JP2004015768A - 圧電型電気音響変換器 - Google Patents
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Abstract
【課題】ケースと圧電発音体との寸法差をできるだけ小さくし、共振周波数が低く、音圧が大きな圧電型電気音響変換器を提供する。
【解決手段】2つの電極間に交番信号を印加することにより屈曲振動する圧電発音体1と、圧電発音体1を収納するケース20と、ケースにインサート成形された一対の端子22,23とを備えた圧電型電気音響変換器であって、一対の端子22,23の内部接続部22a,23aが、ケース20の側壁部の内側面に圧電発音体1に対してほぼ垂直方向に露出しており、端子の内部接続部と圧電発音体の電極とが導電性接着剤33により電気的に接続されている。端子の内部接続部22a,23aがケース20の内側へ大きく張り出さず、ケース20と圧電発音体1との寸法差を小さくできる。
【選択図】 図4
【解決手段】2つの電極間に交番信号を印加することにより屈曲振動する圧電発音体1と、圧電発音体1を収納するケース20と、ケースにインサート成形された一対の端子22,23とを備えた圧電型電気音響変換器であって、一対の端子22,23の内部接続部22a,23aが、ケース20の側壁部の内側面に圧電発音体1に対してほぼ垂直方向に露出しており、端子の内部接続部と圧電発音体の電極とが導電性接着剤33により電気的に接続されている。端子の内部接続部22a,23aがケース20の内側へ大きく張り出さず、ケース20と圧電発音体1との寸法差を小さくできる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電サウンダや圧電スピーカ、圧電レシーバなどの圧電型電気音響変換器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子機器、家電製品、携帯電話機などにおいて、警報音や動作音を発生する圧電サウンダや圧電レシーバが広く用いられている。この種の圧電型電気音響変換器は、金属板の片面に、表裏面に電極を形成した圧電セラミックよりなる圧電体を貼り付けたユニモルフ型の圧電発音体を用いたものが一般的である。
また、積層構造の圧電セラミックからなるバイモルフ型の圧電発音体を用いた圧電型電気音響変換器も提案されている(特開2001−95094号公報参 照)。
【0003】
図8は従来の圧電型電気音響変換器の一例であり、40はケース、41はカバー、42は圧電発音体、43,44はケース40にインサート成形された端子である。ケース40の内部両端には、圧電発音体42の両端部を支持する端子43,44の一端部が水平に露出している。圧電発音体42の電極部分は端子43,44の上に導電性接着剤46により電気的に接続され、その上からシリコーンゴムなどの弾性接着剤47が塗布されて圧電発音体42の周囲がケース40に固定される。
ところが、このように端子43,44の上に圧電発音体42を導電性接着剤46によって直接接続すると、圧電発音体42の両端部が強く拘束されるため、圧電発音体42の変位量が小さくなり、音圧が低下してしまう。
【0004】
そこで、本願出願人は、図9のように、インサート端子43,44より内側のケース40の部位に支持部45を設け、この支持部45に圧電発音体42を支持し、弾性を持つ絶縁剤48で圧電発音体42の端面を覆った後、絶縁剤48を跨いで導電性接着剤46を圧電発音体42と端子43,44との間に塗布した構造を提案している(特願2001−193305号)。なお、導電性接着剤46を塗布した後、弾性接着剤(図示せず)によって圧電発音体42の周囲がケース40に固定される。
この場合には、圧電発音体42の両端部がケース40によって強く拘束されないので、圧電発音体42の変位量が大きくなり、音圧が大きくなるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
端子43,44は導電性接着剤46との導通性を確保するため、所定の長さだけケース40の内側へ露出する必要がある。ところが、上記のように端子43,44の内側に圧電発音体42を支持する支持部45を設けると、端子43,44の露出長だけ圧電発音体42の寸法Sをケース40の寸法Lに比べて小さくしなければならない。近年、電子機器の小型化に伴い、圧電型電気音響変換器も小型化が要求されており、ケース40を小型化するということは、圧電発音体42の寸法Sがさらに小さくなることを意味する。圧電発音体42の寸法Sが小さくなると、その共振周波数が高くなり、音圧が小さくなるため望ましくない。