JP2015222005A - 橋梁耐震構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】所定レベル以下の地震動に対応するとともに、所定レベルを超える地震動に対しても、橋梁と平行の方向及び橋梁と直角方向の震動エネルギーを吸収することができ、耐久性及び優れた検査、メンテナンス性を有し、さらに設置や取り換えが容易にできる橋梁耐震構造を提供する。
【解決手段】橋桁1を可動支承4を介して橋脚2で支持する橋梁の耐震構造であって、橋脚の橋軸方向の片方の壁部又は上部と、橋脚の上方の橋桁の下部又は側部との間に、摩擦ダンパー5を橋軸直角方向に設けた橋梁の耐震構造であり、摩擦ダンパーが、柱体の外面と筒体の内面が摺動して、一定の摩擦荷重を保持したまま軸方向に変位する機構を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、新設橋梁あるいは既設橋梁の橋梁上部構造と橋梁下部構造の間に設ける橋梁耐震構造に関するものである。
従来、橋桁を支承を介して橋脚で支持する構造の橋梁において、支承として、固定支承と可動支承を組み合わせた橋梁では、1箇所を固定支承とし、残りを全て可動支承とするのが一般的であった。そして、このような構造とすることにより、上部構造の温度応力等による伸縮や、不静定応力による伸縮を可動支承側で逃がしていた。
しかしながら、地震の発生により地震力が橋梁に作用した場合、固定支承のみが集中的に地震力を受け持つこととなり、固定支承や下部構造の橋脚に損傷を与える事例が多くみられた。
このような状況に対して、近年では、上部構造の温度応力による伸縮や、不静定応力による伸縮を弾性的に吸収し、さらに地震力を弾性支承で分担する水平力分散支承が提案されている。これらの水平力分散支承としては、例えば、積層ゴム支承が挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。
この積層ゴム支承は、積層ゴムの弾性により、他の固定支承や下部構造への負荷の集中を緩和できるとともに、地震動を長周期化して、振幅を大きくする特性も有するため、中規模地震程度までの地震に対応することが可能である。
しかしながら、積層ゴム支承においても、大規模地震に対しては、橋脚に固定するためのストッパーのボルト等が破損するといった問題があった。
そこで、大規模地震にも対応させるため、地震動の長周期化とともに減衰機能を備えた免震支承が提案されている。これらの免震支承としては、例えば、鉛プラグ入り積層ゴム支承が挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。この鉛プラグ入り積層ゴム支承は、積層ゴムの変形に伴って、鉛プラグが塑性変形を起こし、地震エネルギーを吸収するとともに震動を速やかに減衰させ、地震による変化量を小さく抑えるものである。
また、上記鉛プラグ入り積層ゴム以外にも、大規模地震による地震動が発生した場合、制震ダンパーや他のダンパー等を用いて、より積極的に地震エネルギーを吸収する耐震補強手段も提案されている(例えば、特許文献2〜7)。
これらの耐震補強手段は、中規模地震以下の地震に対応するとともに、大規模地震による地震動では震動エネルギーを吸収するという点で有効な手段である。
特許第3854108号 特開2004−197502号公報 特開2004−332478号公報 特開2006−233591号公報 特開2007−32046号公報 特許第4336857号 特開2013−108260号公報
しかしながら、これらの従来の各種ダンパーを用いた支承においても、大規模地震時における橋梁と平行の方向及び橋梁と直角方向でのエネルギー吸収性、装置の耐久性や交換の容易性等については、未だ課題を残すものであった。
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、所定レベル以下の地震動に対応するとともに、所定レベルを超える地震動に対しても、橋梁と平行の方向及び橋梁と直角方向の震動エネルギーを吸収することができ、耐久性及び優れた検査、メンテナンス性を有し、さらに設置や取り換えが容易にできる橋梁耐震構造を提供することを課題としている。
本発明の橋梁耐震構造は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、以下のことを特徴としている。
第1に、橋桁を可動支承を介して橋脚で支持する橋梁の耐震構造であって、前記橋脚の橋軸方向の片方の壁部又は上部と、前記橋脚の上方の橋桁の下部又は側部との間に、摩擦ダンパーを橋軸直角方向に設けた橋梁の耐震構造であり、前記摩擦ダンパーが、柱体の外面と筒体の内面が摺動して、一定の摩擦荷重を保持したまま軸方向に変位する機構を有することを特徴とする橋梁耐震構造である。
第2に、上記第1の発明において、橋脚の橋軸方向の片方の壁部又は上部と前記橋脚の上方の橋桁の下部又は側部との間に、さらに摩擦ダンパーを橋軸方向に設けたことを特徴とする橋梁耐震構造である。
第3に、上記第1の発明において、橋脚の橋軸方向の片方の壁部又は上部と前記橋脚の上方の橋桁の下部又は側部との間に、さらに摩擦ダンパー以外のダンパーを橋軸方向に設けたことを特徴とする橋梁耐震構造である。
