JP5840912B2 - 難燃性ポリエステル、その製造方法および難燃性ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
このため、リン酸エステル系難燃剤などのノンハロゲン系難燃剤が提案されており、成形時に難燃剤を添加するブレンド法が知られている。しかし、これらの難燃剤は十分な難燃性を発揮させるためには、その添加量を多くする必要があり、得られる成形品の機械的特性の低下を招いたり、ポリエステル樹脂中から難燃剤がブリードアウトしたりする。
しかし、上記化合物の反応性、耐熱性に問題があり、難燃および耐加水分解効果だけでなく、よりポリエステル本来の諸特性を維持した実用性の高い樹脂が望まれている。
上記ホスフィンオキシド化合物から誘導されるジオール成分の割合が、得られるポリエステルの全酸成分のモル数を基準として、1〜25モル%の範囲であること、チタン化合物の割合が、得られるポリエステルの質量を基準として、チタン原子量で50〜400ppmの範囲であること、そして、ポリエステルの固有粘度が少なくとも0.55dl/gに到達するまで反応温度265℃以下で重縮合反応を行い、分子量を上げる工程と、該分子量を上げる工程の後に温度265℃を超える温度で10分以上熱処理する工程とを有する難燃性ポリエステルの製造方法によって達成される。
Ti(OR4)4 ・・・(2)
(上記式中、R4はアルキル基および/またはフェニル基を示す)で表されるチタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させた生成物である上記本発明の難燃性ポリエステルの製造方法ならびに難燃性ポリエステルおよびそれを用いたフィルムも提供される。
本発明の難燃性ポリエステルについて、まず詳述する。
本発明の難燃性ポリエステルは、ポリエステルの全酸成分を基準として、前記式(1)で表されるホスフィンオキシド化合物から誘導される成分(以下、リン含有共重合単位と称することがある)を1〜25モル%の範囲で有する。
式(1)で表されるホスフィンオキシド化合物からなる単位のうち、R2とR3で表されるメチレン鎖数は好ましくは1〜4であり、さらに好ましくは2〜3である。
また、式(1)で表されるホスフィンオキシド化合物からなる単位のうち、R1で表される置換基の中でも、炭素数1〜6の飽和炭化水素、フェニル基が好ましく例示される。
Ti(OR4)4 ・・・(2)
(上記式中、R4はアルキル基および/またはフェニル基を示す)
つぎに、この触媒活性指標[CA]を10%以下にする方法の一例として、本発明の難燃ポリエステルの製造方法を以下説明する。
まず、本発明の難燃性ポリエステルの製造方法は、前述のリン含有共重合単位を共重合することから重縮合反応が進行しにくく、従来公知の例えばポリエチレンテレフタレートに比べ、前述の通り、触媒活性の高いチタン化合物を選択し、かつその量も非常に多くなる。一方、前述の通り、成形時の固有粘度の低下や成形後の耐加水分解性の低下を抑えるため、触媒活性使用[CA]を上限以下に抑えなくてはならない。
そこで、本発明者らは、上記二律背反の問題を解消しようと鋭意研究した結果、重縮合反応を特定の温度で行い、重縮合反応終了後に系の温度条件を特定の範囲にすることで、重縮合反応中は触媒として使用しているチタン化合物の活性を最大限に活用しつつ、重縮合反応後にはその活性を抑制できることを見出したのである。
この際、上記ホスフィンオキシド化合物から誘導されるジオール成分の割合は、前述の難燃性ポリエステルで説明したとおり、得られるポリエステルの全酸成分のモル数を基準として、1〜25モル%の範囲であることが必要である。また、チタン化合物の割合も、前述の難燃性ポリエステルで説明したとおり、得られるポリエステルの質量を基準として、チタン原子量で50〜400ppmの範囲であることが必要である。
このようにして得られる本発明の難燃性ポリエステルは、本発明の目的を阻害しない範囲内で、従来公知の各種添加剤を含有していてもよく、例えば有機または無機の滑剤粒子、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを挙げることができる。
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、前述の難燃性ポリエステルを溶融製膜して、シート状に押出すことで得られる。
