JP3710946B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、着色性、耐候性、耐衝撃性に優れ、剛性、耐熱性、加工性にも優れた樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂、とくにABS樹脂は、その優れた耐衝撃性、耐熱性、剛性、加工性などを有するため、各種雑貨、自動車の内外装材、ジャー炊飯器、電子レンジ、掃除機などの家電製品のハウジング、部品、電話機、ファクシミリなどのOA機器のハウジング、部品などに広く使用されている。
【0003】
近年、ABS樹脂の欠点である耐候性を改良するために、ABS樹脂のゴム成分を光、熱に対し不安定な二重結合を有するブタジエン系ゴムから二重結合をほとんど有さないアクリル系ゴムにかえたAAS樹脂が開発されている。
【0004】
アクリル系ゴムは、ブタジエン系ゴムに比べ、耐衝撃性が発現しにくい、顔料を添加した際に色が鮮かでない(発色性に劣る)という問題がある。発色性を改善するためにアクリル系ゴムの粒子径分布を制御する方法(特開昭58−222139号公報)が提案されているが、発色性、耐衝撃性が充分でない。
【0005】
さらに実用性の観点からアクリル系ゴムとブタジエン系ゴム、シリコーン系ゴムとの併用が検討されている。たとえばブタジエン系ゴムの存在下にアクリルモノマーを重合させてアクリル系ゴムとブタジエン系ゴムとの複合ゴムを作成する方法などが提案されている(特開昭57−167308号公報、特開平2−29452号公報、特開平8−41143号公報)。
【0006】
しかし、これら従来の方法では、ブタジエン系ゴムやシリコーン系ゴムを併用しているにもかかわらず耐衝撃性、発色性が充分に発現しないなどの問題点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のごとき問題を解消し、発色性、耐候性、耐衝撃性に優れ、剛性、耐熱性、加工性にも優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するべく鋭意検討した結果、小粒子ゴムとして特定のアクリル系ゴム重合体、大粒子ゴムとしてジエン系ゴム重合体を使用すると、発色性、耐候性、耐衝撃性に優れ、剛性、耐熱性、加工性にも優れた樹脂組成物が得られることを見出だし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
体積平均粒径10〜199nmのアクリル系ゴム重合体(A)15〜95重量%および体積平均粒径200〜1000nmのジエン系ゴム重合体(C)5〜85重量%からなるゴム重合体(R)10〜90重量部に対して、シアン化ビニル化合物(なお、本発明においてビニルとは、ビニル基のみならずビニリデン基などの重合性C=Cを有する意味でも用いられることばである)、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびこれらと共重合可能な単量体からえらばれる1種以上(ただし、1種のときはシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからえらばれる1種)からなる単量体成分(M)10〜90重量部(合計100重量部)を重合してなるグラフト率が15〜150重量%のグラフト共重合体(G)2〜90重量部および
(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、マレイミド化合物からえらばれる2種以上を重合してなるメチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、0.3g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液)が0.3〜2dl/gの熱可塑性樹脂(F)10〜98重量部(合計100重量部)
からなる樹脂組成物であって、
アクリル系ゴム重合体(A)が、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99.99重量%、多官能性ビニル単量体(Ka)0.01〜2重量%およびこれらと共重合可能な単量体0〜28重量%からなる合計100重量%の単量体混合物(Da)60〜95重量部を重合したのち、
さらにアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99重量%、多官能性ビニル単量体(Kb)1〜8重量%およびこれらと共重合可能な単量体0〜22重量%からなる合計100重量%の単量体混合物(Db)5〜40重量部(合計100重量部)を重合してなり、
多官能性ビニル単量体(Ka)/単量体混合物(Da)の重量比率aと多官能性ビニル単量体(Kb)/単量体混合物(Db)の重量比率bとの比率a/bが0.7以下である請求項1記載の樹脂組成物(請求項1)、
アクリル系ゴム重合体(A)が、その原料単量体100重量部に対して開始剤0.001〜0.15重量部を用いて乳化重合して得られる請求項1記載の樹脂組成物(請求項2)、
開始剤が有機系過酸化物である請求項2記載の樹脂組成物(請求項3)、
ジエン系ゴム重合体(C)が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸からえらばれる1種以上の不飽和酸(c)5〜50重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートからえらばれる1種以上(d)50〜95重量%および(c)、(d)と共重合可能な単量体0〜40重量%を重合させて得られる酸基含有ラテックス(S)にて凝集肥大して得られる請求項1記載の樹脂組成物(請求項4)および
熱可塑性樹脂(F)が、(メタ)アクリル酸エステル2〜25重量%、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物およびマレイミド化合物からえらばれる1種以上75〜98重量%を重合してなり、ゴム重合体(R)の含有量が3〜40重量%である請求項1記載の樹脂組成物(請求項5)
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物は、グラフト共重合体(G)2〜90重量部(以下、部という)、好ましくは5〜80部、さらに好ましくは8〜70部および熱可塑性樹脂(F)10〜98部、好ましくは20〜95部、さらに好ましくは30〜92部(合計100部)からなる樹脂組成物である。
【0011】
グラフト共重合体(G)が2部未満になり、熱可塑性樹脂(F)が98部をこえると、耐衝撃性が低下し、グラフト共重合体(G)が90部をこえ、熱可塑性樹脂(F)が10部未満になると、加工性が低下する。
