<第1実施形態>
図1は、この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の平面図である。この基板処理装置は基板表面Wfの周縁部からメタル層やフォトレジスト層などの薄膜をエッチング除去するベベルエッチングと基板裏面Wbを洗浄する裏面洗浄とを同時に実行(いわゆる1ステップ処理を実行)することが可能な装置であり、次のように構成されている。
この基板処理装置は、中空の回転軸1が、モータを含む回転駆動機構2の回転軸に連結されており、この回転駆動機構2の駆動により回転中心A0回りに回転可能となっている。この回転軸1の上端部には、スピンベース3が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、回転駆動機構2の駆動によりスピンベース3が回転中心A0回りに回転可能となっている。このように、この実施形態では、回転駆動機構2が本発明の「回転手段」に、スピンベース3が本発明の「回転部材」に相当している。
回転駆動機構2にはロータリーエンコーダ等の回転位置(回転角度)検出計が内蔵されており、スピンベース3の所定の基準位置からの回転位置を検出して装置全体を制御する制御ユニット4に送出する。また、制御ユニット4は回転位置検出計から送出された信号に基づいて回転駆動機構2を駆動させてスピンベース3を所望の回転位置に位置決めすることが可能となっている。
また、スピンベース3の上面側には、支持ピン5,6が本発明の「支持手段」としてそれぞれ複数個づつ、回転中心A0を中心として放射状にスピンベース3から上方に向けて突設されている。複数の支持ピン5,6の各々は、基板裏面Wb(下面)に当接することで、スピンベース3から所定の間隔だけ離間させた状態で基板Wを水平方向に滑動自在に支持可能となっている。このため、基板Wがスピンベース3に当接して支持される場合に生じる基板Wの下面の損傷や汚染が防止される。一方で基板Wは支持ピン5,6により滑動自在に支持されながらも基板Wの下面と支持ピン5,6との間に発生する摩擦力で支持ピン5,6に保持されながら、スピンベース3の回転とともに回転中心A0回りに回転可能となっている。
これらのうち図中回転中心A0へ向かってスピンベース3の内側に位置する複数の支持ピン5は、本発明の「第1支持ピン群」を構成して、第1支持ピン群のみにより基板Wを支持することが可能となっている。一方、外側に位置する複数の支持ピン6は、本発明の「第2支持ピン群」を構成していて、後述する昇降駆動部を作動させることで、第2支持ピン群の各々を昇降させて第2支持ピン群のみにより、あるいは第1支持ピン群とともに基板Wを支持することが可能となっている。これにより、基板Wはその表面Wfを上方に向けた姿勢で、かつ略水平姿勢で複数の支持ピン5および複数の支持ピン6の少なくとも一方によって支持される。なお、複数の支持ピン5からなる第1支持ピン群および支持ピン6からなる第2支持ピン群を構成する支持ピンの個数、配置については、基板Wを水平方向に支持し、搬送手段のハンド等が入り込む隙間が確保される限り任意である。
ここで、支持ピン6の基板Wの下面に対する摩擦係数は支持ピン5に比較して大きくなるように構成されている。したがって、基板Wの下面を(i)複数の支持ピン5からなる第1支持ピン群のみにより支持、(ii)複数の支持ピン6からなる第2支持ピン群のみにより支持、(iii)第1支持ピン群と第2支持ピン群の両方により支持するように支持態様を切り換えることで基板Wの下面との間に発生する摩擦力を変化させることができる。すなわち、基板Wの下面に対する摩擦係数が比較的小さな第1支持ピン群のみにより基板Wを支持することで基板Wの下面との間に発生する摩擦力を低減させ、基板Wに対して水平方向に外力を作用させた際に容易に基板Wを水平方向に滑動させることできる。一方、基板Wの下面に対する摩擦係数が比較的大きな第2支持ピン群のみにより、あるいは第1支持ピン群と第2支持ピン群の両方により基板Wを支持することで基板Wの下面との間に発生する摩擦力を増大させ、基板Wの水平方向の滑動を抑制して基板Wを安定に保持させることができる。
図3は支持ピン5,6の構成を示す部分拡大図である。なお、複数の支持ピン5および複数の支持ピン6の各々はいずれも同一構成を有しているため、ここでは1つの支持ピン5および1つの支持ピン6の構成についてのみ図面を参照しつつ説明する。支持ピン5は、スピンベース3の上面に固定的に立設されたピン本体51と、ピン本体51の上方に基板Wの下面と当接可能な当接部52とを有し、これらが一体的に結合して構成されている。一方で、支持ピン6は、基板Wの下面に離当接可能な当接部61と、当接部61を上下方向へ移動可能に支持する可動ロッド62と、この可動ロッド62を上下動させるモータ等の昇降駆動部63と、可動ロッド62を取り囲むように設けられ可動ロッド62と昇降駆動部63とを外部雰囲気から遮断するベローズ64とを有している。ベローズ64の上端部は当接部61の下面側に固着される一方、ベローズ64の下端部はスピンベース3の上面側に固着されている。なお、昇降駆動部63はモータに限らず、エアシリンダ等のアクチュエータ全般を用いてもよい。
ここで、支持ピン6の当接部62は基板Wの下面に対する摩擦係数が大きな材質で形成される。また、支持ピン5の当接部52の材質としては、基板Wの下面に対する摩擦係数が小さいものであって、しかも基板Wを損傷させたり、パーティクルを発生させることがない材質が望ましい。
上記した構成を有する支持ピン6では、昇降駆動部63が制御ユニット4からの駆動信号に基づき図示省略する駆動連結部を介して可動ロッド62を数mmのストロークで昇降駆動させることにより、ベローズ64を伸縮させながら当接部61の高さ(当接部61の先端位置)を支持ピン5が基板Wの下面と当接する当接位置(当接部52の先端位置)に対して次のような位置に位置決めする。すなわち、図3(a)に示すように可動ロッド62を下降させて支持ピン6の当接部61を支持ピン5が基板Wの下面と当接する当接位置よりも低い位置に位置決めすると、当接部61は基板Wの下面から離間して基板Wは支持ピン5のみにより支持される。また、図3(b)に示すように可動ロッド62を上昇させて支持ピン6の当接部61を支持ピン5が基板Wの下面と当接する当接位置よりも高い位置に位置決めすると、基板Wは当接部61により押し上げられ当接部52は基板Wの下面から離間する。この際、ベローズ64は当接部61の上方への移動に従って伸長する。その結果、基板Wは支持ピン6のみにより支持される。さらに、図示はしていないが支持ピン6の当接部61を支持ピン5の当接位置に対して同じ高さに位置させることで支持ピン5と支持ピン6の両方により基板Wを支持することができる。
