糖鎖抗体を用いた蛍光抗体染色後、FACSを用いて解析することにより行った(第1図のA)。
各種ヒト細胞株における既知β1,3−ガラクトース転移酵素(β3Gal−T1、β3Gal−T2、β3Gal−T3、β3Gal−T4)遺伝子の転写物の定量は、RT−PCR法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,87,2725(1990)、J.Biol.Chem.,269,14730(1994)、特開平06−181759、J.Biol.Chem.,273,26729(1998)〕を用いて行った。各種細胞株における各β1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子転写産物の量は、いずれの細胞においても同程度発現していると考えられるβ−アクチンの転写産物の量を1000とした時の相対値として表示した(第1図のB)。
(1)各種細胞株におけるタイプ1糖鎖(シアリルルイスa糖鎖、ルイスa糖鎖、ルイスb糖鎖)の発現量の測定
細胞株としては、大腸癌細胞株(Colo205、Colo201、SW1116、LS180、HT29、WiDr、HCT−15、SW480、SW620)、膵臓癌細胞株(Capan−1、Capan−2)、胃癌細胞株(KATOIII、MKN45、MKN74)、肺癌細胞株(PC−1)、神経芽細胞腫細胞株(SK−N−MC、SK−N−SH)、リンパ腫細胞株(Namalwa、Jurkat)、前立腺癌細胞株(PC−3)を用いた。
Colo205、Colo201、LS180、HT29、WiDr、HCT−15、SW480、SW620、Capan−1、Capan−2、KATOIII、MKN45、MKN74、PC−1、SK−N−MC、SK−N−SH、Namalwa、PC−3はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection;ATCC)より入手した。また、SW1116(ATCCより入手可能)およびJurkat(理研ジーンバンク;RIKEN GENE BANKより入手可能)は愛知県がんセンターの高橋博士より入手した。
上記の細胞をそれぞれの細胞に適した培地で培養後、各細胞を抗シアリルルイスa糖鎖抗体(19−9)、抗ルイスa糖鎖抗体(7LE)、または抗ルイスb糖鎖抗体(Neokokusai社製)を用いて蛍光抗体染色し、FACSを用いて解析した。
具体的方法を以下に示す。
各細胞(約1×10)をマイクロチューブ(1.5ml:エッペンドルフ社製)にとり、遠心分離(550×g、7分間)により細胞を集めた。
該細胞を0.9mlの0.1%のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝液PBS(A−PBS:8g/l NaCl、0.2g/l KCl、1.15g/l NaHPO(無水)、0.2g/l KHPO、0.1%アジ化ナトリウム)で洗浄した後、該洗浄細胞にA−PBSで約10μg/mlに希釈した上記抗糖鎖抗体を20μl加えて懸濁し、4℃で1時間反応させた。
反応後、細胞を0.9mlのA−PBSで1回洗浄した後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で蛍光標識した抗マウスIgM/IgG抗体(Bio−Rad社製)をA−PBSで16倍希釈した溶液を20μl加えて懸濁し、4℃で30分間反応させた。
反応後、細胞を0.9mlのA−PBSで1回洗浄した後、0.6mlのA−PBSに懸濁し、フルオレッセンス・アクティベーティド・セル・ソーター〔エピックス・エリート・フローサイトメーター(EPICS Elite Flow Cytometer〕;コールター(COULTER)社製〕を用いて解析を行なった。また対照実験として、抗糖鎖抗体の代わりにA−PBSを用いて同様の解析を行なった。
結果を第1図のAに示す。大腸癌細胞株であるColo205、Colo201、SW1116、および膵臓癌細胞株であるCapan−2においてタイプ1糖鎖が多く発現していること確認した。
(2)各種ヒト細胞株における既知β1,3−ガラクトース転移酵素(β3Gal−T1、β3Gal−T2、β3Gal−T3、β3Gal−T4)遺伝子の転写物の定量
(a)各種細胞株由来一本鎖cDNAの調製
上記(1)記載の細胞株から酸グアニジウム チオシアネート フェノール−クロロホルム法〔Anal.Biochem.,162,156−159〕により全RNAを抽出した。
全RNA各々6μgに、デオキシリボヌクレアーゼI(Life Technologies社製)を5単位/mlずつ添加し、室温で5分間反応させた。反応後、65℃で15分間加熱することにより、酵素を失活させた。
得られた全RNA各々について、オリゴ(dT)プライマーを用いてSUPERSCRIPTTM Preamplification System for First Strand cDNA System(Life Technologies社)によりcDNAを合成した。反応は20μlで行い、反応後の溶液を水で50倍希釈し、使用するまで−80℃で保管した。
(b)スタンダードと内部コントロールの調製
検量線の作成に用いるスタンダードとしては、ヒトβ3Gal−T1、ヒトβ3Gal−T2、ヒトβ3Gal−T3、ヒトβ3Gal−T4の各cDNAをpUC119またはpBluescript SK(−)に組み込んだプラスミド(pUC119−3GT1、pBS−3GT2、pBS−3GT3、pBS−3GT4)を、各cDNA部分を切り出す適当な制限酵素で切断し、直鎖状DNAに変換したものを用いた。
pUC119−3GT1は、特開平6−181759記載のプラスミドpUC119−WM1(FERM BP−4011)と同じものである。ヒトβ3Gal−T2、ヒトβ3Gal−T3およびヒトβ3Gal−T4の各cDNAの取得は、以下のように行った。
各cDNAの配列に特異的なプライマーを用いてPCRを行うことにより各cDNAの断片を取得した。
取得された各cDNA断片をプローブとして用いて、コロニーハイブリダイゼーションまたはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、それぞれのcDNAを取得した。ヒトβ3Gal−T2、ヒトβ3Gal−T3およびヒトβ3Gal−T4の塩基配列を、LI−COR社のDNAシークエンサー(dNA sequencer model 4000L)またはパーキンエルマー社のDNAシークエンサー377と、各シークエンサー用の反応キットを用いて決定し、それぞれヒトβ3Gal−T2、ヒトβ3Gal−T3、ならびにヒトβ3Gal−T4をコードすることを確認した。各cDNAは公知の配列をもとにしたPCRによっても得ることができる。
β−アクチンの転写産物定量用のスタンダードとしては、pUC119−ACTをcDNA部分を切り出す制限酵素(HindIIIとAsp718)で切断して直鎖状DNAに変換したものを用いた〔J.Biol.Chem.,269,14730(1994)、特開平06−181759〕。
内部コントロールとしては、下記のようにして調製したプラスミド(pBS−3GT1d、pBS−3GT2d、pBS−3GT3d、pBS−3GT4d)を、各cDNAを切り出す適当な制限酵素で切断し、直鎖状DNAに変換したものを用いた。
pUC119−3GT1において、ヒトβ3Gal−T1cDNA中のBanII−EcoRV間212bpを欠失させることによりpUC119−3GT1dを作製した。
pBS−3GT2において、ヒトβ3Gal−T2cDNA中のAflII−BstEII間258bpを欠失させることによりpBS−3GT2dを作製した。
pBS−GT3において、ヒトβ3Gal−T3cDNA中のStyI−StyI間183bpを欠失させることによりpBS−3GT3dを作製した。
pBS−3GT4において、ヒトβ3Gal−T4cDNA中のAccIII−StyI間253bpを欠失させることによりpBS−3GT4dを作製した。
β−アクチンの転写産物定量用の内部コントロールとしては、pUC119−ACTdをcDNA部分を切り出す制限酵素(HindIIIとAsp718)で切断して直鎖状DNAに変換したものを用いた〔J.Biol.Chem.,269,14730(1994)、特開平06−181759〕。
(c)RT−PCRによる転写量の定量
上記各組織由来のcDNA 10μlおよび内部コントロール用プラスミド 10μl(10fg)を含む50μlの反応溶液〔10mmol/l Tris−HCl(pH8.3)、50mmol/l KCl、1.5mmol/l MgCl、0.2mmol/l dNTP、0.001%(w/v)ゼラチン、0.2μmol/l 遺伝子特異的プライマー〕で、DNAポリメラーゼAmpliTaq GoldTM(Parkin Elmer社製)を用いてPCRを行った。
