JP2013505353A - 金属およびナノ粒子を含む複合材料 - Google Patents
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Abstract
本発明は、配合物が、100nmより大きく200nmまで、好ましくは120nmおよび200nmの間の範囲で平均寸法を有する微結晶の金属微結晶構造を有することを特徴とする金属およびナノ粒子、特にカーボンナノチューブ(CNT)を含む配合物材料に関する。
Description
本発明は、配合物が、100nmより大きく200nmまで、好ましくは120nmおよび200nmの間の範囲で平均寸法を有する微結晶の金属微結晶構造を有することを特徴とする、金属およびナノ粒子、特にカーボンナノチューブ(CNT)を含む配合物材料に関する。
「カーボンフィブリル」または「中空カーボンファイバー」とも称されることがあるカーボンナノチューブ(CNT)は、3〜100nmの直径および該直径の数倍の長さを有する典型的な円筒状カーボンチューブである。CNTは、炭素原子の1以上の層から構成されてよく、異なった形態を有するコアを特徴とする。
CNTは、長い間、文献から知られている。一般に、Iijima(S.Iijima、Nature第354巻、第56〜58頁、1991年)がCNTを最初に発見したと言われるが、幾つかの黒鉛層を有する繊維状黒鉛物質は、1970年代または1980年代から知られている。例えばGB1469930A1およびEP56004A2では、TatesおよびBakerが、炭化水素の触媒分解からの極めて微細な繊維状炭素の堆積物を最初に記載した。しかしながら、これらの出版物では、短鎖炭化水素に基づいて製造された炭素フィラメントは、その直径について詳細に特徴付けられていない。
カーボンナノチューブの最も一般的な構造は、円筒状であり、CNTは、単一グラフェン層(単壁カーボンナノチューブ)か複数の同心グラフェン層(多壁カーボンナノチューブ)から構成される。その円筒状CNTを製造する標準的な方法は、アーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法および触媒CVD法に基づく。Iijimaによる上記文献(Nature 354、第56〜58頁、1991年)は、アーク放電法を用いる、2以上のグラフェン層を同心の途切れのない円筒の形態で有するCNTの形成を記載する。いわゆる「ロールアップベクトル」に応じて、CNT縦軸について炭素原子のキラルおよび非キラル配置が可能である。
Bacon等による文献J.Appl.Phys.第34巻、1960年、第283〜290頁では、通常「スクロール型」と称される、単一連続ロールアップグラフェン層からなるCNTの異なった構造が最初に記載されている。不連続グラフェン層から構成される同様の構造は、名称「オニオン型」CNTとして既知である。その後、上記構造はまた、Zhou等(Science、第263巻、1994年、第1744〜1747頁)により、およびLavin等(Carbon 40、2002年、第1123〜1130頁)により見出された。
よく知られているように、CNTは、電気伝導性、熱伝導性および強度について実に驚くべき特性を有する。例えばCNTは、ダイヤモンドの硬度を超える硬度および鋼の10倍の引張強度を有する。その結果、上記の有利な特性の幾つかを配合物材料へ与えようとする、CNTを化合物または複合材料、例えばセラミック、ポリマー材料または金属等に構成物質として用いる絶え間のない努力が存在する。
US2007/0134496A1から、CNT分散化複合材料を製造する方法が知られており、セラミックおよび金属および長鎖カーボンナノチューブの混合粉末が、ボールミルにより混練および分散され、および分散化材料が放電プラズマを用いて焼結される。アルミニウムを金属に用いる場合には、好ましい粒度は50〜150μmである。
カーボンナノ物質および金属粉末が、複合材料CNT金属粉末を製造する機械合金化法により混合および混練される同様の方法が、JP2007154246Aに記載されている。
