JP4203910B2 - 圧電型電気音響変換器 - Google Patents

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Description

本発明は圧電サウンダ、圧電レシーバ、圧電スピーカなどの圧電型電気音響変換器に関するものである。
従来、電子機器、家電製品、携帯電話機などにおいて、警報音や動作音を発生する圧電サウンダあるいは圧電レシーバとして圧電型電気音響変換器が広く用いられている。この種の圧電型電気音響変換器において、四角形の圧電振動板を用いることで、生産効率の向上、音響変換効率の向上および小型化を可能としたものが提案されている。
特許文献1には、四角形の圧電振動板をケースの内部に収容し、圧電振動板の外周部をケースの内周部に設けた支持部で支持するとともに、圧電振動板の外周部とケースの内周部との隙間をシリコーンゴムなどの弾性封止剤で封止した圧電型電気音響変換器が提案されている。この場合、圧電振動板に電気信号を入力するために、圧電振動板の引出電極とケースに固定された端子との間を導電性接着剤で接続している。
特開2003−9286号公報
導電性接着剤は一般に熱硬化型樹脂を基材とし、フィラーを含んでいるため、硬化後のヤング率が高く、振動板を拘束しやすい。また、導電性接着剤の硬化収縮応力によって振動板に歪みを発生させやすい。近年、圧電型電気音響変換器に使用される振動板は非常に薄くかつ小型になり、数十〜数百μm程度の薄肉な振動板が使用されるため、僅かな塗布量の導電性接着剤であっても、振動板の振動特性に大きく影響する。
従来では、導電性接着剤による圧電振動板への拘束力をできるだけ低減するため、圧電振動板とケースに設けられた端子との間にウレタン樹脂などの弾性接着剤を塗布し、その弾性接着剤を跨ぐように導電性接着剤を塗布している。この場合、導電性接着剤は圧電振動板の4コーナ部のうち、対角線上の2コーナ部の近傍に塗布されている。導電性接着剤の下に弾性接着剤が塗布されている関係で、導電性接着剤の硬化収縮応力が緩和され、振動板に歪みが発生するのを防止できる。
しかしながら、このように導電性接着剤を圧電振動板の対角線上の2コーナ部近傍に塗布した場合、振動板の拘束力が大きく、振動の節が内側寄りとなるため、振動の波長が短くなり、共振周波数が高くなる傾向にあった。
また、使用環境の温度変化に伴い、弾性接着剤や導電性接着剤のヤング率が変化するため、振動板の拘束力も変化し、その結果、温度変化による振動板の共振周波数の変動が大きくなる問題があった。
そこで、本発明の目的は、導電性接着剤の塗布位置を工夫することにより、振動の節を外側へシフトさせ、振動板の共振周波数の低周波化を図るとともに、振動板の共振周波数の温度変動を低減できる圧電型電気音響変換器を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、引出電極間に交番信号を印加することにより板厚方向に屈曲振動する四角形の圧電振動板と、内周部に上記圧電振動板の外周部を支持する支持部を持つ筐体と、上記筐体の内周部に内部接続部が露出するように筐体に固定された第1,第2の端子と、上記圧電振動板の引出電極と第1,第2の端子の内部接続部との間にそれぞれ塗布・硬化され、上記引出電極と第1,第2の端子の内部接続部とを電気的に接続する導電性接着剤とを備えた圧電型電気音響変換器において、上記一方の導電性接着剤は、上記圧電振動板の1つのコーナ部近傍における一方の引出電極と第1の端子の内部接続部との間に塗布・硬化され、上記他方の導電性接着剤は、上記コーナ部と隣接する1つのコーナ部近傍における他方の引出電極と第2の端子の内部接続部との間に塗布・硬化されていることを特徴とする圧電型電気音響変換器を提供する。