各遺伝子特異的プライマーの塩基配列を第1表に示した。また、β3Gal−T1遺伝子特異的プライマーの塩基配列を配列番号4、5に、β3Gal−T2遺伝子特異的プライマーの塩基配列を配列番号6、7に、β3Gal−T3遺伝子特異的プライマーの塩基配列を配列番号8、9に、β3Gal−T4遺伝子特異的プライマーの塩基配列を配列番号10、11に、β−アクチン特異的プライマーの塩基配列を配列番号12、13に示した。
Figure 0004689047
上記プライマーのセットにより、各遺伝子転写産物および各スタンダードからは、第1表のターゲットのところに示したサイズのDNA断片を増幅させることができる。一方、上記プライマーのセットにより、各内部コントロールからは、第1表のコンペティターのところに示したサイズのDNA断片を増幅させることができる。
PCRは、95℃で11分間の加熱後、95℃で1分間、各遺伝子に適した第1表に記載のアニーリング温度で1分間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとして、β1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子群については42サイクル、β−アクチンについては24サイクルの条件で行った。
PCR後の溶液のうち10μlを1%のアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色し、写真を撮影した。写真をNIHイメージシステムによりスキャニングすることにより増幅した断片の染色の強さを測定し、増幅量とした。
細胞由来cDNAのかわりに上記で調製したスタンダードプラスミドを1.25fg、2.5fg、5fg、10fg、20fg、40fg用いて、PCRを行い、増幅断片の増幅量を測定し、cDNAの量と断片の増幅量をプロットして検量線を作成した。
この検量線と各細胞由来cDNAでの断片の増幅量から、各細胞でのcDNAの量を計算し、これを各細胞でのmRNA転写量すなわち遺伝子の発現量とした。なお、β−アクチンは各細胞で普遍的に発現している遺伝子と考えられるため、どの細胞においてもその発現量は同程度と考えられる。従って、各細胞におけるβ−アクチン遺伝子の発現量の差は、cDNA合成反応の効率の差と考えられるためβ1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子の発現量を比較する際にβ−アクチンの発現量も考慮した。
各種細胞株における各β1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子転写産物の量を、β−アクチンの転写産物の量を1000とした時の相対値として表示した(第1図のB)。
β3Gal−T1、β3Gal−T2およびβ3Gal−T3はGalβ1−3GlcNAc構造を合成する活性を有しているが、タイプ1糖鎖を多く発現している大腸癌細胞株(Colo205、Colo201、SW1116)および膵臓癌細胞株(Capan−2)ではほとんど発現していなかった。一方、β3Gal−T4は大腸癌細胞株(Colo205、Colo201、SW1116)および膵臓癌細胞株(Capan−2)で発現がみられたが、この酵素はGalβ1−3GlcNAc構造を合成する活性を有していないことが明らかになっている。
以上の結果から、これらの細胞株においてタイプ1糖鎖の合成に関与しているβ1,3−ガラクトース転移酵素は、新規の酵素であることが明らかになった。
実施例2 大腸癌細胞または膵臓癌細胞等の消化器系癌細胞において、シアリルルイスa糖鎖等のタイプ1糖鎖の合成に関与する、新規β1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子(cDNA)のクローン化
(1)ヒト大腸癌細胞株Colo205からのmRNAの取得
ヒト大腸癌細胞株Colo205より、ロッシュ(Roche)社製のmRNA抽出キットであるOligotexTM−dT30<super>を用いて、約30μgのmRNAを取得した。
具体的試薬および方法は、キットに添付されている説明書に従った。
(2)ヒト大腸癌細胞株Colo205由来cDNAのライブラリーの作製
上記(1)で取得したヒト大腸癌細胞株Colo205由来のmRNA 8μg、およびGIBCO BRL社製のキット(SUPERSCRIPT Choice System for cDNA Synthesis)を用い、オリゴdTをプライマーとして2本鎖cDNAを合成した。
これら二本鎖cDNAの両末端に以下の方法でSfiIリンカーを付与した。〔SfiIリンカーの付与〕
配列番号14で示された一本鎖DNAおよび配列番号15で示された一本鎖DNAをアプライド・バイオシステムズ社380A・DNA合成機を用いて合成した。
該合成一本鎖DNAをそれぞれ50μgずつ、別々に50mmol/l トリス−HCl(pH7.5)、10mmol/l MgCl、5mmol/l ジチオスレイトール(以下、DTTと略記する)、0.1mmol/l EDTAおよび1mmol/l ATPを含む緩衝液(以下、T4キナーゼ緩衝液と略記する)50μlに溶解し、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造社製)30単位を加えて、37℃で16時間リン酸化反応を行ない、11塩基および8塩基のリンカーを取得した。
11塩基のリンカー4μg、8塩基のリンカー2.9μgおよび上記で合成した2本鎖cDNAをT4リガーゼ緩衝液45μlに溶解後、T4 DNAリガーゼ1050単位を加え、16℃で16時間反応させ、該二本鎖DNA各々にSfiIリンカーを付与した。
得られた反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、約1.5kb以上のDNA断片を回収した。
直接発現クローニングベクター(Expression Cloning Vector)であるpAMo〔J.Biol.Chem.,268,22782(1993)、別名pAMoPRC3Sc(特開平05−336963)〕24μgを、10mmol/l トリス−HCl(pH7.5)、6mmol/l MgCl、50mmol/l NaCl、6mmol/l 2−メルカプトエタノールからなる緩衝液(以下、Y−50緩衝液と略記する)590μlに溶解後、80単位のSfiI(宝酒造社製、以下、特に断らないかぎり制限酵素は宝酒造社製のものを用いた)を加え、37℃で16時間消化反応を行なった。
該反応液に40単位のBamHIを加え、37℃で2時間消化反応を行なった。該反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、約8.8kbのDNA断片を回収した。
上記で調製したSfiIリンカーを付与したDNA(mRNA 8μg由来分)をT4リガーゼ緩衝液250μlに溶解後、それぞれの溶解液に、該約8.8kbのDNA断片2μgおよびT4DNAリガーゼ2000単位を加えて、16℃で16時間結合反応を行なった。
反応後、それぞれの反応液にトランスファーRNA(tRNA)5μgを添加し、エタノール沈殿後、10mmol/l トリス−HCl(pH8.0)および1mmol/l EDTA(エチレンジアミン4酢酸ナトリウム)からなる緩衝液(以下、TE緩衝液と略記する)20μlに溶解した。
該反応液を用い、エレクトロポーレーション法〔Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)〕により大腸菌LE392株〔モレキュラー・クローニング第2版〕を形質転換し、約100万個のアンピシリン耐性を有する形質転換体を取得し、cDNAライブラリーを構築した。
更に、該cDNAライブラリー(大腸菌)および、キィアジェン(Qiagen)社製のプラスミド調製キットである/plasmid/maxi kit(商品番号41031)を用い、cDNAを含有するプラスミドを調製した。
(3)degenerateプライマーを用いた新規β1,3−ガラクトース転移酵素cDNA断片の取得
既知の4種のβ1,3−ガラクトース転移酵素(β3Gal−T1、β3Gal−T2、β3Gal−T3、β3Gal−T4)のアミノ酸配列を比較することにより、4種のβ1,3−ガラクトース転移酵素でアミノ酸配列がよく保存されている領域を3ヶ所以上見出した。該3領域をN末端側から順にモチーフ1、モチーフ2、モチーフ3と呼ぶ。上記4種のβ1,3−ガラクトース転移酵素における各モチーフのアミノ酸配列と各モチーフの最初のアミノ酸のN末端からの番号を第2表に示す。
Figure 0004689047
