JP4224989B2 - 炭素繊維の製造方法および炭素繊維ボビン - Google Patents

炭素繊維の製造方法および炭素繊維ボビン Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、品質と品位が共に良好で高次加工性に優れ、実質的にサイジング剤が付着していない炭素繊維の製造方法、および、これによって得られる炭素繊維、および、炭素繊維のボビン状物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は、各種マトリックスとからなる複合強化材料として利用されており、レジャー、スポーツあるいは航空機などを主とする分野において様々な成形物として利用されている。
【0003】
一般に、炭素繊維は、マトリックス樹脂と組み合わせ複合材料として使用されるため、炭素繊維の表面に0.2〜2.0%程度のサイジング剤を付着させることで、マトリックス樹脂との接着性を良くしたり、また、毛羽立ちを防止し取り扱い性を良くしている。
【0004】
従来から、炭素繊維は、補強用繊維として長繊維や短繊維の形態で使用されてきた。又、最近は各種マトリックス樹脂中に分散させる以外にも、コンクリート、モルタル中に分散させたり、あるいは熱可塑性樹脂などの各種樹脂組成物中に分散させた炭素繊維を紡績糸として使用するなど様々な使用形態が広まりつつある。この場合、上記のような一般的なサイジング剤が付着している炭素繊維は、繊維束としての集束性に優れているが、分散性という点では不十分であった。そこで、繊維の分散性を向上させる方法として新規サイジング剤の開発がなされてきたが、サイジング剤は少量であっても付着していると繊維の集束性がアップするため、十分に分散性をアップすることはできないことが分かった。
【0005】
そこで、サイジング剤を付着させない方法が検討された。しかしながら、サイジング剤が付着していない炭素繊維はすぐにさばけ、拡がってしまうため、製造工程途中のローラやガイドなどに巻き付いたり、また、製造時、複数の炭素繊維を並行に走行させる場合、隣接する炭素繊維同士が絡まって糸切れや、巻付きを発生したりして生産性を低下させてしまうことが分かった。このとき、炭素繊維の束の一部のフィラメントだけであっても巻き付いたりして糸切れすると、炭素繊維が毛羽立ったり、炭素繊維束として十分な強度を発現しなくなり、品質や品位の低下を起こしてしまう。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術では達成し得なかったサイジング剤の付着量が0.1wt%以下である(さらには実質的に付着していない分散性に優れた炭素繊維を、品位と品質を共に低下させることなく、安定的に生産することができる炭素繊維の製造方法を提供することにある。
【0007】
更に、本発明の他の目的は、上記炭素繊維をボビン状に巻き取り、高次加工に使用し易い状態の炭素繊維ボビンを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の炭素繊維の製造方法は、上記課題を解決するために、次の構成を有する。すなわち、本発明の炭素繊維の製造方法は、炭素繊維を電気通電処理し水洗洗浄した後、水分率が5〜50%である炭素繊維をボビン状に連続して巻き取り、ボビン状のまま炭素繊維の水分率を0.4%以下まで乾燥してサイジング剤の付着量が0.1wt%以下である炭素繊維を製造することを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0011】
本発明は、炭素繊維を水に濡れたままボビン状に巻き上げる炭素繊維の製造方法である。
【0012】
本発明における炭素繊維とは、特に限定されるものではないが、アクリロニトリル、ピッチあるいはレーヨン等を原料として得られる、通常、3,000〜72,000フィラメントからなるものであり、炭化繊維、黒鉛繊維を含むものである。
【0013】
