JP4245905B2 - ポリエステル樹脂組成物、ポリエステルフィルムおよびそれらの製造方法 - Google Patents

ポリエステル樹脂組成物、ポリエステルフィルムおよびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物、それからなるフィルムおよびそれらの製造方法に関する。さらに詳しくは、特定のアルカリ土類金属を用いてエステル交換反応した後、特定のチタン化合物及びリン化合物を含むポリエステル製造用触媒を用いて製造された、色調、触媒金属に起因する析出異物の抑制性およびポリエステル再溶融時の熱劣化抑制性に優れた性能を有するポリエステル樹脂組成物およびそれからなるフィルム表面上の粗大突起数が極めて少ないポリエステルフィルムならびにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、繊維、フィルム、その他の成形物に広く利用されている。
【0003】
ポリエチレンテレフタレートは、通常テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応さて、テレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させ、次いでこの反応生成物を重合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることによって製造されている。
【0004】
これらの重縮合反応段階で使用する触媒の種類によって、反応速度および得られるポリエステルの品質が大きく左右されることはよく知られている。ポリエチレンテレフタレートの重縮合触媒としては、アンチモン化合物が、優れた重縮合触媒性能を有し、かつ、色調の良好なポリエステルが得られるなどの理由から最も広く使用されている。
【0005】
しかしながら、アンチモン化合物を重縮合触媒として使用した場合、ポリエステル中でアンチモン化合物起因の析出粒子が出来やすく、フィルム製膜時に表面欠点およびダイ筋と呼ばれる表面筋が形成される為、得られるフィルム品質を損なうという問題がある。
【0006】
該アンチモン化合物以外の重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドのようなチタン化合物を用いることも提案されているが、このようなチタン化合物を使用した場合、上記のような、表面欠点・表面筋に起因する問題は解決できるが、得られるポリエステル自身が黄色く着色し、また、溶融熱安定性も不良であるという新たな問題が発生する。
【0007】
上記着色問題を解決するために、コバルト化合物をポリエステルに添加して黄味を抑えることが一般的に行われている。確かにコバルト化合物を添加することによってポリエステルの色調(b値)は改善することができるが、コバルト化合物を添加することによってポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという問題がある。
【0008】
また、他のチタン化合物として、特公昭48−2229号公報には水酸化チタンを、また特公昭47−26597号公報にはα−チタン酸を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方、後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存、取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、さらに、良好な色調(b値)を得ることも困難である。
【0009】
また、特公昭59−46258号公報にはチタン化合物とトリメリット酸とを反応させて得られた生成物を、また特開昭58−38722号公報にはチタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物を、さらにまた特開平7―138354号公報ではリン化合物とチタン化合物との錯体をそれぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。これらの方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性を向上させることはできるが、得られるポリマーの色調は未だ十分なものではなかった。したがって触媒としてアンチモン化合物を使用せず、熱安定性,色相およびフィルム表面特性に優れたポリエステルフィルムおよびそれを製造するためのポリエステル樹脂組成物はいまだ提供されていないのが現状である。
【0010】
【特許文献1】
特公昭48−2229号公報
【特許文献2】
特公昭47−26597号公報
【特許文献3】
特公昭59−46258号公報
【特許文献4】
特開昭58−38722号公報
【特許文献5】
特開平7―138354号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱安定性,色調に優れたポリエステルを用い、触媒金属に起因する析出粗大粒子数が極めて少ないポリエステル樹脂組成物およびそれからなるフィルムならびにそれらの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレート、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物およびリン化合物からなり、
(1)リン化合物が下記一般式(I)
【0013】
【化7】
Figure 0004245905
【0014】
(ここで、Zは−2 −OH(nは1〜4の整数を示す。)、AおよびBはそれぞれ−C2 +1(nは〜4の整数を示す。)または−C2 −OH(nは1〜4の整数を示す。)、Xは−CH−または−CH(Y)−、およびYはフェニル基を示す。)
で表されるホスホネート化合物であること、
