JP4225657B2 - 永久磁石型同期電動機の制御装置 - Google Patents

永久磁石型同期電動機の制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、永久磁石型同期電動機におけるトルク制御に関するもので、特に温度変化によってトルク精度が変動することを防ぐものである。
【0002】
[従来の技術]従来技術の一例を図2に示し、これについて説明する。電力変換器3は、永久磁石型同期電動機1に電力を供給する。電流検出器2は永久磁石型同期電動機1の入力電流iを検出する。電流成分変換器7は、入力電流iを入力とし、永久磁石型同期電動機1の永久磁石と平行方向をd軸とし垂直方向をq軸として、d軸成分であるd軸電流idと、q軸成分であるq軸電流iqとを出力する。q軸電流指令算出器5は、d軸電流指令idrと、トルク指令Tcと、永久磁石型同期電動機1のインダクタンスのd軸成分であるd軸インダクタンスLdと、q軸成分であるq軸インダクタンスLqと、永久磁石の磁束φとを入力してq軸電流指令iqrを出力する。d軸電流指令算出器6は、d軸電流指令idrを出力する。電流制御器4は、d軸電流idとq軸電流iqとがd軸電流指令idrとq軸電流指令iqrとに追従するような制御信号を電力変換器3に出力する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
永久磁石型同期電動機のトルク式は、次式で表される。
【0004】
【数1】
Figure 0004225657
【0005】
(1)式より、q軸電流指令iqrは、次式のように求められる。
【0006】
【数2】
Figure 0004225657
【0007】
(2)式より、q軸電流指令iqrは永久磁石型同期電動機のd軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqと永久磁石の磁束φとを用いて算出される。
ところが、永久磁石の磁束φは永久磁石型同期電動機の温度変化によって変動するため、永久磁石の磁束φを固定しておくと、温度変化によって(2)式のq軸電流指令値iqrが正しい値として算出されず、永久磁石型同期電動機の出力トルクの制御精度が変動する結果となる。
本発明は上述した点に鑑みて創案されたもので、その目的とするところは、永久磁石型同期電動機の永久磁石の磁束の温度変化による変動を修正する機能を設けることで上記問題点を解決し、さらに永久磁石型同期電動機のトルク制御を高精度化するものである。
【0008】
[課題を解決するための手段]上記問題点を解決するため、電力変換器を介して供給される前記永久磁石型同期電動機の入力電流を検出する電流検出器及び、この電流検出器出力から前記永久磁石型同期電動機の永久磁石と平行方向をd軸とし垂直方向をq軸として、d軸成分であるd軸電流と、q軸成分であるq軸電流とを出力する電流成分変換器を有し、これらをトルク指令値に追従するよう独立に前記電流制御器にて調整し、また、前記永久磁石型同期電動機の入力電圧を検出する電圧検出器及び、この電圧検出器出力から前記d軸成分であるd軸電圧と、前記q軸成分であるq軸電圧とを出力する電圧成分変換器を有し、前記d軸電流と前記q軸電流と前記永久磁石型同期電動機の回転速度と前記永久磁石型同期電動機の一次抵抗、前記永久磁石型同期電動機のインダクタンスの前記d軸成分であるd軸インダクタンス、前記永久磁石型同期電動機のインダクタンスの前記q軸成分であるq軸インダクタンス、前記永久磁石の磁束とから前記永久磁石型同期電動機のq軸電圧を演算するq軸電圧演算器と、このq軸電圧演算器出力と前記電圧成分変換器出力のq軸電圧とから、永久磁石の磁束を修正する磁束補正手段とを具備して構成する。
【0009】
また、前記d軸電流と前記q軸電流と前記回転速度と前記一次抵抗と前記d軸インダクタンスと前記q軸インダクタンスとから前記永久磁石型同期電動機のd軸電圧を演算するd軸電圧演算器と、このd軸電圧演算器出力と前記電圧成分変換器出力であるd軸電圧とから前記一次抵抗を修正する抵抗補正手段とを具備する。
【0010】
さらに、前記抵抗補正手段によって修正された前記一次抵抗が、大きい任意の値を超えるか、または小さい任意の値よりも下回った場合に、前記d軸電圧演算器出力と前記電圧成分変換器出力であるd軸電圧とから、q軸インダクタンスを修正するインダクタンス補正手段を具備するものである。
【0011】
[発明の実施の形態]本発明の実施例を図1に示し、以下、この図について説明する。なお、前述の従来技術例と同一部分の説明は省略する。速度検出器17は、永久磁石型同期電動機1の回転速度ωを出力する。電圧検出器8は、永久磁石型同期電動機1の入力電圧vを検出する。電圧成分変換器9は、入力電圧vから、d軸成分であるd軸電圧vdと、q軸成分であるq軸電圧vqとを出力する。
【0012】
d軸電圧演算器10は、d軸電流id、q軸電流iq、回転速度ω、d軸インダクタンスLd、修正されたq軸インダクタンスLqn、修正された一次抵抗Rnとを入力してd軸電圧vdcを演算する。q軸電圧演算器11は、d軸電流id、q軸電流iq、回転速度ω、d軸インダクタンスLd、修正されたq軸インダクタンスLqn、修正された一次抵抗Rn、修正された永久磁石の磁束φnとを入力してq軸電圧vqcを演算する。
