JP5077660B2 - 金属粉末複合材を製造するコーティング組成物と、該金属粉末複合材によって製造された金属複合材、金属積層複合材、およびこれらの製造方法 - Google Patents

金属粉末複合材を製造するコーティング組成物と、該金属粉末複合材によって製造された金属複合材、金属積層複合材、およびこれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、微細炭素繊維を含む金属粉末複合材とその応用材料等に関し、さらに材質の均質性に優れており、自動車用材料として好適な金属複合材料とその製造方法に関する。
微細炭素繊維としてカーボンナノファイバー(カーボンナノチューブとも云う)が知られている。カーボンナノファイバーは直径1nm〜100nm程度、太いタイプのもので160nmにも達し、アスペクト比10〜100程度のナノサイズの大きさを有する特有の炭素構造からなる極微細材料であり、炭素質であるので優れた導電性を有し、また機械的強度に優れているので、これを金属粉末に配合することによって導電性や機械的強度を高めた複合材料が知られている。
例えば、特開2005−8989号公報(特許文献1)には、アルミニウムを主成分とする金属マトリックスにカーボンナノチューブとカーボンナノカプセルの混合物からなる強化材を配合した複合材料が記載されている。また、特開2005−48206号公報(特許文献2)には、アルミニウム合金マトリックス中にカーボンナノチューブを分散させた複合材料が記載されている。また、特開2007−16286号公報(特許文献3)には、アルミニウム等の軽金属マトリックスにカーボンナノチューブとセラミックス短繊維を配合した金属基複合材が記載されている。さらに、特開2007−16262号公報(特許文献4)には、金属粉末表面にカーボンナノチューブを付着させた複合材が記載されている。
一方、カーボンナノファイバーは炭素質であるために水などに対する濡れ性が極めて低く、水中などで分散し難く、また、アルミニウム粉末などの金属粉末に混合すると凝集しやすく、均一な分散状態を得るのが難しい。このため、例えば、金属粉末表面にカーボンナノチューブを付着させた従来の複合材(特許文献4)では、金属粉末とカーボンナノチューブの混合物に衝撃力や圧縮力、摩擦力、剪断力などの機械的作用を繰り返し加えて一体化させようとしているが、十分ではなく、カーボンナノチューブが均一に分散混合された複合材を得るのは難しい。
アルミニウム粉末などの金属マトリックス中にカーボンナノチューブの凝集部分が存在すると、この凝集部分が脆くなり、局部的な強度欠陥部分になる。
特開2005−08989号公報 特開2005−48206号公報 特開2007−16286号公報 特開2007−16262号公報
本発明は、金属マトリックス中にカーボンナノファイバーを含有する金属複合材料について、従来の上記問題を解決したものであり、材料全体の均質性に優れた高品質の金属粉末複合材とその製造方法等を提供する。
本発明は、以下の構成によって上記課題を解決した金属粉末複合材製造用のコーティング組成物と、該金属粉末複合材によって製造された金属複合材、金属積層複合材に関する。
〔1〕表面を酸処理して親水化したナノサイズの微細炭素繊維および金属粉末を溶媒に分散させてなり、上記微細炭素繊維が平均繊維径1nm〜160nmおよびアスペクト比5以上のカーボンナノチューブないしカーボンナノファイバーであり、金属粉末の平均一次粒径が0.1μm〜100μmであり、金属粉末に対する微細炭素繊維の量が0.05〜15.0質量%であり、微細炭素繊維が網目状に被覆されている金属粉末複合材を製造するためのものであることを特徴とする金属粉末複合材製造用のコーティング組成物。
〔2〕さらに結着剤を添加してなる上記[1]に記載するコーティング組成物。
〔3〕金属粉末がAl粉末、Al合金粉末、Mg合金粉末、Ti合金粉末、Cu粉末、Cu合金粉末、Ni合金粉末、Cr合金粉末、Fe合金粉末である上記[1]または上記[2]に記載するコーティング組成物。