(2)アルカリ土類金属化合物の含有量が、ポリエチレンテレフタレートの全ジカルボン酸成分を基準として、30〜120mmol%の範囲にあり、かつリン化合物のリン元素量(モル)に対して、0.4〜1.5の範囲にあること、
(3)チタン化合物が、ポリエチレンテレフタレートに可溶で、かつその含有量が、ポリエチレンテレフタレートの全ジカルボン酸成分を基準として、チタン金属元素量で2〜20ミリモル%の範囲にあること、および
(4)ポリエチレンテレフタレートが、メチル末端基を0.5〜7.0モル/10gの範囲で有し、かつ非晶状態からの昇温結晶化ピーク温度と溶融状態からの降温結晶化ピーク温度との差が40℃以内であることを同時に具備するポリエステル樹脂組成物によって達成される。
【0015】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、その好ましい態様として、(1)チタン化合物が、下記一般式(II)
【0016】
【化8】
Figure 0004245905
【0017】
(上記式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ炭素数2〜10個のアルキル基、またmは1〜8の整数を表す。)
で表わされる化合物および上記一般式(II)で表わされる化合物と下記一般式(III)
【0018】
【化9】
Figure 0004245905
【0019】
(上記式中、kは2〜4の整数を表わす。)
で表わされる芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応生成物からなる群より選ばれた少なくとも1種であること、(2)アルカリ土類金属化合物が、カルシウム化合物およびマグネシウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種であることのいずれかを具備するポリエステル樹脂組成物も包含するものである。
【0020】
また、本発明によれば、本発明の他の課題は、上記本発明のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステルフィルムによって達成され、該本発明のポリエステルフィルムは、その好ましい態様として、ポリエステルフィルムの表面にある長径10μm以上の粗大突起が10ヶ/cm2未満であるポリエステルフィルムも包含するものである。
【0021】
また、本発明によれば、本発明の他の目的は、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを、常圧〜0.2MPaの加圧下で、全ジカルボン酸成分に対して30〜120mmol%のアルカリ土類金属化合物を用いてエステル交換反応させる工程、前記一般式(I)で表されるリン化合物を、アルカリ土類金属化合物に対して、0.4〜1.5のモル比で反応系に添加してエステル交換反応を終了させる工程、およびポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物を、全ジカルボン酸成分に対して、チタン金属元素量で2〜20ミリモル%用いて重合反応させる工程からなるポリエステル樹脂組成物の製造方法によって達成される。該本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法は、その好ましい態様として、チタン化合物が、前記一般式(II)で表わされる化合物および前記一般式(II)で表わされる化合物と前記一般式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応生成物からなる群より選ばれた少なくとも1種であるポリエステル樹脂組成物の製造方法も包含するものである。
【0022】
さらにまた、本発明の他の課題は、上記本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法によって製造されたポリエチレンテレフタレートを溶融状態でシート状に押出し、少なくとも一軸方向に延伸するポリエステルフィルムの製造方法、好ましくは該シート状物を直交する2軸方向に延伸するポリエステルフィルムの製造方法によって達成される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳しく説明する。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂組成物およびそれからなるフィルムは、ポリエチレンテレフタレートからなる。本発明のポリエステル樹脂組成物は、80重量%以上、好ましくは85重量%以上がポリエチレンテレフタレートからなるものであり、ポリエチレンテレフタレート以外の他の樹脂を、混合したものであっても良い。また、本発明におけるポリエチレンテレフタレートとは、エチレンテレフタレート成分を主たる繰返し単位とするポリエステルである。なおここでいう主たる繰り返し単位とは、全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは85モル%以上を意味する。ポリエチレンテレフタレートがエチレンテレフタレート単位を構成する成分以外の第3成分を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートである場合、第3成分(共重合成分)としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸等の如きテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の如き脂環族ジカルボン酸、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコールが例示でき、これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、アルカリ土類金属化合物を含有する。該アルカリ土類金属化合物はエステル交換反応触媒として使用される。該アルカリ土類金属化合物の含有量は、全ジカルボン酸成分に対してアルカリ土類金属元素量で30〜120mmol%の範囲である。アルカリ土類金属化合物の含有量が下限未満の場合、反応が非常に遅くなる結果、得られるポリマーの分子量が低くなる。一方、アルカリ土類金属化合物の含有量が上限より多い場合、得られるポリエステルの熱安定性や色相が低下する。該アルカリ土類金属化合物の含有量は、35〜110mmol%の範囲が好ましく、40〜100mmol%の範囲が更に好ましい。