従来のように振動板の対角位置にある2つのコーナ部近傍に導電性接着剤を塗布した場合、いわば両端支持された振動板を振動させるのに近い振動形態となるのに対し、本発明のように振動板の1辺に沿ったコーナ部近傍に導電性接着剤を塗布した場合には、いわば片持ち支持された振動板を振動させるのに近い振動形態となるため、振動板がより自由に変位することができる。そのため、振動の節を外側へシフトすることができ、振動の波長が長くなり、共振周波数を低くすることができる。また、使用温度環境が変化した場合にも、導電性接着剤のヤング率変化による振動板の拘束力の変化が少ないので、共振周波数の温度変化も小さくできる。
一方の導電性接着剤の塗布位置と他方の導電性接着剤の塗布位置は、請求項2のように圧電振動板を間にして対向していてもよいし、請求項3のように、圧電振動板の1辺上であって、その両端のコーナ部近傍であってもよい。
いずれの場合も、請求項1における作用効果を奏することができる。
なお、端子を筐体の対向位置に配置した場合、請求項2のように導電性接着剤の塗布位置を対向位置とした方が、塗布形状が簡単かつ短くなるので望ましい。
圧電振動板としては、請求項4のように、四角形の金属板に四角形の圧電体を貼り付けたユニモルフ型振動板でもよいし、請求項5のように、複数の圧電セラミックス層を内部電極を間にして積層し、表裏主面に主面電極を設けたバイモルフ型振動板でもよい。
ユニモルフ型圧電振動板の場合、一方の引出電極は圧電体の表面に設けられた電極であり、他方の引出電極は金属板である。
また、積層構造の圧電振動板の場合、一方の引出電極が内部電極と接続され、他方の引出電極は主面電極と接続される。
請求項6のように、圧電振動板と端子との間に弾性接着剤を塗布し、導電性接着剤をこの弾性接着剤の上側を跨ぐように塗布するのがよい。
圧電振動板の外周部と筐体の内周部との隙間はシリコーンゴムなどの弾性封止剤によって封止されるが、その前に圧電振動板を筐体に対して仮止めしておく必要がある。この仮止めを弾性接着剤で行うことにより、圧電振動板と筐体との位置精度を保つことができる。また、導電性接着剤はその硬化時に収縮するため、硬化収縮応力が圧電振動板に作用して共振周波数が変動することがあるが、導電性接着剤の下側に弾性接着剤が塗布されているため、導電性接着剤の硬化収縮応力が弾性接着剤で緩和され、圧電振動板への応力波及を抑制できる。このような弾性接着剤としては例えばウレタン系接着剤などがあり、その硬化後のヤング率は500×106 Pa以下が望ましい。
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、振動板の1辺に沿ったコーナ部近傍に導電性接着剤を塗布することにより、振動板の他の3辺側が自由に変位することができるので、振動板の振動の節を外側へシフトすることができ、振動の波長が長くなり、共振周波数を低周波化できる。また、使用温度環境が変化した場合にも、導電性接着剤のヤング率変化による振動板の拘束力の変化が少ないので、共振周波数の温度変化も低減できる。
本発明に係る圧電型電気音響変換器の第1実施例の分解斜視図である。 ケースに振動板を保持した状態(弾性封止剤の塗布前)の平面図である。 図2の III−III 線拡大断面図である。 図2の IV− IV線拡大断面図である。 図1の圧電型電気音響変換器に用いられるケースの平面図である。 図5のVI −VI 線断面図である。 図5のVII−VII線断面図である。 図5に示すケースの左下コーナ部の拡大斜視図である。 本発明の第1実施例の平面図および振動板の変位状態を示した等高線図である。 第1実施例に対する比較例の平面図および振動板の変位状態を示した等高線図である。 本発明品と比較例の音圧特性の比較図である。 本発明品と比較例の温度変化による周波数の変動量を示す図である。 本発明の第2実施例の圧電型電気音響変換器の平面図である。 本発明の第3実施例の圧電型電気音響変換器の平面図である。 図14に示す圧電型電気音響変換器で使用される圧電振動板の斜視図である。 図14に示す圧電型電気音響変換器の振動板の変位状態を示す有限要素法による解析図である。 第3実施例に対する比較例の平面図である。 図17に示す比較例の振動板の変位状態を示す有限要素法による解析図である。 本発明の第4実施例の圧電振動板の斜視図である。 図19のXX−XX線断面図である。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、実施例を参照して説明する。
