JP4238973B2 - ゴム状弾性部品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、互いに対向する二部材間に接着剤を用いることなく挟着使用されるゴム状弾性部品に関するものである。本発明のゴム状弾性部品は例えば、二部材間をシールするガスケット、または二部材間で振動の伝播を抑制する制振ゴムとして用いられる。また本発明のゴム状弾性部品は、ハードディスク装置(HDD)用ゴム状弾性部品としても用いられ、例えばHDD用コネクタガスケットまたはHDD用ボイスコイルモータ(VCM)ダンパー等として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
例えばHDDにおいては、その内部にダストや水分等の異物が侵入することがないように、ゴムまたは樹脂等の弾性体よりなるガスケットがトップカバー部(蓋部)およびコネクタ接続部にそれぞれ取り付けられている。
【0003】
このうち、コネクタ接続部に取り付けられるコネクタガスケットには、ゴム単体でフラット形状のものが多く用いられ、その他には、ガスケットの粘着性を考慮して接触面積を低減させた両面リップ形状のものが用いられている。
【0004】
このコネクタガスケットは、ヘッドからの信号をフレキシブルサーキット(FPC)を経てHDD筐体の外部に取り出す部分のシールに用いられ、通常、FPCに実装されたコネクタを取り囲んで取り付けられ、FPCとアルミダイカスト+カチオン塗装のベース間に挟み込まれて、ねじ等で締め付けられることによりシール作用を発揮する。
【0005】
図20はその一例を示し、ベース51内部の所定箇所にFPC52が取り付けられており、このFPC52をベース51から取り外して裏返した状態が図21に示されている。この図21において、符号53はFPC52の平面中央に実装されたコネクタを示しており、このコネクタ53の周りにベース51とFPC52との間をシールするコネクタガスケット54が取り付けられている。
【0006】
ところで、HDDの製作過程においては、その組立後、HDDを作動させて検査を行ない、その結果次第で度々リワークを行なうというように、組立、検査およびリワークの繰り返しにより製作を行なっているため、リワーク時の作業性が殊のほか重要である。
【0007】
しかしながら、従来は、ガスケット54の粘着性が影響してガスケット54がベース51とFPC52に固着してしまうため、一旦取り付けられたFPC52をベース51から容易に取り外すことができないという作業性の悪化が問題となっている。これは、HDDの作動に伴う温度上昇により、ガスケット54が相手部材(ベース51とFPC52)に粘着してしまうからである。
【0008】
更に、ベース51からFPC52を取り外したときに、ガスケット54がベース51側に付着しているか、それともFPC52側に付着しているかが一定していないため、リワーク時の作業手順を一定化することができない。特にFPC52側に付着してしまった場合には、再度FPC52をベース51に取り付けるときに、ガスケット54をいちいちベース51から剥がしてFPC52側に取り付けるという作業もしなければならない。また、それに伴い、リワーク時全数について、ガスケット54がFPC52あるいはベース51のどちらに付着しているのかをチェックしなければならない。ガスケット54をFPC52あるいはベース51のどちらかに必ず付着させるためにはガスケット54の片面に接着剤を付けて装着すれば良いが、HDDの場合には、接着剤から発生するアウトガスが誤作動発生の原因となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑みて、互いに対向する二部材間に接着剤を用いることなく挟着使用されるゴム状弾性部品において、このゴム状弾性部品が二部材のうちの何れに付着するかを予め特定することができ、もってリワーク作業等の作業性を向上させることが可能なゴム状弾性部品を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるゴム状弾性部品は、互いに対向する二部材間に接着剤を用いることなく挟着使用されるゴム状弾性部品において、前記二部材を離間させたときに当該ゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するように付着部材特定構造を設け、当該ゴム状弾性部品を他方の部材から容易に引き剥がすことができるように当該ゴム状弾性部品の耳部における他方の部材に対する接触面に梨地処理等の表面処理部または凹凸等よりなる離脱容易部を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項2によるゴム状弾性部品は、互いに対向する二部材間に接着剤を用いることなく挟着使用されるゴム状弾性部品において、前記二部材を離間させたときに当該ゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するように当該ゴム状弾性部品における前記一方の部材に対する接触面積を前記他方の部材に対する接触面積よりも小さく形成し、当該ゴム状弾性部品を他方の部材から容易に引き剥がすことができるように当該ゴム状弾性部品の耳部における他方の部材に対する接触面に梨地処理等の表面処理部または凹凸等よりなる離脱容易部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項3によるゴム状弾性部品は、互いに対向する二部材間に接着剤を用いることなく挟着使用されるゴム状弾性部品において、前記二部材を離間させたときに当該ゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するように当該ゴム状弾性部品における前記一方の部材に対する接触面に梨地処理等よりなる表面処理部を設け、当該ゴム状弾性部品を他方の部材から容易に引き剥がすことができるように当該ゴム状弾性部品の耳部における他方の部材に対する接触面に梨地処理等の表面処理部または凹凸等よりなる離脱容易部を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項4によるゴム状弾性部品は、互いに対向する二部材間に接着剤を用いることなく挟着使用されるゴム状弾性部品において、前記二部材を離間させたときに当該ゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するように前記一方の部材に弾性的に押し付けられてバネ効果を発揮する突起状のバネ部を設け、当該ゴム状弾性部品を他方の部材から容易に引き剥がすことができるように当該ゴム状弾性部品の耳部における他方の部材に対する接触面に梨地処理等の表面処理部または凹凸等よりなる離脱容易部を設けたことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項5によるゴム状弾性部品は、上記した請求項1ないし4の何れかに記載したゴム状弾性部品において、当該ゴム状弾性部品が、ガスケットまたはHDD用ガスケットであることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項6によるゴム状弾性部品は、上記した請求項1ないし4の何れかに記載したゴム状弾性部品において、当該ゴム状弾性部品が、制振ゴムまたはHDD用制振ゴムであることを特徴とするものである。
【0017】
更にまた、本発明の請求項7によるゴム状弾性部品は、上記した請求項1ないし4の何れかに記載したゴム状弾性部品において、当該ゴム状弾性部品が、HDD用ゴム状弾性部品であることを特徴とするものである。
【0018】
上記構成を備えた本発明の請求項1によるゴム状弾性部品においては、一方の部材および他方の部材よりなる二部材を互いに離間させたときにゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するようにゴム状弾性部品に付着部材特定構造が設けられているために、ゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着し、よって付着の相手方を特定することが可能となる。
【0019】
この付着部材特定構造の具体例としては、請求項2に記載したように、ゴム状弾性部品における一方の部材に対する接触面積を他方の部材に対する接触面積よりも小さく形成したり、請求項3に記載したように、ゴム状弾性部品における一方の部材に対する接触面に梨地処理等よりなる表面処理部を設けたり、また請求項4に記載したように、一方の部材に弾性的に押し付けられてバネ効果を発揮する突起状のバネ部を設けたりするのが好適である。
【0020】
またこれに加えて、上記構成を備えた本発明の請求項1ないし4によるゴム状弾性部品のように、ゴム状弾性部品の耳部における他方の部材に対する接触面に梨地処理等の表面処理部または凹凸等よりなる離脱容易部を設けると、他方の部材に付着した状態のゴム状弾性部品をこの他方の部材から引き剥がすときに、この引き剥がし作業を容易に行なうことが可能となる。
【0021】
本発明のゴム状弾性部品は例えば、ガスケットまたはHDD用ガスケットであり(請求項5)、制振ゴムまたはHDD用制振ゴムであり(請求項6)、HDD用ゴム状弾性部品である(請求項7)が、HDD関連のものについては、その装着に際して接着剤を用いないためにアウトガス発生による誤作動発生の問題を引き起こすことがない。
【0022】
尚、本件出願には、以下の技術的事項が含まれる。
