JP4225071B2 - セリア−ジルコニア固溶体の製造方法 - Google Patents

セリア−ジルコニア固溶体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い酸素貯蔵能を有し耐熱性に優れたセリア−ジルコニア固溶体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
排ガス浄化用触媒(三元触媒)は、例えばコージェライト等の耐熱性セラミックスからなる担体基材と、この担体基材上に形成された活性アルミナ等からなる触媒担持層と、この触媒担持層に担持されたPt等の触媒金属と、から構成されている。この三元触媒は、内燃機関の排ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化浄化し、窒素酸化物(NOx )を還元浄化する。
【0003】
ところが、運転条件などによって排ガス中の酸素濃度が大きく変動するため、三元触媒においては酸化と還元の浄化活性が不安定となる場合がある。そこで触媒担持層に助触媒としてセリア(以下、CeO2)を添加することが行われている。CeO2は酸化雰囲気下で酸素を貯蔵し、還元雰囲気下で酸素を放出する酸素貯蔵能(以下 OSCという)をもち、これにより排ガス中の酸素濃度が変動しても安定した浄化活性が得られる。
【0004】
しかし触媒金属とCeO2とを含む三元触媒は、 800℃以上の高温下で使用されると、CeO2の結晶成長により OSCが低下しやすいと言われている。そこでCeO2の結晶成長を抑制して高い OSCを維持するため、CeO2にジルコニア(以下、ZrO2)を添加する手段が開発されている(特開昭63−116741号公報、特開平03−131343号公報)。また特開昭63−116741号公報には、CeO2とZrO2とを少なくとも一部で複合酸化物又は固溶体とすることが開示されている。このようにZrO2を添加することで耐熱性が向上し、高温耐久後の OSCが向上する。
【0005】
さらに特開平08−215569号公報には、金属アルコキシドから調製されたCeO2−ZrO2複合酸化物を用いる技術が開示されている。金属アルコキシドからゾル−ゲル法により調製されたCeO2−ZrO2複合酸化物は、CeとZrとが原子又は分子レベルで複合化されて固溶体となるため、耐熱性が向上し初期から耐久後まで高い OSCが確保される。
【0006】
また特表平10−512191号公報には、水溶性無機セリウム塩と水溶性無機ジルコニウム塩の混合水溶液のpHをアルカリ性とすることで前駆体を共沈させ、それを焼成してなるCeO2−ZrO2固溶体が開示されている。この共沈法で製造されたCeO2−ZrO2固溶体は、1000℃もの高温で焼成した後も高い比表面積を示すため、触媒担体として最適であることが記載されている。
【0007】
しかし近年では自動車排ガスの高温化が進み、上記した従来のCeO2−ZrO2固溶体を用いた触媒でも、 OSCは高いものの耐熱性に不足するという不具合があった。これは、CeO2−ZrO2固溶体にシンタリングが生じて、比表面積が小さくなるために生じることがわかっている。
【0008】
また従来のCeO2−ZrO2固溶体では、ZrO2の固溶度が低い場合には、 OSCが 150μmol-O2/g程度にしかならず、性能が劣っていた。さらに、固溶度が高い場合であっても、必ずしも高い OSCが発現されるとは限らない。例えば特開平09−221304号公報には固溶度が高いCeO2−ZrO2固溶体が開示されている。しかし同公報に開示のCeO2−ZrO2固溶体においては、 OSCの発現に寄与するセリウムイオンの比率は、原子比Ce/Zrが5/5で53%、原子比Ce/Zrが3/7で69.5%であり、セリウムイオンの利用効率が十分ではない。したがってセリウムイオンの利用効率をさらに高めることで、 OSCをさらに向上させることが望まれる。
【0009】
一方、特開平08−109020号公報には、酸化セリウム,酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムを含有し、φ’相をもつ複合酸化物が開示されている。φ’相とは、セリウムイオンとジルコニウムイオンの規則配列をもつCeO2−ZrO2固溶体を指す。
【0010】
セリウムイオンとジルコニウムイオンの規則配列をもつCeO2−ZrO2固溶体、正確にはセリア−ジルコニア複酸化物は、 800μmol-O2/g程度の高い OSCを1000℃付近の高温まで維持することがわかっている。しかし上記公報に記載の複合酸化物では、規則配列を形成するためには高温での還元処理が必要であるために、シンタリングによって比表面積が5m2/g程度まで低下するという問題がある。
【0011】
【特許文献1】
特開昭63−116741号
【特許文献2】
特開平08−215569号
【特許文献3】
特表平10−512191号
【特許文献4】
特開平09−221304号
【特許文献5】
特開平08−109020号