【0013】
減算器15は、d軸電圧vdと演算されたd軸電圧vdcとの差を出力する。減算器16は、q軸電圧vqと演算されたq軸電圧vqcとの差を出力する。
抵抗補正手段12は、減算器15の出力と一次抵抗Rとを入力して、修正された一次抵抗Rnと修正された一次抵抗Rnが大きい任意の値を超えるか、または小さい任意の値よりも下回った場合に信号を出力する。
インダクタンス修正手段13は、減算器15の出力とq軸インダクタンスLqと抵抗補正手段12の出力信号とを入力して、抵抗補正手段12の信号が入力された場合は修正されたq軸インダクタンスLqnを出力し、抵抗補正手段12の信号が入力されない場合はそのままq軸インダクタンスLqnを出力する。
【0014】
磁束補正手段14は、減算器16の出力と永久磁石の磁束φとを入力して修正された永久磁石の磁束φnを出力する。q軸電流指令算出器5が従来技術と異なる点は、修正されたq軸インダクタンスLqnと修正された永久磁石の磁束φnとを用いている点である。
【0015】
ここで、本発明によって、前記問題点を解決できる理由について説明する。
第一に、永久磁石の磁束が修正できる理由についてであり、まず、q軸電圧演算器11について説明する。
永久磁石型同期電動機1の電圧方程式は、次式で表される。
【0016】
【数3】
Figure 0004225657
【0017】
【数4】
Figure 0004225657
ここで、pは微分演算子である。
よって(4)式より、d軸電流id、q軸電流iq、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、一次抵抗R、永久磁石の磁束φ、回転速度ωとが分かればq軸電圧を演算できることがわかる。
【0018】
次に、磁束補正手段14について説明する。永久磁石の磁束φが正しい値なら、(4)式によって演算されたq軸電圧vqcとq軸電圧vqとは等しい値となる。しかし、温度変化によって永久磁石の磁束φの値が変動してくると、演算されたq軸電圧vqcとq軸電圧vqとは等しくならない。そこで、減算器16の出力を用いて磁束補正手段14により、
【0019】
【数5】
Figure 0004225657
【数6】
Figure 0004225657
【0020】
なる演算を行って、永久磁石の磁束φを修正する。ここで、φxは永久磁石の磁束φの修正補正値、Kφは積分定数である。永久磁石の磁束φが実際の値よりも小さければ、vq>vqcとなり、(5)式のφxは増加し、(6)式のφnも増加することで、永久磁石の磁束が修正される。逆に永久磁石の磁束φが実際の値よりも大きければ、vq<vqcとなり、(5)式のφxは減少し、(6)式のφnも減少することで、永久磁石の磁束が修正される。
以上説明したように、演算されたq軸電圧vqcとq軸電圧vqとから永久磁石の磁束φを修正することが可能となる。
【0021】
演算されたq軸電圧vqcは、(4)式から明らかなように、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqと一次抵抗Rも使用する。その中で、一次抵抗Rも、温度変化によって変化する。
第二に、一次抵抗Rが修正できる理由についてであり、まず、d軸電圧演算器10について説明する。
永久磁石型同期電動機1のd軸電圧方程式は、(3)式で表される。
よって、d軸電流id、q軸電流iq、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、一次抵抗R、回転速度ωとが分かれば、d軸電圧を演算できることがわかる。
【0022】
次に、抵抗補正手段12について説明する。一次抵抗Rが正しい値なら、(3)式によって演算されたd軸電圧vdcとd軸電圧vdとは等しい値となる。しかし、温度変化によって一次抵抗Rの値が変動してくると、演算されたd軸電圧vdcとd軸電圧vdとは等しくならない。そこで、減算器15の出力を用いて抵抗補正手段12により、
【0023】
【数7】
Figure 0004225657
【数8】
Figure 0004225657
【0024】
なる演算を行って、一次抵抗Rを修正する。ここで、Rxは一次抵抗Rの修正補正値、KRは積分定数である。一次抵抗Rが実際の値よりも小さければ、vd>vdcとなり、(7)式のRxは増加し、(8)式のRnも増加することで、一次抵抗Rが修正される。逆に一次抵抗Rが実際の値よりも大きければ、vd<vdcとなり、(7)式のRxは減少し、(8)式のRnも減少することで、一次抵抗Rが修正される。
以上説明したように、演算されたd軸電圧vdcとd軸電圧vdとから一次抵抗Rを修正することが可能となる。
【0025】
演算されたd軸電圧vdcとq軸電圧vqcは、(3)式と(4)式とから明らかなように、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとを用いる。インダクタンスは、磁気飽和の影響で流す電流の大きさによって変化する。d軸電流idは通常あまり流さないため、(3)式と(4)式より、d軸インダクタンスLdの誤差の影響は小さい。また、d軸インダクタンスLdは、磁気飽和の影響が小さく、d軸電流idも小さいため、変化は小さい。
