JP3700616B2 - 圧電型電気音響変換器およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電ブザーや圧電受話器などの圧電型電気音響変換器およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子機器、家電製品、携帯電話機などにおいて、警報音や動作音を発生する圧電ブザーあるいは圧電受話器として圧電型電気音響変換器が広く用いられている。この種の圧電型電気音響変換器は、円形の金属板の片面に円形の圧電素子を貼り付けてユニモルフ型振動板を構成し、金属板の周縁部を円形のケースの中にシリコーンゴムを用いて支持するとともに、ケースの開口部をカバーで閉鎖した構造のものが一般的である。
しかしながら、円形の振動板を用いると、生産効率が悪く、音響変換効率が低く、しかも小型に構成することが難しいという問題点があった。
【0003】
そこで、四角形の振動板を用いることで、生産効率の向上、音響変換効率の向上および小型化を可能とした圧電型電気音響変換器が提案されている(特開2000−310990号)。この圧電型電気音響変換器は、四角形の圧電振動板と、底壁部と4つの側壁部とを有し、対向する2つの側壁部の内側に振動板を支持する支持部を持ち、支持部に外部接続用の第1と第2の導電部が設けられた絶縁性ケースと、放音孔を有する蓋板とを備え、ケース内に振動板が収納され、振動板の対向する2辺と支持部とが接着剤または弾性封止材で固定されるとともに、振動板の残りの2辺とケースとの隙間が弾性封止材で封止され、振動板と第1,第2の導電部とが導電性接着剤により電気的に接続され、ケースの側壁部開口端に蓋板が接着された構造となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、圧電型電気音響変換器に使用される振動板は非常に薄くなり、数十〜百μm程度の薄肉な振動板が使用されている。このような薄肉な振動板を用いた場合には、その支持構造が周波数特性に与える影響が大きくなる。
例えば振動板と外部電極との間を、ウレタン系などの熱硬化型の導電性接着剤で直接接続すると、導電性接着剤の硬化収縮応力により振動板に歪みが発生し、周波数特性がばらつく。また、周囲の温度が変化すると、ケースと振動板との熱膨張係数差により特性が変化したり、ケースに外力が加わった時に振動板にも直接力が伝達され、特性が変化することがある。
【0005】
上記のように弾性支持材で振動板とケースとを固定した後、その上に導電性接着剤を塗布しても、導電性接着剤が振動板の対向する2辺とケースの支持部、つまり、外部電極に導通する内部接続部との間を結ぶ最短経路に塗布されていると、導電性接着剤の硬化収縮によって発生する応力が振動板に作用し、周波数特性がばらつくなどの問題が発生することがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、振動板をケースに固定する接着剤および電気的接続を行う導電性接着剤の塗布位置を工夫することで、振動板の歪みを防止し、周波数特性の安定した圧電型電気音響変換器およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、電極間に交番信号を印加することにより板厚方向に屈曲振動する四角形の圧電振動板と、側壁部の内側に圧電振動板を支持する支持部を持つ四角形の絶縁性ケースと、上記支持部近傍に内部接続部が露出し、この内部接続部と導通する外部接続部がケースの外面に露出した端子電極と、圧電振動板の外周部と端子電極の内部接続部との間であって、圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路に山形に盛り上がるように塗布され、圧電振動板をケースに対して固定する第1の接着剤と、圧電振動板の電極と端子電極の内部接続部との間に、第1の接着剤の山形に盛り上がった上面を介して、かつ圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路を迂回するように塗布され、圧電振動板の電極と端子電極の内部接続部とを電気的に接続する導電性接着剤と、圧電振動板の外周部とケースの内周部との隙間を封止する第2の接着剤とを備え、上記第1および第2の接着剤は導電性接着剤より硬化状態でのヤング率が小さい弾性接着剤であることを特徴とする圧電型電気音響変換器を提供する。
