JP4198938B2 - トロイダル式cvtの変速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トロイダル式CVTの変速制御装置、特に変速時におけるローラのオフセット量の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、無段変速機(CVT)として、各種の形式のものが知られており、その中にトロイダル式CVTがある。このトロイダル式CVTは、入出力ディスクと、その中間で摩擦係合により入出力ディスク間の動力伝達を行うローラを有している。
【0003】
入出力ディスクは、全体として三角錐に近い形であり、その斜面は円弧状に切り取られた形状になっている。そして、入出力ディスクは突出する中央部が対向するように配置されており、入出力ディスクをあわせた断面は両側から半円状に切り取られた形になっている。従って、ローラが入力ディスクの周辺側および出力側ディスクの内側で接触することで、入力ディスクの軸から離れた部分の回転を出力ディスクの軸に近い側に伝達することができ、減速比が小さくなり、この接触位置を変更することで、変速比を決定することができる。
【0004】
そして、このローラはトラニオンという部材で、回転可能かつ入出力ディスクに接触する位置が変更可能に支持されており、このトラニオンの軸周りの回転角がローラの回転の入出力ディスクに対する傾き(傾転角)となっており、トロイダル式CVTでは、傾転角によって変速比が決定される。
【0005】
また、この傾転角を変更する際には、トラニオンを入出力ディスク回転軸と直行する方向に移動させる。すなわち、ローラの回転軸をローラの回転軸と入出力ディスクの回転軸が直交する位置からオフセットさせる。このオフセット量をトラニオンストロークという。これによって、ローラには、傾転角を変更する方向の力が加わり、これによってローラの傾転角を変更し変速比を制御する。
【0006】
そこで、トロイダル式CVTにおいては、トラニオンに支持されたローラのトラニオン軸周りの回転角である傾転角と、トラニオンの軸方向のオフセット量(トラニオンストローク)を検出する。そして、傾転角から変速比を求め、その変速比と目標変速比との偏差に基づいてローラのトラニオン軸方向の目標位置変位(オフセット量=トラニオンストローク)を算出する。そして、トラニオンストローク(オフセット量)を目標トラニオンストローク(オフセット量)に一致させるべく油圧アクチュエータでトラニオンを変位させる。このように傾転角(変速比)の目標との偏差からオフセット量を制御して変速比制御を行っている。なお、このような制御を電子的なフィードバック制御として行うことは特開平08−233085号公報などに示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにして、トロイダル式CVTにおける変速比制御が行われるが、上述のようにトラニオンによって支持されるローラは、入出力ディスクによって狭圧されている。そこで、この狭圧力により、ローラには入出力ディスクから離れる方向の力が働き、この力にはトラニオンが対抗するが、トラニオンは少なからず変形する。このようにトラニオンが変形すると、トラニオンのストロークによって制御しているローラ回転軸のオフセット量が正しく制御できない場合が生じる。さらに、狭圧力によりローラやディスクが変形するが、この変形によって傾転力が発生せずにトラニオンストロークのゼロ位置が変化する、この変化によっても同様の問題が生じる。
【0008】
また、ローラには、伝達トルクに応じた回転方向(接線方向)の力が加わっており、トラニオンにこれに対抗する力を印加してローラ位置を上述の位置に保持している。