金属CNT複合材料が得られる他の関連法は、WO2006/123859A1に記載されている。ここでも、金属粉末およびCNTがボールミルにより毎分300回転以上のミル速度において混合される。この先行技術の主な目的の1つは、機械および電気特性を強化するためにCNTの方向性を確保することである。この特許文献によれば、方向性は、複合材料への力学的質量フロー法の適用によりナノフィブリルへ付与され、ナノフィブリルは金属中に均一に分散される(ここで、質量フロー法は、例えば複合材料の押出、ロール法または射出であってよい)。
本発明者のWO2008/052642およびWO2009/010297は、CNTおよび金属を含有する複合材料を製造する更なる方法を開示する。ここでは、複合材料は、ボールミルを用いる機械的合金化法により製造される(ボールは11m/秒または14m/秒までの極めて速い速度へ加速される)。得られる複合材料は、交互の金属およびCNT層の層構造を特徴とし、金属材料の個々の層は、20および200000nm厚の間であってよく、およびCNTの個々の層は、20および50000nmの間の厚みであってよい。この先行技術の層構造を、図11bに示す。
これらの特許文献に更に示されるように、6.0重量%CNTを純粋アルミニウムマトリックス中へ導入することにより、引張強度、硬度および弾性率は、純粋アルミニウムと比べて著しく増加し得る。しかしながら、層構造に起因して、機械的特性は等方性ではない。
CNTの均質な等方性分布を提供するために、JP2009030090では、CNT金属化合物材料を形成する別の方法が提案される。この文献によれば、0.1μm〜100μmの平均第1級粒度を有する金属粉末がCNTを含有する溶液中に浸漬され、およびCNTが金属粒子へ親水性化により付着し、これにより、金属粉末粒子の上部へメッシュ形状被覆フィルムが形成される。次いでCNT被覆金属粉末は、焼結法により処理することができる。また、積層金属複合材料は、被覆金属複合材料を基材表面上に積層させることにより形成され得る。得られる複合材料は、優れた機械強度、電気伝導性および熱伝導性を有すると報告されている。
先行技術の上記議論から明らかなように、CNTを金属に分散することの同じ一般的な考えは、多くの異なった方法により実施することができるが、得られる複合材料は、異なった機械的、電気伝導性および熱伝導性特性を有し得る。
上記先行技術は、未だ開発の初期段階であり、すなわち、どのような種類の複合材料が、十分に大きい規模で、および工業における使用を実際に見出す経済的に合理的な条件下で、最終的に製造することができるか未だに示されていないと更に理解される。さらに、配合物材料の機械的特性自体はほとんど評価されておらず、複合材料は、物品中への更なる加工下でどのように挙動するのか、特に、どの程度にまで、原料物質として複合材料の有益な特性がこれにより製造された完成物品へ引き継がれ、物品の使用下で維持することができるのか示されていない。
S.Iijima、Nature、第354巻、第56〜58頁、1991年
Bacon、J.Appl.Phys.第34巻、1960年、第283〜290頁
Zhou、Science、第263巻、1994年、第1744〜1747頁
Lavin、Carbon 40、2002年、第1123〜1130頁
種々のCNT含有金属が記載されているが、これらの化合物の性能は、大規模利用において、実際的経験により検証されおよび微調整されていない。意外にも、等方性CNTアルミニウム合金における特性は、該合金が明確な範囲の微結晶寸法を有しおよび極めて特定のCNTを用いる場合、優れていることが見出された。
従って、本発明の目的は、先行技術の材料と比べて更に強化された機械特性、例えば硬度、引張強度およびヤング率、耐熱性、すなわち、高温安定性等を有する、改良された金属およびナノ粒子を含む複合材料およびその製造方法を提供することである。
本発明の他の同様に重要な目的は、これらの優れた有益な機械特性を、半製品または完成品への更なる処理下で示し、有益な特性をその製品が使用される間に維持する上記複合材料を提供することである。これは、該材料を、かなりの精密さおよび効率性で有利な機械特性を維持しながら製造することができ、完成品それ自体が高温安定性を十分に有することを可能とする。
製造方法に関して、本発明の更なる目的は、別個の成分および複合材料の簡単かつ費用効率の高い取り扱いを、製造にかかわる人のために暴露の可能性を最小化しながら可能とする方法を提供することである。
