JP4221828B2 - 磁気記録媒体用高弾性率フィルムロールおよび磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
磁気記録媒体用高弾性率フィルムロールおよび磁気記録媒体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体用フィルムロール、特にデジタルビデオカセットテープ用、データストレージテープ用等のデジタルデータを大容量に記録する磁気記録媒体を高生産性で製造するために好適な磁気記録媒体用高弾性率フィルムロール、該ロールを用いた磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在ポータブルな業務用VTRとして、6.35mm幅のテープを用いたDVCPROシステムが好評を博している。本テープは6〜7μm厚みの長手方向、幅方向共に強度が高いポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等、(例えば特開平5−185507号公報)のポリエステルフィルムを支持体として用い、その上に強磁性粉末を結合剤に分散させてなる磁性層が形成されて作成されている。
【0003】
更に記録時間の長時間化を図るために、テープの薄手化をはかる必要があるが、単純に支持体フィルムを薄膜化すると、フィルムの剛性不足による磁気ヘッドとの接触力不足、走行時のテープの折れ、磁気記録媒体製造時の工程通過性の問題等が発生した。そのため厚さが薄く、高弾性率のベースフィルムが必要であり、デジタルデータストレージ(DDS−2,3)テープに使用されている芳香族ポリアミドフィルムが注目されている(例えば特開平10−162349号公報、特開平10−114038号公報)。
【0004】
しかしながら、特開平10−162349号公報、特開平10−114038号公報に示されるような芳香族ポリアミドフィルムを用いてDVC−PROの長時間テープを作成した場合、強度不良に伴う問題はないものの、DVC−PROテープを生産性良く作ることができなかった。すなわち厚み6μm以下のポリアミドフィルムロールを用いてフィルム上に強磁性粉末を結合剤に分散させてなる磁性層を形成し、該磁性層をカレンダリング工程で鏡面化する際に、フィルムが破断する問題が多発することが明らかになった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、長時間録画可能なDVC−PROテープを生産性良く作成することを可能とするベースフィルムロールを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、円筒状コアーに巻かれたフィルムロールであり、当該フィルムの厚さが6μm以下、片側表面AのRa値が1〜5nm、長手方向、幅方向のヤング率が10000MPa以上であり、フィルム幅が300mm以上、長さが2000m以上、ロールの左端の直径と右端の直径の差H(μm)が、フィルム長さL(m)に対し、H≦0.05×Lを満足し、フィルムの両端面のエッジの直線度が500μm以上であることを特徴とする磁気記録媒体用高弾性率フィルムロールである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のフィルムロールを構成するフィルムは、厚さが6μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは4.5μm以下、2.0μm以上である。厚さが6μmを上回ると、録画時間が80分以上のDVC−PROテープを作ることができない。
【0008】
フィルムを形成する樹脂は、分子配向により高弾性率フィルムとなる芳香族ポリアミドまたは芳香族ポリイミドであることが好ましい。
【0009】
芳香族ポリアミドとしては、ベンゼン環等の芳香族炭化水素基がアミド結合で連結されたポリアミドであれば良く、パラフェニレンジアミンとテレフタル酸クロライドを溶液重合して得られるポリパラフェニレンテレフタルアミド、90モル%に相当する2−クロルパラフェニレンジアミンと、10モル%に相当する4、4−ジアミノジフェニルエ−テル、100モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロリドより溶液重合して得られるポリ2−クロルパラフェニレン4、4−ジアミノジフェニルエ−テル2−クロルテレフタルアミド、ポリベンズアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド等が用いられる。
【0010】
芳香族ポリイミドとしては、ビフェニルテトラカルボン酸無水物と4,4’−ジアミノフェニルエーテルの重縮合体等が用いられる。
【0011】
芳香環上の水素原子の一部が、ハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、炭素数1〜3のアルキル基(特にメチル基)、炭素数1〜3のアルコキシ基などの置換基で置換されていても良い。重合体を構成するアミド結合中の水素、が他の置換基によって置換されていても良い。