そのため、ケース40の寸法Lと圧電発音体42の寸法Sとの寸法差をできるだけ小さくすることが重要である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ケースと圧電発音体との寸法差をできるだけ小さくし、共振周波数が低く、音圧が大きな圧電型電気音響変換器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、2つの電極間に交番信号を印加することにより屈曲振動する圧電発音体と、上記圧電発音体を収納する筐体と、上記筐体にインサート成形された一対の端子とを備えた圧電型電気音響変換器において、上記一対の端子の内部接続部が、上記筐体の側壁部の内側面に上記圧電発音体に対してほぼ垂直方向に露出しており、上記端子の内部接続部と上記圧電発音体の電極とが導電性接着剤により電気的に接続されていることを特徴とする圧電型電気音響変換器を提供する。
【0008】
端子の内部接続部は筐体の側壁部の内側面に露出するので、筐体の側壁部に圧電発音体の外周縁を近づけることができ、ケースと圧電発音体との寸法差を小さくできる。そのため、ケースの外形寸法が同一でも、従来に比べて圧電発音体の寸法を大きくすることができ、圧電発音体の共振周波数を低く、音圧を大きくすることができる。ほぼ垂直方向に露出する端子と圧電発音体の電極とが導電性接着剤により電気的に接続されるが、端子の露出長はケースの側壁部の高さによって得られるので、導電性接着剤と端子の露出部との接触面積を確保することができ、導通信頼性を得ることができる。
【0009】
請求項2のように、圧電発音体を四角形に形成し、一対の端子を筐体の対向する2つの側壁部の内側面に露出させ、筐体の側壁部の内側に、圧電発音体の4辺を支持する支持部を設け、圧電発音体を支持部に載置した状態で、圧電発音体の電極と端子の内部接続部とをその間に塗布された導電性接着剤により電気的に接続し、圧電発音体の外周部と筐体とをその間に塗布された弾性接着剤により固定するのがよい。
四角形の圧電発音体は、円形の圧電発音体に比べて変位量が大きく、音響変換効率に優れている。このような四角形の圧電発音体を筐体の内部に収納するとき、筐体の側壁部の内側に設けた支持部に圧電発音体の外周部を載置し、その上から導電性接着剤を塗布することで、圧電発音体の両端部が強く拘束されず、圧電発音体の変位量を大きくできる。さらに、圧電発音体の外周部と筐体との間に弾性接着剤を塗布することで、圧電発音体がケースに固定されると同時に、圧電発音体とケースとの隙間が封止される。この接着剤は弾性を持つので、圧電発音体は容易に変位できる。
【0010】
請求項3のように、端子として断面L字形の端子を用い、端子の上方に起立した部分を内部接続部とし、筐体の底面に沿って筐体の内側へ延びる部分を外部接続部としてもよい。
この場合には、端子の形状が単純であり、インサート成形後の曲げ加工も不要である。従来のようなコ字形端子の場合には、ほぼ平板状の端子をインサートした後、ケース外に突出した部分をケースに沿うように折り曲げていたが、L字形端子の場合にはこのような曲げ加工が不要であり、端子のスプリングバックによる反り等の問題もない。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は本発明にかかる圧電型電気音響変換器の一例である圧電サウンダを示す。
この圧電サウンダは、大略、ユニモルフ型の圧電発音体1とケース20とカバー30とで構成されている。ケース20とカバー30とで筐体が構成される。
【0012】
圧電発音体1は、図5,図6に示すように、略正方形状の金属板2と、金属板2の表面全面に形成された絶縁層3と、絶縁層3の上に接着固定された金属板2より小形な略正方形状の圧電体4とで構成されている。
金属板2はバネ弾性を備えた材料が望ましく、例えばリン青銅,42Niなどが用いられる。なお、金属板3が42Niの場合には、セラミック(PZT等)と熱膨張係数が近いので、より信頼性の高いものが得られる。絶縁層3は、ポリイミド、エポキシなどの樹脂コーティングで構成することもできるし、酸化処理によって酸化物被膜を形成してもよい。
【0013】
圧電体4は、2層の圧電セラミック層4a,4bをグリーンシートの状態で内部電極5を間にして積層し、同時焼成したものであり、表裏面のほぼ全面に外部電極6,7が設けられている。各圧電セラミック層4a,4bは、図6に矢印Pで示すように厚み方向に逆向きに分極されている。内部電極5は、その一辺が圧電体4の端面に露出しているが、反対側の辺は圧電体4の端面から一定距離だけ手前で終端となっている。圧電体4の表裏の外部電極6,7は一方の端面電極8を介して相互に接続され、内部電極5は他方の端面電極9を介して表裏面に形成された引出電極10,11と接続されている。引出電極10,11は、圧電体4の1つの辺の中央部に沿って形成された小形の電極であり、表裏の外部電極6,7と電気的に分離されている。一方の端面電極8は圧電体4の1辺に相当する長さを有するが、他方の端面電極9は引出電極10,11の長さに応じた長さとしてある。なお、この実施例では、引出電極10,11を表面だけでなく裏面にも形成したが、これは圧電体4の方向性をなくすためであり、裏面の引出電極11は省略してもよい。また、引出電極10,11を圧電体4の1辺に相当する長さとしてもよい。