公知の方法〔Carl W.Dieffenbach,Gabriela S.Dveksler,”PCR Primer: A Laboratry Manual”,Cold Spring Harbor Lab.(1995)、井上純一郎・仙波憲太郎編,ザ・プロトコールシリーズ「cDNAクローニング」,羊土社,(1996年)、Science,241,42(1988)〕に従って、各モチーフのアミノ酸配列に対応する塩基配列を有するdegenerateプライマーを設計した。フォワードプライマーとしてモチーフ1とモチーフ2に対応する2種の合成DNA(それぞれの配列を配列番号16と配列番号17に示す)を合成した。また、リバースプライマーとして、モチーフ2とモチーフ3に対応する2種の合成DNA(それぞれの配列を配列番号18と配列番号19に示す)を合成した。
配列番号16記載のDNAと配列番号18記載のDNAをプライマー、上記(2)で調製したcDNAライブラリー(プラスミド)を鋳型としてPCRを行い、増幅断片の末端をDNAポリメラーゼ クレノー断片を用いて平滑末端に変換した後、pBluescript SK(−)(Stratagene社製)のEcoRVサイトにサブクローニングした。また、配列番号17記載のDNAと配列番号19記載のDNAをプライマー、上記(2)で調製したcDNAライブラリー(プラスミド)を鋳型としてPCRを行い、増幅断片の末端をDNAポリメラーゼ クレノー断片を用いて平滑末端に変換した後、pBluescript SK(−)(Stratagene社製)のEcoRVサイトにサブクローニングした。
上記(2)で調製したcDNAライブラリー(プラスミド100ng)を含む50μlの反応溶液〔10mmol/l Tris−HCl(pH8.3)、50mmol/l KCl、1.5mmol/l MgCl、0.2mmol/l dNTP、0.001%(w/v)ゼラチン、0.2μmol/l プライマー〕に、1UのDNAポリメラーゼAmpliTaq GoldTM(Parkin Elmer社)を添加し、PCRを行った。
PCRは、95℃で11分間の加熱後、95℃で30秒間、35℃で1分間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとして、45サイクルの条件で行った。
サブクローニングしたPCR増幅断片の塩基配列は、EPICENTRE TECHNOLOGIES社のキット(SequiTherm EXCEL II Long−Read DNA Sequencing kit−ALF:CatalogNo.SE8301A)とALF DNAシークエンサー(アマーシャム ファルマシア バイオテック社製)を用いて決定した。
その結果、配列番号16記載のDNAと配列番号18記載のDNAをプライマーとして用いたPCRにより、既知のβ1,3−ガラクトース転移酵素のアミノ酸配列とホモロジーを有するが完全には一致しないアミノ酸配列をコードするDNA断片を1種取得した。
該DNA断片のプライマー部分を除く配列は、配列番号2記載のDNAの643番目から851番目の塩基配列と一致していた。
また、配列番号17記載のDNAと配列番号19記載のDNAをプライマーとして用いたPCRにより、既知のβ1,3−ガラクトース転移酵素のアミノ酸配列とホモロジーを有するが完全には一致しないアミノ酸配列をコードするDNA断片を1種取得した。
該DNA断片のプライマー部分を除く配列は、配列番号2記載のDNAの876番目から1124番目の塩基配列と一致していた。
(4)新規β1,3−ガラクトース転移酵素cDNAの取得
上記(3)で取得した2種のPCR増幅断片を混合後、マルチプライムDNA標識システム(アマシャム社)を用いて32Pで標識し、プローブを作製した。
該プローブを用いて、上記(2)で作製したcDNAライブラリーの内の5×10クローンについてコロニーハイブリダイゼーションを行った。
該ハイブリダイゼーションにおいて、フィルターを、2倍濃度のSSPE〔1倍濃度のSSPEの組成は、180mmol/l 塩化ナトリウム、10mmol/l リン酸二水素ナトリウム、1mmol/l エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)よりなる(pH7.4)〕、0.1%SDSよりなる緩衝液中で65℃、10分間振とうする条件で2回、1倍濃度のSSPE、0.1%SDSからなる緩衝液中で65℃、15分間振とうする条件で1回、0.2xSSPE、0.1%SDSからなる緩衝液中で65℃、10分間振とうする条件で2回洗浄した。
該コロニーハイブリダイゼーションの結果、ハイブリダイズする2個の独立したプラスミドが得られた。
(5)プラスミドpAMo−3GT5中に挿入されているcDNAの塩基配列の決定
上記(4)で得られたプラスミドの1つであるpAMo−3GT5が含むcDNAの全塩基配列を、以下の方法で決定した。
pAMoベクター中の配列に特異的なプライマーを用いて、該cDNAの5’側および3’側の配列を決定した。
決定された配列に特異的な合成DNAを調製し、それをプライマーとして用い、さらに先の塩基配列を決定した。
該操作を繰り返すことにより、該cDNAの全塩基配列を決定した。
塩基配列の決定には、LI−COR社のDNAシークエンサー(dNA sequencer model 4000L)と反応キット(Sequitherm EXCEL IITM Long−ReadTM DNA−sequencing kit−Lc:エア・ブラウン)、またはパーキンエルマー社のDNAシークエンサー377と反応キット(ABI PrismTM BigDyeTM Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction kit:Applied Biosystems社)を使用した。
pAMo−3GT5が含むcDNAの全塩基配列(2775bp)を配列番号2に示した。
該cDNAは、糖転移酵素に特徴的な構造を有する310アミノ酸からなるポリペプチドをコードしていた。
該ポリペプチドはこれまでにクローン化された4種のヒトβ1,3−ガラクトース転移酵素(β3Gal−T1、β3Gal−T2、β3Gal−T3、β3Gal−T4)とアミノ酸レベルで28%〜37%の相同性を示したことから、新規なβ1,3−ガラクトース転移酵素であると考えられた。該アミノ酸配列のホモロジー解析は、配列解析ソフトGENETYX−MAC 10.1(ソフトウエア開発株式会社)を用いて行った。一致したアミノ酸残基数をβ3Gal−T5のアミノ酸残基数で割ることにより、ホモロジー(%)を算出した。
該ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号1に示した。
該ポリペプチドは、N末端の7アミノ酸からなる細胞質領域、それに続く19アミノ酸からなる疎水性に富む膜結合領域、少なくとも4アミノ酸からなる幹領域、および触媒領域を含む残りの大半のC末端部分からなると考えられた。他のβ1,3−ガラクトース転移酵素とのアミノ酸配列上の相同性の比較、ならびに他のβ1,3−ガラクトース転移酵素の幹領域と触媒領域に関する知見〔特開平6−181759〕を基に、幹領域は少なくとも4アミノ酸からなると予想された。したがって、31番目から310番目のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、触媒領域を含むと考えられる。
以下、該cDNAをヒトβ3Gal−T5 cDNA、該cDNAがコードするポリペプチドをヒトβ3Gal−T5と呼ぶ。
pAMo−3GT5をHindIIIとNotIで切断することによりヒトβ3Gal−T5 cDNAを切り出し、pBluescript II SK(+)のHindIIIとNotIサイト間に組み込むことにより、pBS−3GT5を造成した(第2図)。
pBS−3GT5を含む大腸菌であるEscherichia coli MM294/pBS−3GT5は、平成11年2月10日付で工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号 郵便番号305−8566)にFERM BP−6645として寄託されている。
(6)ヒトβ3cal−T5発現プラスミドを導入したヒト培養細胞におけるタイプ1糖鎖の合成
コントロールプラスミド(pAMo)およびヒトβ3Gal−T5発現プラスミド(pAMo−3GT5)をそれぞれ、1μg/μlになるようにTE緩衝液に溶解した後、エレクトロポレーション法〔Cytotechnology,,133(1990)〕によりNamalwa細胞に導入し、形質転換細胞を得た。
