JP4212191B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性、とくに面衝撃強度に優れ、発色性(着色性)、耐候性、剛性、耐熱性、加工性にも優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂、とくにABS樹脂は、その優れた耐衝撃性、耐熱性、剛性、加工性などを有するため、各種雑貨、自動車の内外装材、ジャー炊飯器、電子レンジ、掃除機などの家電製品のハウジング、部品、電話機、ファクシミリなどのOA機器のハウジング、部品などに広く使用されている。
【0003】
近年、ABS樹脂の欠点である耐候性を改良するために、ABS樹脂のゴム成分を、光、熱に対し不安定な二重結合を有するブタジエン系ゴムから二重結合をほとんど有さないアクリル系ゴムに変えたAAS樹脂が開発されている。
【0004】
しかし、アクリル系ゴムは、ブタジエン系ゴムに比べて耐衝撃性が発現しにくい、顔料を添加した際に色が鮮やかでない(発色性に劣る)という問題がある。
【0005】
前記発色性を改善するためにアクリル系ゴムの粒子径分布を制御する方法(特開昭58−222139号公報)が提案されているが、発色性、耐衝撃性が充分でない。
【0006】
さらに、実用性の観点からアクリル系ゴムとブタジエン系ゴム、シリコーン系ゴムとの併用が検討されている。たとえば、ブタジエン系ゴムの存在下にアクリル系モノマーを重合させてアクリル系ゴムとブタジエン系ゴムとの複合ゴムを製造する方法などが提案されている(特開昭57−167308号公報、特開平2−29452号公報、特開平8−41143号公報)。
【0007】
しかし、これらアクリル系ゴムとブタジエン系ゴム、シリコーン系ゴムとを併用する従来の方法では、ブタジエン系ゴムやシリコーン系ゴムを併用しているにもかかわらず、耐衝撃性、発色性が充分に発現しないなどの問題がある。
【0008】
また、ABS樹脂の耐衝撃性を改良する方法として、シリコーン系オイルを添加する方法が提案されている(特公昭49−29947号公報、特開昭53−124561号公報、特開昭55−3494号公報、特開昭55−31896号公報、特開昭57−187346号公報)。さらに、アクリル系ゴムとブタジエン系ゴムを併用したAAS樹脂にシリコーン系オイルを添加した樹脂組成物が、特開平4−339850号公報で提案されている。
【0009】
しかし、これらシリコーン系オイルを添加する従来の方法では、たとえばAAS樹脂にシリコーン系オイルを添加する場合、表面外観性(光沢度)に優れるが、耐衝撃性はほとんど改善されない、と報告されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のごとき問題を解消し、耐衝撃性、発色性、耐候性、剛性、耐熱性、加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のアクリル系ゴムおよび(または)シリコーン系ゴムを用いた組成物に有機系シリコーンオイルを添加すると、耐衝撃性、とくに面衝撃強度に優れ、発色性、耐候性、剛性、耐熱性、加工性にも優れた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
メチルエチルケトン不溶分が、体積平均粒径10〜1000nmのアクリル系ゴム重合体(A)およびシリコーン系ゴム重合体(B)の1種以上15〜100重量%(以下、%という)、および体積平均粒径50〜1500nmのジエン系ゴム重合体(C)0〜85%からなるゴム重合体(R)ならびにシアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸アルキルエステル残基、マレイミド化合物残基およびこれらと共重合可能な単量体残基からえらばれる2種以上(ただし、2種のときはシアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸アルキルエステル残基、マレイミド化合物残基からえらばれる)からなる単量体残基(M)からなり、グラフト率が15〜150%のグラフト共重合体(G)からなり、
メチルエチルケトン可溶分が、シアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸エステル残基、マレイミド化合物残基およびこれらと共重合可能な単量体残基からえらばれる2種以上(ただし、2種のときはシアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸エステル残基、マレイミド化合物残基からえらばれる)からなり、還元粘度(30℃、0.3g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液)が0.3〜2dl/gである重合体(F)からなり、かつ、
ゴム重合体(R)含有量が5〜40%である樹脂組成物(H)100重量部(以下、部という)および
有機系シリコーンオイル(I)0.005〜5部
からなる熱可塑性樹脂組成物(請求項1)、
アクリル系ゴム重合体(A)が、多官能性ビニル単量体0.01〜8部を有する原料単量体100部に対して開始剤0.001〜0.15部を用いて乳化重合して得られる請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物(請求項2)、
開始剤が有機系過酸化物である請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物(請求項3)、
アクリル系ゴム重合体(A)が、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99.99%、多官能性ビニル単量体(Ka)0.01〜2%およびこれらと共重合可能な単量体0〜28%からなる単量体混合物(Da)60〜95部を重合したのち、
さらにアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99%、多官能性ビニル単量体(Kb)1〜8%およびこれらと共重合可能な単量体0〜22%からなる単量体混合物(Db)5〜40部を合計量が100部になるように重合してなり、多官能性ビニル単量体(Ka)/単量体混合物(Da)の重量比率aと多官能性ビニル単量体(Kb)/単量体混合物(Db)の重量比率bとの比率a/bが、0.7以下である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物(請求項4)、
ジエン系ゴム重合体(C)が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸からえらばれる1種以上の不飽和酸(c)5〜50%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートからえらばれる1種以上(d)50〜95%および(c)、(d)と共重合可能な単量体0〜40%を重合させて得られる酸基含有ラテックス(S)で凝集肥大させて得られる請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物(請求項5)および
ゴム重合体(R)、グラフト共重合体(G)および重合体(F)からえらばれる1種以上の重合体の重合時に脂肪酸金属塩を使用するならびに(または)ゴム重合体(R)、グラフト共重合体(G)および重合体(F)からえらばれる1種以上の重合体ラテックスに脂肪酸金属塩を添加する請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物(請求項6)
に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(J)は、樹脂組成物(H)100部に対し、有機系シリコーンオイル(I)0.005〜5部、好ましくは0.01〜4部、さらに好ましくは0.05〜3部を配合してなる熱可塑性樹脂組成物である。有機系シリコーンオイル(I)の配合量が0.005部未満になると耐衝撃性が低下し、5部をこえると加工性が低下する。
【0014】