第4に、上記第1から第3の発明のうちのいずれかにおいて、摩擦ダンパー及び摩擦ダンパー以外のダンパーが、摩擦ダンパー及び摩擦ダンパー以外のダンパーの両先端部に設けられた任意の方向に回転可能な接続機構を介して、橋桁及び橋脚に取り付けられていることを特徴とする橋梁耐震構造である。
第5に、第1から第4の発明のうちのいずれかにおいて、摩擦ダンパーのダイスの前後部と内筒の間に緩衝材が設けられていることを特徴とする橋梁耐震構造である。
第6に、上記第1から第5の発明のうちのいずれかにおいて、可動支承としてゴム支承が用いられ、摩擦ダンパーまたは摩擦ダンパー以外のダンパーの変位がゴム支承の水平方向の許容変位量以下の所定変位量で、橋脚下端の曲率が所定の値以下となるとなるように、ゴム支承のバネ定数と摩擦ダンパーまたは摩擦ダンパー以外のダンパーの摩擦力が設定されていることを特徴とする橋梁耐震構造である。
本発明によれば、所定レベル以下の地震動に対応するとともに、所定レベルを超える地震動に対しても、橋梁と平行の方向及び橋梁と直角方向の震動エネルギーを吸収することができ、耐久性及び優れた検査、メンテナンス性を有し、さらに設置や取り換えが容易にできる橋梁耐震構造を提供することができる。
本発明に係る橋梁耐震構造を多径間の橋梁に使用した場合の一実施形態を示す橋梁と平行の方向の立面図である。 図1に示した橋梁耐震構造を橋軸方向に見たA−A断面図である。 図1に示した橋梁耐震構造を下側から見たB−B断面図である。 本発明に係る橋梁耐震構造を単径間を連ねた橋梁に橋軸方向に使用した場合の実施形態を示す橋梁と平行の方向の立面図である。 図2に示した橋梁耐震構造において、(a)は、所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合の摩擦ダンパーの作動及び橋桁の移動状況を示す概略図であり、(b)は、(a)の橋梁に使用した摩擦ダンパーの所定レベル以下の地震動時の場合と、所定レベルを超える地震動時におけるエネルギー吸収の説明図である。 本発明に係る橋梁耐震構造を多径間の橋梁に使用した場合で、さらに摩擦ダンパーを橋軸方向に設置した場合の橋梁と平行の方向の立面図である。 図6に示した橋梁耐震構造を橋軸方向に見たC−C断面図である。 図6に示した橋梁耐震構造を下側から見たD−D断面図である。 図6に示した橋梁耐震構造において、(a)は、所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合のさらに橋軸方向に設置する摩擦ダンパーの作動及び橋桁の移動状況を示す概略図であり、(b)は、(a)の橋梁に使用した、さらに橋軸方向に設置した摩擦ダンパーの所定以下の地震動時の場合と、所定レベルを超える地震動時の場合の橋軸方向におけるエネルギー吸収の説明図である。 本発明に係る橋梁耐震構造を多径間の橋梁に使用した場合で、さらに摩擦ダンパー以外のダンパーを橋軸方向に設置した場合の橋梁と平行の方向の立面図である。 図10に示した橋梁耐震構造を橋軸方向に見たE−E断面図である。 図11に示した橋梁耐震構造において、(a)は、所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合の橋軸直角方向に設置した摩擦ダンパーの作動及び橋桁の移動状況を示した概略図であり、(b)は、(a)の橋梁の橋軸直角方向に設置した摩擦ダンパーの所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合のエネルギー吸収の説明図である。 本発明による橋梁耐震構造の図10に示した橋梁耐震構造において、(a)は、所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合の橋軸方向に設置した摩擦ダンパー以外のダンパーの作動及び橋桁の移動状況を示した概略図であり、(b)は、(a)の橋軸直角方向における摩擦ダンパー以外のダンパー(粘性ダンパー)の所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合のエネルギー吸収の説明図である。 単径間を連ねた既設橋梁の橋梁耐震構造を本発明の橋梁耐震構造に取り換えた前後の状況を示した概略図であり、(a)は、既設橋梁の橋梁耐震構造を示す、橋梁と平行の方向の概略図、(b)は、(a)の既設橋梁耐震構造について、固定支承を可動支承に交換し、橋軸直角方向に摩擦ダンパーを設置した後の橋梁を示した概略図である。 単径間を連ねた既設橋梁の橋梁耐震構造を本発明の橋梁耐震構造に取り換えた前後の状態を示した概略図であり、(a)は、既設橋梁の橋梁耐震構造を示す、橋梁と平行の方向の概略図、(b)は、(a)の既設橋梁耐震構造について、固定支承を可動支承に交換し、橋軸直角方向と、橋軸方向について摩擦ダンパーを設置した後の橋梁を示した概略図である。 (a)は、両先端部に任意の方向に回転可能な接続機構としてボールジョイントを設けた摩擦ダンパー及び摩擦ダンパー以外のダンパーを示す正面図、(b)は、ダイスの前後部を内筒が拘束し、緩衝材がない場合の縦断面図、(c)は、ダイスの前後部と内筒の間に緩衝材を設けた場合の縦断面図である。 可動支承としてゴム支承を用い、摩擦ダンパーまたは摩擦ダンパー以外のダンパーを用いる場合の、ゴム支承のバネ定数と摩擦ダンパーまたは摩擦ダンパー以外のダンパーの摩擦力を設定するためのフロー図である。 タイプI地震動に対して降伏曲率以下の範囲があり、かつ、タイプII地震動に副次的な塑性化相当の曲率以下の範囲にある場合のパターンAのグラフである。 タイプI地震動に対して降伏曲率以下の範囲があり、かつ、タイプII地震動に副次的な塑性化相当の曲率以下の範囲にある場合のパターンBのグラフである。