【0012】
本発明の芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドには、フィルムの物性を損なわない程度に、滑剤、酸化防止剤、その他の添加剤等や他のポリマがブレンドされていてもよい。
【0013】
本発明のフィルムの片側表面AのRa値は、1〜5nm、より好ましくは2〜4nmである。Ra値が1nm未満であると、表面Aの外側に形成される磁性薄膜が平滑になりすぎて、ビデオテープになった後のデジタルビデオテープレコーダー内の記録、再生時に、ビデオヘッドにより磁性薄膜が磨耗してしまい好ましくない。Ra値が5nmを超えると、表面Aの外側に形成される磁性薄膜が粗面になりすぎて、ビデオテープの出力特性が低下し好ましくない。
【0014】
本発明のフィルムの長手方向、幅方向のヤング率は、10000MPa以上、より好ましくは11000〜25000MPaである。長手方向のヤング率が10000MPaを下まわると、作成されるビデオテープがビデオテープレコーダー内の走行で伸びてしまい好ましくない。幅方向のヤング率が10000MPaを下まわると、作成されるビデオテープのエッジがビデオテープレコーダー内の回転磁気ヘッドにより損傷を受け易くなり好ましくない。長手方向、幅方向のヤング率が25000MPaを上回ると、作成されるビデオテープの強度が強くなりすぎ、磁気ヘッドへのヘッドタッチが大幅に強くなり、ヘッドを摩耗しがちとなりヘッド寿命が短くなる傾向となる。
【0015】
本発明のフィルムロールは、円筒状コアーに巻かれれており、フィルム幅は300mm以上、長さが2000m以上であり、ロールの左端の直径と右端の直径の差H(μm)が、フィルム長さL(m)に対し、H≦0.05×Lを満足することが必要である。Hは小さいこと、可能であればゼロであることが望ましい。
【0016】
フィルム幅は300mm以上、長さは2000m以上でないと、DVCテープを生産性良く生産せきず、製造原価が上がり好ましくない。
【0017】
ロールの左端の直径と右端の直径の差H(μm)が、フィルム長さL(m)に対し、H>0.05×Lであると、該当ロールを用いてフィルム上に強磁性粉末を結合剤に分散させてなる磁性層を形成した後、該磁性層をカレンダリング工程で鏡面化する際に、カレンダリングロールによるせん断力がフィルムの片側エッジに集中しがちになり、そのためフィルムが破断する問題が多発し好ましくない。
【0018】
フィルムの両端面のエッジの直線度(フィルム両端面がいかにきれいに真っ直ぐバリ状の欠陥がなく直線的に切れているかを表わす直線性の度合であり、一直線にきられていると見なせる距離を意味する)は長いほど好ましく、1mm以上が望ましい。500μm未満であると、該当ロールを用いてフィルム上に強磁性粉末を結合剤に分散させてなる磁性層を形成した後、該磁性層をカレンダリング工程で鏡面化する際に、カレンダリングロールによるせん断力がフィルムのエッジの切れ味が悪く直線性の悪い部分に集中し、フィルムが破断する問題が多発し好ましくない。
【0019】
本フィルムの片側表面Aとは反対側の面の片側表面BのRa値は、フィルムを製膜した後、所定の幅にスリットする際に、巻姿の良い製品を採取しやすくし、フィルムの片側表面A上に磁性薄膜を設けた後に、ロール状の巻取りにより片側表面Bの粗さが転写し、磁性薄膜層にうねり状の変形が起きるのを最小限にするために、4〜35nm、より好ましくは5〜25nmが望ましい。
【0020】
本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性粉末は公知のものを使用でき、特に限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。また、強磁性粉末を結合剤に分散させてなる磁性層の厚さは100〜600nmが好ましい。
【0021】
本発明の磁気記録媒体は、本発明の高弾性率フィルムの片側表面B上にバックコート層を設けてなるが、バックコートとしては、微粒子、潤滑剤、有機高分子による結合材からなる層を、有機溶媒を用いた溶液の塗布、乾燥により設けることが好ましい。バックコート層の厚さは0.5〜1.5μm程度である。微粒子としてはカーボンブラック、アルミナ等が、潤滑剤としてはシリコーン、フッソ化合物等が、結合材としてはポリウレタン、エポキシ樹脂等が用いられるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の磁気記録媒体は、本発明の高弾性率ベースフィルムの片側表面Aに、鉄等の強磁性メタル粉末を塗布により膜厚み100〜600nmと形成し、カレンダリングにより鏡面仕上げされてなる。本発明の高弾性率ベースフィルムの片側表面Bには、微粒子、潤滑剤、有機高分子による結合材からなる層を、有機溶媒を用いた溶液の塗布、乾燥により設けることによりバックコート層を作成する。
【0023】
