JP4197706B2 - リン酸基含有不飽和単量体及び不飽和液状オリゴマーを共重合してなる固体高分子電解質膜及びそれを用いた燃料電池 - Google Patents

リン酸基含有不飽和単量体及び不飽和液状オリゴマーを共重合してなる固体高分子電解質膜及びそれを用いた燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、リン酸基含有不飽和単量体を用いた導電性高分子、固体高分子電解質膜及びそれらの用途、リン酸基含有不飽和単量体の製造方法、並びにリン酸基含有不飽和単量体を用いた難燃剤及びその製造方法に関する。
(ポリ)リン酸基、(ポリ)ホスホン酸基等のリン系酸残基;スルホン酸塩基等の電解質基を有する重合体は、導電性材料、難燃剤、紙用改質剤、衛生材料、農芸用材料等の広い用途において有用である。中でも電解質基としてリン系酸残基を有する重合体は、親水性でありながら水に対して難溶性であり、かつ耐酸化性及び難燃性に優れているため、特に導電性樹脂、難燃剤、帯電防止剤、紙用改質剤及びコーティング剤の各用途において有用である。しかしリン系酸残基を有する重合体を固体高分子電解質として使用する場合、一層高いプロトン伝導性を有するものが望まれている。
一方スルホン酸基を有する重合体からなる固体高分子電解質材料として、いわゆる陽イオン交換樹脂に属するポリマー、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、パーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカルボン酸ポリマー[Polymer Preprints, Japan Vol. 42, No. 7, pp. 2490〜2492 (1993), Polymer Preprints, Japan Vol. 43, No. 3, pp. 735〜736 (1994), Polymer Preprints, Japan Vol. 42, No. 3, p. 730 (1993)]等が報告されている。
特に側鎖にスルホン酸基を有する固体高分子材料は、特定のイオンと強固に結合したり、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過したりする性質を有しているので、粒子状、繊維状又は膜状に成形され、電気透析膜、拡散透析膜、電池隔膜等、各種の用途に利用されている。中でもNafion(デュポン(株)製)の商標で知られるパーフルオロ骨格の側鎖にスルホン酸基を有するフッ素系高分子電解質膜は耐熱性及び耐薬品性に優れ、苛酷な条件下での使用に耐える電解質膜として実用化されている。しかし上記のようなフッ素系電解質膜は非常に高価であるという問題を抱えている。
そこで本出願人は、分子内に1個以上のリン酸基及び1個以上のエチレン性不飽和結合を有するリン酸基含有不飽和単量体と、分子内に1個以上のスルホン酸基及び1個以上のエチレン性不飽和結合を有するスルホン酸基含有不飽和単量体との共重合体からなる固体高分子電解質膜を提案した(特開2003-86021号)。特開2003-86021号の固体高分子電解質膜は比較的安価に製造することができるだけでなく、導電性が著しく高く、導電性の温度依存性が低く、耐熱性及び耐溶剤性に優れている点で従来の固体高分子材料と一線を画すものであった。
しかし固体高分子電解質膜を燃料電池、特に直接型メタノール固体高分子型燃料電池に用いる場合、固体高分子電解質膜の一面に設けられた燃料極に、メタノール及び水からなる燃料を直接供給するので、導電性だけでなく、耐溶剤性及び耐水性が求められる。そのため本出願人は、リン酸基含有不飽和単量体の重合体及びポリアミド樹脂を加熱処理してなる固体高分子電解質を提案した[特開2003-138088号(特許文献1)]。特許文献1の固体高分子電解質は比較的安価に製造することができるだけでなく、導電性及び耐溶剤性に加えて、耐水性にも優れている。しかし、燃料電池用の固体高分子電解質膜には、プロトン伝導性、耐溶剤性及び耐水性の全てに対して一層の向上が求められている。
電解質基を有する肪族系樹脂からなる難燃剤に関して、特開2001-11318号(特許文献2)は、-PO(OH)2基及び/又はその塩、-CH2PO(OH)2基及び/又はその塩、スルホン酸基及び/又はその塩等のイオン基を有し、かつ(メタ)アクリル酸単位及びアクリルアミド類単位を含有する脂肪族系樹脂難燃剤を記載している。特許文献2は、この脂肪族系樹脂難燃剤の製造方法として、スルホン酸基等の酸性イオン基を含有する単量体;アミド基、カルボキシル基もしくはその塩を含有するビニル系単量体;水酸基もしくはその塩、スルホン酸基等の酸性イオン基を含有する共役ジエン系単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種を、単独重合、共重合又はグラフト重合する方法を記載している。単量体の具体例として、特許文献2は、不飽和ニトリル単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコール、スルホン酸金属塩含有芳香族単位からなる群から選ばれた少なくとも一種を記載している。しかし特許文献2は、(ポリ)オキシブチル骨格を有するリン酸基含有不飽和単量体と、その他の不飽和化合物(例えば(メタ)アクリルアミド等)とを共重合してなる難燃剤が、卓越した難燃性を有することを開示も示唆もしていない。
リン酸基含有不飽和単量体の製造方法に関しては、一層低廉に製造できる方法が望まれている。しかし、例えばEP1498098、US 2004 176496及びUS 2005 49326は、アシッド・ホスホオキシブチル(メタ)アクリレート等のリン酸基含有不飽和単量体を含む歯科用樹脂組成物を記載しているものの、リン酸基含有不飽和単量体の製造方法については記載していない。
特開2003-138088号公報 特開2001-11318号公報
従って、本発明の目的は、比較的低廉に製造でき、優れた耐溶剤性及び耐水性を有し、かつ高い導電性を有する高分子及びその用途を提供することである。本発明のもう1つの目的は、比較的低廉に製造でき、優れた耐溶剤性及び耐水性を有し、かつ幅広い温度領域及び湿度領域で高いプロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜及びその用途を提供することである。本発明のさらにもう1つの目的は、上記導電性高分子及び固体高分子電解質膜に用いるリン酸基含有不飽和単量体を低廉に製造する方法を提供することである。本発明のさらにもう1つの目的は、卓越した難燃性を有するリン酸基含有難燃剤及びその製造方法を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、少なくとも(ポリ)オキシブチル骨格を有するリン酸基含有不飽和単量体と、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する液状オリゴマーと、分子内に4個の(メタ)アクリレート基を有するウレタンアクリレートとを共重合させると、耐溶剤性、耐水性、導電性及びプロトン伝導性に優れ、かつ比較的低廉な固体高分子電解質膜が得られることを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の固体高分子電解質膜は、少なくとも(a) 下記一般式(1):
Figure 0004197706
(ただしR1H又はCH 3 であり、R2は直鎖状又は分岐状のブチレン基であり、nは1〜6の整数である。)により表され、アンモニウム塩、アミン塩又は金属塩を形成していてもよいリン酸基含有不飽和単量体と、
(b) (i) 各々分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するブタジエンオリゴマー、イソプレンオリゴマー及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種の共役ジエン系液状オリゴマー、(ii) 各々分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する水素化ブタジエンオリゴマー、水素化イソプレンオリゴマー及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種の水素化共役ジエン系液状オリゴマー、並びに(iii) 少なくともビニル芳香族単位及び共役ジエン単位を有し、かつ分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するビニル芳香族−共役ジエン共重合系液状オリゴマー又はその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種と