【0026】
本発明において、用いられるアルカリ土類金属化合物としてはカルシウム化合物、マグネシウム化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物が挙げられる。これらの中でもカルシウム化合物、マグネシウム化合物が好ましい。カルシウム化合物としては酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、安息香酸カルシウム、蟻酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等、及びこれらの水和物が挙げられる。また、マグネシウム化合物としては酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、安息香酸マグネシウム、蟻酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等、及びこれらの水和物が挙げられる。これらの中でも、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウム四水和物が特に好ましく用いられる。これらのアルカリ土類金属化合物は、単独で使用してもよく、また二種以上併用してもよい。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、安定剤として下記一般式(I)で表されるリン化合物を含有することが必要である。
【0028】
【化10】
Figure 0004245905
【0029】
(ここで、Zは−2 −OH(nは1〜4の整数を示す。)、AおよびBはそれぞれ−C2 +1(nは〜4の整数を示す。)または−C2 −OH(nは1〜4の整数を示す。)、Xは−CH−または−CH(Y)−、およびYはフェニル基を示す。)
特に好ましいリン化合物としては、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボブトキシメタンホスホン酸などの炭素数1〜4のグリコールエステルである。ホスホネート化合物のグリコール置換体は、末端アルコキシ基の一部が置換されたものでも良く、ヒドロキシル基を含むすべてが置換されたものでもよい。また、該ホスホネート化合物は、後述の一般式(III)で示される芳香族多価カルボン酸との反応させてから添加しても良い。
【0030】
本発明において、これらのホスホネート化合物が必要である理由は、通常安定剤として使用されリン化合物に比べ、チタン化合物との反応が比較的緩やかに進行することから、重縮合反応中のチタン化合物の触媒活性の持続時間が長く、結果としてポリエステルへの触媒の添加量を少なくでき、触媒に対して多量の安定剤を添加してもポリエステルの熱安定性を損ないにくく、色調の低下を引き起こさないからである。
【0031】
これらのリン化合物の添加時期は、特に制限されること無く、エステル交換反応開始前でも良く、またエステル交換反応が実質的に終了した後、例えば、重縮合反応を開始する以前の大気圧下、重縮合反応を開始した後の減圧下、重縮合反応の末期に添加してもよい。
【0032】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、重合触媒としてチタン化合物を含有する。該チタン化合物は、触媒起因の異物低減の点で、ポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物である。ポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物であれば、特に制限されず、ポリエステルの重縮合触媒として一般的なチタン化合物、例えば、酢酸チタンやテトラ−n−ブトキシチタンなどが挙げられる。これらの中でも、下記一般式(II)で表わされる化合物および下記一般式(II)で表わされる化合物と下記一般式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応生成物が好ましい。
【0033】
【化11】
Figure 0004245905
【0034】
(上記式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ炭素数2〜10個のアルキル基、またmは1〜8の整数を表し、R1、R2、R3およびR4は互いに同一であっても異なっていてもどちらでもよい。mは1〜8の整数を表す。)
【0035】
【化12】
Figure 0004245905
【0036】
(上記式中、kは2〜4の整数を表わす。)
一般式(II)で表わされるテトラアルコキサイドチタンとしては、R1〜R4がアルキル基および/または芳香族基であれば特に限定されないが、テトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラフェノキシチタンなどが好ましく用いられる。また、かかるチタン化合物として反応させる一般式(III)で表される芳香族多価カルボン酸またはその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物が好ましく用いられる。上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸またはその無水物の一部とを溶解し、これにチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で30分以上反応させれば良い。
