JP3557792B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、リンを含有するポリエステル重合体を含有せしめてなる樹脂組成物およびそれらからなる成形品に関する。更に詳しくは、高度な難燃性を有し、かつ耐加水分解性の低下が抑制された繊維、フィルムおよびコネクター、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビン等の電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品に好適な樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどに代表されるポリエステルは、その優れた諸特性を生かし、繊維、フィルムあるいは射出成形材料として幅広い分野に利用されている。一方これらポリエステルの多くは本質的に可燃性であるため、工業用材料として使用するには一般の化学的、物理的諸特性のバランス以外に火炎に対する安全性、すなわち難燃性が要求される場合が多い。
【0003】
ポリエステルに難燃性を付与する方法としては、難燃剤としてハロゲン系有機化合物、さらに難燃助剤としてアンチモン化合物を樹脂にコンパウンドする方法が一般的である。しかしながら、この方法には、燃焼の際の発煙量が多いなどの問題点を有している。
【0004】
そこで、近年これらハロゲン系難燃剤の欠点を克服するためにハロゲンを全く含まない難燃剤を用いることが強く望まれるようになった。ハロゲン系難燃剤を使わずにポリエステルを難燃化する方法としてリン化合物の共重合が知られている。リン化合物を共重合して難燃化する方法としては、ホスホン酸ユニットやホスフィン酸ユニットのポリエステルへの共重合(特開昭51−54691号公報、特開昭50−56488号公報、特開昭63−168452、特開平5−51440)が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらリン化合物の共重合による従来の技術は、リン化合物を共重合していないポリエステルに比べ難燃性は向上するものの、リン化合物を共重合することによりポリエステルの耐加水分解性が著しく低下することが問題となった。さらにこれらのリン化合物の共重合体をそのまま電子・電気・自動車などの機械部品に成形した場合、十分な難燃性が得られなかった。
【0006】
そこで本発明は、優れた難燃性を有し、かつ耐加水分解性の低下が抑制されたリン含有ポリエステル重合体を含有せしめてなる樹脂組成物およびそれらからなる成形品を得ることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは以上の状況を鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定のリン化合物を共重合したポリエステルが難燃性、機械特性および耐加水分解性に優れること、さらに特定のリン化合物を共重合したポリエステルにトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩または上記ポリエステル以外の構造を有する非ハロゲン系難燃剤を配合することにより、さらに高度な難燃性を付与でき、また、フッ素系樹脂を添加することにより燃焼時の液滴の落下(ドリップ)を抑制することができ、さらにヒンダードフェノール系安定剤を添加することにより、樹脂組成物の耐加水分解性を向上させることができることを見いだし、また熱可塑性樹脂をさらに配合することにより難燃性、耐加水分解性が向上し、さらに本発明のリンを含有するポリエステルを難燃剤として熱可塑性樹脂に配合することにより、熱可塑性樹脂に難燃性を付与することができることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、(A)下記一般式(1)、(2)で表される繰り返し単位およびリン含有単位を含有してなるポリエステル重合体であって、リン含有単位が下記一般式(3)、(4)で表される繰り返し単位から選ばれる一種以上であり、数平均分子量が500以上であるリンを含有するポリエステル重合体100重量部に対して、(B)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸からなる塩1〜100重量部を含有せしめてなる樹脂組成物である。
【0009】
【化5】
(ただし上記式R1はハロゲンを含有しない二価の有機残基を表す。またAr1はハロゲンを含有しない二価の芳香族残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されても良い。またR2、R3、R4、R5はハロゲンを含有しない一価の有機残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されていてもよい。またx、y、z1およびz2は各繰り返し単位のポリマー中のモル%を表す。x、y、z1およびz2の合計を100(モル%)とし、xおよびz1の合計とyおよびz2の合計は実質的に等しい。)
また、本発明は(A)成分100重量部に対して、(A)成分以外の構造を有する非ハロゲン系難燃剤(C)1〜50重量部を含有せしめてなる上記樹脂組成物、(A)成分100重量部に対して、フッ素系樹脂0.01〜10重量部を含有せしめてなる上記樹脂組成物、
(A)成分100重量部に対して、ヒンダードフェノール系安定剤(D)0.01〜3重量部を含有せしめてなる上記樹脂組成物、
(A)成分100重量部に対して、充填剤5〜140重量部を含有せしめてなる上記樹脂組成物、
(A)成分100重量部に対して、熱可塑性樹脂(E)1〜1000重量部を含有せしめてなる上記樹脂組成物である。
【0010】
さらに本発明は前記リンを含有するポリエステル重合体または上記樹脂組成物からなる成形品、該成形品がフィルムまたは繊維である成形品および前記成形品が電気・電子機器部品、自動車部品または機械部品である成形品である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0012】
本発明のリンを含有するポリエステル重合体とは、下記一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位およびリン含有単位を含有してなるポリエステル重合体であって、リン含有単位が下記一般式(3)、(4)で表される繰り返し単位から選ばれる一種以上であるポリエステル重合体である。
【0013】
なお、下記一般式(1)〜(4)の繰返し単位は実質的にエステル結合で結合されており、共重合体のシーケンス分布は、交互、ブロック、ランダムのいずれでもよい。
【0014】
【化7】
(ただし上記式R1 はハロゲンを含有しない二価の有機残基を表す。またAr1 はハロゲンを含有しない二価の芳香族残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されても良い。またR2 、R3 、R4 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されていてもよい。またx、y、zは各繰り返し単位のポリマー中のモル%を表す。x、y、z1およびz2の合計を100(モル%)とし、xおよびz1の合計とyおよびz2の合計は実質的に等しい。)
前記式(1)中Ar1 は、ハロゲンを含有しない二価の芳香族残基あるいは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された芳香族残基を表す。具体例としては、例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、メシチレン、ナフチレン、インデニレン、アントリレンから選ばれる1種または2種以上の混合物などが挙げられるが、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、ナフチレンなどが好ましく、特にフェニレンが好ましい。
【0015】
また上記式(2)中R1 は、ハロゲンを含有しない二価の有機残基あるいは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された有機残基を表す。具体例としては、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレン、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、メシチレン、ナフチレン、インデニレン、アントリレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレンなどが挙げられるが、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレン、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレンなどが好ましく、特にエチレン、テトラメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレンが好ましい。
【0016】
また上記式(3)、(4)中、R2 、R3 、R4 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基あるいは炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された有機残基を表す。その具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソーブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル、インデニル、アントリルなどが挙げられるが、メチル、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、ナフチルなどが好ましく、特にメチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、フェニルなどが好ましい。
【0017】
本発明で使用される上記式(3)で表される繰り返し単位は、さらに式(5)で表される繰り返し単位であることが好ましく、上記式(4)で表される繰り返し単位はさらに式(6)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0018】
【化8】
(ただし式中R3 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されていてもよい。またx、y、zは各繰り返し単位のポリマー中のモル%を表す。x、y、z1およびz2の合計を100(モル%)とし、xおよびz1の合計とyおよびz2の合計は実質的に等しい。)
このような繰り返し単位としては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
【化9】
【化10】
このような繰り返し単位のうち、特に下記一般式で表される繰り返し単位から選ばれる1種または2種以上を共重合成分として含むリンを分子中に含有するポリエステルが難燃性、耐加水分解性、経済性の面から好ましく使用される。
【0020】
【化11】
上記式(1)、(2)、(3)、(4)中、x、y、z1、z2は各繰り返し単位のモル%を表す。x、y、z1およびz2の合計は100(モル%)とし、xおよびz1の合計とyおよびz2の合計は実質的に等しい。
【0021】
ここでx、y、z1、z2の関係は、得られるリンを含有するポリエステルの難燃性および耐加水分解性の面から0<(z1+z2)/(x+y+z1+z2)≦0.5であり、好ましくは0<(z1+z2)/(x+y+z1+z2)≦0.3、特に好ましくは0<(z1+z2)/(x+y+z1+z2))≦0.2である。
【0022】
上記式(1)および(2)で表される繰り返し単位に、上記特定のリンを含有するポリエステルは、下記一般式(23)で表されるジカルボン酸またはその誘導体と下記一般式(24)で表されるジオールまたはその誘導体とを適当な触媒の存在下あるいは不存在下、エステル交換反応させ、その後、下記一般式(25)で表されるリン含有ジカルボン酸またはその誘導体および(26)で表されるリン含有ジオールまたはその誘導体から選ばれる1種または2種以上のリン含有モノマーを添加し、その後公知の触媒存在下重縮合させることにより製造することができる。この重合方法により合成される共重合体のシーケンス分布は、重合温度、重合時間およびモノマーの添加方法により異なり、これらの条件を適宜選択することにより交互、ランダム、ブロックなど、所望のポリエステルを得ることができる。なお下記一般式(23)で表されるジカルボン酸はアルコールとのエステル交換反応により得られるアルキルエステル化されたジカルボン酸であってもよい。
【0023】
