JP2004267015A - 核酸及び該核酸を用いた癌化検定方法 - Google Patents

核酸及び該核酸を用いた癌化検定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新規な核酸及び該核酸を用いた癌化検定方法等を提供する。
【解決手段】本発明の癌マーカー核酸は、特定の塩基配列又はその相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸に関する。また、本発明の癌化検定方法は、典型的には、(a)特定の塩基配列又はその相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を使用して、生物試料中の該核酸の転写レベルを測定し;そして(b)該生物試料中の該核酸の転写レベルが、対照の健常生物試料のそれを有意に下回るかを判断することを含む。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な核酸、癌化検定用の該核酸、及び生物試料中の該核酸の発現量が異なることに基づく該生物試料の癌化を検定する方法、並びに新規な糖転移酵素及びこれをコードする核酸等に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生体内での糖鎖や複合糖質の働きが注目されている。例えば、軟骨、血管壁、腱などの結合組織に含まれるムコ多糖、血液型を決定する糖タンパク質、また神経系の働きに関与している糖脂質が知られている。それらの糖鎖を合成する働きのある酵素を同定することは、様々な糖鎖やそれらの分布等によりもたらされる生理活性を解析する上で極めて重要な手がかりとなる。
【0003】
例えば、糖の中でN−アセチル−D−ガラクトサミン残基(以下「GalNAc」とも記述する)やD−グルクロン酸(以下「GulUA」とも記述する)等は、細胞外マトリックス等を構成するグリコサミノグリカンの構成成分である。従って、それら糖残基を転移する酵素(例えば、非特許文献1参照)は、生体内の様々な組織で働く糖鎖の働きを解析する上で極めて重要なツールとなる。
【0004】
ところで、糖鎖合成は癌化において非常に良く変化することが知られており、癌の転移や悪性度と相関することが知られている(非特許文献2〜4)。また、各種組織における発現プロファイル等の解析など、今日盛んなそれらの網羅的研究は、癌化メカニズムの解明にも向けられており、癌化のメカニズムが特定遺伝子の発現量と関与し得ることはたびたび議論されてきた。癌診断検定法として、体液中癌マーカー等の検定、その他の癌化の指標となる遺伝子産物等の同定などが既に行われていることは周知のとおりである。例えば、癌マーカーには、そのような遺伝子産物を検出ないし定量するプローブや抗体等が含まれる。
【0005】
【非特許文献1】
Kitagawa H. et al., J. Biol. Chem. 2001, Oct 19; 276(42): 38721−6
【0006】
【非特許文献2】
Kobata A., Eur. J. Biochem. 15, 209(2), 483−501, 1992
【0007】
【非特許文献3】
Santer U.V. et al., Cancer Res., Sep, 44(9), 3730−5, 1984
【0008】
【非特許文献4】
Taniguchi N., Biochim. Biophys. Acta., 1455(2−3), 287−300, 1999
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
既述のように生体内での糖鎖の働きが注目されているが、生体内での糖鎖合成の解析は十分に進んでいるとは言えない。糖鎖合成のメカニズム、生体内での糖合成の局在が十分に解析されていないことも一因である。糖鎖合成のメカニズムを解析するに当たっては、糖鎖合成酵素、特に糖転移酵素を解析し、その酵素を使ってどの様な糖鎖が生成されるのかを分析する必要がある。そのために新たな糖転移酵素を見つけだし、その機能を解析することについての要請も高まっている。
【0010】
他方、糖鎖合成は癌化に伴って変化する場合があることから、そのような糖鎖合成に関与する酵素の同定は癌診断に有用な指標を提供すると期待される。特にそのような酵素のアミノ酸配列又はこれをコードする核酸を指標とすることで、その具体的な機能解明に先駆けて癌マーカーを提供することは可能である。例えば、核酸の同定は、DNAマイクロアレイ上で行うこともできるし、微量でもそれをPCRで増幅して定量することも可能である。
【0011】
上述の課題に鑑み、本発明の第1の目的は、癌化に伴ってその発現量が有意に変化する癌マーカー核酸又はポリペプチドを標的とした癌化検定用の核酸又は抗体、及びそれらを用いた癌化検定法等を提供することにある。
【0012】
本発明の第2の目的は、癌化の指標として注目されるポリペプチドの発見に伴い、糖転移活性を有するヒト由来の新規なポリペプチド、これをコードする核酸、及び該核酸を発現するための形質転換体、並びにこれを使用した当該酵素タンパク質の製造方法等を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、糖転移活性を有する新規な酵素タンパク質を見出すため、各種配列をクエリーとして見出される様々な核酸配列について鋭意研究を行ってきた。その研究成果の一つとして、新規な構造遺伝子をコードする核酸配列をクローニングすることに成功し、その塩基配列(配列番号1)及び推測アミノ酸配列(配列番号3)を決定し、L4と命名した。以下では、配列番号1の塩基配列に関する核酸は「L4遺伝子」又は「L4核酸」等とも記述し、また配列番号3のアミノ酸配列に関するポリペプチドを「L4タンパク質」又は「L4酵素」等とも記述する。
【0014】
そして、上記L4に関し詳細な検討を重ねた結果、L4核酸の発現量が癌化した組織において健常組織よりも有意に低いこと、さらには当該核酸によりコードされるポリペプチドが糖転移活性を有することを突き止め、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は、配列番号1に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸に関する。
また本発明の核酸は、配列番号1に記載の塩基配列中の少なくとも十数個の連続する塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸、好ましくは配列番号1に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸である。特に本発明の核酸は、プローブまたはプライマーであり得る。本発明の好適なプライマーの例は、配列番号4又は配列番号5に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなるプライマーである。このように本発明の核酸は癌マーカーであり得る。
【0016】
また本発明は、生物試料の癌化を検定する方法にも関する。すなわち、本発明による癌化検定方法は、
(a)請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸を使用して、生物試料における該核酸についての転写レベルを測定し;そして
(b)該測定値が、健常生物試料についての測定値と比較して有意に下回るか否かを判断すること;
を含む。
【0017】
本発明の癌化検定法の一態様は、前記(a)の工程において、該生物試料についての測定値が、健常生物試料についての測定値と比較して1/2以下であるか否かを判断することを含む。
【0018】
本発明の癌化検定法の他の一態様は、前記(a)の工程において、前記いずれかの核酸を標識プローブとして使用し、該標識プローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で生物試料に接触させ、そこでハイブリダイズした該標識プローブからのシグナルに基づいて前記転写レベルを測定することを含む。
【0019】
本発明の癌化検定法のまた別の一態様は、前記(a)の工程において、前記いずれかのプライマーを使用して生物試料に含まれる核酸について核酸増幅処理を行い、そして、該プライマーで増幅された核酸の量を測定することを含む。
【0020】
本発明の癌化検定法の他の一態様は、癌治療に関する処置の有効性を検定する方法であって、上記いずれかの核酸を使用して、癌治療のための処置が施された生物試料における該核酸についての転写レベルを測定し、該測定値がその処置前又は未処置の場合と比較して有意に下回るか否かを判断することを含む。
【0021】
本発明の癌化検定法において、典型的な前記生物試料は大腸由来の試料である。
本発明の他の側面において、上記核酸の発見に基づき、糖転移活性を有する新規なポリペプチド及びそれをコードする新規な核酸等が提供される。
【0022】
本発明者等の検討によれば、当該L4タンパク質は、そのアミノ酸配列おいて糖転移酵素の特徴であるN末側に膜貫通領域と所定のモチーフ配列を有するので、糖転移酵素であると推定された。このような新規な酵素タンパク質を提供することは、当該技術分野におけるこれらの多様な必要性を満たすのに貢献する。
【0023】
すなわち、本発明は、糖転移活性を有するポリペプチドをコードする核酸であって、下記(a)〜(d)の塩基配列:
(a)配列番号1の全長の塩基配列;
(b)配列番号1の塩基番号73〜1047に記載の塩基配列;
(c)配列番号1の塩基番号106〜1047に記載の塩基配列;又は
(d)配列番号1の塩基番号151〜1047に記載の塩基配列;
のいずれか1つを有する核酸にも関する。
【0024】
また本発明のポリペプチドをコードする核酸の一態様は、糖転移活性を有するポリペプチドをコードする核酸であって、下記(a)〜(d)のアミノ酸配列:
(a)配列番号3の全長のアミノ酸配列;
(b)配列番号3のアミノ酸番号25〜349に記載のアミノ酸配列;
(c)配列番号3のアミノ酸番号36〜349に記載のアミノ酸配列;又は
(d)配列番号3のアミノ酸番号51〜349に記載のアミノ酸配列;
のいずれか1つを有するポリペプチドをコードする核酸である。またその好ましい一態様は、配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする核酸である。それらの好ましいタイプの核酸はDNAである。
【0025】
また本発明は、上記いずれかの核酸を含むベクター、及び該ベクターを含む形質転換体にも関する。