しかし、入力トルクが急変したときには、トラニオンの印加する力が十分追従できず、ローラがオフセットして傾転角が変更されてしまうという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ローラ回転軸のオフセット量を正確に制御できるトロイダル式CVTの変速制御装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、入出力ディスクと、その中間で摩擦係合により入出力ディスク間の動力伝達を行うローラと、を有するトロイダル伝導部材と、前記入出力ディスクを押しつけ前記ローラを挟圧する挟圧手段と、ローラをその回転軸方向から回転可能に支持するとともに、その回転軸および入出力ディスクの回転軸に直交する方向に移動するトラニオンを含み、このトラニオンの移動によってローラの回転軸と入出力ディスクの回転軸が直交する位置から、ローラの回転軸をオフセットさせることにより、ローラの傾転角を変更し、変速比を制御する変速制御部と、前記トラニオンの位置を検出することによって前記オフセット量を検出するオフセット量検出手段と、前記挟圧手段による挟圧力によって生じる前記オフセット量検出手段の検出するオフセット量の変動量を前記トラニオンの変形を考慮して推定するオフセット量変動推定手段と、を有し、前記オフセット量検出手段によって検出したオフセット量を前記オフセット量変動推定手段により推定した変動量によって補正し、補正されたオフセット量に基づいて、変速制御部によるオフセット量の制御を行うことを特徴とする。
【0011】
このように、ローラ狭圧力に基づいて検出オフセット量を補正するため、ローラ狭圧力の変動に基づく検出オフセット量の変化を補正して常に適切なローラオフセット量の制御を行うことができる。
【0012】
また、本発明は、入出力ディスクと、その中間で摩擦係合により入出力ディスク間の動力伝達を行うローラと、を有するトロイダル伝導部材と、前記入出力ディスクを押しつけ前記ローラを挟圧する挟圧手段と、ローラの回転軸と入出力ディスクの回転軸が直交する位置から、ローラの回転軸をオフセットさせることにより、ローラの傾転角を変更し、変速比を制御する変速制御部と、前記挟圧手段による挟圧力の変動に基づき発生するローラの回転軸をオフセットさせる力を推定する推定手段と、この推定手段により推定したオフセットさせる力に基づいて、前記変速制御部におけるローラの回転軸をオフセットさせる駆動力を制御して、前記オフセットする力に対抗する力を発生させ、挟圧力の変動に基づくローラのオフセットを防止することを特徴とする。
【0013】
このようにローラ狭圧力の変動に基づく、ローラオフセットに対する反力を推定してローラオフセットを制御するため、入力トルクの急変時に反力の変化に基づいてローラストロークが発生してしまうことを防止することができる。
【0014】
また、前記狭圧手段は、油圧により入出力ディスク間に圧力をかけるものであることが好適である。
【0015】
また、前記ローラの回転軸のオフセットには油圧を利用することが好適である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1には、実施形態に係るトロイダル式CVTの全体構成が示されている。すなわち、エンジンの回転に基づいて回転される入力軸10には、2組の入力ディスク30a、30bが結合されている。この入力ディスク30a、30bは、中央に開口が形成され、外側から中央側に向け徐々に突出する形状を有しており、斜面はその軸方向の断面がほぼ円弧状になっている。また、入力ディスク30aは、図における左側に位置し、入力ディスク30bは図における右側に位置し、両者とも突出する中央が内側に対向するように位置している。入力ディスク30a、30bのそれぞれには、ほぼ同一形状の出力ディスク40a、40bがそれぞれ対向するように配置されている。すなわち、入力ディスク30aと出力ディスク40aが対向配置され、入力ディスク30bと出力ディスク40bとが対向配置されている。従って、軸方向の断面では、入力ディスク30aと出力ディスク40aの斜面が一対の半円を形成し、入力ディスク30bと出力ディスク40bとがもう一対の半円を形成している。
【0018】