圧電体4の裏面は、エポキシ系接着剤などの接着剤12(図5参照)によって絶縁層3の中央部上面に接着されている。金属板2は圧電体4より大形であり、圧電体4より外方へ延出する延長部2aの表面にも絶縁層3が連続的に形成されている。
【0014】
ケース20はセラミックスまたは樹脂などの絶縁性材料で底壁と4つの側壁とを持つ略正方形の箱型に形成されている。ケース20を樹脂で形成する場合には、LCP(液晶ポリマー),SPS(シンジオタクチックポリスチレン),PPS(ポリフェニレンサルファイド),エポキシなどの耐熱樹脂が望ましい。ケース20の側壁の内側には、発音体1を全周で受ける支持部21が形成され、対向する2つの側壁の内側面には、発音体1の表面側外部電極6と引出電極10とにそれぞれ電気的に接続される端子22,23の内部接続部22a,23aが露出している。また、支持部21と端子22,23の内部接続部22a,23aとの間には、ケース20から一体に隔壁部24が形成されている(図4参照)。この隔壁部24は、後述するように支持部21上に金属板2を載置したとき、金属板2が端子22,23に接触するのを防止するスペーサとして機能している。
【0015】
端子22,23はケース20にインサート成形された端子であり、図7に示すように、フープ材29から一体的に打ち抜かれた端子22,23の外端部22a,23aを上方へ垂直に折り曲げ、この折り曲げ部を発音体1との内部接続部としている。このように内部接続部22a,23aをケース底面(発音体1)に対して垂直に起立させることにより、内部接続部22a,23aがケース20の内部へ張り出さず、ケース20の寸法Lと圧電発音体1の寸法Sとの寸法差をできるだけ小さくできる。その結果、圧電発音体1の共振周波数を低く、かつ音圧を大きくすることができる。端子22,23の外部接続部22b,23bはケース20の底面に沿うように内側へ延びている。
【0016】
ケース20の端子22,23を設けていない一方の側壁の底部側に下側放音孔25が形成され、他方の側壁の頂部に放音用の溝26が形成されている。この実施例のカバー30は、ケース20と同種の材料で平板状に形成されている。カバー30をケース20の側壁の頂部に接着剤31で接着することにより、溝26は上側放音孔となる。
なお、カバー30は平板状とする必要はなく、断面略凹型のキャップ形状であってもよい。また、上側放音孔26はケース20の側壁頂部に設けた溝とする必要はなく、カバー30に設けた孔でもよい。
【0017】
圧電発音体1は、その金属板2が底壁と対面するようにケース20の中に収納され、その周辺部が支持部21上に載置される。次に、絶縁剤32が金属板2の縁部と端子22,23の内部接続部22a,23aとの間に線状に塗布され、硬化される。絶縁剤32としては如何なる絶縁性接着剤を用いても良いが、ウレタン系,シリコーン系などの弾性を持つ接着剤を用いる方がよい。次に、上記絶縁剤32に対して直交方向に、導電性接着剤33が表面側外部電極6と端子22の内部接続部22aとの間、および引出電極10と端子23の内部接続部23aとの間に塗布され、硬化される。端子22,23の内部接続部22a,23aは垂直に起立しているが、広い面積で露出しているので、導電性接着剤33との導通面積が大きく、導通信頼性は高い。導電性接着剤33としては、ウレタン系などの弾性を持つ接着剤に導電性フィラーを含むものがよい。導電性接着剤33は金属板2の上に塗布されるが、金属板2の上には絶縁層3が予め設けられ、かつ金属板2の外周縁部は絶縁剤32で覆われているので、導電性接着剤33が金属板2に直接接触することがない。次に、金属板2の周囲全周とケース20との間が接着剤34で固定される。この接着剤34は公知の絶縁性接着剤を用いればよいが、ウレタン系,シリコーン系などの弾性を持つ接着剤を使用するのがよい。上記のように発音体1をケース20に固定した後、ケース20の上面開口部にはカバー30が接着剤31で接着される。カバー30を接着することで、カバー30と発音体1との間、および発音体1とケース20の底部との間には音響空間が形成され、表面実装型の圧電サウンダが完成する。
【0018】
上記のように発音体1とケース20とを固定する接着剤32,33,34として、弾性材料を使用することで、発音体1の変位を最大限にでき、大きな音圧を得ることが可能となる。