【0008】
請求項5に係る発明は、電極間に交番信号を印加することにより板厚方向に屈曲振動する四角形の圧電振動板を準備する工程と、側壁部の内側に、圧電振動板を支持する支持部を持ち、上記支持部近傍に内部接続部が露出し、この内部接続部と導通する外部接続部が外部に露出した端子電極を持つ四角形の絶縁性ケースを準備する工程と、圧電振動板の外周部と端子電極の内部接続部との間であって、圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路に山形に盛り上がるように第1の接着剤を塗布し硬化させて、圧電振動板をケースに対して固定する工程と、圧電振動板の電極と端子電極の内部接続部との間に、第1の接着剤の山形に盛り上がった上面を介して、かつ圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路を迂回するように導電性接着剤を塗布し硬化させて、圧電振動板の電極と端子電極の内部接続部とを電気的に接続する工程と、圧電振動板の外周部とケースの内周部との隙間に第2の接着剤を塗布し硬化させて、両者の間を封止する工程とを備え、上記第1および第2の接着剤は導電性接着剤より硬化状態でのヤング率が小さい弾性接着剤であることを特徴とする圧電型電気音響変換器の製造方法を提供する。
【0009】
本発明では、振動板の外周部と端子電極の内部接続部との間を第1の接着剤で固定した後、導電性接着剤によって圧電振動板の電極と端子電極の内部接続部との間を電気的に接続する。このとき、第1の接着剤は圧電振動板の外周部と内部接続部との間であって、圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路に山形に盛り上がるように塗布,硬化され、導電性接着剤は第1の接着剤の山形に盛り上がった上面を介して、かつ圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路を迂回して塗布,硬化される。第1の接着剤は導電性接着剤より硬化状態でのヤング率が小さいので、導電性接着剤の硬化収縮によって発生する応力は第1の接着剤によって緩和され、圧電振動板に直接作用しない。そのため、圧電振動板の歪みが発生せず、周波数特性がばらつくことがない。また、周囲の温度が変化した時やケースに外力が加わった時も、第1の接着剤が応力を緩和するので、圧電振動板には殆ど応力が波及せず、周波数特性が変化するのを防止できる。
【0010】
本発明の圧電型電気音響変換器を製造するに際し、圧電振動板をケースに収納した後、第1の接着剤を塗布してもよいし、圧電振動板をケースに収納する前に圧電振動板の外周部またはケースの支持部近傍に第1の接着剤を塗布してもよい。前者の場合には、ディスペンサを用いて第1の接着剤が塗布されるが、後者の場合は、ディスペンサを用いる方法に限らず、コテなどを用いて圧電振動板の端部に第1の接着剤を塗布し、この圧電振動板をケースに収納することにより、接着固定してもよい。
【0011】
請求項2のように、第1の接着剤は第2の接着剤に比べて、未硬化状態での粘性が高く、滲みにくい性質を有するものが望ましい。
すなわち、第1の接着剤が未硬化状態での粘性が低く、滲みやすい場合には、第1の接着剤が圧電振動板の電極や端子電極の内部接続部を塞いでしまい、導電性接着剤を塗布するとき、圧電振動板の電極や端子電極の内部接続部と導通させることが困難になることがある。また、圧電振動板の外周部と内部接続部とを結ぶ最短経路部分に第1の接着剤がとどまらないこともある。そこで、滲みにくい性質の第1の接着剤を用いることで、このような問題を解消し、圧電振動板と端子電極とを導電性接着剤により確実に最短経路を迂回して接続することができる。
【0012】
請求項3のように、第1の接着剤を圧電振動板の4つの角部近傍に部分的に塗布するのがよい。
第1の接着剤として、加熱硬化型の接着剤を使用した場合、ケースの4辺の中央部ほど変形が大きくなり、圧電振動板への応力も、4辺の中央部に応力が大きく作用する。
これに対し、第1の接着剤を圧電振動板の4つの角部近傍に部分的に塗布すれば、第1の接着剤の硬化時にケースの変形が小さいため、圧電振動板への影響が少なくて済む。
【0013】
請求項4のように、導電性接着剤は、圧電振動板の4つの角部近傍のうち、少なくとも2箇所に塗布してもよい。