また本発明のポリペプチドは、糖転移活性を有するポリペプチドであって、下記(a)〜(d)のアミノ酸配列:
(a)配列番号3の全長のアミノ酸配列;
(b)配列番号3のアミノ酸番号25〜349に記載のアミノ酸配列;
(c)配列番号3のアミノ酸番号36〜349に記載のアミノ酸配列;又は
(d)配列番号3のアミノ酸番号51〜349に記載のアミノ酸配列;
のいずれか1つを有するポリペプチドに関する。またその好ましい一態様は、配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0026】
さらに本発明は、上記ポリペプチドに対する抗体を提供する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態により詳説する。
(1)癌化を検定するための本発明の核酸
上述のように本発明者らは、配列番号1に記載の塩基配列を有する核酸の発現量が癌化組織において有意に低下していることを発見した。したがって、配列番号1の塩基配列又はそれの相補的配列を有する核酸は、転写産物を含む生物試料を対象とした癌診断に有用な癌マーカーとして着目される。この観点から、配列番号1に記載の塩基配列により定義される核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る癌マーカー核酸が提供される。
【0028】
そのような癌マーカー核酸の一態様は、生物試料中の当該核酸を標的とし、配列番号1の塩基配列から選ばれる塩基配列を有するプライマー又はプローブである。特に配列番号1の塩基配列は構造遺伝子をコードするmRNA由来のもので、当該遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)全域を含むことから、通常、生物試料由来の転写産物中には、配列番号1の全長ないしそれに近い大部分長が見出される。この観点から、本発明によるプライマー又はプローブは、配列番号1の塩基配列から選択される所望の部分配列を有し、そのようにして当該核酸中の当該選択された塩基配列に特異的にハイブリダイズできる核酸であることができる。
【0029】
典型的なプライマー又はプローブには、配列番号1の塩基配列を有する核酸に由来する天然のDNAフラグメント、配列番号1の塩基配列を有するように合成されたDNAフラグメント、又はそれらの相補鎖である。
また、上記のようなプライマー又はプローブを用いて、後述のように生物試料中の該標的核酸を検出し及び/又は定量することができる。またゲノム上の配列も標的となり得るので、本発明の核酸は、医学研究用又は遺伝子治療用のアンチセンスプライマーとして使用してもよい。
【0030】
本発明のプローブ
本発明の核酸の好ましい態様は、配列番号1の塩基配列を有する核酸又はその相補鎖を標的としたプローブである。本発明によるプローブには、配列番号1の塩基配列から選ばれる少なくとも十数個、好ましくは15塩基以上、好ましくは17塩基以上、より好ましくは20塩基以上のオリゴヌクレオチド若しくはその相補鎖、或いは、そのORF領域(塩基番号1〜1047)の全長、すなわち1047塩基のcDNA若しくはその相補鎖が含まれる。
【0031】
オリゴヌクレオチドプローブである場合、本発明の核酸は、十数塩基、特に15塩基もの塩基数さえあれば、ストリンジェントな条件下で当該標的核酸に対し特異的にハイブリダイズし得ると理解されるべきである。すなわち、当業者は、オリゴヌクレオチドプローブ設計に関する公知の各種ストラテジーに従い、配列番号1の塩基配列から適切な少なくとも15塩基ないし20塩基の部分配列を選択することができる。また、配列番号3のアミノ酸配列情報は、プローブとして適切と思われるユニークな配列を選定するのに役立つ。
【0032】
また、cDNAプローブである場合、例えば、一般に医学研究用の試薬又は診断薬としてのプローブは、大きい分子量のものは取り扱い難いので、この見地から、医学研究用の本発明のプローブは、配列番号1の塩基配列から選ばれる50〜500塩基、より好ましくは60〜300塩基が例示される。
【0033】
本明細書に記載されるストリンジェントな条件下とは、中程度又は高程度なストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度のストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Vol.1、7.42−7.45 Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0 mM EDTA (pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(又は約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および約60℃、0.5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。一般的に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度及び/又は低い塩濃度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、及びおよそ68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。当業者は、温度および洗浄溶液塩濃度は、プローブの長さ等の要因に従って、必要に応じて調整可能であることを認識するであろう。
【0034】
上記のように当業者であれば、当該技術分野において公知の各種プローブ設計法及びハイブリダイゼーション条件に関する技術常識、並びに通常用いられる実験手段を通じて得られるであろう経験則を基に、選択されたプローブに適切な中程度又は高程度にストリンジェントな条件を容易に見つけ出し、実施することができる。
【0035】
また、選択される塩基長及び採用されるハイブリダイズ条件等に依存するが、比較的短鎖のオリゴヌクレオチドプローブは、配列番号1の塩基配列又はその相補的な塩基配列と1又は数個の塩基、特に1又は2塩基程度の不一致があってもプローブとしての機能を果たし得る。また、比較的長鎖のcDNAプローブは、配列番号1の塩基配列又はその相補的な塩基配列と50%以下、好ましくは20%以下の不一致があっても、プローブとしての機能を果たし得る。
【0036】
上記のようにして設計される本発明のプローブは、標的配列とのハイブリッドを検出または確認するために、蛍光標識、放射標識、ビオチン標識等の標識を付した標識プローブとして使用することができる。
例えば、本発明の標識プローブは、当該癌マーカー核酸のPCR増幅産物を確認又は定量するために使用することができる。その場合、そのPCRに使用される一対のプライマー配列の間に位置する領域の塩基配列を標的としたプローブを使用するとよい。そのようなプローブの一例は、配列番号6に記載の塩基配列(配列番号1中の塩基番号244−274の相補鎖に相当する)からなるオリゴヌクレオチドである(実施例2参照)。本発明のプローブは、診断用DNAプローブキット等に組み込まれてもよいし、DNAマイクロアレイ等のチップ上に固定されてもよい。
【0037】
本発明のプライマー
本発明の核酸の好ましい他の態様はオリゴヌクレオチドプライマーである。本発明によるオリゴヌクレオチドプライマーの製造に当たっては、配列番号1の塩基配列のORF領域から以下の条件を満たすように2つの領域を選択するとよい。
【0038】
1)各領域の長さが数十塩基以上、特に15塩基以上、好ましくは17塩基以上、より好ましくは20塩基以上であり、且つ50塩基以下であること;さらに
2)各領域中のG+Cの割合が40〜70%であること;
実際には、上記のように選択された2つの領域と同じ塩基配列若しくはそれらに相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAとして製造してもよいし、それら塩基配列に対する結合特異性を失わないように修飾した一本鎖DNAを製造してもよい。本発明のプライマーは、配列番号1のORF領域中の部分配列と完全に相補的な配列を有することが好ましいが、1または2塩基の不一致があっても差し支えない。
本発明による一対のプライマーの例は、配列番号4の塩基配列(配列番号1中の塩基番号194−213に相当する)からなるオリゴヌクレオチド、及び配列番号5の塩基配列(配列番号1中の塩基番号325−344の相補鎖に相当する)からなるオリゴヌクレオチドである。なお、それによる増幅産物を確認又は定量するために使用できる上述のプローブは、例えば、既述の配列番号6の塩基配列からなる標識されたオリゴヌクレオチドプローブである。
【0039】
(2)本発明による癌化検定方法
既述したように、癌化が引き起こされている生物試料中でのL4核酸の発現量、すなわち当該遺伝子のゲノムからmRNAへの転写レベルは、その健常生物試料よりも有意に低下していることが見出された。この観点から、生物試料中の当該核酸の転写レベルを指標とした癌化の検定方法が提供される。すなわち、本明細書において当該核酸の塩基配列情報が開示されたため、既に詳細に説明したように本開示に基づいて当業者は適宜にプローブ又はプライマーを作製することができ、それによって当該核酸の転写レベルを検出し、検討することができる。
【0040】
本発明による癌化検定方法の具体的態様は、生物試料から抽出された転写産物又はそれに由来する核酸ライブラリーを被検試料として、本発明のプローブ又はプライマーを用いて当該核酸の量を測定し、そして、その測定値が対照の健常生物試料に関する値と比較して有意に下回るか否かを判断することを含む。ここで被検生物試料の値が健常生物試料の値を有意に下回る場合に、例えば、その生物試料は癌化している或いは悪性度が高いと判断される。
【0041】
本発明による癌化検定法において、対照となる健常生物試料についての値は、同一患者の同一組織における未癌化部位についての測定値を利用してもよいし、健常生物試料から得られた既知のデータ等を基に一般化された値、例えば平均的正常値を利用してもよい。
【0042】
本検定法において、被検試料についての測定値が健常試料と比較して有意に下回る又は低いか否かは、その検定に必要とされる精度(陽性率)や判定すべき悪性度に従って設定される基準で判断されることができる。
【0043】
例えば、本発明者等による検定例(実施例2)によれば、癌化状態であると判断されるべき転写レベルを健常試料の1/2以下の測定値とすれば約80%が陽性と判定される。また、その条件を3/5(0.6倍)以下とすれば100%の陽性率を達成する。したがって、本検定法によれば、被検試料についての測定値が健常試料の1/2以下であるか否か、好ましくは3/5以下であるか否かを判定することを含む方法等が提供される。