(c) 下記一般式(2):
Figure 0004197706
(ただしR 3 〜R 6 はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R 7 はアルキレン基である。)により表されるウレタンアクリレートと
を共重合してなり、プロトン伝導性を有することを特徴とする。
前記リン系酸残基含有単量体のR2はテトラメチレン基であるのが好ましい。nは1であるのが好ましい。前記ウレタンアクリレートはR 3 及びR 5 としてHを有し、R 4 及びR 6 としてCH 3 を有し、かつ596の分子量を有するのが好ましい。
前記共役ジエン系液状オリゴマーは、下記一般式(3):
Figure 0004197706
(但しR 8 及びR 9 はそれぞれ独立に(i) エチレン性不飽和結合を1個以上有し、かつ他の原子団もしくは官能基を有してもよい炭化水素基、(ii) エチレン性不飽和結合を有さず、かつ他の原子団もしくは官能基を有してもよい炭化水素基又は(iii) 水素基であり、かつR 8 及びR 9 の少なくとも一方は前記(i) エチレン性不飽和結合を有する炭化水素基であり、R 10 及びR 11 はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、かつR 10 及びR 11 の少なくとも一方は水素基であり、mは重合度を示す。)により表される化合物であるのが好ましい。
前記水素化共役ジエン系液状オリゴマーは、下記一般式(4):
Figure 0004197706
(ただしR 8 R 11 は式(3)と同じであり、mは重合度を示す。)により表される化合物であるのが好ましい。
固体高分子電解質膜は、前記リン酸基含有不飽和単量体、前記共役ジエン系液状オリゴマー、前記水素化共役ジエン系液状オリゴマー前記ビニル芳香族−共役ジエン共重合系液状オリゴマー及び前記ウレタンアクリレート以外のその他の不飽和化合物も共重合してなるものであってもよい。前記その他の不飽和化合物は、(d) 分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々1個以上有する不飽和化合物、及び/又は(e) 分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物であるのが好ましい。前記(d) 酸性基を有する不飽和化合物は、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基及びアルコール性水酸基からなる群から選ばれた少なくとも一種の酸性基を有するのが好ましい。前記(e) 酸性基を有しない不飽和化合物は(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有不飽和単量体、置換又は無置換のスチレン、ハロゲンビニル、脂肪酸ビニルエステル及びフッ素基含有不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
本発明の固体高分子電解質膜は燃料電池用途に好適である。
本発明の導電性高分子は、比較的低廉に製造でき、優れた耐溶剤性及び耐水性を有し、かつ高い導電性を有する。そのため固体高分子電解質、帯電防止剤、防曇材料、紙・パルプ用改質剤、コーティング剤等の各種用途に有用である。特にこの導電性高分子からなる固体高分子電解質膜は、幅広い温度領域及び湿度領域で高いプロトン伝導性を有している。このため本発明の固体高分子電解質膜は燃料電池用電解質膜、一次電池用電解質膜、二次電池用電解質膜、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜などに好適に利用できる。特に架橋化した固体高分子電解質膜は、大電力用途のDMFC(直接メタノール燃料電池)用の固体高分子電解質膜としての応用が期待される。
本発明の難燃剤は、難燃性に優れているだけでなく、プラスチックへの溶解性又は分散性に優れているので、プラスチック用難燃剤として有用である。特にアミン変性したものは耐熱性が高く、耐熱性プラスチック用難燃剤に好適である。
本発明のリン酸基含有不飽和単量体の製造方法によれば、(ポリ)オキシブチル骨格を有するリン酸基含有不飽和単量体を、比較的低廉に製造できる。本発明の難燃剤の製造方法によれば、熱重合により安価にリン酸基含有難燃剤を製造できる。特に、重合溶媒として炭素数が6以下の脂肪族ケトン類及び/又はアルコール類溶媒を用いると、容易に析出重合させることができ、反応液からの生成物の単離が格段に容易となる。また析出重合すれば、単離した生成物を乾燥させるだけで粉末状の難燃剤が得られる。
[A] リン酸基含有不飽和単量体
本発明の導電性高分子、固体高分子電解質膜及び難燃剤の主原料であるリン酸基含有不飽和単量体は下記一般式(1):
Figure 0004197706
(ただしR1は水素基又はアルキル基であり、R2は直鎖状又は分岐状のブチレン基であり、nは1〜6の整数である。)により表すことができる。R1はH又はCH3であるのが好ましい。R2はテトラメチレン基であるのが好ましい。
一般式(1)により表されるリン酸基含有不飽和単量体は、下記一般式(6):
Figure 0004197706
(ただしR1、R2及びnは式(1)と同じである。)により表されるヒドロキシブチル(アルキル)アクリレート又はヒドロキシポリオキシブチレングリコール(アルキル)アクリレートをリン酸エステル化することにより調製できる。
一般式(6)により表されるヒドロキシブチル(アルキル)アクリレート及びヒドロキシポリオキシブチレングリコール(アルキル)アクリレートは公知の方法により調製すればよい。ヒドロキシブチル(アルキル)アクリレートとして、下記一般式(8):
Figure 0004197706
(ただしR1’はH又はCH3であり、R2は式(1)と同じである。)により表されるヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(以下特段の断りがない限り「HB(M)A」とよぶ。)を調製する場合、例えばブタンジオール(以下特段の断りがない限り「BDO」とよぶ。BDOは1, 4-BDO、1, 3-BDO、1, 2-BDO及び2, 3-BDOのいずれかを指す。)と、(メタ)アクリル酸を等モル比で反応させ、副生物であるジアクリレート体を溶剤分離法又は蒸留法により除去すればよい。原料に1, 4-BDOを用いることにより、4-HB(M)Aが得られる。またテトラヒドロフラン(THF)と(メタ)アクリル酸を公知の方法で反応させることによっても4-HB(M)Aが得られる。
得られたHB(M)Aは、無水リン酸(五酸化リン:P2O5)、オキシ塩化リン、ピロリン酸及びポリリン酸からなる群から選ばれた少なくとも一種と反応させ、得られた反応生成物を加水分解することによりリン酸エステル化する。中でも無水リン酸を用いる方法が好ましい。無水リン酸は反応性が高く、HB(M)Aへのリン酸基の導入が円滑に進む。
以下4-HB(M)Aと無水リン酸を用いる方法について、詳細に説明する。4-HB(M)Aに無水リン酸を反応させると、下記式(9):
Figure 0004197706
(ただしR1’はH又はCH3である。)に示すように、中間生成物としてピロホスホン酸ジアクリレート体が生成する。これを加水分解すると、下記式(10):
Figure 0004197706
(ただしR1’はH又はCH3である。)に従いアシッド・ホスホオキシブチル(メタ)アクリレートが生成する。
1モルのHB(M)Aに対する無水リン酸のモル比は、0.5〜0.8の範囲であるのが好ましく、0.5〜0.6の範囲であるのがより好ましく、0.52〜0.58の範囲であるのが特に好ましい。また十分に加水分解させるために、水はHB(M)Aに対して、モル比で0.5〜1.0の範囲で添加するのが好ましく、0.5〜0.8の範囲で添加するのがより好ましい。加水分解は無水リン酸を添加した後に行うのが好ましく、これによりリン酸エステル化が円滑に進む。