請求項3のように第1の接着剤を圧電振動板の4つの角部近傍に部分的に塗布すれば、圧電振動板の歪みの発生を抑制できるが、さらに請求項4のように導電性接着剤を第1の接着剤のうちの少なくとも2箇所に塗布することで、導電性接着剤の硬化収縮により発生する応力による歪みの影響を一層少なくできる。
【0014】
振動板はその支持方法により、長さベンディングモードで屈曲振動する場合と、面積屈曲モードで屈曲振動する場合とがある。前者は、長さ方向両端部を支点として板厚方向に屈曲振動するモードである。後者は4辺または4点を支点として振動板の主面をなす2つの対角線位置が最大変位となるように、つまり対角線の交点が最大変位量となるように振動板の面積全体が厚み方向に屈曲振動するモードである。
【0015】
本発明において、導電性接着剤としてはウレタン系の導電ペーストが望ましい。第1の接着剤としては、硬化状態におけるヤング率が導電性接着剤剤より低いものが使用され、例えばウレタン系接着剤を使用できる。第2の接着剤としては、第1の接着剤よりさらにヤング率が低く、硬化収縮応力も低いものがよく、例えばシリコーン系接着剤を使用することができる。
なお、第1,第2の接着剤として常温硬化型の接着剤を使用することも可能であるが、ディスペンサなどで塗布する際、塗布の途中で硬化を開始するので、ディスペンサに詰まりが発生しやすく、作業性が悪い。これに対し、熱硬化型の接着剤であれば、常温では粘度が一定しているので、塗布の途中で粘度が変化せず、ディスペンサに詰まりが発生せず、作業性が良いという利点がある。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1〜図5は本発明の第1の実施形態である表面実装型の圧電型電気音響変換器を示す。
この電気音響変換器は、サウンダやリンガなどのように単一周波数で用いられる用途に適したものであり、大略、ユニモルフ型の振動板1とケース10と蓋板20とで構成されている。
【0017】
振動板1は、図5に示すように、表裏面に薄膜または厚膜の電極2a,2bを有し、厚み方向に分極された4角形の圧電板2と、圧電板2と幅寸法が同一で長さ寸法がやや長い四角形に形成され、圧電板2の裏面電極2bに導電性接着剤などを介して対面接着された金属板3とで構成されている。なお、裏面電極2bを省略し、金属板3を圧電板2の裏面に導電性接着剤などを介して直接接合することで、裏面電極2bを省略してもよい。この実施例では、圧電板2が金属板3に対して長さ方向の一辺側へ偏った位置に接着されており、金属板3の長さ方向の他辺側には金属板3が露出した露出部3aを有する。
【0018】
圧電板2としては、例えばPZTなどの圧電セラミックスが用いられる。また、金属板3は良導電性とバネ弾性とを兼ね備えた材料が望ましく、例えばリン青銅,42Niなどのヤング率が圧電板2と近い材料が望ましい。ここでは、金属板3として、セラミック(PZT等)と熱膨張係数が近く、縦×横×厚みが10mm×10mm×0.05mmの42Ni製金属板を使用した。また、圧電板2として縦×横×厚みが8mm×10mm×0.05mmのPZT板を用いた。
【0019】
ケース10はセラミックスまたは樹脂などの絶縁性材料で底壁部10aと4つの側壁部10b〜10eとを持つ4角形の箱型に形成されている。ケース10を樹脂で構成する場合には、LCP(液晶ポリマー),SPS(シンジオタクチックポリスチレン),PPS(ポリフェニレンサルファイド),エポキシなどの耐熱樹脂が望ましい。4つの側壁部10b〜10eの内周には環状の段差部10fが設けられ、対向する2つの側壁部10b,10dの内側の段差部10f上に、端子電極である一対の端子11,12の内部接続部11a,12aが露出している。端子11,12はケース10にインサート成形されたものであり、ケース10の外部に突出した外部接続部11b,12bが側壁部10b,10dの外面に沿ってケース10の底面側へ折り曲げられている。この実施例では、端子11,12の内部接続部11a,12aが二股状に別れており、これら二股状の内部接続部11a,12aが段差部10fの両端部近傍に位置し、しかも内部接続部11a,12aは末広がりな逆三角形状をなしている。
【0020】