また例えば、悪性度の高い組織の検出を目的として、陽性とされる上記差違を更に大きく設定したり、或いは癌化の兆候ないし可能性がある被検試料を網羅的に検出することを目的として、陽性とされる上記差違を更に小さく設定するなど、目的に応じて任意に判定基準を設定することができる。
【0044】
ハイブリダイゼーション検定法
本発明による癌化検定法の態様には、例えば、本発明の核酸から得られるプローブを使用したサザンブロット、ノーザンブロット、ドットブロット、又はコロニーハイブリダイゼーション法等のような当業者に周知である各種ハイブリダイゼーション検定を用いた方法が含まれる。さらに検出シグナルの増幅や定量が必要とされる場合、それらを免疫学的検定法と組み合わせた検定法を使用してもよい。
【0045】
典型的なハイブリダイゼーション検定法によれば、生物試料から抽出された検核酸またはその増幅物が固相化され、標識プローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせ、洗浄後、固相に結合された標識が測定される。
生物試料からの転写産物の抽出及び精製は、当業者に知られているあらゆる方法を適用して行われ得る。
【0046】
核酸増幅による検定法
本発明による癌化検定法の好ましい態様には、本発明の核酸の塩基配列から選択されるプライマーを用いて行われる核酸増幅反応を利用した検定法も含まれる。
【0047】
ここで、核酸増幅反応は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)[Saiki R.K., et al., Science, 230, 1350−1354 (1985)]、ライゲース連鎖反応(LCR)[Wu D. Y., et al., Genomics, 4, 560−569 (1989); Barringer K. J., et al., Gene, 89, 117−122 (1990); Barany F., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 189−193 (1991)]及び転写に基づく増幅[Kwoh D. Y., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 1173−1177 (1989)]等の温度循環を必要とする反応、並びに鎖置換反応(SDA)[Walker G. T., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 392−396 (1992); Walker G. T., et al., Nuc. Acids Res., 20, 1691−1696 (1992)]、自己保持配列複製(3SR)[Guatelli J. C., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 1874−1878 (1990)]およびQβレプリカーゼシステム[リザイルディら、BioTechnology 6, p.1197−1202 (1988)]等の恒温反応を含む。また、欧州特許第0525882号に記載されている標的核酸と変異配列の競合増幅による核酸配列に基づく増幅(Nucleic Acid Sequence Based Amplification: NASBA)反応等も利用可能である。好ましくはPCR法である。一般に、PCRのような核酸増幅法自体は、当該技術分野において周知であり、そのための試薬キットおよび装置も市販されているので容易に行うことができる。
【0048】
核酸増幅反応を利用した本発明の検定法の具体的態様は以下の通りである。
検定すべき転写産物中の当該標的核酸は、その塩基配列から選ばれる所定領域の両端に位置する一対のプライマーを使用したPCRにより増幅される。この工程において、検体中に当該核酸が僅かでも存在すると、それらが鋳型となりプライマー対間の核酸領域が次々と複製され増幅される。PCRでの所定サイクル数の繰り返しによって、鋳型とされた核酸は、所望の濃度まで増幅される。同じ増幅反応条件であれば、検体中に存在する標的核酸の量に比例した増幅産物が得られる。そして、当該増幅領域を標的とする上記プローブ等を使用して増幅産物が目的の核酸であるか確認すると共にそれを定量することができる。また、健常組織中の当該核酸も同様にして測定される得る。その核酸量についての測定値は、上述したように癌化の有無ないし程度を検定するために対比される。なお、同一組織等に広く一般的に存在する遺伝子の核酸、例えばグリセルアルデヒド−3リン酸−脱水素酵素(GAPDH)、β−アクチンをコードする核酸を対照として利用し、個体差を除去するとよい。
【0049】
PCR法に供される核酸試料は、被検組織又は細胞などの生物試料から抽出されたmRNA総体でも、mRNAから逆転写したcDNA総体でもよい。mRNAを増幅する場合には、既述のプライマー対を用いたNASBA法(3SR法、TMA法)を採用してもよい。NASBA法自体は周知であり、且つそのためのキットも市販されているので、本発明のプライマー対を用いて容易に実施することができる。
【0050】
上記増幅産物の検出又は定量は、増幅後の反応溶液を電気泳動し、バンドをエチジウムブロミド等で染色する方法や、電気泳動後の増幅産物をナイロン膜等の固相に不動化し、被検核酸と特異的にハイブリダイズする標識プローブ(例えば、配列番号6に記載の標識プローブ)をハイブリダイズさせ、洗浄後、該標識を検出することにより行うことができる。
【0051】
また、本検定法に好適なPCR法としては、定量的PCR法、特にキネティックス分析のためのRT−PCR法、定量的リアルタイムPCR法が挙げられる。特にmRNAライブラリーを対象とする定量的リアルタイムRT−PCR法は、測定対象が生物試料から直接に精製でき且つ転写レベルを直接反映しているという観点から好適である。但し、本検定法における核酸の定量は、定量的PCR法に限定されるものではなく、PCR産物に対して、上述のプローブを用いたノーザンブロット、ドットブロット、DNAマイクロアレイのような公知の他のDNA定量法を適用し得る。
また、クエンチャー蛍光色素とレポーター蛍光色素を用いた定量的RT−PCRを行うことにより、検体中の標的核酸の量を定量することも可能である。特に定量的RT−PCR用のキットも市販されているので、容易に行うことができる。さらに、電気泳動バンドの強度に基づいて標的核酸を半定量することも可能である。
【0052】
癌治療効果に関する検定方法
本発明による癌化検定法の他の形態として、癌治癒効果を意図した処置の効果を判断するための検定が挙げられる。その検定対象には、例えば、癌患者又は発癌実験モデル動物由来のin vitro癌細胞や癌組織が含まれる。またそのような処置には、抗癌剤の投与、放射線治療等のあらゆる処置が含まれる。
【0053】
本発明による癌治療効果についての検定法によれば、処置前又は未処置の生物試料中の標的核酸の転写レベルを当該処置が施された当該生物試料のそれと比較して当該処置が癌化ないし悪性度に関して如何なる影響を与えるかについて判断が可能となる。当該処置に起因して転写レベルが上昇するか、又はそれが癌化に伴い上昇する情況でさえその転写レベルの低下が有意に抑制されるなら、当該処置はその癌処置法として有効であると評価できる。処置後における転写レベルの変動については、未処置組織との比較だけでなく、その処置後において経時的に追跡してもよい。
【0054】
本発明による癌治療効果検定には、例えば、癌化組織に抗癌剤候補物質が効くか否か、癌患者に投与中の抗癌剤に対して耐性が形成されているか否か、実験モデル動物の病変組織等に効くか否か等の判断が含まれる。実験モデル動物の被検組織は、in vitroに限らずin vivo 又はex vivo試料も含まれる。
【0055】
本明細書において、核酸についての「転写レベルの測定値」又は「発現量」というときは、一定量の生物試料由来の転写産物中に存在する当該核酸の量、すなわち当該核酸濃度を示す。また本発明の検定法は、それらの測定値を比較することに依拠するのであるから、核酸が定量のためにPCR等によって増幅されたり、プローブ標識からのシグナルが増幅された場合にも、それら増幅された値について相対的な対比が可能である。したがって、「核酸についての測定値」とは増幅後の量又は増幅後のシグナルレベルとして把握されることもできる。
【0056】
本明細書において「標的核酸」又は「当該核酸」というときは、in vivo又はin vitroのいずれかを問わず、mRNAはもちろんのこと、mRNAを鋳型にして得られるあらゆるタイプの核酸が含まれる。なお本明細書において「塩基配列」というときは、特に断らない限り、その相補的配列も包含する。
【0057】
本明細書において、「生物試料」というときは、器官、組織及び細胞、並びに実験動物由来の器官、組織及び細胞等を示すが、好ましくは組織であり、具体的には、食道、胃、膵臓、肝臓、腎臓、十二指腸、小腸、大腸、直腸、結腸が例示される。好ましくは大腸、直腸、及び結腸であり、より好ましくは大腸である。また、
本明細書において「測定」又は「検定」という用語には、検出、増幅、定量、および半定量のいずれもが包含される。特に本発明による検定法は、上記の通り、生物試料の癌化の検定に関するものであり、医療における癌の診断、治療等に応用することができる。ここで「癌化の検定」という用語には、生物試料が発癌しているか否かについての検定のほか、悪性度が高いか否かについての検定も含まれる。本明細書において「癌」という用語には、典型的には悪性腫瘍全般を含み、該悪性腫瘍による疾病状態を含む。従って、本発明による検定法は、特に限定されるわけではないが、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、十二指腸癌、小腸癌、大腸癌、直腸癌、及び結腸癌、好ましくは大腸癌、直腸癌、及び結腸癌であり、好ましくは大腸癌の検定に使用される。
【0058】
(3)糖転移酵素活性を有するポリペプチドをコードする本発明の核酸
本発明の核酸は、例えば以下の方法により調製することができる。
配列番号1に記載の塩基配列の一部を利用してハイブリダイゼーションや核酸増幅反応等の遺伝子工学の基本的手法を用いてcDNAライブラリーから常法に従って核酸増幅反応を行い、これにより本発明のL4核酸をクローニングすることができる。例えば、配列番号4及び5の配列をプライマーとして使用すれば、PCR産物として約1kbpのDNA断片が得られる。これを例えばアガロースゲル電気泳動にかけて分子量でDNA断片を篩い分ける方法で分離し、特定のバンドを切り出すことにより単離することができる。核酸増幅反応の詳細は、上述した通りである。