【0037】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリマー中に可溶なチタン化合物を全ジカルボン酸成分に対し、チタン金属元素量で2〜20ミリモル%含有している必要がある。該チタン金属元素が下限未満ではポリエステルの生産性が低下し、目標の分子量のポリエステルが得られない。また、該チタン金属元素が上限を超える場合は熱安定性が逆に低下し、フィルム製造時の分子量低下が大きくなり品質の優れたポリエステルフィルムが得られない。チタン金属元素量は2.5〜17ミリモル%の範囲が好ましく、3〜15ミリモル%の範囲が更に好ましい。
【0038】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、リン化合物とアルカリ土類金属化合物を特定の割合、すなわち、アルカリ土類金属化合物を構成するアルカリ土類金属元素のモル数(M)でリン化合物を構成するリン元素のモル数(P)を割った値(P/M)が、0.4〜1.5の範囲で含有することが必要である。(P/M)が下限未満の場合、フィルムを構成するポリエチレンテレフタレートの耐熱性や色相が低下し、一方、上限を超える場合、フィルムを構成するポリエチレンテレフタレートの分子量が低下し、十分な力学特性が得られない。(P/M)の範囲は0.5〜1.3の範囲が好ましく、0.6〜1.1の範囲が更に好ましい。
【0039】
本発明において、原料として使用されるテレフタル酸ジメチルは、ポリアルキレンテレフタレートを解重合することによってリサイクルされたテレフタル酸ジメチルが好ましい。ここで、該ポリアルキレンテレフタレートとしてはポリエチレンテレフタレートが好ましく、特に回収されたPETボトル、回収されたポリエステル繊維製品、回収されたポリエステルフィルム製品、更にはこれら製品の製造工程において発生する屑ポリマーなど回収されたポリエステルが好ましい。その理由としては、本発明のポリエステルの製造方法を用いることによって、リサイクルされたテレフタル酸ジメチルであっても析出粗大突起の少ないポリエステルフィルムを得ることが可能となったためである。
【0040】
本発明において、ポリアルキレンテレフタレートの解重合によるテレフタル酸ジメチルの製造方法は特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートをエチレングリコールで解重合した後、メタノールでエステル交換反応し、得られたテレフタル酸ジメチルを再結晶や蒸留で精製する方法が好ましく挙げられる。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂組成物を構成するポリエチレンテレフタレートは、メチル末端基の量が0.5〜7.0モル/106gの範囲にある必要がある。メチル末端基の量が下限未満の場合は熱安定性が低下し、一方上限を超える場合、エステル交換反応後に実施される重合反応の速度が遅くなる。メチル末端基の量は0.6〜6.0モル/106gの範囲が好ましく、0.7〜5.0モル/106gの範囲が更に好ましい。
【0042】
本発明ポリエステル樹脂組成物を構成するポリエチレンテレフタレートは、示差走査型熱量測定における急速冷却後のポリマーの非晶状態からの昇温速度20℃/分で測定した昇温結晶化ピーク温度と溶融状態からの降温速度10℃/分で測定した降温結晶化ピーク温度の差(以下、△Tと称することがある。)が40℃以内である必要がある。該△Tが範囲を外れる場合、製膜工程において、部分結晶化により均一な延伸が難しく、切断等の工程トラブルを引き起こすばかりでなく、最終的に得られるフィルム製品の品質変動が大きくなる。該結晶化ピークの差は35℃以内であることが好ましく、30℃以内であることが更に好ましい。また、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエチレンテレフタレートが艶消し剤や滑剤等の無機粒子を含有しないポリエステルの場合、該結晶化ピークの差は25℃以内であることが好ましく、20℃以内であることが更に好ましい。
【0043】
本発明のポリエステル樹脂組成物を構成するポリエチレンテレフタレートの固有粘度(ο−クロロフェノール、35℃)は、0.40〜0.80の範囲にあることが好ましく、さらに0.45〜0.75、特に0.50〜0.70の範囲が好ましい。固有粘度が下限未満であると、フィルムの強度が不足するため好ましくない。他方、固有粘度が上限を超えると、原料ポリマーの固有粘度を過剰に引き上げる必要があり不経済である。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、艶消剤等を含んでいてもよい。特に製膜時の巻き取り性を付与する為に、滑剤として平均粒径が0.001〜5μmの不活性微粒子を最終的に得られるポリエステル樹脂組成物中に0.01〜10重量%含有するように添加することが好ましい。添加する不活性微粒子としては、例えばコロイダルシリカ、多孔質シリカ、酸化チタン、酸化アルミナ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、カオリン、複合酸化物粒子等の無機粒子や、シリコーン粒子、架橋ポリスチレン、架橋アクリルポリマー、架橋ポリエステルなどの有機粒子等が好ましく用いられる。なお、後述のリン元素量、チタン元素量、アンチモン元素量およびアルカリ土類金属元素量の測定は、これらの不活性粒子を予め除去してから測定する。
【0045】
