JP4224428B2 - 金属材料の製造方法、炭素繊維複合金属材料の製造方法 - Google Patents

金属材料の製造方法、炭素繊維複合金属材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属材料の製造方法、炭素繊維複合金属材料の製造方法に関する。
近年、カーボンナノファイバーを用いた複合材料が注目されている。このような複合材料は、カーボンナノファイバーを含むことで、機械的強度などの向上が期待されている。
また、金属の複合材料の鋳造方法として、酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体内にマグネシウム蒸気を浸透、分散させ、同時に窒素ガスを導入することで、多孔質成形体内に金属溶湯を浸透させるようにした鋳造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、カーボンナノファイバーは相互に強い凝集性を有するため、複合材料の基材にカーボンナノファイバーを均一に分散させることが非常に困難とされている。そのため、現状では、所望の特性を有するカーボンナノファイバーの複合材料を得ることが難しく、また、高価なカーボンナノファイバーを効率よく利用することができない。
また、従来の酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体に金属溶湯を浸透させる鋳造方法は、複雑な処理を行うため、工業上の生産は困難である。
特開平10−183269号公報
そこで、本発明の目的は、カーボンナノファイバーが分散された金属材料の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、カーボンナノファイバーが均一に分散された炭素繊維複合金属材料の製造方法を提供することにある。
本発明にかかる金属粒子の周りにカーボンナノファイバーが分散した、金属材料の製造方法は、エラストマーと、金属粒子と、カーボンナノファイバーと、を混合し、かつ剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る工程(a)と、
前記炭素繊維複合材料を熱処理し、該炭素繊維複合材料中に含まれる前記エラストマーを気化させる工程(b)と、
を含む。
本発明の製造方法の工程(a)によれば、エラストマーの不飽和結合または基が、カーボンナノファイバーの活性な部分、特にカーボンナノファイバーの末端のラジカルと結合することにより、カーボンナノファイバーの凝集力を弱め、その分散性を高めることができる。また、剪断力によって剪断されたエラストマーに形成されたフリーラジカルが、カーボンナノファイバーの表面を攻撃することで、カーボンナノファイバーの表面は活性化される。さらに、金属粒子を含むエラストマーを用いることで、カーボンナノファイバーを剪断力で分散させる際に、金属粒子のまわりにエラストマーの乱流状態の流動が発生する。この流動によって、本発明の炭素繊維複合材料は、基材であるエラストマーにカーボンナノファイバーがさらに均一に分散されたものとなる。特に分散されにくいとされていた直径が約30nm以下のカーボンナノファイバーや、湾曲繊維状のカーボンナノファイバーであっても、エラストマー中に均一に分散されたものとなる。
そして、本発明の製造方法の工程(b)によれば、熱処理によってエラストマーが気化することで、金属粒子とカーボンナノファイバーが残り、その結果、金属粒子の周りにカーボンナノファイバーが分散した状態の金属材料を得ることができる。さらに、この金属材料を一般的な金属加工、例えば鋳造などの加工に容易に利用することができる。
本発明におけるエラストマーは、ゴム系エラストマーあるいは熱可塑性エラストマーのいずれであってもよい。また、ゴム系エラストマーの場合、エラストマーは架橋体あるいは未架橋体のいずれであってもよい。原料エラストマーとしては、ゴム系エラストマーの場合、未架橋体が用いられる。
前記エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程(a)は、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いて行うことができる。
本発明にかかる炭素繊維複合金属材料の製造方法は、前記金属材料を用いて、さらに工程(c)として、
(c−1)前記金属材料を粉末成形する工程、
(c−2)前記金属材料を金属溶湯に混入して所望の形状を有する鋳型内で鋳造する工程、
(c−3)前記金属材料に金属溶湯を浸透させて前記金属材料の間隙を前記金属溶湯で満たす工程、などを採用することができる。
このような炭素繊維複合金属材料の製造方法は、前述したようにカーボンナノファイバーが分散された金属材料を用いることによって、カーボンナノファイバーが均一に分散された炭素繊維複合金属材料を得ることができる。また、このような製造方法によれば、金属材料中のカーボンナノファイバーの表面は活性化しているため、カーボンナノファイバーは金属材料との濡れ性が向上しており、他の金属材料の溶湯に対しても十分な濡れ性を有しているため、全体に機械的性質のばらつきが低減された均質な炭素繊維複合金属材料を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態にかかる金属粒子の周りに表面が活性化された前記カーボンナノファイバーが分散した、金属材料の製造方法は、エラストマーと、金属粒子と、カーボンナノファイバーと、を混合し、かつ剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る工程(a)と、前記炭素繊維複合材料を熱処理し、該炭素繊維複合材料中に含まれる前記エラストマーを気化させる工程(b)と、を含む。