図1〜図8は本発明にかかる圧電型電気音響変換器の一例であり、サウンダやリンガなどのように単一周波数で用いられる用途に適した表面実装型の電気音響変換器を示す。
この電気音響変換器は、大略、圧電振動板1とケース10とカバー20とを備えている。ここでは、ケース10とカバー20とで筐体が構成される。
この実施例の圧電振動板1は、図2に示すように、略正方形状の金属板2と、金属板2の上面の1つのコーナ部に偏った位置に貼り付けられた圧電体3とで構成されている。この実施例の圧電体3は長方形に形成されているが、正方形であってもよい。圧電体3は、例えばPZTなどの圧電セラミックスよりなり、その表裏面に電極3a(裏面の電極は図示省略)が全面に設けられ、表裏面の電極3a,3b間に交番信号を印加することにより、圧電体3が平面方向に伸縮する。金属板2は良導電性とバネ弾性とを兼ね備えた材料が望ましく、例えばリン青銅,42Niなどの材料が用いられる。ここでは、金属板2として、セラミック(PZT等)と熱膨張係数が近く、縦×横×厚みが7.6mm×7.6mm×0.03mmの42Ni製金属板を使用した。また、圧電体3としては縦×横×厚みが6.8mm×5.6mm×0.04mmのPZT板を用いた。
ケース10は、図5〜図8に示すように樹脂材料で底壁部10aと4つの側壁部10b〜10eとを持つ4角形の箱型に形成されている。樹脂材料としては、LCP(液晶ポリマー),SPS(シンジオタクチックポリスチレン),PPS(ポリフェニレンサルファイド),エポキシなどの耐熱樹脂が望ましい。4つの側壁部10b〜10eのうち、対向する2つの側壁部10b,10dの内側であってコーナ部近傍の2箇所に、端子11,12の二股状の内側接続部11a,12aが露出している。端子11,12は、ケース10にインサート成形されている。ケース10の外部に露出した端子11,12の外側接続部11b,12bが、側壁部10b,10dの外面に沿ってケース10の底面側へ折り曲げられている(図7参照)。
ケース10の内部の4隅部には、振動板1のコーナ部下面を支持するための支持部10fが形成されている。この支持部10fは上記端子11,12の内側接続部11a,12aの露出面より一段低く形成されている。そのため、支持部10f上に振動板1を載置すると、振動板1の上面と端子11,12の内側接続部11a,12aの上面とがほぼ同一高さになるか、または振動板1がやや低くなる。
上記支持部10fの近傍であって、端子11,12の内側接続部11a,12aより内周側には、支持部10fより低く、かつ振動板1の下面との間で所定の隙間を形成するウレタン受け段10gが形成されている。ウレタン受け段10gの上面と振動板1の下面(支持部10fの上面)との隙間は、後述する弾性接着剤13の表面張力によって、弾性接着剤13が流れ出るのを止められる寸法に設定されている。
また、ケース10の底壁部10aの周辺部には後述する弾性封止剤15を充填するための溝部10hが設けられ、この溝部10hの内側に、支持部10fより低い流れ止め用壁部10iが設けられている。この流れ止め用壁部10iは、弾性封止剤15が底壁部10aへ流れ出るのを規制するものであり、壁部10iの上面と振動板1の下面(支持部10fの上面)との隙間は、弾性封止剤15がその表面張力によって流れが止められる寸法に設定されている。
この実施例では、溝部10hの底面は底壁部10aの上面より高い位置にあり、比較的少量の弾性封止剤15で溝部10hが満たされ、かつ周囲に速やかに回り込むよう、溝部10hは浅底に形成されている。溝部10hおよび壁部10iは、ウレタン受け段10gを除く底壁部10aの周辺部に設けたものであるが、ウレタン受け段10gの内周側を経由して底壁部10aの全周に連続的に設けてもよい。