【0023】
すなわち、上記目的を達成するため、本件出願が提案する一のゴム状弾性部品は以下の内容を備えている。
【0024】
▲1▼ 非粘着性を要する側の接触面積を、粘着性を要する側より小さくすることで片面粘着性、片面非粘着性を有することを特徴とする。
ゴムまたは樹脂等の弾性体は各材料個々の異なる粘着性を有しており、離脱荷重は弾性体の粘着性と接触面積に依存する。そのため、リップ形状のように接触面積が小さい場合は離脱荷重も小さくなり、フラット形状のように接触面積を大きくした場合は離脱荷重も大きくなる。したがって、非粘着性を要する側の接触面積を粘着性を要する側より小さくすることにより、片面粘着性、片面非粘着性を有することが可能となる。
【0025】
▲2▼ 非粘着性を要する側のみ梨地等の表面処理を行なうことで片面粘着性、片面非粘着性を有することを特徴とする。
非粘着性を要する側のみ梨地等の表面処理を行なうことにより、粘着性を要する側と非粘着性を要する側とで接触面積を異ならせ、片面粘着性、片面非粘着性を有することが可能となる。
【0026】
▲3▼ 非粘着性を要する側に、バネ効果を目的とした突起部を設けることで離脱を容易としたことを特徴とする。
ガスケットについては、ガスケット機能を持つリップまたは突起部以外に、バネ効果を目的とした突起を設ける。但し、この突起部の潰し代は、非粘着性を要する側のリップまたは突起部の潰し代より大きく設定する。その突起における反発力でガスケットを持ち上げ、固着された接触部を剥がす方向の力が生じ、離脱を容易とすることが可能となる。
【0027】
▲4▼ 粘着性を要する側に、粘着性を有しかつ離脱が必要なときは離脱容易なよう全体はフラット形状で耳部のみに凹凸を設けたことを特徴とする。
コネクタガスケットには、位置決めおよび取付け時の作業性を考慮し、密封機能部とは別に耳部を設けることが可能である。粘着性を要する側において固着したガスケットを離脱させたい場合、それが容易なよう耳部のみに接触面積を減らすための凹凸または梨地等の表面処理を設けることで、耳部のみ接触面積が少なくなり粘着性を低下させることができる。耳部から剥がすことでせん断方向に離脱でき、離脱が容易となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0029】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係るゴム状弾性部品であるガスケット1の平面を示しており、そのA−A線拡大断面(切断端面)が図2に示されている。
【0030】
当該実施例に係るガスケット1は、上記図20および図21に示したようなHDDにおけるコネクタの周りに取り付けられて、一方の部材であるベースおよび他方の部材であるFPC間をシールするものであって、以下のように構成されている。
【0031】
すなわち先ず、所定のゴムまたは樹脂等よりなるゴム状弾性体によってコネクタの周りを取り囲むエンドレス状のガスケット本体2が設けられており、このガスケット本体2の外周面の周上一箇所に耳部3が一体成形されている。
【0032】
上記ガスケット本体2は、図2に示すように、断面矩形ないし略矩形状(先端接触面7は平面状に形成されている)を呈する基部4の一面に断面三角形ないし略三角形状(先端接触面6は断面円弧形のアール面状に形成されている)を呈するリップ部5を一体成形したものであって、ベースおよびFPCを互いに離間させたときに当該ガスケット1が必ずベースから離れてFPC側に付着するように付着部材特定構造が設けられており、この付着部材特定構造が具体的には、ベースに対するリップ部5側の接触面6の接触幅wがFPCに対する基部4側の接触面7の接触幅wよりも小さく形成されて、ベースに対するリップ部5側の接触面6の接触面積がFPCに対する基部4側の接触面7の接触面積よりも小さく形成されることにより構成されている。したがってこの両接触面6,7の接触幅ないし接触面積の大小による粘着力の大小により、当該ガスケット1は必ずベースから離れてFPC側に付着する。
【0033】
ガスケット1の断面形状は特に限定されず、例えば以下のようなものであっても良い。
【0034】
▲1▼ 図3(A)に示すように、ガスケット本体2の断面形状を台形ないし略台形状とする。ベースに対する幅狭の接触面6およびFPCに対する幅広の接触面7は共に平面状に形成されている。
【0035】
▲2▼ 図3(B)に示すように、ガスケット本体2の断面形状を三角形ないし略三角形状とする。ベースに対する幅狭の接触面6は断面円弧形のアール面状に形成されており、FPCに対する幅広の接触面7は平面状に形成されている。
【0036】