また、発音体1の電極部分(表面側外部電極6と引出電極10)と、ケース20の電極部分(端子22,23)とを導電性接着剤33によって接続しているので、金属板2を介して導通を取る場合に比べて、電気的信頼性が向上する。しかも、導電性接着剤33は、ディスペンサーなどの塗布装置によってケース20の上方から塗布することができるので、自動化が容易であり、リード線を半田付けする場合に比べて製造効率および品質を向上させることができる。
【0019】
上記ケース20に設けられた端子22,23間に、発音体1の共振周波数とほぼ等しい周波数の信号を印加すると、圧電体4が平面方向に伸縮し、金属板2は伸縮しないので、全体として発音体1は屈曲変形を起こす。発音体1の周辺部がケース20に支持され、発音体1の表側と裏側との間が接着剤34で封止されているので、所定の音波を発生することができる。この音波は上側放音孔26から外部へ放出される。
【0020】
上記実施例における各部品の寸法は以下の通りである。
圧電体4:6.8mm×6.8mm×30μm(2層の場合、各層の厚みは15μm)
金属板2:8.0mm×8.0mm×20μm
絶縁層3:8.0mm×8.0mm×3μm
ケース20:9.0mm×9.0mm×2.6mm
上記のように、端子22,23の内部接続部22a,23aをケース10の側壁の内側面に露出させ、ケース底面(発音体1)に対して垂直に起立させたので、内部接続部22a,23aがケース10の内側へ大きく張り出さず、圧電発音体1の寸法Sをケース20の寸法Lに対してできるだけ近づけることができた。図9のような従来構造の場合には、S/Lは最大でも85%であったのに対し、本実施例の構造では、S/Lを約90%とすることができた。その結果、ケースの寸法Lが同一でも、圧電発音体1の寸法Sを大きくできるので、従来に比べて共振周波数を低くでき、音圧を大きくすることができた。
【0021】
本発明は上記実施例に限定されるものではない。
圧電体は2層の積層構造に限らず、3層以上であってもよいし、単板構造でもよい。
また、金属板および圧電体は正方形に限らず、長方形あるいは円形であってもよい。金属板は圧電体より大形である必要はなく、圧電体と同一形状であってもよい。
本発明の圧電発音体は、金属板に圧電体を貼り付けたユニモルフ構造に限るものではなく、特開2001−95094号公報に記載のような積層圧電セラミックからなるバイモルフ構造の圧電発音体であってもよい。
筐体を構成するケースの内側に、圧電発音体の4辺を支持する支持部を設けたが、少なくとも端子が露出した2辺、あるいは4つの角部に支持部を設ければよく、支持部を有しない箇所は弾性封止剤で封止するだけでもよい。
上記実施例では、ケース20の側壁の内側に隔壁部24を設けたが、この隔壁部24は金属板2と端子22,23とが接触するのを防止するためであり、電極部が端部に形成された圧電発音体であれば、隔壁部24を省略することも可能である。同様の理由により、金属板2の外周部に塗布される絶縁剤32も省略可能である。
上記実施例では、筐体を凹型のケースとその開口部を閉鎖するカバーとで構成したが、筐体の構成はこれに限るものではない。
本発明は、圧電サウンダのような共振領域で使用される発音部品に限らず、圧電レシーバのような広いレンジの周波数に対応した発音部品にも適用できる。
また、本発明で交番信号とは、交流信号だけでなく矩形波信号を含むものである。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1に係る発明によれば、筐体にインサートされた端子の内部接続部が筐体の側壁部の内側面に垂直方向に露出しており、端子の内部接続部と圧電発音体の電極とを導電性接着剤により接続したので、端子の内部接続部がケースの内側へ大きく張り出さず、ケースと圧電発音体との寸法差を小さくできる。そのため、圧電発音体の寸法を相対的に大きくすることができ、圧電発音体の共振周波数を低く、音圧を大きくすることができる。
また、垂直方向に露出する端子と圧電発音体の電極とが導電性接着剤により電気的に接続されるが、導電性接着剤と端子の露出部との接触面積を確保することができるので、導通信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る圧電型電気音響変換器の一例の分解斜視図である。
【図2】図1に示す圧電型電気音響変換器のカバーおよび接着剤を除外した平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】圧電発音体の分解斜視図である。
【図6】圧電発音体の断面図である。
【図7】端子とケースとのインサート成形状態を示す図である。
【図8】従来の圧電型電気音響変換器の一例の断面図である。
【図9】従来の圧電型電気音響変換器の他の例の断面図である。
【符号の説明】
1 圧電発音体
2 金属板
4 圧電体
6,7 外部電極
10,11 引出電極
20 ケース(筐体)
21 支持部
22,23 端子
22a,23a 内部接続部
22b,23b 外部接続部
