JP3933756B2 - ゴム変性スチレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、経済性、耐衝撃性、成形品表面性にすぐれ、かつ耐熱性、剛性、加工性にもすぐれたゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム変性スチレン系樹脂としては、ABS樹脂、AAS樹脂などが古くから知られており、これらは耐熱性、耐衝撃性、剛性、表面性および成形加工性が良好であることから、雑貨類はもとより、自動車のピラー、インストルメントパネルなどの内装材、ジャー炊飯器、電子レンジなどの家電製品のハウジングや電話機、コンピュータディスプレイ、ファクシミリなどのOA機器のハウジングなどに広く使用されている。
【0003】
前記ABS樹脂やAAS樹脂の製造法は、大別して
(1)ジエン系ゴム重合体および/またはアクリル系ゴム重合体5〜30重量%の存在下にシアン化ビニル化合物および/または芳香族ビニル化合物95〜70重量%を含有させてABS樹脂やAAS樹脂とする方法、
(2)ジエン系ゴム重合体および/またはアクリル系ゴム重合体30〜90重量%の存在下にシアン化ビニル化合物および/または芳香族ビニル化合物70〜10重量%をグラフト重合させたゴムリッチなグラフト重合体部と、シアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物を重合させたシアン化ビニル−芳香族ビニル共重合体部とをブレンドしてABS樹脂やAAS樹脂とする方法
の2つがある。
【0004】
近年、経済性や多種グレード制御の利便性の点から、後者の(2)の方法が盛んに採用されるようになってきている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ゴム変性スチレン系樹脂は、マトリックスでのグラフト共重合体(ゴム重合体にモノマーをグラフトさせた共重合体)の均一分散が成形品の機械的特性、表面性などの各種物性の発現に必須である。とくに耐衝撃性および表面外観性は、グラフト共重合体の影響が大きいため、前記グラフト重合体部とシアン化ビニル−芳香族ビニル共重合体部とを、スラリー、パウダー、ビーズ、ペレットなどの平均粒径が30μm〜20mmの固体状態で混合し、押出機で溶融混練してABS樹脂やAAS樹脂とする方法が採用されたばあい、かかるグラフト重合体部が均一に分散されず、所望の成形品の特性、とくに耐衝撃性および表面外観性が発現しないという問題があった。
【0006】
前記問題を解決する方法として、特開平8−193106号公報には、特定のフロー値を有するグラフト共重合体を使用する方法が提案されているが、えられるゴム変性スチレン系樹脂の耐衝撃性、とくに面衝撃強度は未だ充分でない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決すべく多方面から鋭意検討した結果、固体状態で混合して押出機で溶融混練する過程に着目し、グラフト共重合体とスチレン系重合体との固体状態での特性およびプラストミル(溶融混練装置)における溶融特性を制御することによって前記問題を解消することができることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0008】
本発明は、ジエン系ゴム重合体および/またはアクリル系ゴム重合体であるゴム重合体(A)の存在下に、シアン化ビニル化合物15〜40重量%、芳香族ビニル化合物60〜85重量%ならびにアルキル(メタ)アクリレート、マレイミド化合物および(メタ)アクリル酸から選ばれた少なくとも1種の、該シアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物と共重合可能なモノマー0〜25重量%からなる単量体混合物(B)を重合させてなり、かつグラフト率が10〜80重量%である平均粒径が80〜400μm、嵩比重が0.25〜0.5の固体状態のグラフト共重合体(I)と、
平均粒径が200μm〜8mm、嵩比重が0.5〜0.9の固体状態のスチレン系共重合体(II)とを混合してなり、
前記グラフト共重合体(I)のPT値と前記スチレン系共重合体(II)のPT値との比率[(グラフト共重合体(I)のPT値)/(スチレン系共重合体(II)のPT値)]が0.4〜1.3であるゴム変性スチレン系樹脂組成物に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、前記したように、ジエン系ゴム重合体および/またはアクリル系ゴム重合体であるゴム重合体(A)の存在下に、シアン化ビニル化合物15〜40重量%、芳香族ビニル化合物60〜85重量%ならびにアルキル(メタ)アクリレート、マレイミド化合物および(メタ)アクリル酸から選ばれた少なくとも1種の、該シアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物と共重合可能なモノマー0〜25重量%からなる単量体混合物(B)を重合させてなり、かつグラフト率が10〜80重量%である平均粒径が80〜400μm、嵩比重が0.25〜0.5の固体状態のグラフト共重合体(I)と、平均粒径が200μm〜8mm、嵩比重が0.5〜0.9の固体状態のスチレン系共重合体(II)とを混合してなり、前記グラフト共重合体(I)のPT値と前記スチレン系共重合体(II)のPT値との比率[(グラフト共重合体(I)のPT値)/(スチレン系共重合体(II)のPT値)]が0.4〜1.3であるものである。
【0010】
なお、本発明において、前記固体状態の共重合体とは、たとえば共重合体のパウダー、ビーズ、ペレット、塊状物、粉砕品などを示し、たとえばパウダーのばあい、含水率が30重量%以下のものが好適に用いられる。
【0011】
また、本発明において、前記共重合体のPT値とは、プラストミル(溶融混練装置)における平衡トルク値、すなわち溶融混練時の共重合体の粘度(プラストミルのチャンバー温度が200℃のときの値)を示す。本発明においてとくに重要なのは、かかる共重合体のPT値であり、前記グラフト共重合体(I)のPT値とスチレン系共重合体(II)のPT値との比率が特定範囲内に含まれることから、従来問題とされてきたグラフト共重合体の分散性が改善され、マトリックスでグラフト共重合体(I)はスチレン系共重合体(II)に均一に分散されてすぐれた耐衝撃性および表面外観性を有する成形品を与えるゴム変性スチレン系樹脂組成物となるのである。
【0012】