段差部10fの内側には、図3に示すように、振動板1の周辺部を支持するための環状の支持部10gが、段差部10fより一段低く形成されている。そのため、支持部10g上に振動板1を載置すると、振動板1の天面と端子11,12の内部接続部11a,12aの上面とがほぼ同一高さになる。
なお、底壁部10aには第1の放音孔10kが形成され、側壁10eの上縁部には第2の放音孔となる切欠部10lが形成されている(図1,図4参照)。
【0021】
上記振動板1は金属板3がケース10の底壁部10aを向くようにケース10内に収納され、4辺がケース10の支持部10g上に載置される。そして、振動板1の4つの角部近傍が弾性支持材(第1の接着剤)13によって接着固定される。すなわち、金属板3の露出部3aの両端部近傍と端子11の内部接続部11aとの間、つまり露出部3aと内部接続部11aとを結ぶ最短経路が弾性支持材13によって接着固定され、これと対向する辺の両端部近傍と端子12の内部接続部12aとの間が弾性支持材13によって接着固定される。この実施例では、振動板1の一方の対角の角部に塗布される弾性支持材13は振動板1の側辺に沿って横長な楕円形あるいは長円形であり、他方の対角の角部に塗布される弾性支持材13は円形の点滴状であるが、これに限るものではない。弾性支持材13としては、例えば硬化後のヤング率が3.7×106 Paのウレタン系接着剤が使用される。また、この弾性支持材13の未硬化状態での粘性が後述する弾性封止材15より高く(例えば50〜120dPa・s)、滲みにくい性質を有するので、弾性支持材13を塗布したとき、弾性支持材13が山形に盛り上がる。弾性支持材13を塗布した後、加熱硬化させる。
なお、振動板1の固定方法としては、振動板1をケース10に収納した後でディスペンサなどで弾性支持材13を塗布してもよいが、振動板1に予め弾性支持材13を塗布した状態で振動板1をケース10に収容してもよい。
【0022】
弾性支持材13によってケース10に固定された振動板1と、端子11,12の内部接続部11a,12aとを導電性接着剤14によって電気的に接続する。すなわち、導電性接着剤14を振動板1の一方の対角の角部に楕円形あるいは長円形に塗布された弾性支持材13の上を交差するように楕円形に塗布する。弾性支持材13は山形に盛り上がっているので、導電性接着剤14は振動板1と内部接続部11a,12aとを結ぶ最短経路を迂回して塗布される。この際、導電性接着剤14が振動板1と内部接続部11a,12aとの隙間であって弾性支持材13が塗布されていない部位に付着しないように注意する必要がある。
導電性接着剤14としては、例えば硬化後のヤング率が0.3×109 Paのウレタン系導電ペーストが使用される。導電性接着剤14を塗布した後、これを加熱硬化させる。
【0023】
振動板1の周囲全周とケース10の内周部との間は弾性封止材(第2の接着剤)15で封止され、振動板1の表側と裏側との間の空気漏れが防止される。弾性封止材15を環状に塗布した後、加熱硬化させる。この実施例では、弾性封止材15として、例えば硬化後のヤング率が3.0×105 Paのシリコーン系接着剤を使用している。
【0024】
上記のように振動板1をケース10に固定した後、ケース10の上面開口部に蓋板20が接着剤21によって接着される。蓋板20はケース10と同様な材料で形成される。蓋板20を接着することで、蓋板20と振動板1との間に音響空間が形成される。
上記のようにして表面実装型の圧電型電気音響変換器が完成する。
【0025】
上記ケース10に設けられた端子11,12間に所定の交番信号(交流信号または矩形波信号)を印加すれば、振動板1の4辺がケース10の支持部10gに固定されているので、振動板1は面積屈曲モードで振動し、所定の音を発生することができる。発生した音は、蓋板20とケース10の切欠部10lとの間で形成される放音穴から外部へ放出される。
【0026】
上記の説明では、振動板1の金属板3をケース10の底壁部10a側に向けて固定したが、圧電板2をケース10の底壁部10a側に向けて固定してもよい。金属板3を底壁部10a側に向けて固定した場合には、圧電板2の表面電極2aと金属板3の露出部3aとが上側に露出するので、露出部3aと端子11との接続、および表面電極2aと端子12との接続を導電性接着剤14を用いて簡単に行なうことができる。なお、表面電極2aと端子12とを接続する場合に、導電性接着剤14が金属板3に付着すると接続不良になるが、上記のように弾性支持材13が振動板1とケース10との隙間に入り込み、導電性接着剤14が金属板3に付着するのを阻止する役割を持つので、接続不良を確実に防止できる。