次に、基板処理装置の位置補正機構について説明する。「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように基板Wの端面から内側に向かってエッチング除去される幅(周縁エッチング幅)を正確にコントロールするために、スピンベース3の回転中心A0と基板中心W0とを一致させることが重要となっている。そこで、この実施形態では、次のようにしてスピンベース3の回転中心A0と基板中心W0とを一致させている。すなわち、上述したように複数の支持ピン5からなる第1支持ピン群のみにより基板Wを支持する場合には、複数の支持ピン6からなる第2支持ピン群のみにより基板Wを支持する場合または第1支持ピン群と第2支持ピン群の両方により基板Wを支持する場合に比べると基板Wとの間に発生する摩擦力を低減させて、基板Wに対して水平方向に外力を作用させた際に基板Wを水平方向に容易にしかも基板Wの損傷やパーティクルの発生を防止しつつ滑動させることが可能となっている。
したがって、複数の支持ピン5からなる第1支持ピン群のみにより基板Wを支持する場合には、基板Wに対して水平方向に基板Wの下面と支持ピン5との間に発生する摩擦力よりも大きな力を作用させることで基板Wに悪影響を及ぼすことなく基板Wの水平方向の位置を補正することが可能である。このため、この実施形態では位置補正ユニット7(本発明の「位置補正機構」に相当)を設けて、スピンベース3の回転中心A0と基板中心W0とを一致させるように基板Wの位置補正を行っている。
図4は、位置補正ユニットの構成を示す図である。この位置補正ユニット7は、支持ピン5に滑動自在に支持された基板Wの端面に当接して該基板Wを水平方向に押圧する押圧ブロック71と、押圧ブロック71を支持するロッド72と、該ロッド72に接続され、押圧ブロック71をスピンベース3の回転中心A0を通る線上(スピンベース3の径方向)に沿って水平方向に移動させるブロック移動機構73と、基板Wの周縁に配置されて該基板Wの端面位置を検出する検出センサ74とを備えている。
押圧ブロック71は円筒形状をなしており、その上面にロッド72が固着されている。そのため、ブロック移動機構73がロッド72を水平方向に駆動させることで、押圧ブロック71の側面71a(本発明の「当接部位」に相当)を基板Wの端面に当接させつつ基板Wを水平方向に押動することが可能となっている。具体的には、押圧ブロック71(側面71a)が、支持ピン5に滑動自在に支持された基板Wに当接しつつ押圧することで、基板裏面Wb(下面)と支持ピン5との間に発生する摩擦力よりも大きな力を作用させて基板Wを支持ピン5上で滑動させて押圧方向に基板Wを移動させることが可能となっている。このように、この実施形態では、押圧ブロック71が本発明の「押圧部材」として機能している。
また、ロッド72と検出センサ74とは、図示省略するブラケット等の取付け具を介して連結されている。このため、制御ユニット4からの動作指令に応じてブロック移動機構73が作動することで、1つの駆動系で押圧ブロック71と検出センサ74とが一体的に駆動するように構成されている。
ここで、押圧ブロック71の横断面形状である円の直径は、基板Wの周縁部に形成された切欠部の影響を考慮して次のように構成されている。すなわち、処理対象としている基板Wには、切欠部が施されていることが多い。例えば、基板Wとして半導体ウエハでは、ウエハ面内の結晶学的基準方位を示すために、ノッチなどの切欠部が形成されている。この場合、押圧ブロック71と切欠部とが対向したときには、押圧ブロック71が切欠部に入り込んで的確に基板Wを押動することができない。そこで、切欠部の存在を考慮して以下のように押圧ブロック71を構成している。ここでは、基板Wの周縁部にノッチNTが形成されている場合について説明する。
図5は、基板のノッチと押圧ブロック71の形状との関係を説明する図である。基板Wは略円盤形状を有するとともに、周縁部にノッチNTが形成されてなるものである。図5に示すように、押圧ブロック71の横断面形状である円の直径Dは、基板Wの円周がノッチNTによって切り取られる弧の長さLよりも十分に大きくなるように構成されている。したがって、押圧ブロック71と対向する基板Wの端面位置にノッチNTが存在する場合でも、ノッチNTに押圧ブロック71が入り込むのを防止して基板Wの位置ずれを抑制することができる。
図2に戻って説明を続ける。ブロック移動機構73は、本発明の「駆動手段」として、ロッド72(および検出センサ74)を駆動させることで、当接部位71a(押圧ブロック71の側面)をスピンベース3の回転中心A0から水平方向に基板Wの半径に対応して定められた距離Rだけ離れた既定位置P1(図2の破線位置)と、基板Wから側方に離間した離間位置P2(図2の実線位置)とに位置決めするように構成されている。
なお、ブロック移動機構73を駆動させて押圧ブロック71により基板Wの位置補正を行う際には、後述する雰囲気遮断板9は押圧ブロック71と干渉しないようにスピンベース3から上方に十分に離れた位置に退避している。一方で、雰囲気遮断板9をスピンベース3と近接対向させて基板Wに対して洗浄等の所定の処理を行う際には、押圧ブロック71はスピンベース3から側方に十分に離れた位置に退避している。
ここで、既定位置P1として、例えばスピンベース3の回転中心A0から水平方向に基板Wの半径に位置決め目標精度の正の許容値を加えた距離Rだけ離れた位置に、押圧ブロック71の当接部位71aがブロック移動機構73によって位置決めされる。例えば、基板Wの直径が300mm、位置決め目標精度を+0.05/−0.05mmとした場合には、既定位置P1として、スピンベース3の回転中心A0から150.05mmだけ離れた位置に当接部位71aが移動される。なお、既定位置P1として、そのまま回転中心A0から水平方向に基板Wの半径だけ離れた位置としてもよい。