1.6×10細胞あたり4μgのプラスミドを導入した後、10%のウシ胎児血清を含むRPMI1640培地〔7.5% NaHCOを1/40量、200mmol/l L−グルタミン溶液(GIBCO社製)を3%、ペニシリン・ストレプトマイシン溶液(GIBCO社製、5000units/ml ペニシリン、5000μg/mlストレプトマイシン)を0.5%添加したRPMI1640培地(日水製薬社製)〕8mlに懸濁し、COインキュベーターで37℃で24時間培養した。
培養後、G418(ギブコ社製)を0.8mg/mlになるように添加し、更に14日間培養し安定形質転換株を取得した。該形質転換株は、0.8mg/mlのG418を含むRPMI1640で継代した。
該形質転換細胞について、抗シアリルルイスd糖鎖抗体(DU−PAN−2:Kyowa Medex社製)を用いて間接蛍光抗体染色を行なった。
間接蛍光抗体染色は、実施例1の(1)に記載した方法に従って行った。その結果、pAMo−3GT5を導入した細胞においては、pAMoを導入した細胞に比較して、抗シアリルルイスc糖鎖抗体(DU−PAN−2)への反応性が大幅に増加していた(第3図のA)。
また、コントロールプラスミド(pAMo)およびヒトβ3Gal−T5発現プラスミド(pAMo−3GT5)を上記と同様の方法により、タイプ1糖鎖を発現していない大腸癌細胞株であるHCT−15に導入し、安定形質転換細胞を得た。次いで、限界希釈法を用いて該形質転換細胞からシングルクローン(HCT−3GT5LおよびHCT−3GT5H)を取得した。HCT−3GT5Lにおけるβ3Gal−T5転写物の量は、HCT−3GT5Hにおけるβ3Gal−T5転写物の量に比較して少ない(実施例4および第3表参照)。該シングルクローンは、0.8mg/mlのG418を含むRPMI1640で継代した。
取得したシングルクローン(HCT−3GT5H)について、抗シアリルルイスa糖鎖抗体(19−9)、抗シアリルルイスc糖鎖抗体(DU−PAN−2:Kyowa Medex社製)、抗ルイスa糖鎖抗体(7LE)、または抗ルイスb糖鎖抗体(ネオ国際社製)を用いて間接蛍光抗体染色を行なった。
間接蛍光抗体染色は、実施例1の(1)に記載した方法に従って行った。その結果、pAMo−3GT5を導入した細胞においては、pAMoを導入した細胞に比較して、4種の抗体全てへの反応性が大幅に増加していることが明らかになった(第3図のB)。
以上の結果から、β3Gal−T5は形質転換細胞中で、タイプ1糖鎖(シアリルルイスa糖鎖、シアリルルイスc糖鎖、ルイスa糖鎖およびルイスb糖鎖)を合成可能であることが示された。
またこの結果は、β3Gal−T5を細胞で発現させることにより、タイプ1糖鎖(シアリルルイスa糖鎖、シアリルルイスc糖鎖、ルイスa糖鎖およびルイスb糖鎖等)を含有する糖鎖および該糖鎖を含有する複合糖質を新たに合成できることを意味している。
以上のことより、β3Gal−T5を発現させた細胞を宿主として、有用な糖タンパク質を分泌生産することにより、分泌生産される糖タンパク質にタイプ1糖鎖(シアリルルイスa糖鎖、シアリルルイスc糖鎖、ルイスa糖鎖およびルイスb糖鎖等)を付与することが可能である。
(7)各種ヒト細胞株におけるヒトβ3Gal−T5遺伝子の転写物の定量
実施例1の(2)の方法に従って、ヒトβ3Gal−T5遺伝子の転写物の定量を行った。
鋳型として用いる各種細胞株由来一本鎖cDNAは、実施例1(1)で調製したものを使用した。
検量線の作成に用いるスタンダードとしては、上記(5)で造成したヒトβ3Gal−T5cDNAをpBluescript II SK(+)に組み込んだプラスミド(pBS−3GT5)を、cDNA部分を切り出す適当な制限酵素で切断し、直鎖状DNAに変換したものを用いた。
内部コントロールとしては、下記のようにして調製したプラスミド(pBS−3GT5d)を、cDNAを切り出す適当な制限酵素で切断し、直鎖状DNAに変換したものを用いた。
pBS−3GT5において、ヒトβ3Gal−T5cDNA中のEco81I−XcmI間144bpを欠失させることによりpBS−3GT5dを作成した。
RT−PCRによる転写量の定量は、β3Gal−T5特異的プライマーを用いて、実施例1の(2)と同様にして行った。β3Gal−T5特異的プライマーの塩基配列を第1表ならびに配列番号20、21に示した。
β3Gal−T5特異的プライマーにより、β3Gal−T5遺伝子転写産物およびスタンダードからは、第1表のターゲットのところに示したサイズ(554bp)のDNA断片を増幅させることができる。一方、上記プライマーにより、内部コントロールからは、第1表のコンペティターのところに示したサイズ(410bp)のDNA断片を増幅させることができる。
PCRは、95℃で11分間の加熱後、95℃で1分間、65℃で1分間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとして、42サイクル繰り返す条件で行った。
各種細胞株におけるβ3Gal−T5遺伝子転写産物の量を、β−アクチンの転写産物の量を1000とした時の相対値として表示した(第4図のA)。
β3Gal−T5転写産物は、タイプ1糖鎖を多く発現している大腸癌細胞株(Colo205、Colo201、SW1116)および膵臓癌細胞株(Capan−2)で発現していることが判明した。また、β3Gal−T5転写産物の発現は、タイプ1糖鎖の発現(第1図参照)とよく相関していた。
以上の結果と上記(5)および(6)の結果を総合すると、β3Gal−T5は、大腸癌細胞または膵臓癌細胞等の消化器系癌細胞において、シアリルルイスa糖鎖やシアリルルイスc糖鎖等のタイプ1糖鎖の合成に関与する、新規β1,3−ガラクトース転移酵素であると結論される。
(8)各種ヒト細胞株におけるCA19−9抗原含有タンパク質の発現
抗シアリルルイスa抗体(19−9)を用いたウエスタン・ブロッティング解析を行うことにより、大腸癌細胞株(Colo205、Colo201、SW1116、LS180、HT29、WiDr、HCT−15、SW480、SW620)、膵臓癌細胞株(Capan−1、Capan−2)、胃癌細胞株(KATOIII、MKN45、MKN74)におけるシアリルルイスa糖鎖含有タンパク質の発現について検討した。
19−9は大腸癌や膵臓癌における癌関連糖鎖の検出に利用されており、19−9で検出されるシアリルルイスa糖鎖抗原は、CA19−9抗原と呼ばれている。
各細胞(1×10個)を、溶液〔20mmol/l HEPES(pH7.2)、2%TrironX−100〕に懸濁後、短時間超音波にかけて細胞溶解液を調製した。
該細胞溶解液のタンパク質濃度を、マイクロBCAタンパク質アッセイ試薬キット(PIERCE社)により測定し、10μgのタンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供した。
電気泳動後、Transblot SD cell(Bio−Rad社製)を用いて、ゲル上のタンパク質をImmobilon PVDF膜(Millipore社製)に移した。
該膜をブロッキング溶液(5%のスキムミルクを含むPBS)で4℃で終夜処理することによりブロッキングした。
ブロッキング後、該膜をブロッキング溶液で希釈した10μg/mlの抗シアリルルイスa抗体(19−9)を用いて、室温で2時間処理した。
処理後、ECL Western blotting detection reagent(Amersham社製)を用いて該膜を処理することにより、19−9が結合したタンパク質の検出を行った。方法はキットの説明書に従った。
結果を第4図のBに示した。
CA19−9含有糖タンパク質の発現は、上記(7)で測定したβ3Gal−T5転写産物の発現(図4のA参照)とよく一致していた。一方、他のGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素(β3Gal−T1、β3Gal−T2、β3Gal−T3)の転写物の発現は、CA19−9含有糖タンパク質の発現と相関していなかった。また、他のGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素(β3Gal−T1、β3Gal−T2、β3Gal−T3)は、CA19−9含有糖タンパク質を高発現しているColo205やColo201で発現していなかった(第1図参照)。
以上の結果は、β3Gal−T5は大腸癌や膵臓癌等における癌関連抗原CA19−9の合成に関与するβ1,3−ガラクトース転移酵素であることを示している。更に、β3Gal−T5が糖タンパク質も基質として使用できることを示している。
実施例3 ヒトβ3Gal−T5のin vitro活性
実施例2で取得したヒトβ3Gal−T5cDNAがコードするヒトβ3Gal−T5のin vitroでの活性を以下のようにして調べた。