本発明の橋梁耐震構造は、橋桁を可動支承を介して橋脚で支持する橋梁の耐震構造であって、多径間の橋梁、単径間又は単径間を連ねた橋梁等に使用可能な橋梁耐震構造である。
使用橋種は、主にコンクリート橋、鋼橋等である。
以下、本発明に係る橋梁耐震構造の実施形態について、図面を用いて詳述する。
図1は、本発明に係る橋梁耐震構造を多径間の橋梁に使用した場合の一実施形態を示す橋梁と平行の方向の立面図である。
橋桁1を可動支承4を介して橋脚2で支持する橋梁の耐震構造であって、橋脚2の橋軸方向の片方の壁部と橋桁1の下部との間に橋軸直角方向に摩擦ダンパー5を設置している。
この可動支承4は、橋桁1の鉛直荷重を支持し、常時の橋桁1の温度収縮、風力、橋梁上を通過する移動体の影響による橋桁の変形・移動などの水平力によって、橋脚2に対して橋桁1が変位することを許容する部材である。本発明で用いられる可動支承4としては、通常公知の可動支承を用いることができ、具体的には、例えば、ゴム系支承、すべり支承、ころがり支承等を挙げることができ、ゴム系支承としては、例えば、ゴム支承、鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB)、高減衰積層ゴム支承(HDR)等を用いることができる。これらの可動支承4は、状況に応じて複数種を組み合わせて用いることもできる。
摩擦ダンパー5は、摩擦力が移動方向に逆向きの抵抗力として作用することを利用した減衰機構を有するもので、より具体的には、柱体の外面と筒体の内面が摺動して、一定の摩擦荷重を保持したまま軸方向に変位する機構を有し、柱体の外面と筒体の内面の摩擦により、震動エネルギーを熱エネルギーに変え、吸収するものを用いるのが望ましい。また、柱体、筒体は、円形、角形等の形状のものでよいが、強度等の観点から、特に円形のものが望ましい。摩擦ダンパーの構成要素の材質の一実施形態としては、柱体が銅合金であり、筒体が合金工具鋼のものが挙げられる。また、より安定した摩擦荷重を得るために、柱体と筒体の摩擦面には、被膜潤滑剤を塗布してあるのが望ましい。また、他の実施形態としては、柱体と筒体が炭素鋼鋼管で、柱体と筒体がより安定した摩擦力を得るために、筒体の内面にポリテトラフルオロエチレン系の摩擦材を被覆してあるものが挙げられる。
このような柱体と筒体から構成される摩擦ダンパー5は、比較的単純な構造であるため、経済的で、繰り返しに対し高い耐久性があり、疲労寿命を考慮する必要がなく、エネルギー吸収装置として高い信頼性が得られるとともに、優れたメンテナンス性を得ることができる。
設置する摩擦ダンパー5は、一つの単位の橋桁、つまり橋桁の軸方向の端部から端部の間において、その橋桁とすべての橋脚との間に設置するものとする。
本実施形態では、橋脚2と橋桁1との間に設置する摩擦ダンパー5の位置を橋脚2の橋軸方向の片方の壁部と橋桁1の下部との間としているが、橋脚2の橋軸方向の片方の壁部又は上部と前記橋脚2の上方の橋桁1の下部又は側部との間であってもよい。
図2は、図1に示した橋梁耐震構造を橋軸方向に見たA−A断面図である。摩擦ダンパー5を橋脚2の上部と橋脚2の上方の橋桁1の側部との間に、両側の橋桁1に設置している。なお、摩擦ダンパー5の橋脚2への設置は取付部材6で行っている。
図3は、図1に示した橋梁耐震構造を下側から見たB−B断面図である。設置する摩擦ダンパー5は、一つの単位の橋桁、つまり橋桁の軸方向の端部から端部の間において、その橋桁とすべての橋脚との間に設置するものとする。
図4は、本発明に係る橋梁耐震構造を単径間を連ねた橋梁に、橋軸方向に適用した場合の一実施形態を示す橋梁と平行の方向の立面図である。このように、本発明の橋梁耐震構造は、多径間の橋梁の適用のみならず、単径間及び単径間を連ねた橋梁にも適用が可能である。
以下に、上記実施形態の橋梁耐震構造の地震時の動作について詳述する。
図5(a)は、図4に示す本発明の橋梁耐震構造において、所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合の摩擦ダンパー5の作動及び橋桁1の移動状況を示した状況図である。
図5(a)では、所定レベル以下の地震動時には、摩擦ダンパー5は変位せず固定支承として機能し、所定レベルを超える地震動時の地震の揺れによりダンパー5と橋桁1が、図面右方向に水平変位した状態を示している。所定レベルを超える地震動時のように、地震による慣性力により橋桁1が図面右側に水平変位した場合、図面右の摩擦ダンパー5は伸びる状態、図面左の摩擦ダンパーは縮む状態となる。