本発明に用いられるゴム重合体(A)はジエン系ゴム重合体および/またはアクリル系ゴム重合体であり、その種類にはとくに限定がないが、その具体例としては、たとえばポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステルゴム、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリ(メタ)アクリル酸エステルゴム、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン−アクリロニトリルゴム、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン−アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
なお、本発明においては、えられるゴム変性スチレン系樹脂組成物による成形品の耐衝撃性がより向上するという点から、前記ゴム重合体(A)として、ゴムラテックス100部(重量部、以下同様)(固形分)に対して、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸の少なくとも1種の不飽和酸5〜50重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレート50〜95重量%ならびに該不飽和酸およびアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な単量体0〜40重量%からなる成分を重合させて調製した酸基含有ラテックスを用いる凝集肥大法により製造されたゴム重合体を用いることが好ましく、とくに、ゴムラテックス100部(固形分)に対して、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸の少なくとも1種の不飽和酸5〜25重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレート5〜30重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルメタクリレート20〜80重量%ならびに芳香族ビニル単量体、分子中に2つ以上の重合性官能基を有する単量体およびシアン化ビニル化合物の少なくとも1種の、該不飽和酸、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートと共重合可能なモノマー0〜40重量%からなる成分を重合させて調製した酸基含有ラテックスを用いることが好ましい。
【0014】
また、前記ゴム重合体(A)の体積平均粒径は、耐衝撃性の向上の点から、好ましくは100〜2000nm、さらに好ましくは150〜1500nm、とくに好ましくは180〜1200nmである。
【0015】
本発明に用いられる単量体混合物(B)は、それぞれ特定量のシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物ならびにアルキル(メタ)アクリレート、マレイミド化合物および(メタ)アクリル酸から選ばれた少なくとも1種の、該シアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物と共重合可能なモノマーからなるものである。
【0016】
前記シアン化ビニル化合物としては、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどがあげられる。
【0017】
単量体混合物(B)中のシアン化ビニル化合物の量は、耐衝撃性を充分に向上させるためには、15重量%以上、好ましくは20重量%以上であり、また加工性がいちじるしく低下しないようにするためには、40重量%以下、好ましくは35重量%以下である。
【0018】
前記芳香族ビニル化合物としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルナフタレンなどがあげられる。
【0019】
単量体混合物(B)中の芳香族ビニル化合物の量は、加工性がいちじるしく低下しないようにするためには、60重量%以上、好ましくは65重量%以上であり、また耐衝撃性が低下しないようにするためには、85重量%以下、好ましくは80重量%以下である。
【0020】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0021】
前記マレイミド化合物としては、たとえばマレイミド、ブチルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどがあげられる。
【0022】
前記(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタクリル酸である。
【0023】
単量体混合物(B)中のシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物と共重合可能なモノマーの量は、耐衝撃性が低下しないようにするためには、25重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
【0024】
なお、前記単量体混合物(B)を構成するシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物およびこれらと共重合可能なモノマーとしては、それぞれたとえば前記例示した各モノマーを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
また、工業的見地からすると、シアン化ビニル化合物としてアクリロニトリル、芳香族ビニル化合物としてスチレン、アルキル(メタ)アクリレートとしてブチルアクリレートおよびメチルメタクリレート、マレイミド化合物とてフェニルマレイミドならびに(メタ)アクリル酸としてメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0026】
前記ゴム重合体(A)の存在下に単量体混合物(B)を重合させてグラフト共重合体(I)をうる方法にはとくに限定がないが、かかるグラフト共重合体(I)が特定のグラフト率を有するものであることから、たとえば塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法などを採用すると、高グラフト効率を維持し、かかる特定のグラフト率が付与されるように制御することが比較的困難となるばあいがあるので、乳化重合法を採用することが好ましい。