【0012】
グラフト共重合体(G)を構成するゴム重合体(R)は、耐衝撃性向上のために使用される成分である。ゴム重合体(R)が、小粒子ゴムであるアクリル系ゴム重合体(A)および大粒子ゴムであるジエン系ゴム重合体(C)からなるため、発色性、耐候性、耐衝撃性に優れ、剛性、耐熱性、加工性にも優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0013】
ゴム重合体(R)は、アクリル系ゴム重合体(A)15〜95重量%、好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは35〜85重量%およびジエン系ゴム重合体(C)5〜85重量%、好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは15〜65重量%からなる。アクリル系ゴム重合体(A)が15重量%未満になり、ジエン系ゴム重合体(C)が85重量%をこえると、耐候性が低下し、アクリル系ゴム重合体(A)が95重量%をこえ、ジエン系ゴム重合体(C)が5重量%未満になると、耐衝撃性、発色性が低下する。
【0014】
アクリル系ゴム重合(A)の体積平均粒径は、10〜199nm、好ましくは20〜160nm、さらに好ましくは30〜140nmである。体積平均粒径が10nm未満になると、耐衝撃性が低下し、199nmをこえると、発色性が低下する。
【0015】
ジエン系ゴム重合体(C)の体積平均粒径は、200〜1000nm、好ましくは230〜800nm、さらに好ましく250〜700nmである。体積平均粒径が200nm未満になると、耐衝撃性が低下し、1000nmをこえると、加工性、耐衝撃性が低下する。
【0016】
アクリル系ゴム重合体(A)としては、とくに限定はなく、一般的にアクリル系ゴムとして用いられているものが使用でき、その具体例としては、たとえばアクリル酸ブチルゴム、ブタジエン−アクリル酸ブチルゴム、アクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸ブチルゴム、メタクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸ブチルゴム、アクリル酸ステアリル−アクリル酸ブチルゴム、ジメチルシロキサン−アクリル酸ブチルゴム、シリコーン系/アクリル酸ブチル複合ゴムなどがあげられる。
【0018】
ジエン系ゴム重合体(C)としては、とくに限定はなく、一般的にジエン系ゴムとして用いられているものが使用でき、その具体例としては、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルアクリレート−ブタジエンゴムなどがあげられる。
【0019】
なお、アクリル系ゴム重合体(A)としては、耐衝撃性、加工性、製造安定性の点から、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上50〜99.99重量%、さらには60〜99.99重量%、とくには70〜99.99重量%、多官能性ビニル単量体(分子中に2つ以上の重合性のビニル系官能基を有する単量体をいう)0.01〜10重量%、さらには0.01〜9重量%、とくには0.01〜8重量%およびこれらと共重合可能な単量体0〜40重量%、さらには0〜31重量%、とくには0〜22重量%からなる単量体混合物(D)(合計100重量%)を乳化重合して得られるものがこのましい。アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上が50重量%未満になる、多官能性ビニル単量体が10重量%をこえるまたはこれらと共重合可能な単量体が40重量%をこえると、いずれの場合も耐衝撃性が低下する傾向が生じる。アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートが99.99重量%をこえるまたは多官能性ビニル単量体が0.01重量%未満になると、耐衝撃性、発色性が低下する傾向が生じる。
【0020】
前記単量体混合物(D)におけるアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。これらのうちでは、製造安定性、経済性などの工業的見地から、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートが好ましく、とくにブチルアクリレートが好ましい。
【0021】
前記単量体混合物(D)における多官能性ビニル単量体としては、メタクリル酸アリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメリット酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジンなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。これらのうちでは、耐衝撃性の点から、メタクリル酸アリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0022】
前記単量体混合物(D)におけるこれらと共重合可能な単量体としては、とくに制限はないが、たとえばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどの炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレンなどの芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリル酸誘導体、マレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド化合物などがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。これらのうちでは、耐衝撃性、加工性、経済性の点から、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アクリロニトリル、スチレン、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0023】
前記アクリル系ゴム重合体(A)およびジエン系ゴム重合体(C)は、耐衝撃性、耐候性、加工性、製造安定性、経済性などの点から、酸基含有ラテックス(S)を使用して凝集肥大させてゴム重合体(R)に用いてもよい。
【0024】