有機系シリコーンオイル(I)の例としては、一般式:
−(R12SiO)−
(式中、R1、R2は、それぞれアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基などの炭化水素基からえらばれる基)で表わされるモノマー単位からなる重合体、該重合体中に一般式:
−(R12SiO)−
(式中、R1、R2は前記と同じ、mは正の整数)で表わされる単位が含まれる側鎖を有する重合体、これらの有機ポリシロキサンの分子中にエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、フッ素原子、アルコキシ基、ビニル基を導入した重合体などがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
有機系シリコーンオイル(I)の分子量にはとくに限定はないが、1000〜50万程度が好ましい。有機系シリコーンオイルの粘度にもとくに限定はないが、25℃で0.1〜100万cST(センチストローク)が好ましく、耐衝撃性の点から、さらには1〜20万cST、ことには10〜10万cSTが好ましい。
【0016】
有機系シリコーンオイル(I)の具体例としては、たとえばポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどがあげられる。これらのうちではポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンが好ましい。
【0017】
本発明に使用される樹脂組成物(H)は、メチルエチルケトン不溶のグラフト共重合体(G)およびメチルケトン可溶の重合体(F)からなる。
【0018】
グラフト共重合体(G)を構成するゴム重合体(R)は有機系シリコーンオイル(I)と併用して耐衝撃性向上のために使用される成分である。
【0019】
ゴム重合体(R)は、アクリル系ゴム重合体(A)およびシリコーン系ゴム重合体(B)の1種以上15〜100%、好ましくは15〜95%、さらに好ましくは30〜90%、ことに好ましくは35〜85%およびジエン系ゴム重合体(C)0〜85%、好ましくは5〜85%、さらに好ましくは10〜70%、ことに好ましくは15〜65%からなる。アクリル系ゴム重合体(A)およびシリコーン系ゴム重合体(B)の1種以上が15%未満になり、ジエン系ゴム重合体(C)が85%をこえると耐候性が低下する。
【0020】
アクリル系ゴム重合体(A)およびシリコーン系ゴム重合体(B)の1種以上の体積平均粒径は、耐衝撃性、発色性の点から10〜1000nm、好ましくは20〜500nm、さらに好ましくは25〜350nm、ことに好ましくは30〜200nm、とくに好ましくは35〜150nmである。体積平均粒径が10nm未満になると製造が困難となり、1000nmをこえると耐衝撃性が低下する。なお、アクリル系ゴム重合体(A)とシリコーン系ゴム重合体(B)との使用割合としては、アクリル系ゴム重合体(A)/シリコーン系ゴム重合体(B)が、重量比で100/0〜5/95、さらには100/0〜15/85であるのが好ましい。
【0021】
ジエン系ゴム重合体(C)の体積平均粒径は50〜1500nm、好ましくは150〜1000nm、さらに好ましくは200〜800nm、ことに好ましくは250〜700nmである。体積平均粒径が50nm未満になると耐衝撃性が低下し、1500nmをこえると加工性、耐衝撃性が低下する。
【0022】
アクリル系ゴム重合体(A)としては、一般にアクリル系ゴムとして用いられているものであればとくに限定なく使用することができる。その具体例としては、たとえばアクリル酸ブチルゴム、ブタジエン−アクリル酸ブチルゴム、アクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸ブチルゴム、メタクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸ブチルゴム、アクリル酸ステアリル−アクリル酸ブチルゴム、ジメチルシロキサン−アクリル酸ブチルゴム、シリコーンゴム/アクリル酸ブチル複合ゴムなどがあげられる。これらのうちではアクリル酸ブチルゴム、ブタジエン−アクリル酸ブチルゴムが好ましい。
【0023】
シリコーン系ゴム重合体(B)としては、一般にシリコーン系ゴムとして用いられているものであればとくに限定なく使用することができる。その具体例としては、たとえばポリジメチルシロキサンゴム、シリコーンゴム/アクリル酸ブチル複合ゴムなどがあげられる。これらのうちではシリコーンゴム/アクリル酸ブチル複合ゴムが好ましい。
【0024】
ジエン系ゴム重合体(C)としては、一般的にジエン系ゴムとして用いられているものであればとくに限定なく使用することができる。その具体例としては、たとえばブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルアクリレート−ブタジエンゴムなどがあげられる。これらのうちではブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
【0025】
なお、アクリル系ゴム重合体(A)としては、耐衝撃性、加工性、製造安定性の点から、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上50〜99.99%、さらには60〜99.99%、ことには70〜99.99%、多官能性ビニル単量体(分子中に2つ以上の重合性のビニル系官能基を有する単量体をいう)0.01〜10%、さらには0.01〜9%、ことには0.01〜8%、およびこれらと共重合可能な単量体0〜40%、さらには0〜31%、ことには0〜22%からなる単量体混合物(D)(合計100%)を乳化重合して得られるものが好ましい。
【0026】
前記アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上が50%未満になる、多官能性ビニル単量体が10%をこえるまたはこれらと共重合可能な単量体が40%をこえると、いずれの場合にも、耐衝撃性が低下する傾向が生じる。一方、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上が99.99%をこえる、または多官能性ビニル単量体が0.01%未満になると、耐衝撃性、発色性が低下する傾向が生じる。
【0027】
さらに、耐衝撃性、発色性の点から好ましいアクリル系ゴム重合体(A)として、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99.99%、さらには85〜99.98%、ことには90〜99.97%、多官能性ビニル系単量体(Ka)0.01〜2%、さらには0.02〜1.5%、ことには0.03〜1.2%およびこれらと共重合可能な単量体0〜28%、さらには0〜13.5%、とくには0〜8.8%からなる単量体混合物(Da)(合計100%)60〜95部、さらには65〜90部、ことには67〜88部を重合したのち、さらにアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99%、さらには78〜98.7%、ことには84〜98.5%、多官能性ビニル系単量体(Kb)1〜8%、さらには1.3〜7%、ことには1.5〜6%およびこれらと共重合可能な単量体0〜22%、さらには0〜15%、ことには0〜10%からなる単量体混合物(Db)5〜40部、さらには10〜35部、ことには12〜33部を合計量が100部になるように重合させたもの(以下、アクリル系ゴム重合体(A−イ)ともいう)が好ましい。
【0028】
アクリル系ゴム重合体(A−イ)は、耐衝撃性、発色性の点から、さらに多官能性ビニル系単量体(Ka)/単量体混合物(Da)の重量比率aと多官能性ビニル系単量体(Kb)/単量体混合物(Db)の重量比率bとの比率a/bが、0.7以下、さらには0.6以下、ことには0.5以下であるのが好ましい。
【0029】