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ZrO2が98%以上の固溶度で均一に固溶し、高い OSCと高い耐熱性を発現するCeO2−ZrO2固溶体とすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明のCeO2−ZrO2固溶体の製造方法の特徴は、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、水と、有機化合物とからなる混合物を調製する混合工程と、混合物を加熱することで混合物を分解し均一な前駆体を形成する分解工程と、前駆体を焼成して有機物を燃焼除去するとともにセリア−ジルコニア固溶体を形成する焼成工程と、よりなるセリア−ジルコニア固溶体の製造方法であって、
混合物は、加熱時にセリウム塩及びジルコニウム塩が溶解した溶液を形成するとともに、分解工程においてセリウム塩及びジルコニウム塩の少なくとも一部が分解した後に少なくとも一部の有機物が液状であることにある。
【0014】
本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体は、立方晶蛍石構造をもち、パイロクロア相などの特別な陽イオンの規則配列はもたず、 500℃の還元雰囲気でCeイオンの75%以上が3価となり得る。 500℃の還元雰囲気でCeイオンの90%以上が3価となり得ることが望ましい。
【0015】
また本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体は、ZrO2が98%以上の固溶度で均一に固溶した構造とすることができる。そして 600℃で5時間の焼成後の比表面積が80m2/g以上であり、 800℃で5時間の焼成後の比表面積が40m2/g以上であり、さらに1000℃で5時間の焼成後の比表面積が20m2/g以上であるような特性をもつことが可能となる。
【0016】
さらに本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体は、Ce/Zr原子比が45/55〜40/60の範囲に酸素貯蔵量のピ−ク値をもつという特異な作用が奏される。
【0017】
また本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体は、含まれる全セリウムイオンのうち、酸素貯蔵能の発現に寄与するセリウムイオンの比率が60%以上であることが望ましく、75%以上、さらには90%以上であることが望ましい。
【0018】
酸素貯蔵能の発現に使用されるセリウムイオンの比率が60%以上であるCeO2−ZrO2固溶体においては、 500℃における飽和酸素貯蔵量が 450μmol-O2/g以上であることが好ましく、 500℃における飽和酸素貯蔵量が 500μmol-O2/g以上であることがさらに望ましい。
【0019】
本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体によれば、酸素貯蔵能の発現に使用されるセリウムイオンの比率が60%以上であるCeO2−ZrO2固溶体においても、 600℃で5時間の焼成後の比表面積が80m2/g以上であり、 800℃で5時間の焼成後の比表面積が40m2/g以上であり、さらに1000℃で5時間の焼成後の比表面積が20m2/g以上であるような特性をもつことが可能となる。そして原子比Ce/Zrが1/9の場合にも、 500℃の熱処理後に正方晶又は単斜晶に変態せず実質的に蛍石構造の立方晶を維持できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のCeO2−ZrO2固溶体の製造方法では、先ず混合工程において、加熱により分解するセリウム化合物及びジルコニウム化合物と有機物を含み、少なくとも加熱時にセリウム化合物及びジルコニウム化合物が溶解した溶液を形成するとともに、セリウム化合物及びジルコニウム化合物の少なくとも一部が分解した後に少なくとも一部の有機物が液状である混合物が調製される。
【0021】
混合物中のセリウム元素とジルコニウム元素の混合比には特に制限がないが、排ガス浄化用触媒として用いるのであれば、原子比Ce/Zrが9/1〜1/9、好ましくは6/4〜2/8、さらに好ましくは5/5〜3/7の範囲とするのがよい。
【0022】
分解工程では、混合物を加熱することで混合物を分解し均一な前駆体が形成される。少なくとも混合物の加熱時には、混合物は均一な溶液を形成するので、セリウムイオンとジルコニウムイオンが均一に混合された状態となる。さらなる加熱によって混合物が分解するが、セリウム化合物及びジルコニウム化合物の少なくとも一部が分解した後に少なくとも一部の有機物が液状であるので、セリウムイオンとジルコニウムイオンは液状の有機物中で原子レベルで均一に混合された状態が維持され、その状態を安定して維持することができる。これによりセリウムイオンとジルコニウムイオンが均一に混合された前駆体が形成される。
【0023】
そして焼成工程において前駆体を焼成することで、有機物が燃焼除去されるとともに、ZrO2が均一に固溶した本発明のCeO2−ZrO2固溶体が製造される。なお分解工程及び焼成工程は、別々に行うこともできるが、連続的に行うことが望ましい。これにより途中で冷えるのが防止でき、エネルギーの消費量を低減することができる。
【0024】
分解工程は、一定温度又は50℃/hrより遅い昇温速度で行うことが望ましい。これにより水又は分解ガスが円滑に除去され、均質な前駆体が形成される。また焼成工程では、共存する有機物を燃焼除去する際の発熱によって比表面積が低下する恐れがある。したがって昇温速度を50℃/hrより遅くするか、又は前駆体の温度が最終焼成温度を超えない範囲で昇温速度を調整することが望ましい。