【0059】
本発明者等は、上述のようにして単離したL4核酸にコードされているL4タンパク質を発現させ、これを単離及び精製し、さらにそれが生物活性を有することを確認した。この見地から、本発明により、新規なポリペプチド全長またはその断片をコードする核酸が提供される。
【0060】
第1に、生物活性を有する単離ポリヌクレオチドのアミノ酸配列が特定されたという事実に着目すれば、本発明の核酸には、当該L4タンパク質のアミノ酸配列へ縮重するような同一のアミノ酸配列をコードし得る、有限数のあらゆる核酸が含まれる。したがって、配列番号1の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列は、当該生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸の一態様である。
【0061】
また本発明の核酸には、一本鎖及び二本鎖型両方のDNA、及びそのRNA相補体も含まれる。DNAには、例えば、天然由来のDNA、組換えDNA、化学結合したDNA、PCRによって増幅されたDNA、及びそれらの組み合わせが含まれる。但し、ベクターや形質転換体の調製時に安定であるとの観点から、DNAであることが好ましい。
【0062】
第2に、単離されたL4核酸は、その推測アミノ酸配列(配列番号3)によると、N末端に疎水性膜貫通領域を有すると予測されるので、この膜貫通領域を有しないポリペプチドをコードする塩基配列の領域を調製することにより、可溶化形態のポリペプチドをコードする当該核酸も得ることができる。実際に本発明者等は、例えば、配列番号1における塩基番号73〜1047の塩基配列からなる核酸を発現させることにより、それぞれ配列番号3における25番目、36番目又は51番目の各アミノ酸をN末端とする可溶性タンパク質を産生させた(実施例3参照)。このように、L4タンパク質の生物活性を有するポリペプチドをコードする不完全長の核酸も本発明の範囲に包含されている。
【0063】
第3に、当業者であれば、配列番号1の塩基配列と相同な塩基配列を有する核酸を調製することにより、配列番号1の配列と同等に有用な核酸を取得できる。本発明のそのような相同な核酸の範囲を特定するに当たり、本発明の配列番号1に記載の核酸配列について同一性検索を行うと、当該核酸配列は、最もホモロジーの高い公知のコンドロイチン合成酵素(上記非特許文献1)の核酸配列と18%の同一性を有する。この観点から、本発明の相同タンパク質をコードする新規な核酸配列は、典型的には配列番号1中の全塩基配列、好ましくは塩基番号73〜1047、106〜1047、又は151〜1047の各塩基配列からなる部分塩基配列、又はそれらに相補的な塩基配列と18%を超える同一性、より好ましくは少なくとも20%の同一性、特に好ましくは少なくとも30%の同一性を有すると定義できる。
【0064】
相同核酸の定義に使用される上記同一性パーセントは、視覚的検査および数学的計算によって決定することが可能である。あるいは、2つの核酸配列の同一性パーセントは、Devereuxら,Nucl. Acids Res. 12: 387, 1984に記載され、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラム、バージョン6.0を用いて、配列情報を比較することによって、決定可能である。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドに関する単一(unary)比較マトリックス(同一に対し1および非同一に対し0の値を含む)、並びにSchwartz及びDayhoff監修,Atlas of Protein Sequence and Structure, pp.353−358, National Biomedical Research Foundation, 1979に記載されるような、Gribskov及びBurgess, Nucl. Acids Res. 14: 6745, 1986の加重比較マトリックス;(2)各ギャップに対する3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対しさらに0.10のペナルティ;及び(3)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、使用可能である。
【0065】
第4に、本発明の構造遺伝子として相同な他の核酸には、典型的には配列番号1中の全長塩基配列、好ましくは塩基番号73〜1047、106〜1047、又は151〜1047の各部分塩基配列、又はそれらに相補的な塩基配列からなるヌクレオチドに対しストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つL4タンパク質の活性を有するポリペプチドをコードする核酸も含まれる。なお、それら相同核酸の定義に使用されるストリンジェントな条件下とは、上述した通りである。
上記のように本発明のL4核酸を利用することによって、医学研究又は遺伝子治療等の目的でプローブやアンチセンスプライマーを作製するできるだけでなく、目的のL4酵素タンパク質を発現させることができる、。
【0066】
(4)本発明のベクター及び形質転換体
本発明によれば、L4核酸を含む組換えベクターが提供される。プラスミド等のベクターに該核酸のDNA断片を組込む方法としては、例えば、Sambrook, J.ら,Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Laboratory, 1.1 (2001)に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造製等)を用いるとよい。
【0067】
上記のようにして得られた組換えベクター(例えば、組換えプラスミド)は、宿主細胞(例えば、大腸菌DH5α、TB1、LE392、又はXL−LE392又はXL−1Blue等)に導入される。プラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、Sambrook, J.ら,Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Laboratory, 16.1 (2001)に記載の塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃などを用いる方法などが挙げられる。
【0068】
使用可能なベクターは、簡単には当業界において入手可能な組換え用ベクター(例えば、プラスミドDNA等)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるベクターの具体例としては、大腸菌由来のプラスミドとして、例えば、pDONR201、pBluescript、pUC18、pUC19、pBR322等が例示されるが、これらに限定されない。
【0069】
当業者であれば、制限末端は発現ベクターに適合するように適宜選択することが可能である。発現ベクターは、本発明の酵素を発現させたい宿主細胞に適したものを当業者であれば適宜選択することができ、上記核酸が目的の宿主細胞中で発現しうるように遺伝子発現に関与する領域(プロモータ領域、エンハンサー領域、オペレーター領域等)が適切に配列されて、該核酸が適切に発現するように構築されていることが好ましい。
【0070】
発現ベクターの種類は、原核細胞及び/又は真核細胞の各種の宿主細胞中で所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、大腸菌用発現ベクターとして、pQE−30、pQE−60、pMAL−C2、pMAL−p2、pSE420などが好ましく、酵母用発現べクターとしてpYES2(サッカロマイセス属)、pPIC3.5K、pPIC9K、pAO815(以上ピキア属)、昆虫用発現ベクターとしてpFastBac、pBacPAK8/9、pBK283、pVL1392、pBlueBac4.5などが好ましい。
【0071】
発現ベクターの構築は、制限処理及び連結作業を必要としないGatewayシステム(インビトロジェン社)を用いるとよい。Gatewayシステムとは、PCR産物の方向性を維持したままクローニングができ、また、DNA断片を適切に改変した発現ベクターにサブクローニングを可能にした部位特異的な組換えを利用したシステムである。具体的には、PCR産物とドナーベクターとから部位特異的な組換え酵素であるBPクロナーゼによってエントリークローンを作成し、その後、このクローンと別の組換え酵素であるLRクロナーゼによって組換え可能なデスティネーションベクターにPCR産物を移入することにより、発現系に対応した発現クローンを調製するものである。最初にエントリークローンを作成すれば、制限酵素やリガーゼで作業する手間の係るサブクローニングステップが不要である点を特徴の一つとする。
【0072】
本発明のL4核酸を含む上記発現ベクターを宿主細胞に組み込めば、本発明のポリペプチドを産生するための形質転換体を得ることができる。形質転換体を得るための宿主細胞は、一般に真核細胞(哺乳類細胞、酵母、昆虫細胞等)でもよいし、原核細胞(大腸菌、枯草菌等)でもよい。また、ヒト(例えば、HeLa、293T、SH−SY5Y)、マウス(例えば、Neuro2a、NIH3T3)等由来の培養細胞でもよい。これら宿主細胞はいずれも公知であり、市販されているか(例えば、大日本製薬社)、あるいは公共の研究機関(例えば、理研セルバンク)より入手可能である。あるいは、胚、器官、組織若しくは非ヒト個体も使用可能である。
【0073】
ところで、本発明のL4核酸は真核細胞を宿主細胞として用いることより、天然の生体分子に近い性質を有する酵素タンパク質(例えば糖鎖が付加された態様など)を発現できると考えられる。この観点から、宿主細胞として真核細胞、特に哺乳類細胞を選択することが好ましい。具体的な哺乳類細胞としては、マウス由来、アフリカツメガエル由来、ラット由来、ハムスタ−由来、サル由来またはヒト由来の細胞若しくはそれらの細胞から樹立した培養細胞株などが例示される。また、宿主細胞としての大腸菌、酵母又は昆虫細胞は、具体的には、大腸菌(DH5α、M15、JM109、BL21等)、酵母(INVSc1(サッカロマイセス属)、GS115、KM71(以上ピキア属)など)、昆虫細胞(Sf21、BmN4、カイコ幼虫等)などが例示される。