他の既知のβ1,3−ガラクトース転移酵素と活性を比較するため、ヒトβ3Gal−T1、ヒトβ3Gal−T2、ヒトβ3Gal−T3、ヒトβ3Gal−T4の各cDNAをpAMoに組み込んだ発現プラスミド(pAMo−3GT1、pAMo−3GT2、pAMo−3GT3、pAMo−3GT4)を造成した。
pAMo−3GT1は、特開平6−181759記載のプラスミドpUC119−WM1(FERM BP−4011)を構築するために用いたプラスミドpAMoPRWM1と同じものである。
コントロールプラスミド(pAMo)または5種のβ1,3−ガラクトース転移酵素発現プラスミド(pAMo−3GT1、pAMo−3GT2、pAMo−3GT3、pAMo−3GT4、またはpAMo−3GT5)を、実施例3に記載の方法と同様の方法によりNamalwa細胞に導入し、各形質転換細胞を得た。
実施例1の(2)と同様にして、該形質転換細胞から全RNAを抽出し、定量的RT−PCRを用いて、5種のβ1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子の転写量を測定した。
結果を第3表に示す。
Figure 0004689047
発現プラスミドを導入した細胞では、対応するβ1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子の転写量が、ベクターのみを導入した細胞に比較して増加していることが確認された。
一方、該形質転換細胞を溶液〔20mmol/l HEPES(pH7.2)、2% TrironX−100〕に懸濁後、短時間超音波にかけて細胞溶解液を調製した。
該細胞溶解液のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質アッセイ試薬キット(PIERCE社)により測定した。
該細胞溶解液を用いて、β1,3−ガラクトース転移酵素活性を測定した。
ピリジルアミノ化した糖鎖基質の調製や活性測定は、既知の方法〔特開平6−181759、特開平06−823021、J.Biol.Chem.,269,14730−14737(1994)〕に準じて行った。
具体的には、活性測定は、10μlのアッセイ溶液〔14mmol/l HEPES(pH7.4)、75μmol/l UDP−Gal(SIGMA社)、11μmol/l MnCl、、0.01% TrironX−100、25μmol/l ピリジルアミノ化糖鎖基質、上記細胞溶解液〕中で37℃、2時間反応後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により生産物を同定することにより行った。
基質としては、アミノピリジンで蛍光標識したラクト−N−ネオテトラオース(Lacto−N−neotetraose,Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc;以下、LNnTと略記する)をβ−ガラクトシダーゼ処理して末端のガラクトース残基を除去したもの(アガラクトLNnT,GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc)を使用した。
アガラクトLNnTは、約60nmolのアミノピリジンで蛍光標識したLNnTに対し、100ミリユニットのβ−ガラクトシダーゼ(生化学工業社製)を加え、37℃で16時間反応後、100℃で5分間の熱処理によりβ−ガラクトシダーゼを失活させることにより調製した。
スタンダードとしては、アミノピリジンで蛍光標識したLNnTまたはアミノピリジンで蛍光標識したラクト−N−テトラオース(Lacto−N−tetraose,Galβ1−3GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc;以下、LNTと略記する)を用いた。LNnTおよびLNTはオックスフォード・グライコシステムズ社から購入した。オリゴ糖の蛍光標識は、常法〔Agric.Biol.Chem.,54,2169(1990)〕に従って行った。
UDP−Gal(糖供与体)を含むアッセイ溶液と含まないアッセイ溶液を用いて反応を行った後、HPLCで解析し、UDP−Galを含むアッセイ溶液でのみ出現するピークを生成物とした。
反応が終了したアッセイ溶液は、100℃で3分間処理後、10,000×gで5分間遠心して上清を取得し、その一部をHPLCに供した。HPLCは、TSK−gel ODS−80Tsカラム(4.6×300mm;東ソー社製)を使用し、溶出液として0.02mol/l 酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.0)を用い、溶出温度25℃、流速1ml/分の条件で行った。
生成物の検出は、蛍光スペクトルフォトメーターFP−920(日本分光社製)を用いて行った(励起波長320nm、放射波長400nm)。
生成物の同定は、スタンダードの糖鎖と溶出時間が一致することを指標とした。
生成物の定量は、アミノピリジル化したラクトースをスタンダードとして用い、蛍光強度を比較することにより行った。
ヒトβ3Gal−T5の活性を100とした時の、各β1,3−ガラクトース転移酵素の相対活性を第3表に示す。
ヒトβ3Gal−T5を発現させた細胞では明らかなβ1,3−ガラクトース転移酵素活性(LNT合成活性)が検出されたが、他のβ1,3−ガラクトース転移酵素を発現させた細胞では活性は検出されなかった。なお、コントロールプラスミド(pAMo)を導入した細胞でも活性は検出されなかった。
各β1,3−ガラクトース転移酵素発現プラスミドを導入した細胞において、各β1,3−ガラクトース転移酵素転写物は同程度発現していることから(第3表)、ヒトβ3Gal−T5のGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性(LNT合成活性)は他のGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素(ヒトβ3Gal−T1、ヒトβ3Gal−T2、ヒトβ3Gal−T3)に比較して強いことが判明した。なお、ヒトβ3Gal−T4に関しては、GlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性はなく、GalNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性を有することが知られている。
以上の結果、ヒトβ3Gal−T5はGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素であることが証明された。また、ヒトβ3Gal−T5の活性は他のGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素(ヒトβ3Gal−T1、ヒトβ3Gal−T2、ヒトβ3Gal−T3)に比較して強いことから、LNT等のタイプ1糖鎖の合成に有用であることが示された。
また、β3Gal−T5転写産物の発現量とGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性(LNT合成活性)が相関するかを検討するために、実施例2で取得したβ3Gal−T5発現プラスミドを導入したHCT−15細胞(HCT−3GT5LおよびHCT−3GT5H)、ならびに実施例1で使用した大腸癌細胞株(Colo205、SW1116、HCT−15)、膵臓癌細胞株(Capan−2)、胃癌細胞株(MKN45)および肺癌細胞株(PC−1)について、β3Gal−T5転写産物の発現量とGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性(LNT合成活性)を測定した。
各細胞におけるβ3Gal−T5転写産物の発現量は、実施例1または実施例2の(7)で記載した方法を用いて行った。GlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性(LNT合成活性)の測定は、上記の方法に従った。
結果を第3表に示す。
その結果、β3Gal−T5転写産物の発現量とGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性(LNT合成活性)が相関することが判明した。例えば、HCT−3GT5Hにおけるβ3Gal−T5転写物量は、HCT−3GT5Lの約3倍であったが、HCT−3GT5HにおけるGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性(LNT合成活性)もHCT−3GT5Lの約3倍であった。