また、支持部10fおよびウレタン受け段10gと接する溝部10hの終端部(4隅部)は、他の部分に比べて幅広に形成されている。そのため、この幅広部分で余剰の接着剤15を吸収し、接着剤15が振動板1上に溢れるのを防止することができる。
支持部10fより振動板1の中心部寄りで、かつ隣接する2つのコーナ部の2箇所には、振動板1の所定以上の振幅を防止する過振幅防止用受台10pがケース10の底壁部10aから一体に突設されている。
ケース10の側壁部10b〜10eの内面には、圧電振動板1の4辺をガイドするテーパ状の突起部10jが設けられている。突起部10jは、各側壁部10b〜10eにそれぞれ2個ずつ設けられている。
ケース10の側壁部10b〜10eの上縁内面には、弾性封止剤15のはい上がり規制用の凹部10kが形成されている。
また、側壁部10e寄りの底壁部10aには、第1の放音孔10lが形成されている。
ケース10の側壁部10b〜10eのコーナ部頂面には、カバー20の角部を嵌合保持するための略L字形の位置決め凸部10mが形成されている。これら凸部10mの内面には、カバー20をガイドするためのテーパ面10nが形成されている。
ここで、上記構成よりなる圧電型電気音響変換器の組立方法を説明する。
まず圧電振動板1は、その金属板2が底壁と対面するようにケース10の中に収納され、その4つのコーナ部が支持部10fで支持される。このとき、ケース10の側壁部10b〜10eの内面に設けられたテーパ状の突起部10jによって、振動板1の周縁部がガイドされるので、振動板1のコーナ部が支持部10f上に正確に載置される。
振動板1をケース10に収納した後、弾性接着剤13を振動板1の隣合うコーナ部近傍の2箇所に塗布することによって、振動板1(金属板2)はケース10に仮固定される。特に、一方の弾性接着剤13は図3に示すように、金属板2を覆うように塗布されるので、その上に塗布される導電性接着剤14が金属板2に接触するのを防止できる。なお、振動板1の仮固定強度を高める必要がある場合は、残りのコーナ部近傍の2箇所についても弾性接着剤13を塗布してもよい。ここでは弾性接着剤13を振動板1の外側面に沿って線状に塗布したが、塗布形状はこれに限るものではない。弾性接着剤13としては、硬化後のヤング率が500×106 Pa以下の接着剤が望ましく、この実施例では3.7×106 Paのウレタン系接着剤を使用した。弾性接着剤13を塗布した後、加熱硬化させる。
弾性接着剤13を塗布したとき、弾性接着剤13が圧電振動板1と端子11,12との隙間を通って底壁部10aへ流れ落ちる恐れがあるが、図3に示すように、弾性接着剤13が塗布される領域における圧電振動板1の下部にウレタン受け段10gが設けられ、ウレタン受け段10gと圧電振動板1との隙間が狭く設定されているので、弾性接着剤13の表面張力によってその流れが止められ、底壁部10aへの流出が防止される。しかも、上記隙間が速やかに満たされるので、余剰の弾性接着剤13が圧電振動板1と端子11,12との間に盛り上がって形成される。なお、ウレタン受け段10gと圧電振動板1との間に弾性接着剤13の層が存在するので、圧電振動板1が必要以上に拘束されることがない。
弾性接着剤13を硬化させた後、導電性接着剤14を弾性接着剤13の上を跨ぐように塗布する。導電性接着剤14としては特に制限はないが、この実施例では硬化後のヤング率が0.3×109 Paのウレタン系導電ペーストを使用した。導電性接着剤14を塗布した後、これを加熱硬化させることで、金属板2と端子11の内側接続部11aとの間、圧電体3の表面電極3aと端子12の内側接続部12aとの間がそれぞれ電気的に接続される。特に、圧電体3の表面電極3aと端子12の内側接続部12aとを接続する導電性接着剤14は、圧電体3が金属板2の1つのコーナ部に偏った位置に固定されているので、その塗布長さを短くできる。そして、導電性接着剤14の下側には弾性接着剤13が存在し、金属板2を覆っているので、導電性接着剤14が金属板2に直接接触することがない。導電性接着剤14の塗布形状は特に限定されるものではなく、弾性接着剤13の上面を介して金属板2あるいは圧電体3の表面電極3aと、端子11,12の内側接続部11a,12aとを接続できればよい。弾性接着剤13が盛り上がって形成されるので、その上面に導電性接着剤14はアーチ状に塗布され、最短経路を迂回する形となる。したがって、導電性接着剤14の硬化収縮応力は弾性接着剤13で緩和され、振動板1に対する影響が小さくなる。