入出力ディスク30a、40aの間にはローラ35a−1、35a−2が挟持され、入出力ディスク30b、40bの間にはローラ35b−1、35b−2が挟持されている。すなわち、ローラ35a−1、35a−2、35b−1、35b−2は一方側が入力ディスク30a、30bに接触し、他方側が出力ディスク40a、40bに接触し、入力ディスク30a、30bの回転トルクを出力ディスク40a、40bに伝達する。また、ローラ35a−1、35a−2は、それぞれトラニオン36a−1、36a−2によって支持されローラ35b−1、35b−2は、それぞれトラニオン36b−1、36b−2によって支持されている。このトラニオン36a−1、36a−2、36b−1、36b−2は、図における紙面に直角な方向に軸を有し、その軸方向に移動可能でかつその軸を中心として回動可能となっている。また、このトラニオン36a−1、36a−2、36b−1、36b−2の軸の半径方向位置が固定されており、ローラ35a−1、35a−2、35b−1、35b−2が入出力ディスク30a、40a、30b、40bから離れないようになっている。
【0019】
入力軸10は、油圧押圧(エンドロード)機構20に接続される。このエンドロード機構20は、内部に油圧を受け、入力ディスク30a、30bをそれぞれ出力ディスク40a、40b側に押圧することで、入出力ディスク30a、40a、入出力ディスク30b、40b間に狭圧力を生じさせ、これによってローラ35a−1、35a−2、35b−1、35b−2をそれぞれ所定の圧力で入出力ディスク30a、40a、30b、40b間に挟み込む。これによって、入出力ディスク30a、40a、30b、40bとローラ間のスリップを防ぎ、トラクション状態を維持する。なお、軸25は入力軸10と同一の回転をするものであり、この軸25によって入力ディスク30a、30bが回転される。また、入力ディスク30a、30bは、軸25にスラストベアリングを介し連結されており、軸25の軸方向に移動可能になっている。
【0020】
出力ディスク40a、40bは、軸25にベアリングを介し回転可能に支持されている。この出力ディスク40a、40bの間には、出力ギア45が連結されており、出力ディスク40a、40bと一緒に回転する。出力ギア45には、カウンターギア60がかみ合わされており、このカウンターギア60に出力軸70が連結されている。従って、出力ディスク40a、40bの回転に伴い、出力軸70が回転する。
【0021】
さらに、このトロイダル式CVTには、油圧ピストン室が設けられており、この油圧ピストン室からの油圧によって、トラニオン36a−1、36a−2、36b−1、36b−2のトラニオン軸方向の変位(トラニオンストローク:ローラオフセット量)が制御される。このトラニオン36a−1、36a−2、36b−1、36b−2のトラニオンストローク(ローラオフセット量)の制御によって、変速比の変更が行われる。なお、トラニオン36a−1、36a−2のストローク(ローラオフセット量)は、トラニオン36a−1、36a−2の中心を結ぶ線が入出力ディスク30、40の中心を通るように相補的に行われ、トラニオン36b−1、36b−2のトラニオンストローク(ローラオフセット量)は、トラニオン36b−1、36b−2の中心を結ぶ線が入出力ディスク30、40の中心を通るように相補的に行われる。
【0022】
ここで、この変速比の変更について、図2に基づいて説明する。なお、この図2は、入力ディスク30を出力ディスク40の方から見た図であり、入力ディスク30とローラ35をそれぞれ1つだけ示している。図2(a)は、ローラ35が変位していない(トラニオンストローク=0)の場合を示しており、ローラ35の回転軸は、入力ディスク30の中心を通る。そして、変速する場合には、トラニオン36をその軸方向にオフセットさせる。例えば、図2(b)に示すように、入力ディスク30が回転してくる方向(図における上側)にオフセットさせる。これによって、ローラ35には、移動した場所における入力ディスク30の円周方向の力がかかり、ローラ35は入力ディスク30の周辺側に移動する力(傾転の力)がかかる。そして、ローラ35をオフセット量(トラニオンストローク)が0に戻ったときには、ローラ35の入力ディスク30と接触する位置が半径方向外側に変位している。これによって、ローラ35の出力ディスク40との接触位置は半径方向内側に変位し、変速比が変化する(アップシフトする)。なお、図における下方向(入力ディスクが遠ざかる側)にトラニオン36をオフセットさせることで、トラニオン36は反対方向に傾転し、ダウンシフトが行われる。
【0023】
図3には、この変速比制御のための構成が示されている。なお、図3においては、1つの入力ディスク30と、2つのローラ35−1、35−2と、2つのトラニオン36−1、36−2を示している。
