JP4234036B2 - 免震装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、近年においては60mを越えるような高さを有する高層の構造物が増加している。このため、最近では引張力を負担可能なレール支承と積層ゴムとを組み合わせた免震機構が開発され、たとえば100mクラスの高さを有する集合住宅等の高層建築物についても免震構造が適用されるようになっている。(たとえば、特許文献1参照)
しかしながら、引抜力を負担するレール支承部分は、上部レールと下部レールとを接続金物によりジョイントする構成とされ、接続金物の摺動面をベアリング等により形成して摺動(摩擦)抵抗の小さな動きを実現している機械構成部品である。このため、引抜力に対応可能な従来技術の免震装置はコストが高くなり、また、定期的なメンテナンスを必要とする欠点がある。
また、レール支承と積層ゴムとは鉛直剛性が異なるため、これを考慮して荷重分担を考える必要がある。しかし、積層ゴムにはクリープ現象があるため、その設計精度については信頼性の面で問題がある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大きなスライド水平変位を許容するとともに大きな引抜力にも耐えることができ、しかも、低コストでメンテナンスも容易な信頼性の高い免震装置を提供することにある。
本発明に係る免震装置は、構造物と基礎部材との間を連結するように配設され、地震時に引抜力を受ける免震装置において、前記引抜力を受けて圧縮される弾性部材と、前記弾性部材に前記引抜力を伝達する連結部材と、を具備して構成し、前記基礎部材側の連結位置に対し、前記構造物側の連結位置が構造物中心位置方向へオフセットされていることを特徴とするものである。
この場合、建築構造物側と基礎部材との間を連結する好適な連結部材としては、大きな引張剛性を持つが曲げ剛性の小さなワイヤがあり、特に、ワイヤ連結部については、ガイド部材側のワイヤ接触面を曲面とし、大きな曲率半径に沿ってワイヤを変形させることが好ましい。
また、前記基礎部材側の連結位置に対し、前記構造物側の連結位置が構造物中心位置方向へオフセットされていることにより、引抜力が作用しない側への水平スライド時に、弾性体に加わる圧縮力を小さく抑えることが可能になる。
なお地震力が小さくスライド水平変位が小さいうちは、一般に引抜力の発生はなく、大きな地震力が作用しスライド水平変位が大きくなると引抜力が発生する。すなわち、スライド水平変位が小さいうちは、低剛性の弾性部材が変形して容易にスライド可能として免震性能を保持し、スライド水平変位が大きくなって引抜力が生じると高剛性の弾性部材が変形して引抜力に対応可能になる。
また、レール支承のように大きな設置スペースを必要としないため、設計の自由度が増して採用を容易にし、さらに、弾性体のばねには引張力が作用しない簡単な構成のため、設計に対する信頼性が高いという利点を有している。
また、取り外しが可能な構成であるから、メンテナンスが容易になるという利点も有している。
図1に示す免震装置10は、高層住宅等の構造物1とこれを支持する基礎部材2との間に設けた免震層に配設され、両者を連結して地震時に構造物1から引抜力Nを受けるように構成されている。この免震装置10は、引抜力の方向(上下方向上向き)に力を受けて圧縮される弾性部材として皿ばね11を採用し、さらに、皿ばね11が圧縮されることにより基礎部材2に対する構造物1の相対的な水平変位を吸収しながら圧縮量に応じた引抜力Nを基礎部材に伝達する連結部材として直径dのワイヤ12を採用している。
ワイヤ連結部材13内には、ワイヤ12の上端部12aが周知の手法により抜け止め固定されている。また、ワイヤ12の連結部においては、ワイヤ連結部材13の下端面から下方へ向けて、ガイド部材14が突設されている。このガイド部材14には、ワイヤ12を通す貫通孔14aが設けられ、ワイヤ接触面となる貫通孔14aの内周面は、曲率半径をRに設定した曲面とされる。
上述したワイヤ12は、通常耐荷重を考慮して複数本をバランスよく配置した構成とされるが、図2に示す実施例では、6本のワイヤ12が同一円周上に60度ピッチで配置されている。
また、上部規制部材17の貫通孔17aを通るガイドシャフト15は、上部フランジ部15aがワイヤ12で吊下げられるように支持された状態、あるいは、上部フランジ15aが上部規制部材17の上面に載置された状態とされる。このため、常時大荷重が作用するようなことはなく、従って、取り外しが可能なことに加えてグリース切れ等の問題が発生することもないため、メンテナンスは容易である。