1つの実施態様に従う上記目的に対応するために、金属粉末およびナノ粒子を機械的合金化により処理して、100nmより大きく200nmまで、好ましくは120nmおよび200nmの間の範囲での平均寸法を有する金属微結晶を含む複合材料を形成する、金属およびナノ粒子、特にカーボンナノチューブ(CNT)を含む複合材料の製造方法を提供する。
従って、本発明の複合材料は、金属微結晶の大きさが少なくとも1桁小さい点でJP2009030090またはUS2007/0134496の複合材料と構造的に異なる。
また、本発明の複合材料は、本発明の複合材料において、200nm未満100nmより大きい独立した金属微結晶を形成させる点で本発明者の先行する発明と異なるが、上記特許文献に従えば、配合物は、金属層の平面伸張が200nmをはるかに越える金属およびCNTの交互の薄層の構造を有する。
EP1918249A1およびWO2009/010297A1には、最大外側長さが50.000nmであるCNTおよびCNT凝集体が開示されている。しかしながら、本明細書において後に記載する特定の種類のCNT(さらに、以下、この明細書において「CAT−INV」と称する)の使用は、遊離体の処理について、および本発明による組成物およびこれから製造される半製品および完成品の得られる特性について極めて有用であることが分かる。
機械的合金によるCNTの強化効果は、CNT金属化合物における平均微結晶寸法が、100nmより大きく200nmまで、好ましくは120nmおよび200nmの間の範囲である場合に極めて顕著である。
先行技術の配合物材料と比較すると、このようにして製造された合金は、とりわけヤング率および硬度について優れた特性を有する。その高温安定性に起因して、これらの特性は、合金が高温に曝されるかまたは曝された場合でも保持される。
また、本発明の幾つかの実施態様では、幾つかのCNTを、微結晶中に含ませるかまたは組み込む。これは、微結晶から「毛」のように突き出たCNTと考えることができる。これらの組み込まれたCNTは、エネルギーを、配合物材料を圧縮することにより圧力および/または熱の形態で供給する場合に、粒成長および内部緩和を防止すること、すなわち、転位密度の減少を防止することにおいて重要な役割を果たすと考えられる。例えばEP1918249A1における機械的合金化技術を用いて、CNTを微結晶中に組み込む。特に、CNTを用いる場合、本発明のCNT金属配合物の微結晶は、100nmより大きく200nmまで、好ましくは120nmおよび200nmの間の寸法において安定化する。
好ましくは、配合物の金属は、軽金属、特にAl、Mg、Tiまたはこれらの1以上を含む合金である。あるいは、金属は、CuまたはCu合金であり得る。金属成分としてのアルミニウムについて、本発明は、Al合金により現在引き起こされている多くの問題を回避することを可能とする。標準EN573−3/4に従って亜鉛を組み込んだAl7xxxまたはLiを組み込んだAl8xxxのような高強度Al合金が知られているが、残念ながら、これらの合金を陽極酸化により被覆することは困難であることが分かる。異なったAl合金を組み込んだ場合、含まれる合金の異なった電気化学ポテンシャルに起因して、腐食が接触領域に生じ得る。他方、固体−溶液固化に基づく系列1xxx、3xxxおよび5xxxのA1合金は、陽極酸化により被覆することができるが、これらは比較的低い機械特性、低温安定性を有し、冷間加工により極めて狭い程度にのみ固化することができる。
これに対して、純粋アルニウムまたはアルミニウム合金が本発明の複合材料の金属構成物質を形成する場合、ナノ安定化効果に起因して、現在利用可能な高強度アルミニウム合金と同等またはそれを上回る強度および硬度を有し、ナノ安定化に起因して向上した高温安定性をも有し、および陽極酸化可能なアルミニウム系複合材料を提供することができる。高強度アルミニウム合金を本発明の複合材料の金属として用いる場合、配合物の強度を更に上昇させることもできる。また、CNTの複合材料における割合を適切に調節することにより、機械特性を所望の値へ調節することができる。従って、同一金属成分を有するがCNTの異なった濃度、従って異なった機械特性を有する材料を製造することができ、これは、同一の電気化学ポテンシャルを有し、従って互いに接合する場合に腐食する傾向を有さない。