一方、PC−1ではβ3Gal−T1を多く発現していたが、GlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性(LNT合成活性)は検出されなかった。また、MKN45ではβ3Gal−T3を多く発現していたが、GlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性(LNT合成活性)は検出されなかった。
以上の結果は、β3Gal−T1およびβ3Gal−T3のGlcNAc β1,3−ガラクトース転移酵素活性(LNT合成活性)は、β3Gal−T5に比較して弱いことを示しており、上記のNamalwa細胞を用いた結果と一致した。
実施例4 β3Gal−T5遺伝子の各種臓器での発現
実施例2の(7)と同様にして、RT−PCRを用いてヒト各組織(脳、肺、食道、胃(体)、胃(洞)、空腸、大腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、子宮、抹消リンパ球におけるβ3Gal−T5転写物の定量を行った。各組織におけるβ3Gal−T5遺伝子転写産物の量を、β−アクチンの転写産物の量を1000とした時の相対値として表示した(第5図)。
β3Gal−T5転写物は、胃(体)、胃(洞)、空腸、大腸、膵臓で有意に発現していることが明らかになった。また、脳、食道、腎臓、子宮でも少し発現がみられた。一方、肺、肝臓、脾臓、副腎、抹消リンパ球では発現はみられなかった。
実施例5 β3Gal−T5染色体遺伝子の構造解析
現在、多くの機能未知のヒト染色体遺伝子の配列がデータベースに登録されている。したがって、本発明のポリペプチドをコードするヒトcDNAの配列と、データベースに登録されてるヒト染色体遺伝子の配列とを比較することにより、本発明のポリペプチドをコードするヒト染色体遺伝子を同定し、その構造を明らかにできる可能性がある。cDNAの配列と一致する染色体遺伝子配列が登録されていれば、cDNAの配列と染色体遺伝子の配列を比較することにより、本発明のポリペプチドをコードする染色体遺伝子のプロモーター領域、エクソンおよびイントロン構造を決定することができる。
β3Gal−T5cDNAの塩基配列(配列番号2)とGenome Project Databaseに登録されているDNA配列を比較した結果、登録番号AF064860の配列の一部に、β3Gal−T5のcDNAの配列が含まれていたことより、β3Gal−T5染色体遺伝子はヒト染色体21q22.3に位置することが分かった。
β3Gal−T5染色体遺伝子のプロモーター領域を明らかにする目的で、5’RACE法を用いて、Colo205細胞よりβ3Gal−T5cDNAの5’末端領域の取得を行った。5’RACE法はキット(GIBCO社製5’RACEシステム、バージョン2.0)に従って行った。
Colo205細胞由来のmRNA(1μg)を鋳型、配列番号22および配列番号23に示す配列を有する2種の合成DNAをプライマーとして、まず一本鎖cDNAを合成した。合成後、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼを用いて、該cDNAの3’末端にオリゴdCを付加した後、キットに添付されているdGテイルを有する合成DNAをフォワードプライマー、配列番号24に示す配列を有する合成DNAをリバースプライマーとして、PCRを行った。
PCRは、97℃で11分間の加熱後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとして、42サイクル繰り返す条件で行った。
増幅断片をHindIIIとSpeIで消化後、pBluescript SK(−)のHindIII−SpeI間にサブクローン化した。このようにして得られた5種のプラスミドについて塩基配列を決定した結果、Colo205細胞におけるβ3Gal−T5染色体遺伝子の転写開始点は上記の登録番号AF064860の配列上85153番目の塩基であることが明らかになった。
したがって、これより上流の領域は、少なくともColo205細胞において機能しているプロモーター領域であることが判明した。
β3Gal−T5染色体遺伝子のプロモーター領域(転写制御領域を含む)は、転写開始点の上流の5kb(配列番号3で表される塩基配列の1〜5000番)と推定される。
転写開始点の上流1kb(配列番号3で表される塩基配列の4001〜5000番)について、転写因子の結合配列のコンセンサス配列の存在について、TFSEARCH(transcripiton factor search)プログラム(Akiyama,Y.,http://www.rwcp.or.jp/lab/pdappl/papia.html)を用いて解析した。
転写開始点の上流にTATAボックスは存在しなかったが、転写開始点の上流150bp中に、2つのCdxAサイト、1つのAP−1サイト、1つのMZF−1(myeloid zinc finger 1 protein)サイトが存在すると推定された。
該領域の下流にレポーター遺伝子を連結したプラスミドを、β3Gal−T5を発現している細胞に導入し、レポーター遺伝子が発現するかどうかを検討することにより、プロモーター領域を実験的に特定することもできる。
β3Gal−T5染色体遺伝子のエクソン領域とイントロン領域をさらに詳しく解析するために、PCR法を用いてβ3Gal−T5cDNAのアイソフォームが存在するかどうかについて検討した。
実施例1で調製したColo205細胞由来の1本鎖cDNAを鋳型、配列番号22と配列番号25に示す配列を有する2種の合成DNAをプライマーとして、PCRを行った。
PCRは、97℃で11分間の加熱後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとして、42サイクル繰り返す条件で行った。
増幅断片をHindIIIで消化後、pBluescript SK(−)のHindIIIサイトにサブクローン化した。このようにして得られたプラスミドについて塩基配列を決定した結果、Colo205細胞において少なくとも5種類のβ3Gal−T5cDNAアイソフォームが存在することが明らかとなった(第6図)。
各アイソフォームに相当するPCR増幅断片の量を比較することにより、各アイソフォームの発現量の比を求めたところ、アイソフォーム1が50%、アイソフォーム2が50%、アイソフォーム3、4、5はそれぞれ1%以下であった。各アイソフォームに相当するPCR増幅断片は、増幅断片の大きさと制限酵素処理(XbaI処理またはBsmI処理)により特定した。
以上の結果、β3Gal−T5染色体遺伝子は4つのエクソンと3つのイントロンよりなることが明らかとなった。β3Gal−T5染色体遺伝子のプロモーター領域(転写制御領域を含む)とβ3Gal−T5染色体遺伝子の配列を合わせて配列番号3に示した。β3Gal−T5染色体遺伝子のプロモーター領域(転写制御領域を含む)の配列は、配列番号3の1〜5000bpである。β3Gal−T5染色体遺伝子の配列は、配列番号3の5001〜10562bpである。β3Gal−T5染色体遺伝子のエクソンとイントロンの位置を配列番号3の番号を用いて第4表に示した。第4表中において、大文字で示した塩基配列はエクソン部分、小文字で示した塩基配列はイントロン部分を示している。
β3Gal−T5染色体遺伝子の構造(エクソン領域とイントロン領域の位置と配列)と染色体上の位置、ならびにβ3Gal−T5染色体遺伝子のプロモーター領域の位置と配列は、本研究によってβ3Gal−T5cDNAの構造と機能が明らかになることにより、初めて特定できたものである。
Figure 0004689047
産業上の利用可能性
本発明により、大腸癌細胞または膵臓癌細胞等の消化器系癌細胞において、タイプ1糖鎖の合成に関与するβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有する新規ポリペプチド、該ポリペプチドの製造法、該ポリペプチドをコードするDNA、該DNAが組み込まれた組換え体ベクター、該組換え体ベクターを保有する形質転換体、該ポリペプチドを認識する抗体、該抗体を用いる本発明のポリペプチドの定量法および免疫染色法、該ポリペプチドを用いたタイプ1糖鎖含有糖鎖および該糖鎖を含有する複合糖質の製造法、該組換え体ベクターを保有する形質転換体を用いたタイプ1糖鎖含有糖鎖および該糖鎖を含有する複合糖質の製造法、該ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を変動させる物質のスクリーニング法、該ポリペプチドの有する活性を変動させる物質のスクリーニング法、該DNAあるいは該抗体を用いた大腸癌、膵臓癌、胃癌等の疾患の診断法、該DNA、該ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を変動させる物質あるいは該ポリペプチドの有する活性を変動させる物質を用いた大腸癌、膵臓癌、胃癌等の疾患の治療法を提供することができる。