本発明のボビン状炭素繊維(炭素繊維ボビン)は、前記原料に適切な熱処理や乾燥処理を施した後、ボビン状に巻き取ったものであるが、巻き取る直前の炭素繊維の水分率を5〜50%とすることが必要であり、生産性や炭素繊維の品質、品位を両立することを考えると10〜35%、さらに好ましくは、15〜25%とすることがより好ましい。
【0014】
水分率が50%を超えると、炭素繊維をボビン状に巻き取り、乾燥した際、炭素繊維と一緒にボビン内に持ち込まれた多量の水が乾燥してなくなることにより、炭素繊維の回りに空洞が多く発生し、乾燥後のボビンの巻密度が低下するため、乾燥後、あるいは、このボビンから炭素繊維を解舒する際、ボビンの形状が崩れてしまう。
【0015】
一方、水分率が5%未満の炭素繊維は、炭素繊維束としての集束性が悪くなるため、生産途中の行程でローラなどに巻き付いたり、隣接する炭素繊維同志が絡み合って巻き付いたり、糸切れしたりするため、生産性の低下、あるいは、炭素繊維を構成するフィラメントの切断による品質や品位の低下を惹起してしまう。
【0016】
ここで、炭素繊維はボビン状に巻き上げることが好ましい。ボビン状に巻き上げることにより、乾燥後、高次加工に使用する際、連続給糸することができる。
【0017】
本発明では、炭素繊維を電解表面処理し水洗洗浄した後、炭素繊維水に濡れた状態でボビン状に巻き取る。電解処理としては、アルカリ性電解質や酸性電解質を用いる方法がある。アルカリ性電解質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムあるいは水酸化テトラエチルアンモニウム等の無機あるいは有機の強アルカリなどを用いることができ、酸性電解質としては、酢酸、硫酸、ホウ酸、炭酸、酢酸、酪酸あるいはアクリル酸などを用いることをできるが、使用するマトリックス樹脂との組み合わせや、必要とする接着性の程度を考慮して設定すればよい。
【0018】
電解処理を行なう場合、処理時の異物や電解液が炭素繊維に付着していると、マトリックス樹脂との接着を低下させることが考えられるため、電解処理後水洗洗浄することが好ましい。
【0019】
本発明では、上記水洗洗浄後、そのままボビン状に巻き取ってもよいが、洗浄後、一旦洗浄水を乾燥蒸発させた後、再度水を付与することがより好ましい。
【0020】
水洗洗浄後そのままボビン状に巻き取ると、洗浄時間が短い場合や炭素繊維のフィラメント数が多い場合、洗浄効率が不十分で、電解処理の薬液などが少量炭素繊維中に残存することが考えられる。このため、水洗洗浄後、付着した水や薬液を一旦乾燥蒸発させ、残存する電解液等を完全に除去することがより好ましい。 この場合、乾燥温度としては、特に限定しないが、効率的に蒸発させるためには水が気化する100℃以上程度が好ましい。但し、余り温度を上げ過ぎるとマトリックス樹脂との接着性が低下することから250℃以下が好ましい。
【0021】
この場合、乾燥時間は特に指定しないが、該乾燥後そのままボビン状に巻き上げる場合には水分率が5〜50%の範囲となるように短時間が好ましく、例えば、3〜30秒の時間を設定できる。一方、該乾燥後再度水付与する場合には、乾燥後から水付与までの工程での巻き付きなどのトラブルを発生しないように時間を設定することが好ましく、例えば5〜100秒の時間を設定することができる。
【0022】
本発明では、巻き上げる炭素繊維に水が付着しているが、この水としては、特に指定しない。但し、炭素繊維の強度低下などの影響がない、イオン交換水、蒸留水、水道水あるいは井戸水などが好ましい。
【0023】
水の付与方法としては、炭素繊維が十分に濡れた状態になることが必要なので、ディップ方式、バス方式、シャワー方式、あるいは、これらの併用の方式が好ましい。
【0024】
ディップ方式は、炭素繊維を水槽中に浸漬する方式であり、バス方式は、ディップ方式の一態様で、水槽の中に少なくとも1つ以上のローラがあるもので、平行に走行する複数の炭素繊維が水槽の中を同一条件で通過することから効率的、かつ、水分率のばらつきを発生することなく炭素繊維を濡らすことができる。また、シャワー方式は、洗浄に使用した水が再度炭素繊維に接触しないため、常にきれいな水で洗浄できる点で好ましい。
【0025】
