JP4420711B2 - 複合材料の製造方法及び複合成形品の製造方法 - Google Patents

複合材料の製造方法及び複合成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、複合材料の製造方法及び複合成形品の製造方法に関する。
近年、カーボンナノファイバーを用いた複合材料が注目されている。このような複合材料は、カーボンナノファイバーを含むことで、機械的強度などの向上が期待されている。
また、金属の複合材料の鋳造方法として、酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体内にマグネシウム蒸気を浸透、分散させ、同時に窒素ガスを導入することで、多孔質成形体内に金属溶湯を浸透させるようにした鋳造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、カーボンナノファイバーは相互に強い凝集性を有するため、複合材料の基材にカーボンナノファイバーを均一に分散させることが非常に困難とされている。そのため、現状では、所望の特性を有するカーボンナノファイバーの複合材料を得ることが難しく、また、高価なカーボンナノファイバーを効率よく利用することができない。
また、従来の酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体に金属溶湯を浸透させる鋳造方法は、複雑な処理を行うため、工業上の生産は困難である。
特開平10−183269号公報
そこで、本発明の目的は、カーボンナノファイバーが均一に分散された複合材料の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、カーボンナノファイバーが均一に分散された複合成形品の製造方法を提供することにある。
本発明にかかる複合材料の製造方法は、
ラストマーとカーボンナノファイバーとを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
前記複合エラストマーとマトリクスとなる粒子状の金属材料とを混合した後、粉末成形して、該粉末成形時の高温によって複合エラストマー中のエラストマーを気化して除去すると共に、エラストマーが除去された空所が該金属材料に置換することで、該金属材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、
前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、
を含む。
また、本発明にかかる他の複合材料の製造方法は、
エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
前記複合エラストマーをマトリクスとなる金属材料の溶湯に混入し、前記複合エラストマー中のエラストマーを前記溶湯の熱によって分解して除去すると共に、エラストマーが除去された空所が該金属材料と置換し、所望の形状を有する鋳型内で鋳造して、該金属材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、
前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、
を含む。
また、本発明にかかるさらに他の複合材料の製造方法は、
エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
前記複合エラストマーにマトリクスとなる金属材料の溶湯を浸透させ、前記複合エラストマー中のエラストマーを分解して気化し、エラストマーが分解されてできた空所に前記金属材料の溶湯が浸透して置換することで、該マトリクス材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、
前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、
を含む。
本発明の製造方法によれば、エラストマーの不飽和結合または基が、カーボンナノファイバーの活性な部分、特にカーボンナノファイバーの末端のラジカルと結合することにより、カーボンナノファイバーの凝集力を弱め、その分散性を高めることができる。
したがって、このような複合エラストマーのエラストマーを金属材料と置換することで、金属材料中にカーボンナノファイバーが分散した複合材料を得ることができる。さらに、この複合材料を粉砕して粒子状とすることで、一般的な材料加工、例えば鋳造などの加工に容易に利用することができる。
このような複合材料の製造方法は、前述したようにカーボンナノファイバーが均一に分散された複合エラストマーを用いることによって、カーボンナノファイバーが均一に分散された複合材料を得ることができる。
本発明におけるエラストマーは、ゴム系エラストマーあるいは熱可塑性エラストマーのいずれであってもよい。また、ゴム系エラストマーの場合、エラストマーは架橋体あるいは未架橋体のいずれであってもよい。原料エラストマーとしては、ゴム系エラストマーの場合、未架橋体が用いられる。
さらに、前記工程(a)は、前記エラストマーに金属粒子または非金属粒子を加えて混合し、前記カーボンナノファイバーを分散させることができる。
このように、金属粒子または非金属粒子を含むエラストマーを用いることで、カーボンナノファイバーを剪断力で分散させる際に、金属粒子または非金属粒子のまわりにエラストマーの乱流状態の流動が発生する。この流動によって、本発明の複合エラストマーは、基材であるエラストマーにカーボンナノファイバーがさらに均一に分散されたものとなる。熱可塑性エラストマーの内、特にエチレンプロピレンゴム(EPDM)は、カーボンナノファイバーが分散されにくいが、本発明においては、金属粒子または非金属粒子によるカーボンナノファイバーの分散効果によって均一に分散させることができる。また、特に分散されにくいとされていた直径が約30nm以下のカーボンナノファイバーや、湾曲繊維状のカーボンナノファイバーであっても、エラストマー中に均一に分散されたものとなる。 前記本発明にかかる複合材料の製造方法の工程(a)は、
(1)ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法、
(2)ロータ間隙が1mm以下の密閉式混練法、
(3)スクリュー間隙が0.3mm以下の多軸押出し混練法、などを用いて行うことができる。
また、前記工程(b)の複合エラストマーに金属材料の溶湯を浸透させてエラストマーを前記金属材料の溶湯と置換する方法は、
前記複合エラストマーの上方に前記金属材料の塊を配置する工程(b−1)と、
前記金属材料の塊を加熱し溶融させることで前記金属材料の溶湯とするとともに、前記複合エラストマー中の前記エラストマーを気化させ、前記金属材料の溶湯を浸透させて該エラストマーと置換する工程(b−2)と、
を有することができる。
このような複合材料の製造方法は、エラストマーを金属材料で置換することでカーボンナノファイバーが分散した複合材料を得ることができる。特に、金属材料の溶湯に接触した複合エラストマーは、金属材料の溶湯によってエラストマーを熱分解させながら浸透するため、カーボンナノファイバーが均一に分散した状態のまま金属材料の溶湯が凝固した金属材料に置換され、鋳造することができる。
また、複合エラストマーに金属粒子または非金属粒子を混合した場合には、複合材料において、エラストマー100重量部に対して金属粒子または非金属粒子10〜3000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。金属粒子または非金属粒子が10重量部以下であると、毛細管現象が小さく、金属溶湯の浸透速度が遅いので、生産性及びコスト面で採用が難しい。また、金属粒子が3000重量部以上であると、複合エラストマーを製造する際に、エラストマーへ含浸させにくくなる。また、複合エラストマーは、未架橋のままで成形されていると、エラストマーの分解が容易であって金属溶湯の浸透が早いので、好ましい。
また、本発明にかかる複合材料の製造方法は、