【0027】
図6〜図11は本発明の第2の実施形態である圧電型電気音響変換器を示す。
この実施形態の電気音響変換器は、圧電受話器のように広いレンジの周波数に対応する用途に使用される。
この電気音響変換器は、大略、積層構造の振動板30とケース10と蓋板20とで構成されている。ケース10と振動板30とを除き、その他の構成は図1〜図5に示された第1の実施形態とほぼ同一であり、同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0028】
このケース10が第1の実施形態におけるケース10と異なる点は、図8に示すように支持部10gが対向する2つの側壁10b,10dの内側にのみ形成されている点、図9に示すように他の2つの側壁部10c,10eの内側であって支持部10gより低い位置に弾性封止材流れ止め用溝部10hが形成されている点、蓋板20に放音孔23が形成されている点である。
【0029】
振動板30は、図10,図11に示すように、2層の圧電セラミックス層31,32を積層したものであり、振動板30の表裏主面には主面電極33,34が形成され、セラミックス層31,32の間には内部電極35が形成されている。2つのセラミックス層31,32は、図11に太線矢印で示すように厚み方向において同一方向に分極されている。表側の主面電極33と裏側の主面電極34は、振動板30の辺長よりやや短く形成され、その一端は振動板30の一方の端面に形成された端面電極36に接続されている。そのため、表裏の主面電極33,34は相互に接続されている。内部電極35は主面電極33,34とほぼ対称形状に形成され、内部電極35の一端は上記端面電極36と離れており、他端は振動板30の他端面に形成された端面電極37に接続されている。なお、振動板30の他端部の表裏面には、端面電極37と導通する補助電極38が形成されている。
【0030】
振動板30の表裏面には、主面電極33,34を覆う樹脂層39が形成されている。この樹脂層39は、振動板30がセラミック材料のみで構成されているため、落下強度を高めるために設けられている。そして、表裏の樹脂層39には、振動板30の対角の角部近傍に、主面電極33,34が露出する切欠部39aと、補助電極38が露出する切欠部39bとが形成されている。
なお、切欠部39a,39bは表裏一方にのみ設けてもよいが、表裏の方向性をなくすため、この例では表裏面に設けてある。
また、補助電極38は、一定幅の帯状電極とする必要はなく、切欠部39bに対応する箇所のみ設けてもよい。
ここでは、セラミックス層31,32として10mm×10mm×20μmのPZT系セラミックスを使用し、樹脂層39として厚みが5〜10μmのポリアミドイミド系樹脂を使用した。
【0031】
上記振動板30がケース10に収納され、4箇所で弾性支持材13によってケース10の支持部10gに固定される。対角位置にある切欠部39aに露出する主面電極33と端子11の内部接続部11aとの間、および切欠部39bに露出する補助電極38と端子12の内部接続部12aとの間に、弾性支持材13が横長な楕円形に塗布される。また、残りの2箇所についても、弾性支持材13が横長な楕円形に塗布される。塗布後、弾性支持材13は加熱硬化される。
なお、振動板30の固定方法として、振動板30をケース10に収納した後でディスペンサなどで弾性支持材13を塗布してもよいが、振動板30に予め弾性支持材13を塗布した状態で振動板30をケース10に収容してもよい。
【0032】
弾性支持材13を硬化させた後、導電性接着剤14を楕円形に塗布された弾性支持材13の上を交差するように楕円形に塗布し、主面電極33と端子11の内部接続部11a、補助電極38と端子12の内部接続部12aとをそれぞれ接続する。つまり、導電性接着剤14は振動板30と内部接続部11a,12aとを結ぶ最短経路を迂回して塗布される。導電性接着剤14を塗布した後、加熱硬化させる。
【0033】
導電性接着剤14を塗布,硬化させた後、弾性封止材15が振動板30とケース10の内周部との隙間に塗布され、両者の間が封止される。このとき、図9に示すように、2つの側壁部10c,10eの内側に形成された溝部10hで弾性封止材15が受け止められるので、弾性封止材15が底壁部10aまで流れ落ちることがない。そのため、振動板30とケース10との間が確実に封止される。