本発明では、水濡れの炭素繊維をボビン状に巻き取るため、水付与後、特に、水洗後、乾燥を行なう場合は乾燥後に行なう水付与後、そのままボビン状に巻き上げればよい。但し、フィラメント数が20,000以上の炭素繊維を巻き取る場合、走行する炭素繊維に含まれる水量が多くなるため、途中の行程への重量負荷が大きくなることから、120℃以下の温度で簡単な乾燥処理を行ない、走行する炭素繊維の水分率を低減させて巻き上げてもよい。
【0026】
本発明では、炭素繊維の水分率が5〜50%のボビン状炭素繊維を、ボビン形態のまま乾燥するが、乾燥後の水分率は、0.4%以下であることが好ましい。水分率が0.4%を超えると、水によって炭素繊維の集束性が良くなるため、フィラメント同志が接着して分散性が低下してしまう。また、通常ボビン状の炭素繊維は包装されて輸送されるが、巻き上げ時の水分率を保持していたまま包装すると、輸送の過程でカビが生えたり、炭素繊維を巻き上げた紙管が水分で変形してしまうことが考えられる。従って、巻き上げ後、乾燥させた後に包装することが好ましい。
【0027】
本発明で得られる炭素繊維ボビンは、乾燥後の巻密度が0.95×103〜1.30×103kg/m3であることが好ましい。乾燥後の巻密度が0.95×103kg/m3未満の場合、ボビンの使用時や運搬時、ボビン形態が崩れてしまう傾向がある。また、ボビンから炭素繊維を解舒する際、綾落ちを起こしてしまう傾向がある。一方、乾燥後の巻密度が1.30×103kg/m3を超える場合、ボビンで炭素繊維同志が密に巻かれているため、ボビンから炭素繊維を解舒する際、解舒切れを起こしてしまう傾向がある。
【0028】
本発明で得られる炭素繊維ボビンは、炭素繊維の糸幅が好ましくは1.8×10-7 〜7.2×10-7 m/dtexであり、より好ましくは2.3×10-7 〜6.6×10-7 m/dtexである。糸幅を1.8×10-7 m/dtex未満でボビン上に巻き上げるには、巻き上げ時、糸を集束させて拡がりにくくする必要があるため、特にフィラメント数が多い場合、糸を擦過してしまうことになる。また、本発明のように、サイジング付着量が0.1wt%以下の炭素繊維の場合は擦過に対しては弱いため、毛羽が発生しやすくなる。一方、糸幅が7.2×10-7 m/dtexより大きくなると、ボビン上での糸幅が拡過ぎるため、乾燥後、ボビンから炭素繊維を解舒する際、ボビン端部で炭素繊維の一部のフィラメントが綾落ちしてしまい、糸切れを発生してしまう傾向がある。
【0029】
本発明の炭素繊維の製造方法で得ることを目的とする炭素繊維は、サイジング付着量が0.1wt%以下である炭素繊維である。特には、本発明の炭素繊維の製造方法は実質的にサイジング剤を付与せずに製造する場合に適用することが好ましい
【0031】
又、本発明で得られる炭素繊維には、実質的にはサイジング剤を付着させないものを好適に用いることができるが、後述の本発明に記載の方法で付着量を測定した場合、炭素繊維の飛散などが起こる。このため、サイジング剤が付着していなくても測定上は0.1wt%以下の付着量があるように見えることがある。なお、通常、サイジング剤にはエポキシ樹脂などの化学成分が含まれるので、抽出物のIR分析やNMR分析によってサイジング剤の付着有無を確認することができる。
【0032】
本発明では、水に濡れた炭素繊維を巻き上げたボビンを乾燥する条件は、特に規定せず、時間や乾燥可能な温度設備等の能力によって自由に決めれば良い。なお、多量のボビンを同時に乾燥するには大型の乾燥機が必要となることから、温度20〜25℃、湿度50%程度の条件下において、2週間程度乾燥して目標の水分率とすることができる。
【0033】
本発明で用いられる炭素繊維紙管の材質は特に限定されないが、水濡れの炭素繊維を巻き上げるため、紙の紙管では吸水して紙管が変形することが考えられる。このため、プラスチックや防水加工を施した紙管、あるいは、紙の紙管表面に防水フィルムを巻いたボビン紙管が好ましい。
【0034】
