JP5639329B2 - 複合金属材料の製造方法及び複合金属材料 - Google Patents

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本発明は、複合金属材料の製造方法及び複合金属材料に関する。
金属の複合材料の鋳造方法として、アルミナなどの酸化物系セラミックスからなる多孔質成形体内にマグネシウム蒸気を浸透、分散させ、同時に窒素ガスを導入して多孔質成形体の表面を還元することで、多孔質成形体内に金属溶湯を浸透させるようにした鋳造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、金属粒子とカーボンナノファイバーとをエラストマーに混合して炭素繊維複合材料を得て、さらにその炭素繊維複合材料に金属溶湯を浸透させて炭素繊維複合金属材料を製造する方法が提案された(例えば、特許文献2)。この方法によれば、炭素繊維複合材料中のマグネシウム粒子を昇華させると共に窒素雰囲気と反応させ、金属粒子の表面と金属溶湯の表面の酸化物を還元し、さらに金属溶湯を浸透させて炭素繊維複合金属材料を得ていた。
しかしながら、これら浸透法による鋳造方法によって得られた炭素繊維複合金属材料には空孔が多少残存する場合があり、炭素繊維複合金属材料における機械的強度の低下を招くことが確認された。
特開平10−183269号公報 特開2005−97534号公報
そこで、本発明の目的は、浸透法による鋳造方法における金属溶湯の浸透性を向上させ、空孔の少ない複合金属材料の製造方法及び複合金属材料を提供することにある。
本発明にかかる複合金属材料の製造方法は、
エラストマーに、低酸素金属粒子とカーボンナノファイバーを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
前記複合エラストマーを熱処理し、該複合エラストマー中に含まれるエラストマーを分解気化させて中間材料を得る工程(b)と、
還元雰囲気の炉内で、金属溶湯を前記中間材料の間に浸透させた後、固化させて複合金属材料を得る工程(c)と、
を含み、
前記工程(a)は、カーボンナノファイバーによる微小セルが形成された、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないか、あるいは1000ないし10000μ秒であり、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である複合エラストマーを得る工程であり、
前記複合エラストマーは、エラストマー100質量部に対してカーボンナノファイバーを10質量部〜30質量部の割合で含み、
前記低酸素金属粒子は、酸素量が0質量%以上、0.3質量%未満であって、前記工程(a)で得られた前記複合エラストマー中で酸化が抑制されることを特徴とする。
本発明の複合金属材料の製造方法によれば、酸素量が0質量%以上、0.3質量%未満の低酸素金属粒子を用いることで、金属溶湯の浸透性が向上し、複合金属材料中の空孔を低減させることにより機械的強度を向上させることができる。また、ほとんどの金属は空気中で酸化しやすい性質を有するが、本発明における低酸素金属粒子はエラストマーと混合することにより複合エラストマー中で酸化が抑制され、低酸素の状態を長期間維持することができ、酸化しやすい金属粒子であっても浸透法の原料として容易に取り扱うことができる。
本発明にかかる複合金属材料の製造方法において、
前記低酸素金属粒子は、低酸素アルミニウム粒子であり、
前記金属溶湯は、アルミニウム溶湯であることができる。
本発明にかかる複合金属材料の製造方法において、
前記低酸素アルミニウム粒子の酸素量は、0質量%〜0.2質量%であることができる。
本発明にかかる複合金属材料の製造方法において、
前記工程(a)は、前記エラストマーに、さらにマグネシウム粒子を混合し、
前記工程(c)は、前記炉内へ窒素ガスを連続的に供給し、前記マグネシウム粒子を昇華して炉内を還元雰囲気とすることができる。
本発明にかかる複合金属材料の製造方法において、
前記工程(a)で得られた前記複合エラストマーを前記炉内に配置して前記工程(b)及び前記工程(c)を連続的に実施することができる。
本発明にかかる複合金属材料の製造方法において、
前記低酸素金属粒子は、前記工程(a)で前記エラストマーに混合する前に金属粒子を酸素量が0.3質量%未満になるまで還元処理することができる。
本発明にかかる複合金属材料の製造方法において、
前記低酸素金属粒子は、前記工程(a)で前記エラストマーに混合する前に溶融した金属を不活性ガスによるアトマイズ法で処理して得られることができる。
本発明にかかる複合金属材料は、前記複合金属材料の製造方法によって得られたことを特徴とする。