【0034】
この実施形態の電気音響変換器では、端子11,12間に所定の交番電圧を印加することで、振動板30を屈曲振動させることができる。分極方向と電界方向とが同一方向である圧電セラミックス層は平面方向に縮み、分極方向と電界方向とが逆方向である圧電セラミックス層は平面方向に伸びるので、全体として厚み方向に屈曲する。
この実施形態の場合には、振動板30が金属板を有しないセラミックスの積層構造体であり、厚み方向に順に配置された2つの振動領域が相互に逆方向に振動するので、ユニモルフ型振動板に比べて大きな変位量、つまり大きな音圧を得ることができる。
【0035】
第2の実施形態では、ケースの2辺全長に支持部を設けたが、図12に示すケース10のように、4隅部に支持部10iを設けてもよい。この場合には、振動板30の4つの角部が支持部10iに弾性支持材13によって固定される。このように振動板30の角部のみを支持することにより、共振周波数を下げることができ、低周波域の音圧を上げることができる。
なお、図6,図12では、側壁部10c,10eの内側に設けられるわずかな巾の段差部10fおよび溝部10h(図9参照)を省略した。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、振動板30は2層の圧電セラミックス層を積層したものであるが、3層以上の圧電セラミックス層を積層したものでもよい。
また、振動板1,30は正方形,長方形のいずれであってもよい。
第1の実施形態では、金属板の片面に圧電板を貼り付けたユニモルフ型振動板について説明したが、金属板の両面に圧電板を貼り付けたバイモルフ形振動板を使用してもよい。
上記実施形態では、ケースの支持部を端子電極の内部接続部より一段低くし、ケースの支持部に支持された振動板と内部接続部とがほぼ同一高さになるように設定したが、ケースの支持部と内部接続部とを同一高さとし、その上に振動板を固定してもよい。
本発明における端子電極とは、上記実施形態のようなインサート端子に限るものではなく、例えばケースの支持部上面から外部に至る薄膜あるいは厚膜の電極であってもよい。
上記実施形態では、第1の接着剤(弾性支持材)として第2の接着剤より滲みにくい材料を使用したが、同一材料を用いてもよい。
第1の接着剤の塗布位置は、振動板の4つの角部付近に部分的に塗布したものに限らず、振動板の対向する2辺の全長に亘って連続的に塗布してもよい。
また、導電性接着剤の塗布位置は、振動板の対角の2箇所に限らず、振動板の電極を外部に引き出すためであれば、如何なる位置でもよい。
本発明のケースは、実施形態のような凹断面形状のケースと、その上面に接着される蓋板とで構成されたものに限らない。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、振動板の外周部とケースの支持部近傍との間を第1の接着剤で固定した後、導電性接着剤によって圧電振動板の電極と端子電極の内部接続部との間を電気的に接続する際、導電性接着剤は第1の接着剤の山形に盛り上がった上面を介して、かつ圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路を迂回して塗布,硬化されるので、導電性接着剤の硬化収縮応力は第1の接着剤によって緩和され、圧電振動板に直接作用しない。そのため、薄肉な圧電振動板であっても歪みが発生せず、周波数特性がばらつくことがない。また、周囲の温度が変化した時やケースに外力が加わった時も、第1の接着剤が応力を緩和するので、圧電振動板には殆ど応力が波及せず、周波数特性が変化するのを防止できるという作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る圧電型電気音響変換器の第1実施形態の分解斜視図である。
【図2】図1に示す圧電型電気音響変換器の蓋板および第2の接着剤を除外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線による階段断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】図1の圧電型電気音響変換器に用いられる圧電振動板の斜視図である。