【化12】
(ただし上記式R1 はハロゲンを含有しない二価の有機残基を表す。またAr1 はハロゲンを含有しない二価の芳香族残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されても良い。またR2 、R3 、R4 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されていてもよい。また−COOH、−OH基はエステル化されていてもよい。)
前記式(23)中Ar1 は、ハロゲンを含有しない二価の芳香族残基あるいは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された芳香族残基を表す。具体例としては、例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、メシチレン、ナフチレン、インデニレン、アントリレンから選ばれる1種または2種以上の混合物などが挙げられるが、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、ナフチレンなどが好ましく、特にフェニレンが好ましい。
【0024】
また上記式(24)中R1 は、ハロゲンを含有しない二価の有機残基あるいはハロ炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された有機残基を表す。具体例としては、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレン、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、メシチレン、ナフチレン、インデニレン、アントリレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレンなどが挙げられるが、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレン、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレンなどが好ましく、特にエチレン、テトラメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレンが好ましい。
【0025】
また上記式(25)、(26)中、R2 、R3 、R4 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基あるいは炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された有機残基を表す。その具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル、インデニル、アントリルなどが挙げられるが、メチル、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、ナフチルなどが好ましく、特にメチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、フェニルなどが好ましい。
【0026】
本発明で使用される上記一般式(25)で表されるリン含有ジカルボン酸は式(27)で表されるリン含有ジカルボン酸であることが好ましく、上記一般式(26)で表されるリン含有ジオールは、さらに式(28)で表されるリン含有ジオールであることが好ましい。
【0027】
【化13】
(ただし式中R3 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されていてもよい。また−COOH、−OH基はエステル化されていてもよい。)
このようなリン含有ジカルボン酸、リン含有ジオールとしては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
【化14】
【化15】
このようなリン含有ジカルボン酸、リン含有ジオールのうち、特に下記一般式で表されるリン含有ジカルボン酸、リン含有ジオールから選ばれる1種または2種以上を共重合して得られるリンを分子中に含有するポリエステルが難燃性、耐加水分解性および経済性の面から好ましく使用される。
【0029】
【化16】
本発明のリンを含有するポリエステル重合体は数平均分子量(Mn)が500以上であり、なかでも1000以上、特に5000以上であることが好ましい。上限に特に制限はないが、通常、1,000,000以下、なかでも800,000以下、特に500,000以下であることが好ましい。かかる数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリメタクリル酸メチルにより換算することにより測定した値である。
【0030】
上記本発明のリンを含有するポリエステル重合体の数平均分子量(Mn)は使用目的に応じ、リンを含有するポリエステルの分子量を使い分けることが好ましい。
【0031】
例えば、本発明のリンを含有するポリエステル重合体をマトリックス樹脂として使用する場合、得られるポリマーの機械特性の面、成形性の面から数平均分子量は1万以上が好ましく、さらに2万以上のものが好ましく用いられる。上限に特に制限はないが、通常、1,000,000以下、なかでも800,000以下、特に500,000以下であることが好ましい。
【0032】
また本発明のリンを含有するポリエステル重合体以外の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とし、本発明のリンを含有するポリエステルを難燃剤として使用する場合、得られる樹脂組成物の難燃性、マトリックス樹脂との相溶性の面から数平均分子量は500以上であり、好ましくは1000以上、さらに5000以上のものが好ましく用いられる。上限に特に制限はないが、通常、1,000,000以下、なかでも800,000以下、特に500,000以下であることが好ましい。
【0033】
上記リンを含有するポリエステル重合体(A)は、それを含有せしめた樹脂組成物とすることができる。かかる樹脂組成物における(A)成分以外の成分としては、特に制限はないが、例えばトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩、(A)成分以外の構造を有する非ハロゲン系難燃剤、フッ素系樹脂、ヒンダードフェノール系安定剤、充填剤、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0034】
本発明の樹脂組成物においては、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩を含有せしめることにより、リンを含有するポリエステルにさらに高度な難燃性を付与することができ、さらに耐加水分解性が向上することができる。
【0035】
上記シアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩とは、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物で表わされる化合物との塩であり、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する塩である。トリアジン系化合物のうち、シアヌール酸またはイソシアヌール酸と塩を形成しないものは除外される。
【0036】
またトリアジン系化合物としては、下記一般式(45)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化17】
(ただし上式においてR6 、R7 、R8 、R9 は同一または相異なる水素アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、または−CONH2 である。また、Rは上式中の−NR6 R7 または−NR8 R9 と同一の基、またはこれらと独立に水素、アリール基、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、−NH2 、または−CONH2 から選ばれた基である。)
前記一般式(45)においてR6 、R7 、R8 、R9 は同一または相異なる水素、アリール基、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、または−CONH2 である。ここでアリール基としては炭素数6〜15のもの、アルキル基としては炭素数1〜10のもの、アラルキル基としては炭素数7〜16のもの、シクロアルキル基としては4〜15のものが好ましい。また、Rは上式中の−NR6 R7 または−NR8 R9 と同一の基、またはこれらと独立に水素、アリール基、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、−NH2 、または−CONH2 から選ばれた基であり、ここでアリール基としては炭素数6〜15のもの、アルキル基としては炭素数1〜10のもの、アラルキル基としては炭素数7〜16のもの、シクロアルキル基としては4〜15のものが好ましい。
【0038】
R6 、R7 、R8 、R9 の具体的な例としては水素、フェニル基、p−トルイル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、シクロイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−メチル−1−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、4−メチル−1−シクロヘキシル基、アミド基などが挙げられるが、中でも水素、フェニル基、メチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、アミド基が好ましい。
【0039】
また、Rの具体的な例としてはアミノ基、アミド基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノ(ヒドロキシメチル)アミノ基、ジ(ヒドロキシメチル)アミノ基、モノ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(メトキシメチル)アミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、水素、フェニル基、p−トルイル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ベンジル基、シクロイソプロピル、n−ペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−メチル−1−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、4−メチル−1−シクロヘキシル基などが挙げられるが、中でも水素、アミノ基、アミド基、メチル基、モノ(ヒドロキシメチル)アミノ基、ジ(ヒドロキシメチル)アミノ基、モノ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(メトキシメチル)アミノ基、フェニル基、ベンジル基が好ましい。
【0040】
前記一般式(45)で表わされる化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩のうち、特に好ましい例としてはメラミン、モノ(ヒドロキシメチル)メラミン、ジ(ヒドロキシメチル)メラミン、トリ(ヒドロキシメチル)メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2−アミド−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンの塩が挙げられ、とりわけメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンの塩が好ましい。
【0041】
前記一般式(45)で表わされる化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩は、一般式(45)で表わされる化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとなし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥して得られる粉末であり、単なる混合物とは異なる。この塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応の(45)式で表わされる化合物ないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、この塩の形態としては特に制限はないが、できる限り微細な粉末として得られたものを用いるのが、本発明の組成物から得られる成形品の機械的強度や表面性の点から好ましく、樹脂に配合する前の平均粒径が100μm以下のものが特に好ましい。また、上記塩の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤を併用してもかまわない。