酸基含有ラテックス(S)としては、耐衝撃性、製造安定性の点から、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸からえらばれる1種以上の不飽和酸(c)5〜50重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートからえらばれる1種以上(d)50〜95重量%および(c)、(d)と共重合可能な単量体0〜40重量%を重合させて得られるものが好ましい。
【0025】
不飽和酸(c)が5重量%未満になる、前記アルキル(メタ)アクリレート(d)が50重量%未満になるまたは(c)、(d)と共重合可能な単量体が40重量%をこえると、いずれの場合も、凝集肥大がおこりにくい。不飽和酸(c)が50重量%をこえると、製造安定性がわるくなりやすく、前記アルキル(メタ)アクリレート(d)が95重量%をこえると、凝集肥大がおこりにくい。
【0026】
なお、不飽和酸(c)を構成するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸のうちでは、とくに製造安定性の点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0027】
前記(d)成分のうちアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレート(d−1)としては、アクリル酸と炭素数1〜12の直鎖あるいは側鎖を有するアルコールとのエステルがあげられ、とくに製造安定性の点から、アルキル基の炭素数が1〜8のものが好ましい。具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが例示できる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
前記(d)成分のうちアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルメタクリレート(d−2)としては、メタクリル酸と炭素数1〜12の直鎖あるいは側鎖を有するアルコールのエステルがあげられ、とくに製造安定性の点から、アルキル基の炭素数1〜8のものが好ましい。具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが例示できる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
前記(c)、(d)と共重合可能な単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、メタクリル酸アリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメリット酸トリアリルなどの分子中に2つ以上の重合性のビニル系官能基を有する多官能性ビニル単量体などがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
とくに耐衝撃性、製造安定性の点から好ましい酸基含有ラテックス(S)としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸からえらばれる1種以上の不飽和酸(c)5〜25重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上(d−1)5〜30重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルメタクリレートからえらばれる1種以上(d−2)20〜80重量%、(c)、(d−1)、(d−2)と共重合可能な芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および多官能性ビニル単量体からえらばれる1種以上0〜40重量%を重合させて得られる酸基含有ラテックス(S−イ)があげられる。
【0031】
とくにジエン系ゴム重合体(C)は、耐衝撃性、製造安定性の点から、不飽和酸(c)として(メタ)アクリル酸を用いる酸基含有ラテックス(S)、さらには酸基含有ラテックス(S−イ)にて凝集肥大させたものが好ましい。
【0032】
酸基含有ラテックス(S)の使用量は、耐衝撃性、製造安定性の点から、もとのゴム重合体100部(固形分)に対して、0.1〜15部(固形分)、さらには0.3〜10部、とくには0.5〜8部を添加して凝集肥大させる方法が好ましい。また、肥大時のゴム重合体のラテックスの固形分濃度は肥大特性制御の点から、10〜50%、さらには15〜45%が好ましい。
【0033】
なお、肥大を充分に行なわせるために、撹拌下で酸基含有ラテックス(S)を添加したのち、10分から3時間、さらには20分から2時間、所定の温度で均一に撹拌するのが好ましい。肥大時の温度は室温でもよいが、肥大特性制御の点から、35〜85℃、さらには40〜80℃が好ましい。
【0034】
また、酸基含有ラテックス(S)を添加する前のゴム重合体のラテックスは、pHを7以上に調整するのが肥大制御の点から好ましい。pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加してもよい。また、肥大特性制御の点から、脂肪酸金属、ロジン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩などの界面活性剤、塩酸、硫酸、酢酸などの無機酸、有機酸、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの電解質などを必要に応じて添加してもよい。
【0035】
本発明のグラフト共重合体(G)は、ゴム重合体(R)10〜90部、好ましくは15〜85部、さらに好ましく20〜83部に対して、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびこれらと共重合可能な単量体からえらばれる1種以上(ただし、1種のときはシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからえらばれる1種)の単量体成分(M)10〜90部、好ましくは15〜85部、さらに好ましくは17〜80部を重合してなる。ゴム重合体(R)が10部未満になると、耐衝撃性が、90部をこえると、耐衝撃性、加工性が低下する。
【0036】