30 カバー(筐体)
33 導電性接着剤
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電サウンダや圧電スピーカ、圧電レシーバなどの圧電型電気音響変換器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子機器、家電製品、携帯電話機などにおいて、警報音や動作音を発生する圧電サウンダや圧電レシーバが広く用いられている。この種の圧電型電気音響変換器は、金属板の片面に、表裏面に電極を形成した圧電セラミックよりなる圧電体を貼り付けたユニモルフ型の圧電発音体を用いたものが一般的である。
また、積層構造の圧電セラミックからなるバイモルフ型の圧電発音体を用いた圧電型電気音響変換器も提案されている(特開2001−95094号公報参 照)。
【0003】
図8は従来の圧電型電気音響変換器の一例であり、40はケース、41はカバー、42は圧電発音体、43,44はケース40にインサート成形された端子である。ケース40の内部両端には、圧電発音体42の両端部を支持する端子43,44の一端部が水平に露出している。圧電発音体42の電極部分は端子43,44の上に導電性接着剤46により電気的に接続され、その上からシリコーンゴムなどの弾性接着剤47が塗布されて圧電発音体42の周囲がケース40に固定される。
ところが、このように端子43,44の上に圧電発音体42を導電性接着剤46によって直接接続すると、圧電発音体42の両端部が強く拘束されるため、圧電発音体42の変位量が小さくなり、音圧が低下してしまう。
【0004】
そこで、本願出願人は、図9のように、インサート端子43,44より内側のケース40の部位に支持部45を設け、この支持部45に圧電発音体42を支持し、弾性を持つ絶縁剤48で圧電発音体42の端面を覆った後、絶縁剤48を跨いで導電性接着剤46を圧電発音体42と端子43,44との間に塗布した構造を提案している(特願2001−193305号)。なお、導電性接着剤46を塗布した後、弾性接着剤(図示せず)によって圧電発音体42の周囲がケース40に固定される。
この場合には、圧電発音体42の両端部がケース40によって強く拘束されないので、圧電発音体42の変位量が大きくなり、音圧が大きくなるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
端子43,44は導電性接着剤46との導通性を確保するため、所定の長さだけケース40の内側へ露出する必要がある。ところが、上記のように端子43,44の内側に圧電発音体42を支持する支持部45を設けると、端子43,44の露出長だけ圧電発音体42の寸法Sをケース40の寸法Lに比べて小さくしなければならない。近年、電子機器の小型化に伴い、圧電型電気音響変換器も小型化が要求されており、ケース40を小型化するということは、圧電発音体42の寸法Sがさらに小さくなることを意味する。圧電発音体42の寸法Sが小さくなると、その共振周波数が高くなり、音圧が小さくなるため望ましくない。そのため、ケース40の寸法Lと圧電発音体42の寸法Sとの寸法差をできるだけ小さくすることが重要である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ケースと圧電発音体との寸法差をできるだけ小さくし、共振周波数が低く、音圧が大きな圧電型電気音響変換器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、2つの電極間に交番信号を印加することにより屈曲振動する圧電発音体と、上記圧電発音体を収納する筐体と、上記筐体にインサート成形された一対の端子とを備えた圧電型電気音響変換器において、上記一対の端子の内部接続部が、上記筐体の側壁部の内側面に上記圧電発音体に対してほぼ垂直方向に露出しており、上記端子の内部接続部と上記圧電発音体の電極とが導電性接着剤により電気的に接続されていることを特徴とする圧電型電気音響変換器を提供する。
【0008】
端子の内部接続部は筐体の側壁部の内側面に露出するので、筐体の側壁部に圧電発音体の外周縁を近づけることができ、ケースと圧電発音体との寸法差を小さくできる。そのため、ケースの外形寸法が同一でも、従来に比べて圧電発音体の寸法を大きくすることができ、圧電発音体の共振周波数を低く、音圧を大きくすることができる。ほぼ垂直方向に露出する端子と圧電発音体の電極とが導電性接着剤により電気的に接続されるが、端子の露出長はケースの側壁部の高さによって得られるので、導電性接着剤と端子の露出部との接触面積を確保することができ、導通信頼性を得ることができる。
【0009】