図5(b)は、本発明による橋梁耐震構造の図5(a)において、所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合の摩擦ダンパー5のエネルギー吸収の説明図である。所定レベル以下の地震動時には、摩擦ダンパー5は変位せず固定支承として機能する。所定レベルを超える地震動時には、摩擦ダンパー5に摩擦荷重を超える水平荷重が作用し、摩擦ダンパー5の滑り面が滑り出して摺動する。そのとき、摩擦ダンパー5は地震による震動エネルギーを吸収して摩擦熱に変換する。そして、摩擦ダンパー5が震動エネルギーを吸収することで橋梁自体がエネルギーを吸収し、応答変位を低減させる。即ち、本発明の橋梁耐震構造によれば、所定レベル以下の地震動では、摩擦ダンパー5の高い抵抗力により動作せず固定支承として機能し、所定レベルを超える地震動では動作して機能する。
このようにして、地震規模に応じた震動エネルギーの吸収により、所定レベルを超える地震動が橋軸直角方向に生じた場合であっても、橋脚、橋桁、可動支承等に損傷を与えることがない橋梁耐震構造とすることができる。
なお、本発明における所定レベルの地震動とは、対象とする橋梁が供用期間中に発生する確率が高く、橋脚を降伏させないレベルの地震動をいう。橋梁の形式、橋脚の高さ、地形、地質・地盤条件等により各々の橋梁の耐震強度が異なり、それに伴い橋梁を降伏させないレベルも異なるが、例えば、レベル1の地震動程度をいう。また、レベル2は所定レベルの地震動を超える地震動であって、例えば、東日本大震災、阪神淡路大震災程度の地震動をいう。
図6は、本発明に係る橋梁耐震構造を多径間の橋梁に適用した実施形態において、さらに摩擦ダンパー5’を摩擦ダンパー5が設置してある橋脚2の壁部に橋軸方向に設置した場合の一実施形態を示す橋梁と平行の方向の立面図である。摩擦ダンパー5’を設置する橋脚2については、橋梁の設計において震動エネルギーを吸収するために必要な有効抵抗力を計算し、また設置スペースや橋梁各部位の強度等設計に応じて所望の橋脚、設置位置を適宜設定し、設置することができる。摩擦ダンパー5とさらに設置する摩擦ダンパー5’の設置順序は問わない。
図7は、図6に示した橋梁耐震構造を橋軸方向に見たC−C断面図である。橋軸直角方向には摩擦ダンパー5を橋脚2の上部と橋脚2の上方の橋桁1の側部との間に設置している。この場合、3本の橋桁1において、両側の橋桁1に1基ずつ設置している。橋軸方向には、摩擦ダンパー5’を摩擦ダンパー5が設置してある橋脚2に設置している。
図8は、図6に示した橋梁耐震構造を下側から見たD−D断面図である。橋軸直角方向に設置する摩擦ダンパー5は、一つの単位の橋桁、つまり橋桁の軸方向の端部から端部の間において、その橋桁とすべての橋脚との間に設置するものとする。
図9(a)は、本発明による橋梁耐震構造の図6において、所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合のさらに橋軸方向に設置する摩擦ダンパー5’の作動及び橋桁の移動状況の状況図である。橋軸直角方向の場合と同様に、所定レベル以下の地震動時には、摩擦ダンパー5’は変位せず固定支承として機能し、所定レベルを超える地震動時には、地震の揺れによりダンパー5’と橋桁1が、図面右方向に水平変位した状態となる。所定レベルを超える地震動時のように、地震による慣性力により橋桁1が図面右側に水平変位した場合、摩擦ダンパー5’は伸びる状態となる。
図9(b)は、本発明による橋梁耐震構造の図9(a)において、所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合の橋軸方向における摩擦ダンパー5’のエネルギー吸収の説明図である。橋軸直角方向に設置してある摩擦ダンパー5と同様に、所定レベル以下の地震動時には、摩擦ダンパー5’は変位せず固定支承として機能し、所定レベルを超える地震動時には、摩擦ダンパー5’に摩擦荷重を超える水平荷重が作用し、摩擦ダンパー5’の滑り面が滑り出して摺動する。そのとき、摩擦ダンパー5’は地震による震動エネルギーを吸収して摩擦熱に変換する。そして、摩擦ダンパー5’が震動エネルギーを吸収することで橋梁自体がエネルギーを吸収し、応答変位を低減させる。即ち、本発明の橋梁耐震構造によれば、所定レベル以下の地震動では、摩擦ダンパー5’は高い抵抗力により動作せず固定支承として機能し、所定レベルを超える地震動では動作して機能する。
このようにして、橋軸方向においても、地震規模に応じた震動エネルギーの吸収により、所定レベルを超える地震動が生じた場合であっても、橋脚、橋桁、可動支承等に損傷を与えることがない橋梁耐震構造とすることができる。
図10は、本発明に係る橋梁耐震構造を多径間の橋梁に使用した場合で、さらに摩擦ダンパー以外のダンパー7を摩擦ダンパー5が設置してある橋脚2の壁部に橋軸方向に設置した場合の一実施形態を示す橋梁と平行の方向の立面図である。摩擦ダンパー以外のダンパー7を設置する橋脚2については、橋梁の設計において震動エネルギーを吸収するために必要な有効抵抗力を計算し、また設置スペースや橋梁各部位の強度等設計に応じて所望の橋脚、設置位置を適宜設定し、設置することができる。摩擦ダンパー以外のダンパー7とさらに設置する摩擦ダンパー5の設置順序は問わない。
本発明で用いる摩擦ダンパー以外のダンパー7は、摩擦ダンパー5でなければ特に制限されるものではなく、例えば鋼製ダンパー、粘性ダンパー、粘弾性ダンパー、ゴム製ダンパー等を用いることができる。また、鋼製ダンパーとしては軸降伏型ダンパー、曲げ降伏型ダンパー、せん断降伏型ダンパーを挙げることができる。