導電性接着剤14を塗布,硬化させた後、弾性封止剤15を振動板1の周囲全周とケース10の内周部との隙間に塗布し、振動板1の表側と裏側との間の空気漏れを防止する。弾性封止剤15を環状に塗布した後、加熱硬化させる。弾性封止剤15としては、硬化後のヤング率が30×106 Pa以下で、硬化前の粘度が低い熱硬化性接着剤を使用するのがよい。ここではシリコーン系接着剤を使用した。振動板1の周縁部と対向するケース10の内周部に弾性封止剤15を充填するための溝部10hが設けられ、この溝部10hの内側に流れ止め用壁部10iが設けられているので、弾性封止剤15は溝部10hに入り、周囲に行き渡る。振動板1と流れ止め用壁部10iの間には弾性封止剤15がその表面張力によってせき止められる隙間が形成されるため、弾性封止剤15が底壁部10aへ流れ落ちるのが防止される。なお、壁部10iと圧電振動板1との間に弾性封止剤15の層が存在するので、圧電振動板1の振動が抑制されるのを防止することができる。
上記のように振動板1をケース10に取り付けた後、ケース10の側壁部頂面にカバー20が接着剤21によって接着される。カバー20はケース10と同様な材料で平板状に形成されている。カバー20の周縁部が、上記ケース10の側壁部頂面に突設された位置決め用凸部10mの内側テーパ面10nに係合され、正確に位置決めされる。カバー20をケース10に接着することで、カバー20と振動板1との間に音響空間が形成される。カバー20には、第2の放音孔22が形成されている。
上記のようにして表面実装型の圧電型電気音響変換器が完成する。
この実施例では、端子11,12間に所定の交番信号(交流信号または矩形波信号)を印加することで、圧電体3が平面方向に伸縮し、金属板2は伸縮しないので、全体として振動板1を屈曲振動させることができる。振動板1の表側と裏側との間が弾性封止剤15で封止されているので、所定の音波を放音孔22より発生することができる。
図9は、本発明品における圧電型電気音響変換器の導電性接着剤の塗布位置と、振動板の変位状態とを示したものである。
図10は、比較例における圧電型電気音響変換器の導電性接着剤の塗布位置と、振動板の変位状態とを示したものである。
本発明品では導電性接着剤14が振動板1の隣接する2つのコーナ部近傍に塗布されているのに対し、比較例では振動板1の対角線上の2コーナ部近傍に塗布されている。導電性接着剤14の下側には弾性接着剤13が塗布されている。振動板1およびケース10は両者とも同一形状のものを用いた。
図10から明らかなように、比較例のように導電性接着剤14を対角線上の2コーナ部近傍に塗布すると、振動板1の振動の節Kが内側寄りとなり、振動変位が楕円状に歪んでいることがわかる。その結果、振動板1の共振周波数が高くなる。
これに対し、本発明品のように導電性接着剤14を振動板1の隣接する2つのコーナ部近傍に塗布すると、図9のように振動板1の振動の節Kが外側へシフトし、振動変位がほぼ円形で歪みが少ないことが分かる。そのため、比較例に比べて振動板1の共振周波数を低くすることができる。
図11は、本発明品と比較例の音圧特性を示す。
本発明品の場合、比較例に比べて音圧レベルのピークが低周波側へシフトしていることがわかる。
図12は、本発明品と比較例の温度変化による周波数の変動量を示す。
比較例の場合、25℃〜−40℃までの温度変化において、周波数変動量が約0.18kHzであるのに対し、本発明品では0.07kHz程度であり、本発明品の温度変化による周波数変動は比較例の半分以下であることがわかる。