前記エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程(a)は、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いて行うことができる。
本実施の形態にかかる炭素繊維複合金属材料の製造方法は、前記金属材料を用いて、さらに工程(c)として、
(c−1)前記金属材料を粉末成形する工程、
(c−2)前記金属材料を金属溶湯に混入して所望の形状を有する鋳型内で鋳造する工程、
(c−3)前記金属材料に金属溶湯を浸透させて前記金属材料の間隙を前記金属溶湯で満たす工程、などを採用することができる。
エラストマーは、例えば、カーボンナノファイバーと親和性が高いことの他に、分子長がある程度の長さを有すること、柔軟性を有すること、などの特徴を有することが望ましい。また、エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程は、できるだけ高い剪断力で混練されることが望ましい。
(A)まず、エラストマーについて説明する。
エラストマーは、分子量が好ましくは5000ないし500万、さらに好ましくは2万ないし300万である。エラストマーの分子量がこの範囲であると、エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、エラストマーは、凝集したカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、したがってカーボンナノファイバー同士を分離する効果が大きい。エラストマーの分子量が5000より小さいと、エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけてもカーボンナノファイバーを分散させる効果が小さくなる。また、エラストマーの分子量が500万より大きいと、エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる。
エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃で測定した、未架橋体におけるネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が好ましくは100ないし3000μ秒、より好ましくは200ないし1000μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、エラストマーは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができる。このことにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合したときに、エラストマーは高い分子運動によりカーボンナノファイバー相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より短いと、エラストマーが充分な分子運動性を有することができない。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が3000μ秒より長いと、エラストマーが液体のように流れやすくなり、カーボンナノファイバーを分散させることが困難となる。
また、エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒であることが好ましい。その理由は、上述した未架橋体と同様である。すなわち、上記の条件を有する未架橋体を本発明の製造方法によって架橋化すると、得られる架橋体のT2nはおおよそ上記範囲に含まれる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によりエラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかるエラストマーは中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
エラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバー、特にその末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有する。かかる不飽和結合または基としては、二重結合、三重結合及び官能基から選択される少なくともひとつであることができる。このような官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などがある。
カーボンナノファイバーは、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。本実施の形態では、エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。
エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物を用いることができる。本発明者の研究によって、特にエチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)においてカーボンナノファイバーを分散させにくいことが判っている。
(B)次に、金属粒子について説明する。
金属粒子は、複合金属材料を製造する際の原料となるものであると共に、エラストマー中に混合し、分散させておいて、カーボンナノファイバーを混合させるときにカーボンナノファイバーをさらに良好に分散させるものである。金属粒子としては、アルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びその合金、鉄及びその合金などの粒子を単体でもしくは組み合わせて用いることができる。金属粒子は、使用するカーボンナノファイバーの平均直径よりも大きい平均粒径であることが好ましい。また、金属粒子の平均粒径は500μm以下、好ましくは1〜300μmである。また、金属粒子の形状は、球形粒状に限らず、混合時に金属粒子のまわりに乱流状の流動が発生する形状であれば平板状、りん片状であってもよい。