ラストマーと、マトリクスとなる粒子状の金属材料と、カーボンナノファイバーと、を混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
前記複合エラストマーを粉末成形して、前記複合エラストマー中のエラストマーを気化して除去し、前記金属材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、
前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、
を含む。
このような複合材料の製造方法は、あらかじめ複合材料のマトリクスとなる金属材料をエラストマーに混合させることで、前述したようにカーボンナノファイバーが均一に分散された複合材料を得ることができる。
本発明にかかる複合成形品の製造方法は、
(1)上記の製造方法によって得られた前記粒子状の複合材料を、そのままもしくは前記粒子状の複合材料と他の金属材料の粒子とを混合した後、粉末成形する工程、
(2)上記の製造方法によって得られた前記粒子状の複合材料を、他の金属材料の溶湯に混入して所望の形状を有する鋳型内で鋳造する工程、
(3)上記の製造方法によって得られた前記粒子状の複合材料に、他の金属材料の溶湯を浸透させる工程、などをさらに有することができる。
このような複合成形品の製造方法によって、カーボンナノファイバーの分散された複合材料を用いて所望の形状または所望の材料混合割合などを有する複合成形品を製造することができる。また、複合材料の鋳造工程などにおける巣などの欠陥を再加工することで減少させることができる。
前記金属材料と前記他の金属材料は同じ材質とすることで、全体に均質な複合成形品を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態にかかる複合材料の製造方法は、ラストマーとカーボンナノファイバーとを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、前記複合エラストマーとマトリクスとなる粒子状の金属材料とを混合した後、粉末成形して、該粉末成形時の高温によって複合エラストマー中のエラストマーを気化して除去すると共に、エラストマーが除去された空所が該金属材料に置換することで、該金属材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、を含む。また、本発明にかかる複合材料の製造方法は、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、前記複合エラストマーをマトリクスとなる金属材料の溶湯に混入し、前記複合エラストマー中のエラストマーを前記溶湯の熱によって分解して除去すると共に、エラストマーが除去された空所が該金属材料と置換し、所望の形状を有する鋳型内で鋳造して、該金属材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、を含む。さらに、本発明にかかる複合材料の製造方法は、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、前記複合エラストマーにマトリクスとなる金属材料の溶湯を浸透させ、前記複合エラストマー中のエラストマーを分解して気化し、エラストマーが分解されてできた空所に前記金属材料の溶湯が浸透して置換することで、該マトリクス材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、を含む。
また、本発明にかかる複合材料の製造方法は、ラストマーと、マトリクスとなる粒子状の金属材料と、カーボンナノファイバーと、を混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、前記複合エラストマーを粉末成形して、前記複合エラストマー中のエラストマーを気化して除去し、前記金属材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、を含む。
エラストマーは、例えば、カーボンナノファイバーと親和性が高いことの他に、分子長がある程度の長さを有すること、柔軟性を有すること、などの特徴を有することが望ましい。また、エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程は、できるだけ高い剪断力で混練されることが望ましい。
(A)まず、エラストマーについて説明する。
エラストマーは、分子量が好ましくは5000ないし500万、さらに好ましくは2万ないし300万である。エラストマーの分子量がこの範囲であると、エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、エラストマーは、凝集したカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、したがってカーボンナノファイバー同士を分離する効果が大きい。エラストマーの分子量が5000より小さいと、エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけてもカーボンナノファイバーを分散させる効果が小さくなる。また、エラストマーの分子量が500万より大きいと、エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる。
エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃で測定した、未架橋体におけるネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が好ましくは100ないし3000μ秒、より好ましくは200ないし1000μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、エラストマーは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができる。このことにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合したときに、エラストマーは高い分子運動によりカーボンナノファイバー相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より短いと、エラストマーが充分な分子運動性を有することができない。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が3000μ秒より長いと、エラストマーが液体のように流れやすくなり、カーボンナノファイバーを分散させることが困難となる。
また、エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒であることが好ましい。その理由は、上述した未架橋体と同様である。すなわち、上記の条件を有する未架橋体を本発明の製造方法によって架橋化すると、得られる架橋体のT2nはおおよそ上記範囲に含まれる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によりエラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかる複合エラストマーは中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
エラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバー、特にその末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有する。かかる不飽和結合または基としては、二重結合、三重結合及び官能基から選択される少なくともひとつであることができる。このような官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などがある。