上記実施例では、導電性接着剤14を振動板1の隣接する2つのコーナ部近傍であって、かつ互いに対向する位置に塗布した例を示したが、図13に示すように、振動板1の1つの辺上であって、2つのコーナ部近傍に塗布してもよい。
この場合は、端子11,12の内側接続部11a,12aがケース10の一辺に沿って露出している場合に適用できる。
図14,図15は、第1実施例とは異なる形状のユニモルフ型振動板20を用いた圧電型電気音響変換器の例を示す。第1実施例と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この振動板20は、図15に示すように金属板21の1辺に偏った位置に圧電体22を貼り付けたものである。金属板21および圧電体22の材質は第1実施例と同様であるが、金属板21の縦×横×厚みを7.6mm×7.6mm×0.03mm、圧電体22の縦×横×厚みを5.3mm×7.6mm×0.04mmとした。
この実施例の場合も、導電性接着剤14を振動板20の隣接する2つのコーナ部近傍であって、かつ互いに対向する位置に塗布した。
図16は、図14のように導電性接着剤14を振動板20の隣接する2つのコーナ部近傍に塗布した場合の振動板20の変位状態を示す。
図16から明らかなように、導電性接着剤14が振動板20の隣接する2つのコーナ部近傍に塗布されているため、振動の節Kが外側へシフトし、振動変位がほぼ円形で歪みが少ないことが分かる。そのため、振動板20の共振周波数を低くすることができる。
図17は、第3実施例の振動板20を用い、導電性接着剤14を対角線上の2コーナ部近傍に塗布した例を示し、図18は振動板20の変位状態を示す。
図18に示すように、振動板20の振動の節Kが導電性接着剤14を設けた対角線上の2コーナ部では内側寄りとなり、振動変位が楕円状に歪んでいることがわかる。その結果、振動板20の共振周波数が高くなる。
第1実施例および第3実施例から明らかなように、振動板1,20の形状に関係なく、導電性接着剤の塗布位置を振動板の隣接する2つのコーナ部近傍に塗布することにより、振動の節Kが外側へシフトし、共振周波数を低くできることがわかる。
圧電振動板としては、金属板に圧電体を貼り付けたユニモルフ型振動板に限らず、図19,図20に示すような圧電セラミックの積層体からなるバイモルフ構造の圧電振動板であってもよい。
この振動板30は、例えば特開2001−95094号公報に記載のものである。振動板30は、2層の圧電セラミックス層31,32を積層したものであり、振動板30の表裏主面には主面電極33,34が形成され、セラミックス層31,32の間には内部電極35が形成されている。2つのセラミックス層31,32は、厚み方向において同一方向に分極されている。表側の主面電極33と裏側の主面電極34は、振動板30の辺長よりやや短く形成され、その一端は振動板30の一方の端面に形成された端面電極36に接続されている。そのため、表裏の主面電極33,34は相互に接続されている。内部電極35は主面電極33,34とほぼ対称形状に形成され、内部電極35の一端は上記端面電極36と離れており、他端は振動板30の他端面に形成された端面電極37に接続されている。なお、振動板30の他端部の表裏面には、端面電極37と導通する補助電極38が形成されている。
振動板30の表裏面には、主面電極33,34を覆う樹脂層39が形成されている。この樹脂層39は、振動板30がセラミック材料のみで構成されているため、落下強度を高めるために設けられている。そして、表裏の樹脂層39には、振動板30の隣接する2つのコーナ部近傍に、主面電極33,34が露出する切欠部39aと、補助電極38が露出する切欠部39bとが形成されている。
なお、切欠部39a,39bは表裏一方にのみ設けてもよいが、表裏の方向性をなくすため、この例では表裏面に設けてある。
また、補助電極38は、一定幅の帯状電極とする必要はなく、切欠部39bに対応する箇所のみ設けてもよい。