【0025】
混合工程で調製される混合物としては、(1)セリウム塩とジルコニウム塩と有機化合物とからなる混合物、(2)水溶性の有機セリウム塩と水溶性の有機ジルコニウム塩と水とからなる混合物、(3)水溶性セリウム塩と水溶性ジルコニウム塩と水より沸点が高く水と共沸しない水溶性有機化合物と水とからなる混合物、(4)一方が水溶性無機塩であり他方が水溶性有機塩であるセリウム塩及びジルコニウム塩と水より沸点が高く水と共沸しない水溶性有機化合物と水とからなる混合物などが例示される。少なくとも加熱時に均一な溶液となり、かつセリウム化合物及びジルコニウム化合物が分解した後に少なくとも一部の有機物が液状であればよく、室温から均一な溶液となっていてもよい。
【0026】
(1)セリウム塩と、ジルコニウム塩と、有機化合物と、からなる混合物の場合。
【0027】
セリウム塩とジルコニウム塩及び有機化合物は、少なくとも加熱時にセリウム塩とジルコニウム塩が有機化合物に溶解し、かつセリウム塩及びジルコニウム塩が分解した後に少なくとも一部の有機物が液状であればよく、これらの種類は種々の組合せから選択することができる。
【0028】
例えばセリウム塩及びジルコニウム塩は、硝酸塩,硫酸塩,亜硫酸塩,塩化物,各種無機錯塩などの無機塩、カルボン酸塩,各種有機錯塩などの有機塩を用いることができる。セリウム塩とジルコニウム塩とは分解温度が近接しているものが望ましく、この意味から同種の塩を用いることが望ましい。
【0029】
また有機化合物としては、室温で液状の有機化合物を用いてもよいし、室温では固体であるが所定温度では液状となる有機化合物を用いることもできる。このような有機化合物としては、一価アルコール、多価アルコール、多価アルコールのモノマー,ダイマー,トリマーあるいはポリマー、水溶性高分子化合物、単糖類、二糖類、多糖類、炭水化物、カルボン酸類及びその塩、界面活性剤などの水溶性有機化合物が特に好ましいが、上記条件を満たすものであれば水溶性に限るものではない。
【0030】
一価アルコールとしては、1-ペンタノール,1-ヘキサノール,1-ヘプタノール,1-オクタノール,2-オクタノール,モノエタノールアミン,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,その他、炭素数が10までのアルキルアルコール,アミノアルキルアルコール及びその異性体や誘導体が例示される。
【0031】
多価アルコールのモノマーとしては、ジエタノールアミン,トリエタノールアミン,エチレングリコール,プロピレングリコール,グリセリン,1,5-ペンタンジオール,その他、炭素数が10までの多価アルコールが例示される。多価アルコールのダイマーとしては、ジエチレングリコール,エチレンプロピレングリコール,それらの誘導体及びその他の二価アルコールが縮合したダイマーが例示される。多価アルコールのトリマーとしては、トリエチレングリコール,トリプロピレングリコール,それらの誘導体及びその他の2価アルコールが縮合したトリマーが例示される。
【0032】
水溶性高分子化合物としては、ポリエチレングリコール,ポリアクリル酸及びその誘導体,ポリビニルアルコール及びその誘導体,セルロース及びその誘導体などが例示される。
【0033】
単糖類、二糖類、多糖類、炭水化物としては、ソルビトール,デキストリン,澱粉,グリコーゲン,ペントース,グルコース,フルクトース,ガラクトース,マルトース,サッカロース,ラクトース,マンノースなどが例示される。またカルボン酸類及びその塩としては、クエン酸,コハク酸,酒石酸,リンゴ酸,マロン酸,マンノン酸,及びこれらの塩が例示される。
【0034】
そして界面活性剤としては、アルキレンオキサイド系,ポリエーテル系,ポリエステル系の非イオン性界面活性剤、脂肪酸系,アルファスルホ脂肪酸エステル塩系,直鎖アルキルベンゼン系,アルキルベンゼンスルホン酸塩系,高級アルコール系,硫酸アルキル塩系,硫酸アルキルポリオキシエチレン塩系,モノアルキルリン酸エステル塩系,α−オレフィン系,α−オレフィンスルホン酸塩系の陰イオン性界面活性剤、モノアルキルアンモニウム,ジアルキルアンモニウム,トリアルキルアンモニウムのクロライド又はアセテートからなる陽イオン性界面活性剤が例示される。
【0035】
有機化合物の混合量は、最終的に得られるCeO2−ZrO2固溶体の 100重量部に対して10〜1000重量部とするのがよく、より好ましくは50〜 300重量部とするのがよい。有機化合物の量がこの範囲より少ないと均一に固溶したCeO2−ZrO2固溶体を得ることが困難となり、有機化合物の量がこの範囲より多くなると分解工程又は焼成工程の時間が長くなって多大なエネルギーを必要とするため好ましくない。
【0036】
セリウム塩及びジルコニウム塩の少なくとも一方が有機塩である場合には、その分解により生成する有機物が上記した有機化合物の機能の一部を担うことがある。その場合には、上記の有機化合物の混合量を上記範囲から少なくすることも可能である。
【0037】
分解工程では、混合物が加熱される。そして加熱に伴ってセリウム塩及びジルコニウム塩が分解し、有機化合物あるいはその分解物をマトリックスとしその中にセリウムイオン及びジルコニウムイオンが原子レベルで均一に分散した前駆体が生成する。なお有機化合物が先に燃焼すると、セリウム塩及びジルコニウム塩の分解物が前駆体となるが、同種のものどうしが凝集して不均一となる場合がある。したがって分解工程では、有機化合物の蒸発又は分解より前にセリウム塩及びジルコニウム塩が分解することが望ましい。