▲3▼ 図3(C)に示すように、ガスケット本体2の断面形状を、断面矩形ないし略矩形状の基部4の一面に断面台形ないし略台形状のリップ部5を一体成形した形状とする。ベースに対するリップ部5側の幅狭の接触面6およびFPCに対する基部4側の幅広の接触面7は共に平面状に形成されている。
【0037】
▲4▼ 図3(D)に示すように、ガスケット本体2の断面形状を、断面三角形ないし略三角形状の基部4の一面に同じく断面三角形ないし略三角形状のリップ部5を一体成形した形状とする。ベースに対するリップ部5側の幅狭の接触面6およびFPCに対する基部4側の幅広の接触面7は共に断面円弧形のアール面状に形成されている。
【0038】
▲5▼ 図4(E)に示すように、ガスケット本体2の断面形状を、断面矩形ないし略矩形状の基部4の一面中央に断面三角形ないし略三角形状のリップ部5を一体成形するとともに、基部4の他面両端部にそれぞれ断面三角形ないし略三角形状の第二リップ部8を一体成形した形状とする。FPCに対する第二リップ部8側の接触面7の接触幅wは二つの第二リップ部8の接触幅w,wの和によって構成されており(w=w+w)、このFPCに対する第二リップ部8側の接触面7の接触幅wよりもベースに対するリップ部5側の接触面6の接触幅wの方が小さく形成されており、FPCに対する第二リップ部8側の接触面7の接触面積よりもベースに対するリップ部5側の接触面6の接触面積の方が小さく形成されている。また、ベースに対するリップ部5側の接触面6およびFPCに対する第二リップ部8側の接触面(各リップ先端)7は共に断面円弧形のアール面状に形成されている。
【0039】
▲6▼ 図4(F)に示すように、ガスケット本体2の断面形状を、断面矩形ないし略矩形状の基部4の一面両端部にそれぞれ断面台形ないし略台形状のリップ部5を一体成形した形状とする。ベースに対するリップ部5側の接触面6の接触幅wは二つのリップ部5の接触幅w,wの和によって構成されており(w=w+w)、このベースに対するリップ部5側の接触面6の接触幅wがFPCに対する基部4側の接触面7の接触幅wよりも小さく形成されており、ベースに対するリップ部5側の接触面6の接触面積がFPCに対する基部4側の接触面7の接触面積よりも小さく形成されている。また、ベースに対するリップ部5側の接触面(各リップ先端)6およびFPCに対する基部4側の接触面7は共に平面状に形成されている。
【0040】
▲7▼ 図4(G)に示すように、ガスケット本体2の断面形状を、断面矩形ないし略矩形状の基部4の一面一端部に断面台形ないし略台形状のリップ部5を一体成形した形状とする。ベースに対するリップ部5側の幅狭の接触面6およびFPCに対する基部4側の幅広の接触面7は共に平面状に形成されている。図5および図6は、この形状の断面を備えたガスケット1の全体を示しており、図示するようにこのガスケット1には、ガスケット本体2および耳部3の他に、当該ガスケット1をコネクタに対して位置決めするための薄板状のフランジ部9がガスケット本体2の内周側に一体成形されている。
【0041】
▲8▼ 図4(H)に示すように、ガスケット本体2の断面形状を、断面矩形ないし略矩形状の基部4の一面一端部に断面半円形ないし略半円形のリップ部5を一体成形した形状とする。ベースに対するリップ部5側の幅狭の接触面6は断面円弧形のアール面状に形成されており、FPCに対する基部4側の幅広の接触面7は平面状に形成されている。
【0042】
第二実施例・・・
図7は、本発明の第二実施例に係るゴム状弾性部品であるガスケット1の断面(切断端面)を示している。
【0043】
当該実施例に係るガスケット1は、上記図20および図21に示したようなHDDにおけるコネクタの周りに取り付けられて、一方の部材であるベースおよび他方の部材であるFPC間をシールするものであって、以下のように構成されている。
【0044】
すなわち先ず、所定のゴムまたは樹脂等よりなるゴム状弾性体によってコネクタの周りを取り囲むエンドレス状のガスケット本体2が設けられており、このガスケット本体2の周上一箇所に耳部(図示せず)が一体成形されている。
【0045】
上記ガスケット本体2は、断面矩形ないし略矩形状(先端接触面7は平面状に形成されている)を呈する基部4の一面に断面三角形ないし略三角形状(先端接触面6は断面円弧形のアール面状に形成されている)を呈するリップ部5を一体成形したものであって、ベースおよびFPCを互いに離間させたときに当該ガスケット1が必ずベースから離れてFPC側に付着するように付着部材特定構造が設けられており、この付着部材特定構造が具体的には、ベースに対するリップ部5側の接触面6に梨地処理等よりなる表面処理部10が設けられることにより構成されている。図では、FPCに対する基部4側の接触面7以外の全面に表面処理部10が設けられている。梨地処理の粗さは、3〜20μmの粗さとし、好ましくは6〜10μmとする。