本発明の炭素繊維は、前述のとおり、アクリロニトリル系、レーヨン系あるいはピッチ系等の公知の炭素繊維フィラメントが数千から数万本束になったもので、特に、高強度の炭素繊維束が得られやすいアクリル系炭素繊維が補強効果を得る上で好ましい。また、炭素繊維には、炭化繊維と黒鉛繊維が含まれる。以下に、アクリル系炭素繊維の場合を例にして詳細を説明する。
【0035】
紡糸方法としては、湿式、乾式あるいは乾湿式等を採用できるが、高強度高強度糸が得られやすい湿式あるいは乾湿式が好ましく、特に乾湿式が好ましい。紡糸原液には、ポリアクリロニトリルのホモポリマーあるいは共重合成分の溶液あるいは懸濁液等を用いることができる。
【0036】
該紡糸原液を凝固、水洗、延伸した後、油剤を付与して前駆体原糸とする。該前駆体原糸を耐炎化処理、炭化処理まで行なって炭化繊維とするか、必要によっては更に黒鉛化処理をして黒鉛化繊維とする。得られた炭化繊維、黒鉛化繊維は、複合材料化される際に組み合わされるマトリックス樹脂との接着性を良好とするため、電解表面処理がなされ、更に、表面処理で付着した薬液などを洗浄除去するため水洗洗浄処理がなされる。
【0037】
水洗洗浄処理後の炭素繊維は、水に濡れたままボビン状に巻き上げても良いし、一旦100〜250℃の温度条件下で乾燥して水洗洗浄処理で付着した水を乾燥除去した後、再度水付与してボビン状に巻き上げても良い。水に濡れた炭素繊維は常温のままボビン状に巻き上げても良いが、120℃以下の温度条件下で軽く乾燥して水分率を調整しボビン状に巻き上げても良い。
【0038】
ボビン状に巻き上げられた炭素繊維を、ボビン形態のまま水分率が0.4%以下となるまで乾燥することにより、本発明の炭素繊維ボビンが得られる。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。まず、本発明で用いた個々の特性値の測定方法を説明する。
【0040】
(1)サイジング付着量
水分率が0.4%以下となるまで乾燥された約2×10-3kgの炭素繊維束を秤量(W1×10-3(kg))した後、0.8×10-33/秒の窒素気流中、温度450℃に設定した電気炉(容量120×10-63)に900秒間放置する。この処理によりサイジング剤を完全に熱分解される。次に、0.3×10-33/秒の乾燥窒素気流中の容器に移し、900秒間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2×10-3(kg))して、次式によりサイジング付着量を求める。
サイジング付着量(%)={W1−(W2×1.00046)}×100/W1
(2)巻密度
図1に示すボビンにおいて、ボビン全体の重さをW3×10-3(kg)、紙管1のみの重さをW4×10-3(kg)とすると、炭素繊維2のみの重さW5×10-3(kg)は、W5=W3−W4となる。一方、ボビンにおいて紙管の長手方向に沿った炭素繊維部分の巻付け幅長さをM1×10-2(m)、紙管1を含む直径をM2×10-2(m)、炭素繊維2部分の幅をM3×10-2(m)とすると、ボビン状に巻かれている炭素繊維2の体積Vは、V=M1×M3×π(M2−M3)となる。以上の値を用いて、巻密度は、W5/V×103(kg/m3)となる。なお、上記M1、M2、M3は、各ボビンについてそれぞれ5点測定し、その平均値を使用した。
【0041】
(3)水分率
予め炭素繊維を入れるガラス瓶と蓋を合わせた重さW6×10-3(kg)を測定し、これに炭素繊維を入れ、蓋をして重さW7×10-3(kg)を測定する。次に、炭素繊維をガラス瓶に入れたまま、蓋を開けて130℃×7,200秒間、乾燥機の中で乾燥させた後、乾燥機内でガラス瓶に蓋をした。乾燥機からガラス瓶を取り出し、乾燥用のデシケータ内で2,400秒間冷却した後、重さW8×10-3(kg)を測定した。以上の値を用いて、次式により水分率を求めた。
水分率(%)={(W7−W8)/(W8−W6)}×100
炭素繊維は、4kg巻のボビンの最表層から0.10±0.05kg解舒した部分、および、最内層から2.0±0.5kgの部分まで解舒した部分の2ヶ所それぞれから1本当たり約5×10-3kg程度を各3本、計6本採取し、この平均とした。
【0042】
(4)擦過毛羽