引張強度および硬度は、複合材料中のCNTの含有量によりおおよそ比例的に変化し得ることを見出した。アルミニウムのような軽金属について、ビッカース硬度は、CNT含有量によりほぼ近似的に増加することが見出された。約9.0重量%のCNT含有量では、複合材料は、極めて硬くおよび脆弱となる。従って、所望の機械特性に応じて、0.5〜10.0重量%のCNT含有量が好ましい。とりわけ、5.0〜9.0%の範囲のCNT含有量は、ナノ安定化の上記優位性、特に高温安定性と共に驚くべき強度の複合材料を製造することを可能とするので極めて有用である。他の好ましい実施態様では、CNT含有量は、3.0および6.0重量%の間である。
より顕著な効果は、埃っぽさ(dustiness)についての低い可能性によって容易な取り扱いを確保するために、絡み合ったCNT凝集体の粉末の形態で十分に大きい平均寸法を有するCNTを用いる場合に得られる。ここで、好ましくはCNT凝集体の少なくとも95%は、100μmを越える大きさのクラスターサイズを有する。好ましくはCNT凝集体の平均径は、0.05および5.0mmの間、好ましくは0.1および2.0mm、最も好ましく0.2および1.0mmの間である。
従って、金属粉末で処理されるべきナノ粒子は、例えば埃っぽさおよび標準的なフィルターによるろ過について、容易に取り扱うことができる。さらに、100μmを越える凝集体から構成される粉末は、CNT原料物質の容易な取り扱いを可能とする盛込容積および流動性を有する。
CNTを、ミリメートル規模で高度に絡み合った凝集体の形態で供給しながらナノ規模で均質に分散することは困難であることが直ちに予想されるが、本発明者により、絡み合った構造およびCNT凝集体の使用は、CNTの結合性(integrity)を、高い動的エネルギーでの機械的合金化により維持する働きをすることが確認された。
さらに、アスペクト比とも称されるCNTの長さ/直径比は、好ましくは3より大きく、より好ましくは5より大きいが、さらに好ましくは15より小さい。また、CNTの高いアスペクト比は、金属微結晶のナノ安定化に役立つ。
本発明の有利な実施態様では、少なくともCNTの一部は、1以上のロールアップ黒鉛層から構成されるスクロール化構造を有し、各黒鉛層は、互いに重なり合った2以上のグラフェン層から構成される。この種のナノチューブは、DE102007044031A1に最初に記載された。この新規な種類のCNT構造は、「マルチスクロール」構造と呼び、単一ロールアップ黒鉛層から構成される「単一スクロール」構造と区別する。マルチスクロールCNTおよび単一スクロールCNTの間の関係は、単壁円筒型CNTおよび多壁円筒型CNTの間での関係に類似する。マルチスクロールCNTは、らせん形断面を有し、典型的には6〜12のグラフェン層をそれぞれ有する2または3の黒鉛層を含む。
マルチスクロール型CNTは、上記ナノ安定化に極めて適していることが見出された。その理由の1つは、マルチスクロールCNTは、直線に沿って伸びないが、高度に絡み合ったCNTの大きい凝集体を形成しやすい理由でもある曲線的または屈折的な多重湾曲形状を有する傾向がある。この曲線的に湾曲しおよび絡み合った構造を形成する傾向は、微結晶を連結しおよびこれらを安定化する3次元ネットワークの形成を容易にする。
マルチスクロール構造がナノ安定化に非常に適している更なる理由は、個々の層が、チューブが開いた本の頁のように曲がった場合に扇形に広がる傾向を有し、従って、欠陥の安定化のための機構の1つであると考えられる微結晶との連結のための粗い構造を形成することであると考えられる。
さらに、マルチスクロールCNTの個々の黒鉛層およびグラフェン層は、CNTの中心から外周に対して任意の隙間を有さない連続的トポロジーであるので、Carbon 34、1996年、第1301〜1303頁に記載の単一スクロールCNTと比較して、またはScience 263、1994年、第1744〜1747頁に記載のオニオン型構造を有するCNTと比較して、より開放した端が挿入のための入り口を形成するために利用可能であるので、更なる物質のより良好で速い挿入をチューブ構造において可能とする。
従来使用されるCNTを高い運動エネルギーにて処理する場合、CNTは、金属微結晶と連結する効果、すなわち、ナノ安定化が起こらない程度にまですり減るかまたは破壊され得る。本発明によれば、DE102007044031A1に記載のCNTは、本発明のCNT金属配合物の製造方法に非常に適していることが分かる。従って、代表的なCNTは、微結晶構造を安定化すること、およびCNT金属化合物の巨視的特性を強化することにおいて極めて効率的である。