【0046】
したがって、このようにベース側の接触面6に梨地処理等よりなる表面処理部10が設けられると、ベース側とFPC側とで接触面積の大きさに大小が発生するために、これに伴ってベース側とFPC側とで粘着力の大きさに大小が発生する(ベース側で小、FPC側で大)。したがって当該ガスケット1は必ずベースから離れてFPC側に付着する。
【0047】
ガスケット1の断面形状は特に限定されず、例えば上記図3および図4の各図に示したようなものであっても良い。図8はその一例として、ガスケット本体2の断面形状を台形ないし略台形状とした例を示している。
【0048】
第三実施例・・・
図9は、本発明の第三実施例に係るゴム状弾性部品であるガスケット1の断面(切断端面)を示している。
【0049】
当該実施例に係るガスケット1は、上記図20および図21に示したようなHDDにおけるコネクタの周りに取り付けられて、一方の部材であるベースおよび他方の部材であるFPC間をシールするものであって、以下のように構成されている。
【0050】
すなわち先ず、所定のゴムまたは樹脂等よりなるゴム状弾性体によってコネクタの周りを取り囲むエンドレス状のガスケット本体2が設けられており、このガスケット本体2の周上一箇所に耳部(図示せず)が一体成形されている。
【0051】
上記ガスケット本体2は、断面矩形ないし略矩形状(先端接触面7は平面状に形成されている)を呈する基部4の一面に断面三角形ないし略三角形状(先端接触面6は断面円弧形のアール面状に形成されている)を呈するリップ部5を一体成形したものであって、ベースおよびFPCを互いに離間させたときに当該ガスケット1が必ずベースから離れてFPC側に付着するように付着部材特定構造が設けられており、この付着部材特定構造が具体的には、ベースに弾性的に押し付けられてバネ効果を発揮する突起状のバネ部11がガスケット本体に一体成形されることにより構成されている。バネ部11はリップ部5と同じ側に設けられており、またその断面形状を矩形ないし略矩形状に形成されている(先端面は平面状に形成されている)。
【0052】
したがって、このようにバネ効果を発揮する突起状のバネ部11が設けられると、その弾性によりベース側の接触面6がベースから引き剥がされ、または少なくとも引き剥がされ易くなるために、ベース側とFPC側とで粘着力の大きさに大小が発生する(ベース側で小、FPC側で大)。したがって当該ガスケット1は必ずベースから離れてFPC側に付着する。
【0053】
尚、上記効果を発揮するには、バネ部11の潰し代Tをリップ部5の潰し代Tよりも大きく設定するのが有効である。バネ部11の潰し代Tをリップ部5の潰し代Tよりも大きく設定する場合、一般には図10に示すようにベース12が平面状であるため、バネ部11の高さ寸法がリップ部5の高さ寸法よりも大きく形成されるが、図11に示すようにベース12に段差13等がある場合には、バネ部11の高さ寸法がリップ部5の高さよりも小さく形成されることもある。
【0054】
ガスケット1の断面形状は特に限定されず、例えば以下のようなものであっても良い。
【0055】
( ) 図12に示すように、リップ部5の断面形状を台形ないし略台形状とし、ベースに対するリップ部5側の接触面6を平面状とする。また、バネ部11の高さを確保するために、ガスケット本体の一面に段差14を形成する。
【0056】
( ) 図13に示すように、バネ部11の先端面を断面円弧形のアール面状とする。
【0057】
( ) 図14に示すように、バネ部11の幅寸法をその基端部から先端部へ向けて徐々に小さく形状とする。またその上で、バネ部11の先端面を断面円弧形のアール面状とする。
【0058】
第四実施例・・・
図15および図16は、本発明の第四実施例に係るゴム状弾性部品であるガスケット1を示しており、図15(A)にその平面図、同図(B)に同図(A)におけるD−D線断面図、同図(C)に同図(A)におけるE−E線断面図、図16(D)にその底面図、同図(E)に同図(D)におけるF方向矢視図がそれぞれ示されている。
【0059】
当該実施例に係るガスケット1は、上記図20および図21に示したようなHDDにおけるコネクタの周りに取り付けられて、一方の部材であるベースおよび他方の部材であるFPC間をシールするものであって、以下のように構成されている。
【0060】
すなわち先ず、所定のゴムまたは樹脂等よりなるゴム状弾性体によってコネクタの周りを取り囲むエンドレス状のガスケット本体2が設けられており、このガスケット本体2の外周面の周上二箇所に耳部3が一体成形されている。また、ガスケット本体2の内周面に、当該ガスケット1をコネクタに対して位置決めするための薄板状のフランジ部9が一体成形されており、このフランジ部9の平面内に、当該ガスケット1をベースに対して位置決めするためのリング状のリブ部15が一体成形されている。