【0024】
このように、油圧ピストン室50は、トラニオン36−1、36−2に相補的な動作をさせるために一対のピストン室50−1、50−2を有している。そして、このピストン室50−1、50−2には、油圧制御弁52が接続されており、この油圧制御弁52の制御によって油圧ピストン室50−1、50−2への供給油圧が制御され、トラニオン36−1、36−2のストローク(ローラオフセット量)を制御する。
【0025】
そして、トラニオン36の傾転角θを傾転角センサ37で検出し、ストロークxをストロークセンサ38で検出し、コントローラ80に供給する。
【0026】
コントローラ80には、アクセル開度、車速についての情報も供給されており、コントローラ80は、アクセル開度、車速から目標変速比を決定し、この目標変速比と傾転角センサ37によって検出した傾転角θに対応する変速比との偏差に基づいて目標ストロークを決定する。そして、この目標ストロークに基づいて、油圧制御弁52を制御して、トラニオン36のストロークxを制御する。これによって、傾転角から求められるそのときの変速比が目標変速比に一致したことで、変速比制御を終了する。
【0027】
ここで、このような変速制御において、基本的に変速制御は傾転角θ(変速比)のみをフィードバック制御するだけでよい。しかし、ストロークxは傾転角θの微分に相当し、傾転制御における振動を抑制するダンピングの効果を持つ。このため、ストロークセンサ38により検出したストロークxが目標ストロークに一致するようにストロークのフィードバック制御もあわせて行っている。なお、ローラ35と入出力ディスク30、40の接触位置が分かれば変速比と傾転角の関係は、幾何学形状だけで決まるため、変速比は傾転角に置き換えられ、傾転角を変速比に置き換えることもできる。
【0028】
図3においては、変速比を傾転角センサ37の傾転角により検出したが、入力軸回転数と出力軸回転数から求めた変速比としてもよい。また、トラニオン36のストロークの代わりに傾転角変化量、入力回転数変化量、変速比変化量を用いてもよい。
【0029】
そして、本実施形態においては、コントローラ80により油圧制御弁52を制御して、トラニオン36のストロークを制御するが、これについて、図4に基づいて説明する。
【0030】
上述のように、コントローラ80においては、供給されるアクセル開度、車速に基づき、目標変速比が決定され、これに対応する傾転角目標値が決定される。この傾転角目標値は、減算器81に入力される。この減算器81には、傾転角センサ37で実際に計測したローラ傾転角の検出値θが入力されており、傾転角目標値と現時点での傾転角θの偏差Δθが減算器81において、算出出力される。
【0031】
減算器81の出力である偏差Δθは、第1コントローラ82に入力される。この第1コントローラ82では、傾転角の偏差Δθに所定の係数kを乗算し、傾転角フィードバック制御のフィードバック入力値であるkΔθを算出する。このkΔθが目標変速比と現在の変速比との差に応じて決定されるトラニオンストロークとなり、kΔθはトラニオンストロークに対応する油圧制御量となる。
【0032】
第1コントローラ82の出力kΔθは、減算器83に入力される。この減算器83には、第2コントローラ84からの現在のトラニオンストロークに基づくフィードバック入力値も供給されている。従って、減算器83において、トラニオンストロークに基づくフィードバック入力値が合算され、これによって、流量制御弁52が制御されてトロイダル式CVT100におけるトラニオンストロークが制御されて変速比が制御される。
【0033】
ここで、現在のトラニオンストロークは、ストロークセンサ38によって検出され、この検出された現在のストロークに基づいて第2コントローラ84がフィードバック量を決定するが、本実施形態では入力トルクなどに応じて、減算器83に供給するフィードバック入力値を補正する。
【0034】
すなわち、ストロークセンサ38で検出されたストロークは、直接第2コントローラ84に供給されるのではなく、まず減算器93に入力される。この減算器93には、ストローク補正部95からのストローク補正量も入力され、検出したストロークからストローク補正量が減算され、補正されたストロークが第2コントローラ84に供給される。なお、ストローク補正部95においては、部材の熱変形やストロークセンサ38の熱特性の影響などを考慮に入れることでより精度のよい制御を行うことができる。