【0074】
一般に発現べクターは、少なくとも、プロモータ−、開始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、およびターミネーター領域を連続的かつ環状に適当な複製可能単位に連結することによって調製することができる。またこの際、所望により制限酵素での消化やT4 DNAリガーゼを用いるライゲーション等の常法により適当なDNAフラグメント(例えば、リンカー、他の制限酵素部位など)を用いることができる。宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用いる場合、一般に発現べクターは、少なくとも、プロモーター/オペレーター領域、開始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターおよび複製可能単位から構成される。宿主細胞として酵母、植物細胞、動物細胞または昆虫細胞を用いる場合、一般に発現べクターは、少なくとも、プロモーター、関始コドン、所望のタンパク質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターを合んでいることが好ましい。またシグナルペブチドをコードするDNA、エンハンサー配列、所望の遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、選択マーカー領域または複製可能単位などを適宜含んでいてもよい。
【0075】
複製可能単位とは、宿主細胞中でその全DNA配列を複製することができる能力をもつDNAを意味し、天然のプラスミド、人工的に修飾されたプラスミド(天然のプラスミドから調製されたプラスミド)および合成プラスミド等が含まれる。好適なプラスミドとしては、E. coliではブラスミドpQE30、pET又はpCAL若しくはそれらの人工的修飾物(pQE30、pET又はpCALを適当な制限酵素で処理して得られるDNAフラグメント)が、酵母ではプラスミドpYES2若しくはpPIC9Kが、また昆虫細胞ではプラスミドpBacPAK8/9等があげられる。
【0076】
本発明のべクタ−の好適な開始コドンとしては、メチオニンコドン(ATG)が例示される。また、終止コドンとしては、常用の終止コドン(例えば、TAG、TGA、TAAなど)が例示される。また、エンハンサー配列、ターミネーター配列については、例えば、それぞれSV40に由来するもの等、当業者において通常使用されるものを用いることができる。
【0077】
選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができる。例えばテトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシンもしくはネオマイシン、ハイグロマイシンまたはスペクチノマイシン等の抗生物質耐性遺伝子などが例示される。
本発明による発現べクターの宿主細胞への導入(形質転換又は形質移入とも称される)は、従来公知の方法を用いて行うことができる。細菌(E. coli, Bacillus subtilis等)の場合、例えばCohenらの方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)]、プロトプラスト法[Mol. Gen. Genet., 168, 111 (1979)]やコンピテント法[J. Mol. Biol., 56, 209 (1971)]によって、Saccharomyces cerevisiaeの場合は、例えばHinnenらの方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1927 (1978)]やリチウム法[J. B. Bacteriol., 153, 163 (1983)]によってそれぞれ形質転換することができる。植物細胞の場合は、例えばリーフディスク法[Science, 227, 129 (1985)]、エレクトロポレ−ション法[Nature, 319, 791 (1986)]によって、動物細胞の場合は、例えばGrahamの方法[Virology, 52, 456 (1973)]、昆虫細胞の場合は、例えばSummerらの方法[Mol. Cell Biol., 3, 2156−2165 (1983)]によってそれぞれ形質転換することができる。
【0078】
(5)本発明のタンパク質
本発明者等の検討によると、配列番号1の塩基配列に基づき、配列番号3のアミノ酸配列が推定され(配列番号2参照)、そのL4タンパク質の推定アミノ酸配列は、糖転移酵素のアミノ酸配列と一定のホモロジーを有している。例えば、L4のアミノ酸配列には、公知のコンドロイチン合成酵素(hChSy)のN末側寄りのアミノ酸配列との間でホモロジーが見られる。なお、このコンドロイチン合成酵素は、β1,3GluUA転移活性とβ1,4GalNAc転移活性をあわせ持つことが報告されている(上記非特許文献1)。
【0079】
図1は、L4タンパク質と前記コンドロイチン合成酵素のアミノ酸配列間のN末端側寄りでのアライメントを示す。同図中に示されるように、L4タンパク質は、コンドロイチン合成酵素と同様にN末端側の疎水性膜貫通領域とD×Dモチーフを有する。これらは糖転移酵素に広く見られる特徴であるから、L4タンパク質のアミノ酸配列は、糖転移活性を有するポリペプチドのものであると結論づけられた。
【0080】
かくして上記L4タンパク質は、後述の実施例で例証されるとおり、配列番号1の核酸配列を有するL4核酸を発現ベクターに組み込み発現させることができ、このようにして、糖転移活性を持つ酵素タンパク質として単離及び精製することができる。
【0081】
第1に、上記の見地から、本発明のタンパク質の典型的な態様は、配列番号3の推定アミノ酸配列からなる単離された糖転移酵素タンパク質である。
供与体基質特異性
L4酵素タンパク質の供与体基質としては、転移させる糖を持つ糖ヌクレオチドが挙げられ、例えばUDP−GalNAcやUDP−GluUA等のウリジン二リン酸−糖の形態が挙げられるが、アデノシン二リン酸−糖、グアノシン二リン酸−糖、或いはシチジン二リン酸−糖などであってもよい。
受容体基質特異性
L4酵素タンパク質の受容体基質としては、例えば、GalNAcやGluUAで構成される硫酸化グリコサミノグリカンである可能性を含むが、その他の糖タンパク質、糖脂質、オリゴ糖、又は多糖等であってもよい。
【0082】
上述のように本発明のL4酵素タンパク質は、ムコ多糖、糖タンパク質、糖脂質、オリゴ糖、多糖等における糖鎖合成ないし修飾に有用である。
第2に、本明細書においてL4酵素タンパク質の1次構造を代表する配列番号3のアミノ酸配列が開示されたことで、当該アミノ酸配列に基づき当該技術分野の周知の遺伝子工学的手法により産生され得る、あらゆるタンパク質(以下、「変異タンパク質」ないし「修飾タンパク質」とも記述する)が提供される。
【0083】
すなわち、本発明のタンパク質は、当該技術分野の技術常識によれば、クローニングされた核酸の塩基配列から推定される配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質のみに限定されず、下記で説示されるように、例えば、アミノ酸配列N末端側等が部分的に欠失した不完全長のポリペプチドからなるタンパク質、或いはそれらアミノ酸配列に相同なタンパク質であって、当該タンパク質の生来的な特性を有するタンパク質をも含まれると意図される。
【0084】
先ず、本発明の酵素タンパク質は、好ましくは、後述の実施例で得られたような配列番号3中のアミノ酸番号25からC末端までのアミノ酸配列等を有するものであり得る。
【0085】
第3に、一般に酵素のような生理活性を有するタンパク質においては、そのアミノ酸配列のうち、1若しくは複数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ酸配列に1若しくは複数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加された場合であっても、その生理活性が維持され得ることは周知である。また、天然産のタンパク質の中には、それを生産する生物種の品種の違いや、生態型(ecotype)の違いによる遺伝子の変異、あるいはよく似たアイソザイムの存在等に起因して、1個〜複数個のアミノ酸変異を有する変異タンパク質が存在することも知られている。この観点から、本発明のタンパク質には、配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ酸配列に1若しくは複数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、所定の酵素反応条件下で上記糖転移活性を有する変異タンパク質も含まれる。さらに、前記修飾タンパク質としては、配列番号1に示されるアミノ酸配列又は該配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ酸配列に1若しくは数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ酸配列を有するものが特に好ましい。
【0086】
上記において「複数個」とは、好ましくは1〜200個、より好ましくは1〜100個、さらにより好ましくは1〜50個、最も好ましくは1〜20個である。一般的には、部位特異的な変異によってアミノ酸が置換された場合に、元々のタンパク質が有する活性は保持される程度に置換が可能なアミノ酸の個数は、好ましくは1〜10個である。
【0087】
第4に、本発明の修飾タンパク質には、同様の性質を有するアミノ酸同士の置換で得られる修飾タンパク質が含まれる。すなわち、一般に同様の性質を有するアミノ酸同士の置換(例えば、ある疎水性アミノ酸から別の疎水性アミノ酸への置換、ある親水性アミノ酸から別の親水性アミノ酸への置換、ある酸性アミノ酸から別の酸性アミノ酸への置換、あるいはある塩基性アミノ酸から別の塩基性アミノ酸への置換)を導入して所望の変異を有する組換えタンパク質を作製する手法は当業者に周知であり、そのようにして得られた修飾タンパク質は元来のタンパク質と同様の性質を有することが多い。この観点から、そのようにアミノ酸置換された修飾タンパク質も本発明に包含され得る。
【0088】
また、本発明の修飾タンパク質は、上述した通りのアミノ酸配列を有し且つ目的酵素に生来的な酵素活性を有するものであれば、当該ポリペプチドに糖鎖が結合した糖タンパク質であってもよい。
【0089】