上記の、摩擦ダンパー以外のダンパー7は、摩擦ダンパー5、5’よりも小さい地震動で稼働するダンパーであり、この摩擦ダンパー以外のダンパー7が、所定レベル以下の地震動での地震に対応し、所定レベルを超える地震動に対しては摩擦ダンパー5、5’が稼働する。即ち、この構成の橋梁耐震構造とすることにより、橋軸方向に対しては所定レベル以下の地震動に対応し、橋軸から直角方向に対しては所定レベルを超える地震動に対応可能な耐震構造とすることができる。
橋軸方向に摩擦ダンパー以外のダンパー7を設置するケースとしては、橋梁の設計計算で、摩擦ダンパー以外のダンパー7で十分震動エネルギーを吸収できる場合に使用する。
図11は、図10に示した橋梁耐震構造を橋軸方向に見たE−E断面図である。橋軸直角方向には摩擦ダンパー5を橋脚2の上部と橋脚2の上方の橋桁1の側部との間に設置している。この場合、3本の橋桁において、両側の橋桁に1基ずつ、中央の橋桁には2基設置している。橋軸方向には、摩擦ダンパー以外のダンパー7を摩擦ダンパー5が設置してある橋脚2に設置している。
図12(a)は、本発明による橋梁耐震構造の図11において、所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合の橋軸直角方向に設置してある摩擦ダンパー5の作動及び橋桁1の移動状況を示した状況図である。摩擦ダンパー以外のダンパーが橋軸方向に設置されているが、橋軸直角方向について、図5(a)の場合と同様に、所定レベル以下の地震動時には、摩擦ダンパー5は変位せず固定支承として機能する。所定レベルを超える地震動時には、地震の揺れによりダンパー5と橋桁1が、図面右方向に水平変位する。所定レベルを超える地震動時のように、地震による慣性力により橋桁1が図面右側に水平変位して、摩擦ダンパー5は、設置場所により、伸びる状態のものと、縮む状態のものとなる。
図12(b)は、図12(a)に示した橋梁耐震構造における所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合の橋軸直角方向における摩擦ダンパー5のエネルギー吸収の説明図であり、図5(a)の場合と同様になる。
図13(a)は、本発明による橋梁耐震構造の図10において、所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合の橋軸方向に設置してある摩擦ダンパー以外のダンパー7の作動及び橋桁1の移動状況を示した状況図である。ここでは、摩擦ダンパー以外のダンパー7として、粘性ダンパーを想定して述べる。摩擦ダンパー以外のダンパー7は、所定レベル以下の地震動時には、少し変位し、所定レベルを超える地震動時、地震の揺れにより橋桁1とともに、図面右方向に大きく水平変位する。所定レベルを超える地震動時のように、地震による慣性力により橋桁1が図面右側に水平変位して、摩擦ダンパー以外のダンパー7は、伸びる状態となる。
図13(b)は、図12(a)に示した橋梁耐震構造における所定レベル以下の地震動時の場合と所定レベルを超える地震動時の場合の橋軸直角方向における摩擦ダンパー以外のダンパー7、ここでは粘性ダンパーを想定したエネルギー吸収の説明図である。
所定レベル以下の地震動のときは、摩擦ダンパー以外のダンパー7は、少しだけエネルギーを吸収し、所定レベルを超える地震動のときは、大きくエネルギーを吸収する。
このようにして、橋軸直角方向、橋軸方向において、地震規模に応じた震動エネルギーの吸収により、所定レベルを超える地震動が生じた場合であっても、橋脚、橋桁、可動支承等に損傷を与えることがない橋梁耐震構造とすることができる。
以上、本発明の橋梁耐震構造について、実施形態を用いて説明したが、本発明は、新設橋梁への設置及び既設橋梁を耐震構造にする場合や、既設の橋梁耐震構造となっている橋梁について、本発明による橋梁耐震構造に取り替え、耐震性を向上させることができる。
以下に、既設の橋梁耐震構造を有する橋梁を本発明による橋梁耐震補強構造に取り替える場合について詳述する。
図14(a)、(b)は、単径間を連ねた既設橋梁の橋梁耐震構造を本発明の橋梁耐震構造に取り換えた前後の状況図である。図14(a)は、既設橋梁の橋梁耐震構造を橋梁と平行の状況図、図14(b)は、図14(a)の橋梁耐震構造を本発明の橋梁耐震構造で橋軸直角方向について設置した後の橋梁を示した状況図である。
これによれば、まず、図14(a)の橋脚2と橋桁1の間に設置してある固定支承8を図14(b)のように可動支承4’に取り替える。引き続き、橋桁1の橋軸方向の両端部とその両端部をそれぞれ支持する橋脚2との間に摩擦ダンパー5を橋軸直角方向に設置する。なお、交換後の可動支承4’については、可動支承であれば特に制限はなく、ゴム系支承、すべり支承、ころがり支承等を挙げることができ、ゴム系支承としては、例えば、ゴム支承、鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB)、高減衰積層ゴム支承(HDR)等を用いることができる。これらの可動支承4’は、状況に応じて複数種を組み合わせて用いることもできる。