【0042】
上記塩の使用量はリンを含有するポリエステル重合体(A)に対して1〜100重量部、なかでも2〜80重量部、特には3〜70重量部であることが、難燃性の向上効果、成形品の機械的物性や表面外観の観点から好ましい。
【0043】
またリンを含有するポリエステル重合体を含有せしめてなる樹脂組成物に非ハロゲン系難燃剤(C)を添加することにより、リンを含有するポリエステルの共重合量や(B)シアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩を減量させることができる。
【0044】
このような非ハロゲン系難燃剤としては、ハロゲンを含有しない難燃剤であれば特に制限はないが、好ましくは分子量が300以上のリン系難燃剤、さらに好ましくは、下記式(46)で表される構造を有するリン系難燃剤が好ましい。
【0045】
【化18】
(ただし上記式R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。またAr2 、Ar3 、Ar4 、Ar5 は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。また、Yは直接結合、O、S、SO 2 、C(CH 3 ) 2 、CH 2 、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。またnは0以上の整数である。またk、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは0以上2以下の整数である。)
まず前記式(46)で表される難燃剤の構造について説明する。前記式(46)の式中nは0以上の整数である。またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0046】
また前記式(46)の式中、R10〜R17は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、2ーイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、3−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、ネオイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0047】
またAr2 、Ar3 、Ar4 、Ar5 は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などが挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
【0048】
またYは直接結合、O、S、SO2 、C(CH3 )2 、CH2 、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
【0049】
上記非ハロゲン難燃剤の使用量はリンを含有するポリエステル重合体(A)100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。
【0050】
また本発明のリンを含有するポリエステルからなる樹脂組成物はさらにフッ素系樹脂を添加すると燃焼時の液滴の落下(ドリップ)を抑制することができ、高度な難燃性を付与することができる。そのようなフッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。フッ素系樹脂の添加量は機械物性、成形性の面からリンを含有するポリエステル(A)100重量部に対して通常0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部である。
【0051】
また本発明のリンを含有するポリエステルからなる樹脂組成物は各種熱可塑性樹脂をブレンドすることにより、難燃性が向上するだけでなく、さらに耐加水分解性が向上する。また本発明のリンを含有するポリエステルを難燃剤として、熱可塑性樹脂に配合することにより熱可塑性樹脂に難燃性を付与することができる。
【0052】
またリンを含有するポリエステルからなる樹脂組成物に各種熱可塑性樹脂を配合することにより、機械特性、吸水性を改良することができる。
【0053】
本発明の熱可塑性樹脂(D)とは、加熱すると流動性を示し、これを利用して成形加工できる合成樹脂のことである。したがって架橋構造を有している樹脂であっても、加熱すると流動性を示すものであれば本発明の熱可塑性樹脂と見なすことができる。その具体例としては、例えば、本発明のリンを含有するポリエステル以外のポリエステル、液晶性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体などのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる。また、ポリエステル樹脂の具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの共重合ポリエステル等が挙げられる。さらにこれらのうち機械的性質、成形性などのバランスのとれたポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリエチレンテレフタレート等が特に好ましく使用できる。
【0054】
また熱可塑性樹脂を2種類以上併用する場合、熱可塑性樹脂の組み合わせに特に制限はないが、2種類以上の熱可塑性樹脂の組み合わせの中で、少なくとも1種類以上は850℃における加熱分解残渣量が25wt%以上の樹脂であることが難燃性を高める上で有効である。
【0055】
ここで850℃における加熱分解残渣量は、サンプル量10〜20mgで、TGA(熱重量分析計)を用い、窒素雰囲気下100℃〜850℃まで20℃/分で昇温し、850℃で10分間保持した際の残渣量を表す。
【0056】
850℃における加熱分解残渣量が25wt%以上の樹脂としてはフェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。2種以上の樹脂の配合比率としてはリンを含有するポリエステル(A)100重量部に対して、他の樹脂5〜200重量部が好ましい。
【0057】
また本発明の難燃性樹脂組成物に、更にヒンダードフェノール系の安定剤を併用すると長期間高温にさらされても極めて良好な耐加水分解性が維持されることが見いだされた。このような安定剤としては例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビスもしくはトリス(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、N,N’−トリメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)などが挙げられる。
【0058】
本発明においては、このようなヒンダードフェノール系安定剤を必要に応じて添加することができるが、その際のヒンダードフェノール系安定剤の添加量は通常、リンを含有するポリエステル(A)100重量部に対し0.01〜3重量部、好ましくは0.01〜1重量部、更に好ましくは0.03〜0.5重量部である。
【0059】
さらに、本発明の樹脂組成物に対して本発明の目的を損なわない範囲でリン系、イオウ系などの酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、および染料・顔料を含む着色剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。
【0060】
なお、特に必須ではないが、本発明組成物に対してさらに繊維状、および/または粒状の充填材を添加することにより、強度、剛性、耐熱性などを大幅に向上させることができる。
【0061】
このような充填材の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化アルミニウムなどが挙げられ、なかでもチョップドストランドタイプのガラス繊維が好ましく用いられる。これらの添加量はリンを含有するポリエステル100重量部に対して5〜140重量部が好ましく、特に好ましくは5〜100重量部である。
【0062】
本発明の樹脂組成物は通常公知の方法で製造される。例えば、リンを含有するポリエステル(A)、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)、およびその他の必要な添加剤をエクストルーダーで溶融混合する方法、あるいは粒子状物同士を均一に機械的に混合した後、射出成形機で混合と同時に成形する方法などが挙げられる。
【0063】
また本発明のリンを含有するポリエステル重合体および該ポリエステル重合体を含有せしめてなる樹脂組成物は溶融成形可能であるため押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、例えばフィルム、管、パイプ、ロッド及び繊維や希望する任意の形状と大きさを持った成形品に成形することができる。さらに難燃性および耐加水分解性をいかして、コネクター、リレー、スイッチ、ケース部品、トランス部材、コイルボビン等の電気・電子、機器部品、自動車部品、機械部品、建材など種々の用途に用いることができる。
【0064】
【実施例】
以下実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。ここで部とはすべて重量部をあらわす。各特性の測定方法は以下の通りである。
【0065】
(1)難燃性
ペレットから127mm×12.7mm×0.8mmの短冊状の試験片を作成し、UL94に定められている評価基準に従い難燃性を評価した。
【0066】
難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
【0067】
また、燃焼時にポリマーが滴下する場合をドリップ有り、燃焼時に滴下しない場合をドリップ無しと明記した。
【0068】
(2)耐加水分解性評価
上記方法により製作した試験片をオートクレーブ中、100℃、50時間処理した。処理前後の試験片の数平均分子量(Mn)を後述する方法により測定し、耐加水分解性(%)=処理後のサンプルのMn/処理前のサンプルのMn×100より得られる値を耐加水分解性の指標とした。なおMnは数平均分子量を表す。
【0069】
(3)数平均分子量(Mn)
検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、MODEL510高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。測定条件は、ヘキサフロロイソプロパノール(0.005Nトリフロロ酢酸ナトリウム)を溶離液とし、カラム温度23℃、試料濃度3〜4mg/mlの溶液を0.1ml注入した。カラムはWATERS社のポリスチレン多孔性膨潤ゲルが充填されたウルトラスタイラジェル100Aとウルトラスタイラジェルリニアーを直列に接続し、溶離液0.5ml/min、カラム圧力500psiとした。ポリマー分子量は、標準ポリメタクリル酸メチル(PMMA)による校正曲線と対比して換算した。
【0070】
(4)リン含有ポリエステルのリン共重合量の定量
500MHz 1 H−NMRを用い、重水素化ヘキサフロロイソプロパノールを測定溶媒とし、積算回数5000回、測定温度20℃で1 H−NMRを測定し、得られたスペクトルの面積比から共重合成分のモル%を算出した。
【0071】
(5)各種添加剤
実施例および比較例中で使用される本発明のリンを含有するポリエステル以外の非ハロゲン系難燃剤(C)の略記号、構造は以下の通り。
【0072】
【化19】
また、本実施例で用いたシアヌール酸塩を電子顕微鏡を用いて観察したところ、いずれも平均粒径(観察された分散粒子の任意の100個の平均値)は100μmより小さかった。
【0073】
また本実施例で使用した酸化防止剤とはペンタエリスルチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ガイギー社製”IR−1010”)である。
【0074】
本実施例で使用した熱可塑性樹脂はフェノール樹脂として住友デュレス社製”フェノールノボラック樹脂”PR−53194を用いた。またフェノール樹脂は本来熱硬化性樹脂に分類されるが、加熱すると流動性を示し、熱により溶融するが硬化しないといった点から熱可塑性樹脂と見なす。
