JP4242019B2 - 導電性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱および電気伝導性粉末、エポキシ樹脂、硬化剤を主要成分とするペースト状熱硬化型樹脂組成物に関し、より詳しくはLED、ICなどの半導体素子の基板への接着、チップ抵抗、チップコンデンサなどのチップ部品のリードフレーム、PWB、FPCなどの基板への接着、金属パッケージ、放熱板の基板への接着などに使用する一液熱硬化型の導電性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に半導体その他の電子部品は基板に接合して、それぞれの機能に応じた電気的、熱的導通性などが計られる。従来このような接合には、AuとSiの結合を利用するAu−Si共晶法や各種のハンダを用いるハンダ接合法を用いるのが主流であった。しかし、Au−Si共晶法は、Auが高価であり、また半導体などに悪影響がある熱応力の緩和性に乏しく、またハンダ接合法は、フラックス中の不純物による腐食断線を生じ易く、耐熱特性が低い上に作業温度が比較的高温であるなどの欠点がある。
【0003】
このため近年では、熱硬化型の導電性樹脂組成物からなるペーストが用いられるようになってきた。この種の樹脂組成物においては、従来フェノール樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、変性アクリル樹脂などに金属または金属酸化物を主体とする熱伝導性と電気伝導性を有する粉末充填材を加えたものが一般的であるが、特に耐熱性、耐湿性、耐電気特性、接合強度、硬化特性の点で優れたエポキシ樹脂を用いた樹脂組成物が多用されている。
【0004】
この種の樹脂組成物は、作業性の点から組成物中に既に硬化剤や硬化促進剤を含ませた一液熱硬化型樹脂組成物の形態で供給される場合が多く、これらの硬化剤や硬化促進剤は、潜触媒の形態を採っており、一般的な加熱や電子線の併用などにより速やかに硬化反応を生じさせるために、前記組成物中に混合して硬化作用を行わせる時以外は室温よりも低い温度で保管されている。
【0005】
一方において、半導体部品やチップなどの電子部品は、近年小型化、高性能化が進み、これに伴い実装に際しての高密度化、高信頼性が要求されるようになり、実装に際しての高密度化、高信頼性および低コスト化を計ることが重要な課題となってきた。特にLED、コンデンサ、抵抗体に代表されるチップ部品は、ICやLSIなどのチップに比べて大きさが10分の1乃至100分の1と極めて小さいこと、またチップの表面や端面により一層の電気的導通を計る必要があることから導電性樹脂ペーストには特定の高い導電率が要求されている。
【0006】
しかしながら、前記した従来の導電性樹脂ペーストは、接着性、耐熱性などは優れているものの、保存安定性に欠け、また接着に際しての短時間接着性に乏しいため高速生産性への対応が十分でなかった。したがって短時間での硬化接着を行なおうとすると硬化温度を高くせざるを得ず、導電性充填材の表面において有機物の酸化が生じたり、樹脂および潜触媒の熱分解ガスの発生などにより電気導通性や硬化後の特性の安定性について必ずしも満足できる結果が得られなかった。さらに反応性を高めて短時間硬化を試みた組成系においては、保存安定性が劣ることが認められており、作業上問題となっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、保存安定性が高く、かつ電子部品の製造、例えば半導体チップおよびチップ部品などを基材に接合する場合に短時間で硬化し、耐熱性、耐湿性、耐ヒートサイクル性、導電性および接合強度の優れた硬化物を与えることのできる導電性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、導電性充填材、エポキシ樹脂、および硬化剤を主成分とし、前記導電性充填材は、銀粉末の表面にステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アジピン酸、コハク酸の単独又は混合体を0.9〜3.0重量%付着された粉末充填材であり、前記硬化剤はGPC(ゲル浸透クロマトグラフ)によるポリスチレン換算重量平均分子量が400〜2000であるフェノールノボラック系硬化剤であり、また前記エポキシ樹脂:硬化剤の重量割合が100:45〜63で、且つ前記導電性充填材:(エポキシ樹脂+硬化剤)の含有割合が重量比で90〜55:10〜45であることを特徴とする導電性樹脂組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記した本発明においては、導電性樹脂組成物は、エポキシ樹脂および硬化剤をバインダーとし導電性粉末充填材を該バインダー中に分散させたペーストの形態で用いられる。