第5に、本発明の相同タンパク質の範囲を特定するに当たり、本発明の配列番号3に記載のアミノ酸配列についてGENETYX(ゼネティックス社)による同一性検索を行うと、該アミノ酸配列は、最もホモロジーの高い公知のコンドロイチン合成酵素(上記非特許文献1)とは18%の同一性を有する。この観点から、本発明の相同タンパク質として新規なアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と18%を超える同一性、より好ましくは少なくとも20%の同一性、特に好ましくは少なくとも30%の同一性を有すると定義される。
【0090】
なお、前記GENETYXは、核酸解析、タンパク質解析用の遺伝情報処理ソフトウェアであって、通常のホモロジー解析やマルチアラインメント解析の他、シグナルペプチド予測やプロモーター部位予測、二次構造予測が可能である。また、本明細書で用いたホモロジー解析プログラムは、高速・高感度な方法として多用されているLipman−Pearson法(Lipman,D.J.&Pearson,W.R.,Science,277,1435−1441(1985))を採用している。本願明細書において、同一性のパーセントは、例えば、Altschulら(Nucl.Acids.Res.,25.3389−3402(1997))に記載されているBLASTプログラム、あるいはPearsonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2444−2448(1988))に記載されているFASTAを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。各プログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。なお、当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた使用可能である。
【0091】
第6に、本発明の単離されたタンパク質は、後述のようにこれを免疫原として動物に投与することによって該タンパク質に対する抗体を作製することができる。そのような抗体を用いて免疫測定法により当該酵素を測定、定量することができる。従って、本発明は、そのような免疫原の作製にも有用である。この観点からは、本発明のタンパク質には、抗体形成を引き出すための抗原決定基又はエピトープを含む、該タンパク質のポリペプチド断片、変異体、融合タンパク質なども含まれる。
【0092】
(6)本発明のタンパク質の単離及び精製
本発明のタンパク質は、以下の方法により単離・精製することができる。
近年、遺伝子工学的手法として、形質転換体を培養し生育させて、その培養物ないし生育物から目的物質を単離・精製する手法が確立されている。本発明のL4タンパク質も、例えば、本発明のL4核酸を組み込んだ発現ベクターを含む形質転換体を栄養培地で培養することによって発現(産生)させることができる。
【0093】
形質転換体の栄養培地としては、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源、無機窒素源もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、たとえばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖、メタノールなどが、例示される。無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示される。また、所望により他の栄養素(例えば無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン等)など)を含んでいてもよい。培養は、当業界において知られている方法により行われる。培養条件、例えば温度、培地のpH及び培養時間は、本発明に係るタンパク質が大量に生産されるように適宜選択される。
【0094】
本発明のタンパク質は、上記培養物ないし生育物から以下のようにして取得することができる。すなわち、目的タンパク質が宿主細胞内に蓄積する場合には、遠心分離やろ過などの操作により宿主細胞を集め、これを適当な緩衝液(例えば濃度が10〜100mM程度のトリス緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液などの緩衝液。pHは用いる緩衝液によって異なるが、pH5.0〜9.0の範囲が望ましい)に懸濁した後、用いる宿主細胞に適した方法で細胞を破壊し、遠心分離により宿主細胞の内容物を得る。一方、目的タンパク質が宿主細胞外に分泌される場合には、遠心分離やろ過などの操作により宿主細胞と培地を分離し、培養ろ液を得る。宿主細胞破壊液、あるいは培養ろ液はそのまま、または硫安沈殿と透析を行なった後に、そのタンパク質の単離・精製に供することができる。
【0095】
目的タンパク質の単離・精製の方法としては、以下の方法を挙げることができる。すなわち、当該タンパクに6×ヒスチジンやGST、マルトース結合タンパクといったタグを付けている場合には、一般に用いられるそれぞれのタグに適したアフィニティークロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。一方、そのようなタグを付けずに本発明に係るタンパク質を生産した場合には、例えばイオン交換クロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。また、これに加えて、ゲルろ過や疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィーなどを組み合わせる方法でもよい。
【0096】
また単離・精製が容易となるような発現ベクターを構築するとよい。特に、酵素活性を有するポリペプチドと標識ペプチドとの融合タンパク質の形態で発現するように発現ベクターを構築し、遺伝子工学的に当該酵素タンパク質を調製すれば、単離・精製も容易である。上記識別ペプチドの例としては、本発明に係る酵素を遺伝子組み換えによって調製する際に、該識別ペプチドと酵素活性を有するポリペプチドとが結合した融合タンパク質として発現させることにより、形質転換体の生育物から本発明に係る酵素の分泌・分離・精製又は検出を容易にすることを可能とする機能を有したペプチドである。
【0097】
そのような識別ペプチドとしては、例えばシグナルペプチド(多くのタンパク質のN末端に存在し、細胞内の膜透過機構においてタンパク質の選別のために細胞内では機能している15〜30アミノ酸残基からなるペプチド:例えばOmpA、OmpT、Dsb等)、プロテインキナーゼA、プロテインA(黄色ブドウ球菌細胞壁の構成成分で分子量約42,000のタンパク質)、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ(ヒスチジン残基を6乃至10個並べて配した配列)、mycタグ(cMycタンパク質由来の13アミノ酸配列)、FLAGペプチド(8アミノ酸残基からなる分析用マーカー)、T7タグ(gene10タンパク質の最初の11アミノ酸残基からなる)、Sタグ(膵臓RNaseA由来の15アミノ酸残基からなる)、HSVタグ、pelB(大腸菌外膜タンパク質pelBの22アミノ酸配列)、HAタグ(ヘマグルチニン由来の10アミノ酸残基からなる)、Trxタグ(チオレドキシン配列)、CBPタグ(カルモジュリン結合ペプチド)、CBDタグ(セルロース結合ドメイン)、CBRタグ(コラーゲン結合ドメイン)、β−lac/blu(βラクタマーゼ)、β−gal(βガラクトシダーゼ)、luc(ルシフェラーゼ)、HP−Thio(His−patchチオレドキシン)、HSP(熱ショックペプチド)、Lnγ(ラミニンγペプチド)、Fn(フィブロネクチン部分ペプチド)、GFP(緑色蛍光ペプチド)、YFP(黄色蛍光ペプチド)、CFP(シアン蛍光ペプチド)、BFP(青色蛍光ペプチド)、DsRed、DsRed2(赤色蛍光ペプチド)、MBP(マルトース結合ペプチド)、LacZ(ラクトースオペレーター)、IgG(免疫グロブリンG)、アビジン、プロテインG等のペプチドが挙げられ、何れの識別ペプチドであっても使用することが可能である。
【0098】
それらの中でも特にシグナルペプチド、プロテインキナーゼA、プロテインA、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ、mycタグ、FLAGペプチド、T7タグ、Sタグ、HSVタグ、pelB又はHAタグが、遺伝子工学的手法による本発明に係る酵素の発現、精製がより容易となることから好ましく、特にFLAGペプチドとの融合タンパク質として得るのが、取扱面で極めて優れているため好ましい。上記FLAGペプチドは非常に抗原性であり、そして特異的なモノクローナル抗体が可逆的に結合するエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。4E11と称されるネズミハイブリドーマは、米国特許第5,011,912(これを参照することにより本願明細書の開示に組み込む)に記載されるように、特定の二価金属陽イオンの存在下で、FLAGペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生する。4E11ハイブリドーマ細胞株は、寄託番号HB 9259下に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)に寄託されている。FLAGペプチドに結合するモノクローナル抗体は、Eastman Kodak Co., Scientific Imaging Systems Division、コネチカット州ニューヘブンより入手可能である。
【0099】
哺乳類細胞で発現可能であって、かつ上述のFLAGペプチドとの融合タンパク質として本発明の酵素タンパク質を得ることができる基本ベクターとしては、例えばpFLAG−CMV−1(シグマ社)がある。また、昆虫細胞で発現可能なベクターとしては、pFBIF(pFastBac(インビトロジェン社)にFLAGペプチドをコードする領域を組み込んだベクター:後述の実施例参照)等が例示されるが、これらに限定されない。当業者であれば、当該酵素の発現に使用する宿主細胞、制限酵素、識別ペプチドなどから判断して適当な基本ベクターを選択することが可能である。
(7)本発明のタンパク質を認識する抗体
本発明により、L4タンパク質に免疫反応性である抗体が提供される。こうした抗体は、(非特異的結合と対照的に)抗体の抗原結合部位を介して、該酵素タンパク質に特異的に結合し得る。具体的には、配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はその断片、その変異体タンパク質又は融合タンパク質などを、それぞれに免疫反応性である抗体を産生するための免疫原として使用することが可能である。
