JP2005171345A - 炭素繊維複合金属材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 カーボンナノファイバーが均一に分散された炭素繊維複合金属材料及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 炭素繊維複合金属材料の製造方法は、エラストマー30に、カーボンナノファイバー40を混合させ、かつ剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る工程(a)と、炭素繊維複合材料に金属溶湯を浸透させ、エラストマーを金属と置換する工程(b)と、工程(b)の後に、該工程(b)の金属溶湯を凝固させる工程(c)と、を含むことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、炭素繊維複合金属材料及びその製造方法に関する。
近年、カーボンナノファイバーを用いた複合材料が注目されている。このような複合材料は、カーボンナノファイバーを含むことで、機械的強度などの向上が期待されている。
また、複合金属材料の鋳造方法として、酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体内にマグネシウム蒸気を浸透、分散させ、同時に窒素ガスを導入することで、多孔質成形体内に金属溶湯を浸透させるようにした鋳造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、カーボンナノファイバーは相互に強い凝集性を有するため、複合金属材料の基材にカーボンナノファイバーを均一に分散させることが非常に困難とされている。そのため、現状では、所望の特性を有するカーボンナノファイバーの複合金属材料を得ることが難しく、また、高価なカーボンナノファイバーを効率よく利用することができない。
また、従来の酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体に金属溶湯を浸透させる複合金属材料の鋳造方法は、複雑な処理を行うため、工業上の生産は困難である。
特開平10−183269号公報
そこで、本発明の目的は、カーボンナノファイバーが均一に分散された炭素繊維複合金属材料およびその製造方法を提供することにある。
本発明に係る炭素繊維複合金属材料の製造方法は、
エラストマーに、前記カーボンナノファイバーを混合させ、かつ剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る工程(a)と、
前記炭素繊維複合材料に金属溶湯を浸透させ、前記エラストマーを前記金属と置換する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、該工程(b)の前記金属溶湯を凝固させる工程(c)と、
を含む。
本発明の製造方法においては、カーボンナノファイバーが既に均一に分散された炭素繊維複合材料に金属溶湯を浸透させ、前記エラストマーを前記金属と置換することにより、カーボンナノファイバーが絡み合うことなく相互に分離され、均一に分散された炭素繊維複合金属材料を得ることができる。
また、本発明にかかる炭素繊維複合金属材料は、カーボンナノファイバーを良好な分散状態で含むことにより、剛性、特に高温時における剛性などの機械的強度に優れる。さらに、本発明の炭素繊維複合金属材料は機械的強度が大きいので、成形品を肉薄にでき、その小型化、軽量化を図ることができる。
本発明において、前記金属は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることができる。
本発明において、前記エラストマーは、前記カーボンナノファイバーに対して親和性を有する不飽和結合または基を有することができる。
このようなエラストマーを用いることにより、エラストマーの不飽和結合または基が、カーボンナノファイバーの活性な部分、特にカーボンナノファイバーの末端のラジカルと結合することにより、カーボンナノファイバーの凝集力を弱め、その分散性を高めることができる。その結果、前記炭素繊維複合材料は、基材であるエラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されたものとなる。
前記エラストマーは、ゴム系エラストマーあるいは熱可塑性エラストマーのいずれであってもよい。また、ゴム系エラストマーの場合、エラストマーは架橋体あるいは未架橋体のいずれであってもよい。原料エラストマーとしては、ゴム系エラストマーの場合、未架橋体が用いられる。
本発明において、前記炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃で測定した、未架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないかあるいは1000ないし10000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることができる。
また、本発明において、前記炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃で測定した、架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし2000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないかあるいは1000ないし5000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることができる。
前記炭素繊維複合材料はこのような特性を有し、基材であるエラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されたものである。したがって、前記炭素繊維複合材料のエラストマーを金属に置換することで得られた炭素繊維複合金属材料は、基材である金属中にカーボンナノファイバーが均一に分散されたものとなる。
前記エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程は、
(1)ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法、