カーボンナノファイバーは、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。本実施の形態では、エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。
エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物を用いることができる。本発明者の研究によって、特に非極性のエチレンプロピレンゴム(EPDM)においてカーボンナノファイバーを分散させにくく、極性の高い天然ゴム(NR)とニトリルゴム(NBR)においてカーボンナノファイバーを均一に分散させることができることが判明している。したがって、エラストマーとしては、天然ゴム(NR)もしくはニトリルゴム(NBR)を用いることでカーボンナノファイバーの分散性をより良好とすることができる。
(B)次に、金属粒子または非金属粒子について説明する。
金属粒子または非金属粒子は、エラストマー中に混合し、分散させておいて、カーボンナノファイバーを混合させるときにカーボンナノファイバーをさらに良好に分散させるものである。金属粒子または非金属粒子は、使用するカーボンナノファイバーの平均直径よりも大きい平均粒径であることが好ましい。また、金属粒子または非金属粒子の平均粒径は500μm以下、好ましくは1〜300μmである。複合材料を製造する工程(b)で浸透法を用いる場合には、金属粒子または非金属粒子の量は、エラストマー100重量部に対して、10〜3000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。金属粒子または非金属粒子が10重量部以下であると、毛細管現象が小さく、マトリクス材料の溶湯の浸透速度が遅いので、生産性及びコスト面で採用が難しい。また、金属粒子または非金属粒子が3000重量部以上であると、複合材料を製造する際に、エラストマーへ含浸させにくくなる。また、金属粒子または非金属粒子の形状は、球形粒状に限らず、混合時に金属粒子または非金属粒子のまわりに乱流状の流動が発生する形状であれば平板状、りん片状であってもよい。
金属粒子としては、アルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びチタン合金などの軽金属系の粒子、比較的安価な鉄及びその合金などの粒子、を単体でもしくは組み合わせて用いることができる。
非金属粒子としては、セラミック、ケイ酸粒子などのガラス、カーボンブラック、鉱物性粒子などを単体でもしくは組み合わせて用いることができる。
金属粒子が例えばアルミニウム粒子である場合、アルミニウム溶湯を浸透させたときに、エラストマーが熱分解されて発生したラジカルなどによってアルミニウム粒子の表面にある酸化物を還元してアルミニウム粒子とアルミニウム溶湯の濡れ性が改善して結合力を強固にすることができる。また、アルミニウム溶湯の浸透による流動がカーボンナノファイバーをアルミニウム粒子内まで侵入させることになる。このように金属粒子がアルミニウム粒子のような表面に酸化物を有する場合には、上述のような好ましい効果を有する。
(C)次に、カーボンナノファイバーについて説明する。
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであることが好ましいく、複合材料もしくは複合成形品の強度を向上させるためには0.5ないし30nmであることがさらに好ましい。さらに、カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状であっても、湾曲繊維状であってもよい。
カーボンナノファイバーの配合量は、特に限定されず、用途に応じて設定できる。本実施の形態の複合エラストマーは、架橋体エラストマー、未架橋体エラストマーあるいは熱可塑性ポリマーをそのままエラストマー系材料として用いることができる。本実施の形態の複合材料の原料として用いる複合エラストマーは、カーボンナノファイバーを0.01〜50重量%の割合で含むことができる。かかる複合材料の原料は、マトリクス材料にカーボンナノファイバーを混合する際に、カーボンナノファイバーの供給源としてのいわゆるマスターバッチとして用いることができる。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。
アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。
レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。
気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
(D)次に、エラストマーにカーボンナノファイバーを混合させ、かつ剪断力によって分散させる工程(a)について説明する。
本発明にかかる複合材料の製造方法の工程(a)は、
(1)ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法、
(2)ロータ間隙が1mm以下の密閉式混練法、
(3)スクリュー間隙が0.3mm以下の多軸押出し混練法、などを用いて行うことができる。
本実施の形態では、工程(a)として、上記(1)ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いた例について述べる。
図1は、2本のロールを用いたオープンロール法を模式的に示す図である。図1において、符号10は第1のロールを示し、符号20は第2のロールを示す。第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.1ないし0.5mmの間隔で配置されている。第1および第2のロールは、正転あるいは逆転で回転する。図示の例では、第1のロール10および第2のロール20は、矢印で示す方向に回転している。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05ないし3.00であることが好ましく、さらに1.05ないし1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。まず、第1,第2のロール10,20が回転した状態で、第2のロール20に、エラストマー30を巻き付けると、ロール10,20間にエラストマーがたまった、いわゆるバンク32が形成される。このバンク32内に金属粒子50を加えて、さらに第1,第2のロール10,20を回転させることにより、エラストマー30と、金属粒子50と、を混合する工程が行われる。ついで、このエラストマー30と金属粒子50とが混合されたバンク32内にカーボンナノファイバー40を加えて、第1、第2のロール10,20を回転させる。さらに、第1,第2ロール10,20の間隔を狭めて前述した間隔dとし、この状態で第1,第2ロール10,20を所定の表面速度比で回転させる。これにより、エラストマー30に高い剪断力が作用し、この剪断力によって凝集していたカーボンナノファイバーが1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー30に分散される。さらに、ロールによる剪断力はエラストマー内に分散された金属粒子のまわりに乱流状の流動を発生させる。この複雑な流動によってカーボンナノファイバーはさらにエラストマー30に分散される。なお、金属粒子50の混合前に、エラストマー30とカーボンナノファイバー40とを先に混合すると、カーボンナノファイバー40にエラストマー30の動きが拘束されてしまうため、金属粒子50を混合することが難しくなる。したがって、エラストマー30にカーボンナノファイバー40を加える前に金属粒子50を混合する工程を行うことが好ましい。
また、この工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の比較的低い温度で行われる。オープンロール法を用いた場合には、ロールの温度を上記の温度に設定することが望ましい。第1,第2ロール10,20の間隔dは、もっとも狭めた状態においても金属粒子50の平均粒径よりも広く設定することで、エラストマー30中のカーボンナノファイバー40の分散を良好に行うことができる。