単量体混合物(D)におけるアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートとしては、たとえばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、製造安定性、経済性などの工業的見地から、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートが好ましく、とくにブチルアクリレートが好ましい。
【0030】
単量体混合物(D)における多官能性ビニル単量体としては、たとえばメタクリル酸アリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメリット酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、1,3,5―トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、耐衝撃性の点から、メタクリル酸アリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0031】
単量体混合物(D)におけるこれらと共重合可能な単量体としては、とくに限定はないが、たとえばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどの炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、スチレン、α―メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレンなどの芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリル酸誘導体、マレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド化合物などがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、耐衝撃性、加工性、経済性の点から、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アクリロニトリル、スチレン、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0032】
前記アクリル系ゴム重合体(A)、シリコーン系ゴム重合体(B)およびジエン系ゴム重合体(C)は、耐衝撃性、耐候性、加工性、製造安定性、経済性などの点から、酸基含有ラテックス(S)を使用して凝集肥大させてゴム重合体(R)に用いてもよい。
【0033】
酸基含有ラテックス(S)としては、耐衝撃性、製造安定性の点から、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸からえらばれる1種以上の不飽和酸(c)5〜50%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートからえらばれる1種以上(d)50〜95%、および(c)、(d)と共重合可能な単量体0〜40%を重合させて得られるものが好ましい。
【0034】
不飽和酸(c)が5%未満になる、前記アルキル(メタ)アクリレート(d)が50%未満になる、または(c)、(d)と共重合可能な単量体が40%をこえると、いずれの場合も、凝集肥大がおこりにくくなる傾向が生じる。逆に、不飽和酸(c)が50%をこえると、製造安定性がわるくなりやすく、前記アルキル(メタ)アクリレートが95%をこえると、凝集肥大がおこりにくくなる傾向が生じる。
【0035】
なお、不飽和酸(c)を構成するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸のうちでは、とくに製造安定性の点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0036】
(d)成分のうちアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレート(d−1)としては、アクリル酸と炭素数1〜12の直鎖あるいは側鎖を有するアルコールのエステルがあげられるが、とくに製造安定性の点から、アルキル基の炭素数が1〜8のものが好ましい。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0037】
前記(d)成分のうちアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルメタクリレート(d−2)としては、メタクリル酸と炭素数1〜12の直鎖あるいは側鎖を有するアルコールのエステルがあげられるが、とくに製造安定性の点から、アルキル基の炭素数が1〜8のものが好ましい。具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0038】
前記(c)、(d)と共重合可能な単量体としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体や、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、メタクリル酸アリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメリット酸トリアリルなどの分子中に2つ以上の重合性ビニル系官能基を有する多官能性ビニル単量体などがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0039】
とくに耐衝撃性、製造安定性の点から好ましい酸基含有ラテックス(S)としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸からえらばれる1種以上の不飽和酸(c)5〜25%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上(d−1)5〜30%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルメタクリレートからえらばれる1種以上(d−2)20〜80%、(c)、(d−1)、(d−2)と共重合可能な芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および多官能性ビニル単量体からえらばれる1種以上0〜40%を重合させて得られる酸基含有ラテックス(S−イ)があげられる。
【0040】
とくにジエン系ゴム重合体(C)は、耐衝撃性、製造安定性の点から、不飽和酸(c)として(メタ)アクリル酸を用いる酸基含有ラテックス(S)、さらには酸基含有ラテックス(S−イ)により凝集肥大させたものが好ましい。
【0041】
酸基含有ラテックス(S)の使用量は、耐衝撃性、製造安定性の点から、もとのゴム重合体100部(固形分)に対して0.1〜15部(固形分)、さらには0.3〜10部、とくには0.5〜8部を添加して凝集肥大させる方法が好ましい。また、肥大時のゴム重合体のラテックスの固形分濃度は肥大特性制御の点から、10〜50%、さらには15〜45%が好ましい。
【0042】
なお、肥大を充分に行わせるために、攪拌下で酸基含有ラテックス(S)を添加したのち、10分から3時間、さらには20分から2時間、所定の温度で均一に攪拌するのが好ましい。肥大時の温度は室温でもよいが、肥大特性制御の点から、35〜85℃、さらには40〜80℃が好ましい。
【0043】
また、酸基含有ラテックス(S)を添加する前のゴム重合体のラテックスは、pHを7以上に調整するのが肥大制御の点から好ましい。pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加してもよい。また、肥大特性制御の点から、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩などの界面活性剤、塩酸、硫酸、酢酸などの無機酸、有機酸、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの電解質などを必要に応じて添加してもよい。
【0044】