本発明にかかる複合金属材料によれば、金属溶湯の浸透性が向上したため、内部に空孔が少なく、機械的強度に優れる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態にかかる複合金属材料の製造方法は、エラストマーに、低酸素金属粒子とカーボンナノファイバーを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、前記複合エラストマーを熱処理し、該複合エラストマー中に含まれるエラストマーを分解気化させて中間材料を得る工程(b)と、還元雰囲気の炉内で、金属溶湯を前記中間材料の間に浸透させた後、固化させて複合金属材料を得る工程(c)と、を含み、前記工程(a)は、カーボンナノファイバーによる微小セルが形成された、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないか、あるいは1000ないし10000μ秒であり、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である複合エラストマーを得る工程であり、前記複合エラストマーは、エラストマー100質量部に対してカーボンナノファイバーを10質量部〜30質量部の割合で含み、前記低酸素金属粒子は、酸素量が0質量%以上、0.3質量%未満であって、前記工程(a)で得られた前記複合エラストマー中で酸化が抑制される。
(A)エラストマー
エラストマーは、低酸素金属粒子の酸化を抑制するため、気体透過性の小さいエラストマーが好ましく、例えば極性ゴムの方が非極性ゴムよりも気体透過性が小さいく好ましい。また、エラストマーにカーボンナノファイバーを分散させることで気体透過性が小さくなると予測されるので、非極性ゴムを用いても低酸素金属粒子の酸化を抑制することができる。また、エラストマーは、分子量が好ましくは5000ないし500万、さらに好ましくは2万ないし300万であることが好ましい。エラストマーの分子量がこの範囲であると、エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、エラストマーはカーボンナノファイバーを分散させるために良好な弾性を有している。エラストマーは、粘性を有しているので凝集したカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、さらに弾性を有することによってカーボンナノファイバー同士を分離する効果が大きい。
エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃、観測核がHで測定した、未架橋体におけるネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が好ましくは100ないし3000μ秒、より好ましくは200ないし1000μ秒である。前記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、エラストマーは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができ、すなわちカーボンナノファイバーを分散させるために適度な弾性を有することができる。また、エラストマーは粘性を有しているので、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合したときに、エラストマーは高い分子運動によりカーボンナノファイバー相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より短いと、エラストマーが充分な分子運動性を有することができない傾向がある。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が3000μ秒より長いと、エラストマーが液体のように流れやすくなり、弾性が小さいため、カーボンナノファイバーを分散させることが困難となる傾向がある。
また、エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃、観測核がHで測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒であることが好ましい。その理由は、上述した未架橋体と同様である。すなわち、前記の条件を有する未架橋体を本発明の製造方法によって架橋化すると、得られる架橋体のT2nはおおよそ前記範囲に含まれる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によりエラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかるエラストマーは中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
エラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバー特にその末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有する。かかる不飽和結合または基としては、二重結合、三重結合、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基の官能基から選択される少なくともひとつであることができる。