好ましい実施態様では、各CNTの処理は、CNTの長さが金属微結晶の平均寸法または平均径の大きさ程度、例えば100nmより大きく200nmまで、好ましくは120nmおおよび200nmの間になるまで行う。
好ましい実施態様では、少なくともナノ粒子の一部を、機械的合金化前に官能化、特に表面粗化する。ナノ粒子を多壁CNTまたはマルチスクロールCNTにより形成させる場合、粗化は、以下に特定の実施態様への参照により説明される通り、少なくとも幾つかのCNTの少なくとも最外層を、5.0MPa以上、好ましくは7.8MPa以上の圧力のような高圧をCNTに施すことにより破壊することにより行い得る。ナノ粒子の粗化により、金属微結晶との連結作用、従ってナノ安定化が更に向上する。
好ましい実施態様では、処理は、元の金属のビッカース硬度を40%以上、好ましくは80%以上越える複合材料の平均ビッカース硬度を向上させるために十分なナノ粒子により微結晶の転位密度を向上および安定化させるように行う。
処理中に金属粒子の付着または焼付けを避けるために、金属成分の付着および/または焼き付けを防止する粉砕剤として働き得る幾つかのCNTを、最初の段階の間に既に添加することが、極めて効率的であることが分かった。このCNTの一部は、完全に粉砕され、任意の顕著な特性強化作用を有さないので犠牲となる。従って、添加CNTの一部は、金属構成物質の付着または焼付けを防止する限りできるだけ少なく保たれる。
本発明の原理の理解を促進するために、図に示された好ましい実施態様を参照し、および特定の言語を用いて好ましい実施態様を記載する。しかしながら、これにより、本発明の範囲は限定されず、例示の製品におけるこのような変更および更なる修正、ここに例示される本発明の原理の方法および使用および更なる用途は、現在または将来に通常に生じるものと本発明に関する当業者に理解されると考えられる。
以下に、構成物質を製造するためのおよび複合材料を構成物質から製造するための処理方法を説明する。また、圧縮の異なった方法による複合材料の例となる使用を議論する。
好ましい実施態様では、処理方法は、以下の工程を含む:
1)高品質CNTの製造工程、
2)任意のCNTの官能化工程、
3)液体金属または合金の不活性雰囲気へのスプレー噴霧工程、
4)液体金属または合金の不活性雰囲気へのスプレー噴霧により必要に応じて製造された金属粉末の高エネルギー粉砕工程、
5)機械的合金化法によるCNTの金属における機械的分散工程、
6)金属−CNT複合材料粉末の圧縮工程、および
7)圧縮試料の更なる処理工程。
1)高品質CNTの製造工程、
2)任意のCNTの官能化工程、
3)液体金属または合金の不活性雰囲気へのスプレー噴霧工程、
4)液体金属または合金の不活性雰囲気へのスプレー噴霧により必要に応じて製造された金属粉末の高エネルギー粉砕工程、
5)機械的合金化法によるCNTの金属における機械的分散工程、
6)金属−CNT複合材料粉末の圧縮工程、および
7)圧縮試料の更なる処理工程。
最初の5工程は、本発明の複合材料が得られる製造方法の実施態様を示すと理解される。最後の2つの処理工程は、本発明の実施態様による複合材料の例となる使用に言及する。
1.高品質CNT
好ましい実施態様では、DE102007044031A1から既知のマルチスクロール型のCNTを用いる。これらのCNTは、Bayer MaterialScience AG(独国)からのBaytubes(登録商標) C150 Pとして市販されている。生成物特性の典型的な値を以下の表に示す。
好ましい実施態様では、DE102007044031A1から既知のマルチスクロール型のCNTを用いる。これらのCNTは、Bayer MaterialScience AG(独国)からのBaytubes(登録商標) C150 Pとして市販されている。生成物特性の典型的な値を以下の表に示す。
図5は、CNT凝集体の粒子寸法分布のグラフを示す。横座標は、μmにより粒度を表すが、縦軸は、累積的容積測定含有量を表す。図5における図表から分かるように、ほとんど全てのCNT凝集体は、100μmより大きい寸法を有する。これは、ほとんど全てのCNT凝集体が標準的なフィルターによりろ過することができることを意味する。これらのCNT凝集体は、EN15051−B下で低い呼吸性粉塵を有する。本発明の好ましい実施態様に用いる極めて大きいCNT凝集体は、CNTの安全かつ容易な取り扱いを可能とし、また、これは、実験室からの技術を工業規模へ移すことになる際に最も重要である。また、大きいCNT凝集体寸法に起因して、CNT粉末は、取り扱いをかなり容易にする良好な盛込容積(pourability)を有する。従って、CNT凝集体は、巨視的な取り扱い特性とナノスケール材料特性とを組み合わせることを可能とする。