一般的にエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレートの製造方法には、原料としてテレフタル酸に代表される芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールとを用いて直接エステル化した後に重合反応を行う製造方法と、原料としてテレフタル酸ジメチルに代表される芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体をエチレングリコールとエステル交換反応せしめた後に重合反応を行う製造方法の二つの方法が知られている。一般的にはテレフタル酸を用いた直接エステル化による製造方法の方が得られるポリマーの色相が良好であり、好ましく実施される。しかし、エステル交換反応は原料であるテレフタル酸ジメチルがポリエステルの解重合による回収プロセスから容易に得ることが出来、環境面からその必要性が高まってきている。そのため、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸のエステル形成性誘導体をエステル交換反応せしめることによって製造することが好ましい。この出発原料物質であるテレフタル酸ジメチルは全ジカルボン酸成分の80モル%以上であることが好ましい。
【0046】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法は、(1)テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを、常圧〜0.2MPaの加圧下で、全ジカルボン酸成分に対して30〜120mmol%のアルカリ土類金属化合物を用いてエステル交換反応させる工程、(2)前記一般式(I)で表されるリン化合物を、アルカリ土類金属化合物に対して、0.4〜1.5のモル比で反応系に添加してエステル交換反応を終了させる工程、および(3)ポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物を、全ジカルボン酸成分に対して、チタン金属元素量で2〜20ミリモル%用いて重合反応させる工程からなる。
【0047】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、使用するエステル交換反応触媒であるアルカリ土類金属化合物、エステル交換反応失活剤である有機リン化合物、重合触媒であるポリマーに可溶性なチタン化合物の添加順序は、まずエステル交換反応開始前にテレフタル酸ジアルキルエステルとともにエステル交換反応触媒であるアルカリ土類金属化合物を存在させて徐々に昇温し、発生するアルコールを除去させながらエステル交換反応を実施し、エステル交換反応後にエステル交換反応失活剤であるリン化合物を添加して実質的にエステル交換反応を完了させる。その後反応生成物を減圧装置が設けられた重合反応器に移し替える前後に重合触媒であるポリマーに可溶性なチタン化合物を添加して高真空化での重合反応を行う。
【0048】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法では、エステル交換反応時の反応系内の圧力については、通常は常圧での反応が好ましく実施されるが、必要に応じて0.2MPa以下の加圧下での反応を実施してもよい。加圧下でのエステル交換反応を実施する場合、圧力が上限より高いと、副生成物として発生するジエチレングリコールのポリマー中の含有量が著しく増加し、ポリマーの熱安定性等の特性が低下することがある。好ましい反応系の圧力は、0.06〜0.10MPaの範囲である。
【0049】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、上記の本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法によって得られたポリエステル樹脂組成物を用いることに特徴があり、製膜方法は従来公知の技術を用いる事が出来る。以下に、ポリエチレンテレフタレート組成物を用いた場合を代表例として例示する。
【0050】
重縮合反応により得られたポリエステルチップを(Tc)〜(Tc+40)℃(Tcはポリエステルの昇温時の結晶化温度)の温度範囲で1〜3時間乾燥した後、(Tm)〜(Tm+70)℃(Tmはポリエステルの融点)の温度範囲内でシート状に溶融押出し、次いで表面温度20〜40℃の回転冷却ドラム上に密着固化させて、実質的に非晶質のポリエステルシート(未延伸フィルム)を得る。次いで未延伸フィルムを縦方向または横方向に延伸する。好ましくは縦方向に延伸した後、横方向に延伸する、いわゆる縦・横逐次二軸延伸法あるいは、この順序を逆にして延伸する方法などにより直交する2軸方向に延伸する。延伸する際の温度(熱固定温度)は(Tg−10)〜(Tg+70)℃( Tgはポリエチレンテレフタレートの二次転移点温度)であって、延伸倍率は少なくとも一軸方向に2.5倍以上、さらには3倍以上で、かつ面積倍率が8倍以上、さらには10〜30倍の範囲から選ぶのが好ましい。
【0051】
本発明のポリエステルフィルムを製造方法において、使用するスリット状ダイの形状や、溶融温度、延伸倍率、熱固定温度等の条件について制限は無く、また単層フィルムや共押出し技術等を用いた積層フィルムのいずれも採用することができる。
【0052】
このようにして得られた本発明のポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物が極めて優れた熱安定性や色調を有し、かつ触媒金属に起因する析出粗大粒子数が極めて少ないので、極めて品位の優れたポリエステルフィルムとなる。なお、本発明のポリエステルフィルムは、その表面にある長径10μm以上の粗大突起が10ヶ/cm2未満であることが、例えば磁気記録媒体のベースフィルムにしたときに優れた品質をだせることから好ましい。
【0053】
【実施例】
本発明をさらに実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。尚、実施例中の固有粘度、色相、チタン、リン、カルシウム、マグネシウム含有量及び触媒金属に起因する製膜フィルム表面欠点については、下記の方法により測定および評価した。