本発明において使用される導電性粉末充填材はペースト組成物中の他の成分と反応せず、安定した熱伝導性、電気伝導性が確保されるものであれば特に限定されない。これらの粉末としては、例えばニッケル粉、金粉、銀粉、銅粉などが挙げられるが、特に熱、電気的特性、耐酸化性に優れ、比較的容易に入手できる点で銀粉末が推奨される。これらの導電性粉末充填材中には、ハロゲンイオン、金属イオンなどのイオン性不純物の含有が10ppm以下であることが望ましい。また粉末の粒径および形状は、粒径が0.1〜20μmの鱗片状、また粒径が0.1〜5μmの球状であることが好ましく、これらの粉末は適宜混合された状態であっても差支えない。勿論これらの粉末は種類、比重、比表面積、形状などにより充填量は自ずと変わってくるので、その添加量の範囲は実験的に定められ、本発明の目的を達成し得る範囲内であれば特に限定はない。
【0010】
また導電性粉末充填材は、バインダー中での凝集防止、見掛比重の低減、ペースト硬化時における配向性などを考慮して表面にステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アジピン酸、コハク酸(以下、これらを硬脂酸と称す)を単独又は混合体でコーティングする。
粉末表面へのコーティング量は、エポキシ樹脂及び硬化剤が本発明範囲内の場合においては、短時間硬化性に寄与するには粉末重量に対して3重量%以下であることが必要であって、特に0.9〜3.0重量%の範囲において顕著な短時間硬化性を示し、これを超えると短時間硬化性が低下し、また電気的導通性に支障をきたす。
【0011】
導電性粉末表面への硬脂酸のコーティングは、撹拌混合機などを使用して前記硬脂酸の微粉末を導電性粉末と撹拌混合することにより行ってもよく、同様の硬脂酸微粉末をホルマリン、エーテルなどの溶媒中に分散させておいて、これを導電性粉末に付着させ加温真空中で撹拌することにより行ってもよく、またステアリン酸エチル、オレイン酸エチルなどのエステル中に導電性粉末を分散させた後、加熱処理することによって行ってもよい。
【0012】
本発明の導電性樹脂組成物においてバインダー成分の一成分として用いられるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するもの、例えばビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシンなどの多価フェノールまたはグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られたポリグリシジルエーテル、あるいはpーオキシ安息香酸、βーオキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られたグリシジルエーテルエステル、あるいはフタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル、さらにはノボラック型エポキシやエポキシ化ポリオレフィンなどが挙げられる。そしてこれらは、単独で用いることもまた組み合わせて用いることもできる。
【0013】
また本発明においてバインダーの他の一成分として用いられるフェノールノボラック系硬化剤は、例えばフェノール類とアルデヒド類との縮合反応による生成物が挙げられる。縮合反応に使用されるフェノール類の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトールなどの1価のフェノール類、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、クロログルシノール、ピロガロールなどの多価フェノール類などが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよく、また組み合わせて用いてもよい。また縮合反応に使用されるアルデヒド類の具体例としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、グリオキサールなどが挙げられる。そしてこれらの化合物を用いた縮合反応は常法により行うことができる。