(C)次に、カーボンナノファイバーについて説明する。
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであることが好ましいく、炭素繊維複合材料の強度を向上させるためには0.5ないし30nmであることがさらに好ましい。さらに、カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状であっても、湾曲繊維状であってもよい。
カーボンナノファイバーの配合量は、特に限定されず、用途に応じて設定できる。本実施の形態の炭素繊維複合材料は、架橋体エラストマー、未架橋体エラストマーあるいは熱可塑性ポリマーをそのままエラストマー系材料として用いることができる。本実施の形態の炭素繊維複合材料は、カーボンナノファイバーを0.01〜50重量%の割合で含むことができる。かかる炭素繊維複合材料のエラストマーを気化させた金属材料は、マトリクスとなる金属にカーボンナノファイバーを混合する際に、カーボンナノファイバーの供給源としてのいわゆるマスターバッチとして用いることができる。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。
アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。
レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。
気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
(D)次に、エラストマーにカーボンナノファイバーを混合させ、かつ剪断力によって分散させる工程(a)について説明する。
本実施の形態では、エラストマーに金属粒子及びカーボンナノファイバーを混合させる工程として、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いた例について述べる。
図1は、2本のロールを用いたオープンロール法を模式的に示す図である。図1において、符号10は第1のロールを示し、符号20は第2のロールを示す。第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.1ないし0.5mmの間隔で配置されている。第1および第2のロールは、正転あるいは逆転で回転する。図示の例では、第1のロール10および第2のロール20は、矢印で示す方向に回転している。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05ないし3.00であることが好ましく、さらに1.05ないし1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。まず、第1,第2のロール10,20が回転した状態で、第2のロール20に、エラストマー30を巻き付けると、ロール10,20間にエラストマーがたまった、いわゆるバンク32が形成される。このバンク32内に金属粒子50を加えて、さらに第1,第2のロール10,20を回転させることにより、エラストマー30と、金属粒子50と、を混合する工程が行われる。ついで、このエラストマー30と金属粒子50とが混合されたバンク32内にカーボンナノファイバー40を加えて、第1、第2のロール10,20を回転させる。さらに、第1,第2ロール10,20の間隔を狭めて前述した間隔dとし、この状態で第1,第2ロール10,20を所定の表面速度比で回転させる。これにより、エラストマー30に高い剪断力が作用し、この剪断力によって凝集していたカーボンナノファイバーが1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー30に分散される。さらに、ロールによる剪断力はエラストマー内に分散された金属粒子のまわりに乱流状の流動を発生させる。この複雑な流動によってカーボンナノファイバーはさらにエラストマー30に分散される。なお、金属粒子50の混合前に、エラストマー30とカーボンナノファイバー40とを先に混合すると、カーボンナノファイバー40にエラストマー30の動きが拘束されてしまうため、金属粒子50を混合することが難しくなる。したがって、エラストマー30にカーボンナノファイバー40を加える前に金属粒子50を混合する工程を行うことが好ましい。
また、この工程(a)では、剪断力によって剪断されたエラストマーにフリーラジカルが生成され、そのフリーラジカルがカーボンナノファイバーの表面を攻撃することで、カーボンナノファイバーの表面は活性化される。例えば、エラストマーに天然ゴム(NR)を用いた場合には、各天然ゴム(NR)分子はロールによって混練される間に切断され、オープンロールへ投入する前よりも小さな分子量になる。このように切断された天然ゴム(NR)分子にはラジカルが生成しており、混練の間にラジカルがカーボンナノファイバーの表面を攻撃するので、カーボンナノファイバーの表面が活性化する。活性化されたカーボンナノファイバーは、雰囲気中の酸素などと結合し、金属粒子のアルミニウムとの濡れ性も良好となる。
さらに、この工程(a)では、できるだけ高い剪断力を得るために、エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の比較的低い温度で行われる。オープンロール法を用いた場合には、ロールの温度を上記の温度に設定することが望ましい。第1,第2ロール10,20の間隔dは、もっとも狭めた状態においても金属粒子50の平均粒径よりも広く設定することで、エラストマー30中のカーボンナノファイバー40の分散を良好に行うことができる。