検出センサ74は、基板Wの側方に配置され、スピンベース3を回転させることでスピンベース3上に支持された基板Wの端面位置を検知することで検出センサ74から基板Wの端面までの距離を検出する。ここで、検出センサ74とスピンベース3の回転中心A0との間の相対距離は一定であるので、基板中心W0がスピンベース3の回転中心A0から偏心している場合には、検出センサ74から基板Wの端面までの距離が基板回転に伴って変動する。このため、基板Wを回転させながら検出センサ74が基板Wの端面までの距離を検出することで、回転中心A0から最も離れた端面位置(以下「偏心位置」という)を知ることができる。
なお、検出センサ74には例えば投光部と受光部とを備え、反射光の位置から三角測量法により距離を測定する光学式距離センサ、あるいは測定対象物との間の容量を検出することにより距離(または距離の変位量)を測定する静電容量式の近接覚センサなどを用いることができる。このように、この実施形態では、検出センサ74が本発明の「検出手段」として機能している。
図1に戻って基板処理装置の構成について説明を続ける。この基板処理装置は、スピンベース3に対向して配置され、基板表面Wf(上面)側の雰囲気を遮断するための雰囲気遮断板9と、該雰囲気遮断板9と基板表面Wfとの間に形成される空間に窒素ガス等の不活性ガスを供給するガス供給ユニット21を備えている。そして、ガス供給ユニット21から基板表面Wfに向けて雰囲気遮断板9と基板表面Wfとの間に形成される空間に窒素ガスを供給することによって、基板Wを複数の支持ピン5および複数の支持ピン6の少なくとも一方に押圧させて基板Wをスピンベース3に保持させることが可能となっている。
この雰囲気遮断板9は、中空を有する筒状の支持軸11の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この支持軸11には、遮断板駆動機構15が連結されており、遮断板駆動機構15のモータを駆動することにより支持軸11とともに雰囲気遮断板9が回転中心A0回りに回転されるように構成されている。また、遮断板駆動機構15の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで雰囲気遮断板9をスピンベース3に近接させたり、逆に上方に離間させることが可能となっている。
図6は雰囲気遮断板9の底面図である。この雰囲気遮断板9が基板表面Wfと対向する円形の面の平面サイズは基板Wの平面サイズより若干大きく、その中心部に開口を有している。また、雰囲気遮断板9の周縁部には雰囲気遮断板9を上下方向(鉛直軸方向)に貫通する貫通孔9eが1個形成されており、後述するノズル8が挿入可能となっている。この貫通孔9eはスピンベース3に保持される基板表面Wfの周縁部TR(図1)に対向する位置に形成されているため、ノズル8を貫通孔9eに挿入させることでノズル8を基板表面Wfの周縁部TRに対向して配置させることができる。なお、貫通孔9eの孔径は、ノズル8が挿入可能な範囲で必要最小限の大きさで形成される。これは、必要以上に貫通孔9eの孔径を大きくすることで、貫通孔9eに起因する処理液の跳ね返り等の不具合を防止するためである。
雰囲気遮断板9はスピンベース3の上方に配置されて、その下面(底面)が基板表面Wfと対向する対向面9aとなっている。対向面9aには複数のガス噴出口9b、90bが開口している。ここで、ガス噴出口9bはスピンベース3に設けられた支持ピン6に対応する位置に、詳しくは支持ピン6の回転軌跡上に回転中心A0を中心とする円周に沿って等間隔に配列されている。また、ガス噴出口90bは、貫通孔9eに対して雰囲気遮断板9の中心(回転中心A0)寄りに、貫通孔9eを取り囲むように配置されている。なお、これらのガス噴出口9b、90bは複数の開口にすることに限らず、例えば、複数のガス噴出口9b(または90b)のそれぞれを繋ぎ合わせて単一の開口としてもよい。さらに、複数のガス噴出口9b、90bの全てを繋ぎ合わせて全周にわたってリング状の開口としてもよい。
図1に戻って説明を続ける。これらのガス噴出口9b、90bはそれぞれに、雰囲気遮断板9の内部に形成されたガス流通空間9c、90cに連通している。このガス流通空間9c、90cに窒素ガスを供給するために、ガス流通空間9c、90cはガス供給ユニット21に接続されている。このため、ガス供給ユニット21からガス流通空間9c、90cに窒素ガスが供給されると、複数のガス噴出口9b、90bから基板表面Wfに向けて窒素ガスが噴出される。また、複数のガス噴出口9b、90bは支持ピン6の回転軌跡上に配置されるように雰囲気遮断板9の対向面9aに設けられており、ガス噴出口9bは基板表面Wf側へ向けて略鉛直方向に窒素ガスを噴出するように形成される一方、ガス噴出口90bは基板表面Wf側へ向けて下向きかつ径方向外向きに噴出するように形成されている。そして、これらのガス噴出口9b、90bの各々から均一に窒素ガスが噴出されることで、基板Wはスピンベース3に上方に向けて突出して設けられた各支持ピン6に均等に押圧される。
次に、ノズル8の構成および動作について説明する。このノズル8は貫通孔9eの形状に合わせて円筒形状に構成され、貫通孔9eに挿入されることで、ノズル8の先端部が基板表面Wfの周縁部TRに対向して配置される。また、ノズル8の先端部の下端面は雰囲気遮断板9の対向面9aと面一の位置まで挿入される。このため、ノズル8から基板表面Wfの周縁部TRに処理液を供給可能になっている。すなわち、ノズル8には、その内部に薬液供給管81とリンス液供給管83が配設されており、薬液供給管81が薬液供給ユニット22と接続される一方で、リンス液供給管83がリンス液供給ユニット23に接続されている。このため、制御ユニット4からの動作指令に応じて薬液供給ユニット22から薬液が圧送されると、薬液供給管81から基板表面Wfの周縁部TRに向けて薬液が吐出される一方で、リンス液供給ユニット23からリンス液が圧送されると、リンス液供給管83から基板表面Wfの周縁部TRに向けてリンス液が吐出される。
ここで、ノズル8から処理液を供給して基板表面Wfの周縁部(周縁処理領域)TRを処理する場合における、周縁処理領域TRと、雰囲気遮断板9の対向面9aに設けられたガス噴出口9b、90bから噴出される窒素ガスの供給位置との位置関係について説明する。ガス噴出口9bから基板表面Wfに向けて略鉛直方向に噴出される窒素ガスならびにガス噴出口90bから基板表面Wfに向けて下向きかつ径方向外向きに噴出される窒素ガスは、ノズル8からの処理液によって処理される周縁処理領域TRより内側の非処理領域NTRに供給される。このため、処理液が非処理領域NTRに侵入するのを防止して周縁エッチング幅を基板全周にわたって均一にして処理することができる。