無水リン酸を用いる場合の反応手順について述べる。まず攪拌器・還流冷却器付き反応器にHB(M)Aを投入する。この時ハイドロキノンモノメチルエーテル、パラメトキシハイドロキノン等の公知の重合禁止剤を一緒に投入するのが好ましい。必要に応じて溶媒を添加してもよい。次いで25〜35℃の温度で無水リン酸を添加する。無水リン酸は1〜7時間の間に4〜10回にわたり分割添加するのが好ましく、これによりリン酸エステル化反応が促進され、収率が向上する。ただし分割添加することに限定する趣旨ではない。分割添加する場合、無水リン酸を全添加量の1/4〜1/10添加し、反応させた後、得られたピロホスホン酸ジアクリレート体を加水分解するという一連の操作を繰り返すのが好ましい。当初無水リン酸を全添加量の1/4〜1/10添加すると発熱があり、通常45〜70℃程度まで反応温度が上昇する。その後45〜80℃に保ち、20〜30分間反応を継続する。得られた反応溶液を25〜40℃まで冷却し、無水リン酸とほぼ等モルの水を添加し、30〜80℃に保持しながら5分間以上加水分解する。2回目以降の無水リン酸の添加は、反応溶液を35〜80℃に保持しながら行う。2回目以降の無水リン酸添加後の保持温度・時間、加水分解条件は上記と同じである。無水リン酸及び水を全量添加した後、50〜80℃の温度で30分〜2時間熟成する。最終的に冷却により未反応の無水リン酸や副生した無機ポリリン酸等が析出した場合、吸引ろ過により析出した固体を濾別する。
リン酸基含有不飽和単量体のリン酸基は解離していてもよいし、錯塩を形成していても良い。錯塩としてはアンモニウム塩、アミン塩又は金属塩が好ましい。アンモニウム塩又はアミン塩を形成する場合、酸を中和させるため、例えば第1級、第2級、第3級又は第4級のアルキル基、アリル基、アラルキル基等を含有するアンモニウムイオンやモノ、ジ又はトリアルカノールアミン残基と錯塩を形成するのが好ましい。アミンの具体例として、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。金属塩としては、カリウム塩等のアルカリ金属塩、及び酸化第1銅塩(赤茶色)、酸化第2銅塩(青色)、酸化第1/第2銅塩の等モル混合物(灰色)、酸化第2鉄塩(茶色)等の重金属塩が好ましい。これらの錯塩は単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
一般式(1)により表されるリン酸基含有不飽和単量体のうち、アシッド・ホスホオキシブチルアクリレートはユニケミカル株式会社から商品名Phosmer(登録商標)として入手可能である(グレード:BA)。固体高分子電解質が上記のようなリン酸基含有不飽和単量体成分を含むことにより、その水保持能力が向上し、高いプロトン伝導性を発現する。
[B] 導電性高分子及び固体高分子電解質膜
本発明の導電性高分子及び固体高分子電解質膜は、(a) 少なくとも上記リン酸基含有不飽和単量体と、(b) 以下に述べる(i) 共役ジエン系液状オリゴマー、(ii) 水素化共役ジエン系液状オリゴマー及び(iii) ビニル芳香族−共役ジエン共重合系液状オリゴマー又はその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種とを共重合してなる(以下上記三種のオリゴマーをまとめて「不飽和液状オリゴマー」とよぶ)。固体高分子電解質膜が不飽和液状オリゴマー成分を含むことにより、耐溶剤性、特にメタノールクロスオーバー防止性(直接型メタノール固体高分子型燃料電池の電解質膜として用いた場合に、メタノールが固体高分子電解質膜を透過してしまうのを防止できる性能)が向上する。
(1) 不飽和液状オリゴマー
(a) 共役ジエン系液状オリゴマー
共役ジエン系液状オリゴマーは、ブタジエンオリゴマー、イソプレンオリゴマー及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種である。共役ジエン系液状オリゴマーは、下記一般式(3):
Figure 0004197706
(但しR 8 及びR 9 はそれぞれ独立に(i) エチレン性不飽和結合を1個以上有し、かつ他の原子団もしくは官能基を有してもよい炭化水素基、(ii) エチレン性不飽和結合を有さず、かつ他の原子団もしくは官能基を有してもよい炭化水素基又は(iii) 水素基であり、かつR 8 及びR 9 の少なくとも一方は前記(i) エチレン性不飽和結合を有する炭化水素基であり、R 10 及びR 11 はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、かつR 10 及びR 11 の少なくとも一方は水素基であり、mは重合度を示す。)により表される化合物が好ましい。ただし共役ジエン系液状オリゴマーとして、式(3)に示すような重合体鎖中の共役ジエン単位が1, 2-結合であるものに限定する趣旨ではなく、共役ジエン単位が1, 4-結合であるものであってもよい。
R 8 及びR 9 はそれぞれ独立に(i) エチレン性不飽和結合を1個以上有し、かつ他の原子団もしくは官能基を有してもよい炭化水素基、(ii) エチレン性不飽和結合を有さず、かつ他の原子団もしくは官能基を有してもよい炭化水素基又は(iii) 水素基であり、かつR 8 及びR 9 の少なくとも一方が上記(i) エチレン性不飽和結合を有する炭化水素基である限り特に制限はない。R 8 及びR 9 が有してもよい他の原子団としては、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合等が挙げられる。R 8 及びR 9 が有してもよい官能基としては、(メタ)アクリル基、イソシアネート基、エポキシ基、マレイン酸基、アルコキシ基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
共役ジエン系液状オリゴマーの分子量に特に制限はないが、数平均分子量が500〜50,000のものが好ましい。式(3)により表される共役ジエン系液状オリゴマーのうちR 10 及びR 11 がともに水素基であり、R 8 及びR 9 がともに下記式(11):
Figure 0004197706
(ただしR 8’ はH又はCH3である。)により表される基であるものの市販品として、例えば「NISSO-PB TEA-1000」、「同TE-2000」(以上日本曹達(株)製)等がある。
共役ジエン系液状オリゴマーは、必要に応じてその他の共役ジエンを重合成分として含有してもよい。共役ジエン系液状オリゴマーがブタジエンオリゴマー又はその誘導体である場合、イソプレンを共重合成分として含んでもよい。共役ジエン系液状オリゴマーがイソプレンオリゴマー又はその誘導体である場合、ブタジエンを共重合成分として含んでもよい。その他の共役ジエンとしては、その他に2, 3-ジメチル-1, 3-ブタジエン、1, 3-ペンタジエン、2-メチル-1, 3-ペンタジエン、1, 3-ヘキサジエン、4, 5-ジエチル-1, 3-オクタジエン、3-ブチル-1, 3-オクタジエン、クロロプレン等が挙げられる。
共役ジエン系液状オリゴマーはオレフィンとの共重合体であってもよい。共役ジエン系液状オリゴマーが共役ジエンとオレフィンとの共重合体である場合、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーのいずれでもよい。
共役ジエン系液状オリゴマーの市販品として、上記以外に「NISSO-PB G-1000」、「同G-2000」、「同G-3000」、「同C-1000」、「同B-1000」、「同B-2000」、「同B-3000」、「同BN-1015」、「同BF-1000」、「同EPB-13」、「同GQ-1000」、「同GQ-2000」、「同TP-1001」、「同TP-1002」(以上日本曹達(株)製)等がある。
(b) 水素化共役ジエン系液状オリゴマー
水素化共役ジエン系液状オリゴマーは上記共役ジエン系液状オリゴマーを水素化したものであり、下記一般式(4):
Figure 0004197706
(ただしR 8 R 11 は式(3)と同じであり、mは重合度を示す。)により表される化合物であるのが好ましい。式(4)により表される水素化共役ジエン系液状オリゴマーの市販品として、例えば「NISSO-PB TEAI-1000」、「同GI-1000」、「同GI-2000」、「同GI-3000」、「同CI-1000」、「同BI-2000」、「同BI-3000」(以上日本曹達株式会社製)等がある。