本発明に使用するグラフト共重合体(G)は、ゴム重合体(R)ならびにシアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸アルキルエステル残基、マレイミド化合物残基およびこれらと共重合可能な単量体残基からえらばれる2種以上(ただし、2種のときはシアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸アルキルエステル残基、マレイミド化合物残基からえらばれる)からなる単量体残基(M)からなり、グラフト率が15〜150%であり、MEKに不溶のものである。
【0045】
グラフト共重合体(G)のグラフト率は、15〜150%、好ましくは20〜85%、さらに好ましくは25〜80%であり、グラフト率が15%未満の場合、耐衝撃性が低下し、150%をこえると、加工性が低下する。
【0046】
グラフト共重合体(G)における単量体残基(M)を構成するシアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸アルキルエステル残基、マレイミド化合物残基およびこれらと共重合可能な単量体残基は、耐衝撃性、加工性の点から、シアン化ビニル化合物残基10〜45%、さらには15〜40%、ことには20〜35%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル残基0〜35%、さらには0〜25%、ことには0〜15%、マレイミド化合物残基0〜35%、さらには0〜25%、ことには0〜15%、芳香族ビニル化合物残基55〜90%、さらには60〜85%、ことには65〜80%およびこれらと共重合可能な単量体残基0〜30%、さらには0〜20%、ことには0〜10%(合計100%)の割合であるのが好ましい。シアン化ビニル化合物残基が10%未満になる、芳香族ビニル化合物残基が90%をこえるまたは共重合可能な単量体残基が30%をこえると、いずれの場合も、耐衝撃性が低下する傾向が生じる。シアン化ビニル化合物残基が45%をこえる、(メタ)アクリル酸アルキルエステル残基が35%をこえる、マレイミド化合物残基が35%をこえるまたは芳香族ビニル化合物残基が55%未満になると、加工性が低下する傾向が生じる。
【0047】
単量体残基(M)を構成する前記シアン化ビニル化合物残基としては、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどがの残基があげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
単量体残基(M)を構成する前記(メタ)アクリル酸エステル残基としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜12の直鎖あるいは側鎖を有するアルコールとのエステル、たとえばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸などの残基があげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
単量体単位(M)を構成する前記マレイミド化合物残基としては、たとえばたとえばマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミドなどの残基があげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
単量体残基(M)を構成する前記芳香族ビニル化合物残基としては、たとえばスチレン、α―メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレンなどの残基があげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
単量体残基(M)を構成する前記共重合可能な単量体としては、たとえば(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体などの残基があげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
工業的見地から、前記シアン化ビニル化合物残基としてはアクリロニトリル残基、(メタ)アクリル酸アルキルエステル残基としてはメタクリル酸メチル残基、アクリル酸ブチル残基、芳香族ビニル化合物残基としてはスチレン残基、マレイミド化合物残基としてはN−フェニルマレイミド残基が、好ましい。
【0053】
本発明に使用される樹脂組成物(H)の成分である重合体(F)は、シアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸エステル残基、マレイミド化合物残基およびこれらと共重合可能な単量体残基からえらばれる2種以上(ただし、2種のときはシアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸エステル残基、マレイミド化合物残基からえらばれる)からなり、かつ還元粘度(30℃、0.3g/dl、N,N−ジメチルホルムアミド溶液)が0.3〜2dl/g、好ましくは0.4〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.5〜1dl/gである。還元粘度が0.3dl/g未満になると、耐衝撃性が低下し、2dl/gをこえると加工性が低下する。
【0054】
重合体(F)は、耐衝撃性、発色性の点から、シアン化ビニル化合物残基10〜45%、さらには15〜40%、ことには20〜35%、芳香族ビニル化合物残基55〜90%、さらには60〜85%、ことには65〜80%、(メタ)アクリル酸エステル残基0〜35%、さらには0〜25%、ことには0〜15%、マレイミド化合物残基0〜35%、さらには0〜25%、ことには0〜15%およびこれらと共重合可能な単量体残基0〜30%、さらには0〜20%、ことには0〜10%(合計100%)からなる共重合体であるのがさらに好ましい。
【0055】
重合体(F)を構成する前記シアン化ビニル化合物残基としては、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの残基が、前記芳香族ビニル化合物残基としては、たとえばスチレン、α―メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン、ビニルナフタレンなどの残基が、(メタ)アクリル酸エステル残基としては、たとえば(メタ)アクリル酸およびそのメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−ヒドロキシルエチル、2−エチルヘキシル、グリシジルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体などの残基が、前記マレイミド化合物残基としては、たとえばマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミドなどの残基があげられる。これらのうちでは、工業的見地から、シアン化ビニル化合物残基としてはアクリロニトリル残基、芳香族ビニル化合物残基としてはスチレン残基、α―メチルスチレン残基、(メタ)アクリル酸エステル残基としてはメチルメタクリレート残基、ブチルメタクリレート残基、ブチルアクリレート残基、マレイミド化合物残基としてはN−フェニルマレイミド残基が好ましい。
【0056】
重合体(F)の具体例としては、たとえばスチレン−アクリロニトリル共重合体、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−マレイミド−アクリロニトリル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−マレイミド−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、α−メチルスチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−マレイミド−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−マレイミド−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブチルアクリレート共重合体などがあげられる。