【図6】本発明に係る圧電型電気音響変換器の第2実施形態の分解斜視図である。
【図7】図6に示す圧電型電気音響変換器の蓋板および第2の接着剤を除外した状態の平面図である。
【図8】図7のC−C線による階段断面図である。
【図9】図7のD−D線断面図である。
【図10】図6の圧電型電気音響変換器に用いられる圧電振動板の斜視図である。
【図11】図10のE−E線による階段断面図である。
【図12】ケースの変形例の斜視図である。
【符号の説明】
1,30 圧電振動板
10 ケース
10g 支持部
11,12 端子(端子電極)
11a,12a 内部接続部
11b,12b 外部接続部
13 弾性支持材(第1の接着剤)
14 導電性接着剤
15 弾性封止材(第2の接着剤)
20 蓋板
Claims (8)
- 電極間に交番信号を印加することにより板厚方向に屈曲振動する四角形の圧電振動板と、
側壁部の内側に圧電振動板を支持する支持部を持つ四角形の絶縁性ケースと、
上記支持部近傍に内部接続部が露出し、この内部接続部と導通する外部接続部がケースの外面に露出した端子電極と、
圧電振動板の外周部と端子電極の内部接続部との間であって、圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路に山形に盛り上がるように塗布され、圧電振動板をケースに対して固定する第1の接着剤と、
圧電振動板の電極と端子電極の内部接続部との間に、第1の接着剤の山形に盛り上がった上面を介して、かつ圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路を迂回するように塗布され、圧電振動板の電極と端子電極の内部接続部とを電気的に接続する導電性接着剤と、
圧電振動板の外周部とケースの内周部との隙間を封止する第2の接着剤とを備え、
上記第1および第2の接着剤は導電性接着剤より硬化状態でのヤング率が小さい弾性接着剤であることを特徴とする圧電型電気音響変換器。 - 上記第1の接着剤は第2の接着剤に比べて、未硬化状態での粘性が高く、滲みにくい性質を有することを特徴とする請求項1に記載の圧電型電気音響変換器。
- 上記第1の接着剤は、圧電振動板の4つの角部近傍に部分的に塗布されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電型電気音響変換器。
- 上記導電性接着剤は、圧電振動板の4つの角部近傍のうち、少なくとも2箇所に塗布されていることを特徴とする請求項3に記載の圧電型電気音響変換器。
- 電極間に交番信号を印加することにより板厚方向に屈曲振動する四角形の圧電振動板を準備する工程と、
側壁部の内側に、圧電振動板を支持する支持部を持ち、上記支持部近傍に内部接続部が露出し、この内部接続部と導通する外部接続部が外部に露出した端子電極を持つ四角形の絶縁性ケースを準備する工程と、
圧電振動板の外周部と端子電極の内部接続部との間であって、圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路に山形に盛り上がるように第1の接着剤を塗布し硬化させて、圧電振動板をケースに対して固定する工程と、
圧電振動板の電極と端子電極の内部接続部との間に、第1の接着剤の山形に盛り上がった上面を介して、かつ圧電振動板と内部接続部とを結ぶ最短経路を迂回するように導電性接着剤を塗布し硬化させて、圧電振動板の電極と端子電極の内部接続部とを電気的に接続する工程と、
圧電振動板の外周部とケースの内周部との隙間に第2の接着剤を塗布し硬化させて、両者の間を封止する工程とを備え、
上記第1および第2の接着剤は導電性接着剤より硬化状態でのヤング率が小さい弾性接着剤であることを特徴とする圧電型電気音響変換器の製造方法。 - 上記第1の接着剤は第2の接着剤に比べて、未硬化状態での粘性が高く、滲みにくい性質を有することを特徴とする請求項5に記載の圧電型電気音響変換器の製造方法。
- 上記第1の接着剤は、圧電振動板の4つの角部近傍に部分的に塗布されることを特徴とする請求項5または6に記載の圧電型電気音響変換器の製造方法。
- 上記導電性接着剤は、圧電振動板の4つの角部近傍のうち、少なくとも2箇所に塗布されることを特徴とする請求項7に記載の圧電型電気音響変換器。
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