カーボンナノファイバーは、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。本実施の形態では、エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。そして、エラストマーと、カーボンナノファイバーと、を混練する際に、エラストマーの分子鎖が切断されて生成したフリーラジカルは、カーボンナノファイバーの欠陥を攻撃し、カーボンナノファイバーの表面にラジカルを生成すると推測できる。
エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物を用いることができる。特に、エラストマーの混練の際にフリーラジカルを生成しやすい極性の高いエラストマー、例えば、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR)などが好ましい。また、極性の低いエラストマー、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)であっても、混練の温度を比較的高温(例えばEPDMの場合、50℃〜150℃)とすることで、フリーラジカルを生成するので本発明に用いることができる。
(B)低酸素金属粒子
低酸素金属粒子は、酸素量が0質量%以上、0.3質量%未満であり、好ましくは0〜0.2質量%である。低酸素金属粒子における酸素量は、低酸素金属粒子の表面及び内部の両方に存在する含有酸素の質量の百分率であり、例えば不活性ガス溶解法によって測定することができる。酸素量が0.3質量%未満の低酸素金属粒子では、工程(c)で得られた複合金属材料中の空孔が減少し、機械的強度が向上する傾向がある。低酸素金属粒子は、工程(a)でエラストマーに混合する前に所定サイズの金属粒子を酸素量が0.3質量%未満になるまで還元処理して得ることができる。金属粒子が0.3質量%以上の酸素量であったとしても、例えば金属粒子を窒素雰囲気中でマグネシウムなどの還元剤を昇華させて金属粒子の表面の酸化膜を1回以上還元処理することで0.3質量%未満の酸素量の低酸素金属粒子を得ることができる。また、低酸素金属粒子は、工程(a)でエラストマーに混合する前に、溶融した金属を不活性ガスによるアトマイズ法で処理して得られることができる。アトマイズ法に用いられる不活性ガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどを用いることができる。不活性ガスによるアトマイズ法は、例えばまず金属を真空中あるいは不活性ガス中で坩堝内で溶融させ、坩堝の先端の小さな穴から落下させた溶融金属流に不活性ガスを噴射して溶融金属流を粉砕することで低酸素金属粒子を得ることができる。
低酸素金属粒子は、金、銀、銅、亜鉛、鉛、などの比重が5以上の重金属であってもよいし、アルミニウム、マグネシウム、チタンなどの比重が5未満の軽金属であってもよいが、例えば軽量で工業製品に多く用いられているアルミニウム粒子であることができる。なお、本発明において金属粒子は、純粋な金属単体及びその金属の合金を含むものであり、例えばアルミニウム粒子といった場合、純アルミニウム粒子であってもアルミニウム合金粒子であってもよく、またそれらの両方を含む混合粒子であってもよい。
低酸素金属粒子は、エラストマー中に混合し、カーボンナノファイバーと共に分散させ、複合エラストマー中で酸化が抑制される。低酸素金属粒子は、使用するカーボンナノファイバーの平均直径よりも大きい平均粒径であることが好ましく、例えば、低酸素金属粒子の平均粒径は500μm以下、好ましくは1〜300μmであることができる。低酸素金属粒子の配合量は、エラストマー100質量部に対して、10〜3000質量部、好ましくは100〜1000質量部であることが浸透法を用いる上で好ましい。低酸素金属粒子が10質量部以下であると、毛細管現象が小さく、金属溶湯の浸透速度が遅いので、生産性及びコスト面で採用が難しい。また、低酸素金属粒子が3000質量部以上であると、炭素繊維複合材料を製造する際に、エラストマーへ含浸させにくくなる。また、低酸素金属粒子の形状は、球形粒状が好ましいが、これに限らず平板状、りん片状であってもよい。
(C)カーボンナノファイバー
カーボンナノファイバーは、低酸素金属粒子と共にエラストマーに混合され、かつ剪断力によって複合エラストマー中に分散される。カーボンナノファイバーの周囲には、カーボンナノファイバーの表面に吸着したエラストマーの分子の凝集体と考えられる界面相が形成される。界面相は、例えばエラストマーとカーボンブラックとを混練した際にカーボンブラックの周囲に形成されるバウンドラバーに類似するものと考えられる。このような界面相は、カーボンナノファイバーを被覆して保護し、複合エラストマー中におけるカーボンナノファイバーの量が増えるにつれて界面相同士が連鎖してエラストマーを囲む微小なセルを形成してセル化する。しかも、複合エラストマー中におけるカーボンナノファイバーが最適割合で分散されると、連鎖した界面相によってセル内への酸素の浸入が減少することができると推測できる。