図15(a)、(b)は、単径間を連ねた既設橋梁の橋梁耐震構造を本発明の橋梁耐震構造に取り換えた前後の状態を示した状況図である。図15(a)は、既設橋梁の橋梁耐震構造を橋梁と平行の状況図、図15(b)は、図15(a)の橋梁耐震構造を本発明の橋梁耐震構造で橋軸直角方向と、橋軸方向について設置した後の橋梁を示した状況図である。
これによれば、まず、図15(a)の橋脚2と橋桁1の間に設置してある固定支承8を図15(b)のように可動支承4’に取り替える。引き続き、橋桁1の橋軸方向の両端部とその両端部をそれぞれ支持する橋脚2との間に摩擦ダンパー5を橋軸直角方向に設置するとともに、片側の橋脚2と橋桁1の間に橋軸方向に摩擦ダンパー5’を設置する。摩擦ダンパー5’のかわりに摩擦ダンパー以外のダンパーを設置することもできる。
図14(a)、(b)、図15(a)、(b)において、可動支承4’の交換、摩擦ダンパー5、摩擦ダンパー5’、摩擦ダンパー以外のダンパーの設置の順序は、特に制限されるものではなく、橋梁の供用状況や、施工スペース等の工事条件に合わせて適宜実施することができる。
このように、支承及びダンパーの交換、設置によって、従来の橋梁を容易に本発明の橋梁耐震構造の構成とすることができ、所定レベル以下の地震動及び所定レベルを超える地震動に対しても、橋梁に加わる震動エネルギーを吸収することが可能となる。また、これらの装置は構造上、十分耐久性があり、長期間使用することができ、さらに優れた検査、メンテナンス性を有する。
なお、上記実施形態における、摩擦ダンパー及び摩擦ダンパー以外のダンパーの橋桁及び橋脚との取り付けは、図16(a)に示すように摩擦ダンパー及び摩擦ダンパー以外のダンパー9の両先端部に設けた、任意の方向に回転可能な機構を介して、前記橋桁又は橋脚に取り付けることができる。本発明で用いられる任意の方向に回転可能な機構としては特に制限はないが、例えば、クレビスやボールジョイント10による機構等を挙げることができる。
この任意の方向に回転可能な接続機構を介して取り付けることにより、地震動により摩擦ダンパー、摩擦ダンパー以外のダンパー9に回転変位が生じた場合であっても追従可能とすることができる。
図16(b)は、(a)の摩擦ダンパー及び摩擦ダンパー以外のダンパー9の一実施形態の縦断面図であり、ダイスの前後部を内筒が拘束している場合を示している。この構成では、柱状体のロッド13と、内筒に拘束された円筒体のダイス12を嵌合させて、ロッド13の外面と、ダイス12の円筒体の内面との摺動の摩擦により、震動エネルギーを熱エネルギーに変換し、振動エネルギーを吸収するようにしている。
図16(c)は、(a)の摩擦ダンパー及び摩擦ダンパー以外のダンパー9の他の実施形態の縦断面図であり、ダイス12の前後部と内筒14の間に緩衝材16を設けることにより、ダイス12の前後部を内筒14が拘束しない場合を示している。この構成は、橋軸方向に設置してある摩擦ダンパー以外のダンパーが、温度変化や所定レベル以下の地震動により伸び縮みするのにともない、橋軸直角方向に設置してある摩擦ダンパーに橋軸方向に力が作用し、摩擦ダンパーと橋桁及び橋脚への取付け部に不要な力がかかることを考慮したものである。取付け部11の橋軸方向の伸び縮みを可能とするために、ダイス12の前後部と内筒の間に緩衝材16を設け、内筒14に軸方向の動きに対して緩衝材16により伸び縮み(遊び)を持たせて対応している。緩衝材16としては、バネを用いるのが望ましい。
本発明の橋梁耐震構造では、橋梁に加わる震動エネルギーの吸収において、設置する摩擦ダンパーの適正な摩擦力の設定が重要となる。
図17は、可動支承としてゴム支承を用い、橋軸方向及び橋軸直角方向の摩擦ダンパーの変位をゴム支承の水平方向の許容変位量内で所定内の移動量で、橋脚下端の曲率が所定の値以下となるゴム支承のバネ定数と摩擦ダンパーの抵抗力である摩擦力を設定するためのフロー図である。
摩擦ダンパーの変位を所定内の移動量に収める理由は、摩擦ダンパーの要求特性を精度よく満たすためのストローク長が限られるためであり、また、ストローク長が長すぎると、橋軸方向においては橋桁が移動しすぎて橋脚から外れる場合があるためである。また、橋軸直角方向においては、橋桁が橋脚から橋軸直角方向に移動しすぎて、例えば、車両の運転等に支障が生じる場合があるため、それらを防止するためである。
なお、図17では、設定するダンパーとして摩擦ダンパーを対象としているが、摩擦ダンパー以外のダンパーや摩擦ダンパーと摩擦ダンパー以外のダンパーの組み合わせでもよい。
本発明に係る、ゴム支承のバネ定数と摩擦ダンパーの抵抗力である摩擦力を設定する実施形態についてフロー図に沿って説明する。
本実施形態では、以下の(1)〜(7)の各手順により摩擦ダンパーの設定を行う。
(1)橋桁の許容水平変位の範囲設定
(2)ゴム支承のバネ定数設定
(3)摩擦ダンパーの摩擦力に応じた橋脚下端の曲率の解析、曲率のグラフ化
(4)サンプル地震動に対する曲率範囲に基づく、摩擦ダンパー摩擦力の判定、設定
(5)設定摩擦力による判定
(6)摩擦ダンパーの摩擦力の判定、設定
(7)摩擦ダンパーの摩擦力設定範囲の余裕の有無
以下、上記各手順について説明する。
(1)橋桁の許容水平変位の範囲設定
ゴム支承の水平方向の許容変位量内で、橋桁の橋軸方向及び橋軸直角方向における許容水平変位の範囲を設定する。