【0057】
本発明に使用される樹脂組成物(H)は、グラフト共重合体(G)および重合体(F)を有し、ゴム重合体(R)の含有量が5〜40%、好ましくは8〜35%、さらに好ましくは10〜33%のものである。ゴム重合体(R)の含有量が5%未満の場合には耐衝撃性が低下し、40%をこえる場合には加工性が低下する。
【0058】
なお、樹脂組成物(H)に含まれるグラフト共重合体(G)および重合体(F)の割合は、ゴム重合体(R)の含有量が5〜40%になるように使用されるが、通常、合計量が100部になるように、グラフト共重合体(G)が好ましくは2〜90部、さらに好ましくは5〜80部、ことに好ましくは8〜70部、および重量体(F)が好ましくは10〜98部、さらに好ましくは20〜95部、ことに好ましくは30〜92部からなる。グラフト共重合体(G)が2部未満になり、重合体(F)が98部をこえると、耐衝撃性が低下する傾向が生じ、グラフト共重合体(G)が90部をこえ、重合体(F)が10部未満になると加工性が低下する傾向が生じる。
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(J)には、一般に知られている酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、滑剤を必要に応じて使用してもよい。とくに、スチレン系樹脂などに用いられるフェノール系、イオウ系、リン系、ヒンダードアミン系の安定剤、抗酸化剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤および脂肪族炭化水素、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル、脂肪酸金属塩、高級脂肪酸のアミドまたはビスアミド、それらの変性体、オリゴアミドなどの内部滑剤、外部滑剤などは、本発明の組成物を成形用樹脂組成物として、より高性能なものとするために用いることができる。これらの安定剤、滑剤は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
前記脂肪酸金属塩を使用する場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物(J)100部に対し、脂肪酸金属塩を0〜5部、さらには0.01〜4部、ことには0.05〜3部使用するのが、耐衝撃性、発色性の点から好ましい。脂肪酸金属塩が5部をこえると加工性が低下する傾向が生じる。
【0061】
前記脂肪酸金属塩としては、炭素数8〜32の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のK、Ca、Mg、Al、Zn、Na、Pb塩などがあげられ、具体例としては、たとえばオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、ラウリル酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛などがあげられる。
【0062】
なお、前記脂肪酸金属塩を添加する具体的な方法としては、樹脂組成物のパウダー、ペレットなど固形物と混合する方法、樹脂組成物重合時に乳化剤として使用する方法、ラテックス、スラリーなど水分散系の樹脂組成物に添加する方法などがある。耐衝撃性の点から、樹脂組成物重合時に乳化剤として使用する方法、樹脂組成物のラテックス、スラリーなど水分散系の樹脂組成物に添加する方法が好ましい。さらに、耐衝撃性、発色性の点から、ゴム重合体(R)、グラフト共重合体(G)および重合体(F)からえらばれる1種以上の重合体の重合時に前記脂肪酸金属塩を使用するならびに(または)ゴム重合体(R)、グラフト共重合体(G)および重合体(F)からえらばれる1種以上の重合体のラテックスに前記脂肪酸金属塩を添加するのが好ましい。
【0063】
つぎに、本発明の熱可塑性樹脂組成物(J)の製法について説明する。
【0064】
アクリル系ゴム重合体(A)、シリコーン系ゴム重合体(B)、ジエン系ゴム重合体(C)、グラフト共重合体(G)、重合体(F)は、本発明の範囲のものが得られる限り、いかなる重合法を用いて製造したものでもかまわない。たとえば、公知の塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化−懸濁重合法、乳化−塊状重合法など、本発明の範囲内の組成に制御できればどの重合法よって製造したものでもよい。なお、アクリル系ゴム重合体(A)、シリコーン系ゴム重合体(B)、ジエン系ゴム重合体(C)、グラフト共重合体(G)の製造は、ゴムの粒径分布、グラフト率を制御しやすいなどの点から、乳化重合法で行うのが好ましい。
【0065】
また、本発明の範囲のものが得られる限り、いかなる開始剤、連鎖移動剤、乳化剤を用いて製造したものでもかまわない。
【0066】
前記開始剤としては、有機系過酸化物、無機系過酸化物、アゾ化合物などの公知の開始剤を使用することができる。過酸化物は還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤としても使用することができる。これらのうちでは、耐衝撃性、発色性の点から、有機系過酸化物を使用するのが好ましい。
【0067】
前記有機系過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法など、公知の添加法で添加することができるが、耐衝撃性、発色性の点から、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法が好ましい。
【0068】
また、前記有機系過酸化物は、重合安定性、粒径制御の点から、2価の鉄塩などの無機系還元剤および(または)ホルムアルデヒドスルホキシル酸ソーダ、還元糖、アスコルビン酸などの有機系還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤として使用するのが好ましい。
【0069】
前記有機系過酸化物の具体例としては、たとえばt−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、クミルパーオキシオクテート、t−ブチルイソプロピルカーボネートなどのパーオキシエステル類、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類などがあげられる。
【0070】
前記無機系過酸化物の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどがあげられる。
【0071】
なお、アクリル系ゴム重合体(A)の重合は、該ゴム重合体の原料単量体(混合物)100部に対し、開始剤、とくには有機過酸化物を0.001〜0.15部、さらには0.02〜0.10部を使用するのが好ましい。開始剤が0.001部未満になると、重合転化率が低くなる傾向が生じ、0.15部をこえると耐衝撃性、発色性が低下する傾向が生じる。また、開始剤として無機系過酸化物を使用する場合には、耐衝撃性、発色性の点から、該ゴム重合体の原料単量体(混合物)100部に対し、0.001〜0.08部、さらには0.005〜0.06部、ことには0.01〜0.05部を使用するのが好ましい。無機系過酸化物が0.001部未満になると、重合転化率が低くなる傾向が生じ、0.08部をこえると、耐衝撃性、発色性が低下する傾向が生じる。
【0072】
前記連鎖移動剤としては、たとえばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、テルピノレンなど公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0073】