(c) ビニル芳香族−共役ジエン共重合系液状オリゴマー
ビニル芳香族−共役ジエン共重合系液状オリゴマーは、少なくともビニル芳香族単位及び共役ジエン単位を有し、かつ分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する共重合体からなる。ビニル芳香族成分としてはスチレンが好ましい。共役ジエン成分としてはイソプレン及び1, 3-ブタジエンが好ましい。ビニル芳香族−共役ジエン共重合系液状オリゴマー中のビニル芳香族成分及び共役ジエン成分の割合は特に制限されず、要求される靭性、可撓性、機械的強度等の物性に応じて適宜設定すればよい。
ビニル芳香族−共役ジエン共重合系液状オリゴマーは官能基や他の原子団の導入、水素添加等の処理により変性された誘導体であってもよい。官能基としては、(メタ)アクリル基、イソシアネート基、エポキシ基、マレイン酸基、炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。他の原子団としては、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合等が挙げられる。ビニル芳香族−共役ジエン共重合系液状オリゴマーの市販品として、例えば「クラプレン LIR-310」(株式会社クラレ製)等がある。
(2) 配合割合
リン酸基含有不飽和単量体及び不飽和液状オリゴマーの配合割合は、式(リン酸基含有不飽和単量体)/(不飽和液状オリゴマー)により表される質量比が90/10〜40/60の範囲であるのが好ましく、85/15〜50/50の範囲であるのがより好ましい。
(3) 共重合できるその他の不飽和化合物
本発明の導電性高分子及び固体高分子電解質膜は、リン酸基含有不飽和単量体及び不飽和液状オリゴマー以外のその他の不飽和化合物を共重合成分として含んでもよい。その他の不飽和化合物は以下の2群(a) 分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々1個以上有する不飽和化合物、及び(b) 分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物に大別できる。
(a) 酸性基を含有する不飽和化合物
導電性高分子及び固体高分子電解質膜は、導電性、造膜性、耐薬品性等の向上を目的として、酸性基を含有するその他の不飽和化合物を共重合成分として含んでもよい。酸性基としては、リン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、アルコール性水酸基及びホスホン酸基からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する骨格としては、(メタ)アクリレート骨格、(メタ)アリルエステル骨格等を挙げることができる。
(i) リン酸基を含有するその他の不飽和単量体
リン酸基を含有するその他の不飽和単量体の例示化合物としては、下記一般式(12):
Figure 0004197706
(ただしR17は水素基又はアルキル基であり、R18は水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、pは1〜6の整数である。)により表される単量体が好ましい。R17はH又はCH3であるのが好ましく、R18はH、CH3又はCH2Clであるのが好ましい。
式(12)により表される単量体のうち代表的なものの構造式及び物性をそれぞれ表1及び表2に示す。これらの単量体もユニケミカル株式会社から商品名Phosmer(登録商標)として販売されている。
Figure 0004197706
Figure 0004197706
その他のリン酸基含有不飽和単量体として、下記一般式(13):
Figure 0004197706
(ただしR19及びR22はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R20及びR21はそれぞれ独立に炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状の置換又は無置換のアルキレン基であり、p及びp'はそれぞれ独立に1〜6の整数である。)により表されるリン酸基含有ジエステル不飽和単量体を用いてもよい。
リン酸基含有ジエステル不飽和単量体としては、下記一般式(14);
Figure 0004197706
(ただしR19及びR22はそれぞれ独立に水素基又はメチル基である。)により表されるジ[(メタ)クリロイルオキシエチル]ホスフェートが好ましい。リン酸基含有ジエステル不飽和単量体は共重合の際に単独で用いてもよいし、式(12)及び(13)により表される各単量体を併用してもよい。式(12)及び(13)により表される各単量体のリン酸基も、上記と同様に解離していてもよいし、錯塩を形成していても良い。
(ii) スルホン酸基を含有する不飽和単量体
スルホン酸基を含有する不飽和単量体としては、例えば特開2004-179154号に記載の固体高分子電解質膜が共重合成分として含有してもよいスルホン酸基含有不飽和単量体が挙げられる。具体的には、ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸ブチル-4-スルホン酸、(メタ)アクリロオキシベンゼンスルホン酸等が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。
(iii) カルボン酸基を含有する不飽和単量体
カルボン酸基を含有する不飽和単量体の例示化合物としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。
(iv) アルコール性水酸基を含有する不飽和単量体及びそのリン酸エステル化物
アルコール性水酸基を含有する不飽和単量体としては、グリセロールジメタクリレート[例えば商品名「ブレンマーGMR」、「同GMR-R」、「同GMR-H」(以上日本油脂株式会社製)等]、グリセロールメタクリレートアクリレート[例えば商品名「ブレンマーGAM」、「同GAM-R」(以上日本油脂株式会社製)等]等のグリセロールジ(メタ)アクリレート;1, 6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート[例えば商品名「NK オリゴ EA-5521」(新中村化学工業株式会社製)等];1, 4-ブタンジオールジグリシジルエーテルアクリレート[例えば商品名「NK オリゴ EA-5520」(新中村化学工業株式会社製)等];ビスフェノールA型エポキシアクリレート[例えば商品名「NK オリゴ EA-1020」(新中村化学工業株式会社製)等];2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でもグリセロールジ(メタ)アクリレート、1, 6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、1, 4-ブタンジオールジグリシジルエーテルアクリレート及びビスフェノールA型エポキシアクリレートは、リン酸基含有不飽和単量体との相溶性が良く、かつエチレン性不飽和基を分子中に2個有することから好ましい。
これらアルコール性水酸基含有不飽和単量体は、その水酸基をリン酸エステル化することにより、リン酸基含有不飽和単量体との相溶性が一層向上する。特にエチレン性不飽和基を分子中に2個有するアルコール性水酸基含有不飽和単量体のリン酸エステル化単量体は、放射線重合を行った時、架橋効率が良い。そのようなリン酸エステル化物の中でもグリセロールジ(メタ)アクリレートをリン酸エステル化した化合物、すなわち下記一般式(15):
Figure 0004197706
(ただしR23及びR24はそれぞれ独立に水素基又はメチル基である。)により表される化合物、及び下記一般式(16):
Figure 0004197706
(ただしR23及びR24はそれぞれ独立に水素基又はメチル基である。)により表される化合物が好ましい。
アルコール性水酸基含有不飽和単量体をリン酸エステル化する方法は、水酸基に対して0.5〜0.6モル当量の無水リン酸を使用する以外、上記のHB(M)Aをリン酸エステル化する方法と同じでよい。ただし上記式(16)により表される化合物を調製する場合、無水リン酸を添加した後、加水分解する必要はない。