複合エラストマーは、エラストマー100質量部に対してカーボンナノファイバーを10質量部〜30質量部の割合で含む。また、複合エラストマーは、エラストマー100質量部に対してカーボンナノファイバーを好ましくは10質量部〜20質量部の割合で含むことができる。カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであることが好ましく、複合金属材料の強度を向上させるためには0.5ないし200nmであることがさらに好ましい。また、カーボンナノファイバーは、平均長さが5〜20μmであることが好ましい。さらに、カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状であっても、湾曲繊維状であってもよい。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有するカーボンナノファイバーも使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
(D)工程(a)
エラストマーに、低酸素金属粒子とカーボンナノファイバーを混合させ、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)について、図1を用いてロール間隔が0.5mm以下の薄通しを行なうオープンロール法を用いた例について説明する。
図1は、2本のロールを用いたオープンロール法を模式的に示す図である。図1において、符号10は第1のロールを示し、符号20は第2のロールを示す。第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば1.5mmの間隔で配置されている。第1および第2のロールは、正転あるいは逆転で回転する。図示の例では、第1のロール10および第2のロール20は、矢印で示す方向に回転している。
まず、第1,第2のロール10,20が回転した状態で、第1のロール10に、エラストマー30を巻き付けると、ロール10,20間にエラストマーがたまった、いわゆるバンク32が形成される。このバンク32内にまず低酸素金属粒子42と還元用粒子44とを加えて混練し、さらにカーボンナノファイバー40を加えて、第1、第2のロール10,20を回転させると、エラストマー30と低酸素金属粒子42と還元用粒子44とカーボンナノファイバー40の混合物が得られる。還元用粒子44は、工程(c)において昇華して炉内を還元雰囲気にするための材料であって、低酸素金属粒子42によりも低い温度で昇華しかつ還元性の高い材料を用いることができる。この混合物をオープンロールから取り出す。さらに、第1のロール10と第2のロール20の間隔dを、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1ないし0.5mmの間隔に設定し、得られた混合物をオープンロールに投入して薄通しを行なう。薄通しの回数は、例えば1回〜10回程度行なうことが好ましい。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05ないし3.00であることが好ましく、さらに1.05ないし1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。
このようにして得られた剪断力により、エラストマー30に高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバーがエラストマー分子に1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー30に分散される。
また、カーボンナノファイバー40の投入に先立って、低酸素金属粒子42をバンク32に投入してあるので、ロールによる剪断力は低酸素金属粒子42のまわりに乱流状の流動を発生させ、カーボンナノファイバー40をエラストマー30にさらに均一に分散させることができる。
この工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の比較的低い温度で行われる。このような低温での薄通しは、エラストマーがゴム弾性を有しているので、カーボンナノファイバーを効率よくマトリックス中に分散することができる。
このとき、本実施の形態のエラストマーは、上述した特徴、すなわち、エラストマーの分子形態(分子長)や分子運動によって表される弾性と、粘性と、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用と、を有することによってカーボンナノファイバーの分散を容易にするので、分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた複合エラストマーを得ることができる。より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。この状態で、分子長が適度に長く、分子運動性の高い(弾性を有する)エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。本実施の形態によれば、薄通しによって混合物が狭いロール間から押し出された際に、エラストマーの弾性による復元力で混合物はロール間隔より厚く変形する。その変形は、強い剪断力の作用した混合物をさらに複雑に流動させ、カーボンナノファイバーをエラストマー中に分散させると推測できる。そして、一旦分散したカーボンナノファイバーは、エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程は、上記オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノファイバーを分離できる剪断力をエラストマーに与えることができればよい。