【0061】
上記ガスケット本体2は、図15(C)に良く示すように、断面矩形ないし略矩形状(先端接触面7は平面状に形成されている)を呈する基部4の一面外周縁部に断面三角形ないし略三角形状(先端接触面6は断面円弧形のアール面状に形成されている)を呈するリップ部5を一体成形したものであって、ベースおよびFPCを互いに離間させたときに当該ガスケット1が必ずベースから離れてFPC側に付着するように付着部材特定構造が設けられており、この付着部材特定構造が具体的には、上記第一実施例と同様に、ベースに対するリップ部5側の接触面6の接触幅がFPCに対する基部4側の接触面7の接触幅よりも小さく形成され、ベースに対するリップ部5側の接触面6の接触面積がFPCに対する基部4側の接触面7の接触面積よりも小さく形成されることにより構成されている。したがってこの両接触面6,7の接触幅ないし接触面積の大小による粘着力の大小により、当該ガスケット1は必ずベースから離れてFPC側に付着する。
【0062】
上記耳部3は、ガスケット1の裏表誤組付を防ぐためのタブとして設けられている。すなわち、ベースにコネクタを装着する溝(凹部)が設けられており、この溝に対してガスケット1をコネクタと共に組み付けるときにガスケット1を裏表反対に組み付けると、耳部3がベースと干渉して組付を終了し得ないことから誤組付であることを知らしめることができる。この耳部3は、図16(E)に示すようにガスケット1のFPC側接触面7と面一状に設けられているが、図5(C)に示したようにガスケット1の高さ方向(図上左右方向)の中間位置に配置されることもある。
【0063】
また、この耳部3は、ガスケット1をFPCから容易に引き剥がすためのタブとしても設けられている。すなわち、上記したようにリワーク時、FPCをベースから取り外したとき、作業上、ガスケット1はFPC側に付着していなければならないが、ガスケット1自体の不具合でガスケット1の交換が必要になった場合、ガスケット1をFPCから引き剥がすのは、これもまた困難な作業となる。耳部3は、このような場合にガスケット1を容易に引き剥がすために設けられており、この耳部3におけるFPC側接触面16に梨地処理等の表面処理部よりなる離脱容易部17が設けられることにより、ガスケット1をFPC側から引き剥がすときに、その作業を容易化することができる。この離脱容易部17は、梨地処理等の表面処理部の他に、凹部もしくは凸部またはその組み合わせ等であっても良く、単位面積当たりの粘着力がFPC側接触面7よりも小さく設定されていれば良い。
【0064】
上記第一ないし第四実施例で説明した付着部材特定構造は何れも、コネクタガスケット以外の以下の部品に採用することが可能である。
▲1▼HDD用トップカバーガスケット
▲2▼HDD用以外の一般用または特定用途用のガスケット
▲3▼HDD用制振ゴム
▲4▼HDD用以外の一般用または特定用途用の制振ゴム
【0065】
第五実施例・・・
図17および図18は、本発明の第五実施例に係るゴム状弾性部品である制振ゴムの一種としてのVCMダンパー21を示しており、図17にその装着状態の斜視図、図18にその装着状態の断面図がそれぞれ示されている。
【0066】
当該実施例に係るVCMダンパー21は、HDD22の筐体部品であるトップカバー23と、HDD22の内装部品であるVCM24との間に接着剤を用いることなく挟着使用されて、VCM24の作動時に発生する振動を低減させるよう制振作用を奏するものであって、トップカバー23およびVCM24を互いに離間させたとき(トップカバー23を開いたとき)に当該VCMダンパー21が必ずトップカバー23およびVCM24の一方から離れて他方に付着するように(例えばトップカバー23から離れてVCM24に付着するように)、付着部材特定構造が設けられており、この付着部材特定構造が具体的には例えば、VCMダンパー21におけるトップカバー23に対する接触面積をVCM24に対する接触面積よりも小さく形成したり、VCMダンパー21におけるトップカバー23に対する接触面に梨地処理等よりなる表面処理部を設けたり、あるいはトップカバー23に弾性的に押し付けられてバネ効果を発揮する突起状のバネ部を設けたりすることによって構成されている。図19に示すようにVCMダンパー21は一般に平板状に形成されるため、突起状のバネ部25を設ける場合には、これをリブ状に形成するのが好適である。尚、VCM24は、磁気ディスク26へのデータの書込みや呼出しを行なう磁気ヘッド28を備えたアーム27を揺動させるものである。
【0067】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0068】