【0054】
(1)ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV):
ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は、オルトクロロフェノール溶液で35℃の雰囲気下で測定した粘度の値から求めた。
【0055】
(2)ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の色調(L値及びb値):
ポリエチレンテレフタレートのカラーは、ミノルタ社製ハンター型色差計CR−200を用いて測定した。L値は明度の指標であり、数値が大きいほど明度が高いことを、b値はその値が大きいほど黄着色の度合いが大きいことを示す。b値に関しては以下の判断基準を設け、○以上の評価を合格とした。
◎:b値が4未満
○:b値が4以上8未満
△:b値が8以上12未満
×:b値が12以上
【0056】
(3)ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中のチタン、リン、アンチモン含有量:
チタン元素量、リン元素量、アンチモン元素量はポリマーを加熱溶融して円形ディスクを作成し、リガク社製蛍光X線測定装置3270を用いて測定した。
【0057】
(4)ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中のカルシウム、マグネシウム含有量:
ポリエチレンテレフタレート樹脂をオルトクロロフェノールに溶解した後、0.5規定塩酸で抽出操作を行った。この抽出液について日立製作所製Z−6100形偏光ゼーマン原子吸光光度計を用いてカルシウム、マグネシウムの定量を行った。
【0058】
(5)ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中のジエチレングリコール(DEG)量:
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物をCDCl3/CF3COOD混合溶媒にて溶解し、1H−NMRにて測定した。
【0059】
(6)ポリエチレンテレフタレート樹脂のメチル末端基量:
抱水ヒドラジンを用いてポリエチレンテレフタレート樹脂を分解し、ガスクロマトグラフィ−(ヒューレットパッカード社製「HP6850」)を用い、含有メタノール量を常法に従って測定した。
【0060】
(7)ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の昇温結晶化ピーク温度、降温結晶化ピーク温度:
示差走査熱量計(DSC)としてTA Instruments社製 DSC2010 Differential Scanning Calorimeterを用いて、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温したポリエチレンテレフタレートを、一旦0℃の雰囲気下で5分間保持して非晶状態のポリマーとした後、再度20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温して、JISK7121に従い、昇温結晶化ピーク温度を測定した。更に同サンプルを10℃/分の降温速度で降温し、JIS K7121に従い、降温結晶化ピーク温度を測定した。
【0061】
(8)ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の熱安定性:
170℃で3時間乾燥したポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を、ガラス製フラスコへ入れ、次いで290℃に保持されたソルトバスにフラスコを浸漬後、窒素気流下で20分間溶融状態で攪拌保持したポリエチレンテレフタレート樹脂イの固有粘度(IV)を溶融保持後の固有粘度とした。そして、前述の乾燥処理に供する前のポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度から、該溶融保持後の固有粘度を差し引いた値(IV差)を求めた。得られたIV差を、以下の判断基準によって評価し、○以上の評価を合格とした。
◎:IV差が0.003未満
○:IV差が0.003以上0.006未満
△:IV差が0.006以上0.009未満
×:IV差が0.009以上
【0062】
(9)フィルム表面欠点:
フィルムサンプルの表面にアルミニウムを0.5μm厚みで蒸着し、日立製作所製走査型電子顕微鏡(S−3100)によりフィルム1cm×1cmの範囲内にある、長径10μm以上の粗大粒子数をカウントした。評価には以下の判断基準を設け、○以上の評価を合格とした。
◎:粗大粒子数が5ヶ/cm2未満
○:粗大粒子数が5ヶ/cm2以上10ヶ/cm2未満
△:粗大粒子数が10ヶ/cm2以上20ヶ/cm2未満
×:粗大粒子数が20ヶ/cm2以上
【0063】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部の混合物に、酢酸マグネシウム四水和物0.077部を撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。この際、反応器内の圧力は0.1MPaであった。その後、下記式(I−a)のリン化合物(ジエトキシホスホノ酢酸ヒドロキシエチルエステル。以下、リン化合物1と略記する。)を表1に記載した量を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0064】
【化13】
Figure 0004245905
【0065】