1つの実施態様に従う上記目的に対応するために、金属粉末およびナノ粒子を、100nmより大きく200nmまで、好ましくは120nmおよび200nmの間の範囲の平均寸法を有する金属微結晶を含む複合材料を形成するように機械的合金化法により処理する、金属およびナノ粒子、特にカーボンナノチューブ(CNT)を含む複合材料の製造方法を提供する。
2.CNTの官能化
CNTを、機械的合金化を行う前に官能化し得る。官能化の目的は、CNTを処理して金属微結晶の複合材料におけるナノ安定化を強化することである。好ましい実施態様では、官能化は、少なくとも幾つかのCNTの表面を粗化することにより行う。
CNTを、機械的合金化を行う前に官能化し得る。官能化の目的は、CNTを処理して金属微結晶の複合材料におけるナノ安定化を強化することである。好ましい実施態様では、官能化は、少なくとも幾つかのCNTの表面を粗化することにより行う。
ここでは、100kg/cm2(9.8MPa)の高圧をCNT凝集体に施す。この圧力をかけることにより、図6bに示されるように、凝集体構造それ自体が保持され、すなわち、官能化CNTが低い呼吸性粉塵および容易な取り扱いについての上記優位性を保持しながら凝集体の形態でなお存在する。また、図6cに示されるように、CNTが同じ内部構造を保持しながら、外側層が破裂または破壊し、これにより粗い表面を形成することが見出される。粗い表面により、CNTおよび微結晶の間の連結効果が向上し、この場合、ナノ安定化効果が向上する。
3.噴霧による金属粉末生成
図7では、噴霧による金属粉末を生成するための設定を示す。設定24は、本発明の複合材料の構成物質として用いるべき金属または金属合金を溶融する加熱手段28を有する容器26を含む。液体金属または合金を、炉30へ注ぎ、およびノズルアセンブリ34より不活性ガスを含有する炉36へ矢32により表されるアルゴン推進ガスにより強制する。炉36では、ノズルアセンブリ34から出る液体金属スプレーを、アルゴン急冷ガス38により急冷し、金属液滴を急速に固化し、炉36の床上に蓄積する金属粉末40を形成する。このような粉末の種類は、本発明の複合材料の金属構成物質を形成する。
図7では、噴霧による金属粉末を生成するための設定を示す。設定24は、本発明の複合材料の構成物質として用いるべき金属または金属合金を溶融する加熱手段28を有する容器26を含む。液体金属または合金を、炉30へ注ぎ、およびノズルアセンブリ34より不活性ガスを含有する炉36へ矢32により表されるアルゴン推進ガスにより強制する。炉36では、ノズルアセンブリ34から出る液体金属スプレーを、アルゴン急冷ガス38により急冷し、金属液滴を急速に固化し、炉36の床上に蓄積する金属粉末40を形成する。このような粉末の種類は、本発明の複合材料の金属構成物質を形成する。
4.金属粉末の高エネルギー粉砕およびCNTの金属における機械的分散
節1に記載されたCNTから、節2に記載のように任意に官能化され、および節3に記載のように任意に製造された金属粉末からの本発明の複合材料の製造のために、CNTは、金属内に分散することが必要である。CNTの分散のために、DE19635500、DE4307083およびDE19504540A1に開示の類似の高エネルギーボールミルを用いる。分散は、粉末粒子を、粉砕ボールの高エネルギー衝突により繰り返しの変形、破砕および溶接により処理する方法である機械的合金化技術を用いることにより行う。有利には4m/秒より速い、または11m/秒より速い、または11〜14m/秒の間のボール速度が必要である。好ましい実施態様では、EP1918249A1(段落[0013〜0013])に開示の方法を用いる。機械的合金化工程の間に、CNT凝集体を分解し、金属粉末粒子を断片化し、この方法により、単一CNTを金属マトリックス中に分散する。更なる好ましい実施態様では、機械化合金化工程は、単一CNTの平均長さは、金属微結晶の平均寸法または平均径の大きさ程度、例えば100nmより大きく200nmまで、好ましくは120nmおよび200nmの間となるまで行う。