図2に示す糸道で、所定の張力、糸速0.05m/秒で擦過ピンを通過させたときの発生する毛羽数をカウントし、個/mで表した。評価を行なった環境は、温度23℃、湿度60%とした。張力条件は、擦過ピンに入る前の張力Tが、炭素繊維の繊度をH(dtex)として下式を満たすように設定した。炭素繊維は、水分率が0.4%以下のものを使用した。
張力T×10-3(kg)=0.033H + 230
尚、擦過ピンは、表面が鏡面加工されたステンレス棒とし、直径が9.5mmのものを4本用いた。測定は、図2の方法で行った。
【0043】
(5)解舒切れ
乾燥後の炭素繊維ボビンから炭素繊維を0.5m/秒の速度で縦取り解舒し、300秒間に炭素繊維が切れる回数を測定した。単位は、回/mとした。炭素繊維は、水分率が0.4%以下のものを使用し、0.015回以下を合格とした。
【0044】
(6)ボビン上の炭素繊維の糸幅
炭素繊維の重量が4±0.1kgとなるように巻き上げた。このボビンから炭素繊維を解舒しながら、長手方向に0.1〜0.3m置きに全部で10点の炭素繊維の糸幅を測定し、その平均をM4×10-3(m)とした。炭素繊維の束の繊度をD(dtex)として、M4×0.9×10-3/D(m/dtex)により糸幅を算出した。
【0045】
(7)分散性
炭素繊維の束を0.3mの長さにカットし、これを空中で3回振ったときの束のさばけ、拡がりの程度で判定した。判定は4段階で行い、束が単繊維単位で均一に割れるものを優良、数十〜数百の単繊維の塊が全体の2割以下程度見られるがほぼ均一に割れるものを良好、前記単繊維の塊が全体の3割以上見られるものを良、ほぼ束の形状を維持したままとなるものを不良とした。
【0046】
以下、実施例を示す。また、結果の一覧を表1に示す。
【0047】
(実施例1)
アクリロニトリル99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて乾湿式紡糸方法により単繊維繊度1.1dtex、フィラメント数24,000のアクリル系繊維を得た。これを、240〜270℃の空気中で加熱して耐炎化繊維とし、次いで窒素雰囲気中400〜800℃の温度領域で加熱した後、1400℃まで焼成し炭素繊維を得た。次に、硫酸水溶液を電解液として、該炭素繊維束1×10-3kg当たり3クーロンの電気量で処理した後、水洗を行なった後、200℃で乾燥した。この後、ディップ方式で水を付与し、水分率40%の炭素繊維をボビン状に巻き取った。巻き取った直後のボビン上炭素繊維の水分率は、35%であり、生産性も良好であった。このボビンを25℃の環境で15日間乾燥した。乾燥後、ボビン状炭素繊維の巻密度は1.05×103kg/m3であった。ボビン上の炭素繊維の水分率は0.11%であった。サイジング付着量は0.05wt%であった。ボビン上の炭素繊維の糸幅は4.2×10-3m/dtexであった。
【0048】
この炭素繊維の解舒性は良好で解舒切れはなく、この炭素繊維の分散性は良好であった。
【0049】
(比較例1)
実施例1でディップ方式で水付与した炭素繊維に更にシャワー方式で水付与し、水分率65%の炭素繊維をボビン状に巻き取った。巻き取った直後のボビン上炭素繊維の水分率は、58%であった。このボビンを50℃のオーブン中で7日間乾燥した。乾燥後、ボビン状炭素繊維の巻密度は0.86×103kg/m3であった。このボビンは輸送中巻き形状が崩れることが分かった。ボビン上の炭素繊維の水分率は0.14%であった。サイジング付着量は0.04wt%であった。ボビン上の炭素繊維の糸幅は3.1×10-3m/dtexであった。この炭素繊維の分散性は良好であった。
【0050】
(比較例2)
実施例1において200℃で乾燥した炭素繊維にシャワー方式で水付与した後、100℃で乾燥し、水分率3%の炭素繊維をボビン状に巻き取った。乾燥後の工程途中のローラへの巻付きによる糸切れが多発し、生産性は不良であった。巻き取ることができたボビンについて、巻取り直後のボビン上炭素繊維の水分率は3%であった。
【0051】