〔4〕上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するコーティング組成物の溶媒を乾燥してなり、微細炭素繊維が金属粉末表面に網目状に被覆されている金属粉末複合材。
〔5〕上記[4]に記載する金属粉末複合材を焼結処理してなる金属複合材。
〔6〕上記[4]に記載する金属粉末複合材を非酸化性雰囲気下で加熱して溶融状態または半溶融状態にし、これを基板表面に積層してなる金属積層複合材。
本発明は、さらに以下の製造方法に関する。
〔7〕上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するコーティング組成物の溶媒を乾燥して金属粉末表面に微細炭素繊維が網目状に被覆した金属粉末複合材を製造する方法。
〔8〕上記[7]に記載する方法によって製造した金属粉末複合材を、非酸化性雰囲気下で溶融または半溶融状態にして基材表面に積層することによって金属積層複合材を製造する方法。
本発明の金属粉末複合材は、金属粉末の表面にカーボンナノファイバーなどの微細炭素繊維からなる網目状の被膜を有するので、粉末全体において微細炭素繊維が均一に分散された状態になり、この複合粉末を焼結ないし成型固化したときに、均一な材質の金属複合材を得ることができる。
本発明の金属粉末複合材は、例えば、平均一次粒径0.1μm以上の金属粉末に対して、平均繊維径1nm〜100nmおよびアスペクト比5以上のカーボンナノファイバーからなる微細炭素繊維を用いることによって、金属粉末の表面に局部的な偏在の少ない均質な網目状被膜を形成することができる。また、表面を酸処理したカーボンナノファイバーを用いることによって液中でカーボンナノファイバーが良好に分散し、金属粉末表面に均質な網目状被膜を形成することができる。
本発明の金属粉末複合材は、金属粉末表面に微細炭素繊維からなる網目状被膜を有するので、本発明の金属粉末複合材によって製造した金属材料は、この網目状被膜を有しない金属粉末から製造した金属材料よりも、機械的強度および熱伝導性、導電性等に優れた金属材料を得ることができる。
また、本発明の金属粉末複合材の製造方法によれば、衝撃力などを繰り返し加える機械的作用を必要とせず、湿式製法によって、均質な金属粉末複合材を得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、この金属粉末複合材を焼結処理することによって、均質な金属複合材を低コストで製造することができる。
以下、本発明を実施例と共に具体的に説明する。
本発明の金属粉末複合材は、下記[イ]のコーティング組成物によって製造される。
〔イ〕表面を酸処理して親水化したナノサイズの微細炭素繊維および金属粉末を溶媒に分散させてなり、上記微細炭素繊維が平均繊維径1nm〜160nmおよびアスペクト比5以上のカーボンナノチューブないしカーボンナノファイバーであり、金属粉末の平均一次粒径が0.1μm〜100μmであり、金属粉末に対する微細炭素繊維の量が0.05〜15.0質量%であり、微細炭素繊維が網目状に被覆されている金属粉末複合材を製造するためのものであることを特徴とするコーティング組成物。
ナノサイズの微細炭素繊維とは平均繊維径1nm〜500nmおよびアスペクト比5以上の炭素繊維を云い、例えば、上記平均繊維径およびアスペクト比のカーボンナノチューブないしカーボンナノファイバーである。具体的には、例えば、平均繊維径1nm〜160nm、アスペクト比5以上である。表面が酸処理して親水化されたカーボンナノチューブないしカーボンナノファイバーが用いられる。

また、本発明の金属複合材は、金属粉末表面に微細炭素繊維による網目状の被膜を有する上記金属粉末複合材を焼結してなるものであり、本発明の金属積層複合材は上記金属複合材を基材表面に積層したものである。
本発明に係る金属粉末複合材の基材となる金属粉末の金属種は限定されず広く用いることができる。具体的には、例えば、金属粉末として、Al粉末、Al合金粉末、Mg合金粉末、Ti合金粉末、Cu粉末、Cu合金粉末、Ni合金粉末、Cr合金粉末、Fe合金粉末を用いることができ、望ましくはAl、Mg、Ti基の軽金属粉末、最も望ましくはAl粉末、Al合金粉末を用いることによって、通常の金属アルミニウムやアルミニウム合金などよりも機械的強度および熱伝導性、導電性等に優れたアルミニウム合金基複合材料を得ることができる。
