JP3941959B2 - 免震装置及び免震構造 - Google Patents
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Description
(1)構造が複雑で装置が大掛かりであるため、コスト高となる。したがって、コスト面も考慮すると、一般的な住宅家屋への適用は現実には難しい。
(2)簡易な構成の免震装置としては転がり支承または滑り支承を用いたものが知られているが、このような免震装置は、強風による揺れや日常生活で生じる人為的な揺れなど、微かな振動でも動きやすいため、居住者に不快感を与えるおそれがある。
さらに本発明は、微振動時の誤作動を防止することが可能な免震装置及びこの免震装置を用いた免震構造の提供を目的とする。
前記横揺れ緩衝手段は、前記縦揺れ緩衝手段を構成するスペーサ部材の下端部に一体的に設けられ、横揺れの直接伝達を防止するように、前記縦揺れ緩衝手段と横方向に移動可能な球体と、建物基礎に取り付けられ、球体を載置するすり鉢状の傾斜面を有する皿部材と、を備え、前記補助用縦揺れ緩衝手段は、コイルばねからなり、縦方向の振動の直接伝達を防止すると共に、横方向の変位に対して追従して変形するように該コイルばねの上下端を建物基礎と建物にそれぞれ固定したことを特徴とする。
(1)縦揺れ緩衝手段及び横揺れ緩衝手段がともに簡易な構成であり、かつ、縦揺れ緩衝手段及び横揺れ緩衝手段を一体的に設けるとともに、建物基礎と前記建物との間に縦方向に向けて追加して補助用縦揺れ緩衝手段を介在させたため、縦方向及び横方向の免震性能を損なうことなく、装置及び構造全体の低コスト化を図ることができる。したがって、汎用性に富み、一般住宅への適用が容易に可能となる。
(2)皿部材に、微振動時の球体の移動を拘束する拘束手段を設けることにより、微小な揺れによる横揺れ緩衝手段の誤作動を防止するできるため、居住者に不快感を与えるといったことを回避できる。
免震装置1は、図1に示すように、建物基礎Aと建物Bとの間に設けることにより、建物基礎Aからの振動が建物Bに直接伝達するのを防止するものである。免震装置1は、縦方向の振動の直接伝達を防止する縦揺れ緩衝手段2と、縦揺れ緩衝手段の下側に設けた、横方向の振動の直接伝達を防止する横揺れ緩衝手段3と、を備えている。
縦揺れ緩衝手段2は、縦揺れの直接伝達を防止するように縦方向に伸縮可能な弾性部材としての圧縮コイルばね4と、この圧縮コイルばね4を支持すると共に、圧縮コイルばね4の伸縮に追従して縦方向の長さが可変するガイド部材5と、を備えている。
ガイド部材5は、例えば金属製であり、縦方向に配置する外筒部材51と、この外筒部材51に挿入した内筒部材52と、を有し、内筒部材52が外筒部材51に対して進退することにより、縦方向の長さが可変するように構成する。外筒部材51及び内筒部材52の相反する長さ方向端部にはそれぞれ、取付けフランジ511、521を設ける。
圧縮コイルばね4は、外筒部材51及び内筒部材52の外周に配置する。この際に、取付けフランジ511、521で挟み付けることにより圧縮コイルばね4の脱落を防止するように構成してもよいが、ここでは、外筒部材51の外周に雄ねじ部512を形成し、この雄ねじ部512に調整ナット513をねじ付ける。そして、圧縮コイルばね4を調整ナット513と内筒部材52の取付けフランジ521とで挟み付けるように位置決めする。このような構成により、調整ナット513の雄ねじ部512へのねじ付け位置を調整することで、圧縮コイルばね4の弾性力を自在に設定することができる。ガイド部材5に設けた雄ねじ部512及び調整ナット513は、弾性力調整手段を構成する。
横揺れ緩衝手段3は、横揺れの直接伝達を防止するように、縦揺れ緩衝手段2と横方向に一体移動可能な球体6と、この球体6を載置するすり鉢状の傾斜面71を有する皿部材7と、を備えている。球体6及び皿部材7は、例えば金属製とすることができる。