【0014】
本発明におけるフェノールノボラック系硬化剤の分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフ)で測定し、ポリスチレン換算重量平均分子量で400〜2000の範囲とするのが適当である。平均分子量が2000を超えると導電性樹脂ペーストの塗布性が低下するばかりでなく、硬化物が脆硬になりチップの剥離や亀裂を発生し易くなる。一方平均分子量が400未満であるときは、接着性や硬化物の耐熱性が低下するので好ましくない。
【0015】
このフェノールノボラック系硬化剤の分子量の調整は、反応に与かるフェノール類化合物に対するアルデヒド類やケトン類のモル比を調整することで容易に行うことができる。前記ポリスチレン換算重量平均分子量で400〜2000の範囲のフェノールノボラック系硬化剤を合成するためには、例えばm−クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂硬化剤の場合、クレゾールに対するアルデヒドのモル比を0.05〜0.65に設定して縮合反応を行うことにより所定の分子量範囲のものを得ることができる。また縮合反応を行った後、残留モノマーを除去することがより好ましい。
【0016】
縮合反応で得られた生成物は、例えばアトマイザーなどで粉砕し粉末化して本発明のフェノールノボラック系硬化剤として使用される。その使用量はエポキシ樹脂100重量部に対し45〜65重量部とすることが必要である。この範囲を逸脱するときは接着に際して得られた硬化物における密着性、耐熱性、耐湿性などの諸特性が低下する。
【0017】
本発明において、硬化剤を上記したものに限定した理由は、本発明の硬化剤は樹脂の硬化作用を促進するのみならず、先に述べたように導電性粉末充填材を硬脂酸によりコーティングした場合に、硬化後の粉末表面のコーティングの酸化を抑制し高い電気伝導性を維持することができるからである。
【0018】
なお、上記したような酸化防止の目的で一般的に用いられるものとして、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどのモノフェノール系、2−2′−メチレンビス−4−メチル−6−t−ブチルフェノールなどのビスフェノール系、1,1,3−トリス−2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニルブタンなどの高分子型フェノール系、トリフェニルフォスファイトなどのリン系、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオーネなどの硫黄系の酸化防止剤などがあるが、従来用いられるこれらの酸化防止剤の使用は、いずれも接着に際しての硬化性を阻害したり硬化物の諸特性に悪影響を及ぼすので望ましくない。したがって本発明の組成に限定することが肝要である。
【0019】
そして本発明においては必要に応じて希釈剤を添加することができる。この場合に用いられる希釈剤としては、エポキシ樹脂と相溶性があり、導電性樹脂ペーストに希釈効果をもたらし硬化後には液体として存在しないものを使用することが好ましい。このような希釈剤のうち、硬化時に硬化剤と反応するものには、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、カルボン酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル、フタル酸グリシジルエステルなどがある。
【0020】
また、希釈剤のうち硬化時に硬化剤と反応せずに飛散するものには、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシジペンタンイソブチレート、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−イソブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、コハク酸ジメチル、グルタミン酸ジメチルなどがある。
【0021】