(2)ロータ間隙が1mm以下の密閉式混練法、
(3)スクリュー間隙が0.3mm以下の多軸押出し混練法、などを用いて行うことができる。
本発明において、前記工程(b)は、前記炭素繊維複合材料の上方に金属塊を配置する工程と、
前記金属塊を加熱し溶融させることで前記金属溶湯とするとともに、前記炭素繊維複合材料中の前記エラストマーを気化させ、前記金属溶湯を浸透させて該エラストマーと置換する工程と、
を有することができる。このような炭素繊維複合金属材料の製造方法は、前述したようにカーボンナノファイバーが均一に分散された炭素繊維複合材料のエラストマーを金属で置換した炭素繊維複合金属材料を得ることができる。また、炭素繊維複合材料は、未架橋のままで前記工程(b)に用いると、エラストマーの分解が容易であって金属溶湯の浸透が早いので、好ましい。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態にかかる炭素繊維複合金属材料の製造方法は、エラストマーに、前記カーボンナノファイバーを混合させ、かつ剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る工程(a)と、
前記炭素繊維複合材料に金属溶湯を浸透させ、前記エラストマーを前記金属と置換する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、該工程(b)の前記金属溶湯を凝固させる工程(c)と、
を含む。
なお、本発明にかかる炭素繊維複合材料を得る工程(a)は、架橋するとともに、もしくは未架橋のまま、所望の形状に成形する工程をさらに有し、所望の形状に成形された状態で工程(b)に用いられてもよい。
また、本発明にかかる炭素繊維複合金属材料の製造方法において、工程(b)は、前記炭素繊維複合材料の上方に金属塊を配置する工程と、前記金属塊を加熱し溶融させることで金属溶湯とするとともに、前記炭素繊維複合材料中の前記エラストマーを気化させ、前記金属溶湯と置換する工程と、をさらに有する。
エラストマーは、例えば、カーボンナノファイバーに対して親和性を有する不飽和結合または基を有することの他に、分子長がある程度の長さを有すること、柔軟性を有すること、などの特徴を有することが望ましい。また、エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程は、できるだけ高い剪断力で混練されることが望ましい。
(A)まず、エラストマーについて説明する。
エラストマーは、分子量が好ましくは5000ないし500万、さらに好ましくは2万ないし300万である。エラストマーの分子量がこの範囲であると、エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、エラストマーは、凝集したカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、したがってカーボンナノファイバー同士を分離する効果が大きい。エラストマーの分子量が5000より小さいと、エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけてもカーボンナノファイバーを分散させる効果が小さくなる。また、エラストマーの分子量が500万より大きいと、エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる。
エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃で測定した、未架橋体におけるネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が好ましくは100ないし3000μ秒、より好ましくは200ないし1000μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、エラストマーは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができる。このことにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合したときに、エラストマーは高い分子運動によりカーボンナノファイバー相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より短いと、エラストマーが充分な分子運動性を有することができない。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が3000μ秒より長いと、エラストマーが液体のように流れやすくなり、カーボンナノファイバーを分散させることが困難となる。
また、エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒であることが好ましい。その理由は、上述した未架橋体と同様である。すなわち、上記の条件を有する未架橋体を本発明の製造方法によって架橋化すると、得られる架橋体のT2nはおおよそ上記範囲に含まれる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によりエラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかる炭素繊維複合材料は中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
エラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバー、特にその末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有する。かかる不飽和結合または基としては、二重結合、三重結合、α水素、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などの官能基から選択される少なくともひとつであることができる。
カーボンナノファイバーは、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。本実施の形態では、エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。
エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物を用いることができる。
(B)次に、カーボンナノファイバーについて説明する。
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであることが好ましいく、炭素繊維複合材料の強度を向上させるためには0.5ないし30nmであることがさらに好ましい。また、カーボンナノファイバーは、平均長さが0.01〜1000μmであることが好ましい。
カーボンナノファイバーの配合量は、特に限定されず、用途に応じて設定できる。本実施の形態の炭素繊維複合材料は、架橋体エラストマー、未架橋体エラストマーあるいは熱可塑性ポリマーを、金属の複合材料の原料として用いる。本実施の形態の炭素繊維複合材料を金属の複合材料の原料として用いるときは、カーボンナノファイバーを0.01〜50重量%の割合で含むことができる。かかる金属の複合材料の原料は、金属にカーボンナノファイバーを混合する際に、カーボンナノファイバーの供給源としてのいわゆるマスターバッチとして用いることができる。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。
アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。
レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。
気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
(C)次に、エラストマーにカーボンナノファイバーを混合させ、かつ剪断力によって分散させる工程(a)について説明する。
本実施の形態では、エラストマーにカーボンナノファイバーを混合させる工程(a)として、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いた例について述べる。
図1は、2本のロールを用いたオープンロール法を模式的に示す図である。図1において、符号10は第1のロールを示し、符号20は第2のロールを示す。第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.1ないし0.5mmの間隔で配置されている。第1および第2のロールは、正転あるいは逆転で回転する。図示の例では、第1のロール10および第2のロール20は、矢印で示す方向に回転している。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05ないし3.00であることが好ましい。このような所定の表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。まず、第1,第2のロール10,20が回転した状態で、第2のロール20に、エラストマー30を巻き付けると、ロール10,20間にエラストマーがたまった、いわゆるバンク32が形成される。このバンク32内にカーボンナノファイバー40を加えて、第1、第2のロール10,20を回転させる。さらに、第1,第2ロール10,20の間隔を狭めて前述した間隔dとし、この状態で第1,第2ロール10,20を前記所定の表面速度比で回転させる。これにより、エラストマー30に高い剪断力が作用し、この剪断力によって凝集していたカーボンナノファイバーが1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー30に分散される。
また、この工程(a)では、できるだけ高い剪断力を得るために、エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の比較的低い温度で行われる。オープンロール法を用いた場合には、ロールの温度を上記の温度に設定することが望ましい。
このとき、本実施の形態のエラストマーは、上述した特徴、すなわち、エラストマーの分子形態(分子長)、分子運動、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用などの特徴を有することによってカーボンナノファイバーの分散を容易にするので、分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、分子長が適度に長く、分子運動性の高いエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。この状態で、エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。そして、一旦分散したカーボンナノファイバーは、エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程(a)は、上記オープンロール法に限定されず、既に述べた密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノファイバーを分離できる剪断力をエラストマーに与えることができればよい。
上述したエラストマーにカーボンナノファイバーとを分散させて両者を混合させる工程(混合・分散工程)によって得られた炭素繊維複合材料は、架橋剤によって架橋させて成形するか、もしくは架橋させずに成形することができる。このときの成形方法は、例えば圧縮成形工程や押出成形工程などを行って炭素繊維複合材料を得ることができる。圧縮成形工程は、例えばカーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料を、所定温度(例えば175℃)に設定された所望形状を有する成形金型内で所定時間(例えば20分)加圧状態で成形する工程をさらに有する。
エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合・分散工程において、あるいは続いて、通常、ゴムなどのエラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを挙げることができる。
(D)次に、上記方法によって得られた炭素繊維複合材料について述べる。