上記振動板30も図5〜図8と同様なケース10に収納され、対向位置にある切欠部39aに露出する主面電極33と端子11の内部接続部11aとの間、および切欠部39bに露出する補助電極38と端子12の内部接続部12aとの間に、弾性接着剤13が塗布され、振動板30がケース10に仮止めされる。
その後、第1実施例と同様に、導電性接着剤14が弾性接着剤13の上を跨ぐように塗布、硬化される。さらに、振動板30の外周部とケース10の内周部との隙間に弾性封止剤15が塗布され、封止される。
この実施例の場合も、導電性接着剤14の塗布位置が振動板30の隣合うコーナ部近傍であるため、対角線上の2つのコーナ部近傍に塗布する場合に比べて、振動板30の拘束力が低く、振動の節を外側へシフトでき、低周波化できる。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
上記実施例では、圧電体3は単板であったが、これに代えて実施例3の圧電振動板30から樹脂層39を除いたものを金属板に貼り付けた振動板でもよい。
また、振動板がほぼ正方形状の例を示したが、長方形状であってもよい。この場合、導電性接着剤の塗布位置は1つの短辺の両端のコーナ部の近傍に設けるのが望ましい。
振動板がユニモルフ構造の場合、図1に示すように金属板の1つのコーナ部に圧電体を片寄せて接着したものの他、金属板の中央部に圧電体を接着したものでもよいし、金属板の一辺に片寄せて圧電体を接着したものであってもよい。このように、本発明で使用される圧電振動板は、四角形状であれば、その形状や構成は任意である。

Claims (6)

  1. 引出電極間に交番信号を印加することにより板厚方向に屈曲振動する四角形の圧電振動板と、
    内周部に上記圧電振動板の外周部を支持する支持部を持つ筐体と、
    上記筐体の内周部に内部接続部が露出するように筐体に固定された第1,第2の端子と、
    上記圧電振動板の引出電極と第1,第2の端子の内部接続部との間にそれぞれ塗布・硬化され、上記引出電極と第1,第2の端子の内部接続部とを電気的に接続する導電性接着剤とを備えた圧電型電気音響変換器において、
    上記一方の導電性接着剤は、上記圧電振動板の1つのコーナ部近傍における一方の引出電極と第1の端子の内部接続部との間に塗布・硬化され、
    上記他方の導電性接着剤は、上記コーナ部と隣接する1つのコーナ部近傍における他方の引出電極と第2の端子の内部接続部との間に塗布・硬化されていることを特徴とする圧電型電気音響変換器。
  2. 上記一方の導電性接着剤の塗布位置と他方の導電性接着剤の塗布位置は、上記圧電振動板を間にして対向していることを特徴とする請求項1に記載の圧電型電気音響変換器。
  3. 上記一方の導電性接着剤の塗布位置と上記他方の導電性接着剤の塗布位置は、上記圧電振動板の1辺上であって、その両端のコーナ部近傍であることを特徴とする請求項1に記載の圧電型電気音響変換器。
  4. 上記圧電振動板は、四角形の金属板に四角形の圧電体を貼り付けたものであり、
    一方の引出電極は圧電体の表面に設けられた電極であり、他方の引出電極は金属板であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電型電気音響変換器。
  5. 上記圧電振動板は、複数の圧電セラミックス層を内部電極を間にして積層し、表裏主面に主面電極を設けた積層体で構成され、
    一方の引出電極は内部電極と接続され、他方の引出電極は主面電極と接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電型電気音響変換器。
  6. 上記圧電振動板と端子との間には弾性接着剤が塗布され、
    上記導電性接着剤は上記弾性接着剤の上側を跨ぐように塗布されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の圧電型電気音響変換器。
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