【0100】
より具体的には、タンパク質、断片、変異体、融合タンパク質などは、抗体形成を引き出す抗原決定基またはエピトープを含むが、これら抗原決定基またはエピトープは、直鎖でもよいし、より高次構造(断続的)でもよい。なお、該抗原決定基またはエピトープは、当該技術分野に知られるあらゆる方法によって同定できる。したがって、本発明は、L4酵素タンパク質の抗原性エピトープにも関する。こうしたエピトープは、以下により詳細に記載されるように、抗体、特にモノクローナル抗体を作成するのに有用である。
【0101】
本発明のエピトープは、アッセイにおいて、そしてポリクローナル血清または培養ハイブリドーマ由来の上清などの物質から特異的に結合する抗体を精製するための研究試薬として使用可能である。こうしたエピトープまたはその変異体は、固相合成、タンパク質の化学的または酵素的切断などの当該技術分野において公知の技術を用いて、あるいは組換えDNA技術を用いて産生することができる。
【0102】
本発明のタンパク質によってあらゆる態様の抗体が誘導される。該タンパク質のポリペプチド全部若しくは一部又はエピトープが単離されていれば、慣用的技術を用いてポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれも調製可能である。例えば、Kennetら(監修), Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, New York, 1980を参照されたい。
【0103】
本発明によれば、L4酵素タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株も提供される。こうしたハイブリドーマは、慣用的技術によって産生し、そして同定することが可能である。こうしたハイブリドーマ細胞株を産生するための1つの方法は、動物を本発明の酵素タンパク質で免疫し、免疫された動物から脾臓細胞を採取し、該脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させ、それによりハイブリドーマ細胞を生成し、そして該酵素に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することを含む。モノクローナル抗体は、慣用的技術によって回収可能である。
【0104】
本発明のモノクローナル抗体には、キメラ抗体、例えば、ネズミモノクローナル抗体のヒト化型が含まれる。こうしたヒト化型抗体は、ヒトに投与されて免疫原性を減少させるという利点を有する。
【0105】
また本発明によれば、上記抗体の抗原結合断片も提供される。慣用的技術によって産生可能な抗原結合断片の例には、FabおよびF(ab’)断片が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子工学技術によって産生可能な抗体断片および誘導体もまた提供される。
【0106】
本発明の抗体は、in vitro及びin vivoのいずれにおいても、本発明のL4酵素タンパク質又はそのポリペプチド断片の存在を検出するためのアッセイに使用可能である。また本発明の抗体は、免疫アフィニティークロマトグラフィーによってL4酵素タンパク質又はそのポリペプチド断片を精製することにも使用することができる。
【0107】
さらに本発明の抗体は、結合パートナー、例えば受容体基質への前記糖転移酵素タンパク質の結合を遮断することが可能な遮断抗体として提供されてもよく、そのような結合により当該酵素の生物活性を阻害可能である。こうした遮断抗体は、受容体基質を発現している特定の細胞への該タンパク質の結合を阻害する能力に関して抗体を試験するなど、あらゆる適切なアッセイ法を用いて同定することができる。
【0108】
また遮断抗体は、標的細胞の結合パートナーに結合している該酵素タンパク質から生じる生物学的影響を阻害する能力に関するアッセイにおいても同定可能である。こうした抗体は、in vitro法で使用するか又はin vivoで投与して、抗体を生成した実体によって仲介される生物活性を阻害し得る。従って、本発明によれば、L4酵素タンパク質と結合パートナーとの間の直接又は間接的な相互作用に起因して引き起こされるか又は悪化する障害を治療するための抗体も提供され得る。こうした療法は、結合パートナー仲介生物学的活性を阻害するのに有効な量の遮断抗体を哺乳動物にin vivo投与することを含むであろう。一般にこうした療法の使用にはモノクローナル抗体が好ましく、1つの態様として抗原結合抗体断片が使用される。
【0109】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0110】
【実施例】
実施例1: L4 核酸のクローニング
本発明者等は、LARGEと呼ばれる公知の遺伝子配列をクエリーとするBLAST、PSI−BLAST検索を介して、新規な構造遺伝子を見出し、これをL4と命名した。L4の核酸配列から予測されるオープンリーディングフレーム(ORF)は1047 bp(配列番号1及び2)、アミノ酸配列にして349残基(配列番号2及び3)である。
【0111】
実施例2:ヒト大腸癌組織における L4 核酸の発現量、及び癌化検定
定量的リアルタイムPCR法を用いて、ヒト大腸癌組織と同一患者の正常大腸癌組織との間でL4遺伝子の発現量を比較した。
定量的リアルタイムPCR法とは、PCRにおいてセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーに加え、蛍光標識されたプローブを組合わせる方法である。PCRで増幅されると伴にプローブの蛍光標識が外れて蛍光を示す。この蛍光強度が目的遺伝子の増幅に相関して増大するので、これを指標としてL4核酸の定量を行う。
【0112】
ヒト大腸癌組織と同一患者の正常大腸癌組織のRNAをRNeasy Mini Kit(キアゲン社製)で抽出し、Super−Script First−Strand Synthesis System(インビトロジェン社製)を用いたoligo (dT)法により1本鎖DNAとした。この抽出DNAを鋳型として用いて5’プライマー(配列番号4)、3’プライマー(配列番号5)及びTaqManプローブ(配列番号6)を用いて、ABI PRISM 7700(アプライドバイオシステムズジャパン社製)により定量的リアルタイムPCRを行った。PCRの条件は、50℃ 2分、95℃ 10分で反応させた後、95℃ 15秒、60℃ 1分を50回繰り返した。蛍光強度を指標に得られた測定値は、個体間のばらつきを補正するため内標準遺伝子としてアプライドバイオシステムズジャパン社製のキットを用いて定量したβ−アクチンにより除し、ヒト大腸癌組織の測定値と、同一患者の正常大腸癌組織の測定値との間で比較を行った。
【0113】
その結果(表1)から、大腸癌化組織で発現しているL4核酸の量(すなわち癌化組織での転写レベル)は、正常組織のそれと比較して有意に低いことが明らかとなった。また、患者ごとで対比すれば、全患者の癌化組織で正常組織の発現量を下回っており、その低下の程度は、概ね1/10以下、平均値間の対比で1/11.5である。また例えば、正常組織と比較して1/2の発現量に低下しているものを陽性と判定すると陽性率は83%である。
【0114】
【表1】
Figure 2004267015
【0115】
実施例3:単離された L4 核酸の哺乳類細胞での発現
L4 核酸の哺乳類細胞発現ベクターへの挿入
L4の活性を調べるために以下の方法によりL4を哺乳類細胞内で発現させた。すなわち、L4遺伝子をpENTR/D−TOPO Cloning Kit(インビトロジェン社)のpENTR(インビトロジェン社製)に組込み、さらに哺乳類細胞発現用ベクターpcDNA3.2−DEST(インビトロジェン社)およびpFLAG−CMV3(SIGMA社製)に当該遺伝子のORFを導入した。
【0116】
▲1▼エントリークローンの作製
ヒト骨格筋組織から得られたcDNA(クロンテック社製)を鋳型とし5’プライマー(L4_fullNkoz:配列番号7)と3’プライマー(L4_fullC:配列番号8)を用いてPCR反応を行い、目的のDNA断片を得た。PCR法は98℃ 10秒、54℃ 30秒、72℃ 2分を30回繰り返す条件で行った。そしてPCR産物をMiniElute PCR Purification Kit(QIAGEN社製)により精製し定法により単離した。
このPCR産物をTOPOイソメラーゼ反応によってpENTR/D(インビトロジェン社製)へ組み込み、「エントリークローン」を作製した。反応は、目的とする精製DNA断片溶液2μl、pENTR/D−TOPO溶液0.5μl(70ng)、反応緩衝液0.5μlを25℃で5分間インキュベートして行った。その後、その反応液2 μlをコンピテントセル(大腸菌TOP10、インビトロジェン社製)100μlと混合し、ヒートショック法の後、カナマイシンを含むLBプレートに植菌し培養した。翌日コロニーをとり、直接PCRで目的DNA断片を保持する大腸菌クローンを確認した。さらに確実を期すためシーケンシングによりDNA配列の確認をした後、プラスミドDNA(pENTR−L4A)を抽出・精製した。
【0117】
▲2▼発現プラスミドの作製
上記エントリークローンは、挿入部位の両側にラムダファージが大腸菌から切り出される際の組換部位であるattLを持つもので、LRクロナーゼ(ラムダファージの組換酵素Int、IHF、Xisを混合したもの)とデステイネーションベクターと混合することで、挿入部位がデステイネーションベクターに移り、発現クローンが作製される。具体的な工程は、以下のとおりである。
まずエントリークローンプラスミド溶液1μl、pcDNA3.2−DEST溶液を1μl(75ng)、LR反応緩衝液2μl、TE4μl、LR クロナーゼmix 2μlを25℃で1時間反応させ、プロテイナーゼ K溶液を1μl加えて37℃10分インキュベートして反応を終了させた(この組換え反応でpcDNA3.2−L4Aが生成される)。pcDNA3.2 は、CMVプロモーター支配下に目的遺伝子を挿入し哺乳動物由来の細胞内で挿入遺伝子を発現させるものである。
▲3▼可溶型タンパク質発現プラスミドの作製