【0026】
逆に、永久磁石型同期電動機1の回転速度ωを上げたり、負荷が大きくなると、q軸電流iqは大きくなるため、q軸インダクタンスLqの誤差の影響は大きい。また、q軸インダクタンスLqは、磁気飽和の影響が大きく、q軸電流iqも大きいため、変化が大きい。
そこで、q軸インダクタンスLqが修正できるインダクタンス補正手段13について説明する。一次抵抗Rは、抵抗補正手段12によって修正されるが、q軸インダクタンスLqに誤差があれば正しい値に修正されない。
【0027】
そのため、修正補正値Rxに任意の上限値と下限値とを設け、修正補正値Rxがそれらの値を超えると、
【0028】
【数9】
Figure 0004225657
【数10】
Figure 0004225657
【0029】
なる演算を行って、q軸インダクタンスLqを修正する。ここで、Lxはq軸インダクタンスLqの修正補正値、KLは積分定数である。
q軸インダクタンスLqが実際の値よりも小さければ、vd<vdcとなり、(9)式のLxは増加し、(10)式のLqnも増加することで、q軸インダクタンスLqが修正される。逆にq軸インダクタンスLqが実際の値よりも大きければ、vd>vdcとなり、(9)式のLxは減少し、(10)式のLqnも減少することで、q軸インダクタンスLqが修正される。
以上説明したように、抵抗補正手段12により修正された一次抵抗Rnが大きい任意の値を超えるか、または小さい任意の値よりも下回った場合に出力される信号と、演算されたd軸電圧vdcとd軸電圧vdとからq軸インダクタンスLqを修正することが可能となる。
【0030】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明によれば、永久磁石型同期電動機のq軸インダクタンスを運転状態による変動に関わることなく正しい値に修正でき、さらに永久磁石の磁束と一次抵抗を温度変化による変動に関わることなく正しい値に修正できるようになり、永久磁石型同期電動機での高精度な制御が可能となって、実用上おおいに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を表すブロック図である。
【図2】従来方式の一実施例を表すブロック図である。
【符号の説明】
1 永久磁石型同期電動機
2 電流検出器
3 電力変換器
4 電流制御器
5 q軸電流指令算出器
6 d軸電流指令算出器
7 電流成分変換器
8 電圧検出器
9 電圧成分変換器
10 d軸電圧演算器
11 q軸電圧演算器
12 抵抗補正手段
13 インダクタンス補正手段
14 磁束補正手段
15 減算器
16 減算器
17 速度検出器

Claims (3)

  1. 永久磁石型同期電動機の制御装置において、電流制御器出力を制御入力とする電力変換器を介して供給される前記永久磁石型同期電動機の入力電流を検出する電流検出器及び、この電流検出器出力から前記永久磁石型同期電動機の永久磁石と平行方向をd軸とし垂直方向をq軸として、d軸成分であるd軸電流と、q軸成分であるq軸電流とを出力する電流成分変換器を有し、これらをトルク指令値に追従するよう独立に前記電流制御器にて調整し、また、前記永久磁石型同期電動機の入力電圧を検出する電圧検出器及び、この電圧検出器出力から前記d軸成分であるd軸電圧と、前記q軸成分であるq軸電圧とを出力する電圧成分変換器を有し、前記d軸電流と前記q軸電流と前記永久磁石型同期電動機の回転速度と前記永久磁石型同期電動機の一次抵抗、前記永久磁石型同期電動機のインダクタンスの前記d軸成分であるd軸インダクタンス、前記永久磁石型同期電動機のインダクタンスの前記q軸成分であるq軸インダクタンス、前記永久磁石の磁束とから前記永久磁石型同期電動機のq軸電圧を演算するq軸電圧演算器と、このq軸電圧演算器出力と前記電圧成分変換器出力のq軸電圧とから、永久磁石の磁束を修正する磁束補正手段とを具備して構成することを特徴とする前記永久磁石型同期電動機の制御装置。
  2. 前記d軸電流と前記q軸電流と前記回転速度と前記一次抵抗と前記d軸インダクタンスと前記q軸インダクタンスとから前記永久磁石型同期電動機のd軸電圧を演算するd軸電圧演算器と、このd軸電圧演算器出力と前記電圧成分変換器出力であるd軸電圧とから前記一次抵抗を修正する抵抗補正手段とを具備することを特徴とする請求項1記載の永久磁石型同期電動機の制御装置。
  3. 前記抵抗補正手段によって修正された前記一次抵抗が、大きい任意の値を超えるか、または小さい任意の値よりも下回った場合に、前記d軸電圧演算器出力と前記電圧成分変換器出力であるd軸電圧とから、q軸インダクタンスを修正するインダクタンス補正手段を具備することを特徴とする請求項1と請求項2記載の永久磁石型同期電動機の制御装置。
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