本実施の形態の炭素繊維複合材料は、基材であるエラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されている。このことは、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、カーボンナノファイバーによって拘束を受けたエラストマー分子の運動性は、カーボンナノファイバーの拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より短くなる。なお、架橋体におけるスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーの混合量に比例して変化する。
また、エラストマー分子がカーボンナノファイバーによって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、カーボンナノファイバーによってエラストマーの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、カーボンナノファイバーの活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より小さくなる。
以上のことから、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって得られる測定値が以下の範囲にあることが望ましい。
すなわち、未架橋体の炭素繊維複合材料において、150℃で測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないかあるいは1000ないし10000μ秒であり、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることが好ましい。
また、架橋体の炭素繊維複合材料において、150℃で測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし2000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないかあるいは1000ないし5000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることが好ましい。
また、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られる測定値が以下の範囲にあることが望ましい。すなわち、カーボンナノファイバー1体積%あたりの架橋体の炭素繊維複合材料の150℃で測定したスピン−格子緩和時間(T1)変化量(ΔT1)が、エラストマー単体の場合より1msec以上低下することが好ましく、さらに好ましくは2〜15msec低下することが好ましい。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法により測定されたスピン−格子緩和時間(T1)は、スピン−スピン緩和時間(T2)とともに物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、エラストマーのスピン−格子緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえ、そしてスピン−格子緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、動的粘弾性の温度依存性測定における流動温度が、原料エラストマー単体の流動温度より20℃以上高温であることが好ましい。本実施の形態の炭素繊維複合材料は、エラストマーにカーボンナノファイバーが良好に分散されている。このことは、上述したように、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、エラストマーは、カーボンナノファイバーを含まない場合に比べて、その分子運動が小さくなり、その結果、流動性が低下する。このような流動温度特性を有することにより、本実施の形態の炭素繊維複合材料は、動的粘弾性の温度依存性が小さくなり、その結果、優れた耐熱性を有する。
本実施の形態の炭素繊維複合材料は、既述したように、金属などの複合材料の原料として用いる。カーボンナノファイバーは、通常、相互に絡み合って媒体に分散しにくい性質を有する。しかし、本実施の形態の炭素繊維複合材料を金属の複合材料の原料として用いると、カーボンナノファイバーがエラストマーに既に分散した状態で存在するので、この原料と金属などの媒体とを混合することでカーボンナノファイバーを媒体に容易に分散することができる。
(E)次に、炭素繊維複合材料に金属溶湯を浸透させる工程(b)及び金属溶湯を凝固させる工程(c)について説明する。
本実施の形態では、工程(b)として、炭素繊維複合材料の上方に金属塊を配置する工程と、前記金属塊を加熱し溶融させることで前記金属溶湯とするとともに、前記炭素繊維複合材料中の前記エラストマーを気化させ、前記金属溶湯を浸透させて該エラストマーと置換する工程と、を有する、いわゆる非加圧浸透法を用いて鋳造する工程について、図2及び図3を用いて詳細に説明する。
図2及び図3は、非加圧浸透法によって炭素繊維複合金属材料を製造する装置の概略構成図である。上記実施の形態で得られた炭素繊維複合材料は、例えば最終製品の形状を有する成形金型内で圧縮成形された炭素繊維複合材料4を使用することができる。炭素繊維複合材料4は、架橋されていないことが好ましい。架橋されていないことで、金属溶湯の浸透速度が速くなるためである。図2において、密閉された容器1内には、あらかじめ成形された炭素繊維複合材料4(例えば架橋されていないエラストマー30にカーボンナノファイバー40を混入)が入れられる。その炭素繊維複合材料4の上方に金属塊例えばアルミニウム塊5を配置させる。次に、容器1に内蔵された図示せぬ加熱手段によって、容器1内に配置された炭素繊維複合材料4及びアルミニウム塊5をアルミニウムの融点以上に加熱する。加熱されたアルミニウム塊5は、溶融してアルミニウム溶湯(金属溶湯)となる。また、アルミニウム溶湯に接触した炭素繊維複合材料4中のエラストマー30は、分解されて気化し、エラストマー30が分解されてできた空所にアルミニウム溶湯(金属溶湯)が浸透する。