また、ノズル8は1本のアーム85(図2)の先端側に固着されている。一方、アーム85の基端部には、ノズル移動機構87が連結されている。そして、制御ユニット4からの制御指令に応じてノズル移動機構87が作動することでアーム85を昇降駆動させるとともに、回転軸心P0回りに揺動駆動させることが可能となっている。これにより、ノズル8は、雰囲気遮断板9の貫通孔9eに挿入されることで基板Wと対向して基板表面Wfの周縁部TRに処理液を供給可能な供給位置P11(図1、図2の実線で示す位置)と、供給位置P11から上昇して側方に退避した退避位置P12(図1、図2の破線で示す位置)との間を移動することができる。
また、雰囲気遮断板9の貫通孔9eの内壁にはガス導入口9dが設けられており、ガス導入口9dはガス流通空間90cに接続されている。このため、ガス供給ユニット21から窒素ガスが供給されると、ガス噴出口9b、90bから基板Wの上面に向けて窒素ガスが噴出されると同時に、貫通孔9eの内部空間にも窒素ガスが導入される。したがって、ノズル8が退避位置P12に位置決めされる状態、すなわち、ノズル8が貫通孔9eに挿入されていない状態では、ガス供給ユニット21から貫通孔9eに窒素ガスが導入され、雰囲気遮断板9の上下の貫通孔9eの開口から窒素ガスが噴出される。
雰囲気遮断板9の中心の開口および支持軸11の中空部には、上部洗浄ノズル12が同軸に設けられ、その下端部のノズル口12aからスピンベース3に押圧保持された基板Wの上面の回転中心付近に処理液(薬液または純水等のリンス液)を供給できるように構成されている。この上部洗浄ノズル12は薬液供給ユニット22およびリンス液供給ユニット23と接続されており、薬液またはリンス液が選択的に供給される。
また、支持軸11の中空部の内壁面と、上部洗浄ノズル12の外壁面との間の隙間は、気体供給路13となっている。この気体供給路13はガス供給ユニット21と接続されており、基板表面Wfと雰囲気遮断板9の対向面9aとの間の空間に窒素ガスを吐出する。
これにより、基板表面Wfと雰囲気遮断板9の対向面9aとの間の空間の圧力を上昇させて基板Wを複数の支持ピン5および複数の支持ピン6の少なくとも一方に押圧させて基板Wをスピンベース3に確実に保持させるとともに、基板表面Wfの中央部を外部雰囲気から遮断させる。このように、この実施形態では、雰囲気遮断板9の対向面9a、ガス噴出口9b、90b、気体供給路13およびガス供給ユニット21が本発明の「押圧手段」として機能している。
回転軸1の中空部には、下部洗浄ノズル31が同軸に設けられ、その上端部のノズル口31aから基板裏面Wbの回転中心付近に処理液を供給できるように構成されている。この下部洗浄ノズル32は、上部洗浄ノズル12と同様に薬液供給ユニット22およびリンス液供給ユニット23と接続されており、薬液またはリンス液が選択的に供給される。
また、回転軸1の内壁面と下部洗浄ノズル31の外壁面との間の隙間は、円筒状の気体供給路33を形成している。この気体供給路33はガス供給ユニット21と接続されており、基板裏面Wbとスピンベース3の対向面との間の空間に窒素ガスを吐出する。
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図7ないし図13を参照しつつ詳述する。図7は、図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。また、図8は、図1の基板処理装置の支持ピンの状態を示す図である。この基板処理装置では、基板表面Wfにメタル層やフォトレジスト層などの薄膜が形成された基板Wが基板表面Wfを上方に向けて装置に搬入されると、基板位置補正処理が実行される(ステップS1)。より具体的には、図9のフローチャートに示す一連の処理が実行される。なお、基板Wの搬入出および基板位置補正処理を行う際には、雰囲気遮断板9および支持軸11は一体的にスピンベース3の上方に退避している。
図9は基板位置補正処理を示すフローチャートである。また、図10は、図1の基板位置補正処理の動作を説明するための図である。先ず、搬送ロボット等の搬送手段により基板Wがスピンベース3に載置されることで基板Wが複数の支持ピン5からなる第1支持ピン群に支持され、検出センサ74による基板Wの端面までの距離の検出を開始する(ステップS11)。このとき、図8(a)に示すように、複数の支持ピン6の当接部61はいずれも支持ピン5が基板Wの下面と当接する当接位置よりも低い位置に位置決めされており、基板Wは第1支持ピン群のみにより水平方向に滑動自在に支持される。つまり、支持ピン6に比較して基板Wの下面に対する摩擦係数が小さな支持ピン5のみにより基板Wが支持されることで基板Wは外力の作用により容易に水平方向に滑動可能な状態にある。なお、押圧ブロック71(ならびに検出センサ74)は、基板Wの側方の離間位置P2に配置されており、基板Wとの干渉を防止している。
そして、検出センサ74による検出動作を実行した状態で、制御ユニット4は回転駆動機構2を作動させて基板Wを回転させる(ステップS12)。このとき、基板Wは基板Wの下面と支持ピン5との間に発生する摩擦力で支持ピン5に保持されながら回転中心A0回りに回転する。ここで、スピンベース3の回転位置は回転駆動機構2に内蔵された回転位置検出計により検出され、制御ユニット4に送出される。その結果、基板Wの周方向位置と基板Wの端面までの距離について基板Wの全周を計測することで、図11に示すような計測結果を得ることができる。
図11は検出センサによる検出結果を示すグラフである。具体的には基板Wを略一周回転させた際に得られる、基板Wの周方向位置に対する検出センサ74から基板Wの端面までの距離を示すグラフである。図11に示すように、回転中心A0と基板中心W0とがずれている(偏心している)場合には、検出センサ74から基板Wの端面までの距離が変化して、当該距離が最小となる極小点PAと当該距離が最大となる極大点PBとが検出される。ここで、図10(a)に示すように、極小点PAは回転中心A0から最も離れた端面位置(偏心位置)、すなわち回転中心A0から基板中心W0の方向(偏心方向)に伸びる仮想線PLを想定した場合に該仮想線PLと基板Wの外径とが交わる位置に相当する。そして、制御ユニット4は、回転位置検出計から送出される信号と検出センサ74からの検出信号に基づいて偏心位置PA(回転方向の位置)を算出する(ステップS13)。