【0027】
グラフト共重合体(I)をうる際には、たとえば過硫酸カリウムなどの熱分解開始剤や、Fe−還元剤−有機パーオキサイドなどのレドックス系開始剤などの公知の重合開始剤を使用することができる。また、たとえばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、テルピノレンなどの公知の連鎖移動剤もグラフト共重合体(I)のグラフト率を制御しうる範囲内で使用することができる。乳化剤としては、たとえばロジン酸カリウム、ロジン酸ソーダなどのロジン酸金属塩、パルミチン酸ソーダ、オレイン酸ソーダなどの高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、パルミチルスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホコハク酸ソーダなどのスルホン酸ソーダなどの公知の乳化剤、乳化助剤を使用することができる。
【0028】
また、グラフト重合させるべき単量体混合物(B)を一括でまたは連続的にゴム重合体(A)に添加し、ラジカル発生下で重合させるなどしてグラフト共重合体(I)をうることができる。
【0029】
たとえばグラフト共重合体(I)のラテックスからポリマー粉末を回収する方法にはとくに限定がなく、通常の方法、たとえばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸などの無機酸、有機酸を添加し、ラテックスを凝固させたのち、熱処理、脱水乾燥する方法などを採用することができるほか、スプレー乾燥法も使用することができる。
【0030】
また、前記ポリマー粉末の回収の際に、ポリマー粉末の劣化、流動性、保存性などの制御、その特性を充分に発現させるために、所望の安定剤、滑剤などを配合することができる。
【0031】
前記安定剤としては、たとえばゴム変性スチレン系樹脂に通常使用される公知のヒンダードフェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤などがあげられる。前記滑剤としては、たとえば高級脂肪酸ビスアミド、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル、高級脂肪酸と多価アルコールとのエステル、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸、高級アルコール、オレフィンワックスなどがあげられる。これらの安定剤、滑剤は、グラフト共重合体(I)にそのまま添加してもよいが、その効果をより充分に発現させるために、微分散した形態、たとえば乳化状態またはスラリー状態にてグラフト共重合体(I)のラテックスに混合するほうが好ましい。
【0032】
かくしてえられる固体状態のグラフト共重合体(I)のグラフト率は、耐衝撃性および成形品表面性を充分に向上させるという点から、10重量%以上、好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、また加工性が低下しないようにするという点から、80重量%以下、好ましくは75重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下である。
【0033】
本発明において、グラフト共重合体のグラフト率とは、共重合体のメチルエチルケトン可溶分、メチルエチルケトン不溶分および重合転化率に基づいて求めた値をいう。
【0034】
固体状態のグラフト共重合体(I)の平均粒径は、グラフト共重合体の製造時の安全性が高く、取り扱いが容易であるという点から、80μm以上、好ましくは100μm以上、さらに好ましくは130μm以上であり、またグラフト共重合体の分散性、すなわちゴム変性スチレン系樹脂組成物の耐衝撃性の向上という点から、400μm以下、好ましくは350μm以下、さらに好ましくは330μm以下である。
【0035】
本発明において、共重合体の平均粒径とは、共重合体が微小であるばあい、たとえばパウダー、ビーズなどであるばあいには、これらをスラリーにして日機装(株)製のMICROTRAC FRAにて測定した値をいい、また共重合体がたとえばペレット、塊状物、粉砕品などであるばあいには、これらを写真撮影した撮影画像を用い、(株)ニレコ製のLUZEX IID画像解析装置による測定値から平均体積を算出し、真球に換算して求めた値をいう。
【0036】
さらに、前記固体状態のグラフト共重合体(I)の嵩比重は、グラフト共重合体の製造時の安全性が高く、取り扱いが容易であるという点から、0.25以上、好ましくは0.27以上、さらに好ましくは0.28以上であり、またグラフト共重合体の分散性、すなわちゴム変性スチレン系樹脂組成物の耐衝撃性の向上および成形品の表面性の向上という点から、0.5以下、好ましくは0.45以下、さらに好ましくは0.43以下である。
【0037】
本発明において、共重合体の嵩比重とは、JIS K6721に記載の方法に準拠し、(株)蔵持科学製作所製の嵩比重測定器にて測定した値をいう。
【0038】
なお、前記グラフト共重合体(I)は、通常0.3〜5kgfm程度のPT値を有するものである。
【0039】
前記グラフト共重合体(I)と混合することができるスチレン系共重合体(II)としては、たとえばアクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−フェニルマレイミド共重合体、アクリロニトリル−スチレン−α−メチルスチレン−フェニルマレイミド共重合体、スチレン−フェニルマレイミド共重合体、ポリスチレン、スチレン−フェニルマレイミド共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などがあげられる。
【0040】
本発明において、耐衝撃性および加工性をより向上させるという点から、スチレン系共重合体(II)がシアン化ビニル化合物、マレイミド化合物、アルキル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸から選ばれた少なくとも1種のモノマーと芳香族ビニル化合物とを重合させてなる共重合体であることが好ましく、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、マレイミド化合物0〜30重量%、アルキル(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリル酸0〜30重量%ならびに芳香族ビニル化合物60〜90重量%からなるモノマー成分を重合させてなる共重合体であることがさらに好ましい。