本工程(混合・分散工程)によって得られた複合エラストマーは、架橋剤によって架橋させて成形することができる。また、エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合・分散工程において、あるいは続いて、通常、ゴムなどのエラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知の例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを挙げることができる。
(E)複合エラストマー
工程(a)によって得られた複合エラストマーは、基材であるエラストマーに低酸素金属粒子と還元用粒子とカーボンナノファイバーとが均一に分散されている。低酸素金属粒子は、複合エラストマー中で酸化が抑制される。特に、カーボンナノファイバーによる微小セルが形成された複合エラストマーにあっては酸素透過性が低減され、低酸素金属粒子の酸化が抑制されると考えられる。複合エラストマーは、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、カーボンナノファイバーによって拘束を受けたエラストマー分子の運動性は、カーボンナノファイバーの拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、本実施の形態にかかる複合エラストマーの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より短くなる。なお、架橋体におけるスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーの混合量に比例して変化する。
また、エラストマー分子がカーボンナノファイバーによって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、カーボンナノファイバーによってエラストマーの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、カーボンナノファイバーの活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より小さくなる。
以上のことから、本実施の形態にかかる複合エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって得られる測定値が以下の範囲にある。
すなわち、未架橋体において、150℃、観測核がHで測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないか、あるいは1000ないし10000μ秒であり、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法により測定されたスピン−格子緩和時間(T1)は、スピン−スピン緩和時間(T2)とともに物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、エラストマーのスピン−格子緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえ、そしてスピン−格子緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
本実施の形態にかかる複合エラストマーは、動的粘弾性の温度依存性測定における流動温度が、原料エラストマー単体の流動温度より20℃以上高温であることが好ましい。本実施の形態の複合エラストマーは、エラストマーにカーボンナノファイバーが良好に分散されているため、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、エラストマーは、カーボンナノファイバーを含まない場合に比べて、その分子運動が小さくなり、その結果、流動性が低下する。
(F)工程(b)
工程(b)は、前記工程(a)で得られた複合エラストマーを熱処理し、該複合エラストマー中に含まれる前記エラストマーを分解気化させて中間材料を得る。工程(b)における熱処理は、使用されるエラストマーの種類によって種々の条件を選択することができるが、少なくとも熱処理温度は、エラストマーの分解気化する温度以上であって、かつ低酸素金属材料やカーボンナノファイバーが気化する温度よりも低い温度に設定される。