球体6は、例えば、縦揺れ緩衝手段2の下端部、すなわち内筒部材52の取付けフランジ521に一体的に設けた環状または筒状の軸受け61を介して回転移動可能に設ける。この場合には、軸受け61の開口端部外周に、軸受け61の変形を防止するための補強フランジ62を一体的に設けることが好ましい。
なお、球体6は、回転移動に代えて、滑り移動可能に縦揺れ緩衝手段2の下端部に一体的に設けてもよい。
皿部材7の傾斜面71の中央部には、球体6を嵌まり込ませて位置決めする凹部72を形成する。凹部72は、微振動時の球体6の移動を防止する拘束手段として機能する。凹部72は、例えば、球体6が、この球体6自体の直径に対して6乃至13%の深さまで収まるように(具体例として、球体6の直径を80mmとした場合にはほぼ5乃至10mmの深さまで収まるように)形成することができる。球体6の凹部72への収容深さが、球体6の直径の6%未満であると、微振動でも球体6が外れて動いてしまい、十分な拘束効果が得られないおそれがあり、球体6の直径の13%を超えると、大きな振動時にも球体6が移動できずに十分な緩衝効果が得られないおそれがあるためである。凹部72は、嵌まり込んだ球体6にがたつきが生じないように、例えば、球体6の曲率とほぼ等しい、または球体6の曲率よりも若干大きい曲率を有して形成する。
免震装置1を住宅家屋等の建物に設置するには、皿部材7を建物基礎Aに取り付けると共に、縦揺れ緩衝手段2を建物Bに取り付ける。より具体的には、例えば、皿部材7の裏面(傾斜面71と反対側の面)または外周に設けたL字状のアンカー8によりコンクリート製の建物基礎A上に取り付け、縦揺れ緩衝手段2の外筒部材51の取付けフランジ511を、溶接やボルト(図示せず)等で建物Bの底部に設けた鉄骨に取り付ける。これにより、免震装置1を介して建物Bが建物基礎A上に支持されて免震構造が構成される。
免震装置1は、例えば所定の間隔を設けて複数設置することが好ましい。
なお、免震装置1の設置にあたっては、上下反対に構成してもよい。すなわち、皿部材7を建物Bに取り付け、縦揺れ緩衝手段2を建物基礎Aに取り付けてもよい。
縦揺れ緩衝手段2は、図2に示すように、振動時に内筒部材52が外筒部材51に対して進退するとともに、圧縮コイルばね4が弾性変形して伸縮することにより、建物Bに縦方向の振動が直接伝達するのを防止する。なお、この際に、板ばね53も追従して弾性変形する。
横揺れ緩衝手段3は、図3に示すように、振動時に球体6が、凹部72から外れ、回転して皿部材7の傾斜面71上を移動することにより、建物Bに横方向の振動が直接伝達するのを防止する。皿部材7の傾斜面71をすり鉢状に形成してあるため、振動が治まると球体6が皿部材7の中央位置に戻って凹部72に再び嵌まり込む。
また、微振動時には、球体6が、嵌まり込んだ凹部72から外れないため、拘束されることとなる。
免震構造は、免震装置1のほかに、補助用縦揺れ緩衝手段としての補助用弾性部材9を建物基礎Aと建物Bとの間に追加して介在させて構成してもよい。補助用弾性部材9は、縦方向に配置する弾性部材本体としてのコイルばね本体91を有し、コイルばね本体91の縦方向両端部に取付け部材92をそれぞれ設けて構成する。取付け部材92は、コイルばね本体91内に挿入した筒状部921と、それぞれの筒状部921の異なる縦方向端部に設けた取付鍔部922とから構成する。コイルばね本体91は、縦方向両端部をそれぞれ、溶接等により取付鍔部922に固定することが好ましい。
補助用弾性部材9は、取付鍔部922をそれぞれ、建物基礎A及び建物Bに取り付けて、建物基礎Aと建物Bとの間に介在させる。より具体的には、一方の取付鍔部922をケミカルアンカー(図示せず)等によって建物基礎A上に取り付け、他方の取付鍔部922を溶接やボルト(図示せず)等によって建物Bの底部に設けた鉄骨に取り付ける。