そして希釈剤の添加は導電性樹脂組成物の粘性を調整するためのものであって、必要最小限に止めるべきである。添加量が多くなるにしたがってアウトガス量が増加し、また硬化後の耐熱性が低下してくる。添加量は全成分の1〜40重量%の範囲が好ましく、これより多くても少なくても作業性、硬化物の諸特性の低下をきたすので望ましくない。
【0022】
本発明の導電性樹脂組成物においては、導電性充填材:バインダー(エポキシ樹脂+硬化剤)の含有割合は、重量比で90〜55:10〜45であることが必要で、これらの含有割合がこの範囲を逸脱した場合には接合に際しての急速硬化性が低下し、また接合の結果得られた硬化物の導電性、接合強度などの特性が劣化してしまう。
【0023】
なお本発明の導電性樹脂組成物においては、保存安定性、硬化性、導電性に悪影響を及ぼさない範囲で、イミダゾール系、アミンアダクト系、尿素系などの硬化促進剤、チタネート系、シラン系などのカップリング剤、酸化ケイ素、アルミナなどの沈降防止剤、アルキド樹脂、セルロ−ズなどのチクソトロフィー調整剤などを添加することもできる。
【0024】
【実施例】
以下に本発明の実施例について述べる。実施例1においては、本発明の導電性樹脂組成物の特性評価を行うために使用される本発明の主要成分中の硬化剤および導電性充填材の合成法または製造法について、また実施例2においては、これらを使用して得られた導電性組成物について比較例とともに説明する。
【0025】
[実施例1]
ノボラック系硬化剤試料の合成
(合成例1)
m−クレゾール270g、1%シュウ酸50gをフラスコに入れ、100℃の油浴中で撹拌しながら37%のホルマリン溶液60gを滴下し、その後2時間さらに加熱撹拌した。その後中和、洗浄、脱水を行い、ノボラック樹脂(硬化剤A1)を得た。該ノボラック樹脂のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約310であった。
【0026】
(合成例2)
m−クレゾール270g、1%シュウ酸50gをフラスコに入れ、100℃の油浴中で撹拌しながら37%ホルマリン水溶液70gを滴下し、その後2時間さらに加熱撹拌した。その後中和、洗浄、脱水を行い、ノボラック樹脂(硬化剤B1)を得た。該ノボラック樹脂のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約870であった。
【0027】
(合成例3)
m−クレゾール230g、4−t−ブチルフェノール50g、トルエン250g、5%シュウ酸30gをフラスコに入れ、100℃の油浴中で撹拌しながら37%ホルマリン水溶液180gを滴下し、その後10時間さらに加熱撹拌した。その後中和、洗浄、脱水を行い、ノボラック樹脂(硬化剤A2)を得た。該ノボラック樹脂のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約2800であった。
【0028】
(合成例4)
m−クレゾール230g、4−t−ブチルフェノール50g、トルエン250g、5%シュウ酸30gをフラスコに入れ、110℃の油浴中で撹拌しながら37%ホルマリン水溶液115gを滴下し、その後10時間さらに加熱撹拌した。その後中和、洗浄、脱水を行い、ノボラック樹脂(硬化剤B2)を得た。このノボラック樹脂のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約1700であった。
【0029】
(合成例5)
m−クレゾール230g、4−t−ブチルフェノール50g、トルエン250g、5%シュウ酸30gをフラスコに入れ、90℃の油浴中で撹拌しながら37%ホルマリン水溶液180gを滴下し、その後10時間さらに加熱撹拌した。その後中和、洗浄、脱水を行い、ノボラック樹脂(硬化剤A3)を得た。該ノボラック樹脂のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約3400であった。
【0030】
(合成例6)
p−クレゾール230g、2,3−キシレノール50g、メチルイソブチルケトン250g、5%シュウ酸30gをフラスコに入れ、90℃の油浴中で撹拌しながら37%ホルマリン水溶液110gを滴下し、その後4時間さらに加熱撹拌した。その後中和、洗浄、脱水を行い、ノボラック樹脂(硬化剤B3)を得た。該ノボラック樹脂のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は約1100であった。
【0031】