【0075】
またPPSは東レ社製”トレリナ”A670X01、PBTは東レ社製”東レPBT”1401−X34を使用した。
【0076】
参考例イ sec−ブチルビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドの合成
3.8Lのステンレス耐圧反応管中に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5gのトルエン600ml溶液を入れ、反応管を窒素置換した後、2−ブテン(112g:2.0mol)とホスフィン(112g:3.0mol)を導入した。反応温度90℃、20分ごとにAIBNのトルエン溶液(5.5g /トルエン350ml)を添加し、100分間反応した。100分後、過剰のホスフィンを回収し、278g(4.8mol)のアリルアルコールとAIBN(0.5g/トルエン50ml)を添加した。反応温度を90℃にし、20分ごとにAIBN(5.5g/トルエン350ml)を添加し、11時間反応した。黄色の液体を回収し、100℃/1.0mmHgで加熱した。残渣を等量のイソプロパノールに溶解させ、30%の過酸化水素で酸化した。引き続き、クロロホルムで希釈し、クロロホルム溶液をろ過した後、エバポレーションによりクロロホルムを除去した。得られた生成物の元素分析値:C:54.1%、H:10.4%、P:14.0%(理論値:C=54.05%、H=10.36、P=13.96%)。収率89%。
【0077】
以上の元素分析結果から下記一般式で表されるsec−ブチルビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドであることが確認できる。この方法により得られた化合物を以下の実施例で使用した。
【0078】
【化20】
参考例ロ イソ−ブチルビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドの合成
2−ブテンの代わりにイソブテンを用いた以外は参考例イと同様にして行った。
【0079】
得られた生成物の元素分析値:C=54.1%、H=10.4%、P=14.0%(理論値:C=54.05%、H=10.36、P=13.96%)
以上の元素分析結果から下記一般式で表されるイソブチルビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドであることが確認できる。
【0080】
【化21】
参考例ハ ビス−(2−カルボキシエチル)−フェニルホスフィンオキシドの合成
1L4口フラスコにN2 導入管、環流冷却管、撹拌機、滴下ロートを取り付け、窒素フロー下、フェニルホスフィン(220g:2.0mol)を300ccのアセトニトリルに溶解し、フラスコ中に導入する。次いで撹拌しながら10NのKOH水溶液45ccを添加し、内温を20℃に保持するように氷浴で冷却した。ついで滴下ロートからアクリロニトリル(220g:4.15mol)を内温を25℃に保持するようにゆっくり添加した。添加後、3時間反応した。反応後、反応溶液を飽和食塩水100ccで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ついでこの溶液を減圧蒸留し(220〜223℃/0.2mmHg)の留分を回収した。回収物をメタノールで再結晶し、ビス−(2−シアノエチル)フェニルホスフィンを得た。これをさらに3倍の酢酸溶液とし、60℃に加熱し溶解させ、30%の過酸化水素水溶液200g(1.60mol)を60℃に保持するようにゆっくりと添加し、次いで75℃で20分、さらに100℃で20分加熱した後、エバポレーションにより溶媒を留去した。ついでメタノール1Lに溶かし、330gのKOH/水300ccを添加し、環流下5時間反応した。溶液を塩酸で中和し、析出した沈殿物をろ過、回収し乾燥した。元素分析結果C=53.1%、H=5.6%、P=11.5%(理論値C=53.34%、H=5.6%、P=11.46%)、収率89.1%以上の元素分析結果から下記一般式で表されるビス−(2−カルボキシエチル)−フェニルホスフィンオキシドであることが確認できる。この方法により得られた化合物を以下の実施例で使用した。
【0081】
【化22】
また上記合成方法においてフェニルホスフィンの代わりにフェニルリン酸ジクロリド、アクリロニトリルの代わりにアクリル酸を用いることによりビス−(2−カルボキシエチル)−フェニルホスフィンオキシドを合成することができる。得られた生成物の元素分析値C:54.1%、H:10.2%、P:14.0%(理論値:C=54.05%、H=10.36、P=13.96%)。収率90%。
【0082】
参考例1〜12、比較例1〜4
リンを分子中に含有する熱可塑性樹脂の製造方法
ジメチルテレフタレート(1倍モル)に対し、1.2倍モルのエチレングリコールあるいはブタンジオールを秤量し、エチレングリコールの場合は触媒として三酸化アンチモン(5×10-2mol%)を、また、ブタンジオールの場合はテトラn−ブチルチタネート(5×10-2mol%)を加え、150℃から250℃でエステル交換させた。その後、参考例イ〜ハで合成したリン化合物を所定量添加し、徐々に昇温しつつ内圧を減じ、最終的に265℃/0.1mmHgで5時間重縮合させることにより、リン含有ポリアルキレンテレフタレートを製造した。また比較例1、3では特開昭50−56488記載の下記一般式で表される2−メチル−2,5−ジオキソ−1−オキサ−2−ホスホランを使用した。
【0083】
【化23】
得られたリン含有ポリエステルについてリン含有共重合成分の共重合性を評価するためポリマー分子量を測定した。また共重合量は1 H−NMRスペクトルより算出した。また耐加水分解性および難燃性を評価した。
【0084】
一連のリン含有ポリアルキレンテレフタレート共重合体の製造結果および評価結果を示す。
【0085】
【表1】
【表2】
参考例1〜6、比較例1ではグリコール成分として、エチレングリコールを用いた。また比較例2では共重合していないPETを用いた。
【0086】
参考例1〜6、比較例1により得られるポリマーはすべて高分子量体であり、また難燃性はリン含有化合物を共重合していないPET(比較例2)に比べ向上する。本発明のリン含有ポリエステル(参考例1〜6)は耐加水分解性に優れるが、比較例1により得られたリン含有ポリエステルは、耐加水分解性が極めて悪いことがわかる。
【0087】
参考例7〜12、比較例3ではグリコール成分として、ブタンジオールを用いた。また比較例4ではリン含有化合物を共重合していないPBTを用いた。
【0088】
参考例7〜12、比較例2により得られるポリマーはすべて高分子量体であり、また難燃性は共重合していないPBT(比較例4)に比べ向上する。ここで本発明のリン含有ポリエステル(参考例7〜12)は耐加水分解性に優れるが、比較例2により得られたリン含有ポリエステルは耐加水分解性が極めて悪いことがわかる。
【0089】
実施例1〜3、比較例5
製造したリンを含有するPET(参考例1、3、5:リン共重合量4.0mol%)にシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)を配合し30mmΦ2軸押し出し機を用いて樹脂温度260℃で溶融押出した。一連の配合処方と結果を表3に示した。
【0090】
【表3】
シアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)を添加した樹脂組成物は、(B)を添加していない参考例1〜6に比べ難燃性が向上し、また(B)を添加することにより耐加水分解性が向上することがわかる。一方比較例5では(B)を添加することにより耐加水分解性がむしろ低下することがわかる。
【0093】
実施例4〜6、比較例6
製造したリンを含有するPET(参考例2、4、6)にシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)、ガラス繊維(GF)、必要に応じテフロン(登録商標)を配合し30mmΦ2軸押し出し機を用いて樹脂温度260℃で溶融押出した。一連の配合処方と結果を表4に示した。
【0094】
【表4】
リン含有PETを使用した実施例4〜6ではシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)やテフロン(登録商標)を配合することによりV−0が得られ、さらに燃焼時の液滴が落下しない、すなわち高度な難燃性が得られることがわかる。一方比較例6のリンを含有するPETでは、本発明のリンを含有するポリエステルに比べ、難燃性の向上効果が小さく、また耐加水分解性に劣ることがわかる。
【0095】
実施例7〜9、比較例7
リンを含有するPBT(参考例8、10、12)にシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)、ガラス繊維(GF)、必要に応じテフロン(登録商標)を配合し30mmΦ2軸押し出し機を用いて樹脂温度260℃で溶融押出した。一連の配合処方と結果を表4に示した。
【0096】
リン含有PBTを使用した実施例7〜9ではシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)やテフロン(登録商標)を配合することによりV−0が得られ、さらに燃焼時の液滴が落下しない、すなわち高度な難燃性が得られることがわかる。一方比較例7のリンを含有するPBTでは、本発明のリンを含有するポリエステルに比べ、難燃性の向上効果が小さく、また耐加水分解性に劣ることがわかる。
【0097】
実施例10〜14
リンを含有するPET(参考例4)にシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)、ガラス繊維(GF)、テフロン(登録商標)および(C)非ハロゲン難燃剤、(D)酸化化防止剤、(E)熱可塑性樹脂を表5に示した配合処方でコンパウンドした。
【0098】
表中の酸化防止剤とはペンタエリスルチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ガイギー社製”IR−1010”)である。
【0099】
また熱可塑性樹脂としてフェノール樹脂、PPSおよびPBTを使用した。
【0100】
【表5】
以上の結果から、(C)非ハロゲン高分子難燃剤、(D)酸化防止剤、(E)熱可塑性樹脂を配合することにより、シアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)を減量しても、優れた難燃性を付与でき、また耐加水分解性ができることが向上することがわかる。
【0101】
実施例15〜20
リンを含有するPBT(参考例8)にシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)、ガラス繊維(GF)、テフロン(登録商標)および(C)非ハロゲン難燃剤、(D)酸化防止剤、(E)熱可塑性樹脂を表5に示した配合処方でコンパウンドした。
【0102】
以上の結果から、(C)非ハロゲン高分子難燃剤、(D)酸化防止剤、(E)熱可塑性樹脂を配合することにより、シアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)を減量しても、優れた難燃性を付与でき、耐加水分解性が向上することがわかる。
【0103】
本発明のリンを含有するポリエステルにシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩を配合した樹脂組成物は、高度な難燃性を有すばかりでなく、耐加水分解性にも優れ、繊維、フィルムのみならず、コネクター、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビン等の電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品に好適な難燃性樹脂組成物として使用することができる。
【産業上の利用分野】
本発明は、リンを含有するポリエステル重合体を含有せしめてなる樹脂組成物およびそれらからなる成形品に関する。更に詳しくは、高度な難燃性を有し、かつ耐加水分解性の低下が抑制された繊維、フィルムおよびコネクター、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビン等の電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品に好適な樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどに代表されるポリエステルは、その優れた諸特性を生かし、繊維、フィルムあるいは射出成形材料として幅広い分野に利用されている。一方これらポリエステルの多くは本質的に可燃性であるため、工業用材料として使用するには一般の化学的、物理的諸特性のバランス以外に火炎に対する安全性、すなわち難燃性が要求される場合が多い。