【0035】
ここで、ストローク補正部95における補正について説明する。トラニオン36は、ローラ35を支持しているが、入力トルクに応じて入出力ディスク狭圧力(エンドロード)が変化する。すなわち、入力トルクの増加に伴い、伝達力が増加するため、入出力ディスクとローラ間のトラクション力を増加する必要があり、ディスクとローラの接触面圧を増加させる必要がある。この役目をエンドロード機構20が担い、入力トルクなどの変化に応じてディスクとローラがスリップせずかつ必要以上の面圧をかけないように制御される。
【0036】
ところが、このエンドロードの変化によって、トラニオン36は変形する。すなわち、図5に示すように、トラニオン36はローラ35に押されて外側に膨らむ。これによって、トラニオン36自体の位置は変わらないにも拘わらず、トラニオンストロークの検出値が変化する。これは、トラニオンストローク36は、通常図3に示すようにトラニオンの先端位置で検出するからであり、この手法ではエンドロードが増大することによって、トラニオン36が外側に向けて膨らむとそのふくらみ量に応じてトラニオンの長さが短くなり、ストロークが検出されてしまう。あるいは、エンドロードの変化によって、入出力ディスク30,40やローラ35も変形する。これらの変形によっては、ローラの傾転力が発生しないトラニオンストロークゼロ位置自体が変化し、トラニオンストロークの検出値が変化しなくても傾転力が発生してしまう。これらによって、変速が起こり、目標変速比と実際の変速比が偏差を持つことになる。これをトルクシフトという。
【0037】
本実施形態においては、ストローク補正部95は、エンドロード推定部94からのエンドロードのデータに従い、トラニオンの変形に伴うトラニオンストロークセンサによる検出誤差を算出する。なお、この検出誤差は、トラニオン36の材質・構造などによって異なるため、装置に応じて予め実験などにより定め、対応関係をマップとして持っていることが好適である。なお、エンドロードとストローク検出誤差の関係を数式として持つことも可能であり、その方が記憶容量を小さくすることができる。
【0038】
ストローク補正部95からの誤差は、減算器93に供給され、ここで、ストロークセンサからの検出ストロークから誤差が減算され、誤差の補正されたトラニオンストロークが得られる。そして、この誤差の補正されたトラニオンストロークが第2コントローラ84に供給される。このため、第2コントローラ84では、エンドロードの大小による誤差が解消されたトラニオンストロークに基づいてフィードバック入力値を決定して、そのフィードバック入力値を減算器83に供給することができる。
【0039】
すなわち、第2コントローラ84では、補正された現在のトラニオンストロークxに対し、所定の係数kを乗算したトラニオンストロークについてのフィードバック入力値kxを算出しこれを減算器83に供給する。ここで、このフィードバック入力値kxも、目標とするトラニオンストロークについての油圧制御量である。
【0040】
これによって、減算器83において、目標となるトラニオンストロークの制御量kθと実際のトラニオンストロークxに基づく制御量kxの差が算出され、これが油圧制御弁52の制御量として、油圧制御弁52に供給される。すなわち、トラニオンストロークについてのフィードバック制御が行われる。
【0041】
そして、油圧制御弁52により制御された油圧がトロイダル式CVT100のトラニオン36に供給され、そのストロークが制御される。そして、このストローク制御によって、傾転角が変更され、目標変速比に合致するように変速比制御が行われる。
【0042】
図6に、上述したトラニオンストロークのゼロ位置の誤差の影響をトラニオンストロークの補正を行う場合(本発明)と、目標傾転角の補正を行う場合(従来例)との比較でシミュレーション検証した結果を示す。
【0043】
1段目のように入力トルクが変化した場合に、2段目に示すようにトルクシフト抑制のための目標傾転角補正値およびストローク補正値を示す。ここで、破線は制御遅れが全くない理想値を示し、実線が制御遅れ20msecとした場合の値を示している。