ここで、制御ユニット4は、極小点(偏心位置)PAと極大点PBとの間の距離が位置決め目標精度TAの範囲内にあるか否かを判断して(ステップS14)、目標精度TAの範囲内にある場合(ステップS14でYES)には基板Wの位置補正をすることなく、そのまま処理を終了する。一方、目標精度TAの範囲内にない場合(ステップS14でNO)には基板Wの位置補正を実行する。
基板Wの位置補正を実行する場合(ステップS14でNO)、制御ユニット4は偏心位置PAが押圧ブロック71に対向する位置(図10(b)の実線で示す基板Wの位置)にくるように基板Wを回転させる。そして、該対向位置で基板Wの回転を停止させて位置決めする(ステップS15)。
次に、制御ユニット4は、ブロック移動機構73の作動により押圧ブロック71を駆動させて当接部位71a(押圧ブロック71の側面)を回転中心A0の方向に既定位置P1(図10(b)の破線で示す位置)まで押動させる(ステップS16)。このとき基板Wは支持ピン5に滑動自在に支持されているので、押圧ブロック71が基板Wの下面と支持ピン5との間に発生する摩擦力よりも大きな力で基板Wを押圧することで、基板Wが押圧ブロック71に当接しつつ支持ピン5上を水平方向に滑動する。その結果、基板Wが押圧ブロック71に押動されて偏心位置PAが既定位置P1に合わされる。ここでは、既定位置P1として回転中心A0から水平方向に基板Wの半径に目標精度TAの正の許容値を加えた距離Rだけ離れた位置としている。したがって、偏心位置PAを既定位置P1に一致させることで回転中心A0から基板中心W0までの距離が目標精度TA内となるように基板Wの位置が補正される。
こうして、基板Wの位置補正が完了すると、制御ユニット4はブロック移動機構73を駆動させて押圧ブロック71を基板Wから側方に離間した離間位置P2に退避させる(ステップS17)。このように基板位置補正処理が完了すると、図8(b)に示すように、制御ユニット4は昇降駆動部63を駆動させて複数の支持ピン6の各当接部61を支持ピン5が基板Wの下面と当接する当接位置よりも高い位置に位置決めする。これによって、支持ピン5の当接部52は基板Wの下面から離間して基板Wは複数の支持ピン6からなる第2支持ピン群のみにより支持される(ステップS2)。つまり、基板Wの下面に対する摩擦係数が比較的小さな支持ピン5による基板支持から摩擦係数が比較的大きな支持ピン6による基板支持に切り換えられる。その結果、基板Wの水平方向の滑動が抑制され、基板Wがスピンベース3に安定に保持される。
そして、複数の支持ピン6により支持された基板Wに対してベベルエッチング処理(エッチング工程+リンス工程+乾燥工程)および裏面洗浄処理とが同時に実行される(ステップS3)。より具体的には、図12のフローチャートに示す一連の処理が実行される。
図12はベベルエッチング処理および裏面洗浄処理の動作を示すフローチャートである。また、図13は図1の基板処理装置のノズル8の状態を示す図である。先ず、制御ユニット4が遮断板駆動機構15のアクチュエータを下降駆動させることで雰囲気遮断板9および支持軸11を一体的に降下させて雰囲気遮断板9を基板Wに近接配置させる(ステップS31)。これにより、基板表面Wf(デバイス形成面)は雰囲気遮断板9の対向面9aによって、ごく近接した状態で塞がれることになり、基板表面Wfが基板周囲の外部雰囲気から確実に遮断される。
そして、制御ユニット4はガス供給ユニット21から窒素ガスを雰囲気遮断板9の対向面9aに設けられた複数のガス噴出口9b、90bから均等に噴出させることで、基板Wは支持ピン6に押圧され、スピンベース3に水平に保持される(ステップS32)。また、ガス噴出口9b、90bから吐出される窒素ガスは周縁処理領域TRより内側の非処理領域NTRに供給される。このとき、基板表面Wfと雰囲気遮断板9の対向面9aとの間の空間に気体供給路13からも窒素ガスを供給することで該空間を昇圧するのが望ましい。これにより、基板Wを支持ピン6に押圧してスピンベース3に確実に保持させることができる。
次に、制御ユニット4はノズル移動機構87を作動させることで、図13(a)に示すようにノズル8を雰囲気遮断板9の貫通孔9eに挿入させて供給位置P11に位置決めする(ステップS33)。それに続いて、制御ユニット4は雰囲気遮断板9を停止させたままで回転駆動機構2を駆動してスピンベース3と一体に基板Wを回転させる(ステップS34)。このとき、支持ピン6に押圧された基板Wは支持ピン6と基板Wとの間に発生する摩擦力で支持ピン6に支持されながら、スピンベース3とともに回転することとなる。
続いて、ノズル8から薬液を基板表面Wfの周縁部TRに供給する(ステップS35)。このとき、基板中心W0と回転中心A0とは位置合わせされているので、回転する基板Wの端面とノズル8との間の相対距離は一定となっている。また、ガス噴出口9b、90bから吐出される窒素ガスは周縁処理領域TRより内側の非処理領域NTRに供給されているので薬液が非処理領域NTRに侵入することがない。その結果、薬液は基板表面Wfの周縁部TRの全周にわたって基板Wの周端面から所定幅に均一に供給され、周縁エッチング幅を均一にして薬液処理が行われる。
基板表面Wfの周縁部TRへの薬液供給後、制御ユニット4は薬液供給ユニット22からの薬液を下部洗浄ノズル31のノズル口31aから基板裏面Wb(下面)の中心部に向けて供給する(ステップS36)。これにより、基板裏面Wbの中心部に供給された薬液は、基板Wの回転に伴う遠心力によって裏面全体に拡がり、基板Wの裏面全面に対する洗浄処理が行われる。ここで、図8(c)に示すように、薬液処理中に複数の支持ピン6の各々を基板Wの下面から少なくとも1回以上、離間させることで支持ピン6と基板Wの当接部分にも薬液を回り込ませて当該部分を処理することができる。この場合、例えば、複数の支持ピン6を順に1個ずつ離間させるようにしてもよいし、複数の支持ピン6からなる第2支持ピン群を2つのグループに分けて、2つのグループによって交互に支持させるようにしてもよい。具体的には、一方のグループのみによって支持した状態から両方のグループによって支持した状態を経て他方のグループのみによって支持させるようにしてもよい。このように基板Wを支持することでスピンベース3上に固設された支持ピン5と基板裏面Wbとが接触することがない。これにより、未処理部分をなくして基板Wの裏面全体を良好に処理することができる。