金属粉末の平均一次粒径はその用途や焼結処理などに応じたものを用いればよく、一般に0.1μm以上の金属粉末が適当である。例えば、自動車用材料としてアルミニウム材料やアルミニウム合金材料などが用いられており、これらの材料を金属粉末の焼結処理によって製造する場合、10μm〜500μmのアルミニウム金属粉やアルミニウム合金粉が一般に用いられている。本発明の金属粉末複合材はこれらの粒径の金属粉末を用いることができる。
なお、本発明において用いられる金属粉末の平均一次粒径は上記範囲に限らず、望ましくは0.1〜100μmの平均一次粒径を有する金属粉末が好適に用いられる。この粒径範囲の金属粉末は焼結、ホットプレス工程、およびロールコンパクションプロセスなどの強歪加工によって金属粉末の粒子内部に微細炭素繊維を分散させる工程や、溶射やコールドスプレー工程の加工に適している。さらに好ましくは、焼結系の加工には0.1〜30μmの平均一次粒径が適しており、金属粒内部への分散や表面コーティング系の加工には20〜100μmの平均一次粒径が望ましい。
本発明において用いられる微細炭素繊維は、平均一次粒径0.1〜100μmの金属粉末に対して、平均繊維径1nm〜160nmおよびアスペクト比5以上の微細炭素繊維を用いるとよく、好ましくは1nm〜100nmの微細炭素繊維を用いるとよい。なお、好適な態様としては、金属粉末の平均一次粒径よりも小さい繊維長さの微細炭素繊維を用い、この微細炭素繊維を金属粉末表面に多数分散させることによって、金属粉末表面に局部的な偏在の少ない均質な網目状被膜を形成することができる。また、この微細炭素繊維は、良好な導電性および機械的強度が得られるように、例えば、100〜500MPaの圧粉下の体積抵抗値が1.0Ωcm以下、X線回折測定によるグラファイト層の[002]面の積層間隔が0.35nm以下であるものが好ましい。
本発明の金属粉末複合材において、上記微細炭素繊維の含有量は0.05〜15.0質量%が適当であり、1.0〜5.0質量%が好ましい。微細炭素繊維の含有量が上記範囲より少なくと機械的強度や熱伝導度,電気伝導度などが不十分であり、一方、該含有量が上記範囲より多いと、相対的に金属粉末量が少なくなるので、炭素繊維の均一分散性が低下して所望の物性が得られ難くなる場合がある。
微細炭素繊維を液中に分散させ、この分散液に金属粉末を添加し、結着剤の存在下で均一混合し、その後溶媒を乾燥させることによって、微細炭素繊維が金属粉末表面に均一に付着した網目状の微細炭素繊維膜を形成することができる。この微細炭素繊維は、液中で分散剤を使用せずに良好な分散状態を得るため、表面を酸処理して親水化したものが好ましい。
一般に、炭素材料は疎水性を有し、水溶液中で分散し難いので、炭素材料を液中で分散させるため通常は分散剤を使用している。しかし、分散剤を用いるとこれが金属粉末複合材に不純物として含まれ、これが焼結処理の際に分解して気泡を生じるなどの不都合を生じる場合がある。一方、表面を酸処理して親水化した微細炭素繊維は分散剤を必要とせずに水溶液中で良好な分散状態を得ることができるので、不純物が少なく、焼結処理の際に気泡を生じる虞のない高品質の金属粉末複合材を得ることができる。
微細炭素繊維の酸処理は、例えば、微細炭素繊維に硫酸などの硫黄含有強酸を添加し、硝酸などの酸化剤を加え、このスラリーを加熱下で攪拌した後、濾過し、残留する酸を洗浄して除去すればよい。この酸処理によってカルボニル基やカルボキシル基あるいはニトロ基などの極性官能基が形成されて親水化する。
微細炭素繊維が分散した液中に金属粉末を加え、均一混合した後に、溶媒を乾燥することによって、分散状態の微細炭素繊維が金属粉末表面に付着して網目状の被膜が形成される。この微細炭素繊維の付着状態を安定に保つため結着剤を添加した分散液を用いることもできる。結着剤としては炭素繊維よりも低温焼成可能なエチルセルロースなどを用いることができる。結着剤の量は金属粉末複合材において10質量%以下が適当である。結着剤の量がこれより多いと金属粉末の焼結処理時に気泡発生原因となるので好ましくない。