【0041】
前記シアン化ビニル化合物としては、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどがあげられる。
【0042】
前記マレイミド化合物としては、たとえばマレイミド、ブチルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどがあげられる。
【0043】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0044】
前記(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタクリル酸である。
【0045】
前記芳香族ビニル化合物としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルナフタレンなどがあげられる。
【0046】
なお、スチレン系共重合体(II)をうる際に好適に用いられるシアン化ビニル化合物、マレイミド化合物、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸および芳香族ビニル化合物としては、それぞれたとえば前記例示した各モノマーを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
また、工業的見地からすると、シアン化ビニル化合物としてアクリロニトリル、マレイミド化合物としてフェニルマレイミド、アルキル(メタ)アクリレートとしてブチルアクリレートおよびメチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸としてメタクリル酸ならびに芳香族ビニル化合物としてスチレンおよびα−メチルスチレンを用いることが好ましい。
【0048】
前記スチレン系共重合体(II)をうる方法にはとくに限定がなく、たとえば塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、乳化重合法などの公知の重合法を採用することができる。また、たとえば有機パーオキサイド、過硫酸カリウムなどの熱分解開始剤、Fe−還元剤−有機パーオキサイドなどのレドックス系開始剤などの公知の重合開始剤や、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、テルピノレンなどの公知の連鎖移動剤を使用し、重合させるべきモノマー成分を一括でまたは連続的に添加し、ラジカル発生下で重合させることができる。さらに必要に応じて、たとえばアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、高級脂肪酸金属塩、ロジン酸金属塩などの界面活性剤も使用することができる。
【0049】
固体状態のスチレン系共重合体(II)の平均粒径は、製造時の安全性が高く、取り扱いが容易であるという点から、200μm以上、好ましくは250μm以上、さらに好ましくは300μm以上であり、また耐衝撃性および成形品の表面性の向上という点から、8mm以下、好ましくは6mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。
【0050】
また、前記固体状態のスチレン系共重合体(II)の嵩比重は、製造時の安全性が高く、取り扱いが容易であるという点から、0.5以上、好ましくは0.55以上、さらに好ましくは0.57以上であり、また耐衝撃性および成形品の表面性の向上という点から、0.9以下、好ましくは0.85以下、さらに好ましくは0.83以下である。
【0051】
なお、前記スチレン系共重合体(II)は、通常0.2〜5kgfm程度のPT値を有するものである。
【0052】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、前記グラフト共重合体(I)とスチレン系共重合体(II)とを混合してうることができる。かかる混合の方法にはとくに限定がなく、たとえばブレンダーなどで両者を混合したのち、たとえば1軸押出機、2軸押出機などで200〜280℃程度で溶融混練するなどすればよい。
【0053】
グラフト共重合体(I)とスチレン系共重合体(II)との割合は、耐衝撃性の向上という点から、両者の重量比(グラフト共重合体(I)/スチレン系共重合体(II))が10/90以上、好ましくは15/85以上となるようにすることが望ましく、また加工性および成形品の表面性の向上という点から、かかる重量比が70/30以下、好ましくは60/40以下となるようにすることが望ましい。
【0054】
なお、グラフト共重合体(I)とスチレン系共重合体(II)との組合わせとして、耐衝撃性および成形品表面性の向上効果を発現させるために、平均粒径が80〜400μm、嵩比重が0.25〜0.5のグラフト共重合体(I)と平均粒径が200μm〜8mm、嵩比重が0.5〜0.9のスチレン系共重合体(II)とを用いることが必要であるが、かかる物性の向上効果をさらに充分に発現させるためには、平均粒径が100〜350μm、嵩比重が0.27〜0.45のグラフト共重合体(I)と平均粒径が250μm〜6mm、嵩比重が0.55〜0.85のスチレン系共重合体(II)とを用いることが好ましい。
【0055】
前記グラフト共重合体(I)のPT値とスチレン系共重合体(II)のPT値との比率[(グラフト共重合体(I)のPT値)/(スチレン系共重合体(II)のPT値)]は、前記したように、耐衝撃性および表面外観性の改善のために、0.4〜1.3であることが必要であるが、とくに耐衝撃性の向上という点から、かかる比率は0.4以上、好ましくは0.45以上、さらに好ましくは0.5以上であり、またとくに成形品の表面外観性の向上という点から、1.3以下、好ましくは1.1以下、さらに好ましくは1.05以下である。
【0056】
なお、各共重合体のPT値は、用いるゴム重合体(A)の種類、単量体混合物(B)の組成などや、たとえばシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物などのモノマー成分の組成などや、重合の際に用いることができるたとえばt−ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤の量などによって調整することができる。
【0057】