【0003】
ポリエステルに難燃性を付与する方法としては、難燃剤としてハロゲン系有機化合物、さらに難燃助剤としてアンチモン化合物を樹脂にコンパウンドする方法が一般的である。しかしながら、この方法には、燃焼の際の発煙量が多いなどの問題点を有している。
【0004】
そこで、近年これらハロゲン系難燃剤の欠点を克服するためにハロゲンを全く含まない難燃剤を用いることが強く望まれるようになった。ハロゲン系難燃剤を使わずにポリエステルを難燃化する方法としてリン化合物の共重合が知られている。リン化合物を共重合して難燃化する方法としては、ホスホン酸ユニットやホスフィン酸ユニットのポリエステルへの共重合(特開昭51−54691号公報、特開昭50−56488号公報、特開昭63−168452、特開平5−51440)が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらリン化合物の共重合による従来の技術は、リン化合物を共重合していないポリエステルに比べ難燃性は向上するものの、リン化合物を共重合することによりポリエステルの耐加水分解性が著しく低下することが問題となった。さらにこれらのリン化合物の共重合体をそのまま電子・電気・自動車などの機械部品に成形した場合、十分な難燃性が得られなかった。
【0006】
そこで本発明は、優れた難燃性を有し、かつ耐加水分解性の低下が抑制されたリン含有ポリエステル重合体を含有せしめてなる樹脂組成物およびそれらからなる成形品を得ることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは以上の状況を鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定のリン化合物を共重合したポリエステルが難燃性、機械特性および耐加水分解性に優れること、さらに特定のリン化合物を共重合したポリエステルにトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩または上記ポリエステル以外の構造を有する非ハロゲン系難燃剤を配合することにより、さらに高度な難燃性を付与でき、また、フッ素系樹脂を添加することにより燃焼時の液滴の落下(ドリップ)を抑制することができ、さらにヒンダードフェノール系安定剤を添加することにより、樹脂組成物の耐加水分解性を向上させることができることを見いだし、また熱可塑性樹脂をさらに配合することにより難燃性、耐加水分解性が向上し、さらに本発明のリンを含有するポリエステルを難燃剤として熱可塑性樹脂に配合することにより、熱可塑性樹脂に難燃性を付与することができることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、(A)下記一般式(1)、(2)で表される繰り返し単位およびリン含有単位を含有してなるポリエステル重合体であって、リン含有単位が下記一般式(3)、(4)で表される繰り返し単位から選ばれる一種以上であり、数平均分子量が500以上であるリンを含有するポリエステル重合体100重量部に対して、(B)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸からなる塩1〜100重量部を含有せしめてなる樹脂組成物である。
【0009】
【化5】
(ただし上記式R1はハロゲンを含有しない二価の有機残基を表す。またAr1はハロゲンを含有しない二価の芳香族残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されても良い。またR2、R3、R4、R5はハロゲンを含有しない一価の有機残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されていてもよい。またx、y、z1およびz2は各繰り返し単位のポリマー中のモル%を表す。x、y、z1およびz2の合計を100(モル%)とし、xおよびz1の合計とyおよびz2の合計は実質的に等しい。)
また、本発明は(A)成分100重量部に対して、(A)成分以外の構造を有する非ハロゲン系難燃剤(C)1〜50重量部を含有せしめてなる上記樹脂組成物、(A)成分100重量部に対して、フッ素系樹脂0.01〜10重量部を含有せしめてなる上記樹脂組成物、
(A)成分100重量部に対して、ヒンダードフェノール系安定剤(D)0.01〜3重量部を含有せしめてなる上記樹脂組成物、
(A)成分100重量部に対して、充填剤5〜140重量部を含有せしめてなる上記樹脂組成物、
(A)成分100重量部に対して、熱可塑性樹脂(E)1〜1000重量部を含有せしめてなる上記樹脂組成物である。
【0010】
さらに本発明は前記リンを含有するポリエステル重合体または上記樹脂組成物からなる成形品、該成形品がフィルムまたは繊維である成形品および前記成形品が電気・電子機器部品、自動車部品または機械部品である成形品である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0012】
本発明のリンを含有するポリエステル重合体とは、下記一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位およびリン含有単位を含有してなるポリエステル重合体であって、リン含有単位が下記一般式(3)、(4)で表される繰り返し単位から選ばれる一種以上であるポリエステル重合体である。
【0013】
なお、下記一般式(1)〜(4)の繰返し単位は実質的にエステル結合で結合されており、共重合体のシーケンス分布は、交互、ブロック、ランダムのいずれでもよい。
【0014】
【化7】
(ただし上記式R1 はハロゲンを含有しない二価の有機残基を表す。またAr1 はハロゲンを含有しない二価の芳香族残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されても良い。またR2 、R3 、R4 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されていてもよい。またx、y、zは各繰り返し単位のポリマー中のモル%を表す。x、y、z1およびz2の合計を100(モル%)とし、xおよびz1の合計とyおよびz2の合計は実質的に等しい。)
前記式(1)中Ar1 は、ハロゲンを含有しない二価の芳香族残基あるいは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された芳香族残基を表す。具体例としては、例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、メシチレン、ナフチレン、インデニレン、アントリレンから選ばれる1種または2種以上の混合物などが挙げられるが、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、ナフチレンなどが好ましく、特にフェニレンが好ましい。
【0015】
また上記式(2)中R1 は、ハロゲンを含有しない二価の有機残基あるいは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された有機残基を表す。具体例としては、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレン、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、メシチレン、ナフチレン、インデニレン、アントリレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレンなどが挙げられるが、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレン、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレンなどが好ましく、特にエチレン、テトラメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレンが好ましい。
【0016】
また上記式(3)、(4)中、R2 、R3 、R4 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基あるいは炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された有機残基を表す。その具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソーブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル、インデニル、アントリルなどが挙げられるが、メチル、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、ナフチルなどが好ましく、特にメチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、フェニルなどが好ましい。
【0017】
本発明で使用される上記式(3)で表される繰り返し単位は、さらに式(5)で表される繰り返し単位であることが好ましく、上記式(4)で表される繰り返し単位はさらに式(6)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0018】
【化8】
(ただし式中R3 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されていてもよい。またx、y、zは各繰り返し単位のポリマー中のモル%を表す。x、y、z1およびz2の合計を100(モル%)とし、xおよびz1の合計とyおよびz2の合計は実質的に等しい。)
このような繰り返し単位としては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
【化9】
【化10】
このような繰り返し単位のうち、特に下記一般式で表される繰り返し単位から選ばれる1種または2種以上を共重合成分として含むリンを分子中に含有するポリエステルが難燃性、耐加水分解性、経済性の面から好ましく使用される。
【0020】
【化11】
上記式(1)、(2)、(3)、(4)中、x、y、z1、z2は各繰り返し単位のモル%を表す。x、y、z1およびz2の合計は100(モル%)とし、xおよびz1の合計とyおよびz2の合計は実質的に等しい。
【0021】
ここでx、y、z1、z2の関係は、得られるリンを含有するポリエステルの難燃性および耐加水分解性の面から0<(z1+z2)/(x+y+z1+z2)≦0.5であり、好ましくは0<(z1+z2)/(x+y+z1+z2)≦0.3、特に好ましくは0<(z1+z2)/(x+y+z1+z2))≦0.2である。
【0022】
上記式(1)および(2)で表される繰り返し単位に、上記特定のリンを含有するポリエステルは、下記一般式(23)で表されるジカルボン酸またはその誘導体と下記一般式(24)で表されるジオールまたはその誘導体とを適当な触媒の存在下あるいは不存在下、エステル交換反応させ、その後、下記一般式(25)で表されるリン含有ジカルボン酸またはその誘導体および(26)で表されるリン含有ジオールまたはその誘導体から選ばれる1種または2種以上のリン含有モノマーを添加し、その後公知の触媒存在下重縮合させることにより製造することができる。この重合方法により合成される共重合体のシーケンス分布は、重合温度、重合時間およびモノマーの添加方法により異なり、これらの条件を適宜選択することにより交互、ランダム、ブロックなど、所望のポリエステルを得ることができる。なお下記一般式(23)で表されるジカルボン酸はアルコールとのエステル交換反応により得られるアルキルエステル化されたジカルボン酸であってもよい。
【0023】
【化12】
(ただし上記式R1 はハロゲンを含有しない二価の有機残基を表す。またAr1 はハロゲンを含有しない二価の芳香族残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されても良い。またR2 、R3 、R4 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されていてもよい。また−COOH、−OH基はエステル化されていてもよい。)
前記式(23)中Ar1 は、ハロゲンを含有しない二価の芳香族残基あるいは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された芳香族残基を表す。具体例としては、例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、メシチレン、ナフチレン、インデニレン、アントリレンから選ばれる1種または2種以上の混合物などが挙げられるが、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、ナフチレンなどが好ましく、特にフェニレンが好ましい。