(v) ホスホン酸基を含有する不飽和単量体
ホスホン酸基を含有する不飽和単量体として、例えばWO2005/080454に記載のホスホン酸基含有(メタ)アクリルアミドが挙げられる。このホスホン酸基含有(メタ)アクリルアミドは、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体と、無水リン酸とを反応させ、得られた反応生成物を加水分解してなる。具体例として、アクリルアミドホスホン酸、アクリルアミドジホスホン酸及びホスホン酸基含有ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。
(vi) 酸性基を有し、かつ分子内に複数個のエチレン性不飽和結合を含有する単量体
導電性高分子及び固体高分子電解質膜の耐溶剤性(例えば耐メタノール性等)を向上させるために、酸性基を含有する不飽和化合物として、複数個のエチレン性不飽和結合を含有するものを使用し、導電性高分子及び固体高分子電解質膜を架橋するのが好ましい。そのような架橋剤として、各々上記の式(13)により表されるリン酸基含有ジエステル不飽和単量体、並びにグリセロールジ(メタ)アクリレート、1, 6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、1, 4-ブタンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ヘキサメチレンジオールジアクリレート及びこれらのリン酸エステル化物が好ましい。
(b) 酸性基を含有しない不飽和化合物
導電性高分子及び固体高分子電解質膜は、造膜性、耐水性、耐薬品性等の向上を目的として、酸性基を含有しない不飽和化合物(酸性基非含有不飽和化合物)を共重合成分として含んでもよい。酸性基非含有不飽和化合物としては、(a)に記載した以外の、常温で気体でない、分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物がすべて対象になるが、中でも(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有不飽和単量体、置換又は無置換のスチレン、ハロゲンビニル(例えば塩化ビニル等)、脂肪酸ビニルエステル(例えば酢酸ビニル等)、及びフッ素基含有不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
(i) (メタ)アクリル酸エステル
(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば下記一般式(2):
Figure 0004197706
(ただしR 3 〜R 6 はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R 7 はアルキレン基である。)により表されるウレタンアクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ヘキサメチレンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも式(2)により表される4官能ウレタンアクリレートが好ましい。この4官能ウレタンアクリレートは、例えばジイソシアネートとグリセロールジアクリレートとを反応させることにより得られ、市販品として例えば「NK オリゴ U-4HA」(商品名、新中村化学工業株式会社製)等がある。
(ii) アミノ基含有不飽和単量体
アミノ基含有不飽和単量体としては、分子内に置換又は無置換のアミノ基及びエチレン性不飽和結合を各々1個以上有するものである限り特に制限はない。アミノ基含有不飽和単量体として、例えば特開2005-255855号に記載の固体高分子電解質膜が含む化合物が挙げられる。具体的には、N, N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N, N-ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N, N-ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、N, N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N, N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N, N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N, N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N, N-ジエチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N, N-ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N, N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N, N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N, N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルアミン、アリルアミン、N, N-ジメチル-p-アミノスチレン、ジメチル(p-ビニルベンジル)アミン、N, N-ジメチルアクリルアミド、N, N-ジメチルメタクリルアミド、ジアリルメチルアミン、2-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール等が挙げられる。
(iii) フッ素基含有不飽和単量体
フッ素基含有不飽和単量体としては、例えば特開2005-11789号に記載の固体高分子電解質膜が共重合成分として含む化合物が挙げられる。具体的には、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のハイドロフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;α-(トリフルオロメチル)アクリル酸等のハイドロフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸;パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル基含有ビニル;ハイドロフルオロアルキル基含有ビニル等が好ましい。フッ素基含有不飽和単量体を共重合成分として含むことにより、導電性高分子及び固体高分子電解質膜の耐熱性及び耐水性が一層向上する。
(vi) 酸性基を有さないが分子内に複数個のエチレン性不飽和結合を含有する化合物
導電性高分子及び固体高分子電解質膜の耐溶剤性を向上させるために、酸性基を有さない不飽和化合物として、複数個のエチレン性不飽和結合を含有するものを使用し、導電性高分子及び固体高分子電解質膜を架橋するのが好ましい。そのような架橋剤として、各々上記の4官能ウレタンアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びヘキサメチレンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。その他にジビニルベンゼン等も挙げられる。
(c) その他の不飽和化合物の添加量
その他の不飽和化合物の添加量は、リン酸基含有不飽和単量体、不飽和液状オリゴマー及びその他の不飽和化合物の合計を100質量%として、一般的に70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。上記架橋剤の添加量は、0.5質量%以上であるのが好ましく、1質量%以上であるのがより好ましい。
(4) 混合し得るその他の重合体