【0044】
推定遅れ20msecで、ストローク補正を行った本願と、目標傾転角補正を行った場合の傾転角を3段目、ストロークを4段目に示してある。このように、本願では、傾転角およびストロークの両方とも、一定に維持できるが、ストローク補正を行わない場合には、制御遅れに起因しストロークが発生してしまい、傾転角がずれてしまうことが分かる。なお、このシミュレーションは、目標傾転角補正値が正しいことを前提としているが、実際にはこの補正値自体に誤差がある。そこで、もっと大きなトルクシフトが発生すると考えられる。
【0045】
図7には、他の実施形態が示してある。この構成では、油圧ピストン力補正部111を有している。この油圧ピストン力補正部111は、伝達トルク推定部112からの伝達トルク推定値と、ローラ傾転角センサ37からの現在の傾転角情報から入力トルク急変時におけるローラの傾転を防止するための油圧ピストン力(補正値)を算出し、この補正値を減算器83に供給する。従って、入力トルク急変時におけるローラの傾転を防止することができる。
【0046】
すなわち、上述のように、入力トルクの変化に応じて、エンドロードが変更される。そして、エンドロードの変化によって、ストロークゼロ位置が変化するが、それだけではなく入力トルクが急変したときには、トラニオンに急激な反力が作用することによって、ストローク位置が変化してしまう。すなわち、図8に示すように、定常時には、ディスクがローラに与えるトルク伝達方向の力F1と、油圧ピストン室50による油圧ピストン力は釣り合っている。しかし、入力トルク急変時には、フィードバック系の応答遅れによって、F1=F2という関係を保つことができなくなり、ストロークが発生し、これによってローラ傾転角が変化してしまう(トルクシフトが起こる)。
【0047】
本実施形態では、油圧ピストン力補正部111が伝達トルクと傾転角または変速比(あるいはディスク押圧力とトラクション係数)により油圧ピストン室50の油圧ピストンへの反力を推定する。そして、この反力によりストロークが変化せず流量制御弁の指令値を算出するための補正値を算出する。そして、これによって、流量制御弁52における油圧を制御する。従って、油圧反力によるトルクシフトを効果的に防止できる。特に、この補正の制御は、ローラ狭圧力によるフィードフォワード制御になっており、フィードバック系の応答遅れを補償して効果的な制御が行える。
【0048】
ここで、図9に示すように、伝達トルクと傾転角または変速比(あるいはディスク押圧力とトラクション係数)からピストン反力までの動特性モデルであるピストン反力モデルGpと、油圧指令値から油圧ピストンまでの動特性モデルである流量制御弁モデルGhとからの出力、つまりピストン反力と油圧ピストン力が動的に一致することによりトルクシフトが抑制される。このため、伝達トルクと傾転角または変速比(あるいはディスク押圧力とトラクション係数)から油圧指令値までの油圧ピストン補正部111は、Gp・Gh-1で表すことができる。
【0049】
図10に、油圧ピストン力補正部111を設けた場合の効果を示す。1段目のように入力トルクが変化した場合に、2段目に示すようにトルクシフト抑制のための目標傾転角補正値およびピストン油圧力補正値を示す。ここで、破線は制御遅れが全くない理想値を示し、実線が制御遅れ20msecとした場合の値を示している。
【0050】
推定遅れ20msecで、ピストン油圧力補正を行った本願と、目標傾転角補正を行った従来技術の傾転角を3段目、ストロークを4段目に示してある。このように、本願では、傾転角およびストロークの両方とも、一定に維持できるが、目標傾転角補正を行った場合には、制御遅れに起因しストロークが発生してしまい、傾転角がずれてしまうことが分かる。
【0051】
図11には、図4のストローク補正部95と、図7の油圧ピストン力補正部11の両方を設けた構成を示す。この構成によって、ストロークのゼロ点変位およびトルク急変時におけるピストン反力によるトルクシフトの両方を効果的の抑制することができる。なお、伝達トルク推定部112と、エンドロード推定部94は、基本的に同じ対象についての推定であり、1つにまとめることができる。そして、ストロークゼロ位置の補正も、油圧ピストン力の補正も減算器83における油圧の補正であり、これらを1つにまとめて行うこともできる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ローラ狭圧力に基づいて検出オフセット量を補正するため、ローラ狭圧力の変動に基づく検出オフセット量の変化を補正して常に適切なローラオフセット量の制御を行うことができる。