地震により、構造物1と基礎部材2との間に生じた水平方向の相対移動Wは、皿ばね11の圧縮変形とワイヤ12が傾斜することにより許容される。この時、ワイヤ12の両端部が曲率半径Rの曲面に形成された貫通孔14aを通っているので、相対移動Wによりワイヤ12が図中に想像線で示すように傾斜する場合には、緩やかな曲線を描いて傾斜するためワイヤ12に応力集中が生じにくい構成となる。
なお、クレーン起伏のシーブ径とワイヤ径との関係に関する本願出願人の長年の経験によれば、曲面の曲率半径Rとワイヤ12の直径dとの比(R/d)が12.5程度に設定されていれば、応力集中によりワイヤ12が切断されるようなことはないという知見を得ている。
この実施形態の免震装置10Aは、皿ばね11と直列に配列されたコイルばね21を備えている。このコイルばね21は、ばね定数を皿ばね11より小さく設定した柔らかい弾性部材(低剛性のばね)とされ、ガイドシャフト15Aに挿入して皿ばね11の下方に配設されている。すなわち、この実施形態の免震装置10Aは、ばね定数の異なる二種類の弾性部材(皿ばね11及びコイルばね21)を引き抜き方向へ直列に配列した構成とされる。
なお、図中の符号22はガイドシャフト15Aにルーズに挿入されて自由にスライドする皿ばね保持部材、23はガイドシャフト15Aと螺合等により一体化されているコイルばね保持部材である。
この実施形態の免震装置10Bは、構造物1及び基礎部材2と連結するガイドシャフト15Bの両端部にユニバーサルジョイント30を介在させて水平方向のスライド変位を吸収するように構成した点が異なっている。なお、図示の例では、ばね定数の異なる皿ばね11及びコイルばね21を直列に配列した構成としてあるが、図1に示したように、皿ばね11のみを設けた構成としてもよい。
なお、このような構成では、ユニバーサルジョイント30及びガイドシャフト15Bが引抜力を基礎部材に伝達する連結部材となる。
このような構成とすれば、引抜力が作用しない側への水平スライド時に、皿ばね等の弾性部材に生じる圧縮力を小さく抑え、水平スライドを容易にして免震性能の低下を抑制できる。
このような構成としても、上記と同様、引抜力が作用しない側への水平スライドを容易にして免震性能低下を抑制できる。
図7は、第1の実施形態に示した免震装置10と、積層ゴム支承40とを組み合わせた構成例を示しており、積層ゴム支承40は、構造物を支持し、地震時には構造物を水平スライドさせて固有周期を長周期化し、ゆっくりした揺れに変えて地震力を低減する。しかし、構造物に生じる転倒モーメントで引抜力が掛かると、これを負担できない。本免震装置10はこの引抜力に対応するものであり、引張力に弱いという積層ゴム支承40の欠点を補った免震装置を安価に提供することができる。
図8は、エンドレスローラ支承の構成例を示す斜視図である。このエンドレスローラ支承50は、ローラ51が露出する面を下向きにして同方向(X軸方向)へ移動可能に並べられた4台の下向きエンドレスローラ52と、ローラ51が露出する面を上向きにして同方向(Y軸方向)へ移動可能に並べられた4台の上向きエンドレスローラ53とにより構成されている。
このように、上述した本発明の免震装置は、積層ゴム支承40やエンドレスローラ支承50と組み合わせた構成を採用することにより、高価で定期的なメンテナンスを必要とするレール支承が不要となる。
なお、積層ゴム支承やエンドレスローラ支承以外にも、摩擦支承や滑り支承など引抜力を負担できない支承と組み合わせる構成としてもよい。
また、上述した本発明の免震装置は、弾性体に引張力が作用しない構成のため、信頼性の高い装置になるという利点もある。
2 基礎部材
3 凹部
10,10A,10B 免震装置
11 皿ばね(弾性部材)
12 ワイヤ(連結部材)
13 ワイヤ連結部材
14 ガイド部材
15,15A,15′,15B ガイドシャフト
16 ナット部材
17 上端規制部材
21 コイルばね
30 ユニバーサルジョイント
40 積層ゴム支承
50 エンドレスローラ支承
Claims (4)
- 構造物と基礎部材との間を連結するように配設され、地震時に引抜力を受ける免震装置において、
前記引抜力を受けて圧縮される弾性部材と、
前記弾性部材に前記引抜力を伝達する連結部材と、を具備して構成し、
前記基礎部材側の連結位置に対し、前記構造物側の連結位置が構造物中心位置方向へオフセットされていることを特徴とする免震装置。 - 前記弾性部材は、ばね定数の異なる複数種が引き抜き方向へ直列に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
- 積層ゴム支承と組み合わせたことを特徴とする請求項1または2に記載の免震装置。
- 背中合わせに直交させたエンドレスローラ支承体と組み合わせたことを特徴とする請求項1または2に記載の免震装置。
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