図2は、工程(b)及び工程(c)に用いられる複合金属材料の製造装置100を模式的に示す図である。複合金属材料の製造装置100は、材料を内部に配置することのできる炉50と、炉50を所定温度に加熱するためのヒータ52と、炉50内に不活性ガス例えば窒素ガスを供給する窒素供給源60と、窒素供給源60から炉50内へ供給するガス流量を調整する流量調整器62と、開閉弁82を介して炉50内を減圧する減圧ポンプ80と、圧力調整弁92を介して炉50内からガスを排気するための排気回路90と、を有する。窒素供給源60は筒状の炉50の一方の端部に設けられた供給口54に接続され、排気回路90は炉50の他方の端部側に設けられた排気口56に接続されている。
工程(b)は、炉50内の所定位置に工程(a)で得られた複合エラストマーAを配置し、減圧ポンプ80によって炉50内を減圧して炉50内の空気を排気し、窒素供給源60から炉50内へ窒素ガスを供給して炉50内を窒素雰囲気とする。この減圧と窒素ガス供給という操作を複数回繰り返して不要なガスを排除することが望ましい。そして、炉50内をヒータ52、52によってエラストマーの分解気化する温度例えば500℃に加熱する。この加熱によって、エラストマーは分解気化して、低酸素金属粒子、還元用粒子及びカーボンナノファイバーを主体とした多孔質体の中間材料が得られる。なお、図2に示すように、工程(b)に引き続いて工程(c)を連続的に実施する場合は、工程(c)で用いる金属塊Bを工程(b)のときから複合エラストマーAと共に炉50内に配置してもよい。また、還元用粒子は工程(a)において複合エラストマー中に混合したが、工程(c)で還元雰囲気を得るための材料であるので、工程(b)もしくは工程(c)で炉内に配置してもよいし、工程(c)において炉外で昇華させたガスを炉内へ供給してもよい。なお、還元用粒子は多すぎても浸透性を低下させるので、所定量を複合エラストマーに混合させておくことが望ましく、あらかじめ複合エラストマーに混合させることで中間材料の内部まで十分に還元することができる。
(G)工程(c)
工程(c)は、還元雰囲気の炉50内で、溶融した金属塊Bの溶湯を、中間材料の間に浸透させた後、固化させる。本実施の形態においては、工程(c)の浸透法による鋳造方法について非加圧浸透法を用いて説明するが、これに限らず加圧浸透法を用いてもよい。炉50内には、供給口54に接続された窒素供給源60から流量調整器62によって流量調整された窒素ガスを導入する。窒素供給源60としては、例えば窒素ガスボンベを用いることができ、炉50の排気口56に接続された排出回路90の圧力調整弁92によって炉50内の圧力が一定に保たれるように適宜窒素ガスが排出されるため、一定の流量に制御された窒素ガスを炉50内へ導入することができる。工程(c)は、工程(b)に引き続いて炉50内に中間材料と金属塊Bとを配置したままで行うことができる。工程(b)によって得られた中間材料とその上に配置されている金属塊Bとを、金属塊Bの融点よりも高い温度までヒータ52、52によって昇温・加熱する。このとき予め複合エラストマーA中に混合されていた還元用粒子が炉50の加熱によって金属塊Bよりも先に(低温で)昇華し窒素ガスと反応してマグネシアが生成することによって炉50内を還元雰囲気とすることになるため、中間材料中の低酸素金属粒子及び金属塊Bの表面を還元し、金属塊Bの溶湯が中間材料内へ浸透しやすくなる。このとき、低酸素金属粒子の酸素量が0.3質量%未満であると、金属溶湯の中間材料中への浸透性が向上し、複合金属材料中に浸透不良による空孔が形成されることを防止することができる。低酸素金属粒子及び金属塊Bが例えばアルミニウムである場合、それよりも低温で昇華するマグネシウムを還元用粒子として用いることができる。
炉50内が金属塊Bの溶融温度以上に昇温すると、還元雰囲気の中で金属塊Bが溶融して金属溶湯となり、例えば多孔質体に形成された中間材料の内部へと金属溶湯が毛細管現象によって浸透する。中間材料は、エラストマーが分解気化してできた空所を有する多孔質体であることが好ましく、その空所に金属溶湯が浸透することができる。中間材料がエラストマーが分解気化してできた空所を有する多孔質体であることによって、中間材料を所望の形状に成形しておけばエラストマーと金属溶湯とを置換させて所望の形状を有した複合金属材料を成形することができる。
そして、炉50のヒータ52による加熱を停止させ、金属溶湯を冷却・凝固させると、金属のマトリックス中にカーボンナノファイバーが均一に分散された複合金属材料を製造することができる。複合金属材料は、低酸素金属粒子及び金属溶湯にアルミニウムを用いたとき、カーボンナノファイバーを覆うようにアルミニウムと窒素を含む周辺相が形成される。このような周辺相は、例えば非晶質の物質(アルミニウム、窒素、酸素など)や結晶質の物質(例えば窒化アルミニウム)などを含むことができる。
このように、工程(b)に引き続いて工程(c)を実施することもできるが、工程(b)とは別の炉へ中間材料を移した後、工程(c)を実施することもできる。その場合には、炉内の所定位置に中間材料を配置した後、減圧ポンプによって炉内を減圧して空気を炉外へ排出し、さらに窒素供給源から炉内へ窒素ガスを供給して炉内を窒素雰囲気とした後に工程(c)を実施することができる。