【0053】
また、ローラ狭圧力の変動に基づく、ローラオフセットに対する反力を推定してローラオフセットを制御するため、入力トルクの急変時に反力の変化に基づいてローラストロークが発生してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 トロイダル式CVTの構成を示す図である。
【図2】 ローラの傾転を説明する図である。
【図3】 トラニオンストロークおよび傾転角制御の構成を示す図である。
【図4】 ストローク補正の制御のための構成を示す図である。
【図5】 ストロークゼロ位置変化を説明する図である。
【図6】 ストローク補正の効果を示す図である。
【図7】 油圧ピストン力補正の制御のための構成を示す図である。
【図8】 入力トルクの急変時のトルクシフトを説明する図である。
【図9】 油圧ピストン力補正部111の構成を説明する図である。
【図10】 油圧ピストン力補正の効果を示す図である。
【図11】 ストローク補正および油圧ピストン力補正の制御のための構成を示す図である。
【符号の説明】
10 入力軸、30 入力ディスク、40 出力ディスク、50 油圧ピストン室、60 カウンターギア、70 出力軸、80 コントローラ、95 ストローク補正部、111 油圧ピストン力補正部。
Claims (4)
- 入出力ディスクと、その中間で摩擦係合により入出力ディスク間の動力伝達を行うローラと、を有するトロイダル伝導部材と、
前記入出力ディスクを押しつけ前記ローラを挟圧する挟圧手段と、
ローラをその回転軸方向から回転可能に支持するとともに、その回転軸および入出力ディスクの回転軸に直交する方向に移動するトラニオンを含み、このトラニオンの移動によってローラの回転軸と入出力ディスクの回転軸が直交する位置から、ローラの回転軸をオフセットさせることにより、ローラの傾転角を変更し、変速比を制御する変速制御部と、
前記トラニオンの位置を検出することによって前記オフセット量を検出するオフセット量検出手段と、
前記挟圧手段による挟圧力によって生じる前記オフセット量検出手段の検出するオフセット量の変動量を前記トラニオンの変形を考慮して推定するオフセット量変動推定手段と、
を有し、
前記オフセット量検出手段によって検出したオフセット量を前記オフセット量変動推定手段により推定した変動量によって補正し、補正されたオフセット量に基づいて、変速制御部によるオフセット量の制御を行うことを特徴とするトロイダル式CVTの変速制御装置。 - 入出力ディスクと、その中間で摩擦係合により入出力ディスク間の動力伝達を行うローラと、を有するトロイダル伝導部材と、
前記入出力ディスクを押しつけ前記ローラを挟圧する挟圧手段と、
ローラの回転軸と入出力ディスクの回転軸が直交する位置から、ローラの回転軸をオフセットさせることにより、ローラの傾転角を変更し、変速比を制御する変速制御部と、
前記挟圧手段による挟圧力の変動に基づき発生するローラの回転軸をオフセットさせる力を推定する推定手段と、
この推定手段により推定したオフセットさせる力に基づいて、前記変速制御部におけるローラの回転軸をオフセットさせる駆動力を制御して、前記オフセットする力に対抗する力を発生させ、挟圧力の変動に基づくローラのオフセットを防止することを特徴とするトロイダル式CVTの変速制御装置。 - 請求項1または2に記載の装置において、
前記挟圧手段は、油圧により入出力ディスク間に圧力をかけるものであることを特徴とするトロイダル式CVTの変速制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置において、
前記ローラの回転軸のオフセットには油圧を利用することを特徴とするトロイダル式CVTの変速制御装置。
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