導電性高分子膜及び固体高分子電解質膜を製造する際の造膜性や、得られる導電性高分子膜及び固体高分子電解質膜の強度、疎水性、耐溶剤性等を一層向上させるために、導電性高分子膜及び固体高分子電解質膜を形成する共重合体と相溶し得るその他の重合体を混合することができる。その他の重合体としては、不飽和アルコール単位とハロゲンビニル単位及び/又は脂肪酸ビニル単位とを含む不飽和アルコール系共重合体(以下特段の断りがない限り、単に「不飽和アルコール系共重合体」という)、部分アセタール化不飽和アルコール系重合体、メラミン樹脂(例えばトリメトキシメチルメラミン樹脂等)、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアセタール、ウレタン樹脂、セルロース又はその変性物、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル並びにポリ酢酸ビニルからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。中でもその他の重合体としては、不飽和アルコール系共重合体、部分アセタール化不飽和アルコール系重合体、及びメラミン樹脂が好ましい。
(a) 不飽和アルコール系共重合体
不飽和アルコール系共重合体は少なくとも不飽和アルコール単位とハロゲンビニル単位及び/又は脂肪酸ビニル単位とを含む。不飽和アルコール単位としては、ビニルアルコール単位、アリルアルコール単位等が挙げられるが、コストの観点からビニルアルコール単位が好ましい。ビニルアルコールは、単量体としては存在しないが、ビニル系(共)重合体の構成単位としては存在する。ビニルアルコール単位を得るには、酢酸ビニル単位を含む水酸基含有ビニル系(共)重合体を調製し、鹸化すればよい。
ビニルアルコール単位を有する不飽和アルコール系共重合体は、下記一般式(17):
Figure 0004197706
(ただしX1は繰り返し単位毎に異なってもよいハロゲン原子又は−OCOR基であり、Rはアルキル基であり、s及びs'は各々重合度である。)により表すことができる。
脂肪酸ビニル単位としては酢酸ビニル単位、プロピン酸ビニル単位、酪酸ビニル単位等が挙げられるが、酢酸ビニル単位が好ましい。ハロゲンビニル単位としては塩化ビニル単位、フッ化ビニル単位、臭化ビニル単位等が挙げられるが、塩化ビニル単位が好ましい。不飽和アルコール単位、脂肪酸ビニル単位及びハロゲンビニル単位は各々二種以上を含んでもよい。
不飽和アルコール系共重合体がハロゲンビニル単位を含む場合、ハロゲンビニル単位の割合は、不飽和アルコール系共重合体を構成するビニル系単量体単位の合計を100モル%として20〜95モル%が好ましい。この割合が20モル%未満だと、耐水性及び耐溶剤性が低い。ハロゲンビニル単位を含む不飽和アルコール系共重合体中の不飽和アルコール単位の割合は、不飽和アルコール系共重合体を構成するビニル系単量体単位の合計を100モル%として、5〜80モル%であるのが好ましい。ハロゲンビニル単位を含む不飽和アルコール系共重合体中の脂肪酸ビニル単位の割合は特に制限されないが、不飽和アルコール系共重合体を構成するビニル系単量体単位の合計を100モル%として30モル%以下でよい。
不飽和アルコール系共重合体が不飽和アルコール単位及び脂肪酸ビニル単位のみからなる場合、脂肪酸ビニル単位の割合は特に制限されないが、不飽和アルコール系共重合体を構成するビニル系単量体単位の合計を100モル%として、40〜95モル%が好ましく、50〜80モル%がより好ましい。脂肪酸ビニル単位を40モル%以上含む不飽和アルコール系共重合体は、脂肪酸ビニル単位のアルキル基により耐水性及び耐溶剤性に優れている。ただし脂肪酸ビニル単位の割合を40〜95モル%に限定する趣旨ではなく、必要に応じて脂肪酸ビニル単位の割合が40モル%未満の共重合体(例えば鹸化度が60超のポリビニルアルコール)を使用してもよい。不飽和アルコール単位及び脂肪酸ビニル単位のみからなる不飽和アルコール系共重合体を使用する場合、導電性高分子及び固体高分子電解質膜の耐水性を一層向上させるためにメラミン樹脂を添加するのが好ましい。
不飽和アルコール系共重合体は、少なくとも不飽和アルコール、ハロゲンビニル及び/又は脂肪酸ビニルを、公知の方法で共重合することにより調製することができる。ただし脂肪酸ビニル単位(例えば酢酸ビニル単位)を含む不飽和アルコール系共重合体を調製する場合、脂肪酸ビニル(例えば酢酸ビニル)又はこれを含む単量体組成物の重合体を調製し、部分的に鹸化することにより調製するのが好ましい。不飽和アルコール系共重合体の平均重合度に特に制限はないが、100〜3,000が好ましい。
不飽和アルコール系共重合体として市販品を使用してもよく、酢酸ビニル単位を有するポリビニルアルコールとして、例えばクラレLMポリマー、ポバール及びエクセバール(以上登録商標、株式会社クラレ製)、並びにゴーセノール(登録商標、日本合成化学工業株式会社製)が挙げられる。酢酸ビニル単位を有するポリビニルアルコールの鹸化度は、上記のように適宜選択すればよい。酢酸ビニル単位、塩化ビニル単位及びビニルアルコール単位を有する不飽和アルコール系共重合体として、例えばSOLBIN A、同AL、同TA5R、同TAO(以上登録商標、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
(b) 部分アセタール化不飽和アルコール系重合体
部分アセタール化不飽和アルコール系重合体は、不飽和アルコール単位を主成分とする不飽和アルコール系重合体とアルデヒドを所定の割合で反応させ、部分的にアセタール化したものである。部分アセタール化する不飽和アルコール系重合体としてはポリビニルアルコールが好ましい。
ポリビニルアルコールを部分アセタール化した不飽和アルコール系重合体は下記一般式(18):
Figure 0004197706
(ただしR25はアルキル基であり、t及びt'は各々重合度である。)により表すことができる。ただし部分アセタール化不飽和アルコール系重合体は、ハロゲンビニル単位及び/又は脂肪酸ビニル単位を含んでもよい。ハロゲンビニル単位及び脂肪酸ビニル単位の各含有量は上記と同じでよい。
部分アセタール化不飽和アルコール系重合体はアセタール基を有することにより、強靭性、可撓性、接着性等に優れている。さらにアセタール基のアルキル基により耐水性及び耐溶剤性に優れている。しかも部分アセタール化不飽和アルコール系重合体はアセタール基により架橋性を有するので、加熱等により一層耐水性が向上する。アセタール化に使用するアルデヒドに特に制限はないが、ブチルアルデヒドが好ましい。すなわち部分アセタール化不飽和アルコール系重合体としては部分ブチラール化ポリビニルアルコールが好ましい。
部分アセタール化不飽和アルコール系重合体のアセタール化度は10〜80モル%(アセタール化前の水酸基量を100モル%として、20〜90モル%の水酸基が残留した状態)が好ましい。部分アセタール化不飽和アルコール系重合体の平均重合度に特に制限はないが、100〜3,000が好ましい。部分アセタール化不飽和アルコール系重合体としては、市販品を使用してもよく、例えばエスレックB及び同K(以上登録商標、積水化学工業株式会社製)が挙げられる。
上記(a)の不飽和アルコール系共重合体及び上記(b)の部分アセタール化不飽和アルコール系重合体は、その他の不飽和単量体単位を含んでもよい。その他の不飽和単量体として(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、アルキルアミノ基含有不飽和単量体、置換又は無置換のスチレン、ビニル、オレフィン(例えばエチレン等)、ジエン等が挙げられる。
必要に応じて、不飽和アルコール系共重合体及び部分アセタール化不飽和アルコール系重合体はリン酸エステル化してもよい。これらをリン酸エステル化する方法は、水酸基に対して0.5〜0.55モル当量の無水リン酸を使用する以外、上記のHB(M)Aをリン酸エステル化する方法と同じでよい。
リン酸エステル化した不飽和アルコール系共重合体及び部分アセタール化不飽和アルコール系重合体は、錯塩にすることにより導電性及び耐熱性が一層向上する場合がある。錯塩としては、リン酸基含有不飽和単量体の場合と同じく、アンモニウム塩、アミン塩又は金属塩が挙げられる。
(c) その他の重合体の配合割合
その他の重合体の含有量は、プロトン伝導性等の特性を阻害しない範囲であれば特に制限されず、所望の物性に応じて適宜設定すればよい。
(5) 導電性高分子及び固体高分子電解質膜の製造方法
本発明の導電性高分子及び固体高分子電解質膜は、(a) 少なくとも上記式(1)により表されるリン酸基含有不飽和単量体、上記不飽和液状オリゴマー、光増感剤及び溶媒を含有する組成物を支持基板に流延し、光重合させるか、(b) 少なくとも上記式(1)により表されるリン酸基含有不飽和単量体及び上記不飽和液状オリゴマーを熱重合させた共重合体を調製し、得られた共重合体をキャスト法により膜化することにより製造できる。