なお、この工程(a)における金属粒子は、上記(B)で述べた非金属粒子であってもよいし、エラストマーが例えば天然ゴム(NR)のように極性の高いエラストマーであって、カーボンナノファイバーを分散し易い場合には、金属粒子を加えなくても良い。また、この工程(a)における金属粒子または非金属粒子が、工程(b)におけるマトリクス材料であってもよい。その場合には、複合エラストマーをそのまま焼結など粉末成形することによって、マトリクス材料中にカーボンナノファイバーが分散した複合材料を得ることができる。
このとき、本実施の形態のエラストマーは、上述した特徴、すなわち、エラストマーの分子形態(分子長)、分子運動、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用などの特徴を有することによってカーボンナノファイバーの分散を容易にするので、分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた複合エラストマーを得ることができる。より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、分子長が適度に長く、分子運動性の高いエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。この状態で、エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。そして、一旦分散したカーボンナノファイバーは、エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
また、エラストマー中に所定量の金属粒子または非金属粒子が含まれていることで、金属粒子または非金属粒子のまわりに発生するエラストマーの乱流のような幾通りもの複雑な流動によって、個々のカーボンナノファイバー同士を引き離す方向にも剪断力が働くことになる。したがって、直径が約30nm以下のカーボンナノファイバーや湾曲繊維状のカーボンナノファイバーであっても、個々に化学的相互作用によって結合したエラストマー分子のそれぞれの流動方向へ移動するため、エラストマー中に均一に分散されることになる。
工程(a)は、上記オープンロール法に限定されず、既に述べた密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノファイバーを分離できる剪断力をエラストマーに与えることができればよい。
上述したエラストマーに金属粒子または非金属粒子とカーボンナノファイバーとを分散させて両者を混合させる工程(混合・分散工程)によって得られた複合エラストマーは、架橋剤によって架橋させて成形するか、もしくは架橋させずに成形することができる。このときの成形方法は、例えば圧縮成形工程や押出成形工程などを行って複合エラストマーを得ることができる。圧縮成形工程は、例えば金属粒子とカーボンナノファイバーとが分散した複合エラストマーを、所定温度(例えば175℃)に設定された所望形状を有する成形金型内で所定時間(例えば20分)加圧状態で成形する工程を有する。
エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合・分散工程において、あるいは続いて、通常、ゴムなどのエラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを挙げることができる。
(E)次に、上記工程(a)によって得られた複合エラストマーについて述べる。
本実施の形態の複合エラストマーは、基材であるエラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されている。このことは、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、カーボンナノファイバーによって拘束を受けたエラストマー分子の運動性は、カーボンナノファイバーの拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、本実施の形態にかかる複合エラストマーの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より短くなる。特に、金属粒子を含むエラストマーにカーボンナノファイバーを混合した場合には、カーボンナノファイバーを含むエラストマーの場合より、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)が短くなる。なお、架橋体おけるスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーの混合量に比例して変化する。
また、エラストマー分子がカーボンナノファイバーによって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、カーボンナノファイバーによってエラストマーの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、カーボンナノファイバーの活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より小さくなる。特に、金属粒子を含むエラストマーにカーボンナノファイバーを混合した場合には、カーボンナノファイバーを含むエラストマーの場合より、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は小さくなる。
以上のことから、本実施の形態にかかる複合エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって得られる測定値が以下の範囲にあることが望ましい。
すなわち、未架橋体(複合エラストマー)において、150℃で測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないか、あるいは1000ないし10000μ秒であり、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることが好ましい。
また、架橋体において、150℃で測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし2000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないか、あるいは1000ないし4000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.08未満であることが好ましい。
また、本実施の形態にかかる複合エラストマーは、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られる測定値が以下の範囲にあることが望ましい。すなわち、カーボンナノファイバー1体積%あたりの架橋体の150℃で測定したスピン−格子緩和時間(T1)変化量(ΔT1)が、エラストマー単体の場合より1msec以上低下することが好ましく、さらに好ましくは2〜15msec低下することが好ましい。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法により測定されたスピン−格子緩和時間(T1)は、スピン−スピン緩和時間(T2)とともに物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、エラストマーのスピン−格子緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえ、そしてスピン−格子緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