得られた硬化剤中A1乃至A3に属するものはGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量が本発明の範囲である400〜2000を逸脱するもの、B1乃至B3は本発明の範囲内にあるものである。
【0032】
導電性充填材(銀粉末)試料の製造
(製造例1)
硝酸銀3400gを純水110mlに溶かした硝酸銀水溶液に濃アンモニア水1300mlを撹拌しながら添加してa液とした。つぎにロジン・無水マレイン酸付加物22gとトリエタノールアミン150gとを混合し、80℃に加熱後室温まで放冷したものをb液とした。上記したa液にb液を撹拌しながら混合した液に、さらに17.5%抱水ヒドラジン溶液2000gを滴下し、銀イオンの還元を行った。ついでこの液にpHが4になるようにギ酸を加え、生成した沈殿物を減圧濾過して得られた濾過物を50〜60℃の純水で洗浄し、さらに水分を濾別した後80℃で乾燥して銀粉末約2100gを得た。得られた銀粉末200gをボールミルに入れ、20時間摩砕した後、これを取り出してさらに純水で洗浄した後、水分を濾別し、80℃で乾燥して平均粒径2μmの燐片状の銀粉末試料(銀粉末a)を得た。
【0033】
(製造例2)
製造例1で得られた銀粉末試料(銀粉末a)200gを10%ステアリン酸アルコール中に拡散させた後、濾過を行ってアルコール分と分離し、製造例1と同様の手順で水洗および真空乾燥して銀粉末試料(銀粉末b)を得た。この銀粉末1.8gを採取し、TG−DTA(示差熱分析機)で300℃に加熱し、TGの減少率からから試料表面に付着したステアリン酸の量を測定したところ、0.9重量%であった。
【0034】
(製造例3)
製造例1で得られた銀粉末試料(銀粉末a)200gを取り、同様に10%オレイン酸アルコール中に拡散させた後、濾過を行ってアルコール分と分離し、同様の手順で水洗および真空乾燥して銀粉末試料(銀粉末c)を得た。この銀粉末1.4gを採取して、TG−DTA(示差熱分析機)で250℃に加熱し、TGの減少率から試料表面に付着したステアリンおよびオレイン酸の量を測定したところ、1.2重量%であった。
【0035】
(製造例4)
製造例1で得られた銀粉末試料(銀粉末a)200gを取り、同様に20%オレイン酸アルコール中に拡散させた後、濾過を行ってアルコール分と分離し、同様の手順で水洗および真空乾燥して銀粉末試料(銀粉末d)を得た。この銀粉末1.5gを採取して、TG−DTA(示差熱分析機)で250℃に加熱し、TGの減少率から試料表面に付着したステアリンおよびオレイン酸の量を測定したところ、3.4重量%であった。
【0036】
[実施例2]
評価試料の作成および評価試験
実施例1で得られた銀粉末を用い、バインダーとして実施例1で得られた硬化剤とビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製:#828)を用い、さらにバインダー中に硬化促進剤として2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物(四国化成社製)を0.2〜1重量%、さらに希釈剤として2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(日本油脂社製)を導電性樹脂組成物(導電性樹脂ペースト)の粘度が20〜30Pa・sになるように全量の5〜20重量%加えて銀粉末とバインダーを撹拌機および3本ロールを使用して混練を行って、下記する表1および表2に示される導電性樹脂ペーストの特性評価用試料を作製した。
なお表中のバインダーの数値は重量部である。
【0037】
上記のようにして得られた導電性樹脂ペースト試料の諸特性を評価するために、急速硬化性、接着強度、抵抗値、耐熱耐湿性、ヒートサイクル性、保存安定性の各項目について次に示す評価試験方法にしたがって特性評価試験を行ない、その判定結果を表1(実施例)および表2(比較例)に併せて示した。判定基準で示される記号「◎」は使用に優れたもの、「○」は汎用の使用に供することができるもの、「△」は限定使用が可能なもの、「×」は使用に好ましくないものを表す。
【0038】
評価試験方法
1.急速硬化性試験
ペースト試料1gを採り、厚さ0.3mmのアルミナ基板上に塗布して200℃で加熱硬化させ、硬化物が25℃でショアーD硬度60以上になるまでの硬化時間で急速硬化性の判定を行った。
判定基準:
◎ :30秒以下。
○ :30秒を超え45秒まで。
△ :45秒を超え60秒まで。
× :60秒以上。
【0039】
2.接着強度試験
Cuリードフレーム上にペースト試料にて半導体チップ(1.5mm角、厚さ0.8mm)を載置し、200℃に40秒間保持して加熱硬化させ、接着強度測定試料とした。これを用いて室温(25℃)においてプッシュプルゲージを用いて水平方向にチップを押圧し、その剥離強度(N:ニュートン)を測定することにより判定を行った。
判定基準:
◎ :50N以上。
○ :40N以上で50N未満。
△ :30N以上で40N未満。
× :30N未満。
【0040】
3.抵抗値(導電性)試験
96%アルミナ基板上にペースト試料を厚み20〜40μmに塗布し、これを接着強度試験と同様の条件で加熱硬化させた後、室温において定電圧電源を用いて面積抵抗値を測定し、面積抵抗値とペースト厚みから比抵抗を求めその良否を判断した。
判定基準:
◎ :2.0(×10−4Ωcm)以下
○ :3.0より大で5.0以下
△ :5.0より大で7.0以下
× :7.0より大
【0041】
4.耐熱耐湿性試験
前記接着強度測定試料と同様の試料を温度85℃、湿度85%の条件で連続500時の温度・湿度履歴を与えた後、接着強度測定のときと同一条件でチップの水平方向剥離試験を行って剥離強度(N:ニュートン)を測定し接着強度試験と同様の基準で耐熱耐湿性を判定した。
【0042】
5.耐ヒートサイクル性試験
前記接着強度測定試料と同様の試料を温度−45℃、+125℃に各10分間保持するヒートサイクルを500回与えた後、接着強度測定のときと同一条件でチップの水平方向剥離試験を行って剥離強度(N:ニュートン)を測定し接着強度試験と同様の基準でヒートサイクル性を判定した。
【0043】
6.保存安定性試験
ペースト試料を−5〜+5℃に温度保持した冷蔵庫中に密閉保管し、所定期間ごとに取り出し、室温(25℃)で粘度の測定を行い、粘度が初期値の2倍になるまでの期間で判定した。
判定基準:
◎ :9か月以上。
○ :6か月以上で9か月未満。
△ :3か月以上で6か月未満。
× :3か月未満。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1および表2から分かる通り、本発明の実施例として示された表1における本発明の成分組成範囲内の組成を有する試料1〜8に係る導電性樹脂組成物は、電子部品接合用ペーストとして十分にその効果を発揮できるものであった。これに対して比較例におけるノボラック硬化剤のポリスチレン換算重量平均分子量が本発明の範囲を外れた硬化剤A1、A2およびA3を使用した試料1〜3、銀粉末に硬脂酸をコーテイングしなかった試料4、銀粉末に硬脂酸を本発明の範囲よりも過剰にコーテイングした試料5、導電性樹脂組成物の銀粉末:バインダーの含有比率が本発明の範囲を外れた試料6および7、導電性充填材の量が本発明の範囲を外れた試料8および9に係る導電性樹脂組成物は、その評価試験結果のいずれかが記号「×」または接着強度値が低く、電子部品接合用ペーストとして使用に供するには問題があった。
【0047】
【発明の効果】
以上述べた通り本発明による導電性樹脂組成物ペーストは、電子部品の製造、例えば半導体チップおよびチップ部品などを基材に接合する場合に、短時間で急速に硬化させることができ、その上保存安定性も良好であり、かつ硬化物は耐熱性、耐湿性、耐ヒートサイクル性、導電性に優れているので、従来この用途に使用されてきた導電性接着材料に比べて一段と優れた効果を有するものといえる。
Claims (1)
- 導電性充填材、エポキシ樹脂、および硬化剤を主成分とし、
前記導電性充填材は銀粉末の表面にステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アジピン酸、コハク酸の単独又は混合体を0.9〜3.0重量%付着された粉末充填材であり、
前記硬化剤はGPC(ゲル浸透クロマトグラフ)によるポリスチレン換算重量平均分子量が400〜2000であるフェノールノボラック系硬化剤であり、また前記エポキシ樹脂:硬化剤の重量割合が100:45〜63で、且つ前記導電性充填材:(エポキシ樹脂+硬化剤)の含有割合が重量比で90〜55:10〜45であることを特徴とする導電性樹脂組成物。
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