ここで、裏面処理は基板表面Wfの周縁部TRへの薬液処理後に限らず、基板表面Wfの周縁部TRに対する薬液処理中に、または基板表面Wfの周縁部TRに対する薬液処理のタイミングと一部が重複するように行うようにしてもよい。こうして、薬液処理を所定時間行った後、基板Wの回転を継続しつつ、制御ユニット4は薬液供給ユニット22からの薬液の供給を停止して薬液を振り切って基板外に排液する(ステップS37)。
このとき、ノズル8は雰囲気遮断板9の貫通孔9eに挿入されているため、薬液が飛散してノズル8に向けて跳ね返ってくるような場合でも薬液は雰囲気遮断板9の対向面9aに遮られ、ノズル8の周囲(側面)に薬液が付着するようなことはない。このため、ノズル移動時においてノズル8から薬液が落ちて基板Wあるいは基板周辺部材に付着して悪影響を及ぼすことが防止される。したがって、ノズル8の洗浄も不要となり、装置のスループットの向上を図ることができる。
また、基板表面Wfの周縁部TRおよび基板裏面Wbに供給された薬液は基板Wの径方向外側に飛散するが、この実施形態では基板Wの周縁部を保持するチャックピン等の保持部材がないことから、基板Wの径方向外側に向かう薬液が基板表面Wfの中央部に跳ね返ってくることがない。また、基板Wの端面付近の気流を乱す要因がないことからミスト状の薬液の基板表面側への巻き込みが軽減される。このため、基板表面Wfの非処理領域NTRに薬液が跳ね返って、基板表面Wfの中央部(非処理部)が腐食されるのを防止することができる。また、ミスト状の薬液の巻き込みを防止することで基板Wへのパーティクル付着を抑制することができる。
こうして、薬液の液切りが完了すると、制御ユニット4はノズル8からリンス液(純水、DIW等)を基板表面Wfの周縁部TRに供給する(ステップS38)。これにより、基板表面Wfの周縁部TRに付着している薬液がリンス液で洗い落とされる。また、制御ユニット4は基板裏面Wbに対しても、基板表面Wfの周縁部TRに対するリンス処理後に、または基板表面Wfの周縁部TRに対するリンス処理中に、または基板表面Wfの周縁部TRに対するリンス処理のタイミングと一部が重複するようにリンス処理を行う(ステップS39)。そして、リンス処理を所定時間行った後、制御ユニット4はリンス液の供給を停止してリンス液を振り切って基板外に排液する(ステップS40)。
次に、制御ユニット4はノズル移動機構87を作動させることで、図13(b)に示すようにノズル8を貫通孔9eから抜き出して雰囲気遮断板9から離れた退避位置P12に位置決めする(ステップS41)。そして、基板Wを高速回転させることで基板Wを乾燥させる(ステップS42)。これにより、基板Wに付着する液成分が遠心力で振り切られる。このとき、遮断板駆動機構15のモータを駆動させることにより支持軸11とともに雰囲気遮断板9を鉛直軸回りに基板Wと同じ回転方向に回転させることで、雰囲気遮断板9に付着している処理液を振り切りスピンドライを効果的に行うことができる。また、このように基板Wとともに雰囲気遮断板9を回転させることで基板Wと雰囲気遮断板9との間に回転に伴う余分な気流が発生するのを防止することができる。この乾燥処理の間、制御ユニット4はガス供給ユニット21から窒素ガスを基板Wの下面とスピンベース3の対向面との間の空間に導入するとともに、基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間の空間に導入する。その結果、基板Wを取り囲む周囲の空間は速やかに窒素ガスによって置換されるので、空間内に残留する薬液雰囲気によって基板Wが汚染されることがない。また、不所望な酸化膜が基板Wの上下面に成長することがない。
また、ノズル8が退避位置P12に位置決めされ、ノズル8が貫通孔9eから抜き出されると、ガス導入口9dから貫通孔9eに導入される窒素ガスが雰囲気遮断板9の上下の貫通孔9eの開口から勢いよく噴出する(図13(b))。このため、ノズル8が貫通孔9eから抜き出された状態であっても、リンス液が貫通孔9eに入り込み基板Wに向けて跳ね返ることがない。したがって、貫通孔9eに起因する跳ね返りが抑制され、基板表面Wfの中央部(非処理領域NTR)を腐食させることがない。
乾燥処理が終了した後、制御ユニット4は回転駆動機構2の駆動を停止させて基板Wの回転を停止させるとともに、遮断板駆動機構15のモータを停止させて雰囲気遮断板9の回転を停止させる。そして、ガス供給ユニット21からのガス供給を停止することで、基板Wの押圧支持を解除する(ステップS43)。その後、雰囲気遮断板9が上方へ移動させられ、搬送ロボットによって処理済の基板Wが搬出される。なお、基板Wの搬出の際、図8(d)のように、複数の支持ピン6からなる第2支持ピン群により基板Wを支持した状態で基板Wを搬送ロボットに受渡してもよいし、基板Wを複数の支持ピン5からなる第1支持ピン群に移して、第1支持ピン群により基板Wを支持した状態で基板Wを搬送ロボットに受渡してもよい。これにより、一連の薬液処理およびリンス処理の動作が終了する。
以上のように、この実施形態によれば、基板Wを支持ピン5,6との間で発生する摩擦力で保持することで、基板Wの端面に当接して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材を不要とすることができる。このため、基板保持に起因する基板Wへの悪影響を防止することができる。具体的には、基板表面Wfの周縁部TRに供給された薬液が保持部材に当たって跳ね返り基板表面Wfの中央部(非処理部)を腐食させることを防止することができる。また、基板Wの端面付近の気流を乱す要因がないことからミスト状の薬液の基板表面側への巻き込みを軽減して、基板表面Wfの中央部への薬液の付着を効果的に防止することができる。
また、この実施形態によれば、基板Wは支持ピン5に滑動自在に支持されており、基板Wの下面と支持ピン5との間に発生する摩擦力に比べて大きな水平方向の力を受けることで基板Wは水平方向に移動可能となっている。このため、押圧ブロック71により上記摩擦力よりも大きな力を基板Wに対して水平方向に作用させることで、基板Wをスピンベース3の回転中心A0側に滑動させて基板Wの水平方向の位置を補正することができる。したがって、基板Wの端面に当接するチャックピン等の保持部材がなくても、基板中心W0と回転中心A0とを位置合わせすることができ、精度良く位置決めされた状態で基板Wを処理することができる。