本実施の形態にかかる複合エラストマーは、動的粘弾性の温度依存性測定における流動温度が、原料エラストマー単体の流動温度より20℃以上高温であることが好ましい。本実施の形態の複合エラストマーは、エラストマーに金属粒子または非金属粒子とカーボンナノファイバーとが良好に分散されている。このことは、上述したように、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、エラストマーは、カーボンナノファイバーを含まない場合に比べて、その分子運動が小さくなり、その結果、流動性が低下する。このような流動温度特性を有することにより、本実施の形態の複合エラストマーは、動的粘弾性の温度依存性が小さくなり、その結果、優れた耐熱性を有する。
本実施の形態の複合エラストマーは、既述したように、エラストマー系材料として用いることができ、金属などの複合材料の原料として用いることができる。カーボンナノファイバーは、通常、相互に絡み合って媒体に分散しにくい性質を有する。しかし、本実施の形態の複合エラストマーを金属の複合材料の原料として用いると、カーボンナノファイバーがエラストマーに既に分散した状態で存在するので、この原料と金属などの媒体とを混合することでカーボンナノファイバーを媒体に容易に分散することができる。
(F)次に、複合材料の製造工程(b)について説明する。
本実施の形態における複合材料の製造工程(b)は、上記実施の形態で得られた複合エラストマーとマトリクス材料とを混合すると共に、エラストマーを該マトリクス材料と置換することで、該マトリクス材料中にカーボンナノファイバーが分散した複合材料を得ることができる。ここで、マトリクス材料は、複合材料におけるマトリクスとなるもので、金属または非金属の材料である。
前記工程(b)は、例えば以下のような各種の成形方法を採用することができる。
(粉末成形法)
本実施の形態における複合材料の粉末成形工程は、上記工程(a)で得られた複合エラストマーと粒子状のマトリクス材料と混合した後、粉末成形する工程によって実施することができる。
本実施の形態における粉末成形は、金属の成形加工における粉末成形と同様であり、いわゆる粉末冶金を含み、また粉末原料を用いた場合のみならず、複合エラストマーをあらかじめ予備圧縮成形してブロック状とした原料をも含む。なお、焼結法としては、一般的な焼結法の他、プラズマ焼結装置を用いた放電プラズマ焼結法(SPS)などを採用することができる。
また、複合エラストマーと、複合材料のマトリクスとなる金属材料または非金属材料の粒子と、を湿式混合した後、同様にして焼結して複合材料を得ることもできる。この場合、溶剤中のマトリクス材料の粒子に複合エラストマーを混ぜる(湿式混合)ことが望ましい。
さらに、冷凍粉砕した複合エラストマーの粒子と、マトリクスとなる金属材料または非金属材料の粒子と、を混合、例えばドライブレンドした後、型内で圧縮成形された後、焼結法によって複合材料を得ることができる。なお、エラストマーは粉末成形時に高温にさらされるため、気化して除去される。
このような粉末成形によって製造された複合材料は、カーボンナノファイバーをマトリクス材料中に分散させることができる。この工程(b)で用いられるマトリクスとなる金属材料または非金属材料の粒子は、複合エラストマーを得るために用いられた金属粒子または非金属粒子と同じ材質が好ましいが、粒子の大きさは粉末成形によって得られる複合材料の用途などによって適宜選択することができる。
(鋳造法)
複合材料の鋳造工程は、上記実施の形態で得られた複合エラストマーを、例えばマトリクス材料の溶湯に混入して所望の形状を有する鋳型内で鋳造する工程によって実施することができる。このような鋳造工程は、例えば鋼製の鋳型内に金属溶湯を注湯して行う金型鋳造法、ダイカスト法、低圧鋳造法を採用することができる。またその他特殊鋳造法に分類される、高圧化で凝固させる高圧鋳造法、溶湯を攪拌するチクソカスティング、遠心力で溶湯を鋳型内へ鋳込む遠心鋳造法などを採用することができる。これらの鋳造法においては、マトリクス材料の溶湯の中に複合エラストマーを混合させたまま鋳型内で凝固させ、複合材料を成形する。なお、この鋳造工程において、複合エラストマーのエラストマーは、マトリクス材料の溶湯の熱によって分解され、除去される。
また、マトリクス材料の溶湯に用いられるマトリクス材料は、複合エラストマーにあらかじめ混合されたマトリクス材料の粒子と同一のマトリクス材料のまたは同一の元素を含む材料とすることで、金属粒子または非金属粒子との濡れ性を向上させ、製品である複合材料おける強度を向上させることができる。
(浸透法)
本実施の形態では、複合エラストマーにマトリクス材料の溶湯を浸透させてエラストマーをマトリクス材料の溶湯と置換する工程、いわゆる非加圧浸透法を用いて複合材料を鋳造する工程について、図2及び図3を用いて詳細に説明する。
図2及び図3は、非加圧浸透法によって複合材料を製造する装置の概略構成図である。上記実施の形態で得られた複合エラストマーは、例えば最終製品の形状を有する成形金型内で圧縮成形された複合エラストマー4を使用することができる。複合エラストマー4は、架橋されていないことが好ましい。架橋されていないことで、マトリクス材料の溶湯の浸透速度が速くなるためである。図2において、密閉された容器1内には、あらかじめ成形された複合エラストマー4(例えば架橋されていないエラストマー30に金属粒子例えばアルミニウム粒子50及びカーボンナノファイバー40を混入)が入れられる。その複合エラストマー4の上方にマトリクス材料の塊例えばアルミニウム塊5を配置される。次に、容器1に内蔵された図示せぬ加熱手段によって、容器1内に配置された複合エラストマー4及びアルミニウム塊5をアルミニウムの融点以上に加熱する。加熱されたアルミニウム塊5は、溶融してアルミニウム溶湯(マトリクス材料の溶湯)となる。また、アルミニウム溶湯に接触した複合エラストマー4中のエラストマー30は、分解されて気化し、エラストマー30が分解されてできた空所にアルミニウム溶湯(マトリクス材料の溶湯)が浸透する。
本実施の態様の複合エラストマー4としては、エラストマー30が分解されてできた空所が毛細管現象によってアルミニウム溶湯をより早く全体に浸透させることができる。アルミニウム溶湯は、還元されることで濡れ性の改善されたアルミニウム粒子50間に毛細管現象によって浸透し複合エラストマーの内部まで完全にアルミニウム溶湯が満たされる。そして、容器1の加熱手段による加熱を停止させ、混合材料4中に浸透したマトリクス材料の溶湯を冷却・凝固させ、図3に示すようなカーボンナノファイバー40が均一に分散された複合材料6を製造することができる。鋳造工程に用いられる複合エラストマー4は、あらかじめ鋳造工程で使用されるマトリクス材料の溶湯と同じ材質の金属粒子または非金属粒子を用いて成形されていることが好ましい。このようにすることで、マトリクス材料の溶湯と金属粒子または非金属粒子とが混ざりやすく均質な複合材料を得られる。
また、容器1を加熱する前に、容器1の室内を容器1に接続された減圧手段2例えば真空ポンプによって脱気してもよい。さらに、容器1に接続された不活性ガス注入手段3例えば窒素ガスボンベから窒素ガスを容器1内に導入してもよい。
金属粒子とマトリクス材料の溶湯に同じアルミニウムを用いた場合、アルミニウム粒子42及びアルミニウム塊5の表面は酸化物で覆われているため、両者の濡れ性がよくないことが知られているが、本実施の形態においては、両者の濡れ性は良好なものとなる。それは、アルミニウム溶湯を浸透させたときに、熱分解されたエラストマーの分子先端はラジカルになり、そのラジカルによってアルミニウム塊5及びアルミニウム粒子42の表面にある酸化物(アルミナ)を還元されると考えられる。したがって、本実施の形態においては、複合エラストマーに含まれるエラストマーの分解によって内部まで還元雰囲気を生成させることができるので、従来のように還元雰囲気の処理室を用意しなくても非加圧浸透法による鋳造を実施できる。(複合エラストマーのアルミニウム粒子に加えてマグネシウム粒子を加えておくとさらに還元し易い。)このように、還元されたアルミニウム粒子の表面と、浸透したアルミニウム溶湯の濡れ性は改善され、より均質に一体化した金属材料もしくは金属成形品を得ることができる。また、アルミニウム溶湯の浸透による流動がカーボンナノファイバーをアルミニウム粒子内まで侵入させることになる。さらに、分解されたエラストマー分子のラジカルによってカーボンナノファイバーの表面が活性化して、アルミニウム溶湯との濡れ性が向上する。このようにして得られた複合成形品は、アルミニウムのマトリックス内に均一に分散したカーボンナノファイバーを有する。なお、この鋳造工程を不活性雰囲気中で行うことで、アルミニウム溶湯の酸化が防止され、よりアルミニウム粒子との濡れ性がよくなる。