【0038】
そして焼成工程においてさらに加熱することにより、有機物が燃焼除去され、セリウムイオン及びジルコニウムイオンが原子レベルで均一に分散したCeO2−ZrO2固溶体が得られる。
【0039】
(2)水溶性の有機セリウム塩と、水溶性の有機ジルコニウム塩と、水と、からなる混合物の場合。
【0040】
この場合には、分解工程において加熱前から均一な溶液とすることができる。そして水溶性の有機セリウム塩と水溶性の有機ジルコニウム塩は、有機セリウム塩と有機ジルコニウム塩が分解することにより生成する有機物の少なくとも一部が液状であるものを用いる。
【0041】
例えば水溶性の有機セリウム塩及び水溶性の有機ジルコニウム塩としては、セリウムとジルコニウムのカルボン酸塩、各種有機錯塩などが例示される。カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、R1COOH、R2(COOH)2 、R3(COOH)3 のいずれかを用いることができる。但しR1は炭素数が1〜10のアルキル基、R2は炭素数が0〜10のアルキル基、R3は炭素数が1〜10のアルキル基であることが好ましい。炭素数が多くなると水への溶解が困難となる。水溶性有機セリウム塩と水溶性有機ジルコニウム塩とは分解温度が近接しているものが望ましく、この意味から同種の塩を用いることが望ましい。
【0042】
また水の混合量は、少なくとも加熱時に有機セリウム塩及び有機ジルコニウム塩が完全溶解する量以上とされる。
【0043】
分解工程では、加熱により先ず水が蒸発する。そして水の蒸発に伴って水溶性有機セリウム塩及び水溶性有機ジルコニウム塩が析出するが、水溶液からの析出であるためにセリウムイオン及びジルコニウムイオンは原子レベルで均一に分散した状態となっている。水の蒸発に伴って系の温度は 100℃から徐々に上昇し、その間に水溶性有機セリウム塩及び水溶性有機ジルコニウム塩の分解が生じる場合もあるが、特に問題とはならない。
【0044】
分解工程においてさらに加熱すると、水溶性有機セリウム塩と水溶性有機ジルコニウム塩が分解し、その分解物である有機物をマトリックスとしその中にセリウム及びジルコニウムが原子レベルで均一に分散した前駆体が生成する。
【0045】
そして焼成工程においてさらに加熱することにより、有機物が燃焼除去され、セリウムイオン及びジルコニウムイオンが原子レベルで均一に分散したCeO2−ZrO2固溶体が得られる。
【0046】
(3)水溶性セリウム塩と、水溶性ジルコニウム塩と、水より沸点が高く水と共沸しない水溶性有機化合物と、水と、からなる混合物の場合。
【0047】
水溶性無機セリウム塩及び水溶性無機ジルコニウム塩としては、セリウムとジルコニウムの硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、塩化物、各種無機錯塩などが例示される。水溶性無機セリウム塩と水溶性無機ジルコニウム塩とは分解温度が近接しているものが望ましく、この意味から同種の塩を用いることが望ましい。また水溶性有機化合物は、(1)で例示した水溶性有機化合物を用いることができる。
【0048】
水溶性有機化合物の混合量は、最終的に得られるCeO2−ZrO2固溶体の 100重量部に対して10〜1000重量部とするのがよく、より好ましくは50〜 300重量部とするのがよい。水溶性有機化合物の量がこの範囲より少ないと均一に固溶したCeO2−ZrO2固溶体を得ることが困難となり、水溶性有機化合物の量がこの範囲より多くなると分解工程又は焼成工程の時間が長くなって多大なエネルギーを必要とするため好ましくない。
【0049】
水溶性無機セリウム塩と、水溶性無機ジルコニウム塩と、水溶性有機化合物と、水と、が混合された混合溶液は、少なくとも分解工程における加熱時に全ての成分が均一に溶解すればよく、加熱前には懸濁状であってもよい。
【0050】
分解工程では、混合物が加熱される。水溶性有機化合物は水より沸点が高く水と共沸しないので、加熱により水のみが蒸発する。そして水の蒸発に伴って水溶性無機セリウム塩、水溶性無機ジルコニウム塩及び水溶性有機化合物が析出するが、水溶液からの析出であるために、セリウムイオン及びジルコニウムイオンは水溶性有機化合物のマトリックス中に原子レベルで均一に分散した状態となっている。そして加熱に伴って水溶性無機セリウム塩及び水溶性無機ジルコニウム塩が分解し、水溶性有機化合物あるいはその分解物をマトリックスとしその中にセリウムイオン及びジルコニウムイオンが原子レベルで均一に分散した前駆体が生成する。なお水溶性有機化合物が先に燃焼すると、水溶性無機セリウム塩及び水溶性無機ジルコニウム塩の分解物が前駆体となるが、同種のものどうしが凝集して不均一となる場合がある。したがって分解工程では、水溶性有機化合物の蒸発又は分解より前に水溶性無機セリウム塩及び水溶性無機ジルコニウム塩が分解することが望ましい。
【0051】
そして焼成工程においてさらに加熱することにより、有機物が燃焼除去され、セリウムイオン及びジルコニウムイオンが原子レベルで均一に分散したCeO2−ZrO2固溶体が得られる。
【0052】
(4)一方が水溶性無機塩であり他方が水溶性有機塩であるセリウム塩及びジルコニウム塩と、水より沸点が高く水と共沸しない水溶性有機化合物と、水と、からなる混合物の場合。