なお本発明の高弾性率ベースフィルムは、片側表面Aに真空蒸着により強磁性薄膜を設け、その上にDLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)薄膜を設け、更にその上に潤滑層を設けてなる蒸着型(ME)磁気テープ用に用いても良い。
【0024】
蒸着工程においても、本発明ロールは蒸着加工性、DLC加工性が良好となり、工程でのフィルム切れが防止でき好ましい。
【0025】
次に本発明の高弾性率フィルムロールおよび磁気記録テープの製法を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
高弾性率フィルムの製造において、芳香族ポリアミドであるが、酸クロリドとジアミンから得る場合には、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶媒中で、溶液重合したり、水系媒体を使用する界面重合などで合成される。ポリマ溶液は、単量体として酸クロリドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行なわれる。これらのポリマ溶液はそのまま製膜原液として使用してもよく、あるいはポリマを一度単離してから上記の有機溶媒や、硫酸等の無機溶剤に再溶解して製膜原液を調製してもよい。
【0027】
一方、芳香族ポリイミドあるいはポリアミド酸の溶液は、次のようにして得られる。即ち、ポリアミド酸はN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを反応させて調製することができる。また芳香族ポリイミドは、前記のポリアミド酸を含有する溶液を加熱したり、ピリジンなどのイミド化剤を添加してポリイミドの粉末を得、これを再度溶媒に溶解して調製できる。製膜原液中のポリマ濃度は5〜40wt%程度が好ましい。
【0028】
規定の粗さRa値を得るためには、製膜原液中に適当な粒子を添加すれば良いが、粒子の添加方法は、粒子を予め溶媒中に十分スラリ−化した後、重合用溶媒または希釈用溶媒として使用する方法や、製膜原液を調製した後に直接添加する方法などがある。
【0029】
上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあり、いずれの方法で製膜されても差し支えないが、円筒状コアーに巻き上げたフィルムロールの左端の直径と右端の直径の差H(μm)を規定の範囲内にするためには、製膜原液をシート状に吐出する口金での厚み斑調整の高精度化が極めて重要である。
【0030】
ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
【0031】
乾湿式法で製膜する場合は、該原液を口金からドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ、薄膜が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は室温〜220℃、60分以内の範囲であり、好ましくは室温〜200℃の範囲である。乾燥温度が220℃を越えると表面に粗大突起を多く生じ、走行性に悪影響がある。またこの乾燥工程で用いられるドラム、エンドレスベルトの表面欠点頻度も同様の理由で、径が30μm以上の表面欠点頻度が0.001〜0.02個/mm2 、より好ましくは0.002〜0.015個/mm2 であることが好ましい。乾式工程を終えたフィルムは、支持体から剥離されて湿式工程に導入される。
【0032】
湿式工程では凝固および洗浄が行われ、この凝固及び洗浄過程においては、軽金属イオンの脱離が進行するのでこの過程の制御は重要であり、凝固浴組成、浴温度、滞留時間などを好ましく調整することによって本発明を達成することができる。浴温度は浴組成と密接に連関した抽出速度に関わるパラメータであり、温度が高いほど抽出が早く進行するが、通常は20℃〜90℃、好ましくは25℃〜75℃の範囲が選択できる。また、滞留時間は、上記浴組成、浴温度により好ましく決められるが、あまり短いと厚み方向に偏りを生じ、また、あまり長いと経済的に好ましくないため、厚みにもよるが、通常10秒〜10分、好ましくは30秒〜5分の範囲で選択するのが良い。
【0033】
さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれてフィルムとなる。
【0034】
以上のように形成されるフィルムは、その製膜工程中で延伸が行なわれるが、延伸倍率は面倍率で0.8〜8.0(面倍率とは、延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルムの面積で除した値で定義する。1以下はリラックスを意味する。)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1.1〜5.0である。また延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷する事がフィルムの平面性を良化させる上で有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却する事が好ましい。長手方向、幅方向のヤング率は、延伸倍率を調整することにより調整することができる。