また、この実施形態によれば、複数の支持ピン5からなる第1支持ピン群と、基板Wの下面に対する摩擦係数が支持ピン5に比べて大きな複数の支持ピン6からなる第2支持ピン群とを備え、位置補正ユニット7により基板Wの水平方向の位置を補正する際には第1支持ピン群のみを基板Wの下面に当接させる一方で、基板Wに対してエッチング等の所定の処理を施す際には第2支持ピン群のみを基板Wの下面に当接させている。このため、基板Wの位置を補正する際に、基板Wの下面に対する摩擦係数が比較的小さな第1支持ピン群のみが基板Wの下面に当接することで、基板Wをなめらかに滑動させて基板の位置決めを容易にして、比較的短時間で位置決めを完了することができる。また、基板Wの下面が損傷したり、パーティクルが発生するのを防止することができる。一方、基板Wに対してエッチング等の所定の処理を施す際には、基板Wの下面に対する摩擦係数が比較的大きな第2支持ピン群が基板Wの下面に当接することで、安定して基板Wを回転保持させることができ、処理中の基板Wの位置ずれを確実に防止することができる。
さらに、この実施形態によれば、基板Wに対してエッチング等の所定の処理を施す際には、基板表面Wf(上面)に窒素ガスを供給することによって基板Wを支持ピン6に押圧させている。このため、基板裏面Wb(下面)と支持ピン6との間に発生する摩擦力を増大させて基板Wをより安定に回転保持させることができる。
また、この実施形態によれば、基板Wを支持ピン5により滑動自在に支持しながらも基板Wの下面と支持ピン5との間に発生する摩擦力により基板Wを保持して回転させている。そして、基板Wが回転する間にスピンベース3の回転中心A0から最も離れた基板Wの端面位置(偏心位置)PAを検出した後、偏心位置PAを押圧ブロック71により既定位置P1まで押動している。これにより、基板中心W0が回転中心A0から所定の範囲内に位置決めされる。このように、支持ピン5により基板Wを回転保持しながらも滑動自在に支持しているので、押圧ブロック71が基板Wを押動することにより、簡素な構成で、精度良く位置決めすることができる。
<第2実施形態>
図14は、この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。詳しくは、基板処理装置に装備された位置補正ユニットの構成を示す部分構成図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、位置補正ユニット7において検出センサ74を設けることなく、基板Wの位置補正をしている点であり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同様であるため、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
図15は、図14の位置補正ユニットの動作を示すフローチャートである。また、図16は、図14の位置補正ユニットの動作を説明するための図である。この実施形態では、検出センサ74を設けていないため、スピンベース3の回転中心A0から最も離れた基板Wの端面位置(偏心位置)を検出することができない。そこで、次のようにして基板Wの位置を補正している。
先ず、押圧ブロック71を基板Wの側方の離間位置P2に配置した状態(図16(a)の破線位置)で搬送ロボット等の搬送手段により基板Wがスピンベース3に載置されると、制御ユニット4は回転駆動機構2を作動させて基板Wを回転させる(ステップS21)。このとき、基板Wは基板Wの下面と支持ピン5との間に発生する摩擦力で支持ピン5に保持されながら回転中心A0回りに回転する。
次に、制御ユニット4はブロック移動機構73の作動により押圧ブロック71を駆動させて、当接部位71a(押圧ブロック71の側面)を既定位置P1(図16(a)の実線位置)に位置決めする(ステップS22)。ここでは、既定位置P1として回転中心A0から水平方向に基板Wの半径に目標精度の正の許容値を加えた距離Rだけ離れた位置としている。このとき、回転中心A0に対して基板中心W0が押圧ブロック71側に存在している場合には、押圧ブロック71と基板Wが当接することとなるので、基板Wへの衝撃を抑制するために十分な低速度で押圧ブロック71を駆動させることに留意する。
そうすると、基板中心W0が回転中心A0から偏心している場合には、回転する基板Wは固定配置された押圧ブロック71が障害となって基板Wの端面が押圧ブロック71の当接部位71a(押圧ブロック71の側面)に擦り付けられながら基板Wの位置補正がなされる。具体的には、図16(b)に示すように、基板Wの端面のうち既定位置P1よりも径方向外側の端面位置WE(図16(b)では、実線で示される基板Wの端面のうち太線で示す部分)が押圧ブロック71に当接することで、基板Wが支持ピン5に対して相対移動して基板Wがスピンベース3の回転中心A0側に押し込まれる。こうして、基板Wの回転とともに基板Wの既定位置P1よりも径方向外側の端面位置WEが押圧ブロック71に当接して回転中心A0側に押し込まれる結果、徐々に基板位置が回転中心A0側に向けて矯正されていく(ステップS23)。その結果、所定時間経過後には回転中心A0から基板中心W0までの距離が目標精度内となるように基板Wの位置が補正される。
こうして、基板Wの位置補正が完了すると、制御ユニット4は基板Wの回転を停止させるとともに(ステップS24)、ブロック移動機構73を駆動させて押圧ブロック71を基板Wから側方に離間した離間位置P2に退避させる(ステップS25)。
このように、基板位置補正処理が完了すると第1実施形態と同様に、制御ユニット4は昇降駆動部63を駆動させて複数の支持ピン5からなる第1支持ピン群による基板支持から複数の支持ピン6からなる第2支持ピン群による基板支持に切り換える。そして、複数の支持ピン6により支持された基板Wに対してベベルエッチング処理(エッチング工程+リンス工程+乾燥工程)および裏面洗浄処理とを実行する。