このとき、本実施の形態のエラストマーは、上述した特徴、すなわち、エラストマーの分子形態(分子長)、分子運動、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用などの特徴を有することによってカーボンナノファイバーの分散を容易にするので、分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、分子長が適度に長く、分子運動性の高いエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。この状態で、エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。そして、一旦分散したカーボンナノファイバーは、エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
また、エラストマー中に所定量の金属粒子が含まれていることで、金属粒子のまわりに発生するエラストマーの乱流のような幾通りもの複雑な流動によって、個々のカーボンナノファイバー同士を引き離す方向にも剪断力が働くことになる。したがって、直径が約30nm以下のカーボンナノファイバーや湾曲繊維状のカーボンナノファイバーであっても、個々に化学的相互作用によって結合したエラストマー分子のそれぞれの流動方向へ移動するため、エラストマー中に均一に分散されることになる。
エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程は、上記オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノファイバーを分離できる剪断力をエラストマーに与えることができればよい。
上述したエラストマーに金属粒子とカーボンナノファイバーとを分散させて両者を混合させる工程(混合・分散工程)によって得られた炭素繊維複合材料は、架橋剤によって架橋させて成形するか、もしくは架橋させずに成形することができる。このときの成形方法は、例えば圧縮成形工程や押出成形工程などを採用することができる。圧縮成形工程は、例えば金属粒子とカーボンナノファイバーとが分散した炭素繊維複合材料を、所定温度(例えば175℃)に設定された所望形状を有する成形金型内で所定時間(例えば20分)加圧状態で成形する工程を有する。
エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合・分散工程において、あるいは続いて、通常、ゴムなどのエラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを挙げることができる。
(E)次に、上記方法によって得られた炭素繊維複合材料について述べる。
本実施の形態の炭素繊維複合材料は、基材であるエラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されている。このことは、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、カーボンナノファイバーによって拘束を受けたエラストマー分子の運動性は、カーボンナノファイバーの拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より短くなる。特に、金属粒子を含むエラストマーにカーボンナノファイバーを混合した場合には、カーボンナノファイバーを含むエラストマーの場合より、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)が短くなる。なお、架橋体におけるスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーの混合量に比例して変化する。
また、エラストマー分子がカーボンナノファイバーによって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、カーボンナノファイバーによってエラストマーの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、カーボンナノファイバーの活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より小さくなる。特に、金属粒子を含むエラストマーにカーボンナノファイバーを混合した場合には、カーボンナノファイバーを含むエラストマーの場合より、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は小さくなる。
以上のことから、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって得られる測定値が以下の範囲にあることが望ましい。
すなわち、未架橋体において、150℃で測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないか、あるいは1000ないし10000μ秒であり、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることが好ましい。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法により測定されたスピン−格子緩和時間(T1)は、スピン−スピン緩和時間(T2)とともに物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、エラストマーのスピン−格子緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえ、そしてスピン−格子緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、動的粘弾性の温度依存性測定における流動温度が、原料エラストマー単体の流動温度より20℃以上高温であることが好ましい。本実施の形態の炭素繊維複合材料は、エラストマーに金属粒子とカーボンナノファイバーとが良好に分散されている。このことは、上述したように、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、エラストマーは、カーボンナノファイバーを含まない場合に比べて、その分子運動が小さくなり、その結果、流動性が低下する。このような流動温度特性を有することにより、本実施の形態の炭素繊維複合材料は、動的粘弾性の温度依存性が小さくなり、その結果、優れた耐熱性を有する。