具体的には、橋軸方向においては、地震時に隣り合う橋桁同士、隣り合う橋桁と橋台が橋軸方向に衝突しない範囲、かつ、橋桁が橋脚や橋台の橋軸方向に脱落する側の端部から逸脱しない範囲となるように、ゴム支承の水平方向の許容変位量を定め、その許容水平変位量内に設定する。
橋軸直角方向においては、地震時に隣り合う橋桁の相対的なズレによる道路上の車線がずれた場合、運転手が運転するのに支障がない範囲である、橋桁のズレが所定の範囲内に収まるように、ゴム支承の水平方向の許容変位量を定める。具体的な範囲としては、センターラインのズレが250mm〜300mm以内の範囲になるように定めるのが好ましい。
(2)ゴム支承のバネ定数設定
次に、ゴム支承のバネ定数を設定する。具体的には、ゴム支承を所定設置スペースに収まる範囲内の厚さとし、材質、構造、厚さは、橋桁の鉛直荷重、せん断荷重に耐えられるものを選定する。そして、ゴム支承の面積を順次変え、ゴム支承の変位量が上記(1)で設定した水平方向の許容変位量内に収まる面積とする。
以上の設定によりゴム支承を定める。このゴム支承についてばね定数を予め計算して求め、ゴム支承のばね定数を設定する。
(3)摩擦ダンパーの摩擦力に応じた橋脚下端の曲率の解析、曲率のグラフ化
次に、一つあるいは複数のサンプル地震動に対して、摩擦ダンパーの摩擦力を変化させて動的解析を実施し、摩擦ダンパーの摩擦力に応じた橋脚下端の曲率を求めるとともにグラフ化する。ここで、橋脚下端の曲率は、地震力に伴い橋脚に作用する曲げモーメントにより変化する。
(4)サンプル地震動に対する曲率範囲に基づく、摩擦ダンパー摩擦力の判定、設定
(3)で作成した曲率のグラフに基づき、一つあるいは複数のサンプル地震動に対して、求めた橋脚下端の曲率が所定の値以下の範囲にあるか否かを判断する。
ここで、一つあるいは複数のサンプル地震動とは、東日本大震災クラスの地震動(以下、タイプI地震動という)、阪神・淡路大震災クラスの地震動(以下、タイプII地震動という)を意味する。
具体的な判断としては、タイプI地震動に対して降伏曲率以下の範囲があり、かつ、タイプII地震動に副次的な塑性曲率以下の範囲があるか否かで判断する。
上記範囲にある場合(4−1)には、そのグラフのパターンに応じた摩擦力を設定して、(5)設定摩擦力による判定を行う。
図18に、タイプI地震動に対して降伏曲率以下の範囲があり、かつ、タイプII地震動に副次的な塑性曲率以下の範囲にある場合のパターンAを示し、図19にパターンBのグラフを示す。
図18に示すパターンAは、タイプI地震動に対して、橋脚下端曲率が降伏曲率以下のダンパー摩擦力の範囲と、タイプII地震動に対して、橋脚下端曲率が副次的な塑性曲率以下のダンパー摩擦力の範囲が重なっている場合であり、パターンAにおける、この重なった範囲α内のダンパー摩擦力とすることにより橋脚下端曲率は所定の値以下の範囲になる。従って、このダンパー摩擦力で設定すればよい。なお、設定に際しては、この範囲α内で複数の摩擦ダンパーの組み合わせで行うこともできる。
図19に示すパターンBは、タイプI地震動に対して、橋脚下端曲率が降伏曲率以下のダンパー摩擦力の範囲と、タイプII地震動に対して、橋脚下端曲率が副次的な塑性曲率以下のダンパー摩擦力の範囲が重なっていない場合を示している。パターンBにおける、このように重なった範囲のダンパー摩擦力がない場合(β)は、タイプI地震動で降伏曲率を超えるグラフ左側のダンパー摩擦力の値とタイプII地震動で副次的な塑性曲率を超えるグラフ右側のダンパー摩擦力の値との間の範囲のダンパー摩擦力にする。この範囲のどの値のダンパー摩擦力とするかは、タイプI地震動とタイプII地震動のどちらの地震動に対して優先するかを決め、値を設定する。
ここで、本発明において副次的な塑性化とは、橋脚に生じる損傷が小さく、修復が容易に行い得る範囲の塑性化を意味する。
一方、一つあるいは複数のサンプル地震動に対して、求めた橋脚下端の曲率が所定の値以下の範囲が一つでもない場合(4−2)には、ゴム支承のバネ定数を低減して(3)に戻る。
ここで、橋脚下端の曲率が所定の値以下の範囲とは、好適にはタイプI地震動に対して降伏曲率以下の範囲、タイプII地震動に副次的な塑性化相当の曲率以下の範囲をいう。
(5)設定摩擦力による判定
(4)で設定した摩擦ダンパーの摩擦力が、レベル1の地震動で滑るか否かにより判定を行う。具体的な、レベル1の地震動で滑るか否かの判断は、動的解析を行い、レベル1で滑らない摩擦ダンパーの摩擦力の下限値γを求め、(4)で設定したダンパーの摩擦力がその下限値γ以上であれば滑らないと判断する。パターンA、パターンBのグラフにおいては、設定したダンパーの摩擦力がレベル1で滑らない摩擦力の下限値γのラインより左側にあればよい。
摩擦ダンパーの摩擦力がレベル1の地震動で滑らない場合(5−1)には、(6)摩擦ダンパーの摩擦力の判定、設定を行う。
摩擦ダンパーの摩擦力がレベル1地震動で滑る場合(5−2)には、設定不可となり、所定の値であるタイプI地震動に対する降伏曲率の値または/かつタイプII地震動に副次的な塑性化相当の曲率の値を緩和して設定し直すか、そこまでの曲率の低減で終了とする。
(6)摩擦ダンパーの摩擦力の判定、設定
(5)による判定に基づき、タイプII地震動時の水平変位が許容水平変位以下であるか否かにより摩擦ダンパーの摩擦力の設定を判断する。
タイプII地震動時の水平変位が許容水平変位以下である場合(6−1)は、ここまでの算定結果で摩擦ダンパーの摩擦力を設定する。