前記乳化剤としては、たとえばオレイン酸ソーダ、パルミチン酸ソーダ、ロジン酸ソーダ、ロジン酸カリウムなどの脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、炭素数12〜20のアルキルスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホコハク酸ソーダ、α−スルホ脂肪酸エステルソーダ、アルキルエーテルスルホン酸ソーダなどのスルホン酸金属塩、ラウロイルザルコシン酸ソーダ、オレオイルザルコシン酸ソーダなどのザルコシン酸金属塩などの公知の乳化剤を使用することができる。
【0074】
アクリル系ゴム重合体(A)の重合温度は、耐衝撃性、発色性の点から、20〜80℃、さらには30〜70℃、とくには35〜65℃であるのが好ましい。重合温度が20℃未満になると、重合速度が低くなり製造生産性に劣る傾向が生じ、80℃をこえると、耐衝撃性、発色性が低下する傾向が生じる。
【0075】
重合時の単量体や分子中に2つ以上の重合性の官能基を有する多官能性ビニル系単量体の添加方法としては、反応容器に連続的に滴下してもよく、一括で添加してもよく、初期に一部を連続的にまたは一括で添加し、そののち残りを連続的に滴下するなど分割添加してもよい。これらのうちでは、粒径制御の点から、単量体は連続的に滴下する方法または初期に一部を一括添加し、そののち残りを連続滴下する方法が好ましい。
【0076】
グラフト共重合体(G)の製造は、一般にゴム重合体(R)ラテックスの存在下、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイミド化合物およびこれらと共重合可能な単量体からえらばれる2種以上(ただし、2種のときはシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイミド化合物からえらばれる)からなる単量体を、グラフト率が15〜150%になるようにグラフト共重合させることにより行なわれる。この際、製造されたグラフト共重合体(GP)中に含まれるメチルエチルケトン不溶分のグラフト共重合体(G)の割合は6〜100%、好ましくは40〜100%、さらに好ましくは70〜100%であり、0〜94%、好ましくは0〜60%、さらに好ましくは0〜30%含まれるメチルエチルケトン可溶分は、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド化合物およびこれらと共重合可能な単量体からえらばれる2種以上(ただし、2種のときはシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド化合物からえらばれる)からなる共重合体(GPF)であるため、重合体(F)または別々に合成した重合体(f)と混合したものが重合体(F)として使用される。
【0077】
なお、グラフト共重合体(GP)中のメチルエチルケトン可溶分(共重合体(GPF))が重合体(F)として使用される場合には該可溶分が、また、別に合成した重合体(f)と混合したものが重合体(F)として使用される場合には該混合物が還元粘度(30℃、0.3g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液)0.3〜2dl/g、好ましくは0.4〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.5〜1dl/gであることが必要である。
【0078】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(J)は、その製造方法によって異なるが、グラフト共重合体(G)、重合体(F)(グラフト共重合体(GP)および重合体(f)を用いる場合はグラフト共重合体(GP)および重合体(f)、以下同様)を、たとえばラテックス、スラリー、溶液、粉末、ペレットなどの状態あるいはこれらの組み合わせで混合して製造することができる。たとえば、グラフト共重合体(G)、重合体(F)がラテックスから得られる場合、ポリマー粉末を回収するときは通常の方法、たとえばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属の塩、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムのようなアルカリ金属の塩、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸のような無機酸および有機酸を添加することでラテックスを凝固させたのち、脱水乾燥する方法で実施することができる。また、スプレー乾燥法を使用することもできる。この際、安定剤などの使用する量の一部を分散液の状態でこれら樹脂のラテックスあるいはスラリーに添加することもできる。
【0079】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(J)は、グラフト共重合体(G)および重合体(F)の粉末、ペレットなどに対し、必要に応じて前記の安定剤、滑剤、顔料などを配合し、バンバリミキサー、ロールミル、1軸押出機、2軸押出機など公知の溶融混練機で混練し、射出成形、押出成形、ブロー成形など公知の成形法で、目的の成形品に賦形することができる。
【0080】
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物(J)は、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アミド系樹脂からえらばれる1種以上の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイとして使用してもよい。
【0081】
【実施例】
以下、本発明の組成物を具体的な実施例に基づいて説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。
【0082】
なお、実施例および比較例で用いた原料の略号と原料との関係および評価方法を、以下にまとめて説明する。
BA:ブチルアクリレート
TAC:トリアリルシアヌレート
AN:アクリロニトリル
St:スチレン
tDM:t−ドデシルメルカプタン
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
PMI:N−フェニルマレイミド
αMSt:α−メチルスチレン
MMA:メチルメタクリレート
有機系シリコーンオイル(I−1):SH−200(ジメチルシリコーンオイル、10000cST)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製
有機系シリコーンオイル(I−2):SH−510(メチルフェニルシリコーンオイル、500cST)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製
有機系シリコーンオイル(I−3):SF8411(エポキシ変性シリコーンオイル、8000cST)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製
【0083】
(還元粘度)
MEK可溶重合体(共重合体(GPF)、重合体(f)など)を、濃度0.3g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液として、30℃で、ウベロード型粘度計で溶液粘度を測定して算出した。
【0084】
(グラフト率)
グラフト共重合体(GP)のパウダーをメチルエチルケトンに溶解させて、遠心分離し、メチルエチルケトン可溶分と不溶分を得た。この可溶分と不溶分との重量比率から、グラフト共重合体(G)のグラフト率を算出した。
【0085】
(ゴム重合体の体積平均粒径)
各ラテックスについて、日機装(株)(製)のマイクロトラックUPA粒径分布計を用いて測定した。
【0086】
(重合転化率)
ガスクロマトグラフィーの結果から算出した。
【0087】
[樹脂組成物の特性]
(発色性)
グラフト共重合体(G)と重合体(F)からなる樹脂組成物(H)100部に、エチレンビスステアリルアミド1部、カーボン0.4部を配合した黒色サンプル(ASTM規格1/4インチ厚みバー、127mm長さ)を目視(5点法)にて下記基準で評価した。