(a) 光重合による方法
光重合法による固体高分子電解質膜の製造は、[リン酸基含有不飽和単量体+不飽和液状オリゴマー+光増感剤(+その他の不飽和化合物)]からなる不飽和組成物を、これが付着しない材料(例えばフッ素系重合体等)により被覆された支持基板に流延し、紫外線透過性板で覆った後、紫外線を照射して共重合させるものである。上記その他の重合体も混合する場合、これを予め上記組成物に添加する。光増感剤及びその使用量、支持基板及び紫外線透過性板の材料、紫外線の強度及びその照射時間、上記組成物の希釈剤等については公知であり、例えば特開2003-86021号に記載されているので、これらの詳細な説明は省略する。特開2003-86021号に記載されているように、必要に応じて、上記組成物を補強材に含浸させるか塗布した後、補強材を紫外線透過性の支持基板に挟み、紫外線を照射して光重合させることにより、複合膜化してもよい。
共重合体に剥離性を付与するために、予め不飽和組成物に剥離剤を添加してもよい。剥離剤としては、不飽和組成物との相溶性が良いものが好ましい。剥離剤としてはフッ素系界面活性剤が好ましく、中でもフッ素系アルコールがより好ましい。剥離剤の具体例としてパーフロロオクチルエタノール、パーフロロオクチルスルホアミドエタノール及びこれらのエチレンオキサイド付加物;炭化水素系界面活性剤;高分子ポリオキシエチレングリコール(例えばカーボワックス等)等が挙げられる。剥離剤の添加量は、不飽和組成物の合計質量に対して、0.01〜1質量%の範囲、好ましくは0.05〜0.15質量%の範囲である。
光重合法により得られた膜に対して、機械的強度及び耐溶剤性の向上を目的として、100〜130℃で1〜15分程度加熱処理してもよい。光重合膜の厚さは通常20〜500μm、好ましくは20〜200μm程度とする。
(b) 熱重合及びキャストによる方法
(i) 熱重合による共重合体の調製
熱重合反応は、導電性高分子用不飽和原料[リン酸基含有不飽和単量体+不飽和液状オリゴマー+重合開始剤+溶媒]及び生成する重合体の双方が溶解する共通溶媒中で、アンモニウムパーサルフェート(APS)、カリウムパーサルフェート(KPS)、アセチルパーオキサイド、イソプロピルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤、2, 2’-アゾビスイソブチロニトリル、2, 2 ’-アゾビス(2, 4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2, 2 ’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル2, 2 ’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤、あるいはラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシ・ピバレート等の過酸化物系開始剤、過酸化水素等の重合開始剤を用いて、ラジカル重合により行う。
溶媒としてはアルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)等のグリコール誘導体;極性溶媒等が好ましい。アルコールとしては、脂肪族低級アルコールが好ましい。脂肪族低級アルコールとしてはメタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。また溶解性を損なわない範囲でエステル、ジオキサン、エーテル等を共存させてもよい。極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び水からなる群から選ばれた少なくとも一種がより好ましい。
ただし上記の架橋剤を用いて調製した共重合体は、アルコールや極性溶媒には溶解せず、膜成形が困難である。よって架橋化共重合体を調製する場合、上記の光重合により膜を製造するのが好ましい。
重合手順について述べる。まず攪拌器、還流冷却器付き反応器に(導電性高分子用不飽和原料+溶媒)からなる溶液を投入し、反応器内を窒素ガス雰囲気とした後、添加する重合開始剤の分解温度である40℃〜70℃に昇温する。好ましい重合温度は50℃〜70℃である。所定温度到達直後に重合開始剤を添加する。このとき若干の発熱があり、重合開始を確認することができる。所定温度に到達してから約1時間間隔で重合開始剤を2〜3回添加した後、1〜3時間程度重合反応を継続する。反応温度は最初から最後まで一定である必要はなく、重合末期に温度を上げて未反応単量体を極力少なくする方法をとってもよい。
重合溶液は導電性高分子用不飽和原料の初期固形分濃度が10〜40質量%であるのが好ましく、10〜30質量%であるのがより好ましい。重合開始剤のトータル使用量は、導電性高分子用不飽和原料を100とした場合に質量比で0.1〜5であるのが好ましく、0.1〜2であるのがより好ましい。
(ii) キャスト法による製膜
熱重合により調製した共重合体はキャスト法により膜化する。キャスト法は、共重合体の溶液又は分散液を水平な支持体(例えばガラス板、トレイ等)上に流延し、重合反応に用いた溶媒を蒸発させるものである。上記その他の重合体を混合する場合は、これを共重合体の溶液又は分散液に予め添加する。溶媒は、キャストした溶液又は分散液を加熱したり、減圧したりすることにより蒸発させる。具体的には90〜150℃の温度で1〜30分程度加熱乾燥処理するのが好ましい。加熱乾燥処理時の圧力は常圧〜10 mmHg(絶対圧)とするのが好ましい。キャスト膜の厚さは通常20〜500μm、好ましくは20〜200μm程度とする。
その他の重合体としてメラミン樹脂を添加した場合、溶媒除去後の樹脂組成物(共重合体+メラミン樹脂)を100〜140℃に加熱すると、共重合体中のリン酸基が触媒となりメラミン樹脂の架橋反応が促進され、導電性高分子及び固体高分子電解質膜の機械的強度及び耐溶剤性が一層向上する。メラミン樹脂の添加にあたり、メチロールメラミン又はメチル化もしくはブチル化したメチロールメラミンを添加し、共重合体とともに加熱することにより重合させてもよい。
(6) 導電性高分子の特性
以上のような導電性高分子は、通常の場合、その表面固有抵抗が相対湿度50〜75%/室温の条件下で106〜107 Ωである。さらに導電性高分子は、耐水性、耐薬品性及び各種基材に対する密着性にも優れている。このような特性を有する導電性高分子は、生体電極の装着時に皮膚と電極素子の間に介在させる生体電極用導電性高分子として有用である。なお導電性高分子はリン原子を含有しているので、難燃性や無機フィラーの分散性にも優れている。
(7) 固体高分子電解質膜の特性
本発明の固体高分子電解質膜は、50〜90%の相対湿度及び30〜90℃の温度条件下において10-3〜10-2 S・cm-1の優れたプロトン導電率を有し、係るプロトン伝導性は温度依存性が小さい。さらに耐水性及び耐薬品性(耐メタノール性)にも優れているので、燃料電池用電解質膜として好適である。ここで導電率とは、複素インピーダンス法により測定したデータを平面複素インピーダンス解析し、さらにcole-cole プロット図形処理をして得られた抵抗値から求めたものである。本発明の固体高分子電解質膜は、(a) 不飽和液状オリゴマー単位、及びリン酸基含有不飽和単量体のエチレン性不飽和結合に由来する炭化水素骨格からなる疎水部と、(b) リン酸基含有不飽和単量体に由来するリン酸基、エステル結合及び(ポリ)オキシブチル基の連鎖からなる親水部とを有する構造をとるので、親水部が効率的なプロトン伝導経路となるものと推測される。
[C] 燃料電池
燃料電池の構造は公知のものでよい。通常燃料電池は複数個の単位燃料電池(膜−電極接合体)を、セパレータを介して積層することにより形成することができる。単位燃料電池は、固体高分子電解質膜と、その両側に接合されたアノード電極及びカソード電極とから構成される。電極は、ガス拡散層(多孔性の炭素系材料等)と触媒層(白金粒子等)とからなる。触媒層はガス拡散層上に触媒粒子が塗布されることにより形成される。