節1に記載されたCNTから、節2に記載のように任意に官能化され、および節3に記載のように任意に製造された金属粉末からの本発明の複合材料の製造のために、CNTは、金属内に分散することが必要である。CNTの分散のために、DE19635500、DE4307083およびDE19504540A1に開示の類似の高エネルギーボールミルを用いる。分散は、粉末粒子を、粉砕ボールの高エネルギー衝突により繰り返しの変形、破砕および溶接により処理する方法である機械的合金化技術を用いることにより行う。有利には4m/秒より速い、または11m/秒より速い、または11〜14m/秒の間のボール速度が必要である。好ましい実施態様では、EP1918249A1(段落[0013〜0013])に開示の方法を用いる。機械的合金化工程の間に、CNT凝集体を分解し、金属粉末粒子を断片化し、この方法により、単一CNTを金属マトリックス中に分散する。更なる好ましい実施態様では、機械化合金化工程は、単一CNTの平均長さは、金属微結晶の平均寸法または平均径の大きさ程度、例えば100nmより大きく200nmまで、好ましくは120nmおよび200nmの間となるまで行う。
この種の方法および本発明によるCNTを用いて、100nmより大きく200nmまでの間、好ましくは120nm〜200nmの間の微結晶寸法を有するCNT金属化合物を形成する。また、微結晶における転位密度の上昇に起因して加工硬化作用も観測される。転位蓄積は、互いに影響し合い、固定点またはその動きを著しく妨げる障害として働く。これは、材料の降伏力σyの上昇および引き続きの延性の減少をもたらす。
金属マトリックス中でほぐされたCNTの結合性について、本発明によるCNT−INVの凝集体を用いることは、凝集体の内側のCNTが外側CNTによりある程度保護されるので有利であることが考えられる。
しかしながら、多くの金属、特に軽金属、例えばアルミニウム等は、高エネルギーミルにより処理することが困難となるかなり高い延性を有する。その高い延性に起因して、金属は、ミル室または回転要素の内壁に付着しおよび焼き付く傾向を有し得る。このような粘着性は、ミル助剤、例えばステアリン酸またはアルコール等を用いることにより防ぐことができる。ミル助剤の使用は、CNTを用いる場合には、同じ発明者によりWO2009/010297に説明されている通り、CNTそれ自体が、金属粉末の付着を防ぐミル剤として働き得るので回避される。
上記方法により、金属微結晶が高い転位密度を有し、少なくとも部分的に分離され、および均質に分配されたCNTによりマイクロ安定化されている粉末複合材料が得られる。図11aは、本発明の実施態様による複合材料粒子の切断面を示す。図11aでは、金属構成物質は、アルミニウムであり、CNTは、上の節1に記載の方法により得られたマルチスクロール型である。該CNTの平均長さは、金属微結晶の平均寸法の範囲である。これに対して、図11bに示されるWO2008/052642の複合材料は、非等方性特性をもたらす非等方性層構造を有する。
図12は、分散されたCNTを有するアルミニウムから構成される複合材料のSEM像を示す。番号1で記される位置では、微結晶の境界に沿うCNT伸張の例を見ることができる(図13も参照)。参照記号2で印された位置では、CNTは、ナノ微結晶内に含まれるかまたは組み込まれており、「毛」のようなナノ微結晶表面から突き出るCNTを見ることができる。このCNTは、上記高エネルギーミル工程の間に金属微結晶中へ針状に押し付けられたと考えられる。各微結晶内に埋め込まれるかまたは含まれるこのCNTは、ナノ安定化効果に重要な役割を果たし、次いで、これにより形成された複合材料および圧縮物品の優れた機械特性の原因となる。
5.複合材料粉末の圧縮
複合材料粉末は、半製品または完成品を粉末冶金法により形成するための原料物質として用いることができる。特に、本発明の粉末材料は、冷間静水圧プレス(CIP)および熱間静水圧プレス(HIP)により極めて有利に更に処理することができることを見出した。あるいは、複合材料は、幾つかの金属相の溶融温度までの高い温度における熱間加工、粉末ミル工程または粉末押出により更に処理することができる。複合材料の粘度は、高温でさえ増加し、複合材料が粉末押出または流れプレスにより処理し得ることが観測された。また、粉末は、連続粉末回転法により直接処理することができる。