カーボンナノファイバーは、通常、相互に絡み合って媒体に分散しにくい性質を有する。しかし、本実施の形態の炭素繊維複合材料のエラストマーを気化させた金属材料を、金属の複合材料の原料として用いると、カーボンナノファイバーがエラストマーに既に分散した状態で存在するので、この原料と金属などの媒体とを混合することでカーボンナノファイバーを媒体に容易に分散することができる。また、カーボンナノファイバーの表面は活性化し、あるいは酸素などと反応して、金属との濡れ性が向上しているため、複合金属材料の金属とも濡れ性がよい。
(F)次に、炭素繊維複合材料を熱処理し、金属材料を製造する工程(b)について説明する。
炭素繊維複合材料を熱処理することで、該炭素繊維複合材料中に含まれるエラストマーを気化させる工程(b)によって、金属粒子の周りにカーボンナノファイバーが分散した、金属材料を製造することができる。
このような熱処理は、使用されるエラストマーの種類によって種々の条件を選択することができる。工程(b)は、不活性気体雰囲気中において、エラストマーの気化温度以上であって、かつ金属粒子の融点未満で熱処理されることが好ましい。不活性気体としては、窒素、5%以下の酸素を含んだ窒素、アルゴンなどを用いることができる。不活性気体雰囲気を採用するのは、大気中で工程(b)の熱処理を行なうと、カーボンナノファイバーが酸化分解(燃焼)してしまうためである。
不活性気体雰囲気の熱処理炉に炭素繊維複合材料を配置し、炉内をエラストマーの気化する温度以上に加熱して熱処理する。この加熱によって、エラストマーは気化し、金属粒子の周りにカーボンナノファイバーが分散した金属材料が製造される。この熱処理温度が金属粒子の融点温度未満であると、金属粒子が溶融せず、粒子状のままであるので、得られた金属材料は粉体状もしくは簡単に粉化することができるブロック状であり、後加工に利用し易い。
エラストマーが例えば天然ゴム(NR)であり、金属粒子が例えばアルミニウム粒子である場合、工程(b)の熱処理温度は、300ないし650℃とすることが好ましい。熱処理温度が300℃以上であれば、天然ゴムが分解されて気化し、熱処理温度が650℃以下であれば、アルミニウム粒子が溶融することなく炭素繊維複合材料が粉化して、粉体状の金属材料を得ることができる。なお、熱処理時間は、熱処理温度が高いほど短時間となるが、エラストマーが分解されて気化するためには1分〜100時間である。
このようにして得られた金属材料は、金属粒子間に分散したカーボンナノファイバーが存在している。カーボンナノファイバーと金属粒子の濡れ性はよいので、カーボンナノファイバーはエラストマー中に分散した状態に近い状態で金属粒子の周りに分散している。
(G)最後に、金属材料を用いて炭素繊維複合金属材料を得る工程(c)について説明する。
本実施の形態における工程(c)は、上記実施の形態で得られた金属材料を用いて、金属材料中にカーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合金属材料を得ることができる。
前記工程(c)は、例えば以下のような各種の成形方法を採用することができる。
(粉末成形方法)
本実施の形態における複合材料の粉末成形工程は、上記工程(b)で得られた金属材料を粉末成形する工程によって実施することができる。具体的には、例えば上記実施の形態で得られた金属材料をそのまま、もしくは他の金属材料とさらに混合した後、型内で圧縮し、金属粒子の焼結温度(例えば金属粒子がアルミニウムの場合550℃)で焼成して炭素繊維複合金属材料を得ることができる。
本実施の形態における粉末成形は、金属の成形加工における粉末成形と同様であり、いわゆる粉末冶金を含み、また粉末原料を用いた場合のみならず、複合エラストマーをあらかじめ予備圧縮成形してブロック状とした原料をも含む。なお、焼結法としては、一般的な焼結法の他、プラズマ焼結装置を用いた放電プラズマ焼結法(SPS)などを採用することができる。
また、金属材料と他の金属材料の粒子との混合は、ドライブレンド、湿式混合などを採用できる。湿式混合の場合、溶剤中の他の金属材料の粒子に対して、金属材料を混ぜる(湿式混合)ことが望ましい。金属材料は、金属粒子同士が結合し合ってほぼ炭素繊維複合材料のときの外形を維持しているが、金属粒子同士の結合力は小さく、簡単に粉砕できる。したがって、ドライブレンドや湿式混合する際には、粉砕されて粒子状になった金属材料を用いることができるので、金属加工に利用しやすい。
このような粉末成形によって製造された炭素繊維複合金属材料は、カーボンナノファイバーをマトリクスとなる金属材料中に分散させた状態で得られる。なお、この工程(c)で用いられる他の金属材料の粒子は、金属粒子と同じ材質でも、違う材質でも良い。金属材料と他の金属粒子との配合割合を調整することで、望ましい物性を有する炭素繊維複合金属材料を製造することができる。
(鋳造方法)
炭素繊維複合金属材料の鋳造工程は、上記実施の形態で得られた金属材料を、例えば金属溶湯に混入して所望の形状を有する鋳型内で鋳造する工程によって実施することができる。このような鋳造工程は、例えば鋼製の鋳型内に金属溶湯を注湯して行う金型鋳造法、ダイカスト法、低圧鋳造法を採用することができる。またその他特殊鋳造法に分類される、高圧化で凝固させる高圧鋳造法、溶湯を攪拌するチクソカスティング、遠心力で溶湯を鋳型内へ鋳込む遠心鋳造法などを採用することができる。これらの鋳造法においては、金属溶湯の中に金属材料を混合させたまま鋳型内で凝固させ、炭素繊維複合金属材料を成形する。