また、上記実施の形態においては非加圧浸透法について説明したが、浸透法であればこれに限らず例えば不活性ガスなどの雰囲気の圧によって加圧する加圧浸透法を用いることもできる。
(他の粉末成形方法)
また、本実施の形態における複合材料の製造工程(b)は、上記実施の形態の工程(a)において複合材料のマトリクス材料となる金属粒子または非金属粒子を混合した複合エラストマーを、粉末成形して、前記エラストマーを除去し、該マトリクス材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得ることもできる。具体的には、例えば上記実施の形態で得られた複合エラストマーをそのまま、もしくは冷凍粉砕した複合エラストマーの粒子を、型内で圧縮し、金属粒子もしくは非金属粒子粒子の焼結温度(例えば分散用粒子がアルミニウムの場合550℃)で焼成して複合材料を得ることができる。
なお、上述した(粉末成形方法)、(鋳造法)、(浸透法)、(他の粉末成形方法)に用いるマトリクス材料は、通常の鋳造加工等に用いられる金属または非金属を用いることができる。金属材料としては、例えばアルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びその合金などの軽金属系の材料や、鉄及びその合金、銅及びその合金、亜鉛及びその合金などから用途に合わせて単独でもしくは組み合わせて適宜選択することができる。また、非金属材料としては、例えばセラミック、ガラスなどを単体でもしくは組み合わせて用いることができる。
(G)次に、複合材料を粒子状とする工程(c)について説明する。
上記各実施の形態において得られた複合材料を、ボールミルなどの粉砕装置を用いて粒子状の複合材料を得る。
粒子状の複合材料の粒径は、工業金属加工などで用いられる程度に粉砕されていることが好ましく、例えば1〜50μmである。
(H)最後に、複合成形品の製造方法について説明する、
本実施の形態にかかる複合成形品は、上記工程(c)で得られた粒子状の複合材料を用いて、以下のような方法で製造することができる。
(粉末成形法)
上記工程(c)によって得られた粒子状の複合材料を、そのままもしくは粒子状の複合材料と他のマトリクス材料の粒子とを混合した後、粉末成形することで複合成形品を得ることができる。
本実施例における粉末成形は、上記(b)で説明した粉末成形方法と同様に、金属の成形加工における粉末成形と同様であり、いわゆる粉末冶金を含む。
粒子状の複合材料と他のマトリクス材料との混合は、上記(b)で説明した混合方法、例えばドライブレンドや湿式混合を用いることができる。
(鋳造法)
上記工程(c)によって得られた前記粒子状の複合材料を、上記(b)で説明した鋳造法と同様に、他のマトリクス材料の溶湯に混入して所望の形状を有する鋳型内で鋳造することで複合成形品を得ることができる。
他のマトリクス材料の溶湯に複合材料を混入させる際に、必要に応じてさらに別の材料を混入させてもよい。このようにすることで、成形加工における材料選択の自由度が向上する。
(浸透法)
上記工程(c)によって得られた前記粒子状の複合材料に、他のマトリクス材料の溶湯を浸透させることで複合成形品を得ることができる。
より詳細には、上記工程(c)で得られた粒子状の複合材料を所望の形状にあらかじめ成形するか、もしくは所望形状を有する型内に収容する。その複合材料の上方に他のマトリクス材料の塊を配置する。その状態で、他のマトリクス材料の塊を加熱し溶融させることで他のマトリクス材料の溶湯とするとともに、複合材料中へ他のマトリクス材料を浸透させて、複合成形品を得る。
この方法における他のマトリクス材料の粒子は、上記工程(b)で用いたマトリクス粒子と同じでも良いし、違う材質でも良い。違う材質を用いる場合は、他のマトリクスとマトリクスとの混合割合を任意に調整することができる。他のマトリクス材料の材質については、上記(F)の工程(b)で挙げた金属材料または非金属材料を適宜選択して用いることができる。
また、この製造工程における他のマトリクス材料は、上記工程(b)において用いられたマトリクス材料よりも低融点のものを用いることが望ましい。例えば、工程(b)のマトリクス材料が融点650〜660℃のアルミニウム合金である場合には、他のマトリクス材料としては融点600℃以下に調整されたアルミニウム合金を用いることができる。これは、上記工程(c)で得られた粒子状の複合材料における粒子間に入り込み、隙間を埋めるためには、低融点の他のマトリクス材料が望ましいからである。
このような粉末成形方法、鋳造法、浸透法によって製造された複合成形品は、カーボンナノファイバーを他のマトリクス材料中に分散させることができる。また、このようにして製造された複合成形品は、複合材料の鋳造工程などにおける巣などの欠陥を再加工することで減少させ、全体に均質な複合成形品とすることができる。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜3、比較例1、2)
(1)サンプルの作製
(a)未架橋サンプル(複合エラストマー)の作製
第1の工程:ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1に示す所定量(100g)の高分子物質(100重量部(phr))を投入して、ロールに巻き付かせた。
第2の工程:高分子物質に対して表1に示す量(重量部)の金属粒子を高分子物質に投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。なお、投入した金属粒子の種類については後述する。
第3の工程:次に、金属粒子を含む高分子物質に対して表1に示す量(重量部)のカーボンナノファイバー(表1では「CNT」と記載する)を高分子物質に投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
第4の工程:カーボンナノファイバーを投入し終わったら、高分子物質とカーボンナノファイバーとの混合物をロールから取り出した。
第5の工程:ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
第6の工程:ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、分出しした。
このようにして、実施例1〜3及び比較例1の未架橋サンプルを得た。また、第2〜第4の工程を省いて、比較例2の未架橋サンプルを得た。
(b)架橋サンプル(複合エラストマー)の作製
第1〜第5の工程は、未架橋サンプルと同様に行った。
第6の工程:ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、さらに所定量の架橋剤(2重量部)を混合物に投入した。その後、この混合物を分出しした。
第7の工程:金型サイズに切り取ったサンプルを金型にセットし、175℃、100kgf/cmにて、20分間プレス架橋を行った。
このようにして、実施例1〜3及び比較例1の架橋サンプルを得た。また、第2〜第4の工程を省いて、比較例2の架橋サンプルを得た。
(c)複合材料の作製
前述の(a)実施例1〜3及び比較例1で得られた未架橋サンプル(複合エラストマー)を容器(炉)内に配置させ、マトリクス材料となるアルミニウム塊(地金)をその上に置き、不活性ガス(窒素)雰囲気中でアルミニウムの融点まで加熱した。アルミニウム塊は溶融し、アルミニウム溶湯となり、未架橋サンプルの高分子物質と置換するようにアルミニウム溶湯が浸透した。アルミニウムの溶湯を浸透させた後、これを自然放冷して凝固させ、複合材料を得た。