タイプII地震動時の水平変位が許容水平変位を超える場合(6−2)は、(7)摩擦ダンパーの摩擦力設定範囲の余裕の有無により対応を決定する。
(7)摩擦ダンパーの摩擦力設定範囲の余裕の有無
(6)により、タイプII地震動時の水平変位が許容水平変位を超えると判定された場合には、摩擦ダンパーの摩擦力設定範囲の余裕の有無により次の対応を決定する。
摩擦ダンパーの摩擦力設定範囲に余裕がある場合(橋脚下端の曲率に余裕がありまだ曲率を高くすることができる場合)(7−1)は、ゴム支承のバネ定数を増加して、(3)に戻り再度設定し直す。
摩擦ダンパー摩擦力設定範囲に余裕がない場合(7−2)は、バネ定数は変化させないで、支承ゴム高を増加(橋桁の許容水平変位の緩和)して、(3)に戻り再度設定し直す。
摩擦ダンパー以外のダンパーを用いる場合のフローについては、可動支承としてゴム支承を用い、橋軸方向の摩擦ダンパー以外のダンパーの変位をゴム支承の水平方向の許容変位量内で、所定の移動量となるように、ゴム支承のバネ定数と摩擦ダンパー以外のダンパーの抵抗力を定めるフローとなり、図17において摩擦ダンパーを摩擦ダンパー以外のダンパーに置き換えたものとなる。
なお、本発明による摩擦ダンパーによれば、橋軸方向及び橋軸直角方向の水平変位を所定の変位に設定できるが、最大±250mm〜300mm以内に収めるようにするのが好ましい。
また、既設の橋梁耐震構造を有する橋梁の場合も同様に、橋軸方向及び橋軸直角方向の摩擦ダンパーの変位をゴム支承の水平方向の許容変位量内で、所定の移動量となるように、ゴム支承のバネ定数と摩擦ダンパーの抵抗力である摩擦力を定める。ただし、ゴム支承の高さは既存の橋脚と橋桁の間に入る高さのものとする。
そして、実際の取り換え、設置について、単径間を連ねた既設橋梁の橋梁耐震構造である図14(a)を用いて説明すると、まず、図14(a)の橋脚2と橋桁1の間の固定支承8をゴム支承に取り替え、可動支承をゴム支承にする。引き続き、橋桁1の橋軸方向の両端部とその両端部をそれぞれ支持する橋脚2との間に摩擦ダンパー5を橋軸直角方向に設置する。
同様に図15(a)を用いて説明すると、まず、図15(a)の橋脚2と橋桁1の間の固定支承8をゴム支承に取り替え、可動支承をゴム支承にする。引き続き、橋桁1の橋軸方向の両端部とその両端部をそれぞれ支持する橋脚2との間に摩擦ダンパー5を橋軸直角方向に設置するとともに、片側の橋脚2と橋桁1の間に橋軸方向に摩擦ダンパー5’を設置する。
ゴム支承の交換、摩擦ダンパー、摩擦ダンパー以外のダンパーの設置の順序は、特に制限されるものではなく、橋梁の供用状況や、施工スペース等の工事条件に合わせて適宜実施することができる。
以上、本発明の実施の形態について例示説明したが、本発明はこれら例示説明に限定されるものでないことはいうまでもない。様々な態様として実施可能とされる。
1 橋桁
2 橋脚
3 床版
4 可動支承
4’可動支承
5 摩擦ダンパー(橋軸直角方向)
5’摩擦ダンパー(橋軸方向)
6 取付部材
7 摩擦ダンパー以外のダンパー
8 固定支承
9 摩擦ダンパー、摩擦ダンパー以外のダンパー
10 ボールジョイント
11 取付部材
12 ダイス
13 ロッド
14 内筒
15 外筒
16 緩衝材

Claims (6)

  1. 橋桁を可動支承を介して橋脚で支持する橋梁の耐震構造であって、
    前記橋脚の橋軸方向の片方の壁部又は上部と、前記橋脚の上方の橋桁の下部又は側部との間に、摩擦ダンパーを橋軸直角方向に設けた橋梁の耐震構造であり、
    前記摩擦ダンパーが、柱体の外面と筒体の内面が摺動して、一定の摩擦荷重を保持したまま軸方向に変位する機構を有することを特徴とする橋梁耐震構造。
  2. 橋脚の橋軸方向の片方の壁部又は上部と、前記橋脚の上方の橋桁の下部又は側部との間に、さらに摩擦ダンパーを橋軸方向に設けたことを特徴とする請求項1記載の橋梁耐震構造。
  3. 橋脚の橋軸方向の片方の壁部又は上部と前記橋脚の上方の橋桁の下部又は側部との間に、さらに摩擦ダンパー以外のダンパーを橋軸方向に設けたことを特徴とする請求項1記載の橋梁耐震構造。
  4. 摩擦ダンパー及び摩擦ダンパー以外のダンパーが、摩擦ダンパー及び摩擦ダンパー以外のダンパーの両先端部に設けられた任意の方向に回転可能な接続機構を介して、橋桁及び橋脚に取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の橋梁耐震構造。
  5. 摩擦ダンパーのダイスの前後部と内筒の間に緩衝材が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の橋梁耐震構造。
  6. 可動支承としてゴム支承が用いられ、摩擦ダンパーまたは摩擦ダンパー以外のダンパーの変位がゴム支承の水平方向の許容変位量以下の所定変位量で、橋脚下端の曲率が所定の値以下となるとなるように、ゴム支承のバネ定数と摩擦ダンパーまたは摩擦ダンパー以外のダンパーの摩擦力が設定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の橋梁耐震構造。
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