【0035】
円筒状コアーに巻き上げたフィルムロールの左端の直径と右端の直径の差、H(μm)が、フィルム長さL(m)に対してH≦0.05×Lを満足させるためには、製膜原液をシート状に吐出する口金での厚み斑調整の高精度化が極めて重要である。口金のスリット間隙を形成する一対のリップの一方に、スリット延在方向に沿って配列された複数のスリット間隙調整用ボルトを設け、該調整用ボルトを正転あるいは逆転させ、幅方向の厚みむらを調整するが、巻き上げたフィルムを所定の幅、長さに切った後、円筒状コアーに巻き上げ、そのフィルムロールの直径の変化をダイヤルゲージを用いてロール幅方向に測定し、幅方向長さをx軸に、直径の変化をy軸にグラフ化、プロットし、プロットされた曲線よりロールの左端と右端の差より読んだHが規定の範囲に入るよう、前記厚み調整用ボルトを正転あるいは逆転させ、幅方向の厚みむらを調整することにより、ロールの左端の直径と右端の直径の差、H(μm)がフィルム長さL(m)に対し、H≦0.05×Lなる関係を満足させることができる。
【0036】
フィルムの両端面のエッジの直線度を500μm以上にするには、スリッターでフィルムを所定の幅にスリットする際に、スリット刃に欠けがないものをスリット毎に交換して用いれば良い。
【0037】
なお本発明のフィルムは、積層フィルムであってもよい。例えば2層の場合には、重合した芳香族ポリアミド溶液を二分し、それぞれ異なる粒子を添加した後、積層する。さらに3層以上の場合も同様である。これら積層の方法としては、周知の方法、たとえば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいて、その上に他の層を形成する方法などがある。
【0038】
かくして得られた高弾性率フィルムロールを用いて、表面A上に上述の強磁性粉末を結合剤に分散させてなる磁性層を塗布方式により設け、必要であれば表面B上にバックコート層を設けることにより本発明の磁気記録テープが得られる。
【0039】
本発明の磁気記録テープは、特にDVC−PROの長時間録画テープ等のデジタルビデオテープ用途に使用すると、優れた結果を得ることができ好適である。またデータストレージテープ用途に使用しても、優れた結果を得ることができ好適である。
【0040】
[特性値の測定法]
以下に、本実施例で用いた測定方法を記す。
【0041】
(1)Ra値
本発明のRa値は、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定した。セイコーインスツルメント社製の走査型プローブ顕微鏡(SPI3800シリーズ)を用い、ダイナッミクフォースモードでフィルムの表面を20μm〜30μm角の範囲で、面内方向の拡大倍率を1000〜5000倍、高さ方向の拡大倍率を100万倍程度とし、原子間力顕微鏡計測走査を行い、原子間力顕微鏡像を採取し、表面のプロファイル曲線よりJIS B 0601 Raに相当する、算術平均粗さ、Ra値を算出することにより求めた。
【0042】
(2)ヤング率
引張試験測定により得られる応力−ひずみ曲線におけるスタート点の立ち上がり勾配から、ASTM D−882−67に準じて求め、MPaで表す。サンプル幅、実効長さは10mm、100mmとした。引張速度は100mm/minとした。
【0043】
(3)ロールの左端の直径と右端の直径の差、H(μm)
巻き上げたフィルムロールの直径の変化をロールの全幅に、JIS B7503に基づくダイヤルゲージを用いて測定し、幅方向長さをx軸に、直径の変化をy軸にプロットし、プロットされた曲線よりフィルムロール両端の直径の差をH(μm)とする。
【0044】
(4)フィルムロールの両端面のエッジの直線度
巻きあがったフィルムロールの表層より両エッジ部のフィルムを約10cm切り出し、両エッジを光学顕微鏡により倍率10倍で観察する。偏光を用い、クロスニコル下で観察するのが好ましい。写真をとり、エッジのバリ状部の距離を観察する。10倍の視野で10箇所、エッジ部を観察し、バリ状部の距離を各10点程度測定し、全平均値をμmで表わし、エッジの直線度とする。直線度が大きいほどエッジの切れ味が良く好ましい。
【0045】
(5)本発明フィルムに強磁性体薄膜を設けた本発明磁気テープの特性は、市販のDVC−PROデジタルビデオテープレコーダーを用い、ドロップアウト(以下、DOという)を観測することにより評価した。作成した本DVC−PROテープを20巻無作為に選び、市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーで録画し、1分間の再生をして画面にあらわれたブロック状のモザイク個数を数え、20巻の平均値を取ることによりDOの測定をした。なおDOは常温常湿(25℃、60%RH)でテープ製造後の初期特性を調べた。そして100回繰返し走行後のDOも見た。DOは小さい値の方が良い。DOは9個/分以下が実用に耐えられ、15個/分以上が実用上問題となるレベルである。