単量体成分(M)を構成するシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびこれらと共重合体な単量体は、耐衝撃性、加工性の点から、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからえらばれる1種以上10〜90重量%、さらには15〜85重量%、とくには20〜80重量%、芳香族ビニル化合物10〜90重量%、さらには15〜85重量%、とくには20〜80重量%およびこれれらと共重合可能な単量体0〜30重量%、さらには0〜20重量%、とくには0〜10重量%(合計100重量%)の割合で用いるのが好ましい。シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからえらばれる1種以上が10%未満になる、芳香族ビニル化合物が90重量%をこえるまたは共重合可能な単量体が30重量%をこえると、いずれの場合も、耐衝撃性が低下する傾向が生じる。シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからえらばれる1種以上が90重量%をこえるまたは芳香族ビニル化合物が10重量%未満になると、加工性が低下する傾向が生じる。
【0037】
グラフト共重合体(G)のグラフト率は、15〜150重量%、好ましくは20〜85重量%、さらに好ましくは25〜80重量%である。グラフト率が15重量%未満になると、耐衝撃性が低下し、150重量%をこえると、加工性が低下する。
【0038】
単量体成分(M)を構成する前記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
単量体成分(M)を構成する前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸と炭酸数1〜12の直鎖あるいは側鎖を有するアルコールとのエステル、たとえばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
単量体成分(M)を構成する前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレンなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0041】
単量体成分(M)を構成する前記これらと共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体、マレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド化合物があげられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0042】
工業的見地から、前記シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてはメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、芳香族ビニル化合物としてはスチレンがとくに好ましい。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂(F)は、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、マレイミド化合物からえらばれる2種以上を重合してなり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、0.3g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液)が0.3〜2dl/g、好ましくは0.4〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.5〜1dl/gである。還元粘度が0.3dl/g未満になると、耐衝撃性が、2dl/gをこえると、加工性が低下する。
【0044】
耐衝撃性、発色性の点から、熱可塑性樹脂(F)は、(メタ)アクリル酸エステル2〜25重量%、さらには3〜20重量%、とくには4〜18重量%、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物およびマレイミド化合物からえらばれる1種以上75〜98重量%、さらには80〜97重量%、とくには82〜96重量%(合計100重量%)を重合してなる共重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル2〜25重量%、さらには3〜20重量%、とくには4〜18重量%、シアン化ビニル化合物10〜45重量%、さらには15〜40重量%、とくには20〜35重量%、芳香族ビニル化合物30〜88重量%、さらには40〜82重量%、とくには47〜76重量%およびマレイミド化合物0〜40%、さらには0〜30重量%、とくには0〜20重量%(合計100重量%)を重合してなる共重合体がさらに好ましい。
【0045】
熱可塑性樹脂(F)を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−ヒドロキシエチル、2−エチルヘキシル、グリシジルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが、前記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが、前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン、ビニルナフタレンなどが、前記マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミドなどがあげられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。これらのうちでは、工業的見地から、(メタ)アクリル酸エステルとしてはメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、芳香族ビニル化合物としてはスチレン、マレイミド化合物としてはN−フェニルマレイミドがとくに好ましい。
【0046】
熱可塑性樹脂(F)の具体例としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−マレイミド−アクリロニトリル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−マレイミド−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、α−メチルスチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−マレイミド−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−マレイミド−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−マレイミド−アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体などがあげられる。