【0053】
水溶性無機塩及び水溶性有機塩としては、先に例示したものを用いることができる。セリウム塩及びジルコニウム塩の一方が無機塩であり他方が有機塩であれば、セリウム塩とジルコニウム塩のどちらが無機塩であっても構わない。また水溶性有機化合物は、、(1)で例示した水溶性有機化合物を用いることができる。セリウム塩とジルコニウム塩とは分解温度が近接しているものが望ましい。
【0054】
水溶性有機化合物の混合量は、最終的に得られるCeO2−ZrO2固溶体の 100重量部に対して10〜1000重量部とするのがよく、より好ましくは50〜 300重量部とするのがよい。水溶性有機化合物の量がこの範囲より少ないと均一に固溶したCeO2−ZrO2固溶体を得ることが困難となり、水溶性有機化合物の量がこの範囲より多くなると分解工程又は焼成工程の時間が長くなって多大なエネルギーを必要とするため好ましくない。
【0055】
セリウム塩と、ジルコニウム塩と、水溶性有機化合物と、水と、が混合された混合溶液は、少なくとも分解工程における加熱時に全ての成分が均一に溶解すればよく、加熱前には懸濁状であってもよい。
【0056】
分解工程では、混合物が加熱される。水溶性有機化合物は水より沸点が高く水と共沸しないので、加熱により水のみが蒸発する。そして水の蒸発に伴って水溶性セリウム塩、水溶性ジルコニウム塩及び水溶性有機化合物が析出するが、水溶液からの析出であるために、セリウムイオン及びジルコニウムイオンは水溶性有機化合物のマトリックス中に原子レベルで均一に分散した状態となっている。そして加熱に伴って水溶性セリウム塩及び水溶性ジルコニウム塩が分解し、水溶性有機化合物,その分解物あるいは水溶性有機塩の分解物をマトリックスとしその中にセリウムイオン及びジルコニウムイオンが原子レベルで均一に分散した前駆体が生成する。なお水溶性有機化合物が先に燃焼すると、セリウム塩及びジルコニウム塩の分解物が前駆体となるが、同種のものどうしが凝集して不均一となる場合がある。したがって分解工程では、水溶性有機化合物の蒸発又は分解より前にセリウム塩及びジルコニウム塩が分解することが望ましい。
【0057】
なおセリウム塩又はジルコニウム塩の分解により生成する有機物が上記した水溶性有機化合物の機能の一部を担う場合には、上記の水溶性有機化合物の混合量を上記範囲から少なくすることも可能である。
【0058】
そして焼成工程においてさらに加熱することにより、有機物が燃焼除去され、セリウムイオン及びジルコニウムイオンが原子レベルで均一に分散したCeO2−ZrO2固溶体が得られる。このCeO2−ZrO2固溶体は立方晶蛍石構造をもち、パイロクロア相などの特別な陽イオンの規則配列はもたず、 500℃の還元雰囲気でCeイオンの75%以上が3価となり得る。 500℃の還元雰囲気でCeイオンの90%以上が3価となり得ることが好ましい。
【0059】
上記製造方法により得られる CeO 2 ZrO 2 固溶体は、ZrO2が98%以上の固溶度で均一に固溶した構造とすることができる。また均一なメソ細孔を有しているため耐熱性が向上し、 600℃で5時間の焼成後の比表面積が80m2/g以上であり、 800℃で5時間の焼成後の比表面積が40m2/g以上であり、さらに1000℃で5時間の焼成後の比表面積が20m2/g以上であるような特性をもつことが可能となる。
【0060】
なお固溶度とは、X線回折のピークシフトから次式によって定義される値をいう。
【0061】
固溶度(%)= 100×(CeO2に固溶したZrO2の量)/ZrO2の総量
固溶度S(%)は式(1)によって算出される。
【0062】
S= 100×(x/C)×〔( 100−C)/( 100−x)〕…(1)
ここでCはCeとZrの配合比から求められるZrO2の含有率(%)、xはX線回折から求める格子定数から式(2)によって算出されるCeO2に固溶しているZrO2の濃度(%)である。
【0063】
x=( 5.423−a)/0.003 …(2)
なお式(2)のaは格子定数(Å)である。
【0064】
本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体において、理論 OSC値(系に含まれるセリウムイオンの全てが3価から4価に可逆的に変化する場合に得られる OSC)に近い高い OSCが得られる機構を説明するために、先ずCeO2中にZrO2が固溶することでCeO2の OSCが高まる機構を説明する。
【0065】
ジルコニウムイオンはCeO2の蛍石構造の陽イオンサイトであるセリウムイオンと置換して固溶する。ジルコニウムイオンはイオン半径が4価のセリウムイオンより約20%小さいため、CeO2中にZrO2が固溶することでセリウムイオンが3価になる際の体積膨張による歪みが緩和される。これにより OSCが向上すると考えられている。したがって、CeO2−ZrO2固溶体においては、セリウムイオンとジルコニウムイオンがなるべく近くの位置に存在する方が効率がよいと考えられる。
【0066】