【0024】
また上記式(24)中R1 は、ハロゲンを含有しない二価の有機残基あるいはハロ炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された有機残基を表す。具体例としては、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレン、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレン、メシチレン、ナフチレン、インデニレン、アントリレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレンなどが挙げられるが、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレン、フェニレン、トリレン、キシリレン、クメニレンなどが好ましく、特にエチレン、テトラメチレン、シクロヘキセン−1,4−ジメチレンが好ましい。
【0025】
また上記式(25)、(26)中、R2 、R3 、R4 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基あるいは炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換された有機残基を表す。その具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル、インデニル、アントリルなどが挙げられるが、メチル、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、ナフチルなどが好ましく、特にメチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、フェニルなどが好ましい。
【0026】
本発明で使用される上記一般式(25)で表されるリン含有ジカルボン酸は式(27)で表されるリン含有ジカルボン酸であることが好ましく、上記一般式(26)で表されるリン含有ジオールは、さらに式(28)で表されるリン含有ジオールであることが好ましい。
【0027】
【化13】
(ただし式中R3 、R5 はハロゲンを含有しない一価の有機残基を表し、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基で置換されていてもよい。また−COOH、−OH基はエステル化されていてもよい。)
このようなリン含有ジカルボン酸、リン含有ジオールとしては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
【化14】
【化15】
このようなリン含有ジカルボン酸、リン含有ジオールのうち、特に下記一般式で表されるリン含有ジカルボン酸、リン含有ジオールから選ばれる1種または2種以上を共重合して得られるリンを分子中に含有するポリエステルが難燃性、耐加水分解性および経済性の面から好ましく使用される。
【0029】
【化16】
本発明のリンを含有するポリエステル重合体は数平均分子量(Mn)が500以上であり、なかでも1000以上、特に5000以上であることが好ましい。上限に特に制限はないが、通常、1,000,000以下、なかでも800,000以下、特に500,000以下であることが好ましい。かかる数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリメタクリル酸メチルにより換算することにより測定した値である。
【0030】
上記本発明のリンを含有するポリエステル重合体の数平均分子量(Mn)は使用目的に応じ、リンを含有するポリエステルの分子量を使い分けることが好ましい。
【0031】
例えば、本発明のリンを含有するポリエステル重合体をマトリックス樹脂として使用する場合、得られるポリマーの機械特性の面、成形性の面から数平均分子量は1万以上が好ましく、さらに2万以上のものが好ましく用いられる。上限に特に制限はないが、通常、1,000,000以下、なかでも800,000以下、特に500,000以下であることが好ましい。
【0032】
また本発明のリンを含有するポリエステル重合体以外の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とし、本発明のリンを含有するポリエステルを難燃剤として使用する場合、得られる樹脂組成物の難燃性、マトリックス樹脂との相溶性の面から数平均分子量は500以上であり、好ましくは1000以上、さらに5000以上のものが好ましく用いられる。上限に特に制限はないが、通常、1,000,000以下、なかでも800,000以下、特に500,000以下であることが好ましい。
【0033】
上記リンを含有するポリエステル重合体(A)は、それを含有せしめた樹脂組成物とすることができる。かかる樹脂組成物における(A)成分以外の成分としては、特に制限はないが、例えばトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩、(A)成分以外の構造を有する非ハロゲン系難燃剤、フッ素系樹脂、ヒンダードフェノール系安定剤、充填剤、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0034】
本発明の樹脂組成物においては、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩を含有せしめることにより、リンを含有するポリエステルにさらに高度な難燃性を付与することができ、さらに耐加水分解性が向上することができる。
【0035】
上記シアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩とは、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物で表わされる化合物との塩であり、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する塩である。トリアジン系化合物のうち、シアヌール酸またはイソシアヌール酸と塩を形成しないものは除外される。
【0036】
またトリアジン系化合物としては、下記一般式(45)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化17】
(ただし上式においてR6 、R7 、R8 、R9 は同一または相異なる水素アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、または−CONH2 である。また、Rは上式中の−NR6 R7 または−NR8 R9 と同一の基、またはこれらと独立に水素、アリール基、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、−NH2 、または−CONH2 から選ばれた基である。)
前記一般式(45)においてR6 、R7 、R8 、R9 は同一または相異なる水素、アリール基、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、または−CONH2 である。ここでアリール基としては炭素数6〜15のもの、アルキル基としては炭素数1〜10のもの、アラルキル基としては炭素数7〜16のもの、シクロアルキル基としては4〜15のものが好ましい。また、Rは上式中の−NR6 R7 または−NR8 R9 と同一の基、またはこれらと独立に水素、アリール基、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、−NH2 、または−CONH2 から選ばれた基であり、ここでアリール基としては炭素数6〜15のもの、アルキル基としては炭素数1〜10のもの、アラルキル基としては炭素数7〜16のもの、シクロアルキル基としては4〜15のものが好ましい。
【0038】
R6 、R7 、R8 、R9 の具体的な例としては水素、フェニル基、p−トルイル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、シクロイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−メチル−1−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、4−メチル−1−シクロヘキシル基、アミド基などが挙げられるが、中でも水素、フェニル基、メチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、アミド基が好ましい。
【0039】
また、Rの具体的な例としてはアミノ基、アミド基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノ(ヒドロキシメチル)アミノ基、ジ(ヒドロキシメチル)アミノ基、モノ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(メトキシメチル)アミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、水素、フェニル基、p−トルイル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ベンジル基、シクロイソプロピル、n−ペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−メチル−1−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、4−メチル−1−シクロヘキシル基などが挙げられるが、中でも水素、アミノ基、アミド基、メチル基、モノ(ヒドロキシメチル)アミノ基、ジ(ヒドロキシメチル)アミノ基、モノ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(メトキシメチル)アミノ基、フェニル基、ベンジル基が好ましい。
【0040】
前記一般式(45)で表わされる化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩のうち、特に好ましい例としてはメラミン、モノ(ヒドロキシメチル)メラミン、ジ(ヒドロキシメチル)メラミン、トリ(ヒドロキシメチル)メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2−アミド−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンの塩が挙げられ、とりわけメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンの塩が好ましい。
【0041】
前記一般式(45)で表わされる化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩は、一般式(45)で表わされる化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとなし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥して得られる粉末であり、単なる混合物とは異なる。この塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応の(45)式で表わされる化合物ないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、この塩の形態としては特に制限はないが、できる限り微細な粉末として得られたものを用いるのが、本発明の組成物から得られる成形品の機械的強度や表面性の点から好ましく、樹脂に配合する前の平均粒径が100μm以下のものが特に好ましい。また、上記塩の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤を併用してもかまわない。
【0042】
上記塩の使用量はリンを含有するポリエステル重合体(A)に対して1〜100重量部、なかでも2〜80重量部、特には3〜70重量部であることが、難燃性の向上効果、成形品の機械的物性や表面外観の観点から好ましい。
【0043】
またリンを含有するポリエステル重合体を含有せしめてなる樹脂組成物に非ハロゲン系難燃剤(C)を添加することにより、リンを含有するポリエステルの共重合量や(B)シアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩を減量させることができる。
【0044】