【0047】
本発明の樹脂組成物におけるゴム重合体(R)含有量は、耐衝撃性、加工性の点から、3〜40重量%、さらには5〜35重量%であるのが好ましい。
【0048】
アクリル系ゴム重合体(A)、ジエン系ゴム重合体(C)、グラフト共重合体(G)、スチレン系樹脂(F)は、本発明の範囲のものが得られるかぎり、いかなる重合法を用いて製造したものでもかまわない。たとえば、公知の塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化−懸濁重合法、乳化−塊状重合法など、本発明の範囲内の組成に制御できればどの重合法によって製造したものでもよい。なお、アクリル系ゴム重合体(A)、ジエン系ゴム重合体(C)、グラフト共重合体(G)の製造は、ゴムの粒径分布、グラフト率を制御しやすいなどの点から、乳化重合で行なうのが好ましい。
【0049】
また、本発明の範囲のものが得られるかぎり、いかなる開始剤、連鎖移動剤、乳化剤を用いて製造したものでもかまわない。
【0050】
前記開始剤としては、有機系過酸化物、無機系過酸化物、アゾ化合物などの公知の開始剤が使用できる。過酸化物は還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤としても使用できる。これらのうちでは、耐衝撃性、発色性の点から、有機系過酸化物を使用するのが好ましい。
【0051】
前記有機系過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させる方法など、公知の添加法が使用できるが、耐衝撃性、発色性の点から、単量体に混合して添加する方法が好ましい。また、有機系過酸化物は、重合安定性、粒径制御の点から、2価の鉄塩などの無機系還元剤およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ソーダ、還元糖、アスコルビン酸などの有機系還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤として使用するのが好ましい。
【0052】
前記有機系過酸化物としては、t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、クミルパーオキシオクテート、t−ブチルイソプロピルカーボネートなどのパーオキシエステル類、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類があげられる。
【0053】
前記無機系過酸化物として過流酸カリウム、過流酸アンモニウムなどがあげられる。
【0054】
なお、アクリル系ゴム重合体(A)の重合は、該ゴム重合体の原料単量体(混合物)100部に対し、開始剤、とくには有機系過酸化物を0.001〜0.15部、さらには0.02〜0.10部を使用するのが好ましい。開始剤が0.001部未満になると、重合転化率が低くなる傾向が生じ、0.15部をこえると、耐衝撃性、発色性が低下する傾向が生じる。また、開始剤として無機系過酸化物を使用する場合は、耐衝撃性、発色性の点から、使用量は、ゴム重合体の原料単量体(混合物)100部に対し、0.001〜0.08部、さらには0.005〜0.06部、とくには0.01〜0.05部を使用するのが好ましい。無機系過酸化物が0.001部未満になると、重合転化率が低くなる傾向が生じ、0.08部をこえると、耐衝撃性、発色性が低下する傾向が生じる。
【0055】
前記連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、テルピノレンなど公知の連鎖移動剤が使用できる。
【0056】
前記乳化剤としては、オレイン酸ソーダ、パルミチン酸ソーダ、ロジン酸ソーダ、ロジン酸カリウムなどの脂肪酸金属塩系乳化剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、炭素数12〜20のアルキルスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホコハク酸ソーダ、α−スルホ脂肪酸エステルソーダ、アルキルエーテルスルホン酸ソーダなどのスルホン酸金属塩系乳化剤、ラウロイルザルコシン酸ソーダ、オレオイルザルコシン酸ソーダなどのザルコシン酸金属塩系乳化剤など公知の乳化剤が使用できる。
【0057】
アクリル系ゴム重合体(A)の重合温度は、耐衝撃性、発色性の点から、20〜80℃、さらには30〜70℃、とくには35〜65℃であるのが好ましい。重合温度が20℃未満になると、重合速度が低く製造生産性に劣る傾向があり、80℃をこえると、耐衝撃性、発色性が低下する傾向が生じる。
【0058】
重合時の単量体や分子中に2つ以上の重合性の官能基を有する多官能性ビニル系単量体の添加方法としては、反応容器に連続的に滴下してもよく、一括で添加してもよく、初期に一部を連続的にまたは一括添加し、そののちのこりを連続的に滴下するなど分割添加してもよい。これらのうちでは、粒径制御の点から、単量体は連続的に滴下する方法または一部を初期に連続的にまたは一括添加し、そののち残りを連続的に滴下する方法が好ましい。
【0059】
たとえば、耐衝撃性、発色性の点から、好ましいアクリル系ゴム重合体(A)として、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99.99重量%、さらには85〜99.98重量%、とくには90〜99.97重量%、多官能性ビニル単量体(Ka)0.01〜2重量%、さらには0.02〜1.5重量%、とくには0.03〜1.2重量%およびこれらと共重合可能な単量体0〜28重量%、さらには0〜13.5重量%、とくには0〜8.8重量%からなる単量体混合物(Da)(合計100重量%)60〜95部、さらには65〜90部、とくには67〜88部を重合したのち、さらにアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99重量%、さらには78〜98.7重量%、とくには84〜98.5重量%、多官能性ビニル単量体(Kb)1〜8重量%、さらには1.3〜7重量%、とくには1.5〜6重量%およびこれらと共重合可能な単量体0〜22重量%、さらには0〜15重量%、とくには0〜10重量%らなる単量体混合物(Db)(合計100重量%)5〜40重量部、さらには10〜35部、とくには12〜33部を重合してなるもの(以下、アクリル系ゴム重合体(A−イ)ともいう)が好ましい。
【0060】