CeO2−ZrO2固溶体は、CeO2と同様に蛍石構造の結晶構造をとることが知られており、セリウムイオンとジルコニウムイオンとが固溶体中で規則配列したφ(パイロクロア)相と、φ’相の結晶構造を還元状態、酸化状態でそれぞれとるとき、理論値に近い高い OSCが得られることがわかっている。この理由は、セリウムイオンとジルコニウムイオンが近くの位置に存在するためには、規則配列が最も好都合であることによる。なおφ(パイロクロア)相とφ’相は、厳密には蛍石構造ではない別の結晶構造であって、また、CeO2−ZrO2固溶体ではなく特定組成をもつ複酸化物と称すべきであることに注意しなければならないが、本明細書ではCeO2−ZrO2固溶体と言っている。
【0067】
一方、セリウムイオンとジルコニウムイオンとが規則配列しないランダム配列のCeO2−ZrO2固溶体では、固溶度が 100%のCeO2−ZrO2固溶体であっても理論値に近い OSCはこれまで得られていない。この理由については以下のように考えられる。これまでの合成方法では、CeO2−ZrO2固溶体中のセリウムイオンとジルコニウムイオンの配列が完全にランダムではなく、セリウムイオンどうし又はジルコニウムイオンどうしのクラスターがCeO2−ZrO2固溶体の結晶子内部に存在しているものと考えられる。そのためジルコニウムイオンによる OSC向上作用が十分に奏されないと考えられる。
【0068】
しかし本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体は、セリウムイオンとジルコニウムイオンの分布のランダム性が高いために、ジルコニウムイオンによる OSC向上作用が有効に奏され、酸素貯蔵能の発現のために使用されるセリウムイオンの比率が高まったために、理論値に近い高い OSCが得られたものと考えられる。
【0069】
還元雰囲気においてφ’相のCeO2−ZrO2複酸化物から酸素が放出される場合、4配位の陽イオンのうち4つともジルコニウムイオンである酸素が放出されることがわかっている。CeO2−ZrO2固溶体の蛍石構造はφ’相のCeO2−ZrO2固溶体の構造に近いので、この酸素放出の理論を適用して考察することとする。
【0070】
完全にランダムなセリウムイオンとジルコニウムイオンの分布が実現された場合、4配位の陽イオンのうち4つともがジルコニウムイオンとなる酸素の量をCeO2−ZrO2組成に対して見積もると、図1に示す理論値Aの曲線(直線)で表される。一方、図1に示す理論値Bの曲線は、CeO2−ZrO2固溶体中のセリウムイオンの含有率から規定される値を示している。したがって完全にランダムなセリウムイオンとジルコニウムイオンの分布が実現された場合において、ZrO2の含有率に対する OSCは、理論値Aと理論値Bの両曲線で囲まれたZrO2含有率が57mol%付近にピークをもつと予想される。
【0071】
本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体における OSC特性は、従来のCeO2−ZrO2固溶体とは異なってZrO2含有率が60mol%付近にピークをもち、上記した予想値にきわめて近いことから、本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体中のセリウムイオンとジルコニウムイオンの分布はこれまでのCeO2−ZrO2固溶体に比較してランダム性が高く、その程度の差が OSCの大きさの差に対応していることが理解される。
【0072】
またφ’相のCeO2−ZrO2固溶体を得るためには、1200℃程度の高い還元温度が必要なため、高比表面積をもつφ’相を得ることはできない。図1においてZrO2含有率が70mol%以上では、本発明の実施例3のCeO2−ZrO2固溶体がφ’相のCeO2−ZrO2固溶体(比較例2)よりも理論値Aに近い OSCを発現していることがわかる。本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体がφ’相のCeO2−ZrO2固溶体を凌ぐ理由は、本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体の方がφ’相のCeO2−ZrO2固溶体よりも結晶子が小さい(比表面積が大きい)ので、酸素放出による結晶子の歪みが緩和されやすいためと考えられる。
【0073】
一方、本発明の製造方法によるCeO2−ZrO2固溶体と他の製造方法によるCeO2−ZrO2固溶体では、ZrO2含有率が30mol%以下の領域において OSCの差が小さくなっている。この理由は、この領域ではZrO2の OSC向上効果が小さくバルクからの酸素放出は小さくなるものの、結晶子表面近傍の格子歪が緩和されやすい部分からの酸素放出はある程度維持され、ZrO2の分散均質性の程度の差の影響が小さくなるからと考えられる。φ’相のCeO2−ZrO2固溶体は、ZrO2含有率が30mol%以下の組成領域において実施例3のCeO2−ZrO2固溶体より OSCが小さくなっているが、この理由は、比表面積が小さいことにより、結晶子表面近傍からの酸素放出が小さいためと考えられる。
【0074】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0075】
(実施例1)
硝酸セリウム六水和物 0.093モルと、塩化酸化ジルコニウム八水和物 0.114モルとをガラスビーカ中でエチレングリコール 100g中に溶解し、混合溶液を調製した。この混合溶液をヒータ付きマグネチックスターラーで撹拌しながら 150℃にヒータ温度を保ち、塩の分解が起きて白濁するまで加熱し、さらに白濁した溶液がゲル状になるまで加熱した。最終到達温度は 150℃である。