このような非ハロゲン系難燃剤としては、ハロゲンを含有しない難燃剤であれば特に制限はないが、好ましくは分子量が300以上のリン系難燃剤、さらに好ましくは、下記式(46)で表される構造を有するリン系難燃剤が好ましい。
【0045】
【化18】
(ただし上記式R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。またAr2 、Ar3 、Ar4 、Ar5 は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。また、Yは直接結合、O、S、SO 2 、C(CH 3 ) 2 、CH 2 、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。またnは0以上の整数である。またk、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは0以上2以下の整数である。)
まず前記式(46)で表される難燃剤の構造について説明する。前記式(46)の式中nは0以上の整数である。またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0046】
また前記式(46)の式中、R10〜R17は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、2ーイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、3−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、ネオイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0047】
またAr2 、Ar3 、Ar4 、Ar5 は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などが挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
【0048】
またYは直接結合、O、S、SO2 、C(CH3 )2 、CH2 、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
【0049】
上記非ハロゲン難燃剤の使用量はリンを含有するポリエステル重合体(A)100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。
【0050】
また本発明のリンを含有するポリエステルからなる樹脂組成物はさらにフッ素系樹脂を添加すると燃焼時の液滴の落下(ドリップ)を抑制することができ、高度な難燃性を付与することができる。そのようなフッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。フッ素系樹脂の添加量は機械物性、成形性の面からリンを含有するポリエステル(A)100重量部に対して通常0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部である。
【0051】
また本発明のリンを含有するポリエステルからなる樹脂組成物は各種熱可塑性樹脂をブレンドすることにより、難燃性が向上するだけでなく、さらに耐加水分解性が向上する。また本発明のリンを含有するポリエステルを難燃剤として、熱可塑性樹脂に配合することにより熱可塑性樹脂に難燃性を付与することができる。
【0052】
またリンを含有するポリエステルからなる樹脂組成物に各種熱可塑性樹脂を配合することにより、機械特性、吸水性を改良することができる。
【0053】
本発明の熱可塑性樹脂(D)とは、加熱すると流動性を示し、これを利用して成形加工できる合成樹脂のことである。したがって架橋構造を有している樹脂であっても、加熱すると流動性を示すものであれば本発明の熱可塑性樹脂と見なすことができる。その具体例としては、例えば、本発明のリンを含有するポリエステル以外のポリエステル、液晶性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体などのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる。また、ポリエステル樹脂の具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの共重合ポリエステル等が挙げられる。さらにこれらのうち機械的性質、成形性などのバランスのとれたポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリエチレンテレフタレート等が特に好ましく使用できる。
【0054】
また熱可塑性樹脂を2種類以上併用する場合、熱可塑性樹脂の組み合わせに特に制限はないが、2種類以上の熱可塑性樹脂の組み合わせの中で、少なくとも1種類以上は850℃における加熱分解残渣量が25wt%以上の樹脂であることが難燃性を高める上で有効である。
【0055】
ここで850℃における加熱分解残渣量は、サンプル量10〜20mgで、TGA(熱重量分析計)を用い、窒素雰囲気下100℃〜850℃まで20℃/分で昇温し、850℃で10分間保持した際の残渣量を表す。
【0056】
850℃における加熱分解残渣量が25wt%以上の樹脂としてはフェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。2種以上の樹脂の配合比率としてはリンを含有するポリエステル(A)100重量部に対して、他の樹脂5〜200重量部が好ましい。
【0057】
また本発明の難燃性樹脂組成物に、更にヒンダードフェノール系の安定剤を併用すると長期間高温にさらされても極めて良好な耐加水分解性が維持されることが見いだされた。このような安定剤としては例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビスもしくはトリス(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、N,N’−トリメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)などが挙げられる。
【0058】
本発明においては、このようなヒンダードフェノール系安定剤を必要に応じて添加することができるが、その際のヒンダードフェノール系安定剤の添加量は通常、リンを含有するポリエステル(A)100重量部に対し0.01〜3重量部、好ましくは0.01〜1重量部、更に好ましくは0.03〜0.5重量部である。
【0059】
さらに、本発明の樹脂組成物に対して本発明の目的を損なわない範囲でリン系、イオウ系などの酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、および染料・顔料を含む着色剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。
【0060】
なお、特に必須ではないが、本発明組成物に対してさらに繊維状、および/または粒状の充填材を添加することにより、強度、剛性、耐熱性などを大幅に向上させることができる。
【0061】
このような充填材の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化アルミニウムなどが挙げられ、なかでもチョップドストランドタイプのガラス繊維が好ましく用いられる。これらの添加量はリンを含有するポリエステル100重量部に対して5〜140重量部が好ましく、特に好ましくは5〜100重量部である。
【0062】
本発明の樹脂組成物は通常公知の方法で製造される。例えば、リンを含有するポリエステル(A)、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)、およびその他の必要な添加剤をエクストルーダーで溶融混合する方法、あるいは粒子状物同士を均一に機械的に混合した後、射出成形機で混合と同時に成形する方法などが挙げられる。
【0063】
また本発明のリンを含有するポリエステル重合体および該ポリエステル重合体を含有せしめてなる樹脂組成物は溶融成形可能であるため押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、例えばフィルム、管、パイプ、ロッド及び繊維や希望する任意の形状と大きさを持った成形品に成形することができる。さらに難燃性および耐加水分解性をいかして、コネクター、リレー、スイッチ、ケース部品、トランス部材、コイルボビン等の電気・電子、機器部品、自動車部品、機械部品、建材など種々の用途に用いることができる。
【0064】
【実施例】
以下実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。ここで部とはすべて重量部をあらわす。各特性の測定方法は以下の通りである。
【0065】
(1)難燃性
ペレットから127mm×12.7mm×0.8mmの短冊状の試験片を作成し、UL94に定められている評価基準に従い難燃性を評価した。
【0066】
難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
【0067】
また、燃焼時にポリマーが滴下する場合をドリップ有り、燃焼時に滴下しない場合をドリップ無しと明記した。
【0068】
(2)耐加水分解性評価
上記方法により製作した試験片をオートクレーブ中、100℃、50時間処理した。処理前後の試験片の数平均分子量(Mn)を後述する方法により測定し、耐加水分解性(%)=処理後のサンプルのMn/処理前のサンプルのMn×100より得られる値を耐加水分解性の指標とした。なおMnは数平均分子量を表す。
【0069】
(3)数平均分子量(Mn)
検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、MODEL510高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。測定条件は、ヘキサフロロイソプロパノール(0.005Nトリフロロ酢酸ナトリウム)を溶離液とし、カラム温度23℃、試料濃度3〜4mg/mlの溶液を0.1ml注入した。カラムはWATERS社のポリスチレン多孔性膨潤ゲルが充填されたウルトラスタイラジェル100Aとウルトラスタイラジェルリニアーを直列に接続し、溶離液0.5ml/min、カラム圧力500psiとした。ポリマー分子量は、標準ポリメタクリル酸メチル(PMMA)による校正曲線と対比して換算した。
【0070】
(4)リン含有ポリエステルのリン共重合量の定量
500MHz 1 H−NMRを用い、重水素化ヘキサフロロイソプロパノールを測定溶媒とし、積算回数5000回、測定温度20℃で1 H−NMRを測定し、得られたスペクトルの面積比から共重合成分のモル%を算出した。
【0071】
(5)各種添加剤
実施例および比較例中で使用される本発明のリンを含有するポリエステル以外の非ハロゲン系難燃剤(C)の略記号、構造は以下の通り。
【0072】
【化19】
また、本実施例で用いたシアヌール酸塩を電子顕微鏡を用いて観察したところ、いずれも平均粒径(観察された分散粒子の任意の100個の平均値)は100μmより小さかった。
【0073】
また本実施例で使用した酸化防止剤とはペンタエリスルチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ガイギー社製”IR−1010”)である。
【0074】
本実施例で使用した熱可塑性樹脂はフェノール樹脂として住友デュレス社製”フェノールノボラック樹脂”PR−53194を用いた。またフェノール樹脂は本来熱硬化性樹脂に分類されるが、加熱すると流動性を示し、熱により溶融するが硬化しないといった点から熱可塑性樹脂と見なす。
【0075】
またPPSは東レ社製”トレリナ”A670X01、PBTは東レ社製”東レPBT”1401−X34を使用した。
【0076】
参考例イ sec−ブチルビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドの合成
3.8Lのステンレス耐圧反応管中に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5gのトルエン600ml溶液を入れ、反応管を窒素置換した後、2−ブテン(112g:2.0mol)とホスフィン(112g:3.0mol)を導入した。反応温度90℃、20分ごとにAIBNのトルエン溶液(5.5g /トルエン350ml)を添加し、100分間反応した。100分後、過剰のホスフィンを回収し、278g(4.8mol)のアリルアルコールとAIBN(0.5g/トルエン50ml)を添加した。反応温度を90℃にし、20分ごとにAIBN(5.5g/トルエン350ml)を添加し、11時間反応した。黄色の液体を回収し、100℃/1.0mmHgで加熱した。残渣を等量のイソプロパノールに溶解させ、30%の過酸化水素で酸化した。引き続き、クロロホルムで希釈し、クロロホルム溶液をろ過した後、エバポレーションによりクロロホルムを除去した。得られた生成物の元素分析値:C:54.1%、H:10.4%、P:14.0%(理論値:C=54.05%、H=10.36、P=13.96%)。収率89%。