さらに、実施例1〜3においては、この複合材料をボールミルで粉砕し、平均粒径が50μmの粒子状の複合材料を得た。
なお、実施例1〜3及び比較例1,2の高分子物質としては、平均分子量が300万程度の天然ゴム(表1ではNRと記載した)を用いた。カーボンナノファイバーは、直径(繊維径)が約13nm、平均長さ25μmのものを用いた。実施例1〜3及び比較例1の金属粒子としては、JIS−AC3Cアルミニウム合金粒子(平均粒径:28μm、融点650〜660℃)を用いた。アルミニウム塊は、JIS−AC3Cアルミニウム合金(融点650〜660℃)のインゴットを用いた。
(d)複合成形品の作製
上記(c)で得られた粒子状の複合材料を放電プラズマ焼結法によって成形し、実施例1〜3の複合成形品を得た。より詳細には、真空容器内に配置された成形ダイ内に上記(c)で得られた粒子状の複合材料を配置させ、パンチに荷重Pとして約50MPaの圧縮応力で上下から圧縮したのち、パンチを通して複合材料にパルス状電流を通電することにより行われた。このパルス電流がパンチ及び成形ダイを発熱させ、粒子状の複合材料を焼結して複合成形品を得た。なお、得られた複合成形品のカーボンナノファイバーの含有量が、1.6体積%になるように各配合量を設定した。
ここで用いられた他のマトリクス材料であるアルミニウム粒子は、金属粒子及び複合材料のマトリクス材料と同じアルミニウム合金であって、融点550℃、平均粒径50μmの粒子を用いた。
(2)パルス法NMRを用いた測定
各未架橋サンプルおよび架橋サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は150℃であった。この測定によって、原料エラストマー単体、複合エラストマーの未架橋サンプル及び架橋サンプルの第1スピン−スピン緩和時間(T2n)と、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)と、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)と、を求めた。なお、原料エラストマー単体については、測定温度が30℃の場合における原料エラストマー単体の第1スピン−スピン緩和時間(T2n)についても求めた。複合エラストマーの架橋サンプルについては、カーボンナノファイバー1体積%あたりに換算したスピン−格子緩和時間変化量(ΔT1)を求めた。測定結果を表1に示す。実施例1〜3における第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は、検出されなかった。従って、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は、0(ゼロ)であった。
(3)E’(動的粘弾性率)、TB(引張強度)およびEB(切断伸び)の測定
複合エラストマーの架橋サンプルについて、E’、TBおよびEBをJIS K 6521−1993によって測定した。これらの結果を表1に示す。
(4)流動温度の測定
原料エラストマー単体および複合エラストマーの架橋サンプルについて、動的粘弾性測定(JIS K 6394)によって流動温度を測定した。具体的には、流動温度は、幅5mm、長さ40mm、厚み1mmのサンプルに正弦振動(±0.1%以下)を与え、これによって発生する応力と位相差δを測定して求めた。このとき、温度は、−70℃から2℃/分の昇温速度で150℃まで変化させた。その結果を表1に示す。なお、表1において、150℃までサンプルの流動現象がみられない場合を「150℃以上」と記載した。
(5)顕微鏡観察
上記(d)で得られた実施例1〜3の複合成形品及び上記(c)で得られた比較例1の複合材料について、電子顕微鏡(SEM)観察を行い、アルミニウムマトリクス中におけるカーボンナノファイバーの分散状態を観察した。その結果を表1に示す。
(6)圧縮耐力の測定
上記(d)で得られた実施例1〜3の複合成形品及び上記(c)で得られた比較例1の複合材料について、厚さ5mmの10×10mmの試験片を、0.01mm/minで圧縮したときの0.2%耐力(σ0.2)を測定した。圧縮耐力は、最大値、最小値及び平均値(MPa)を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 0004420711
表1から、本発明の実施例1〜3によれば、以下のことが確認された。すなわち、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含む未架橋サンプル及びその架橋サンプルにおける150℃でのスピン−スピン緩和時間(T2nおよびT2nn/150℃)は、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含まない原料エラストマーの場合に比べて短い。また、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含む未架橋サンプル及びその架橋サンプルにおける成分分率(fnn/150℃)は、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含まない原料エラストマーの場合に比べて小さい。またさらに、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含む未架橋サンプル及びその架橋サンプルにおけるスピン−格子緩和時間(T1)は、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含まない原料エラストマーの場合に比べて変化量(ΔT1)低くい。これらのことから、実施例にかかる複合エラストマーでは、カーボンナノファイバーが良く分散されていることがわかった。
また、架橋サンプルを用いたE’、TBおよびEBの結果から、カーボンナノファイバーを含むことにより、本発明の実施例1〜3によれば、切断伸びを維持しながら動的粘弾性率および引張強度が向上し、カーボンナノファイバーにより補強効果が得られることが確認された。このことは、実施例1〜3と比較例2とを比較することによりよくわかる。
さらに、金属粒子及びカーボンナノファイバーを含む複合エラストマーにおける流動温度は、原料エラストマー単体の場合に比べて100℃以上高いことから、動的粘弾性の温度依存性が小さく、優れた耐熱性を有することがわかる。
また、実施例1〜3の複合成形品及び比較例1の複合材料(アルミニウムがマトリックス)を顕微鏡観察した結果、カーボンナノファイバーの凝集はほとんど観察されず良好(表1では良と示す)であった。なお、比較例2においては、カーボンナノファイバーを含まず、鋳造もしていないため、顕微鏡観察を行っていない(表1の横棒)。
さらに、実施例1〜3の複合成形品の圧縮耐力は、比較例1の複合材料の圧縮耐力に比べ、最小値及び平均値が増大し、複合成形品が全体に均質化していることがわかった。また、実施例1〜3の複合成形品の比重は、比較例1の複合材料の比重に比べて大きくなっており、鋳造工程における巣などの欠陥を再加工することで減少させたことがわかった。
以上のことから、本発明によれば、一般に基材への分散が非常に難しいカーボンナノファイバーがエラストマーに均一に分散されることが明かとなった。また、このような複合エラストマーを用いて製造した粒子状の複合材料は、カーボンナノファイバーが均一に分散されることが明らかとなった。さらに、このような粒子状の複合材料を用いて製造した複合成形品は、カーボンナノファイバーが均一に分散されるとともに、巣などの欠陥のない鋳造成形品となることが明らかとなった。
本実施の形態で用いたオープンロール法によるエラストマーとカーボンナノファイバーとの混練法を模式的に示す図である。 非加圧浸透法によって複合材料を製造する装置の概略構成図である。 非加圧浸透法によって複合材料を製造する装置の概略構成図である。
符号の説明
1 容器
2 減圧手段
3 注入手段
4 複合エラストマー
5 アルミニウム塊
6 複合成形品