5点:黒色でムラがない
4点:黒色でムラが若干ある
3点:やや青みがある黒色でややムラがある
2点:青みがある黒色でムラがある
1点:青みがある黒色でムラが激しい
【0088】
(耐候性)
グラフト共重合体(G)と重合体(F)からなる樹脂組成物(H)100部に、エチレンビスステアリルアミド1部、酸化チタン3部、ヒンダードアミン(旭電化工業(株)製 LA−63)0.3部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバガイギー(社)製チヌビン234)0.3部を添加した白色サンプルのサンシャインウエザオメーター63℃(雨あり)、1000時間照射後の変色(ΔE値)で評価した。
【0089】
(耐衝撃性)
IZOD衝撃強度で評価した。IZOD衝撃強度は、ASTM D−256規格(1/4インチ厚み)にしたがって23℃で測定した(単位:J/m)。
【0090】
(落錘強度)
23℃で100mm×150mm、厚さ2mmの平板の半数破壊高さ×荷重で評価した(単位:J)。
【0091】
(引張強度、引張伸び)
ASTM D638規格にしたがって、1号ダンベルを使用し、23℃で評価した。引張強度の単位:MPa、引張伸びの単位:%。
【0092】
(耐熱性(HDT))
ASTM D648の1.82MPa荷重の熱変形温度で評価した(単位:℃)。
【0093】
(流動性)
(株)ファナック製FAS−100B射出成形機を使用し、シリンダー温度250℃、射出圧力132MPaで、3mm厚さのスパイラル形状の金型内における樹脂の流動長(単位:mm)で評価した。
【0094】
製造例1(酸基含有ラテックス(S)の製造)
すでに本発明者らが提案している特開平8−134316号公報に記載の乳化重合法により、組成がブチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸=70/14/16の酸基含有共重合体のラテックスを合成し、体積平均粒径が98nmの酸基含有ラテックス(S−1)(固形分32%)および体積平均粒径が130nmの酸基含有ラテックス(S−2)(固形分32%)を得た。
【0095】
製造例2(アクリル系ゴム重合体(A)の製造)
アクリル系ゴム重合体(A−1)
重合機に純水200部を仕込み、重合機内を脱気し、チッ素置換したのち、パルミチン酸ナトリウム0.7部を仕込んだ。45℃まで昇温し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部、硫酸第一鉄(七水塩)0.0025部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.3部を加えた。1段目の単量体としてBA75部、TAC0.3部、CHP0.037部の混合物を6時間連続滴下し、滴下終了後、45℃で1時間攪拌した。滴下1.5時間目と3時間目に各々パルミチン酸ナトリウム0.25部を添加した。つづいて、2段目の単量体としてBA25部、TAC0.4部、CHP0.013部の混合物を3時間連続滴下し、滴下終了後、45℃で1時間攪拌し、重合を終了した。転化率は99%であった。得られたアクリル系ゴム重合体(A)のラテックスの体積平均粒径は92nmであった。
【0096】
アクリル系ゴム重合体(A−2)
表1に記載の原料を表1に記載の組成で用いた以外は、アクリル系ゴム重合体(A−1)と同様にして重合した。ただし、乳化剤は初期(純水仕込み時)にパルミチン酸ナトリウム1部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム2部を使用した。
【0097】
アクリル系ゴム重合体(A−3)
表1に記載の原料を表1に記載の組成で用いた以外は、アクリル系ゴム重合体(A−1)と同様にして重合した。ただし、パルミチン酸ナトリウムは初期に0.30部、滴下1.5時間目、3時間目に各々0.25部、0.5部を添加した。
【0098】
アクリル系ゴム重合体(A−4)
表1に記載の原料を表1に記載の組成で用いた以外は、アクリル系ゴム重合体(A−1)と同様にして重合した。ただし、単量体は、1段階でBA100部、TAC1.5部、CHP0.3部の混合物を9時間連続滴下し、滴下終了後、45℃で1時間攪拌した。パルミチン酸ナトリウムは初期0.006部、滴下1時間目、3時間目、6時間目に各々0.15部、0.25部、0.5部を添加した。
【0099】
アクリル系ゴム重合体(A−1)〜(A−4)の原料の組成、比率a/b、重合転化率、体積平均粒径を表1に示す。
【0100】
【表1】
Figure 0004212191
【0101】
アクリル系ゴム重合体(A−5)
アクリル系ゴム重合体(A−1)100部を固形分31%、pH11のラテックスに調整し、60℃で酸基含有ラテックス(S−1)3.2部を添加し、60℃で1時間攪拌して肥大化させ、体積平均粒径が330nmのアクリル系ゴム重合体(A−5)のラテックスを得た。
【0102】
製造例3(シリコーン系ゴム重合体(B)の製造)
シリコーン系ゴム重合体(B−1)
純水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、オクタメチルシクロテトラシロキサン100部、テトラエトキシシラン2部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部をホモジナイザーで乳化分散させ、オルガノシロキサンのラテックスを得た。重合機内を脱気し、チッ素置換したのち、前記のオルガノシロキサンのラテックスを重合機に仕込み、80℃に昇温し、ドデシルベンゼンスルホン酸0.2部を加え、5時間攪拌したのち、23℃で24時間放置し、そののち水酸化ナトリウムで中和し重合を終了した。重合転化率は92%、得られたゴムラテックス(B−1)の体積平均粒径は80nmであった。
【0103】
製造例4(ジエン系ゴム重合体(C)の製造)
ジエン系ゴム重合体(C−1)
耐圧重合機(100L)に水200部を仕込み、重合機内を脱気し、チッ素置換したのち、ブタジエン100部、オレイン酸ナトリウム1部、ロジン酸ナトリウム2部、炭酸ナトリウム0.05部、過硫酸カリウム0.2部、tDM0.2部を仕込んだ。60℃まで昇温し、重合を開始し、重合を16時間で終了させ、ジエン系ゴム重合体(C−1)のラテックスを得た。得られたラテックスの重合転化率は95%、体積平均粒径は98nmであった。
【0104】
ジエン系ゴム重合体(C−2)
ジエン系ゴム重合体(C−1)100部を固形分31%、pH11のラテックスに調整し、60℃で酸基含有ラテックス(S−1)3.2部を添加し、60℃で1時間攪拌して肥大化させ、体積平均粒径が415nmのジエン系ゴム重合体(C−2)のラテックスを得た。
【0105】
ジエン系ゴム重合体(C−3)および(C−4)
表2に記載の原料を表2に記載の組成で用いた以外は、ジエン系ゴム重合体(C−2)と同様にしてジエン系ゴム重合体(C−3)、(C−4)を製造した。ジエン系ゴム重合体(C−2)〜(C−4)の原料の組成、体積平均粒径を表2に示す。
【0106】
【表2】
Figure 0004212191
【0107】
製造例5(グラフト共重合体(G)の製造)
グラフト共重合体(G−1)
アクリル系ゴム重合体(A−1)のラテックス45部(固形分)、ジエン系ゴム重合体(C−2)のラテックス10部(固形分)、水250部を重合機に入れチッ素置換し、65℃に昇温したのち、パルミチン酸ナトリウム0.3部(固形分)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.004部、硫酸第一鉄(七水塩)0.001部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2部を加え、AN12部、St33部およびCHP0.3部の混合液を5時間かけて連続添加した。さらに2時間の後重合を行い、グラフト共重合体(G−1)のラテックスを得た。重合転化率は99%であった。重合転化率およびMEK可溶量、MEK不溶量からグラフト率、グラフト共重合体(G)の比率を求めた。グラフト共重合体(GP−1)は、MEK可溶のAN−St共重合体14%とMEK不溶のグラフト共重合体(G−1)86%からなる重合体であった。結果を表3に示す。