【0077】
以上の元素分析結果から下記一般式で表されるsec−ブチルビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドであることが確認できる。この方法により得られた化合物を以下の実施例で使用した。
【0078】
【化20】
参考例ロ イソ−ブチルビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドの合成
2−ブテンの代わりにイソブテンを用いた以外は参考例イと同様にして行った。
【0079】
得られた生成物の元素分析値:C=54.1%、H=10.4%、P=14.0%(理論値:C=54.05%、H=10.36、P=13.96%)
以上の元素分析結果から下記一般式で表されるイソブチルビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドであることが確認できる。
【0080】
【化21】
参考例ハ ビス−(2−カルボキシエチル)−フェニルホスフィンオキシドの合成
1L4口フラスコにN2 導入管、環流冷却管、撹拌機、滴下ロートを取り付け、窒素フロー下、フェニルホスフィン(220g:2.0mol)を300ccのアセトニトリルに溶解し、フラスコ中に導入する。次いで撹拌しながら10NのKOH水溶液45ccを添加し、内温を20℃に保持するように氷浴で冷却した。ついで滴下ロートからアクリロニトリル(220g:4.15mol)を内温を25℃に保持するようにゆっくり添加した。添加後、3時間反応した。反応後、反応溶液を飽和食塩水100ccで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ついでこの溶液を減圧蒸留し(220〜223℃/0.2mmHg)の留分を回収した。回収物をメタノールで再結晶し、ビス−(2−シアノエチル)フェニルホスフィンを得た。これをさらに3倍の酢酸溶液とし、60℃に加熱し溶解させ、30%の過酸化水素水溶液200g(1.60mol)を60℃に保持するようにゆっくりと添加し、次いで75℃で20分、さらに100℃で20分加熱した後、エバポレーションにより溶媒を留去した。ついでメタノール1Lに溶かし、330gのKOH/水300ccを添加し、環流下5時間反応した。溶液を塩酸で中和し、析出した沈殿物をろ過、回収し乾燥した。元素分析結果C=53.1%、H=5.6%、P=11.5%(理論値C=53.34%、H=5.6%、P=11.46%)、収率89.1%以上の元素分析結果から下記一般式で表されるビス−(2−カルボキシエチル)−フェニルホスフィンオキシドであることが確認できる。この方法により得られた化合物を以下の実施例で使用した。
【0081】
【化22】
また上記合成方法においてフェニルホスフィンの代わりにフェニルリン酸ジクロリド、アクリロニトリルの代わりにアクリル酸を用いることによりビス−(2−カルボキシエチル)−フェニルホスフィンオキシドを合成することができる。得られた生成物の元素分析値C:54.1%、H:10.2%、P:14.0%(理論値:C=54.05%、H=10.36、P=13.96%)。収率90%。
【0082】
参考例1〜12、比較例1〜4
リンを分子中に含有する熱可塑性樹脂の製造方法
ジメチルテレフタレート(1倍モル)に対し、1.2倍モルのエチレングリコールあるいはブタンジオールを秤量し、エチレングリコールの場合は触媒として三酸化アンチモン(5×10-2mol%)を、また、ブタンジオールの場合はテトラn−ブチルチタネート(5×10-2mol%)を加え、150℃から250℃でエステル交換させた。その後、参考例イ〜ハで合成したリン化合物を所定量添加し、徐々に昇温しつつ内圧を減じ、最終的に265℃/0.1mmHgで5時間重縮合させることにより、リン含有ポリアルキレンテレフタレートを製造した。また比較例1、3では特開昭50−56488記載の下記一般式で表される2−メチル−2,5−ジオキソ−1−オキサ−2−ホスホランを使用した。
【0083】
【化23】
得られたリン含有ポリエステルについてリン含有共重合成分の共重合性を評価するためポリマー分子量を測定した。また共重合量は1 H−NMRスペクトルより算出した。また耐加水分解性および難燃性を評価した。
【0084】
一連のリン含有ポリアルキレンテレフタレート共重合体の製造結果および評価結果を示す。
【0085】
【表1】
【表2】
参考例1〜6、比較例1ではグリコール成分として、エチレングリコールを用いた。また比較例2では共重合していないPETを用いた。
【0086】
参考例1〜6、比較例1により得られるポリマーはすべて高分子量体であり、また難燃性はリン含有化合物を共重合していないPET(比較例2)に比べ向上する。本発明のリン含有ポリエステル(参考例1〜6)は耐加水分解性に優れるが、比較例1により得られたリン含有ポリエステルは、耐加水分解性が極めて悪いことがわかる。
【0087】
参考例7〜12、比較例3ではグリコール成分として、ブタンジオールを用いた。また比較例4ではリン含有化合物を共重合していないPBTを用いた。
【0088】
参考例7〜12、比較例2により得られるポリマーはすべて高分子量体であり、また難燃性は共重合していないPBT(比較例4)に比べ向上する。ここで本発明のリン含有ポリエステル(参考例7〜12)は耐加水分解性に優れるが、比較例2により得られたリン含有ポリエステルは耐加水分解性が極めて悪いことがわかる。
【0089】
実施例1〜3、比較例5
製造したリンを含有するPET(参考例1、3、5:リン共重合量4.0mol%)にシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)を配合し30mmΦ2軸押し出し機を用いて樹脂温度260℃で溶融押出した。一連の配合処方と結果を表3に示した。
【0090】
【表3】
シアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)を添加した樹脂組成物は、(B)を添加していない参考例1〜6に比べ難燃性が向上し、また(B)を添加することにより耐加水分解性が向上することがわかる。一方比較例5では(B)を添加することにより耐加水分解性がむしろ低下することがわかる。
【0093】
実施例4〜6、比較例6
製造したリンを含有するPET(参考例2、4、6)にシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)、ガラス繊維(GF)、必要に応じテフロン(登録商標)を配合し30mmΦ2軸押し出し機を用いて樹脂温度260℃で溶融押出した。一連の配合処方と結果を表4に示した。
【0094】
【表4】
リン含有PETを使用した実施例4〜6ではシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)やテフロン(登録商標)を配合することによりV−0が得られ、さらに燃焼時の液滴が落下しない、すなわち高度な難燃性が得られることがわかる。一方比較例6のリンを含有するPETでは、本発明のリンを含有するポリエステルに比べ、難燃性の向上効果が小さく、また耐加水分解性に劣ることがわかる。
【0095】
実施例7〜9、比較例7
リンを含有するPBT(参考例8、10、12)にシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)、ガラス繊維(GF)、必要に応じテフロン(登録商標)を配合し30mmΦ2軸押し出し機を用いて樹脂温度260℃で溶融押出した。一連の配合処方と結果を表4に示した。
【0096】
リン含有PBTを使用した実施例7〜9ではシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)やテフロン(登録商標)を配合することによりV−0が得られ、さらに燃焼時の液滴が落下しない、すなわち高度な難燃性が得られることがわかる。一方比較例7のリンを含有するPBTでは、本発明のリンを含有するポリエステルに比べ、難燃性の向上効果が小さく、また耐加水分解性に劣ることがわかる。
【0097】
実施例10〜14
リンを含有するPET(参考例4)にシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)、ガラス繊維(GF)、テフロン(登録商標)および(C)非ハロゲン難燃剤、(D)酸化化防止剤、(E)熱可塑性樹脂を表5に示した配合処方でコンパウンドした。
【0098】
表中の酸化防止剤とはペンタエリスルチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ガイギー社製”IR−1010”)である。
【0099】
また熱可塑性樹脂としてフェノール樹脂、PPSおよびPBTを使用した。
【0100】
【表5】
以上の結果から、(C)非ハロゲン高分子難燃剤、(D)酸化防止剤、(E)熱可塑性樹脂を配合することにより、シアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)を減量しても、優れた難燃性を付与でき、また耐加水分解性ができることが向上することがわかる。
【0101】
実施例15〜20
リンを含有するPBT(参考例8)にシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)、ガラス繊維(GF)、テフロン(登録商標)および(C)非ハロゲン難燃剤、(D)酸化防止剤、(E)熱可塑性樹脂を表5に示した配合処方でコンパウンドした。
【0102】
以上の結果から、(C)非ハロゲン高分子難燃剤、(D)酸化防止剤、(E)熱可塑性樹脂を配合することにより、シアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩(B)を減量しても、優れた難燃性を付与でき、耐加水分解性が向上することがわかる。
【0103】
本発明のリンを含有するポリエステルにシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩を配合した樹脂組成物は、高度な難燃性を有すばかりでなく、耐加水分解性にも優れ、繊維、フィルムのみならず、コネクター、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビン等の電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品に好適な難燃性樹脂組成物として使用することができる。
Claims (13)
- (A)下記一般式(1)、(2)で表される繰り返し単位およびリン含有単位を含有してなるポリエステル重合体であって、リン含有単位が下記一般式(3)、(4)で表される繰り返し単位から選ばれる一種以上であり、数平均分子量が500以上であるリンを含有するポリエステル重合体100重量部に対して、(B)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸からなる塩1〜100重量部を含有せしめてなる樹脂組成物。
- 一般式(1)、(2)および(3)、(4)で表される繰り返し単位式中、x、y、z1、z2の関係が、0<(z1+z2)/(x+y+z1+z2)≦0.5である請求項1記載の樹脂組成物。
- (A)成分100重量部に対して、(A)成分以外の構造を有する非ハロゲン系難燃剤(C)1〜50重量部を含有せしめてなる請求項1記載の樹脂組成物。
- 非ハロゲン系難燃剤(C)がリンを含有する難燃剤である請求項5記載の樹脂組成物。
- (A)成分100重量部に対して、熱可塑性樹脂(E)1〜1000重量部を含有せしめてなる請求項1記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(E)がリンを含有するポリエステル以外のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、ポリアミド、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、フェノール樹脂から選ばれる1種または2種以上の混合物である請求項7記載の樹脂組成物。
- 請求項1記載の樹脂組成物からなる成形品。
- 成形品がフィルムである請求項9記載の成形品。
- 成形品が繊維である請求項9記載の成形品。
- 請求項9記載の成形品が電気・電子機器部品である成形品。
- 請求項9記載の成形品が自動車部品である成形品。
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