このエステル交換反応物を撹拌装置、窒素導入口、減圧口、蒸留装置を備えた反応容器に移し、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.0123部を添加して285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空にて重縮合反応を行って、固有粘度0.63、ジエチレングリコール量が0.7%であるポリエステルを得た。
【0066】
得られたポリエステルを常法により170℃で3時間乾燥後、溶融温度290℃で1mmのスリット状ダイを通して200μmに溶融押出し、回転冷却ドラム上に密着させ固化した。次いで、得られた未延伸フィルムを75℃に予熱し、低速、高速のロール間で15mm上方より900℃の表面温度のIRヒータ1本にて加熱して3.6倍に延伸し、続いてステンターに供給し、105℃にて横方向に3.9倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを230℃の温度で5秒間熱固定処理し、厚み14μmの熱固定二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステル樹脂組成物およびそれを用いたポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0067】
[実施例2]
実施例1において、チタン化合物を下記参考例の方法にて合成したトリメリット酸チタン0.0221部に変更する以外は同様な操作を繰り返した。得られたポリエステル樹脂組成物およびそれを用いたポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0068】
[参考例]トリメリット酸チタンの合成方法
無水トリメリット酸のエチレングリコール溶液(0.2%)にテトラブトキシチタンを無水トリメリット酸に対して1/2モル添加し、空気中常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめ、その後、常温に冷却し、10倍量のアセトンによって生成触媒を再結晶化させ、析出物を濾紙によって濾過し、100℃で2時間乾燥せしめ、目的の化合物を得た。
【0069】
[実施例3]
リン化合物を下記式(I−b)(以下、リン化合物2と略記する)に変更する以外は、実施例2と同様な操作を繰り返した。得られたポリエステル樹脂組成物およびそれを用いたポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0070】
【化14】
Figure 0004245905
【0071】
[参考例4]
リン化合物を下記式(I−c)(以下、リン化合物3と略記する)に変更する以外は、実施例2と同様な操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0072】
【化15】
Figure 0004245905
【0073】
[実施例5及び6、参考例7]
酢酸マグネシウム四水和物の代わりに酢酸カルシウム一水和物を表1に示す値とし、チタン化合物及びリン化合物を表1に示す化合物及び値に変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエステル樹脂組成物およびそれを用いたポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0074】
[実施例8]
酢酸マグネシウム四水和物と酢酸カルシウム一水和物を表1に示す値とし、チタン化合物及びリン化合物を表1に示す化合物及び値に変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエステル樹脂組成物およびそれを用いたポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0075】
[実施例9および10]
酢酸マグネシウム四水和物、酢酸カルシウム一水和物、チタン化合物及びリン化合物を表1に示す化合物および割合とし、エステル交換反応終了後、表1に示す不活性粒子を10%エチレングリコールスラリーの状態で表1に示す割合で添加した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエステル樹脂組成物およびそれを用いたポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0076】
[比較例1〜7]
酢酸マグネシウム四水和物、チタン化合物及びリン化合物を表1に示す化合物及び値に変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエステル樹脂組成物およびそれを用いたポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0077】
[比較例8および9]
酢酸マグネシウム四水和物、酢酸カルシウム一水和物及びリン化合物を表1に示す化合物及び値とし、重合触媒としてチタン化合物の代わりに三酸化二アンチモンを表1に示す量使用した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエステル樹脂組成物およびそれを用いたポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0078】
【表1】
Figure 0004245905
【0079】
【表2】
Figure 0004245905
【0080】
ここで、表1中の、酢酸Mgは酢酸マグネシウム、酢酸Caは酢酸カルシウム、TBTはテトラブトキシチタン、TMTはトリメリット酸チタン、粒径は株式会社島津製作所製「CP−50型セントリヒューグル パーティクル サイズ アナライザー」を用いて測定した50マス%に相当する等価球直径である。
【0081】