鋳造工程に用いる金属溶湯は、通常の鋳造加工に用いられる金属例えば鉄及びその合金、アルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びその合金、銅及びその合金、亜鉛及びその合金などから用途に合わせて単独でもしくは組み合わせて適宜選択することができる。また、金属溶湯に用いられる金属は、金属材料にあらかじめ混合された金属粒子と同一の金属または同一の金属元素を含む合金とすることで、金属粒子との濡れ性を向上させ、製品である炭素繊維複合金属材料における強度を向上させることができる。また、金属溶湯を金属粒子と異なる材質とした場合には、金属溶湯に対する金属材料(金属粒子)の配合割合を調整することで、望ましい物性を有する炭素繊維複合金属材料を製造することができる。
(浸透法)
本実施の形態では、金属材料に溶湯を浸透させるいわゆる非加圧浸透法を用いて鋳造する工程について、図2及び図3を用いて詳細に説明する。
図2及び図3は、非加圧浸透法によって炭素繊維複合金属材料を製造する装置の概略構成図である。上記実施の形態で得られた金属材料は、例えば最終製品の形状を有する成形金型内で予備圧縮成形された金属材料4を使用することができる。図2において、密閉された容器1内には、あらかじめ成形された金属材料4(例えばアルミニウム粒子50及びカーボンナノファイバー40)が入れられる。その金属材料4の上方に他の金属材料の塊例えばアルミニウム塊5を配置される。次に、容器1に内蔵された図示せぬ加熱手段によって、容器1内に配置された金属材料4及びアルミニウム塊5をアルミニウムの融点以上に加熱する。加熱されたアルミニウム塊5は、溶融してアルミニウム溶湯(金属溶湯)となる。また、アルミニウム溶湯は、金属材料4中の空所に浸透する。
本実施の態様の金属材料4としては、予備圧縮成形する際に毛細管現象によってアルミニウム溶湯をより早く全体に浸透させることができる程度の空所を有するように成形されている。また、予備圧縮成形に先立って、金属材料4の粒子にマグネシウム粒子を加えて混合させておくことで、容器1内を還元雰囲気としてもよい。アルミニウム溶湯は、還元されることで濡れ性の改善されたアルミニウム粒子50間に毛細管現象によって浸透し金属材料の内部まで完全にアルミニウム溶湯が満たされる。そして、容器1の加熱手段による加熱を停止させ、金属材料4中に浸透した金属溶湯を冷却・凝固させ、図3に示すようなカーボンナノファイバー40が均一に分散された炭素繊維複合金属材料6を製造することができる。鋳造工程に用いられる金属材料4は、あらかじめ鋳造工程で使用される金属溶湯と同じ金属の金属粒子を用いて成形されていることが好ましい。このようにすることで、金属溶湯と金属粒子とが混ざりやすく均質な金属を得られる。また、他の金属材料の塊を金属粒子と異なる材質とした場合には、金属溶湯に対する金属材料(金属粒子)の配合割合を調整することで、望ましい物性を有する炭素繊維複合金属材料を製造することができる。
また、容器1を加熱する前に、容器1の室内を容器1に接続された減圧手段2例えば真空ポンプによって脱気してもよい。さらに、容器1に接続された不活性ガス注入手段3例えば窒素ガスボンベから窒素ガスを容器1内に導入してもよい。
なお、本実施の形態においては、金属材料をあらかじめ所望の形状に予備圧縮成形したものを用いたが、これに限らず、所望形状の型内に粉砕され粒子状となった金属材料を収容し、その上に他の金属材料の塊を載せて浸透法を実施しても良い。
また、上記実施の形態においては非加圧浸透法について説明したが、浸透法であればこれに限らず例えば不活性ガスなどの雰囲気の圧によって加圧する加圧浸透法を用いることもできる。
上述したように、金属材料中のカーボンナノファイバーの表面は活性化しているため、金属材料との濡れ性が向上しており、他の金属材料の溶湯に対しても十分な濡れ性を有しているため、全体に機械的性質のばらつきが低減され、均質な炭素繊維複合金属材料が得られる。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜3、比較例1)
(1)サンプルの作製
(a)未架橋サンプル(炭素繊維複合材料)の作製
第1の工程:ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1に示す所定量(100g)の高分子物質(100重量部(phr))を投入して、ロールに巻き付かせた。
第2の工程:高分子物質に対して表1に示す量(重量部)の金属粒子を高分子物質に投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。なお、投入した金属粒子の種類については後述する。
第3の工程:次に、金属粒子を含む高分子物質に対して表1に示す量(重量部)のカーボンナノファイバー(表1では「CNT」と記載する)を高分子物質に投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
第4の工程:カーボンナノファイバーを投入し終わったら、高分子物質とカーボンナノファイバーとの混合物をロールから取り出した。
第5の工程:ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
第6の工程:ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、分出しした。
このようにして、実施例1〜3及び比較例1の未架橋サンプルを得た。
(b)金属材料の作製
上記(a)の実施例1〜3で得られた未架橋サンプル(炭素繊維複合材料)を窒素雰囲気の炉内でエラストマーの気化温度以上(500℃)で2時間分間熱処理して、エラストマーを気化させ、粉体状の金属材料を得た。
(c)炭素繊維複合金属材料の作製