このボビンを25℃の環境で15日間乾燥した。乾燥後のボビン状炭素繊維の巻密度は1.35×103kg/m3であった。ボビン上の炭素繊維の水分率は0.24%であった。サイジング付着量は0.07wt%であった。ボビン上の炭素繊維の糸幅は5.5×10-3m/dtexであった。この炭素繊維は、単繊維切れが目立ち、分散性が若干悪くなった。また、解舒切れが多発し、ボビン表面に毛羽発生による品位の低下が認められた。
【0052】
(実施例2)
実施例1で電解処理、水洗、乾燥(200℃)を終えた炭素繊維にディップ方式で水を付与した後、100℃で乾燥を行ない、水分率15%の炭素繊維をボビン状に巻き取った。巻き取った直後のボビン上炭素繊維の水分率は、12%であり、生産性は良好で、繊維の乱れなどもなく品位も、優良であった。このボビンを50℃のオーブン中で7日間乾燥した。乾燥後、ボビン状炭素繊維の巻密度は1.13×103kg/m3であった。ボビン上の炭素繊維の水分率は0.16%あった。サイジング付着量は0.03wt%であった。ボビン上の炭素繊維の糸幅は4.9×10-3m/dtexであった。この炭素繊維は、解舒切れはなく、分散性は優良であった。
【0053】
(実施例3)
実施例2で電解処理、水洗を終えた炭素繊維にディップ方式で水を付与した後、水分率40%の炭素繊維をボビン状に巻き取った。巻き取った直後のボビン上炭素繊維の水分率は、33%であり、生産性も良好であった。このボビンを80℃のオーブン中で3日間乾燥した。乾燥後、ボビン状炭素繊維の巻密度は1.15×103kg/m3であった。ボビン上の炭素繊維の水分率は0.13%であった。サイジング付着量は0.02wt%であった。ボビン上の炭素繊維の糸幅は4.2×10-3m/dtexであった。この炭素繊維は、解舒切れは0.007回/mで実質的に問題のないレベルであり、分散性は良好であった。
【0054】
(実施例4)
実施例2で電解処理、水洗を終えた炭素繊維にディップ方式で水を付与した後、水分率50%の炭素繊維をボビン状に巻き取った。巻き取った直後のボビン上炭素繊維の水分率は、43%であり、生産性も良好であった。このボビンを100℃のオーブン中で1日間乾燥した。乾燥後、ボビン状炭素繊維の巻密度は1.20×103kg/m3であった。ボビン上の炭素繊維の水分率は0.15%であった。サイジング付着量は0.03wt%であった。ボビン上の炭素繊維の糸幅は3.1×10-3m/dtexであった。この炭素繊維は解舒切れは0.013回/mで実質的に問題のないレベルであり、分散性は良好であった。
【0055】
(実施例5)
フィラメント数が12,000である以外は、実施例1と同じ方法でボビン状に巻き上げ、乾燥した。ボビン状に巻き取る直前の炭素繊維の水分率は30%であった。巻き取った直後のボビン上炭素繊維の水分率は25%であり、このときの生産性は良好であった。乾燥後のボビン状炭素繊維の巻密度は1.15×103kg/m3であった。ボビン上の炭素繊維の水分率は0.12%であった。サイジング付着量は0.03wt%であった。ボビン上の炭素繊維の糸幅は5.0×10-3m/dtexであった。この炭素繊維は、解舒切れはなく、分散性は良好であった。
【0056】
(実施例6)
フィラメント数が12,000である炭素繊維を、実施例1同様水洗を行なった後、200℃で乾燥した。この後、ディップ方式でサイジング剤としてブタンジオールを付与した後、実施例1と同じ方法でボビン状に巻き上げ、乾燥した。ボビン状に巻き取る直前の炭素繊維の水分率は11%であった。巻き取った直後のボビン上炭素繊維の水分率は10%であり、このときの生産性は良好であった。乾燥後のボビン状炭素繊維の巻密度は1.20×103kg/m3であった。ボビン上の炭素繊維の水分率は0.11%であった。サイジング付着量は0.08wt%であった。ボビン上の炭素繊維の糸幅は5.4×10-3m/dtexであった。この炭素繊維は、解舒切れはなく、分散性は良好であった。
【0057】
(実施例7)