【0046】
【実施例】
次に実施例に基づき、本発明を説明する。
【0047】
実施例1
N−メチルピロリドン(以下、NMPという)に、芳香族ジアミン成分として80モル%に相当する2−クロルパラフェニレンジアミンと、20モル%に相当する4、4’−ジアミノジフェニルエ−テルとを溶解させ、これに100モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロリドを添加し、2時間撹拌して重合を完了した。これを水酸化リチウムで中和して、ポリマ濃度10重量%、粘度3000ポイズの芳香族ポリアミド溶液を得た。この溶液に、一次粒径16nmの乾式シリカをポリマ当たり2wt%添加した。本ポリマ溶液を3μmカットのフィルタ−を通し、その後、スリット間隙を形成する一対のリップを持ち一方に一方のリップに、スリット延在方向に沿って配列された複数のスリット間隙調整用ボルトが設けられた口金を通して、径が30μm以上の表面欠点の頻度が0.006個/mm2のベルト上に流延し、180℃の熱風で2分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己保持性を得たフィルムをベルトから連続的に剥離した。次に60℃に保った3μmカットのフィルタ−を通した水/NMP比が、それぞれ1/1,2/1,5/1及び10/0の濃度比を持つ複数の水槽内へ、各々20秒、20秒、20秒、40秒フィルムを順次導入して、残存溶媒および無機塩の抽出を行ない、テンターで水分の乾燥と熱処理を行なって厚さ4.2μmの芳香族ポリアミドフィルムとした。この間にフィルム長手方向と幅方向に各々1.2倍、1.3倍延伸を行ない、280℃で1.5分間乾燥と熱処理を行なった後、20℃/秒の速度で徐冷した。このフィルムをスリッターを用いて幅600mm、長さ5000mにスリットし、Hを測定した。Hが規定の範囲に入るように、前記のスリット間隙調整用ボルトの調整を繰り返し、厚さ4.2μmの幅600mm、長さ5000mの、Hが所定の範囲の芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。なおスリットにおいて、スリット刃を事前に顕微鏡観察し、欠けがないことを確認し、スリット毎に交換した。
【0048】
本フィルムロールを用い、ベルトに接しない側のフィルム表面Aに、鉄を主体とする針状強磁性金属粉末を、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂を結合剤として、メチルエチルケトンを溶剤として塗工し乾燥させ、カレンダー処理をして厚さ500nmの磁性層を形成させた。次にカーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を500nm設け、幅6.35mmの磁気記録テープを作成した。得られたフィルム、フィルムロール及び磁気記録テープの特性を表1に示す。なお表面BのRa値は8nmであった。
【0049】
実施例2
NMPに、芳香族ジアミン成分として100モル%に相当する2−クロルパラフェニレンジアミンを溶解させ、これに100モル%に相当する3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物を添加し、重合してポリアミド酸溶液を得た。この溶液に、一時粒径16nmの乾式シリカをポリマ当たり2wt%、塩化リチウムをポリマ当たり1wt%添加した。本ポリマ溶液を3μmカットのフィルタ−を通し、その後、スリット間隙を形成する一対のリップを持ち、一方のリップに、スリット延在方向に沿って配列された複数のスリット間隙調整用ボルトが設けられた口金を通して、径が30μm以上の表面欠点の頻度が0.006個/mm2 のベルト上に流延し、150℃の熱風で自己保持性を持つまで乾燥し、ベルトから連続的に剥離した。次に420℃のテンタ−で熱処理を行なった後、20℃/秒の速度で徐冷した。延伸倍率はMD、TDともに1.8倍とし、厚さ4.2μmの芳香族ポリイミドフィルムを得た。その後は実施例1と同様にして、厚さ4.2μmの幅600mm、長さ5000mのHが所定の範囲の芳香族ポリイミドフィルムロールを得て、幅6.35mmの磁気記録テープを作成した。得られたフィルム、フィルムロール及び磁気記録テープの特性を表1に示す。なお表面BのRa値は8nmであった。
【0050】
実施例3
実施例1のベースフィルムロール製造において、スリット刃の顕微鏡による事前観察で、欠けではない数μm程度の形状変形を有すスリット刃を用いたことを除き、実施例1と同様にして、厚さ4.2μmの幅600mm、長さ5000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして、磁気記録テープを作成した。連続して10本のベースフィルムロールの加工を行ったが1本のロールではカレンダー工程においてフィルム切断が起こり磁気テープ作成の歩留まり率は90%であった。。得られたフィルム、フィルムロール及び磁気記録テープの特性を表1に示す。なお表面BのRaは8nmであった。