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性を発現するため、フィルム面方向における少なくとも一方向に延伸された配向ポリエステルフィルムであることが好ましく、さらに製膜方向と幅方向の両方向に延伸された二軸配向ポリエステルフィルムであることがさらに好ましい。
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
試料10mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解した。イソプロピルアミンを加えて、十分に混合した後に1H−NMR(日本電子製 JEOL A600)にて80℃で測定した。
ポリマーサンプルを加熱溶融して、円形ディスクを作成し、リガク製蛍光X線装置3270型を用いて測定し、定量を行った。
120℃で4時間、続き180℃で4時間結晶化処理したサンプル30gを容量100mLのなす型フラスコに入れる。なす型フラスコには口から加熱窒素が通る管を下部に伸ばし、下部より加熱窒素が出るようにしてあり、また上部から排気口を設けている。サンプルを入れたなす型フラスコは、205℃で保温した装置内にセットする。窒素温度205℃で100mL/min、24時間流通させ、固有粘度の上昇率を求める。
上昇率 =(IV1−IV0)/IV0 ×100(%)
ここで、IV0は結晶化処理前のサンプルの固有粘度、IV1は加熱窒素による処理後の固有粘度を意味する。
フィルムサンプルをUL−94VTM法に準拠して評価した。サンプルを20cm×5cmにカットし、23±2℃、50±5%RH中で48時間放置し、その後、試料下端をバーナーから10mm上方に離し垂直に保持した。該試料の下端を内径9.5mm、炎長20mmのブンゼンバーナーを加熱源とし、3秒間接炎した。VTM−0、VTM−1、VTM−2の評価基準に沿って難燃性を評価し、n=5の測定回数のうち、同じランクになった数の最も多いランクとした。
150mm長×10mm幅の短冊状のフィルムを、121℃・2atm・濡れ飽和モード・100%RHに設定した環境試験機内にステンレス製クリップで吊り下げる。10時間経過後にフィルムを取り出し、評価に供した。なお、フィルムサンプルを切り出すにあたり、フィルムの主配向方向が長さ方向となるように切り出した。
そして、ORIENTEC社製テンシロンUTM−4−100型を用いてチャック間距離10cm、引張速度10mm/secで引張応力を測定し、下記式に従ってそれぞれの処理後の引張破断伸度保持率を算出した。
破断伸度保持率(%)=(100時間経過時の引張破断伸度/初期の引張破断伸度)×100
なお、かかる破断伸度保持率はフィルムの主配向方向を測定方向としたときの値である。また、測定はそれぞれ5回ずつ行い、その平均値をもとに算出した。
テレフタル酸ジメチル(DMT)31Kg(160モル)、エチレングリコール(EG) 16.2Kg(261モル)、リン化合物として、n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド(日本化学工業社 PO−4500)2.45Kg(11モル)を、攪拌機、精留塔、冷却器を供えたの反応槽に仕込み、そこに触媒として、酢酸マンガン4水和物を30ミリモル%(全酸性分に対して)加え、エステル交換反応を行った。続いて、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)70ミリモル%(全酸性分に対して)を加えて、260℃にて真空下重縮合反応を行った。その後目的とする固有粘度(0.630dl/g)付近に達したことを撹拌電力より確認し、真空下のまま昇温し、275℃で45分間保持した。そして固有粘度0.650dl/gのポリエステルを得た。
得られたポリエステルを170℃ドライヤーで3時間乾燥後、280℃でダイより表面温度20℃に維持した回転ドラム上に溶融押出して、厚み630μmの未延伸フィルムを製膜した。この未延伸フィルムを75℃に予熱し、低速ローラーと高速ローラーの間で15mm上方より800℃の表面温度の赤外線ヒーター1本にて加熱しながら製膜方向(MD方向)に4.1倍延伸し、さらに縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながら100℃で加熱された雰囲気中で製膜方向に垂直な方向(TD方向)に4.2倍延伸し、さらに横方向に固定したまま全幅の3%の弛緩を与えながら220℃で熱処理し、厚み50μmのフィルムを得た。