本発明は、その実施態様の一例として、表面を酸処理して親水化した微細炭素繊維を溶剤、水から選ばれた一つ以上の分散媒に分散させてなり、金属粉末表面に微細炭素繊維の網目状被覆を形成するのに用いる金属粉末複合材用の分散液を含む。微細炭素繊維を分散させる溶媒としてはN-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アルコール系(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、水等を用いることができる。
微細炭素繊維の分散液は、微細炭素繊維の酸性懸濁液に酸化剤を添加し、酸処理して微細炭素繊維の表面を親水化した後に該微細炭素繊維を濾過分離して回収し、この微細炭素繊維を溶媒、水から選ばれた一つ以上の分散媒と混合して製造することができる。
本発明はその実施態様の一例として、微細炭素繊維の分散液に金属粉末を添加したコーティング組成物の形態を含む。このコーティング組成物は結着剤を含むものでもよく、含まないものでもよい。上記分散液ないしコーティング組成物はスラリー、ペーストなどの形態で利用することができる。これらのスラリーないしペーストは、上記微細炭素繊維分散液に結着剤と金属粉末を加えて調製してもよく、または、上記微細炭素繊維分散液に結着剤を加えてなるコーティング組成物を用い、該コーティング組成物に金属粉末を加えて調製してもよい。
金属粉末表面に微細炭素繊維による網目状の被膜を有する上記金属粉末複合材を焼結処理することによって、微細炭素繊維が均一に分散した金属複合材を得ることができる。焼結処理はプラズマ焼結法、またはホットプレス法によって固形化することができる。あるは、複合粉末をCIP、HIP、またはこれらの組み合わせによって成型固化し、さらにそれを一時固形化した後に、キャンニング被覆して熱間押し出しを行っても良い。
上記加工方法によって、カーボンナノファイバー(微細炭素繊維)がネットワーク状に覆った金属粒が押し出し方向に引き伸ばされて強度が向上した金属複合材を得ることができる。この時、不必要となった結着材は粉末時に適度の温度、雰囲気にて酸化、気化させて飛ばし除去しても、固形化の直前、または半固形化後に型内で飛ばし除去してもよい。さらには、これらの混合粉末をロールコンパクションなどの強歪加工にて微細炭素繊維を金属粒子内部に分散させることもできる。
本発明の金属粉末複合材の焼結処理によって得た金属複合材は、微細炭素繊維が金属組織全体に均一に分散しているので、組織全体の均質性に優れており、機械的強度および熱伝導性、電気伝導度などにも優れている。金属組織中にカーボンナノファイバーを分散させて複合材において、従来のようにカーボンナノファイバーが凝集しやすいものは、この凝集箇所が強度の脆弱部分となる場合があるが、本発明の金属複合材は微細炭素繊維が金属組織全体に均一に分散しているので、このような脆弱箇所が実質的に発生せず、高品質の金属複合材を得ることができる。
金属粉末複合材を焼結処理して得た金属複合材を基材表面に積層することによって、微細炭素繊維が均一に分散した金属複合材からなる表面を有する金属積層複合材を得ることができる。基材としては耐熱鋼、アルミニウム合金、または鉄基合金などが用いられる。
金属積層複合材は、例えば、上記金属粉末複合材を非酸化性雰囲気下で加熱して溶融状態または半溶融状態にし、これを基板表面に積層して一体化することによって製造することができる。具体的には、上記金属粉末複合材をプラズマアークによって溶融し、基板表面に積層するプラズマ粉体積層や、上記金属粉末複合材をプラズマジェット中で溶融し、基板に吹付けて積層するプラズマ溶射、あるいは上記金属粉末複合材をレーザで溶融して基板表面に積層する方法や、比較的低温で施工可能な高速フレーム溶射などによって製造することができる。