アクリル系ゴム重合体(A−イ)は、耐衝撃性、発色性の点から、さらに多官能性ビニル系単量体(Ka)/単量体混合物(Da)の重量比率aと多官能性ビニル単量体(Kb)/単量体混合物(Db)の重量比率bとの比率a/bが、0.7以下、さらには0.6以下、とくには0.5以下であるのが好ましい。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、通常よく知られた酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、滑剤を必要に応じて適宜使用できる。とくにスチレン系樹脂などに用いられるフェノール系、イオウ系、リン系、ヒンダードアミン系の安定剤、抗酸化剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤およびオルガノポリシロキサン、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル、高級脂肪酸のアミドまたはビスアミドおよびその変性体、オリゴアミド、高級脂肪酸の金属塩類などの内部滑剤、外滑剤などは、本発明の組成物を成形用樹脂として、より高性能なものとするために用いることができる。これらの安定剤、滑剤などは単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、その製造方法によって異なるが、グラフト共重合体(G)、熱可塑性樹脂(F)を、たとえば、ラテックス、スラリー、溶液、粉末、ペレットなどの状態あるいはこれらの組み合わせにて混合して製造することができる。たとえばグラフト共重合体(G)、熱可塑性樹脂(F)がラテックスの場合、ポリマー粉末を回収するときは通常の方法、たとえばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属の塩、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムのようなアルカリ金属の塩、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸のような無機酸および有機酸を添加することでラテックスを凝固させたのち、脱水乾燥させる方法で実施できる。またスプレー乾燥法も使用できる。この際、安定剤などの使用する量の一部を分散液の状態でこれら樹脂のラテックスあるいはスラリーに添加することもできる。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、グラフト共重合体(G)および熱可塑性樹脂(F)の粉末、ペレットなどに対し、必要に応じて前記の安定剤、滑剤、顔料などを配合し、バンバリミキサー、ロールミル、1軸押出し機、2押出し機など公知の溶融混練機にて混練し、射出成形、押出し成形、ブロー成形など公知の成形法で、目的の成形品に賦形することができる。
【0064】
なお、本発明の樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アミド系樹脂からえらばれる1種以上の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイとして使用してもよい。
【0065】
以下、本発明を具体的な実施例で示すが、これら実施例は本発明を限定するものではない。実施例中の「%」は、とくに示さない限り重量%を示す。
【0066】
【実施例】
実施例および比較例で用いた原料の略号および評価方法の説明を、以下にまとめて示す。
【0067】
BA:ブチルアクリレート
AN:アクリロニトリル
St:スチレン
tDM:t−ドデシルメルカプタン
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
PMI:N−フェニルマレイミド
αMSt:α−メチルスチレン
BMA:ブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
[還元粘度の測定]
熱可塑性樹脂(F)をメチルエチルケトンに溶解して遠心分離し、メチルエチルケトン可溶分を得た。この可溶分を、濃度0.3g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液として、30℃で、ウベロード型粘度計にて溶液粘度を測定して算出した。
【0068】
[グラフト率]
グラフト共重合体(G)のパウダーを、メチルエチルケトンに溶解して、遠心分離し、メチルエチルケトン可溶分と不溶分とを得た。この可溶分と不溶分との重量比率から、グラフト率を算出した。
【0069】
[ゴム重合体の体積平均粒径]
各ラテックスについて、日機装(株)製のマイクロトラックUPA粒径分布計を用いて測定した。
【0070】
[重合転化率]
重合転化率は、ガスクロマトグラフィーの結果から算出した。
【0071】
[樹脂組成物の特性]
発色性は、エチレンビスステアリルアミド1部、カーボン0.4部を配合した黒色サンプル(ASTM規格1/4インチ厚みバー、127mm長さ)を目視(5点法)にて評価し、5点:黒色でムラがない、4点:黒色でムラが若干ある、3点:やや青みがある黒色でややムラがある、2点:青みがある黒色でムラがある、1点:青みがある黒色でムラが激しい、とした。
【0072】
耐候性は、エチレンビスステアリルアミド1部、酸化チタン3部、ヒンダードアミン(アデカ(株)製のLA−63)0.3部を添加した白色サンプルのキセノンランプ(83℃)325時間照射後の変色(ΔE値)で評価した。
【0073】
耐衝撃性は、IZOD衝撃強度で評価した。IZOD衝撃強度は、ASTM D−256規格(1/4インチ厚み)の方法にて23℃で測定した(単位:kgcm/cm)。
【0074】
落錘強度は、23℃で100mm×150mm、厚み2mmの平板の半数破壊高×荷重で評価した(単位:kg・m)。
【0075】
引張強度(単位:kg/cm2)、引張伸び(単位:%)は、ASTM D638規格にて1号ダンベルを使用し、23℃で評価した。
【0076】
耐熱性(HDT)は、ASTM D648の18.6kg/cm2荷重の熱変形温度で評価した(単位:℃)。
【0077】
流動性は、(株)ファナック製FAS−100B射出成形機を使用し、シリンダー温度250℃、射出圧力1350kg/cm2にて、3mm厚みのスパイラル形状の金型内における樹脂の流動長(単位:mm)で評価した。
【0078】
(アクリル系ゴム重合体(A)の製造)
アクリル系ゴム重合体(A−1)