(H)複合金属材料
工程(c)によって得られた複合金属材料は、金属のマトリクス中にカーボンナノファイバーが分散された複合金属材料であって、浸透法における金属溶湯の浸透性を向上させたことによって内部の空孔が減少し、機械的強度が高く均質である。複合金属材料は、金属としてアルミニウムを用いたとき、カーボンナノファイバーの周囲にアルミニウムと窒素からなる非晶質の周辺相を含む。この周辺相は、主な構成元素がマトリックスと同じアルミニウムを含むため、マトリックスの結晶質アルミニウムとの濡れ性が良好である。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1〜3)
(1)サンプルの作製
(a)複合エラストマー(無架橋サンプル)の作製
工程(a):ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1に示す所定量(100g)の天然ゴム(表1では「NR」と記載する。100質量部(phr))を投入して、ロールに巻き付かせた。ロールに巻きついた天然ゴムに対して還元用粒子としてのマグネシウム粒子(10質量部(phr))及び金属粒子としてのアルミニウム粒子(500質量部(phr))を天然ゴムに投入し、混練した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。さらに、10質量部のカーボンナノファイバー(表1では「気相炭素」と記載する)をオープンロールに投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。カーボンナノファイバーを投入し終わったら、天然ゴムとカーボンナノファイバーとの混合物をロールから取り出した。ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し5回行った。ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、分出しした。
このようにして、実施例1〜4の複合エラストマー(無架橋体)を得た。なお、実施例1〜4において、平均粒径50μmのマグネシウム粒子と、平均粒径50μmの純アルミニウム粒子(99.7%がアルミニウム)と、カーボンナノファイバーとしては実測平均直径87nmの気相成長炭素繊維と、を用いた。表1に示すように、アルミニウム粒子は、実施例1〜4においては窒素ガスアトマイズ法で得られた酸素量が0.1質量%、0.2質量%の低酸素アルミニウム粒子を用い、比較例1〜3においては大気アトマイズ法で得られた酸素量が0.3質量%〜1質量%のアルミニウム粒子を用いた。
工程(b)及び工程(c):
前記(a)で得られた複合エラストマーを炉内に配置させ、金属溶湯にするためのアルミニウム塊(純アルミニウムインゴット)をその上に置き、炉内部を減圧ポンプで吸引した後窒素ガスを充填した。炉内の温度をアルミニウムの融点以上(840℃)まで徐々に昇温し、複合エラストマー及びアルミニウム塊を加熱した。炉内には酸素ガス濃度が1.0ppm〜2.0ppmの工業用窒素ガスボンベから流量制御した窒素ガスを連続的に供給し続けた。窒素ガス流量は、炉内空間の体積の1cmあたりに換算した流量(L/min)で制御し、表1に示した。この昇温の過程において、まず、複合エラストマーは、天然ゴムの分解気化温度以上で天然ゴムが分解気化して中間材料になり、マグネシウム粒子が昇華して炉内を還元雰囲気とし、さらに、アルミニウム塊が溶融しアルミニウムの溶湯となった。アルミニウムの溶湯は、天然ゴムと置換するように中間材料中の空所すなわちアルミニウム粒子及びカーボンナノファイバーによって形成された隙間に浸透した。アルミニウムの溶湯を浸透させた後、これを自然放冷して凝固させ、複合金属材料サンプルを得た。比較例1〜3は、アルミニウム粒子の酸素量が異なるだけで他の製造条件は実施例1、2と同じとした。また、実施例3,4は、実施例1,2と同じ複合エラストマーサンプルを1週間室温で大気中に放置したものを用いて工程(b)及び工程(c)を実施した。
(2)パルス法NMRを用いた測定
各複合エラストマーについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は150℃であった。この測定によって、複合エラストマーの第1スピン−スピン緩和時間(T2n)と、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)と、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)と、を求めた。なお、原料エラストマー単体については、測定温度が30℃の場合における原料エラストマー単体の第1スピン−スピン緩和時間(T2n)についても求めた。測定結果を表1に示す。
(3)熱伝導率の測定
各複合金属材料をNETZSCH社(ドイツ)製LFA447及びアルバック理工製TC−7000を用いて熱伝導率(W/m・k)を測定し、確認を行なった。測定結果は表1に示した。