【0076】
次にガラスビーカを脱脂炉に移し、50℃/hrの昇温速度で室温から 500℃まで加熱し、 500℃で5時間保持して、有機物が除去された酸化物粉末を得た。
【0077】
(実施例2)
CeO2として20重量%含む硝酸セリウム水溶液と、ZrO2として20重量%含む硝酸ジルコニル水溶液を、CeO2として 0.093モル及びZrO2として 0.114モルとなるようにガラスビーカ中で混合し、マグネチックスターラーで撹拌しながらさらにエチレングリコール 190gを添加して混合溶液を調製した。
【0078】
次にヒータのスイッチを入れ、撹拌しながら、ヒータ温度を 200℃付近に保った。混合溶液からは先ず水分が蒸発し始め、溶液の体積が減少する途中で塩が分解して分解ガスが発生した。溶液は加熱途中で白濁し、次いでゲル状に変化した。
【0079】
溶液の体積が約1/2程度となったときに加熱を止めてガラスビーカを脱脂炉に移し、50℃/hrの昇温速度で室温から 500℃まで加熱し、 500℃で5時間保持して、有機物が除去された酸化物粉末を得た。
【0080】
(実施例3)
CeO2として20重量%含む硝酸セリウム水溶液と、ZrO2として20重量%含む硝酸ジルコニル水溶液を、CeO2及びZrO2として表1に示す組成となるようにそれぞれ混合したこと、及びエチレングリコールの添加量をそれぞれ 100gとしたこと以外は実施例2と同様にして9種類の混合溶液を調製し、同様に加熱してそれぞれの酸化物粉末を得た。
【0081】
【表1】
Figure 0004225071
【0082】
(比較例1)
イオン交換水 300gに、CeO2として20重量%含む硝酸セリウム水溶液と、ZrO2として20重量%含む硝酸ジルコニル水溶液を、CeO2として 0.093モル及びZrO2として 0.114モルとなるように混合し、さらに30%過酸化水素水をH2O2として 0.2モルとなるように添加して、混合水溶液を調製した。
【0083】
得られた混合水溶液をホモジナイザーで撹拌しながら、25%アンモニア水を NH3がCeO2とZrO2の合計モル数の 1.2倍モルとなるように加え、さらに10分間撹拌した。その後、 100℃/時間の昇温速度で溶液を加熱し、 500℃で5時間保持して、有機物が除去された酸化物粉末を得た。得られた酸化物は、蛍石構造のCeO2−ZrO2固溶体である。
【0084】
(比較例2)
CeO2として20重量%含む硝酸セリウム水溶液と、ZrO2として20重量%含む硝酸ジルコニル水溶液を、CeO2及びZrO2として表2に示す組成となるようにそれぞれ混合したこと以外は比較例1と同様にして7種類の混合溶液を調製し、比較例1と同様に加熱してそれぞれの酸化物粉末を得た。得られた酸化物は、蛍石構造のCeO2−ZrO2固溶体である。
【0085】
【表2】
Figure 0004225071
【0086】
(比較例3)
市販のCeO2粉末50gをエタノールを分散媒として、ZrO2製の粉砕媒体を用いた媒体撹拌型ミル(ダイノーミル)を用いて粉砕を行った。そして4200 rpmの回転数で粉砕処理を行いながら、粉砕媒体からZrO2を供給し、メカニカルアロイング法によってCeO2にZrO2が均一に固溶した酸化物を合成した。得られた酸化物は、蛍石構造のCeO2−ZrO2固溶体である。粉砕時間を長くするほどZrO2の含有率が高くなるので、粉砕時間を種々変化させて表3に示すZrO2含有率の酸化物をそれぞれ合成した。なおZrO2含有率は、 ICP(誘導結合型プラズマ発光分析装置)による組成分析により求めた。
【0087】
【表3】
Figure 0004225071
【0088】
<試験・評価>
実施例3及び比較例2,3のCeO2−ZrO2固溶体について OSCを測定し、結果を図1に示す。なお OSCの測定は、各CeO2−ZrO2固溶体に含浸法によって1重量%のPtをそれぞれ担持し、H2を20体積%含むN2ガスとO2を50体積%含むN2ガスを交互に流通させる雰囲気下にて、熱重量分析器を用いて 500℃における可逆的な重量変化量を測定し、重量変化量を酸素の吸放出量に換算することで行った。なお図1には、セリウムイオンの含有率によって制限される OSCの上限を理論値Aとして示し、これはセリウムイオンが全て3価と4価を可逆的に変化する場合に対応する。また、セリウムイオンとジルコニウムイオンの分布が完全にランダムだと仮定した場合、酸素に配位する陽イオンが全てジルコニウムイオンとなる場合の酸素の数に対応する OSCを理論値Bとして示す。長井ら(Catalysis Today 2679(2002) P1-10)によれば、バルクから酸素が放出される場合、配位する4つの陽イオンが全てジルコニウムイオンである酸素が放出されると予想されている。なお表面近傍の酸素はその限りではなく、セリウムイオンが配位している酸素も放出される。
【0089】
図1より、実施例3のCeO2−ZrO2固溶体は、原子比Ce/Zrが50/50から30/70の範囲に OSCのピークをもっている。このことは、比較例2及び比較例3のCeO2−ZrO2固溶体に比べ、実施例3のCeO2−ZrO2固溶体では、セリウムイオンとジルコニウムイオンの配列が、より固溶体の結晶内部の酸素が脱離しやすい理想的なランダム分散状態に近い状態になっていることを示している。そして実施例3のCeO2−ZrO2固溶体は、比較例2,3のCeO2−ZrO2固溶体に比べて高い OSCを有し、ZrO2含有率が50〜70mol%で 500℃における飽和酸素貯蔵量が 500μmol-O2/g以上となることが明らかである。