重合機に純水200部を仕込み、重合機内を脱気し、窒素置換したのち、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5部を仕込んだ。45℃まで昇温し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部、硫酸第一鉄(七水塩)0.0025部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.3部を加えた。1段目の単量体としてブチルアクリレート75部、トリアリルシアヌレート0.4部、クメンハイドロパーオキサイド0.037部の混合物を6時間連続滴下し、滴下終了後、45℃で1時間撹拌した。滴下1.5時間目と3時間目に各々パルミチン酸ナトリウム0.25部を添加した。つづいて、2段目の単量体としてブチルアクリレート25部、トリアリルシアヌレート0.4部、クメンハイドロパーオキサイド0.013部の混合物を3時間連続滴下し、滴下終了後、45℃で1時間撹拌し、重合を終了した。重合転化率は99%であった。得られたアクリル系ゴム重合体(A−1)のラテックスの体積平均粒径は103nmであった。
【0079】
アクリル系ゴム重合体(A−2)
表1に記載の原料を表1に記載の組成で用いた以外は、アクリル系ゴム重合体(A−1)と同様にして重合した。ただし、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムは初期に3部用いた。
【0080】
アクリル系ゴム重合体(A−3)
表1に記載の原料を表1に記載の組成で用いた以外は、アクリル系ゴム重合体(A−1)と同様にして重合した。ただし、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムは初期に0.25部、滴下1.5時間目に0.25部と3時間目に0.5部を添加した。
【0081】
アクリル系ゴム重合体(A−4)
表1に記載の原料を表1に記載の組成で用いた以外は、アクリル系ゴム重合体(A−1)と同様にして重合した。ただし、単量体は、1段階でブチルアクリレート100部、トリアリルシアヌレート1.6部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部の混合物を9時間連続滴下し、滴下終了後、45℃で1時間撹拌した。ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムは初期0.005部、滴下1時間目、3時間目、6時間目に各々0.15部、0.25部、0.5部を添加した。
【0082】
アクリル系ゴム重合体(A−1)〜(A−4)の原料の組成、比率a/b、重合転化率、体積平均粒径を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
(シリコン系ゴム重合体(B)の製造)
シリコン系ゴム重合体(B−1)
純水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、オクタメチルシクロテトラシロキサン100部、テトラエトキシシラン2部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部をホモジナイザーにて乳化分散させ、オルガノシロキサンのラテックスを得た。重合機内を脱気し、窒素置換したのち、前記のオルガノシロキサンのラテックスを重合機に仕込み、80℃に昇温し、ドデシルベンゼンスルホン酸0.2部を加え、5時間撹拌したのち、23℃で24時間放置し、そののち水酸化ナトリウムで中和し重合を終了した。重合転化率は92%、得られたゴムラテックス(B−1)の体積平均粒径は80nmであった。
【0085】
(酸基含有ラテックス(S)の製造)
すでに本発明者らが提案している特開平8−134316号公報に記載の乳化重合法にて、組成がBMA/BA/MAA=70/14/16の酸基含有共重合体のラテックスを合成し、体積平均粒径が98nmの酸基含有ラテックス(S−1)および体積平均粒径が130nmの酸基含有ラテックス(S−2)を得た。
【0086】
(ジエン系ゴム重合体(C)の製造)
ジエン系ゴム重合体(C−1)
耐圧重合機(100L)に水200部を仕込み、重合機内を脱気し、窒素置換したのち、ブタジエン100部、オレイン酸ナトリウム1部、ロジン酸ナトリウム2部、炭酸ナトリウム0.05部、過硫酸カリウム0.2部、tDM0.2部を仕込んだ。60℃まで昇温し、重合を開始し、重合を16時間で終了し、ジエン系ゴム重合体(C−1)ラテックスを得た。得られたラテックスの重合転化率は95%、体積平均粒径は105nmであった。
【0087】
ジエン系ゴム重合体(C−2)
ジエン系ゴム重合体(C−1)100部を固形分31%、pH11のラテックスに調整し、60℃の温度で酸基含有ラテックス(S−1)3.2部を添加し、60℃で1時間撹拌して肥大させ、体積平均粒径が420nmのジエン系ゴム重合体(C−2)のラテックスを得た。
【0088】
ジエン系ゴム重合体(C−3)および(C−4)
表2に記載の原料を表2に記載の組成で用いた以外は、ジエン系ゴム重合体(C−2)と同様にしてジエン系ゴム重合体(C−3)、(C−4)を製造した。
【0089】
ジエン系ゴム重合体(C−2)〜(C−4)の原料の組成、体積平均粒径を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
(グラフト共重合体(G)の製造)
グラフト共重合体(G−1)
アクリル系ゴム重合体(A−1)のラテックス39部(固形分)、ジエン系ゴム重合体(C−1)のラテックス16部(固形分)、水250部を重合機に入れ窒素置換し、65℃に昇温したのち、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.3部(固形分)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.004部、硫酸第一鉄(七水塩)0.001部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2部を加え、アクリロニトリル11部、スチレン34部およびクメンハイドロパーオキサイド0.3部の混合液を5時間かけて連続添加した。さらに2時間の後重合を行ない、グラフト共重合体(G−1)のラテックスを得た。重合転化率は99%であった。
【0092】
グラフト共重合体(G−2)〜(G−8)
表3に記載の原料を表3に記載の組成で用いた以外は、グラフト共重合体(G−1)と同様にしてグラフト共重合体(G−2)〜(G−8)のラテックスを得た。
【0093】
グラフト共重合体(G−1)〜(G−8)の原料の組成、重合転化率、グラフト率を表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
(熱可塑性樹脂(F)の製造)
熱可塑性樹脂(F−1)