上記(b)の実施例1〜3で得られた金属材料をプラズマ焼結させ、炭素繊維複合金属材料を得た。また、実施例2、3においては、プラズマ焼結の前に、上記(b)で得られた金属材料に、表1に示す配合量で低融点のアルミニウム合金粒子を加えて混合した。より詳細には、真空容器内に配置された成形ダイ内に上記(b)で得られた粒子状の金属材料と低融点のアルミニウム合金粒子を混合して得られた混合物を配置させ、パンチに荷重Pとして約50MPaの圧縮応力で上下から圧縮したのち、パンチを通して混合物にパルス状電流を通電することにより行われた。このパルス電流がパンチ及び成形ダイを発熱させ、粒子状の混合物を焼結して炭素繊維複合金属材料を得た。なお、得られた炭素繊維複合金属材料のカーボンナノファイバーの含有量が、1.6体積%になるように各配合量を設定した。
ここで用いられた低融点のアルミニウム合金粒子は、融点550℃、平均粒子径が50μmのものを用いた。
また、比較例1の炭素繊維複合金属材料は、非加圧浸透法で得た。より詳細には、上記(a)で得られた比較例1の未架橋サンプルを容器(炉)内に配置させ、アルミニウム塊(地金)をその上に置き、不活性ガス(窒素)雰囲気中でアルミニウムの融点まで加熱した。アルミニウム塊は溶融し、アルミニウム溶湯となり、複合材料のエラストマーと置換するように金属溶湯が浸透した。アルミニウムの溶湯を浸透させた後、これを自然放冷して凝固させ、比較例1の炭素繊維複合金属材料を得た。
なお、実施例1〜3及び比較例1の金属粒子としては、アルミニウム粒子(平均粒径:28μm)を用いた。カーボンナノファイバーは、平均直径(繊維径)が約13nm、平均長さが25μmのものを用いた。
(2)パルス法NMRを用いた測定
各未架橋サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は150℃であった。この測定によって、原料エラストマー単体、複合材料の未架橋サンプルの第1スピン−スピン緩和時間(T2n)と、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)と、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)と、を求めた。なお、原料エラストマー単体については、測定温度が30℃の場合における原料エラストマー単体の第1スピン−スピン緩和時間(T2n)についても求めた。測定結果を表1に示す。実施例1の未架橋サンプルの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は1780(μsec)、実施例2の未架橋サンプルの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は1640(μsec)、実施例3の未架橋サンプルの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は1540(μsec)であった。実施例1〜3における第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は、検出されなかった。従って、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は、0(ゼロ)であった。
(3)流動温度の測定
原料エラストマー単体および複合材料の未架橋サンプルについて、動的粘弾性測定(JIS K 6394)によって流動温度を測定した。具体的には、流動温度は、幅5mm、長さ40mm、厚み1mmのサンプルに正弦振動(±0.1%以下)を与え、これによって発生する応力と位相差δを測定して求めた。このとき、温度は、−70℃から2℃/分の昇温速度で150℃まで変化させた。その結果を表1に示す。なお、表1において、150℃までサンプルの流動現象がみられない場合を「150℃以上」と記載した。
(4)電子顕微鏡(SEM)による観察
実施例1〜3及び比較例1の炭素繊維複合金属材料サンプルの電子顕微鏡(SEM)による観察結果を表1に示す。
(5)圧縮耐力の測定
炭素繊維複合金属材料サンプルについて、圧縮耐力(MPa)を測定した。圧縮耐力の測定は、10×10×5mmの試料を0.01mm/minで圧縮したときの0.2%耐力(σ0.2)とした。その結果を表1に示す。
Figure 0004224428
表1から、本発明の実施例1〜3によれば、以下のことが確認された。すなわち、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含む未架橋サンプル(炭素繊維複合材料)における150℃でのスピン−スピン緩和時間(T2nおよびT2nn/150℃)は、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含まない原料エラストマーの場合に比べて短い。また、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含む未架橋サンプル(炭素繊維複合材料)における成分分率(fnn/150℃)は、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含まない原料エラストマーの場合に比べて小さい。これらのことから、実施例にかかる炭素繊維複合材料では、カーボンナノファイバーが良く分散されていることがわかる。
さらに、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含む炭素繊維複合材料(未架橋サンプル)における流動温度は、原料エラストマー単体の場合に比べて20℃以上高いことから、動的粘弾性の温度依存性が小さく、優れた耐熱性を有することがわかる。
また、実施例1〜3及び比較例1の炭素繊維複合金属材料(アルミニウムがマトリックス)の電子顕微鏡(SEM)におけるカーボンナノファイバーの分散状態の観察では、カーボンナノファイバーの凝集はほとんど観察されず良好であった。