請求項2のように、圧電発音体を四角形に形成し、一対の端子を筐体の対向する2つの側壁部の内側面に露出させ、筐体の側壁部の内側に、圧電発音体の4辺を支持する支持部を設け、圧電発音体を支持部に載置した状態で、圧電発音体の電極と端子の内部接続部とをその間に塗布された導電性接着剤により電気的に接続し、圧電発音体の外周部と筐体とをその間に塗布された弾性接着剤により固定するのがよい。
四角形の圧電発音体は、円形の圧電発音体に比べて変位量が大きく、音響変換効率に優れている。このような四角形の圧電発音体を筐体の内部に収納するとき、筐体の側壁部の内側に設けた支持部に圧電発音体の外周部を載置し、その上から導電性接着剤を塗布することで、圧電発音体の両端部が強く拘束されず、圧電発音体の変位量を大きくできる。さらに、圧電発音体の外周部と筐体との間に弾性接着剤を塗布することで、圧電発音体がケースに固定されると同時に、圧電発音体とケースとの隙間が封止される。この接着剤は弾性を持つので、圧電発音体は容易に変位できる。
【0010】
請求項3のように、端子として断面L字形の端子を用い、端子の上方に起立した部分を内部接続部とし、筐体の底面に沿って筐体の内側へ延びる部分を外部接続部としてもよい。
この場合には、端子の形状が単純であり、インサート成形後の曲げ加工も不要である。従来のようなコ字形端子の場合には、ほぼ平板状の端子をインサートした後、ケース外に突出した部分をケースに沿うように折り曲げていたが、L字形端子の場合にはこのような曲げ加工が不要であり、端子のスプリングバックによる反り等の問題もない。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は本発明にかかる圧電型電気音響変換器の一例である圧電サウンダを示す。
この圧電サウンダは、大略、ユニモルフ型の圧電発音体1とケース20とカバー30とで構成されている。ケース20とカバー30とで筐体が構成される。
【0012】
圧電発音体1は、図5,図6に示すように、略正方形状の金属板2と、金属板2の表面全面に形成された絶縁層3と、絶縁層3の上に接着固定された金属板2より小形な略正方形状の圧電体4とで構成されている。
金属板2はバネ弾性を備えた材料が望ましく、例えばリン青銅,42Niなどが用いられる。なお、金属板3が42Niの場合には、セラミック(PZT等)と熱膨張係数が近いので、より信頼性の高いものが得られる。絶縁層3は、ポリイミド、エポキシなどの樹脂コーティングで構成することもできるし、酸化処理によって酸化物被膜を形成してもよい。
【0013】
圧電体4は、2層の圧電セラミック層4a,4bをグリーンシートの状態で内部電極5を間にして積層し、同時焼成したものであり、表裏面のほぼ全面に外部電極6,7が設けられている。各圧電セラミック層4a,4bは、図6に矢印Pで示すように厚み方向に逆向きに分極されている。内部電極5は、その一辺が圧電体4の端面に露出しているが、反対側の辺は圧電体4の端面から一定距離だけ手前で終端となっている。圧電体4の表裏の外部電極6,7は一方の端面電極8を介して相互に接続され、内部電極5は他方の端面電極9を介して表裏面に形成された引出電極10,11と接続されている。引出電極10,11は、圧電体4の1つの辺の中央部に沿って形成された小形の電極であり、表裏の外部電極6,7と電気的に分離されている。一方の端面電極8は圧電体4の1辺に相当する長さを有するが、他方の端面電極9は引出電極10,11の長さに応じた長さとしてある。なお、この実施例では、引出電極10,11を表面だけでなく裏面にも形成したが、これは圧電体4の方向性をなくすためであり、裏面の引出電極11は省略してもよい。また、引出電極10,11を圧電体4の1辺に相当する長さとしてもよい。
圧電体4の裏面は、エポキシ系接着剤などの接着剤12(図5参照)によって絶縁層3の中央部上面に接着されている。金属板2は圧電体4より大形であり、圧電体4より外方へ延出する延長部2aの表面にも絶縁層3が連続的に形成されている。
【0014】
ケース20はセラミックスまたは樹脂などの絶縁性材料で底壁と4つの側壁とを持つ略正方形の箱型に形成されている。ケース20を樹脂で形成する場合には、LCP(液晶ポリマー),SPS(シンジオタクチックポリスチレン),PPS(ポリフェニレンサルファイド),エポキシなどの耐熱樹脂が望ましい。ケース20の側壁の内側には、発音体1を全周で受ける支持部21が形成され、対向する2つの側壁の内側面には、発音体1の表面側外部電極6と引出電極10とにそれぞれ電気的に接続される端子22,23の内部接続部22a,23aが露出している。また、支持部21と端子22,23の内部接続部22a,23aとの間には、ケース20から一体に隔壁部24が形成されている(図4参照)。この隔壁部24は、後述するように支持部21上に金属板2を載置したとき、金属板2が端子22,23に接触するのを防止するスペーサとして機能している。
【0015】