すなわち、上記構成を備えた本発明の請求項1によるゴム状弾性部品においては、一方の部材および他方の部材よりなる二部材を互いに離間させたときにゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するようにゴム状弾性部品に付着部材特定構造が設けられているために、二部材を分離したときにゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着する。したがって、ゴム状弾性部品の付着の相手方を特定することができ、よってリワーク作業等の作業性ないし作業効率を向上させることができる。
【0069】
また、上記構成を備えた本発明の請求項2によるゴム状弾性部品においては、一方の部材および他方の部材よりなる二部材を互いに離間させたときにゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するようにゴム状弾性部品に付着部材特定構造が設けられ、この付着部材特定構造が当該ゴム状弾性部品における一方の部材に対する接触面積を他方の部材に対する接触面積よりも小さく形成することにより構成されているために、二部材を分離したときにゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着する。したがって、ゴム状弾性部品の付着の相手方を特定することができ、よってリワーク作業等の作業性ないし作業効率を向上させることができる。
【0070】
また、上記構成を備えた本発明の請求項3によるゴム状弾性部品においては、一方の部材および他方の部材よりなる二部材を互いに離間させたときにゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するようにゴム状弾性部品に付着部材特定構造が設けられ、この付着部材特定構造が当該ゴム状弾性部品における一方の部材に対する接触面に梨地処理等よりなる表面処理部を設けることにより構成されているために、二部材を分離したときにゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着する。したがって、ゴム状弾性部品の付着の相手方を特定することができ、よってリワーク作業等の作業性ないし作業効率を向上させることができる。
【0071】
また、上記構成を備えた本発明の請求項4によるゴム状弾性部品においては、一方の部材および他方の部材よりなる二部材を互いに離間させたときにゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するようにゴム状弾性部品に付着部材特定構造が設けられ、この付着部材特定構造が一方の部材に弾性的に押し付けられてバネ効果を発揮する突起状のバネ部を設けることにより構成されているために、二部材を分離したときにゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着する。したがって、ゴム状弾性部品の付着の相手方を特定することができ、よってリワーク作業等の作業性ないし作業効率を向上させることができる。
【0072】
またこれに加えて、上記構成を備えた本発明の請求項1ないし4によるゴム状弾性部品においては、当該ゴム状弾性部品を他方の部材から容易に引き剥がすことができるように当該ゴム状弾性部品の耳部における他方の部材に対する接触面に梨地処理等の表面処理部または凹凸等よりなる離脱容易部が設けられているために、他方の部材に付着した状態のゴム状弾性部品をこの他方の部材から引き剥がすときに、この引き剥がし作業を容易化することができる。したがって、ゴム状弾性部品の付着の相手方を特定できるとともに、このように引き剥がし作業を容易化することができるために、リワーク作業等の作業性ないし作業効率を一層向上させることができる。
【0073】
上記したように、本発明のゴム状弾性部品は例えば、ガスケットまたはHDD用のガスケットとして用いられ(請求項5)、制振ゴムまたはHDD用の制振ゴムとして用いられ(請求項6)、あるいはHDD用のゴム状弾性部品として用いられる(請求項7)が、HDD関連のものについては、その装着に際して接着剤を用いないために、アウトガス発生による誤作動発生の問題を引き起こすことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例に係るガスケットの平面図
【図2】図1におけるA−A線拡大断面図
【図3】(A)(B)(C)(D)ともガスケット断面形状の他の例を示す断面図
【図4】引き続き(E)(F)(G)(H)ともガスケット断面形状の他の例を示す断面図
【図5】図4(G)に示した断面形状のガスケットの詳細図であって、(A)はその平面図、(B)は同図(A)におけるB−B線断面図、(C)は同図(A)におけるC方向矢視図