さらに、実施例1〜3の炭素繊維複合金属材料サンプルの圧縮耐力の最小値が、比較例1の炭素繊維複合金属材料サンプルの圧縮耐力の最小値より大きくなっていることから、全体に機械的性質のばらつきが低減された均質な炭素繊維複合金属材料が得られたことがわかる。また、実施例1〜3の炭素繊維複合金属材料の比重が、比較例1より大きくなっていることから、全体に均質な炭素繊維複合金属材料が得られたことがわかる。
以上のことから、本発明によれば、一般に基材への分散が難しいカーボンナノファイバーがエラストマーに均一に分散されることが明らかとなった。また、金属粒子をエラストマーに混合させることで、カーボンナノファイバー特に30nm以下の細いカーボンナノファイバーや湾曲して絡みやすいカーボンナノファイバーにおいても、十分に分散させることができることが明らかとなった。さらに、エラストマーを気化させて得られた金属材料を複合金属材料の原料として用いることで、カーボンナノファイバーの分散した均質な機械的性質を有する炭素繊維複合金属材料が得られることがわかった。
本実施の形態で用いたオープンロール法によるエラストマーとカーボンナノファイバーとの混練法を模式的に示す図である。 非加圧浸透法によって炭素繊維複合金属材料を製造する装置の概略構成図である。 非加圧浸透法によって炭素繊維複合金属材料を製造する装置の概略構成図である。
符号の説明
1 容器
2 減圧手段
3 注入手段
4 金属材料
5 アルミニウム塊
6 炭素繊維複合金属材料
10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
40 カーボンナノファイバー
50 金属粒子

Claims (17)

  1. ラストマーと、金属粒子と、カーボンナノファイバーと、を混合し、かつ剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る工程(a)と、
    前記炭素繊維複合材料を熱処理し、該炭素繊維複合材料中に含まれる前記エラストマーを気化させる工程(b)と、
    を含む、前記金属粒子の周りに前記カーボンナノファイバーが分散した、金属材料の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記金属粒子は、前記エラストマー100重量部に対して、10〜3000重量部である、金属材料の製造方法。
  3. 請求項1または2において、
    前記金属粒子は、前記カーボンナノファイバーの平均直径よりも大きな平均粒径を有する、金属材料の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    前記金属粒子の平均直径は500μm以下である、金属材料の製造方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
    前記金属粒子は、アルミニウム粒子またはアルミニウム合金粒子である、金属材料の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、分子量が5000ないし500万である、金属材料の製造方法。
  7. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、未架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし3000μ秒である、金属材料の製造方法。
  8. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒である、金属材料の製造方法。
  9. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmである、金属材料の製造方法。
  10. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いて行われる、金属材料の製造方法。
  11. 請求項10において、
    前記オープンロール法は、2本のロールの表面速度比が1.05ないし3.00である、金属材料の製造方法。
  12. 請求項1ないし11のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、0ないし50℃で行われる、金属材料の製造方法。
  13. 請求項1ないし12のいずれかにおいて、
    前記工程(b)は、不活性気体雰囲気中において、前記エラストマーの気化温度以上であって、かつ前記金属粒子の融点未満で熱処理される、金属材料の製造方法。
  14. 請求項1ないし13のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、天然ゴム(NR)であり、
    前記金属粒子は、アルミニウム粒子であり、
    前記工程(b)の熱処理温度は、300ないし650℃である、金属材料の製造方法。
  15. 請求項1ないし14のいずれかにおいて得られた前記金属材料を粉末成形する工程(c−1)をさらに有する、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  16. 請求項1ないし14のいずれかにおいて得られた前記金属材料を金属溶湯に混入して所望の形状を有する鋳型内で鋳造する工程(c−2)をさらに有する、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  17. 請求項1ないし14のいずれかにおいて得られた前記金属材料に金属溶湯を浸透させて前記金属材料の間隙を前記金属溶湯で満たす工程(c−3)をさらに有する、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
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