本実施の態様の炭素繊維複合材料4は、エラストマー30が分解されてできた空所が毛細管現象によってアルミニウム溶湯をより早く全体に浸透させることができる。そして、工程(c)として、容器1の加熱手段による加熱を停止させ、混合材料4中に浸透した金属溶湯を冷却・凝固させ、図3に示すようなカーボンナノファイバー40が均一に分散された炭素繊維複合金属材料6を製造することができる。
また、容器1を加熱する前に、容器1の室内を容器1に接続された減圧手段2例えば真空ポンプによって脱気してもよい。さらに、容器1に接続された不活性ガス注入手段3例えば窒素ガスボンベから窒素ガスを容器1内に導入してもよい。
本実施の形態においては、炭素繊維複合材料に含まれるエラストマーの分解によって内部まで還元雰囲気を生成させることができるので、従来のように還元雰囲気の処理室を用意しなくても非加圧浸透法による鋳造を実施できる。アルミニウム溶湯を浸透させたときに、熱分解されたエラストマーの分子先端はラジカルになり、そのラジカルによってアルミニウム塊5の表面にある酸化物(アルミナ)を還元されると考えられるからである。さらに、分解されたエラストマー分子のラジカルによってカーボンナノファイバーの表面が活性化して、アルミニウム溶湯との濡れ性が向上する。このようにして得られた炭素繊維複合金属材料は、アルミニウムのマトリックス内に均一に分散したカーボンナノファイバーを有する。なお、この鋳造工程を不活性雰囲気中で行うことで、アルミニウム溶湯の酸化が防止され、よりカーボンナノファイバーとの濡れ性がよくなる。
また、本実施の形態においては、非加圧浸透法による金属溶湯の浸透工程(b)を説明したが、これに限らず、金属溶湯を加圧させながら炭素繊維複合材料に浸透させる、いわゆる加圧浸透法を用いることも可能である。
なお、炭素繊維複合材料が前記(C)で説明したように、架橋もしくは未架橋で圧縮成形工程や押出成形工程などによって所望の形態を有する金型内で成形された場合、前記工程(b)及び(c)を実施することによって、所望の形態を有する炭素繊維複合金属材料を得ることができる。したがって、あらかじめ所望の形態に成形した炭素繊維複合材料を用いることで、鋳造用の金型を用意することなく所望形態、例えば最終製品の形態を有する炭素繊維複合金属材料を得ることができる。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)炭素繊維複合材料のサンプルの作製(実験例1〜6,比較実験例1〜3)
まず、実施例に用いられる炭素繊維複合材料のサンプルを得た。具体的には、表1に示す高分子物質に所定量のカーボンナノファイバーをオープンロール法によって混練してサンプルを得た。サンプルは、以下の方法によって未架橋サンプルと架橋サンプルとを作製した。
(a)未架橋サンプルの作製
1)6インチオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1に示す所定量(100g)の高分子物質(100重量部(phr))を投入して、ロールに巻き付かせた。
2)高分子物質に対して表1に示す量(重量部)のカーボンナノファイバー(表1では「CNT」と記載する)を高分子物質に投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
3)カーボンナノファイバーを投入し終わったら、高分子物質とカーボンナノファイバーとの混合物をロールから取り出した。
4)ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
5)ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、分出しした。
このようにして、実験例1〜6および比較実験例2,3の未架橋サンプル(炭素繊維複合材料)を得た。
実験例1〜6の高分子物質としては、EPDMなどのエラストマーを用いた。比較実験例1の高分子可塑剤としては、液状のフタル酸2−ジエチルヘキシル(分子量:391)を用いた。比較実験例2としては、熱可塑性樹脂であるエチルセルロースを用いた。さらに、比較実験例3として、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー(EPDM)の未架橋サンプルを、上記工程1)から5)においてカーボンナノファイバーを混合しない他は同様にして得た。
(b)架橋サンプルの作製
1)〜4)は未架橋サンプルと同様に行った。
5)ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、さらに所定量の架橋剤(2重量部)を混合物に投入した。その後、この混合物を分出しした。
6)金型サイズに切り取ったサンプルを金型にセットし、175℃、100kgf/cmにて、20分間プレス架橋を行った。
このようにして、実験例1〜5および比較実験例3の架橋サンプル(炭素繊維複合材料)を得た。なお、実験例6では原料エラストマーとしてSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン熱可塑性エラストマー)を用いており、架橋を行っていない。比較実験例1では、液状の高分子可塑剤を用いており、架橋を行っていない。また、比較実験例2では、熱可塑性樹脂を用いており、やはり架橋を行っていない。
(c)炭素繊維複合金属材料の作製
前述の(a)実施例1〜5で得られた未架橋サンプル(炭素繊維複合材料)を容器(炉)内に配置させ、アルミニウム塊(地金)をその上に置き、不活性ガス(窒素)雰囲気中でアルミニウムの融点まで加熱した。アルミニウム塊は溶融し、アルミニウム溶湯となり、未架橋サンプルのエラストマーと置換するように金属溶湯が浸透した。アルミニウムの溶湯を浸透させた後、これを自然放冷して凝固させ、炭素繊維複合金属材料を得た。
(2)パルス法NMRを用いた測定
各未架橋サンプルおよび架橋サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は150℃であった。この測定によって、原料エラストマー単体、複合材料の未架橋サンプル及び架橋サンプルの第1スピン−スピン緩和時間(T2n)と、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)と、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)と、を求めた。なお、原料エラストマー単体については、測定温度が30℃の場合における原料エラストマー単体の第1スピン−スピン緩和時間(T2n)についても求めた。炭素繊維複合材料の架橋サンプルについては、カーボンナノファイバー1体積%あたりに換算したスピン−格子緩和時間変化量(ΔT1)を求めた。測定結果を表1に示した。