また、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物には、通常よく知られた酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、顔料、帯電防止剤、滑剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。とくに、通常スチレン系樹脂に用いられるヒンダードフェノール系、イオウ系、リン系、ヒンダードアミン系の安定剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、オルガノポリシロキサン、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル、高級脂肪酸のアミド、ビスアミドおよびその変性体、オリゴアミド、高級脂肪酸の金属塩などの内部滑剤・外部滑剤などを用いると、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を成形用樹脂組成物としてより高性能なものにすることができる。
【0058】
前記ヒンダードフェノール系の安定剤の具体例としては、たとえば1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル−ブタン、n−オクタデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、テトラキス[メチレン−3(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート)などがあげられる。
【0059】
前記イオウ系の安定剤の具体例としては、たとえば3,3′−チオジプロピオン酸、ジアルキル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)、テトラキス[メチレン−3−(アルキルチオ)プロピオネート]メタン、ビス[2−メチル−4(3−アルキル−チオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィドなどがあげられる。
【0060】
前記リン系の安定剤の具体例としては、たとえばステアリルフェニルホスファイト、トリス(モノ,ジ,ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4−ジフェニレンホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどがあげられる。
【0061】
前記ヒンダードアミン系の安定剤の具体例としては、たとえばコハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などがあげられる。
【0062】
なお、これらの安定剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の具体例としては、たとえば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどがあげられる。
【0064】
前記オルガノポリシロキサンの具体例としては、たとえばポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなどがあげられる。
【0065】
前記脂肪族炭化水素の具体例としては、たとえば合成パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどがあげられる。
【0066】
前記高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルの具体例としては、たとえばモンタン酸とステアリルアルコールとのエステル、ステアリルステアレート、ベヘネルベヘネートなどがあげられる。
【0067】
前記高級脂肪酸のアミド、ビスアミドおよびその変性体、オリゴアミドの具体例としては、たとえばステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸などの高級脂肪酸とコハク酸などのジカルボン酸とエチレンジアミンなどのジアミンとから脱水反応により合成される、ビスアミドより高い融点を有する化合物などがあげられる。
【0068】
前記高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、たとえばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪族のカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カドミウム塩などがあげられる。
【0069】
なお、これらの滑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
また、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物には、難燃性の必要の度合いにより、ハロゲン系、ホスファイト系の難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン化合物、アルミナなどのアルミニウム化合物などを配合してもよい。
【0071】
さらに、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物には、弾性率などの機械的特性や耐熱性を向上させるために、ガラスファイバー、カーボンファイバーなどの補強繊維や、マイカ、タルク、クレー、ガラスビーズなどの充填剤を配合してもよい。
【0072】
かくしてえられる本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、本来スチレン系樹脂が有するすぐれた耐熱性、剛性および加工性を有するうえ、さらに経済性にすぐれるほか、従来より望まれていたすぐれた耐衝撃性および成形品表面性を併有するものである。
【0073】
このことから、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、たとえば自動車の内装材、家電製品やOA機器のハウジングなどに好適に利用することができる。
【0074】
【実施例】
つぎに、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
なお、以下の参考例、製造例、比較製造例、実施例および比較例において、各物性および特性の測定は、それぞれ以下の方法にしたがって行なった。