また、金属積層複合材は、例えば、粉末複合材料を溶融またはガス化させること無く、不活性ガスと共に超音速流で固相状態のまま基材に衝突させて、これを基板表面に積層して一体化することによって製造することもできる。具体的には、高くとも温度200〜500℃の不活性ガスとともに超音速で衝突させ、粒子自体が塑性変型し皮膜となり、熱による酸化などを最小限にできるコールドスプレーによって製造することが出来る。
これらの基盤表面に積層して一体化した複合材は、均一に微細炭素繊維が分散した、熱伝導度や、耐摩耗性、または摩擦摺動性に優れた表面積層膜を持ち、高価なカーボンナノチューブなどの微細炭素繊維の使用量を極力抑えて、上記の優れた特性を発揮できる特色を有する。
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。試験結果を表1および表2に示す。
〔実施例1〕
(1)CNF分散液の調製
微細炭素繊維として中空構造のカーボンナノファイバー(CNF:平均繊維径20nm)を硝酸と硫酸の混合液に1重量部:5重量部:15重量部の割合で混合し、過熱して表面を酸処理した。得られた溶液を濾過し、数回水洗を行って残留する酸を洗い流した。その後、乾燥して粉末化し、その粉末をジメチルアセトアミドに溶解させてCNF分散液を得た。
(2)金属粉末複合材の製造
結着剤としてエチルセルロースを用い、上記CNFのジメチルアセトアミド分散液に該結着剤を固形分比で1:1となるように混合してコーティング組成物を調製した。次いで、金属粉末として平均一次粒径1.5μmのアルミニウム粉末(Al粉末)を用い、上記コーティング組成物にAl粉末を加えて分散させ、均一混合した後に、乾燥して網目状被膜を有するAl粉末複合材を得た。また比較例として、同サイズで水溶性でない、修飾基をもたないカーボンナノフィバーを通常のエタノール中にAl粉末と共に超音波で分散し、溶媒を気化して飛ばした複合粉末を作成した。
(3)表面状態
上記製造工程で得たCNF網目状被膜を有する金属粉末複合材の顕微鏡写真を図1および図2に示した。比較対照として、CNF網目状被膜を形成しない原料のAl粉末写真を図3および図4に示した。Al粉末原料の写真(図3および図4)と比較すると、本発明のAl粉末複合材粉末には、図1および図2に示すように、Al粉末表面に均一な網目状被膜が形成されていることがわかる。一方、比較例で作成した金属粉末の表面には図3および図4に示すようにカーボンナノファイバーが親水化されていないため、分散液とならず、その結果CNFの網目状被膜が形成されなかった。
〔実施例:試料No.2〜11〕
(4)金属複合材の製造
表1に示す平均一次粒径(1.5μm、17μm、26μm、90μm)のAl粉末を用い、表1に示す分散媒、結着材、CNF量に従い、実施例1と同様にして粉末表面にCNF網目状被膜を設けたAl金属粉末複合材を調製した。なお、試料No.6、試料No.7は結着材を使用しなかった。これを焼結処理してAl基複合材を製造した。この複合材の物性を表1に示した。焼結は、Al金属粉末複合材を所定の温度で加熱処理して結着材が含まれるサンプルに対しては酸化気化除去した後、所定重量を秤量して超硬型にセットし、真空中にて加圧し、パルス電流を加えて昇温、保持して、SPSプラズマ焼結を行った。実施した焼結条件は、真密度が得られやすく、型の損傷、CNTの熱影響が軽度な480℃〜500℃の温度範囲に10分以上保持し、400〜500MPaの加圧で行った。なお、この条件以外でも、真空雰囲気のカーボン型にて600℃近い高温で100MPA程度の低圧条件で製造することができる。本発明試料No.4、No.8、No.9のAl金属組織の顕微鏡写真を図5〜図7に示す。
〔参考例:No.12〜13〕
平均一次粒径(1.5μm、26μm)のAl粉末を用い、カーボンナノフィバーの繊維径が10nm、160nmのものを用いて表面を親水化処理せずに分散媒に入れた以外は実施例2と同様に焼結処理してAl金属材を製造した。このAl金属組織の顕微鏡写真を図8、図9に示す。
〔参考例:試料No.14〕