【0090】
また図2には、CeO2−ZrO2固溶体中のセリウムイオンあたりの OSCを示している。実施例3のCeO2−ZrO2固溶体は、ZrO2含有率が50mol%以上で含まれる全セリウムイオンのうち、酸素貯蔵能の発現に寄与するセリウムイオンの比率が60%以上であり、ZrO2含有率が60mol%以上では酸素貯蔵能の発現に寄与するセリウムイオンの比率が80%以上であって、比較例2,3のCeO2−ZrO2固溶体に比べてセリウムイオンの利用率が高く、この点からも高い OSCを有することが明らかである。
【0091】
(実施例4)
エチレングリコールの添加量を 100gにしたこと、またアルミナ超微粒子(「ARUMIMUMOXIDE C」デグッサ社製) 10.54gを加熱前の混合溶液にさらに添加したこと以外は実施例2と同様にして混合溶液を調製し、同様に加熱して酸化物を得た。
【0092】
<試験・評価>
実施例1,2,4及び比較例1のCeO2−ZrO2固溶体について、表4に示す各温度でそれぞれ5時間熱処理し、熱処理後の比表面積を BET1点法で測定した。結果を表4に示す。
【0093】
【表4】
Figure 0004225071
【0094】
表4より、実施例1,2,4のCeO2−ZrO2固溶体は比較例1のCeO2−ZrO2固溶体に比べて熱処理後の比表面積が大きく、耐熱性に優れていることが明らかである。そして実施例2,4のCeO2−ZrO2固溶体は、 600℃で5時間焼成後の比表面積が80m2/g以上であり、 800℃で5時間焼成後の比表面積が40m2/g以上であり、かつ1000℃で5時間焼成後の比表面積が20m2/g以上であるという特性を有していることがわかる。
【0095】
(実施例5)
ZrO2の含有率がゼロから 100重量%の間で10重量%間隔となるようにして、実施例2と同様にして11種類のCeO2−ZrO2固溶体を調製した。これらのCeO2−ZrO2固溶体をそれぞれ 600℃で5時間焼成し、その後X線回折分析を行った。得られた XRD回折図を図3に示す。
【0096】
図3より、各組成の結晶相は蛍石構造であり、φ(パイロクロア)相,φ’相,κ相などは含んでいないことがわかる。そして原子比Ce/Zrが1/9の場合にも、 600℃の熱処理後に正方晶又は単斜晶に変態せず実質的に蛍石構造の立方晶を維持できることが明らかである。
【0097】
【発明の効果】
すなわち本発明のCeO2−ZrO2固溶体の製造方法によれば、セリウムとジルコニウムが均一に分散し、ZrO2の固溶度が98%以上のCeO2−ZrO2固溶体を容易にかつ安定して製造することができる。
【0098】
そして本発明で製造される CeO 2 ZrO 2 固溶体によれば、高い OSCが発現されるとともに高温耐久後も高い比表面積を有し、排ガス浄化用触媒の助触媒あるいは担体としてきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例のCeO2−ZrO2固溶体のZrO2含有率と酸素貯蔵量との関係を理論値と共に示すグラフである。
【図2】実施例及び比較例のCeO2−ZrO2固溶体のZrO2含有率とCe利用率との関係を示すグラフである。
【図3】実施例のCeO2−ZrO2固溶体の XRD回折図である。

Claims (4)

  1. セリウム塩と、ジルコニウム塩と、水と、有機化合物とからなる混合物を調製する混合工程と、
    該混合物を加熱することで該混合物を分解し均一な前駆体を形成する分解工程と、
    該前駆体を焼成して有機物を燃焼除去するとともにセリア−ジルコニア固溶体を形成する焼成工程と、よりなるセリア−ジルコニア固溶体の製造方法であって、
    該混合物は、加熱時に該セリウム塩及び該ジルコニウム塩が溶解した溶液を形成するとともに、該分解工程において該セリウム塩及び該ジルコニウム塩の少なくとも一部が分解した後に少なくとも一部の有機物が液状であることを特徴とするセリア−ジルコニア固溶体の製造方法。
  2. 水溶性の有機セリウム塩と、水溶性の有機ジルコニウム塩と、水と、からなる混合物を調製する混合工程と、
    該混合物を加熱することで該混合物を分解し均一な前駆体を形成する分解工程と、
    該前駆体を焼成して有機物を燃焼除去するとともにセリア−ジルコニア固溶体を形成する焼成工程と、よりなるセリア−ジルコニア固溶体の製造方法であって、
    該混合物は、加熱時に該有機セリウム塩及び該有機ジルコニウム塩が溶解した溶液を形成するとともに、該分解工程において該有機セリウム塩及び該有機ジルコニウム塩の少なくとも一部が分解した後に少なくとも一部の有機物が液状であることを特徴とするセリア−ジルコニア固溶体の製造方法。
  3. 前記混合物は、水溶性セリウム塩と、水溶性ジルコニウム塩と、水より沸点が高く水と共沸しない水溶性有機化合物と、水と、からなる請求項1に記載のセリア−ジルコニア固溶体の製造方法。
  4. 前記混合物は、一方が水溶性無機塩であり他方が水溶性有機塩であるセリウム塩及びジルコニウム塩と、水より沸点が高く水と共沸しない水溶性有機化合物と、水と、からなる請求項1に記載のセリア−ジルコニア固溶体の製造方法。
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