(3)E’(動的粘弾性率)、TB(引張強度)およびEB(切断伸び)の測定
炭素繊維複合材料の架橋サンプルについて、E’、TBおよびEBをJIS K 6521−1993によって測定した。これらの結果を表1に示す。
(4)流動温度の測定
原料エラストマー単体および炭素繊維複合材料の架橋サンプルについて、動的粘弾性測定(JIS K 6394)によって流動温度を測定した。具体的には、流動温度は、幅5mm、長さ40mm、厚み1mmのサンプルに正弦振動(±0.1%以下)を与え、これによって発生する応力と位相差δを測定して求めた。このとき、温度は、−70℃から2℃/分の昇温速度で150℃まで変化させた。その結果を表1に示す。なお、表1において、150℃までサンプルの流動現象がみられない場合を「150℃以上」と記載した。
Figure 2005171345
表1から、本発明の実験例1〜6によれば、以下のことが確認された。すなわち、カーボンナノファイバーを含む複合材料(未架橋サンプルおよび架橋サンプル)における150℃でのスピン−スピン緩和時間(T2nおよびT2nn/150℃)は、カーボンナノファイバーを含まない原料エラストマー単体の場合に比べて短い。また、カーボンナノファイバーを含む複合材料(未架橋サンプルおよび架橋サンプル)における成分分率(fnn/150℃)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合に比べて小さい。またさらに、カーボンナノファイバーを含む架橋サンプルにおけるスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まない原料エラストマーの場合に比べて変化量(ΔT1)だけ低い。これらのことから、実験例にかかる炭素繊維複合材料では、カーボンナノファイバーが良く分散されていることがわかる。
このことは、実験例1,2と比較実験例3とを比較することによりよくわかる。すなわち、カーボンナノファイバーを含まない比較実験例3では、未架橋サンプルのスピン−スピン緩和時間(T2nおよびT2nn/150℃)は原料エラストマー単体の場合に比べてあまり差がない。これに対し、本発明の実験例1,2では、未架橋サンプルのスピン−スピン緩和時間(T2nおよびT2nn/150℃)は原料エラストマー単体の場合に比べてかなり短くなっている。そして、カーボンナノファイバーの含有割合が大きい実験例2では、未架橋サンプルのスピン−スピン緩和時間(T2nn/150℃)は検出されなかった。このようなことから、未架橋サンプルにおいて、実験例1,2は、T2nおよびT2nnの点で比較実験例3とは著しく異なることが確認された。また、成分分率(fnn/150℃)についても同様のことが確認された。
架橋サンプルについては、原料エラストマー単体に比べてスピン−スピン緩和時間(T2nおよびT2nn/150℃)はいずれも短くなっていることが確認された。特に、カーボンナノファイバーの含有割合が大きい実験例2では、架橋サンプルのスピン−スピン緩和時間(T2nn/150℃)は検出されなかった。このようなことから、架橋サンプルにおいても、実験例1,2は、T2nおよびT2nnの点で比較実験例3とは著しく異なることが確認された。また、成分分率(fnn/150℃)についても同様のことが確認された。また、カーボンナノファイバー1体積%あたりに換算したスピン−格子緩和時間変化量(ΔT1)は、いずれも大きな値を示し、分子運動性は、原料エラストマー単体に比べて低くなっていることが確認された。
また、架橋サンプルを用いたE’、TBおよびEBの結果から、カーボンナノファイバーを含むことにより、本発明の実験例によれば、切断伸びを維持しながら動的貯蔵弾性率および引張強度が向上し、カーボンナノファイバーにより著しい補強効果が得られることが確認された。このことは、実験例1,2とカーボンナノファイバーを含まない比較実験例3とを比較することによりよくわかる。特に、カーボンナノファイバーの割合が大きい実験例2では、動的貯蔵弾性率および引張強度が著しく向上していることがわかる。
さらに、カーボンナノファイバーを含む複合材料(未架橋サンプル)における流動温度は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合に比べて20℃以上高いことから、動的粘弾性の温度依存性が小さく、優れた耐熱性を有することがわかる。
比較実験例1では、エラストマーの分子量が小さすぎることから、カーボンナノファイバーを分散させることができなかった。なお、比較実験例1では、スピン−スピン緩和時間ならびに、特性E’、TBおよびEBを測定できなかった。
比較実験例2では、原料エラストマーの30℃における第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が小さすぎることから、カーボンナノファイバーを充分に分散させることができないことが確認された。また、150℃におけるスピン−スピン緩和時間(T2nn)が大きすぎることから、分子運動性が高すぎてサンプルに剪断力をかけることができず、やはりカーボンナノファイバーを分散させることが困難であることが確認された。
比較実験例3では、カーボンナノファイバーを含まないので補強効果は認められなかった。
また、実施例1〜6の炭素繊維複合金属材料(アルミニウムがマトリックス)を顕微鏡観察した結果、金属顕微鏡における金属成形状態の観察では、ボイドがほとんど観察されず良好であり、電子顕微鏡(SEM)におけるカーボンナノファイバーの分散状態の観察では、カーボンナノファイバーの凝集はほとんど観察されず良好であった。なお、比較例1及び2においては、カーボンナノファイバーを含まず、鋳造もしていないため、顕微鏡観察を行っていない。
以上のことから、本発明によれば、一般に基材への分散が難しいカーボンナノファイバーがエラストマーに均一に分散されることが明かとなった。特に、顕微鏡の観察結果から、本発明の炭素繊維複合金属材料におけるカーボンナノファイバーとアルミニウムの濡れ性が良好であることがわかった。