【0076】
[ゴム重合体(A)の体積平均粒径]
ゴム重合体ラテックスについて、日機装(株)製のマイクロトラックUPA(MICROTRAC UPA)粒度分布計を用いて測定した。
【0077】
[重合転化率]
ガスクロマトグラフィー分析を行なって算出した。
【0078】
[グラフト共重合体(I)のグラフト率]
グラフト共重合体(I)のパウダーを、メチルエチルケトンに溶解させて遠心分離し、グラフト共重合体(I)のメチルエチルケトン可溶分と不溶分とをえた。さらにメチルエチルケトン可溶分にメタノールを添加して沈澱させ、これを取り出した。この沈澱物とメチルエチルケトン不溶分との比率および重合転化率から、グラフト率を特定した。
【0079】
[スチレン系共重合体(II)の還元粘度]
ジメチルホルムアミド溶液に0.3g/dlの濃度でスチレン系共重合体(II)を溶解させたのち、30℃でオスワルド粘度計にて溶液粘度を測定し、算出した。
【0080】
[平均粒径]
パウダー状もしくはビーズ状のグラフト共重合体(I)またはスチレン系共重合体(II)は、スラリー状態にしたのち、日機装(株)製のマイクロトラックFRA(MICROTRAC FRA)を用いて平均粒径を測定した。
【0081】
ペレット状のスチレン系共重合体(II)は、まず平面に横に置いた円柱状ペレットを真上から写真撮影し、その撮影画像中の100個について、(株)ニレコ製のLUZEX IID画像解析装置によって円柱の平均長さおよび円柱の平均径を求めたのち、円柱の平均体積を算出し、この平均体積を真球に換算した直径を平均粒径とした。
【0082】
[嵩比重]
JIS K6721に記載の方法に準拠し、(株)蔵持科学製作所製の嵩比重測定器で測定した。
【0083】
[PT値]
東洋精機(株)製のラボプラストミル(20C200型)を用い、チャンバー温度200℃、ローター回転数40rpmの条件でグラフト共重合体(I)およびスチレン系共重合体(II)それぞれについて平衡トルクを測定し、算出した。
【0084】
[光沢]
射出成形してえたASTM規格の1号ダンベルのグロスを、日本電色(株)製(Σ80型)の反射率計を用いて入射角60°、反射角60°で測定した。
【0085】
[耐衝撃性]
(イ)IZOD衝撃強度
ASTM D256規格(1/4インチ厚さ)の方法にて23℃で評価した。
【0086】
(ロ)平板の落錘衝撃強度
射出成形してえた2mm×100mm×150mmの平板について、23℃での半数破壊エネルギー(落錘重量×高さ)で評価した。
【0087】
[引張強度および引張伸び]
ASTM D638規格の方法にて、1号ダンベルを用いて23℃で評価した。
【0088】
[耐熱性(HDT)]
ASTM D648規格の方法にて、18.6kg/cm2荷重の熱変形温度で評価した。
【0089】
[流動性]
(株)ファナック製のFAS100B射出成形機を用い、シリンダー温度250℃、射出圧力1350kg/cm2にて、厚さ3mmのスパイラル形状の金型内における樹脂組成物の流動長で評価した。
【0090】
なお、前記IZOD衝撃強度、引張強度、引張伸びおよび耐熱性の評価に用いた試験片は、(株)ファナック製のFAS100B射出成形機を用い、シリンダー温度を240〜270℃に設定して成形してえられたものである。
【0091】
また、以下の略号はそれぞれつぎの化合物を示す。
BA :ブチルアクリレート
BMA :ブチルメタクリレート
St :スチレン
MAA :メタクリル酸
tDM :t−ドデシルメルカプタン
CHP :クメンハイドロパーオキサイド
AN :アクリロニトリル
PMI :N−フェニルマレイミド
αMSt:アルファ−メチルスチレン
EDTA:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
DAP :ジアリルフタレート
BPO :t−ブチルパーオキサイド
【0092】
参考例1〜4(ゴム重合体(A)の製造)
参考例1(ゴム重合体(A−1)の製造)
第一段階として、ゴム重合体(A−1)に肥大化させるために必要な未肥大ゴム重合体を製造した。
【0093】
100リットル重合反応器に以下の成分を仕込んだ。
【0094】
つぎに、前記重合反応器内の空気を真空ポンプで除いたのち、以下の成分を仕込んだ。
【0095】
つぎに、系の温度を60℃まで昇温し、重合を開始した。重合は25時間で終了し、未肥大ゴム重合体をえた。重合転化率は96重量%であり、未肥大ゴム重合体の粒径は85nmであった。
【0096】
第二段階として、未肥大ゴム重合体からゴム重合体(A−1)に肥大化させるために必要な酸基含有ラテックス(S)を以下のように製造した。
【0097】
撹拌機、還流冷却器、チッ素ガス導入口、モノマー導入口および温度計が設置された反応器に、以下の成分を仕込んだ。
【0098】
つぎに、反応器内を撹拌しながらチッ素ガス気流下に70℃まで昇温させた。70℃に到達したのち、BMA25部、BA5部、tDM0.1部およびCHP0.15部の混合物を2時間かけて滴下し、ついでジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.3部を加え、さらにBMA50部、BA4部、MAA16部、tDM0.5部およびCHP0.15部を4時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で1時間撹拌を続けて重合を終了し、酸基含有ラテックス(S)をえた。重合転化率は99重量%であった。
【0099】
第三段階として、先に製造した未肥大ゴム重合体と酸基含有ラテックス(S)とを用い、ゴム重合体(A−1)を製造した。
【0100】
未肥大ゴム重合体のラテックス100部(固形分)に酸基含有ラテックス(S)3.7部(固形分)を60℃で添加したのち、撹拌を1時間続けて肥大化させ、ゴム重合体(A−1)をえた。ゴム重合体(A−1)の体積平均粒径は260nmであった。
【0101】
参考例2(ゴム重合体(A−2)の製造)
参考例1の第一段階で、ブタジエン100部のかわりにブタジエン70部およびスチレン30部を用いたほかは参考例1の第一段階と同様にして重合させた。重合は20時間で終了し、未肥大ゴム重合体をえた。重合転化率は97重量%であり、未肥大ゴム重合体の粒径は90nmであった。
【0102】
つぎに、参考例1の第三段階で、かかる参考例2でえられた前記未肥大ゴム重合体を用い、酸基含有ラテックス(S)の量を2.2部(固形分)に変更したほかは参考例1の第三段階と同様にしてゴム重合体(A−2)をえた。ゴム重合体(A−2)の体積平均粒径は480nmであった。