以上のように、この実施形態によれば、第1実施形態と同様にして基板Wを支持ピン5により滑動自在に支持しながらも基板Wの下面と支持ピン5との間に発生する摩擦力により基板Wを保持して回転させている。そして、押圧ブロック71を配置して押圧ブロック71が基板Wの端面と当接する当接部位71aを既定位置P1に位置決めすることで、回転する基板Wの端面のうち既定位置P1よりも径方向外側の端面位置WEを押圧ブロック71に当接させつつ押し込むことで、基板Wの位置を回転中心A0側に向けて矯正している。これにより、基板中心W0が回転中心A0から所定の範囲内に位置決めされる。このように、支持ピン5により基板Wを回転保持しながらも滑動自在に支持しているので、第1実施形態と同様な作用効果が得られる。すなわち、簡素な構成で、精度良く位置決めすることができる。加えて、この構成によれば、検出センサ74などの検出手段を必要としないのでさらに装置構成を簡素化することができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、基板表面Wfの周縁部(周縁処理領域)TRにノズル8を対向配置させてノズル8からの薬液供給により周縁処理領域TRをエッチング処理しているが、回転する基板Wの裏面Wbに供給した薬液を基板Wの端面を介して基板表面Wfの周縁部TRに回り込ませて周縁処理領域TRをエッチング処理させてもよい。このように処理する場合でも、基板位置補正処理により基板中心W0と回転中心A0とを位置合わせすることによって、周縁処理領域TRへの薬液の回り込み量を基板全周にわたって正確にコントロールして周縁エッチング幅を均一にして処理することができる。また、基板Wの端面に当接して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材がないことから基板表面Wfの周縁部TRのうち保持部材によって保持されている部分と、そうでない部分とで薬液が回り込んでくる量が異なるといった不具合が発生することがなく、処理むらの発生を効果的に防止することができる。
また、上記実施形態では、基板位置補正処理の際に、押圧ブロック71をロッド72に固定していたが、押圧ブロック71に代えてスピンベース3の回転軸方向に伸びる回動軸回りに回動自在なローラをロッド72に軸支させるようにしてもよい。このように構成することで上記した第1実施形態では、基板周囲のスペース等の制約で押圧ブロック71をスピンベース3の回転中心A0の方向に沿って押動できない場合であっても、基板Wの端面の動きに合わせてローラを従動させることにより、基板Wを回転中心A0の方向に向けて移動させて基板中心W0を回転中心A0から所定範囲内に位置決めすることができる。また、上記した第2実施形態では、基板Wの回転に合わせて基板Wの端面にローラを従動させることにより、基板Wの端面とローラとの間に発生する摩擦を低減して、基板Wが意図しない方向に移動するのを防止することができる。その結果、さらに精度良く基板中心W0と回転中心A0とを合わせることができる。
さらに、上記第2実施形態において、ローラを自発的に回転させるようにしてもよい。図17は、第2実施形態にかかる基板位置補正装置の変形形態を示す側面図である。この変形形態においては、図17に示すようにローラ710を回転させる回転駆動部75を設けて、回転駆動部75によりローラ710を基板Wの回転方向と反対方向(時計回り)に、しかも基板Wの周速と同一となるように回転させている。このように構成することで、基板Wの端面とローラ710との間に速度差が発生するのを防止して、基板Wの端面にローラ710が当接する際の衝撃力を緩和することができる。また、このようにローラ710を自発的に回転させることで、ローラ710が従動しにくい場合、例えばローラ710の周囲側面710aにOリングを備え付けている場合などでも基板Wの端面とローラ710との間に発生する摩擦を低減することができ、精度良く基板中心W0とスピンベース3の回転中心A0とを合わせることができる。
また、ローラ710の横断面形状である円の直径についても、押圧ブロック71と同様にローラ710がノッチNT等の切欠部に入り込むのを防止するため、基板Wの円周がノッチNTによって切り取られる弧の長さLよりも十分に大きくなるように構成するのが望ましい。
また、上記実施形態では押圧ブロック71(またはローラ710)の側面を基板Wの端面に点接触させるようにして基板Wの位置補正を行っているが、押圧ブロック71と基板Wの端面の接触形態はこれに限定されない。すなわち、押圧ブロック71の横断面を円形状とすることなく、他の形状として点接触させてもよい。あるいは押圧ブロック71と基板Wの端面とを点接触でなく線接触させるようにしてもよい。
ここで、押圧ブロックと基板Wの端面とを線接触させる場合には、図18に示すように、押圧ブロック77はノッチNTによって基板Wの円周が切り取られる弧の長さLよりも大きな幅Bを有する接触面77aを備えるように構成するのが望ましい。このように構成することで、押圧ブロック77がノッチNTに入り込むのを防止して安定に基板Wを位置決めすることができる。
また、上記第2実施形態では基板Wの回転開始後に押圧ブロック71を駆動させて当接部位71a(押圧ブロック71の側面)を既定位置P1に位置決めしているが、これに限らず基板Wの回転開始前に押圧ブロック71を駆動させて当接部位71aを既定位置P1に位置決めするようにしてもよい。
また、上記第2実施形態では回転する基板Wに対して押圧ブロック71を所定の時間連続して当接させて基板Wの位置を矯正させているが、押圧ブロック71を回転する基板の端面に対して離当接させながら基板の位置を矯正させるようにしてもよい。このように構成することで、基板Wと押圧ブロック71(ローラ710または押圧ブロック77)との間の摩擦を低減することができ、基板Wが磨耗や損傷するのを防止することができる。この場合、制御ユニット4は、基板Wの周面全体に押圧ブロック71が当接するように離当接の周期を制御することが望ましい。
さらに、上記第2実施形態において、基板Wの周縁部に形成されたノッチNTの影響を完全に排除するために、ノッチNTを検出するセンサを設けてもよい。このように構成することで、センサがノッチNTを検知したときに押圧ブロック71(ローラ710または押圧ブロック77)を基板Wの端面に当接可能な位置(既定位置P1)から一時的に離間させることができる。これにより、ノッチNTと押圧ブロック71との接触が完全に排除され、基板Wが意図しない方向に位置ずれするのを防止することができる。