得られたポリエステル、およびそれからなるフィルムサンプルの特性を表1に示す。
実施例1において,リン化合物の添加量、チタン化合物の種類、添加量、後処理時間を変えたこと以外は実施例1と同様に行った。得られたポリエステル、およびそれからなるフィルムサンプルの特性を表1に示す。特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(NDC)35Kg(143モル)、エチレングリコール(EG)17.1Kg(276モル)、ビス(3−ヒドロキシトリメチレン)n−ブチルホスフィンオキシド(日本化学工業社 PO−4500)2.19Kg(9.9モル)を、攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、そこに触媒として、酢酸マンガン4水和物を30ミリモル%(全酸性分に対して)加え、エステル交換反応を行った。続いて、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)70ミリモル%(全酸性分に対して)を加えて、265℃にて真空下重縮合反応を行った。その後、表1に示す目的とする粘度に達したことを撹拌電力より確認し、真空下のまま昇温し、275℃で30分間保持した。そして固有粘度0.650dl/gのポリエステルを得た。
得られたポリエステルを、MD方向延伸における予熱温度を120℃に、TD方向延伸における温度を140℃にした以外は、実施例1と同様の方法によってフィルムサンプルを得た。
得られたポリエステル、およびそれからなるフィルムサンプルの特性を表1に示す。
テレフタル酸ジメチル(DMT)31Kg(160モル)、エチレングリコール(EG)19.8Kg(320モル)、を、攪拌機、精留塔、冷却器を備えた反応槽に仕込み、そこに触媒として、酢酸マンガン4水和物を30ミリモル%(全酸性分に対して)加え、エステル交換反応を行った。続いて、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)10ミリモル%(全酸性分に対して)を加えて、275℃にて真空下重縮合反応を行った。そして固有粘度0.650dl/gのポリエステルを得た。
その後は実施例1と同様におこなった。得られたポリエステル、およびそれからなるフィルムサンプルの特性を表1に示す。
リン化合物の種類、添加量、重縮合反応温度、後処理反応温度、時間を変えたこと以外は、実施例1と同様におこなった。得られたポリエステル、およびそれからなるフィルムサンプルの特性を表1に示す。
Claims (5)
- 芳香族ジカルボン酸またはその低級エステルとエチレングリコールとを、下記式(A)で表されるホスフィンオキシド化合物から誘導されるジオール成分の存在下で、チタン化合物を重縮合反応触媒として反応させる難燃性ポリエステルの製造方法であって、
上記ホスフィンオキシド化合物から誘導されるジオール成分の割合が、得られるポリエステルの全酸成分のモル数を基準として、1〜25モル%の範囲であること、チタン化合物の割合が、得られるポリエステルの質量を基準として、チタン原子量で50〜400ppmの範囲であること、そして、ポリエステルの固有粘度が少なくとも0.55dl/gに到達するまで反応温度265℃以下で重縮合反応を行い、分子量を上げる工程と、該分子量を上げる工程の後に温度265℃を超える温度で10分以上熱処理する工程とを有する難燃性ポリエステルの製造方法。
- チタン化合物が、下記式(2)で表されるチタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させた生成物である請求項1記載の難燃性ポリエステルの製造方法。
Ti(OR4)4 ・・・(2)
(上記式中、R4はアルキル基および/またはフェニル基を示す) - 含有するチタン化合物が、下記一般式(2)で表わされる化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させた生成物である請求項3記載の難燃性ポリエステル。
Ti(OR4)4 ・・・(2)
(上記式中、R4はアルキル基および/またはフェニル基を示す) - 請求項3または4のいずれかに記載の難燃性ポリエステルから製膜された難燃性ポリエステルフィルム。
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