【図6】引き続き図4(G)に示した断面形状のガスケットの詳細図であって、(D)はその底面図
【図7】本発明の第二実施例に係るガスケットの断面図
【図8】ガスケット断面形状の他の例を示す断面図
【図9】本発明の第三実施例に係るガスケットの断面図
【図10】潰し代の大きさに関する説明図
【図11】同じく潰し代の大きさに関する説明図
【図12】ガスケット断面形状の他の例を示す断面図
【図13】ガスケット断面形状の他の例を示す断面図
【図14】ガスケット断面形状の他の例を示す断面図
【図15】本発明の第四実施例に係るガスケットを示す図であって、同図(A)はその平面図、同図(B)は同図(A)におけるD−D線断面図、同図(C)は同図(A)におけるE−E線断面図、
【図16】引き続き本発明の第四実施例に係るガスケットを示す図であって、同図(D)はその底面図、同図(E)は同図(D)におけるF方向矢視図
【図17】本発明の第五実施例に係るVCMダンパーの装着状態を示す斜視図
【図18】同VCMダンパーの装着状態を示す断面図
【図19】VCMダンパーの他の例を示す斜視図
【図20】HDDの説明図
【図21】FPC、コネクタおよびガスケットの説明図
【符号の説明】
1 ガスケット
2 ガスケット本体
3 耳部
4 基部
5 リップ部
6,7,16 接触面
8 第二リップ部
9 フランジ部
10 表面処理部
11,25 バネ部
12 ベース
13,14 段差
15 リブ部
17 離脱容易部
21 VCMダンパー
22 HDD
23 トップカバー
24 VCM
26 磁気ディスク
27 アーム
28 磁気ヘッド

Claims (7)

  1. 互いに対向する二部材間に接着剤を用いることなく挟着使用されるゴム状弾性部品において、前記二部材を離間させたときに当該ゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するように付着部材特定構造を設け、
    当該ゴム状弾性部品を他方の部材から容易に引き剥がすことができるように当該ゴム状弾性部品の耳部における他方の部材に対する接触面に梨地処理等の表面処理部または凹凸等よりなる離脱容易部を設けたことを特徴とするゴム状弾性部品。
  2. 互いに対向する二部材間に接着剤を用いることなく挟着使用されるゴム状弾性部品において、前記二部材を離間させたときに当該ゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するように当該ゴム状弾性部品における前記一方の部材に対する接触面積を前記他方の部材に対する接触面積よりも小さく形成し、
    当該ゴム状弾性部品を他方の部材から容易に引き剥がすことができるように当該ゴム状弾性部品の耳部における他方の部材に対する接触面に梨地処理等の表面処理部または凹凸等よりなる離脱容易部を設けたことを特徴とするゴム状弾性部品。
  3. 互いに対向する二部材間に接着剤を用いることなく挟着使用されるゴム状弾性部品において、前記二部材を離間させたときに当該ゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するように当該ゴム状弾性部品における前記一方の部材に対する接触面に梨地処理等よりなる表面処理部を設け、
    当該ゴム状弾性部品を他方の部材から容易に引き剥がすことができるように当該ゴム状弾性部品の耳部における他方の部材に対する接触面に梨地処理等の表面処理部または凹凸等よりなる離脱容易部を設けたことを特徴とするゴム状弾性部品。
  4. 互いに対向する二部材間に接着剤を用いることなく挟着使用されるゴム状弾性部品において、前記二部材を離間させたときに当該ゴム状弾性部品が必ず一方の部材から離れて他方の部材に付着するように前記一方の部材に弾性的に押し付けられてバネ効果を発揮する突起状のバネ部を設け、
    当該ゴム状弾性部品を他方の部材から容易に引き剥がすことができるように当該ゴム状弾性部品の耳部における他方の部材に対する接触面に梨地処理等の表面処理部または凹凸等よりなる離脱容易部を設けたことを特徴とするゴム状弾性部品。
  5. 請求項1ないし4の何れかに記載したゴム状弾性部品において、当該ゴム状弾性部品が、ガスケットまたはHDD用ガスケットであることを特徴とするゴム状弾性部品。
  6. 請求項1ないし4の何れかに記載したゴム状弾性部品において、当該ゴム状弾性部品が、制振ゴムまたはHDD用制振ゴムであることを特徴とするゴム状弾性部品。
  7. 請求項1ないし4の何れかに記載したゴム状弾性部品において、当該ゴム状弾性部品が、HDD用ゴム状弾性部品であることを特徴とするゴム状弾性部品。
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