平均一次粒径(1.5μm)のAl粉末を用い、カーボンナノフィバーの繊維径が10nmのものを用いて表面の親水化処理を行い、カーボンナノファイバーの添加量を18wt%として分散媒に入れた以外は実施例2と同様に焼結処理してAl金属材を製造した。このAl金属組織の顕微鏡写真を図10に示す。
〔参考例:試料No.15〕
平均一次粒径(120μm)のAl粉末を用い、カーボンナノフィバーの繊維径が10nmのものを用いて表面の親水化処理を行い、カーボンナノファイバーの添加量を15wt%として分散媒に入れた以外は実施例2と同様に焼結処理してAl金属材を製造した。
〔比較例:試料No.16〜17〕
カーボンナノフィバーを含有しないものを比較例として示した。
本発明に係る試験No.2〜11は表1に示すようにAl金属組織中にCNFの凝集が見られず、図5〜図7(試験No.4,8,9)に示すように均質な組織を有している。これはAl粉末の平均一次粒径が1.5μmでも、これより平均一次粒径が格段に大きい90μmでも変わらない。一方、金属粉末の粒径、CNFの繊維径、含有量の何れかが本発明の好ましい範囲を外れる参考試料(No.12、No.13)では、図8、図9に示すようにCNFの大きな凝集が存在し、均質な金属組織が得られない。また、Al粉末表面に親水化されたCNFが過剰に存在する試料(No.14)や、Al粉末が好ましい粒径より大きな試料(No.15)は、過剰CNFの粒界析出(図10)や、大きなAl粉の隙間にCNFが存在し、均質な金属組織が得られない。
尚、比較例16〜17に見られるように熱伝導率はアルミの粒径が小さくなる程、小さくなったが、これは粉末表面の酸化膜による影響と示唆される。
Al粉末複合材の粒子面の組織状態を示す電子顕微鏡写真 Al粉末複合材の粒子面の組織状態を示す電子顕微鏡写真 CNF被膜を形成しないAl粉末の電子顕微鏡写真 CNF被膜を形成しないAl粉末の電子顕微鏡写真 試験No.4(実施例)のAl金属組織の電子顕微鏡写真 試験No.8(実施例)のAl金属組織の電子顕微鏡写真 試験No.9(実施例)のAl金属組織の電子顕微鏡写真 試験No.12(参考例)のAl金属組織の電子顕微鏡写真 試験No.13(参考例)のAl金属組織の電子顕微鏡写真 試験No.14(参考例)のAl金属組織の電子顕微鏡写真

Claims (8)

  1. 表面を酸処理して親水化したナノサイズの微細炭素繊維および金属粉末を溶媒に分散させてなり、上記微細炭素繊維が平均繊維径1nm〜160nmおよびアスペクト比5以上のカーボンナノチューブないしカーボンナノファイバーであり、金属粉末の平均一次粒径が0.1μm〜100μmであり、金属粉末に対する微細炭素繊維の量が0.05〜15.0質量%であり、微細炭素繊維が網目状に被覆されている金属粉末複合材を製造するためのものであることを特徴とする金属粉末複合材用のコーティング組成物。
  2. さらに結着剤を添加してなる請求項1に記載するコーティング組成物。
  3. 金属粉末がAl粉末、Al合金粉末、Mg合金粉末、Ti合金粉末、Cu粉末、Cu合金粉末、Ni合金粉末、Cr合金粉末、Fe合金粉末である請求項1または請求項2に記載するコーティング組成物。
  4. 請求項1〜請求項3の何れかに記載するコーティング組成物の溶媒を乾燥してなり、微細炭素繊維が金属粉末表面に網目状に被覆されている金属粉末複合材。
  5. 請求項4に記載する金属粉末複合材を焼結処理してなる金属複合材。
  6. 請求項4に記載する金属粉末複合材を非酸化性雰囲気下で加熱して溶融状態または半溶融状態にし、これを基板表面に積層してなる金属積層複合材。
  7. 請求項1〜請求項3の何れかに記載するコーティング組成物の溶媒を乾燥して金属粉末表面に微細炭素繊維が網目状に被覆した金属粉末複合材を製造する方法。
  8. 請求項7に記載する方法によって製造した金属粉末複合材を、非酸化性雰囲気下で溶融または半溶融状態にして基材表面に積層することによって金属積層複合材を製造する方法。
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