また、ここで、表2中の、IVは固有粘度、DEGはジエチレングリコール量、Mgはマグネシウム元素量、Caはカルシウム元素量、Pはリン元素量、Tiはチタン元素量、Sbはアンチモン元素量、P/Mはリン元素量をマグネシウム元素量とカルシウム元素量との和で割った値である。
【0082】
表2からも明らかなように、本発明のポリエステル樹脂組成物およびポリエステルフィルムは良好な性能が得られたが、アルカリ土類金属触媒、有機リン化合物、ポリマー可溶性チタン化合物の添加量及び比率のいずれかが本発明の範囲を外れる比較例のポリエステル樹脂組成物およびポリエステルフィルム(比較例1〜7)は、色相が不良であるか、固有粘度が上昇しないか、あるいは熱安定性が劣っていた。また、アンチモン化合物を触媒として用いたもの(比較8〜9)は、粗大粒子数が非常に多いものであった。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、Ti触媒を使用し従来技術の欠点であった色相の悪化を解消し、ポリエステルが持つ、優れた特性を保持しながら、色相が優れたポリエステルフィルムを提供することができる。

Claims (9)

  1. ポリエチレンテレフタレート、チタン化合物、アルカリ土類金属化合物およびリン化合物からなり、
    (1)リン化合物が下記一般式(I)
    Figure 0004245905
    (ここで、Zは−2 −OH(nは1〜4の整数を示す。)、AおよびBはそれぞれ−C2 +1(nは〜4の整数を示す。)または−C2 −OH(nは1〜4の整数を示す。)、Xは−CH−または−CH(Y)−、およびYはフェニル基を示す。)
    で表されるホスホネート化合物であること、
    (2)アルカリ土類金属化合物の含有量が、ポリエチレンテレフタレートの全ジカルボン酸成分を基準として、アルカリ土類金属元素量で30〜120mmol%の範囲にあり、かつリン化合物のリン元素量(モル)に対して、モル比で0.4〜1.5の範囲にあること、
    (3)チタン化合物が、ポリエチレンテレフタレートに可溶で、かつその含有量が、ポリエチレンテレフタレートの全ジカルボン酸成分を基準として、チタン金属元素量で2〜20ミリモル%の範囲にあること、および
    (4)ポリエチレンテレフタレートが、メチル末端基を0.5〜7.0モル/10gの範囲で有し、かつ非晶状態からの昇温結晶化ピーク温度と溶融状態からの降温結晶化ピーク温度との差が40℃以内であること
    を同時に具備するポリエステル樹脂組成物。
  2. チタン化合物が、下記一般式(II)で表わされる化合物および下記一般式(II)で表わされる化合物と下記一般式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応生成物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
    Figure 0004245905
    (上記式中、R、R、RおよびRはそれぞれ炭素数2〜10個のアルキル基、またmは1〜8の整数を表す。)
    Figure 0004245905
    (上記式中、kは2〜4の整数を表わす。)
  3. アルカリ土類金属化合物が、カルシウム化合物およびマグネシウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とするポリエステルフィルム
  5. フィルムの表面にある長径10μm以上の粗大突起が10ヶ/cm未満である請求項4記載のポリエステルフィルム。
  6. (1)テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを、常圧〜0.2MPaの加圧下で、全ジカルボン酸成分に対して30〜120mmol%のアルカリ土類金属化合物を用いてエステル交換反応させる工程、
    (2)下記一般式(I)
    Figure 0004245905
    (ここで、Zは−2 −OH(nは1〜4の整数を示す。)、AおよびBはそれぞれ−C2 +1(nは〜4の整数を示す。)または−C2 −OH(nは1〜4の整数を示す。)、Xは−CH−または−CH(Y)−、およびYはフェニル基を示す。)
    で表されるリン化合物を、アルカリ土類金属化合物に対して、0.4〜1.5のモル比で反応系に添加してエステル交換反応を終了させる工程、および
    ポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物を、全ジカルボン酸成分に対して、チタン金属元素量で2〜20ミリモル%用いて重合反応させる工程
    からなることを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  7. チタン化合物が、下記一般式(II)で表わされる化合物および下記一般式(II)で表わされる化合物と下記一般式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応生成物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
    Figure 0004245905
    (上記式中、R、R、RおよびRはそれぞれ炭素数2〜10個のアルキル基、またmは1〜8の整数を表す。)
    Figure 0004245905
    (上記式中、kは2〜4の整数を表わす。)
  8. 請求項6または7のいずれか記載の製造方法によって得られたポリエステル樹脂組成物を溶融状態でシート状に押出し、少なくとも一軸方向に延伸することを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法。
  9. シート状物を直交する2軸方向に延伸する請求項8記載のポリエステルフィルムの製造方法。
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