「配列表フリーテキスト」
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
配列番号6−人工配列の説明:合成DNA
配列番号7−人工配列の説明:合成DNA
配列番号8−人工配列の説明:合成DNA
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配列番号21−人工配列の説明:合成DNA
配列番号22−人工配列の説明:合成DNA
配列番号23−人工配列の説明:合成DNA
配列番号24−人工配列の説明:合成DNA
配列番号25−人工配列の説明:合成DNA
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
第1図 第1図のAは、各種ヒト癌細胞株におけるタイプ1糖鎖(シアリルルイスa糖鎖、ルイスa糖鎖、ルイスb糖鎖)の発現量を測定した結果を示した図である。各細胞を抗シアリルルイスa糖鎖抗体(19−9)、抗ルイスa糖鎖抗体(7LE)、または抗ルイスb糖鎖抗体(Neokokusai)で蛍光抗体染色した後、FACSを用いて解析した。各抗体との反応性が強い順に+++、++、+、±、−で示した。−は抗体との反応性がなかったことを示している。NTは解析していないことを意味している。
第1図のBは、定量的PCR法を用いて、各種ヒト癌細胞株におけるヒトβ3Gal−T1、ヒトβ3Gal−T2、ヒトβ3Gal−T3およびヒトβ3Gal−T4の転写産物の量を定量した結果を示した図である。各種細胞株における各β1,3−ガラクトース転移酵素遺伝子転写産物の量は、いずれの細胞においても同程度発現していると考えられるβ−アクチンの転写産物の量を1000とした時の相対値として表示した。
第2図 第2図は、プラスミドpBS−3GT5の造成工程を示した図である。
第3図 第3図のAは、コントロールプラスミド(pAMo)を導入したNamalwa細胞[Namalwa(mock)]、あるいはヒトβ3Gal−T5発現プラスミド(pAMo−3GT5)を導入したNamalwa細胞(Namalwa−3GT5)について、抗シアリルルイスc糖鎖抗体(DU−PAN−2)を用いて間接蛍光抗体染色を行なった後、FACSを用いて解析した結果を示した図である。影をつけたヒストグラムは、DU−PAN−2の代わりにA−PBSを用いた時の結果である。
第3図のBは、コントロールプラスミド(pAMo)を導入したHCT−15細胞[HCT15(mock)]、あるいはヒトβ3Gal−T5発現プラスミド(pAMo−3GT5)を導入したHCT−15細胞(HCT−3GT5H)について、抗シアリルルイスa糖鎖抗体(19−9)、抗シアリルルイスc糖鎖抗体(DU−PAN−2)、抗ルイスa糖鎖抗体(7LE)または抗ルイスb糖鎖抗体(Neokokusai)を用いて間接蛍光抗体染色を行なった後、FACSを用いて解析した結果を示した図である。影をつけたヒストグラムは、DU−PAN−2の代わりにA−PBSを用いた時の結果である。
第4図 第4図のAは、定量的PCR法を用いて、各種ヒト癌細胞株におけるヒトβ3Gal−T5の転写産物の量を定量した結果を示したずである。各種細胞株におけるヒトβ3Gal−T5の転写産物の量は、いずれの細胞においても同程度発現していると考えられるβ−アクチンの転写産物の量を1000とした時の相対値として表示した。
第4図のBは、ウエスタン・ブロッティング解析により、各種ヒト癌細胞株におけるCA19−9抗原含有タンパク質の発現を調べた結果を示した図である。第5図 第5図は、定量的PCR法を用いて、各種ヒト組織におけるヒトβ3Gal−T5の転写産物の量を定量した結果を示した図である。各組織におけるヒトβ3Gal−T5の転写産物の量は、いずれの細胞においても同程度発現していると考えられるβ−アクチンの転写産物の量を1000とした時の相対値として表示した。
第6図 第6図のAは、ヒトβ3Gal−T5染色体遺伝子の構造を示した図である。4つのエクソンは四角で、イントロンは線で示してある。エクソン2中にはXbaIサイトが、エクソン3中にはBsmIサイトが存在している。コーディング領域(open reading frame)は、斜線で示してある。ヒトβ3Gal−T5cDNAのアイソフォームの解析に使用したプライマー(si−1、si−2、si−3、si−4)の位置を矢印で示した。
第6図のBは、ヒトβ3Gal−T5cDNAのアイソフォームの構造を示した図である。存在比は、Colo205細胞における各アイソフォームの発現量をパーセンテイジで示したものである。
第6図のCは、RT−PCR法を用いて、Colo205細胞におけるヒトβ3Gal−T5cDNAの各アイソフォームの発現量を調べた結果を示した図である。図6Aに示したプライマーの組み合わせでRT−PCRを行った後、第6図中に示した制限酵素(XbaIまたはBsmI)で切断してアイソフォームの特定を行った。noneは制限酵素処理をしないことを意味している。左のレーンは分子量マーカー(100bpラダー)である。

Claims (36)

  1. 以下の(a)、(b)および(c)からなる群より選ばれるポリペプチド。
    (a)配列番号1記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (b)配列番号1記載のアミノ酸配列の31〜310番目のアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (c)(a)または(b)のポリペプチドの有するアミノ酸配列において1〜5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつGalβ1-3GlcNAc構造を合成可能なβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチド
  2. β1,3−ガラクトース転移酵素活性が、糖鎖の非還元末端に存在するN−アセチルグルコサミン残基にβ1,3結合でガラクトースを転移する活性である、請求項1記載のポリペプチド。
  3. β1,3−ガラクトース転移酵素活性が、GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcの非還元末端に存在するN−アセチルグルコサミン残基、またはN−アセチルグルコサミン単糖にβ1,3結合でガラクトースを転移する活性である、請求項1記載のポリペプチド。
  4. 以下の(a)、(b)、(c)および(d)からなる群より選ばれるDNA。
    (a)請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNA
    (b)配列番号2で表される塩基配列の402〜1331番目の塩基配列を有するDNA
    (c)配列番号2で表される塩基配列の492〜1331番目の塩基配列を有するDNA
    (d)(a)〜(c)いずれかに記載のDNAと95%以上の同一性を有するDNAであり、かつGalβ1-3GlcNAc構造を合成可能なβ1,3−ガラクトース転移酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA
  5. 請求項4記載のDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA。
  6. 組換え体DNAが、プラスミドpAMo−3GT5またはプラスミドpBS−3GT5(FERM BP−6645)である、請求項5記載の組換え体DNA。
  7. 請求項4に記載のDNA、請求項5記載の組換え体DNA、または請求項6記載の組換え体DNAを保有する形質転換体。
  8. 形質転換体が、微生物、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、非ヒトトランスジェニック動物およびトランスジェニック植物からなる群より選ばれる形質転換体である、請求項7記載の形質転換体。
  9. 微生物が、Escherichia属に属する微生物である、請求項8記載の形質転換体。
  10. 動物細胞が、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、CHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、Namalwa細胞、Namalwa KJM-1細胞、ヒト胎児腎臓細胞およびヒト白血病細胞からなる群より選ばれる動物細胞である、請求項8記載の形質転換体。