【0108】
グラフト共重合体(G−2)〜(G−7)
表3に記載の原料を表3に記載の組成で用いた以外は、グラフト共重合体(GP−1)と同様にしてグラフト共重合体(GP−2)〜(GP−7)のラテックスを得、重合転化率およびMEK可溶量、MEK不溶量からグラフト率、グラフト共重合体(G)の比率を求めた。結果を表3に示す。
【0109】
【表3】
Figure 0004212191
【0110】
製造例6(重合体(f)の製造)
重合体(f−1)
重合機に水250部、パルミチン酸ナトリウム0.5部(固形分)を投入し、60℃に昇温したのち、チッ素置換した。つづいてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部、硫酸第一鉄(七水塩)0.0025部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.4部を加えたのち、AN28部、St72部、t−DM0.30部およびCHP0.2部の混合液を8時間かけて連続添加した。連続添加1.5時間目に、パルミチン酸ナトリウム0.5部(固形分)、3時間目にパルミチン酸ナトリウム0.5部(固形分)を追加した。さらに12時間の後重合を行い、メチルエチルケトン可溶の重合体(f−1)のラテックスを得た。重合転化率は99%、還元粘度は0.67dl/gであった。
【0111】
重合体(f−2)〜(f−3)
表4に記載の原料を表4に記載の割合で用いた以外は、重合体(f−1)と同様にして、メチルエチルケトン可溶の重合体を製造した。
【0112】
重合体(f−2)〜(f−3)の原料の組成、重合転化率、還元粘度を表4に示す。
【0113】
【表4】
Figure 0004212191
【0114】
実施例1
グラフト共重合体(GP−1)のラテックス、重合体(f−1)のラテックスを表5に示す割合で混合し、フェノール系抗酸化剤(旭電化工業(株)製AO−50)を加えたのち、塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して、グラフト共重合体(GP−1)、重合体(f−1)の混合樹脂粉末を得た。ついで得られた混合樹脂粉末に、有機系シリコーンオイル(I−1)0.4部、エチレンビスステアリルアミド1部を配合し、(株)タバタ製20Lヘンシェルミキサーで均一にブレンドした。さらに(株)タバタ製40m/mの1軸押出機で、240℃で溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造した。このペレットから、(株)ファナック製射出成形機FAS−100Bを用いて250℃で必要なテストピースを成形し、試験に供した。また、その他の評価も行なった。結果を表5に示す。
【0115】
実施例2〜11および比較例1〜5
表5、表6に記載の原料を表5、表6に記載の割合で用い、さらにエチレンビスステアリルアミド1部を配合した以外は、実施例1と同様にしてペレットを製造し、テストピースを成形して試験に供した。ただし、1軸押出機の温度は、実施例3、実施例4、比較例4は260℃に設定した。また、その他の評価も行なった。結果を表5、表6に示す。
【0116】
【表5】
Figure 0004212191
【0117】
【表6】
Figure 0004212191
【0118】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は加工性に優れ、とくに耐衝撃性に優れ、発色性、耐候性、剛性、耐熱性に優れた成形品を与える。

Claims (5)

  1. メチルエチルケトン不溶分が、体積平均粒径10〜1000nmのアクリル系ゴム重合体(A)およびシリコーン系ゴム重合体(B)の1種以上15〜100重量%、および体積平均粒径50〜1500nmのジエン系ゴム重合体(C)0〜85重量%からなるゴム重合体(R)ならびにシアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸アルキルエステル残基、マレイミド化合物残基およびこれらと共重合可能な単量体残基からえらばれる2種以上(ただし、2種のときはシアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸アルキルエステル残基、マレイミド化合物残基からえらばれる)からなる単量体残基(M)からなり、グラフト率が15〜150重量%であるグラフト共重合体(G)からなり、
    メチルエチルケトン可溶分が、シアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸エステル残基、マレイミド化合物残基およびこれらと共重合可能な単量体残基からえらばれる2種以上(ただし、2種のときはシアン化ビニル化合物残基、芳香族ビニル化合物残基、(メタ)アクリル酸エステル残基、マレイミド化合物残基からえらばれる)からなり、還元粘度(30℃、0.3g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液)が0.3〜2dl/gである重合体(F)からなり、かつ
    ゴム重合体(R)含有量が5〜40重量%である樹脂組成物(H)100重量部および
    有機系シリコーンオイル(I)0.005〜5重量部
    からなる熱可塑性樹脂組成物であって、
    アクリル系ゴム重合体(A)が、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99.99重量%、多官能性ビニル単量体(Ka)0.01〜2重量%およびこれらと共重合可能な単量体0〜28重量%からなる単量体混合物(Da)60〜95重量部を重合させたのち、
    さらにアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99重量%、多官能性ビニル単量体(Kb)1〜8重量%およびこれらと共重合可能な単量体0〜22重量%からなる単量体混合物(Db)5〜40重量部を合計量が100重量部になるように重合してなり、多官能性ビニル単量体(Ka)/単量体混合物(Da)の重量比率aと多官能性ビニル単量体(Kb)/単量体混合物(Db)の重量比率bとの比率a/bが、0.7以下である熱可塑性樹脂組成物
  2. アクリル系ゴム重合体(A)が、多官能性ビニル単量体0.01〜8重量部を有する原料単量体100重量部に対して開始剤0.001〜0.15重量部を用いて乳化重合して得られる請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 開始剤が有機系過酸化物である請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. ジエン系ゴム重合体(C)が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸からえらばれる1種以上の不飽和酸(c)5〜50重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートからえらばれる1種以上(d)50〜95重量%および(c)、(d)と共重合可能な単量体0〜40重量%を重合させて得られる酸基含有ラテックス(S)で凝集肥大させて得られる請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ゴム重合体(R)、グラフト共重合体(G)および重合体(F)からえらばれる1種以上の重合体の重合時に脂肪酸金属塩を使用するならびに(または)ゴム重合体(R)、グラフト共重合体(G)および重合体(F)からえらばれる1種以上の重合体ラテックスに脂肪酸金属塩を添加する請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
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