【0103】
参考例3(ゴム重合体(A−3)の製造)
参考例1の第一段階で、ブタジエン100部のかわりにブタジエン40部およびブチルアクリレート60部を用いたほかは参考例1の第一段階と同様にして重合させた。重合は21時間で終了し、未肥大ゴム重合体をえた。重合転化率は96重量%であり、未肥大ゴム重合体の粒径は80nmであった。
【0104】
つぎに、参考例1の第三段階で、かかる参考例3でえられた前記未肥大ゴム重合体を用い、酸基含有ラテックス(S)の量を2部(固形分)に変更したほかは参考例1の第三段階と同様にしてゴム重合体(A−3)をえた。ゴム重合体(A−3)の体積平均粒径は560nmであった。
【0105】
参考例4(ゴム重合体(A−4)の製造)
撹拌機、還流冷却器、チッ素ガス導入口、モノマー導入口および温度計が設置された反応器に、以下の成分を仕込んだ。
【0106】
つぎに、反応器内を撹拌しながらチッ素ガス気流下に60℃まで昇温させた。60℃に到達したのち、BA100部、DAP2.5部およびCHP0.3部の混合物を連続的に5時間かけて滴下した。滴下1時間目および3時間目にパルミチン酸ナトリウムをそれぞれ1部および0.5部追加した。滴下終了後、60℃で1時間撹拌を続けて重合を終了し、未肥大ゴム重合体をえた。重合転化率は98重量%であり、未肥大ゴム重合体の粒径は105nmであった。
【0107】
つぎに、参考例1の第三段階で、かかる参考例4でえられた前記未肥大ゴム重合体を用い、酸基含有ラテックス(S)の量を3.5部(固形分)に変更したほかは参考例1の第三段階と同様にしてゴム重合体(A−4)をえた。ゴム重合体(A−4)の体積平均粒径は240nmであった。
【0108】
製造例1〜4(グラフト共重合体(I)の製造)
製造例1(グラフト共重合体(I−1)の製造)
撹拌機、還流冷却器、チッ素ガス導入口、モノマー導入口および温度計が設置された反応器に、以下の成分を仕込んだ。
【0109】
つぎに、反応器内を撹拌しながらチッ素ガス気流下に60℃まで昇温させた。ついでAN10部、St30部、CHP0.4部およびtDM0.28部からなる混合物を連続的に5時間かけて滴下し、重合させた。さらに60℃で2時間撹拌を続け、重合を終了してラテックスをえた。塩化カルシウムを用いてラテックスを凝固後、熱処理、乾燥してパウダー状のグラフト共重合体(I−1)を製造した。
【0110】
製造例2(グラフト共重合体(I−2)の製造)
製造例1において、ゴム重合体(A−1)60部のかわりにゴム重合体(A−2)70部を用い、混合物としてSt21.5部、AN7.5部、BA1部、CHP0.3部およびtDM0.17部からなる混合物を用い、これを連続的に4時間かけて滴下して重合させ、滴下終了後、さらに60℃で2時間撹拌を続け、重合を終了したほかは製造例1と同様にしてパウダー状のグラフト共重合体(I−2)を製造した。
【0111】
製造例3(グラフト共重合体(I−3)の製造)
製造例1において、ゴム重合体(A−1)60部のかわりにゴム重合体(A−3)55部を用い、混合物としてAN11.3部、BA2部、St31.7部、CHP0.4部およびtDM0.36部からなる混合物を用い、これを連続的に6時間かけて滴下して重合させ、滴下終了後、さらに60℃で2時間撹拌を続け、重合を終了したほかは製造例1と同様にしてパウダー状のグラフト共重合体(I−3)を製造した。
【0112】
製造例4(グラフト共重合体(I−4)の製造)
製造例1において、ゴム重合体(A−1)60部のかわりにゴム重合体(A−4)65部を用い、混合物としてAN8.8部、St26.2部、CHP0.35部およびtDM0.21部からなる混合物を用い、これを連続的に5時間かけて滴下して重合させ、滴下終了後、さらに60℃で2時間撹拌を続け、重合を終了したほかは製造例1と同様にしてパウダー状のグラフト共重合体(I−4)を製造した。
【0113】
比較製造例1〜2(グラフト共重合体(I−5)〜(I−6)の製造)
製造例1と同様の方法で表1に示す所定量のゴム重合体(A−1)に所定量のAN、St、CHPおよびtDMの混合物を、比較製造例1では5時間、比較製造例2では6時間で連続的に滴下した。滴下終了後、60℃で2時間撹拌を続けて重合を終了してラテックスをえた。塩化カルシウムを用いてラテックスを凝固後、熱処理、脱水乾燥してパウダー状のグラフト共重合体(I−5)(比較製造例1)およびパウダー状のグラフト共重合体(I−6)(比較製造例2)を製造した。
【0114】
製造例1〜4および比較製造例1〜2において用いられたゴム重合体(A)の種類および量、単量体混合物(B)を含む混合物の組成、グラフト共重合体(I−1)〜(I−6)をうる際の重合転化率、ならびにえられたグラフト共重合体(I−1)〜(I−6)のグラフト率、固体の形状、平均粒径、嵩比重およびPT値をあわせて表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
製造例5〜8および比較製造例3(スチレン系共重合体(II)の製造)
製造例5(スチレン系共重合体(II−1)の製造)
撹拌機、還流冷却器、チッ素ガス導入口、モノマー導入口および温度計が設置された反応器に、以下の成分を仕込んだ。
【0117】
ついで、反応器内を脱気したのち、AN30部、St70部、tDM0.2部およびBPO0.2部を仕込み、75℃で6時間重合させ、さらに90℃で2時間重合させた。重合後スラリーを脱水してビーズ状のスチレン系共重合体(II−1)をえた。
【0118】
製造例6(スチレン系共重合体(II−2)の製造)
撹拌機、還流冷却器、チッ素ガス導入口、モノマー導入口および温度計が設置された反応器に、以下の成分を仕込んだ。
【0119】
つぎに、反応器内を撹拌しながらチッ素ガス気流下に65℃まで昇温させ、65℃に到達したのち、AN25部、St75部、tDM0.25部およびCHP0.2部からなる混合物を仕込み、6時間重合させた。こののち、凝固、熱処理してえられたスラリーを塩化カルシウムを用いて脱水し、さらに押出機にてペレット状のスチレン系共重合体(II−2)を製造した。
【0120】
製造例7(スチレン系共重合体(II−3)の製造)
製造例6と同様の方法で、反応器内にαMSt65部を一括で仕込んだのち、混合物としてAN25部、St10部、tDM0.4部およびCHP0.35部からなる混合物を用い、これを連続的に6時間で滴下した。滴下終了後、65℃で1時間撹拌を続け、重合を終了した。こののち、凝固、熱処理してえられたスラリーを塩化カルシウムを用いて脱水乾燥し、製造例6と同様の方法でペレット状のスチレン系共重合体(II−3)を製造した。