本実施の形態で用いたオープンロール法によるエラストマーとカーボンナノファイバーとの混練法を模式的に示す図である。 非加圧浸透法によって炭素繊維複合金属材料を製造する装置の概略構成図である。 非加圧浸透法によって炭素繊維複合金属材料を製造する装置の概略構成図である。
符号の説明
1 容器
2 減圧手段
3 注入手段
4 炭素繊維複合材料
5 アルミニウム塊
6 炭素繊維複合金属材料
10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
40 カーボンナノファイバー

Claims (18)

  1. エラストマーに、カーボンナノファイバーを混合させ、かつ剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る工程(a)と、
    前記炭素繊維複合材料に金属溶湯を浸透させ、前記エラストマーを前記金属と置換する工程(b)と、
    前記工程(b)の後に、該工程(b)の前記金属溶湯を凝固させる工程(c)と、
    を含む、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記金属は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  3. 請求項1または2において、
    前記エラストマーは、前記カーボンナノファイバーに対して親和性を有する不飽和結合または基を有する、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、分子量が5000ないし500万である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、二重結合、三重結合、α水素、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などの官能基から選択される少なくともひとつを有する、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、未架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし3000μ秒である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  7. 請求項1ないし6のいずれかにおいて、
    前記エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  8. 請求項1ないし7のいずれかにおいて、
    前記炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃で測定した、未架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないかあるいは1000ないし10000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  9. 請求項1ないし8のいずれかにおいて、
    前記炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃で測定した、架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし2000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないかあるいは1000ないし5000μ秒であり、前記第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  10. 請求項1ないし9のいずれかにおいて、
    前記エラストマーの未架橋体における流動温度は、該エラストマー単体の流動温度より20℃以上高温である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  11. 請求項1ないし10のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いて行われる、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  12. 請求項11において、
    前記オープンロール法は、2本のロールの表面速度比が1.05ないし3.00である、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  13. 請求項1ないし10のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、ロータ間隙が1mm以下の密閉式混練法によって行われる、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  14. 請求項1ないし10のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、スクリュー間隙が0.3mm以下の多軸押出し混練法によって行われる、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  15. 請求項1ないし14のいずれかにおいて、
    前記工程(a)は、0ないし50℃で行われる、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  16. 請求項1ないし15のいずれかにおいて、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmである、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  17. 請求項1ないし16のいずれかにおいて、
    前記工程(b)は、
    前記炭素繊維複合材料の上方に金属塊を配置する工程と、
    前記金属塊を加熱し溶融させることで前記金属溶湯とするとともに、前記炭素繊維複合材料中の前記エラストマーを気化させ、前記金属溶湯を浸透させて該エラストマーと置換する工程と、
    を有する、炭素繊維複合金属材料の製造方法。
  18. 請求項1ないし17のいずれかに記載の製造方法よって得られた炭素繊維複合金属材料。
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