端子22,23はケース20にインサート成形された端子であり、図7に示すように、フープ材29から一体的に打ち抜かれた端子22,23の外端部22a,23aを上方へ垂直に折り曲げ、この折り曲げ部を発音体1との内部接続部としている。このように内部接続部22a,23aをケース底面(発音体1)に対して垂直に起立させることにより、内部接続部22a,23aがケース20の内部へ張り出さず、ケース20の寸法Lと圧電発音体1の寸法Sとの寸法差をできるだけ小さくできる。その結果、圧電発音体1の共振周波数を低く、かつ音圧を大きくすることができる。端子22,23の外部接続部22b,23bはケース20の底面に沿うように内側へ延びている。
【0016】
ケース20の端子22,23を設けていない一方の側壁の底部側に下側放音孔25が形成され、他方の側壁の頂部に放音用の溝26が形成されている。この実施例のカバー30は、ケース20と同種の材料で平板状に形成されている。カバー30をケース20の側壁の頂部に接着剤31で接着することにより、溝26は上側放音孔となる。
なお、カバー30は平板状とする必要はなく、断面略凹型のキャップ形状であってもよい。また、上側放音孔26はケース20の側壁頂部に設けた溝とする必要はなく、カバー30に設けた孔でもよい。
【0017】
圧電発音体1は、その金属板2が底壁と対面するようにケース20の中に収納され、その周辺部が支持部21上に載置される。次に、絶縁剤32が金属板2の縁部と端子22,23の内部接続部22a,23aとの間に線状に塗布され、硬化される。絶縁剤32としては如何なる絶縁性接着剤を用いても良いが、ウレタン系,シリコーン系などの弾性を持つ接着剤を用いる方がよい。次に、上記絶縁剤32に対して直交方向に、導電性接着剤33が表面側外部電極6と端子22の内部接続部22aとの間、および引出電極10と端子23の内部接続部23aとの間に塗布され、硬化される。端子22,23の内部接続部22a,23aは垂直に起立しているが、広い面積で露出しているので、導電性接着剤33との導通面積が大きく、導通信頼性は高い。導電性接着剤33としては、ウレタン系などの弾性を持つ接着剤に導電性フィラーを含むものがよい。導電性接着剤33は金属板2の上に塗布されるが、金属板2の上には絶縁層3が予め設けられ、かつ金属板2の外周縁部は絶縁剤32で覆われているので、導電性接着剤33が金属板2に直接接触することがない。次に、金属板2の周囲全周とケース20との間が接着剤34で固定される。この接着剤34は公知の絶縁性接着剤を用いればよいが、ウレタン系,シリコーン系などの弾性を持つ接着剤を使用するのがよい。上記のように発音体1をケース20に固定した後、ケース20の上面開口部にはカバー30が接着剤31で接着される。カバー30を接着することで、カバー30と発音体1との間、および発音体1とケース20の底部との間には音響空間が形成され、表面実装型の圧電サウンダが完成する。
【0018】
上記のように発音体1とケース20とを固定する接着剤32,33,34として、弾性材料を使用することで、発音体1の変位を最大限にでき、大きな音圧を得ることが可能となる。
また、発音体1の電極部分(表面側外部電極6と引出電極10)と、ケース20の電極部分(端子22,23)とを導電性接着剤33によって接続しているので、金属板2を介して導通を取る場合に比べて、電気的信頼性が向上する。しかも、導電性接着剤33は、ディスペンサーなどの塗布装置によってケース20の上方から塗布することができるので、自動化が容易であり、リード線を半田付けする場合に比べて製造効率および品質を向上させることができる。
【0019】
上記ケース20に設けられた端子22,23間に、発音体1の共振周波数とほぼ等しい周波数の信号を印加すると、圧電体4が平面方向に伸縮し、金属板2は伸縮しないので、全体として発音体1は屈曲変形を起こす。発音体1の周辺部がケース20に支持され、発音体1の表側と裏側との間が接着剤34で封止されているので、所定の音波を発生することができる。この音波は上側放音孔26から外部へ放出される。
【0020】
上記実施例における各部品の寸法は以下の通りである。
圧電体4:6.8mm×6.8mm×30μm(2層の場合、各層の厚みは15μm)
金属板2:8.0mm×8.0mm×20μm
絶縁層3:8.0mm×8.0mm×3μm
ケース20:9.0mm×9.0mm×2.6mm
上記のように、端子22,23の内部接続部22a,23aをケース10の側壁の内側面に露出させ、ケース底面(発音体1)に対して垂直に起立させたので、内部接続部22a,23aがケース10の内側へ大きく張り出さず、圧電発音体1の寸法Sをケース20の寸法Lに対してできるだけ近づけることができた。図9のような従来構造の場合には、S/Lは最大でも85%であったのに対し、本実施例の構造では、S/Lを約90%とすることができた。その結果、ケースの寸法Lが同一でも、圧電発音体1の寸法Sを大きくできるので、従来に比べて共振周波数を低くでき、音圧を大きくすることができた。