補助用弾性部材9は、弾性伸縮して縦方向の振動の直接伝達を防止すると共に、横方向の変位に対しても追従するように変形できるため、横方向の振動の直接伝達防止を補助する。このような簡易な構成の補助用弾性部材9を用いることにより、免震装置1の設置個数を少なく抑えることができるため、免震構造全体のさらなる低コスト化を図ることが可能となる。
2 縦揺れ緩衝手段
3 横揺れ緩衝手段
4 圧縮コイルばね(弾性部材)
5 ガイド部材
6 球体
7 皿部材
9 補助用弾性部材(補助用縦揺れ緩衝手段)
53 板ばね(規制用弾性部材)
71 傾斜面
72 凹部(拘束手段)
A 建物基礎
B 建物
Claims (6)
- 建物と建物基礎との間に設置する免震装置であって、
建物に取り付けられ、建物基礎からの縦揺れが建物に直接伝達するのを防止する縦揺れ緩衝手段と、
前記縦揺れ緩衝手段の下側に設け、建物基礎からの横揺れが建物に直接伝達するのを防止する横揺れ緩衝手段と、
前記建物基礎と前記建物との間に縦方向に向けて追加して介在させた補助用縦揺れ緩衝手段と、からなり、
前記縦揺れ緩衝手段は、縦揺れの直接伝達を防止するように縦方向に伸縮可能な圧縮コイルばねと、建物に取り付けられ、前記圧縮コイルばねを外装して支持すると共に、この圧縮コイルばねの伸縮に追従して縦方向の長さが可変するガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材は、縦方向に配置する外筒部材と、この外筒部材に進退可能に挿入した内筒部材と、を有し、
前記横揺れ緩衝手段は、前記縦揺れ緩衝手段を構成するスペーサ部材の下端部に一体的に設けられ、横揺れの直接伝達を防止するように、前記縦揺れ緩衝手段と横方向に移動可能な球体と、建物基礎に取り付けられ、球体を載置するすり鉢状の傾斜面を有する皿部材と、を備え、
前記補助用縦揺れ緩衝手段は、コイルばねからなり、縦方向の振動の直接伝達を防止すると共に、横方向の変位に対して追従して変形するように該コイルばねの上下端を建物基礎と建物にそれぞれ固定したことを特徴とする、
免震装置。 - 請求項1に記載の免震装置であって、
前記皿部材に、微振動時の前記球体の移動を拘束する拘束手段を設けたことを特徴とする、免震装置。 - 請求項2に記載の免震装置であって、
前記拘束手段は、前記皿部材の傾斜面の中央部に形成した、前記球体を位置決め可能な凹部であることを特徴とする、免震装置。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載の免震装置であって、
前記ガイド部材に、前記弾性部材の弾性力を調整する弾性力調整手段を設けたことを特徴とする、免震装置。 - 請求項1乃至4のいずれかに記載の免震装置であって、
前記ガイド部材の両端部間に、前記弾性部材の伸縮に追従して変形する規制用弾性部材を取り付け、このガイド部材の縦方向の最大長さを規制可能に構成したことを特徴とする、免震装置。 - 建物基礎からの揺れが建物に直接伝達するのを防止する免震構造であって、
請求項1乃至5のいずれかに記載の免震装置を使用し、
前記縦揺れ緩衝手段の上端部を前記建物に取り付けると共に、前記皿部材を前記建物基礎に取り付け、前記縦揺れ緩衝手段で以って前記建物基礎からの縦揺れが前記建物に直接伝達するのを防止すると共に、前記横揺れ緩衝手段で以って前記建物基礎からの横揺れが前記建物に直接伝達するのを防止し、
前記建物基礎と前記建物との間に補助用縦揺れ緩衝手段を構成するコイルばねの上下端を建物基礎と建物にそれぞれ固定して介在し、前記コイルばねで以って弾性伸縮して縦方向の振動の直接伝達を防止すると共に、横方向の変位に対して追従して変形するように構成したことを特徴とする、
免震構造。
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