重合機に水250部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5部(固形分)を投入し、60℃に昇温したのち、窒素置換した。つづいてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部、硫酸第一鉄(七水塩)0.0025部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.4部を加えたのち、アクリロニトリル28部、スチレン72部、t−ドデシルメルカプタン0.3部およびクメンハイドロパーオキサイ0.2部の混合液を8時間かけて連続添加した。連続添加1.5時間目にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5部(固形分)、3時間目にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5部(固形分)を追加した。さらに12時間の後重合を行ない、熱可塑性樹脂(F−1)のラテックスを得た。重合転化率は99%、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度は0.67dl/gであった。
【0096】
熱可塑性樹脂(F−2)〜(F−5)
表4に記載の原料を表4に記載の組成で用いた以外は、熱可塑性樹脂(F−1)と同様にして製造した。
【0097】
熱可塑性樹脂(F−1)〜(F−5)の原料の組成、重合転化率、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度を表4に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
実施例1
グラフト共重合体(G−1)のラテックス、熱可塑性樹脂(F−2)のラテックスを表5に示す割合で混合し、フェノール系抗酸化剤を加えたのち、塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して、グラフト共重合体(G−1)、熱可塑性樹脂(F−2)の混合樹脂粉末を得た。ついで得られた混合樹脂粉末に、エチレンビスステアリルアミド1部を配合し、(株)タバタ製20Lブレンダー均一にブレンドした。さらに(株)タバタ製40m/mの1軸押出機で、240℃で溶融混練して、樹脂組成物のペレットを製造した。このペレットから、(株)ファナック製射出成形機FAS−100Bにて250℃で必要なテストピースを成形し、試験に供した。
【0100】
【表5】
【0101】
実施例2〜実施例4および比較例1〜比較例5
表5に記載の原料を表5に記載の組成で用いた以外は、実施例1と同様な方法でペレットを製造し、テストピースを成形して、試験に供した。ただし、1軸押出機の温度は、実施例3、比較例4、比較例5は260℃に設定した。
【0102】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、とくに発色性、耐候性、耐衝撃性に優れ、剛性、耐熱性、加工性にも優れる。
Claims (5)
- 体積平均粒径10〜199nmのアクリル系ゴム重合体(A)15〜95重量%および体積平均粒径200〜1000nmのジエン系ゴム重合体(C)5〜85重量%からなるゴム重合体(R)10〜90重量部に対して、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびこれらと共重合可能な単量体からえらばれる1種以上(ただし、1種のときはシアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからえらばれる1種)からなる単量体成分(M)10〜90重量部(合計100重量部)を重合してなるグラフト率が15〜150重量%のグラフト共重合体(G)2〜90重量部および
(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、マレイミド化合物からえらばれる2種以上を重合してなるメチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、0.3g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液)が0.3〜2dl/gの熱可塑性樹脂(F)10〜98重量部(合計100重量部)
からなる樹脂組成物であって、
アクリル系ゴム重合体(A)が、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99.99重量%、多官能性ビニル単量体(Ka)0.01〜2重量%およびこれらと共重合可能な単量体0〜28重量%からなる単量体混合物(Da)60〜95重量部を重合したのち、
さらにアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートからえらばれる1種以上70〜99重量%、多官能性ビニル単量体(Kb)1〜8重量%およびこれらと共重合可能な単量体0〜22重量%からなる単量体混合物(Db)5〜40重量部(合計100重量部)を重合してなり、
多官能性ビニル単量体(Ka)/単量体混合物(Da)の重量比率aと多官能性ビニル単量体(Kb)/単量体混合物(Db)の重量比率bとの比率a/bが0.7以下である樹脂組成物。 - アクリル系ゴム重合体(A)が、その原料単量体100重量部に対して開始剤0.001〜0.15重量部を用いて乳化重合して得られる請求項1記載の樹脂組成物。
- 開始剤が有機系過酸化物である請求項2記載の樹脂組成物。
- ジエン系ゴム重合体(C)が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸からえらばれる1種以上の不飽和酸(c)5〜50重量%、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートからえらばれる1種以上(d)50〜95重量%および(c)、(d)と共重合可能な単量体0〜40重量%を重合させて得られる酸基含有ラテックス(S)にて凝集肥大して得られる請求項1記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(F)が、(メタ)アクリル酸エステル2〜25重量%、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物およびマレイミド化合物からえらばれる1種以上75〜98重量%を重合してなり、ゴム重合体(R)の含有量が3〜40重量%である請求項1記載の樹脂組成物。
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