複合材料粉末は、半製品または完成品を粉末冶金法により形成するための原料物質として用いることができる。特に、本発明の粉末材料は、冷間静水圧プレス(CIP)および熱間静水圧プレス(HIP)により極めて有利に更に処理することができることを見出した。あるいは、複合材料は、幾つかの金属相の溶融温度までの高い温度における熱間加工、粉末ミル工程または粉末押出により更に処理することができる。複合材料の粘度は、高温でさえ増加し、複合材料が粉末押出または流れプレスにより処理し得ることが観測された。また、粉末は、連続粉末回転法により直接処理することができる。
粉末粒子の有益な機械特性は、圧縮完成品または圧縮半完成品において維持することができることは、本発明の複合材料の顕著な優位性である。例えば、マルチスクロールCNTおよびAl5xxxを用いる場合、上の節4に記載の機械的合金化法を採用することにより、390HVを越えるビッカース硬度を有する複合材料が得られた。驚くべきことに、粉末材料を完成品または半製品へ圧縮した後でさえ、ビッカース硬度は、この値の80%を越えて維持される。言い換えれば、ナノ構造を安定化することにより、個々の複合材料粉末粒子の硬度を、圧縮物品へかなり移行することができる。
好ましい例となる実施態様を、図および前記明細書に詳細に示しおよび特定するが、これらは、本発明を制限するものとしてではなく単なる例として見なされるべきである。好ましい例となる実施態様だけが示されおよび特定され、添付の特許請求の範囲の保護の範囲内に現在または将来に存在する全ての変形および修正が保護される点に注目する。
Claims (15)
- 金属微結晶およびナノ粒子を含み、該金属微結晶は、100nmより大きく200nmまでの範囲の平均寸法を有する、複合材料。
- 金属微結晶は、120nmおよび200nmの間の範囲の平均寸法を有する、請求項1に記載の複合材料。
- ナノ粒子は、CNTにより形成され、該CNTの少なくとも一部は、1以上のロールアップ黒鉛層から構成されるスクロール構造を有し、各黒鉛層は、互いに重なり合った2以上のグラフェン層から構成される、請求項1または2に記載の複合材料。
- 前記ナノ粒子は、100μmより大きいクラスターサイズを有する絡み合ったCNT凝集体の粉末の形態で供給されるカーボンナノチューブ(CNT)により形成される、請求項1〜3のいずれかに記載の複合材料。
- CNT凝集体の平均径は、0.05および5mmの間、好ましくは0.1および2mmの間、より好ましくは0.2および1mmの間である、請求項1〜4のいずれかに記載の複合材料。
- ナノ粒子、特にCNTの長さ/直径比は、3より大きく、好ましくは10より大きく、より好ましくは15より小さい、請求項1〜5のいずれかに記載の複合材料。
- CNTの長さは、金属微結晶の平均寸法または平均径の大きさ程度である、請求項1〜6のいずれかに記載の複合材料。
- 複合材料におけるCNTの平均長さは、100nmより大きく200nmまでの範囲である、請求項7に記載の複合材料。
- 重量による複合材料のCNT含有量は、0.5〜10.0%、好ましくは3.0〜9.0%、より好ましくは5.0〜9.0%の範囲である、請求項1〜8に記載の複合材料。
- 機械的合金化前にナノ粒子の少なくとも一部を、官能化する、特に表面粗化する工程が含まれる、請求項1〜9のいずれかに記載の複合材料。
- ナノ粒子が、多壁CNTまたはマルチスクロールCNTにより形成され、粗化が、少なくとも幾つかのCNTの少なくとも最外層を、高圧、特に5.0MPa以上、好ましくは7.8MPa以上の圧力をCNTに施すことにより破壊することにより行われる、請求項10に記載の複合材料。
- ナノ粒子は、少なくとも幾つかの微結晶に部分的に組み込まれる、請求項1〜11のいずれかに記載の複合材料。
- 金属は、軽金属、特にAl、Mg、Tiまたはこれらの1以上を含む合金、CuまたはCu合金である、請求項1〜12のいずれかに記載の複合材料。
- 半製品または完成品の製造のための、請求項1〜13のいずれかに記載の複合材料の使用。
- 高エネルギー粉砕により金属およびカーボンナノチューブを機械的合金化する工程を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
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