pFLAG−CMV3プラスミドベクター(SIGMA社製)は、哺乳類細胞で働くCMVプロモーターにより挿入遺伝子を発現し、挿入遺伝子産物のN末端部分に精製用にFLAGペプチド配列(配列番号9)を付加するプラスミドベクターである。L4遺伝子産物はN末端付近に疎水性領域を持つ膜結合型タンパク質と予想されることから、酵素タンパク質の精製を容易にする目的で疎水性領域を除いた可溶型酵素タンパク質を発現するべく遺伝子を改変し、これを発現プラスミドベクターpFLAG−CMV3に組み込み哺乳類細胞中に遺伝子導入した上で発現させ、可溶型酵素タンパク質を取得する。
【0118】
当該遺伝子産物の疎水性領域をコードする遺伝子領域の除去は、エントリークローンで得られた全鎖長ORFの部分配列をPCR法により増幅しクローニングすることで行った。
【0119】
3種類の5’末端プライマー(L4_LformKpn77F;配列番号10、L4_MformKpn110F;配列番号11、L4_NformKpn155F;配列番号12)はそれぞれcDNAの開始コドン1から73番目のリジンコドン、106番目のアスパラギン酸コドン、151番目のイソロイシンコドンをN末端とするペプチドをコードするcDNA部分配列を増幅する。3’末端のプライマーはエントリークローンpENTR−L4Aプラスミドに含まれるプラスミドベクター由来の配列(XBM13R;配列番号13)を用いた。PCR法は94℃ 30秒、54℃ 30秒、72℃ 1分を20回繰り返す条件で行った。増幅産物をMiniElute PCR Purification Kit(QIAGEN社製)により精製した。
【0120】
上記改変遺伝子の発現ベクターへの組み込みはPCRプライマーの両端に設定した制限酵素認識配列を利用して行った。精製PCR産物を制限酵素KpnIとXbaIで37℃2時間消化した後にMiniElute PCR Purification Kitで精製した。同様にしてpFLAG−CMV3プラスミドベクターをKpnI/XbaIにより消化し精製した。
【0121】
そのプラスミドベクターと挿入遺伝子のライゲーションはライゲーションキットver.1(TAKARA社製)を用いて行った。挿入遺伝子断片溶液0.5μLとプラスミド溶液0.5μL、ライゲーションキットA液4μL、B液4μLを混ぜ16℃にて30分間反応を行った。その後、上記反応液2 μlをコンピテントセル(大腸菌DH5α、インビトロジェン社製)100μlと混合し、ヒートショック法の後、アンピシリンを含むLBプレートに植菌し培養した。翌日コロニーをとり、直接PCRで目的DNA断片を保持する大腸菌クローンを確認した。さらに確実を期すためシーケンシングによりDNA配列の確認をした後、3種のプラスミドDNA(pFLAG−L4L、pFLAG−L4M、およびpFLAG−L4N)を抽出・精製した。
【0122】
発現プラスミドの哺乳類培養細胞への導入及び発現
上記の方法により得られた発現プラスミドにL4遺伝子が挿入されていることを確認した後、本プラスミドを哺乳類培養細胞Cos1および293Tに導入した。すなわち、150mmシャーレにCos1細胞あるいは293T細胞の4×10個を20mlのDMEM培地(Gibco社製、Cos1細胞にはローグルコース培地を293T細胞にはハイグルコース培地を用いた。それぞれ10%非働化牛血清を添加して使用した)にて1晩培養した後に遺伝子導入を行った。培地による共洗後にリポフェクタミン2000を200μLとプラスミドDNA60μgを含むOpti−MEM(Gibco社製、10ml)を加え、37℃、5%COにて48時間培養した。
培養後トリプシンを用いる定法により細胞を回収し、細胞および培養上清を凍結保存し、酵素活性測定に供した。
【0123】
L4 のレジン精製
上記哺乳細胞培養上清のFLAG−L4上清10mlにNaN(0.05 %)、NaCl (150 mM)、CaCl (2 mM)、抗M1レジン(Sigma 社)(100 μl)を混合し、4℃で一夜攪拌した。翌日遠心して(3000 rpm 5分、4℃)ペレットを回収し、2 mMのCaCl・TBSを900μl加えて再度遠心分離(2000 rpm 5分、4℃)し、ペレットを200 μl の1 mM CaCl・TBS に浮遊させ活性測定のサンプル(L4酵素液)とした。この一部をSDS−PAGEによる電気泳動について抗FLAG M2−ペルオキシダーゼ(SIGMA社製)を用いてウエスタンブロッテイングを行い、目的とするL4タンパク質の発現を確認した。その結果約50kDaの位置を中心としてブロードに複数のバンド(糖鎖などの翻訳後修飾の違いによるものと考えられる)が検出、発現が確認された。
【0124】
実施例4:哺乳類培養細胞における糖鎖構造の解析
上記実施例3に記載されるようにしてL4遺伝子が導入された哺乳類培養細胞では、そのL4遺伝子導入に起因してそれら細胞内又は細胞表層における糖鎖構造の変化が引き起こされる。この変化を解析することにより、L4遺伝子産物を特定し、酵素活性を推定できる。
【0125】
実施例5:酵素活性の測定
L4タンパク質の具体的な酵素活性を調べるには、当該技術分野において知られた常法を使用できる。例えば、上記実施例3に記載されたように調製されたL4酵素液を用いた反応系に、グリコサミノグリカン合成等に関与するような供与体基質群ないし受容体基質群を含ませることによってその基質特異性をスクリーニングできるし、使用緩衝液の種類、pH条件、或いは共存金属イオンの種類等を変えた場合の反応結果を比較することで、至適緩衝液、至適pH、要求金属イオン等を特定することもできる。
【0126】
【配列表】
Figure 2004267015
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【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のL4タンパク質と、コンドロイチン合成酵素との間でアライメントさせた各アミノ酸配列を示す図である。

Claims (19)

  1. 配列番号1に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸。
  2. 配列番号1に記載の塩基配列中の少なくとも十数個の連続する塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる、請求項1に記載の核酸。
  3. 配列番号1に記載の塩基配列又はそれに相補的な塩基配列からなる、請求項2に記載の核酸。
  4. プローブまたはプライマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸。
  5. 配列番号4若しくは配列番号5に記載の塩基配列、又はそれに相補的な塩基配列からなる、請求項4に記載のプライマー。
  6. 癌マーカーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の核酸。
  7. 生物試料の癌化を検定する方法であって、
    (a)請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸を使用して、生物試料における該核酸についての転写レベルを測定し;そして
    (b)該測定値が、健常生物試料についての測定値と比較して有意に下回るか否かを判断すること;
    を含む方法。
  8. 前記(a)の工程において、該生物試料についての測定値が、健常生物試料についての測定値と比較して1/2以下であるか否かを判断することを含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記(a)の工程において、請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸を標識プローブとして使用し、該標識プローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で生物試料に接触させ、そこでハイブリダイズした該標識プローブからのシグナルに基づいて前記転写レベルを測定することを含む、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 前記(a)の工程において、請求項4又は5に記載のプライマーを使用して生物試料に含まれる核酸について核酸増幅処理を行い、そして、該プライマーで増幅された核酸の量を測定することを含む、請求項7又は8に記載の方法。
  11. 癌治療に関する処置の有効性を検定する方法であって、請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸を使用して、癌治療のための処置が施された生物試料における該核酸についての転写レベルを測定し、該測定値がその処置前又は未処置の場合と比較して有意に上回るか否かを判断することを含む方法。
  12. 前記生物試料が大腸由来の試料である、請求項7〜11の何れか1項に記載の方法。
  13. 糖転移活性を有するポリペプチドをコードする核酸であって、下記(a)〜(d)の塩基配列:
    (a)配列番号1の全長の塩基配列;
    (b)配列番号1の塩基番号73〜1047に記載の塩基配列;
    (c)配列番号1の塩基番号106〜1047に記載の塩基配列;又は
    (d)配列番号1の塩基番号151〜1047に記載の塩基配列;
    のいずれか1つを有する核酸。
  14. 糖転移活性を有するポリペプチドをコードする核酸であって、下記(a)〜(d)のアミノ酸配列:
    (a)配列番号3の全長のアミノ酸配列;
    (b)配列番号3のアミノ酸番号25〜349に記載のアミノ酸配列;
    (c)配列番号3のアミノ酸番号36〜349に記載のアミノ酸配列;又は
    (d)配列番号3のアミノ酸番号51〜349に記載のアミノ酸配列;
    のいずれか1つを有するポリペプチドをコードする核酸。
  15. DNAである、請求項13又は14のいずれか1項に記載の核酸。
  16. 請求項13〜15のいずれか1項に記載の核酸を含むベクター。
  17. 請求項16に記載のベクターを含む形質転換体。
  18. 糖転移活性を有するポリペプチドであって、下記(a)〜(d)のアミノ酸配列:
    (a)配列番号3の全長のアミノ酸配列;
    (b)配列番号3のアミノ酸番号25〜349に記載のアミノ酸配列;
    (c)配列番号3のアミノ酸番号36〜349に記載のアミノ酸配列;又は
    (d)配列番号3のアミノ酸番号51〜349に記載のアミノ酸配列;
    のいずれか1つを有するポリペプチド。
  19. 請求項18に記載のポリペプチドに対する抗体。
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