  11. 昆虫細胞が、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞、Trichoplusia niの卵巣細胞およびカイコの卵巣細胞から選ばれる昆虫細胞である、請求項8記載の形質転換体。
  12. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを保有する形質転換体を培養液中で培養し、該ポリペプチドを該培養物中に生成・蓄積させ、該培養物中より該ポリペプチドを採取することを特徴とする、該ポリペプチドの製造法。
  13. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを保有する非ヒトトランスジェニック動物を飼育し、該ポリペプチドを該動物中に生成・蓄積させ、該動物中より該ポリペプチドを採取することを特徴とする、該ポリペプチドの製造法。
  14. 生成・蓄積が動物のミルク中であることを特徴とする、請求項13記載の製造法。
  15. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを保有するトランスジェニック植物を栽培し、該ポリペプチドを該植物中に生成・蓄積させ、該植物中より該ポリペプチドを採取することを特徴とする、該ポリペプチドの製造法。
  16. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNAを用い、in vitroでの転写・翻訳系により該ポリペプチドを合成することを特徴とする、該ポリペプチドの製造法。
  17. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドを酵素源として用い、
    (a)該酵素源、
    (b)i)N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、
    ii)N−アセチルグルコサミン残基を非還元末端に有するオリゴ糖および
    iii)N−アセチルグルコサミン残基を非還元末端に有する複合糖質から選ばれる受容基質、および
    (c)ウリジン−5’−二リン酸ガラクトースを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に、該受容基質のN−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルグルコサミン残基にβ1,3結合でガラクトースが付与された反応産物を生成・蓄積させ、該水性媒体中より該反応産物を採取することを特徴とする、該反応産物の製造法。
  18. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドを酵素源として用い、
    (a)該酵素源、
    (b)i)グルコース、
    ii)グルコース残基を非還元末端に有するオリゴ糖および
    iii)グルコース残基を糖鎖の非還元末端に有する複合糖質からなる群より選ばれる受容基質、および
    (c)ウリジン−5’−二リン酸ガラクトースを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に、該受容基質のグルコースまたはグルコース残基にβ1,3結合でガラクトースが付与された反応産物を生成・蓄積させ、該水性媒体中より該反応産物を採取することを特徴とする、該反応産物の製造法。
  19. 請求項8記載の微生物、動物細胞、植物細胞および昆虫細胞由来の形質転換体からなる群より選ばれる形質転換体を培養液中で培養し、該培養物中に、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖を含有する複合糖質を生成・蓄積させ、該培養物中より該糖鎖または該複合糖質を採取することを特徴とする、該糖鎖または該複合糖質の製造法。
  20. 請求項8記載の非ヒトトランスジェニック動物を飼育し、該動物中に、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖を含有する複合糖質を生成・蓄積させ、該動物中より該糖鎖または該複合糖質を採取することを特徴とする、該糖鎖または該複合糖質の製造法。
  21. 請求項8記載のトランスジェニック植物を栽培し、該植物中に、ガラクトースがβ1,3結合でN−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン残基、グルコースまたはグルコース残基に付加した構造を有する糖鎖または該糖鎖を含有する複合糖質を生成・蓄積させ、該植物中より該糖鎖または該複合糖質を採取することを特徴とする、該糖鎖または該複合糖質の製造法。
  22. 複合糖質が、糖蛋白質、糖脂質、プロテオグリカン、グリコペプチド、リポ多糖、ペプチドグリカン、およびステロイド化合物に糖鎖が結合した配糖体から選ばれる複合糖質である、請求項17〜21のいずれかに記載の製造法。
  23. 生成・蓄積が動物のミルク中であることを特徴とする、請求項20記載の製造法。
  24. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNAまたは該DNAの連続した23〜60塩基と同じ配列を有する断片を用い、invitroでのハイブリダイゼーション法により、該ポリぺプチドをコードする遺伝子の発現量を定量する方法。
  25. 請求項4に記載のDNAまたは配列番号2または3で表される塩基配列を有するDNAの有する塩基配列中の連続した23〜60塩基と同じ配列を有するオリゴヌクレオチド、該オリゴヌクレオチドと相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド、およびこれらオリゴヌクレオチドのオリゴヌクレオチド誘導体が、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスフォアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine-modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体から選ばれるオリゴヌクレオチド誘導体であって、これらからなる群より選ばれるDNA。
  26. 配列番号20または21で表される塩基配列からなるDNA。
  27. 請求項25または26に記載のオリゴヌクレオチドを用い、in vitroでのポリメラーゼ・チェイン・リアクション法により、請求項1〜のいずれかに記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を定量する方法。
  28. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドを認識する抗体。
  29. 請求項28記載の抗体を用い、請求項1〜3のいずれかに記載のポリペプチドをin vitroで検出することを特徴とする、免疫学的検出法。
  30. 請求項28記載の抗体を用い、請求項1〜3のいずれかに記載のポリペプチドをin vitroで検出することを特徴とする、免疫組織染色法。
  31. 請求項28記載の抗体を含有する、免疫組織染色剤。
  32. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドと被験試料とを接触させることを特徴とする、該ポリペプチドの有する活性を変動させる化合物のスクリーニング法。
  33. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドを発現する細胞と被験試料とを接触させ、抗シアリルルイスa抗体、抗ルイスa抗体、抗ルイスb抗体または抗シアリルルイスc抗体を用い、シアリルルイスa糖鎖、ルイスa糖鎖、ルイスb糖鎖またはシアリルルイスc糖鎖含量を測定することを特徴とする、該ポリぺプチドをコードする遺伝子の発現を変動させる化合物のスクリーニング法。
  34. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドを発現する細胞と被験試料とを接触させ、請求項28記載の抗体を用い、該ポリペプチド含量を測定することを特徴とする、該ポリぺプチドをコードする遺伝子の発現を変動させる化合物のスクリーニング法。
  35. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNAを欠損または変異させたノックアウト非ヒト動物。
  36. ノックアウト非ヒト動物がマウスである、請求項35記載のノックアウト非ヒト動物。
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