(4)四点曲げ試験
各複合金属材料について、四点曲げ試験を行なって弾性限界応力(MPa)と動的弾性率(GPa)を測定した。測定結果は表1に示した。
(5)比重の測定
各複合金属材料について、比重を測定した。測定結果は表1に示した。
また、実施例1,2及び比較例1〜3の複合金属材料の各測定結果からアルミニウム粒子の酸素量と、熱伝導率(図3においてAで示した)、弾性限界応力(図3においてBで示した)、動的弾性率(図3においてCで示した)及び比重(図3においてDで示した)との関係を表すグラフを図3に示した。
Figure 0005639329
表1から、本発明の実施例1〜4によれば、以下のことが確認された。すなわち、熱伝導率及び比重の測定結果から比較例1〜3の複合金属材料に比べ実施例1〜4の複合金属材料の方が緻密で空孔が減少したと推定できた。また、四点曲げ試験の結果から、空孔が減少したことによって比較例1〜3の複合金属材料よりも実施例1〜4の複合金属材料の方が動的弾性率及び弾性限界応力が大きく向上し機械的強度が向上したことがわかった。さらに、実施例1,2の複合金属材料と実施例3,4の複合金属材料の各測定結果にほとんど差が無いことから、複合エラストマーを大気中に1週間放置してもエラストマー中にある低酸素アルミニウム粒子がほとんど酸化されていないことが推定できた。
本実施の形態で用いたオープンロール法によるエラストマーとカーボンナノファイバーとの混練法を模式的に示す図である。 工程(b)及び工程(c)で用いられる複合金属材料の製造装置の概略構成図である。 実施例1,2及び比較例1〜3の複合金属材料の各測定結果からアルミニウム粒子の酸素量と、熱伝導率、弾性限界応力及び動的弾性率との関係を表すグラフである。
符号の説明
10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
40 カーボンナノファイバー
42 低酸素金属粒子
44 還元用粒子
50 炉
52 ヒータ
60 窒素供給源
80 減圧ポンプ
90 排気回路
A 複合エラストマー
B アルミニウム塊

Claims (8)

  1. エラストマーに、低酸素金属粒子とカーボンナノファイバーを混合し、かつ剪断力によって分散させて複合エラストマーを得る工程(a)と、
    前記複合エラストマーを熱処理し、該複合エラストマー中に含まれるエラストマーを分解気化させて中間材料を得る工程(b)と、
    還元雰囲気の炉内で、金属溶湯を前記中間材料の間に浸透させた後、固化させて複合金属材料を得る工程(c)と、
    を含み、
    前記工程(a)は、カーボンナノファイバーによる微小セルが形成された、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は存在しないか、あるいは1000ないし10000μ秒であり、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である複合エラストマーを得る工程であり、
    前記複合エラストマーは、エラストマー100質量部に対してカーボンナノファイバーを10質量部〜30質量部の割合で含み、
    前記低酸素金属粒子は、酸素量が0質量%以上、0.3質量%未満であって、前記工程(a)で得られた前記複合エラストマー中で酸化が抑制される、複合金属材料の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記低酸素金属粒子は、低酸素アルミニウム粒子であり、
    前記金属溶湯は、アルミニウム溶湯である、複合金属材料の製造方法。
  3. 請求項2において、
    前記低酸素アルミニウム粒子の酸素量は、0質量%〜0.2質量%である、複合金属材料の製造方法。
  4. 請求項2または3において、
    前記工程(a)は、前記エラストマーに、さらにマグネシウム粒子を混合し、
    前記工程(c)は、前記炉内へ窒素ガスを連続的に供給し、前記マグネシウム粒子を昇華して炉内を還元雰囲気とする、複合金属材料の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、
    前記工程(a)で得られた前記複合エラストマーを前記炉内に配置して前記工程(b)及び前記工程(c)を連続的に実施する、複合金属材料の製造方法。
  6. 請求項1または2において、
    前記低酸素金属粒子は、前記工程(a)で前記エラストマーに混合する前に金属粒子を酸素量が0.3質量%未満になるまで還元処理する、複合金属材料の製造方法。
  7. 請求項1または2において、
    前記低酸素金属粒子は、前記工程(a)で前記エラストマーに混合する前に溶融した金属を不活性ガスによるアトマイズ法で処理して得られる、複合金属材料の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって得られた複合金属材料。
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