【0021】
本発明は上記実施例に限定されるものではない。
圧電体は2層の積層構造に限らず、3層以上であってもよいし、単板構造でもよい。
また、金属板および圧電体は正方形に限らず、長方形あるいは円形であってもよい。金属板は圧電体より大形である必要はなく、圧電体と同一形状であってもよい。
本発明の圧電発音体は、金属板に圧電体を貼り付けたユニモルフ構造に限るものではなく、特開2001−95094号公報に記載のような積層圧電セラミックからなるバイモルフ構造の圧電発音体であってもよい。
筐体を構成するケースの内側に、圧電発音体の4辺を支持する支持部を設けたが、少なくとも端子が露出した2辺、あるいは4つの角部に支持部を設ければよく、支持部を有しない箇所は弾性封止剤で封止するだけでもよい。
上記実施例では、ケース20の側壁の内側に隔壁部24を設けたが、この隔壁部24は金属板2と端子22,23とが接触するのを防止するためであり、電極部が端部に形成された圧電発音体であれば、隔壁部24を省略することも可能である。同様の理由により、金属板2の外周部に塗布される絶縁剤32も省略可能である。
上記実施例では、筐体を凹型のケースとその開口部を閉鎖するカバーとで構成したが、筐体の構成はこれに限るものではない。
本発明は、圧電サウンダのような共振領域で使用される発音部品に限らず、圧電レシーバのような広いレンジの周波数に対応した発音部品にも適用できる。
また、本発明で交番信号とは、交流信号だけでなく矩形波信号を含むものである。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1に係る発明によれば、筐体にインサートされた端子の内部接続部が筐体の側壁部の内側面に垂直方向に露出しており、端子の内部接続部と圧電発音体の電極とを導電性接着剤により接続したので、端子の内部接続部がケースの内側へ大きく張り出さず、ケースと圧電発音体との寸法差を小さくできる。そのため、圧電発音体の寸法を相対的に大きくすることができ、圧電発音体の共振周波数を低く、音圧を大きくすることができる。
また、垂直方向に露出する端子と圧電発音体の電極とが導電性接着剤により電気的に接続されるが、導電性接着剤と端子の露出部との接触面積を確保することができるので、導通信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る圧電型電気音響変換器の一例の分解斜視図である。
【図2】図1に示す圧電型電気音響変換器のカバーおよび接着剤を除外した平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】圧電発音体の分解斜視図である。
【図6】圧電発音体の断面図である。
【図7】端子とケースとのインサート成形状態を示す図である。
【図8】従来の圧電型電気音響変換器の一例の断面図である。
【図9】従来の圧電型電気音響変換器の他の例の断面図である。
【符号の説明】
1 圧電発音体
2 金属板
4 圧電体
6,7 外部電極
10,11 引出電極
20 ケース(筐体)
21 支持部
22,23 端子
22a,23a 内部接続部
22b,23b 外部接続部
30 カバー(筐体)
33 導電性接着剤
Claims (3)
- 2つの電極間に交番信号を印加することにより屈曲振動する圧電発音体と、上記圧電発音体を収納する筐体と、上記筐体にインサート成形された一対の端子とを備えた圧電型電気音響変換器において、
上記一対の端子の内部接続部が、上記筐体の側壁部の内側面に上記圧電発音体に対してほぼ垂直方向に露出しており、
上記端子の内部接続部と上記圧電発音体の電極とが導電性接着剤により電気的に接続されていることを特徴とする圧電型電気音響変換器。 - 上記圧電発音体は四角形に形成され、
上記一対の端子は筐体の対向する2つの側壁部の内側面に露出しており、
上記筐体の側壁部の内側には、圧電発音体の4辺を支持する支持部が設けられ、上記圧電発音体は上記支持部に載置された状態で、圧電発音体の電極と端子の内部接続部とがその間に塗布された上記導電性接着剤により電気的に接続され、圧電発音体の外周部と筐体とがその間に塗布された弾性接着剤により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電型電気音響変換器。 - 上記端子は断面L字形の端子であり、
上記端子の上方に起立した部分が上記内部接続部であり、筐体の底面に沿って筐体の内側へ延びる部分が外部接続部であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電型電気音響変換器。
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