実施例1で電解処理、水洗、乾燥(200℃)を終えた炭素繊維にディップ方式で水を付与した後、80℃で乾燥を行ない、水分率20%の炭素繊維をボビン状に巻き取った。巻き取った直後のボビン上炭素繊維の水分率は、18%であり、生産性は優良であった。このボビンを25℃の環境で15日間乾燥した。乾燥後のボビン状炭素繊維の巻密度は1.07×103kg/m3であった。ボビン上の炭素繊維の水分率は0.08%あった。サイジング付着量は0.06wt%であった。ボビン上の炭素繊維の糸幅は4.9×10-3m/dtexであった。この炭素繊維は、解舒切れはなく、分散性は優良であった。
【0058】
(比較例3)
実施例1において200℃で乾燥した炭素繊維にディップ方式でビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、エピコート(登録商標)828)を主成分とするサイジング溶液を付与した後、100℃で乾燥し、水分率3%の炭素繊維をボビン状に巻き取った。乾燥後の工程途中のローラへの巻付きによる糸切れが多発し、生産性は不良であった。巻き取ることができたボビンについて、巻取り直後のボビン上炭素繊維の水分率は3%であった。
【0059】
このボビンを25℃の環境で15日間乾燥した。乾燥後のボビン状炭素繊維の巻密度は1.32×103kg/m3であった。ボビン上の炭素繊維の水分率は0.22%であった。サイジング付着量は0.15wt%であった。ボビン上の炭素繊維の糸幅は5.3×10-3m/dtexであった。この炭素繊維は、集束性が良く、分散性が悪かった。また、解舒切れは0.013回/mで目標レベルであったが、ボビン表面に毛羽発生による品位の低下が認められた。
【0060】
【表1】
Figure 0004224989
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、サイジング剤が実質的に付着していない炭素繊維を提供することができる。しかるに分散性に優れる炭素繊維を品位と品質を共に低下させることなく、安定的に生産することができる。併せて、炭素繊維をボビン状に巻き取り、そのまま乾燥させるため、分散性に優れた、高次加工に使用し易い状態の炭素繊維ボビンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ボビンにおける炭素繊維の巻密度を測定する方法を説明するためのボビンの概略斜視図である。
【図2】 図2は、擦過毛羽を測定する際の糸道を示す概略図である。
【符号の説明】
1・・・・紙管
2・・・・炭素繊維
3・・・・ボビン
4・・・・張力測定位置
5・・・・擦過ピン
6・・・・毛羽測定位置
7・・・・引取り方向

Claims (8)

  1. 炭素繊維を電気通電処理し水洗洗浄した後、水分率が5〜50%である炭素繊維をボビン状に連続して巻き取り、ボビン状のまま炭素繊維の水分率を0.4%以下まで乾燥することを特徴とする、サイジング剤の付着量が0.1wt%以下である炭素繊維の製造方法。
  2. 炭素繊維を電気通電処理し水洗洗浄した後、水分率が15〜25%である炭素繊維をボビン状に連続して巻き取る請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
  3. 水洗洗浄後、100℃以上で熱処理して水を蒸発させた後、再度、水を付与してからボビン状に巻き取る請求項1または2に記載のサイジング剤の付着量が0.1wt%以下である炭素繊維の製造方法。
  4. 水分率が10%以上の炭素繊維に120℃以下の熱処理を施した後、水分を含んだ状態で巻き取る請求項1〜いずれかに記載のサイジング剤の付着量が0.1wt%以下である炭素繊維の製造方法。
  5. ディップ方式で水を付与する請求項3に記載のサイジング剤の付着量が0.1wt%以下である炭素繊維の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の方法により得られた炭素繊維ボビン。
  7. 乾燥後のボビン状炭素繊維の巻密度が0.95×10〜1.30×10
    kg/mである請求項6に記載の炭素繊維ボビン。
  8. ボビン上の炭素繊維の糸幅が1.8×10−7〜7.2×10−7m/dtexである請求項または記載の炭素繊維ボビン。
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