【0051】
比較例1
実施例1のベースフィルム製造において、乾式シリカの添加量を0.5wt%とした。その他は実施例1と同様にして、厚さ4.2μmのロール状芳香族ポリアミドフィルムを得、幅6.35mmの磁気記録テープを作成した。得られたフィルム、フィルムロール及び磁気記録テープの特性を表1に示す。なお表面BのRa値は2.5nmであった。
【0052】
比較例2
実施例1のベースフィルム製造において、乾式シリカの一次粒径を40nmとした。その他は実施例1と同様にして、厚さ4.2μmのロール状芳香族ポリアミドフィルム、フィルムロールを得、幅6.35mmの磁気記録テープを作成した。得られたフィルム及び磁気記録テープの特性を表1に示す。なお表面BのRa値は10nmであった。
【0053】
比較例3
実施例1のベースフィルム製造において、フィルム長手方向の延伸を行わなかった。その他は実施例1と同様にして、厚さ4.2μmのフィルムロールを得、幅6.35mmの磁気記録テープを作成した。得られたフィルム、フィルムロール及び磁気記録テープの特性を表1に示す。なお表面BのRaは8nmであった。
【0054】
比較例4
実施例1のベースフィルム製造において、フィルム幅方向の延伸を行わなかった。その他は実施例1と同様にして、厚さ4.2μmのフィルムロールを得、幅6.35mmの磁気記録テープを作成した。得られたフィルム、フィルムロール及び磁気記録テープの特性を表1に示す。なお表面BのRaは8nmであった。
【0055】
比較例5
実施例1のベースフィルム製造において、スリット間隙調整用ボルトの調整を繰り返さなかったことを除き、実施例1と同様にして、厚さ4.2μmの幅600mm、長さ5000mの芳香族ポリアミドフィルムロールを得た。実施例1と同様にして、カレンダリング処理を試みたが、フィルムが切断し、磁気記録テープが作成できなかった。得られたフィルム、フィルムロールの特性を表1に示す。なお表面BのRaは8nmであった。
【0056】
比較例6
実施例1のベースフィルムロール製造において、スリットの際にスリット刃を交換しなかったことを除き、実施例1と同様にして、厚さ4.2μmの幅600mm、長さ5000mの芳香族アミドフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして、磁気記録テープを作成しようと試みたが、カレンダー工程においてフィルム切断が起こり、磁気テープが作成できなかった。得られたフィルム、フィルムロールの特性を表1に示す。なお表面BのRaは8nmであった。
【0057】
比較例7
実施例1のベースフィルムロール製造において、スリットの際にスリット刃の顕微鏡による事前観察をおこなわずにスリットしたことを除き、実施例1と同様にして、厚さ4.2μmの幅600mm、長さ5000mの芳香族アミドフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして、磁気記録テープを作成した。しかしカレンダー工程においてフィルム切断が起こりがちであり、連続して10本のベースフィルムロールの加工を行ったが、5本のロールではカレンダー工程においてフィルム切断が起こり、磁気テープ製造の歩留まり率は50%であった。得られたフィルム、フィルムロール及び磁気記録テープの特性を表1に示す。なお表面BのRaは5nmであった。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】
表1の特性から明らかな様に、本発明の高弾性率フィルムロールを用いると生産性良く、長時間録画が可能で、DOが少ないデジタルビデオテープを製造できる。
Claims (3)
- 円筒状コアーに巻かれたフィルムロールであり、当該フィルムの厚さが6μm以下、片側表面AのRa値が1〜5nm、長手方向、幅方向のヤング率が10000MPa以上であり、フィルム幅が300mm以上、長さが2000m以上、ロールの左端の直径と右端の直径の差H(μm)がフィルム長さL(m)に対し、H≦0.05×Lを満足し、フィルムの両端面のエッジの直線度が500μm以上であることを特徴とする磁気記録媒体用高弾性率フィルムロール。
- フィルムを形成する樹脂が芳香族ポリアミドまたは芳香族ポリイミドである請求項1記載の磁気記録媒体用高弾性率フィルムロール。
- 請求項1または2に記載の磁気記録媒体用高弾性率フィルムロールを用い、当該フィルムの片側表面Aに強磁性粉末を結合剤に分散させてなる磁性層を塗布方式により設けることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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