10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
40 カーボンナノファイバー
50 金属粒子

Claims (27)

  1. ラストマーとカーボンナノファイバーとを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
    前記複合エラストマーとマトリクスとなる粒子状の金属材料とを混合した後、粉末成形して、該粉末成形時の高温によって複合エラストマー中のエラストマーを気化して除去すると共に、エラストマーが除去された空所が該金属材料に置換することで、該金属材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、
    前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、
    を含む、複合材料の製造方法。
  2. エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
    前記複合エラストマーをマトリクスとなる金属材料の溶湯に混入し、前記複合エラストマー中のエラストマーを前記溶湯の熱によって分解して除去すると共に、エラストマーが除去された空所が該金属材料と置換し、所望の形状を有する鋳型内で鋳造して、該金属材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、
    前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、
    を含む、複合材料の製造方法。
  3. エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
    前記複合エラストマーにマトリクスとなる金属材料の溶湯を浸透させ、前記複合エラストマー中のエラストマーを分解して気化し、エラストマーが分解されてできた空所に前記金属材料の溶湯が浸透して置換することで、該マトリクス材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、
    前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、
    を含む、複合材料の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、前記エラストマーに金属粒子を加えて混合し、前記カーボンナノファイバーを分散させる、複合材料の製造方法。
  5. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、前記エラストマーに非金属粒子を加えて混合し、前記カーボンナノファイバーを分散させる、複合材料の製造方法。
  6. 請求項またはにおいて、
    前記金属粒子または非金属粒子は、前記エラストマー100重量部に対して、10〜3000重量部である、複合材料の製造方法。
  7. 請求項またはにおいて、
    前記金属粒子または非金属粒子は、前記カーボンナノファイバーの平均直径よりも大きな平均粒径を有する、複合材料の製造方法。
  8. 請求項ないしのいずれかにおいて、
    前記金属粒子または非金属粒子の平均直径は500μm以下である、複合材料の製造方法。
  9. 請求項において、
    前記金属粒子は、アルミニウム粒子またはアルミニウム合金粒子である、複合材料の製造方法。
  10. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、分子量が5000ないし500万である、複合材料の製造方法。
  11. 請求項1ないし10のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、二重結合、三重結合、および官能基から選択される少なくともひとつを有する、複合材料の製造方法。
  12. 請求項1ないし11のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、未架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし3000μ秒である、複合材料の製造方法。
  13. 請求項1ないし12のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒である、複合材料の製造方法。
  14. 請求項1ないし13のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、天然ゴム(NR)もしくはニトリルゴム(NBR)である、複合材料の製造方法。
  15. 請求項1ないし14のいずれかにおいて、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmである、複合材料の製造方法。
  16. 請求項1ないし15のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いて行われる、複合材料の製造方法。
  17. 請求項16において、
    前記オープンロール法は、2本のロールの表面速度比が1.05ないし3.00である、複合材料の製造方法。
  18. 請求項1ないし15のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、ロータ間隙が1mm以下の密閉式混練法によって行われる、複合材料の製造方法。
  19. 請求項1ないし15のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、スクリュー間隙が0.3mm以下の多軸押出し混練法によって行われる、複合材料の製造方法。
  20. 請求項1ないし19のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、0ないし50℃で行われる、複合材料の製造方法。
  21. ラストマーと、マトリクスとなる粒子状の金属材料と、カーボンナノファイバーと、を混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
    前記複合エラストマーを粉末成形して、前記複合エラストマー中のエラストマーを気化して除去し、前記金属材料中に前記カーボンナノファイバーが分散した複合材料を得る工程(b)と、
    前記複合材料を粉砕して、粒子状の複合材料を得る工程(c)と、
    を含む、複合材料の製造方法。
  22. 請求項において、
    前記工程(b)は、
    前記複合エラストマーの上方に前記金属材料の塊を配置する工程(b−1)と、
    前記金属材料の塊を加熱し溶融させることで前記金属材料の溶湯とするとともに、前記複合エラストマー中のエラストマーを気化させ、前記金属材料の溶湯を浸透させて該エラストマーと置換する工程(b−2)と、
    を有する、複合材料の製造方法。
  23. 請求項1ないし22のいずれかに記載の製造方法によって得られた前記粒子状の複合材料を、粉末成形する工程をさらに有する、複合成形品の製造方法。
  24. 請求項23において、
    前記粉末成形に先立って、前記粒子状の複合材料と他の金属材料の粒子とを混合する、複合成形品の製造方法。
  25. 請求項1ないし22のいずれかに記載の製造方法によって得られた前記粒子状の複合材料を、他の金属材料の溶湯に混入して所望の形状を有する鋳型内で鋳造する工程をさらに有する、複合成形品の製造方法。
  26. 請求項1ないし22のいずれかに記載の製造方法によって得られた前記粒子状の複合材料に、他の金属材料の溶湯を浸透させる工程をさらに有する、複合成形品の製造方法。
  27. 請求項24ないし26のいずれかにおいて、
    前記マトリクス材料と前記他の金属材料は同じ材質である、複合成形品の製造方法。
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