【0121】
製造例8(スチレン系共重合体(II−4)の製造)
製造例6と同様の方法で、混合物としてPMI20部、AN20部、St60部、tDM0.35部およびCHP0.2部からなる混合物を用い、これを連続的に6時間で滴下した。滴下終了後、65℃で1時間撹拌を続け、重合を終了した。こののち、凝固、熱処理してえられたスラリーを塩化カルシウムを用いて脱水乾燥し、製造例6と同様の方法でペレット状のスチレン系共重合体(II−4)を製造した。
【0122】
比較製造例3(スチレン系共重合体(II−5)の製造)
製造例6と同様の方法で、混合物としてαMSt65部、AN25部、St10部、tDM0.2部およびCHP0.35部からなる混合物を用い、これを連続的に6時間で滴下した。滴下終了後、65℃で1時間撹拌を続け、重合を終了した。こののち、凝固、熱処理してえられたスラリーを塩化カルシウムを用いて脱水乾燥し、製造例6と同様の方法でペレット状のスチレン系共重合体(II−5)を製造した。
【0123】
製造例5〜8および比較製造例3において用いられた混合物(モノマー成分、重合開始剤および連鎖移動剤)の組成、スチレン系共重合体(II−1)〜(II−5)をうる際の重合転化率、ならびにえられたスチレン系共重合体(II−1)〜(II−5)の還元粘度、固体の形状、平均粒径、嵩比重およびPT値をあわせて表2に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
実施例1〜4および比較例1〜2(ゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造)
固体状態のグラフト共重合体(I)と固体状態のスチレン系共重合体(II)とを、表3に示す割合でエチレンビスステアリルアミド0.5部(グラフト共重合体(I)およびスチレン系共重合体(II)の合計量100部に対して)とともに(株)タバタ製の2OLブレンダーで均一にブレンドした。さらに、これを(株)タバタ製の1軸ベント押出機(40m/m)で、200〜260℃の温度で溶融混練し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のペレットを製造した。
【0126】
えられたペレットを用い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の物性として、光沢、耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性および流動性を調べた。その結果を表3に示す。
【0127】
なお、表3中の各物性は、いずれも数値が大きいほどすぐれていることを示す。
【0128】
また、グラフト共重合体(I)のPT値とスチレン系共重合体(II)のPT値との比率[(グラフト共重合体(I)のPT値)/(スチレン系共重合体(II)のPT値)]もあわせて表3に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
表3に示された結果から、実施例1〜4のように、特定のグラフト率、平均粒径および嵩比重を有するグラフト共重合体(I)、特定の平均粒径および嵩比重を有するスチレン系共重合体(II)とを併用し、さらに両者のPT値の比率が特定範囲となるようにしてえられたゴム変性スチレン系樹脂組成物は、とくに光沢が高く表面性にすぐれ、耐衝撃強度が大きく、引張特性にすぐれるほか、良好な耐熱性と、良好な流動性に基づく加工性を示すものであることがわかる。
【0131】
これに対して、比較例1〜2のように、前記のごとき特定の条件の少なくとも1つを満足しないばあいには、とくに光沢が低く、表面性に劣り、耐衝撃性が小さく、さらに引張特性にも劣るようになることがわかる。
【0132】
【発明の効果】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、本来スチレン系樹脂が有するすぐれた耐熱性、剛性および加工性を有するうえ、さらに経済性にすぐれるほか、従来より望まれていたすぐれた耐衝撃性および成形品表面性を併有するといった効果を奏する。
【0133】
したがって、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、たとえば自動車の内装材、家電製品やOA機器のハウジングなどに好適に利用することができる。
Claims (3)
- ジエン系ゴム重合体および/またはアクリル系ゴム重合体であるゴム重合体(A)の存在下に、シアン化ビニル化合物15〜40重量%、芳香族ビニル化合物60〜85重量%ならびにアルキル(メタ)アクリレート、マレイミド化合物および(メタ)アクリル酸から選ばれた少なくとも1種の、該シアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物と共重合可能なモノマー0〜25重量%からなる単量体混合物(B)を重合させてなり、かつグラフト率が10〜80重量%である平均粒径が80〜400μm、嵩比重が0.25〜0.5の固体状態のグラフト共重合体(I)と、
平均粒径が200μm〜8mm、嵩比重が0.5〜0.9の固体状態のスチレン系共重合体(II)とを混合してなり、
前記グラフト共重合体(I)のPT値と前記スチレン系共重合体(II)のPT値との比率[(グラフト共重合体(I)のPT値)/(スチレン系共重合体(II)のPT値)]が0.4〜1.3であるゴム変性スチレン系樹脂組成物。 - グラフト共重合体(I)が平均粒径100〜350μmおよび嵩比重0.27〜0.45を有するものであり、スチレン系共重合体(II)が平均粒径250μm〜6mmおよび嵩比重0.55〜0.85を有するものである請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
- スチレン系共重合体(II)がシアン化ビニル化合物、マレイミド化合物、アルキル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸から選ばれた少なくとも1種のモノマーと芳香族ビニル化合物とを重合させてなる共重合体である請求項1または2記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
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