セパレータは、燃料ガス(水素、メタン、メタノール等)と酸化剤ガス(酸素又は空気)とを分離すると共に、燃料ガス及び酸化剤ガスの流路を確保し、さらに燃料電池セルで発電した電気を外部へ伝達する役割を担う。従ってセパレータは、炭素材料、炭素複合材料(カーボンと熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂との複合材料等)、金属材料、金属複合材料(金属とカーボンとの複合材料等)等の導電性材料から形成される。またセパレータの表面には電極との接触部分に燃料ガス及び酸化剤ガスの流路をなす溝(反応ガス流路)が形成されている。
[D] コーティング剤
本発明のコーティング剤は、上記導電性高分子を含むものである。溶媒としては上記の熱重合に使用可能な溶媒が使用できる。コーティング剤を使用する際には、良溶媒を用いてコーティング剤を塗布に適した濃度に希釈するのが好ましい。良溶媒として脂肪族低級アルコールが好ましい。ただし架橋化した導電性高分子は溶媒に溶解しないので、コーティング剤には架橋化していない導電性高分子を使用する。
コーティング剤には、通常のコーティング剤に使用される以下の添加物、例えば粘度調整剤(例えばシックナー)、美装目的の各種着色顔料、隠蔽力を増す目的の充填材、塗面の平滑性を良くする目的で添加されるレベリング剤、基材との密着性を改良する目的で添加されるカップリング剤、従来公知の酸化防止剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、老化防止剤、難燃剤、導電剤、消泡剤等を任意に選択し、使用することができる。
コーティング剤を被塗物に対して、乾燥後に1〜100μmの厚さとなるよう塗布し、加熱してコーティング被膜を形成することにより帯電防止性、導電性、防曇性等を付与できる。基材表面への塗布方法としては、基材表面に刷毛塗り、バーコーター塗り、スプレー、浸漬、ロールコート、ブレードコート、フローコート又は静電塗装により被覆ないしは浸漬する方法がある。コーティング剤は金属板、ガラス板、プラスチック成型物、シートまたはフィルム、繊維、織布または不織布などのいずれにも塗布でき、その表面に密着する。コーティング剤を硬化せしめた塗膜は、基材への密着性、耐溶剤性、耐水性、硬度、光沢、対候性、防錆性等に優れている。
[E] 難燃剤
本発明の難燃剤は、少なくとも上記リン酸基含有不飽和単量体と、下記一般式(5):
Figure 0004197706
(ただしR12は水素基又はメチル基であり、R13は水素基又は置換もしくは無置換の炭化水素基である。)により表される(メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸及びN, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種とを共重合してなる。
(1) (メタ)アクリルアミド系単量体
式(5)中のR12は、重合性を向上させるために水素基が好ましい。R13は重合体を調製した場合の電解質基密度を向上させるために水素基が好ましい。R13が炭化水素基である場合、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基等を挙げることができる。これらの炭化水素基は置換されていてもよく、置換基の例としては、錯塩を形成していてもよいスルホン酸基等を挙げることができる。中でも置換炭化水素基としては、重合体を調製した場合の電解質基密度を向上させるために、錯塩を形成していてもよいスルホン酸基を有するものが好ましい。
(メタ)アクリルアミド系単量体としては、(メタ)アクリルアミド及び下記一般式(19):
Figure 0004197706
(ただしR12は水素基又はメチル基であり、R26及びR27は水素基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R28は炭素数1〜3のアルキレン基であり、M1は水素基、金属又は3級アミン残基である。)により表されるアクリルアミドアルカンスルホン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
アクリルアミドアルカンスルホン酸塩としては、下記式(20):
Figure 0004197706
により表されるターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸が好ましい。
(2) N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド
N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドは、下記一般式(21):
Figure 0004197706
(ただしR29は水素基又はメチル基であり、R30及びR31はそれぞれ独立にアルキル基である。)により表すことができる。N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N, N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)が好ましい。
(3) 配合割合
(a) リン酸基含有不飽和単量体と、(b) (メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸及びN, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種との質量比(a)/(b)は特に制限されず、所望の物性に応じて適宜選択すればよい。通常質量比(a)/(b)は20/80〜80/20の範囲であるのが好ましい。この比の下限は30/70以上であるのがより好ましく、40/60以上であるのがさらに好ましい。
(4) 共重合できるその他の不飽和化合物
難燃剤は、リン酸基含有不飽和単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸及びN, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド以外に、共重合可能なその他の不飽和化合物を含んでもよい。そのようなその他の不飽和化合物として、上記不飽和液状オリゴマー及び上記[B](3)に記載のその他の不飽和化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種を選択するのが好ましい。その配合割合は特に制限されないが、難燃剤全体を100質量%として、その他の不飽和化合物が50質量%以下であるのが好ましい。
(5) 難燃助剤
本発明の難燃剤は、上記共重合体のみからなるのが好ましいが、必要に応じてその他の公知の有機又は無機の難燃性化合物を難燃助剤として含んでもよい。公知の難燃性化合物として、例えば上記リン酸基を含有するその他の不飽和単量体の重合体が挙げられる。
(6) 難燃性
本発明の難燃剤はガスバーナーの先端に設置し、炎に20秒間以上曝しても炭化するのみであり、着火しない。
[F] 難燃剤の製造方法
本発明の難燃剤は、少なくとも上記リン酸基含有不飽和単量体と、上記式(5)により表される(メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸及びN, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種とを含む難燃剤用不飽和原料を、重合開始剤の存在下、ケトン類及びアルコール類溶媒中でラジカル重合することにより製造できる。
ラジカル重合反応は、難燃剤用不飽和原料が溶解する溶媒中で、重合開始剤を用いることにより行う。重合開始剤は上記と同じでよい。溶媒としてはケトン及び/又はアルコールを使用する。これら溶媒の炭素数は6以下であるのが好ましい。炭素数6以下の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンチルアルコール及びヘキサノールからなる群から選ばれた少なくとも一種が特に好ましい。アルコールは一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。ケトンとしては例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が好ましい。また難燃剤用不飽和原料に対する溶解性を損なわない範囲でケトン及び/又はアルコールにアミド系溶媒(DMAc、DMF等)、エステル、ジオキサン、エーテル等を共存させてもよい。
重合手順は、難燃剤用不飽和原料の初期固形分濃度を8〜25質量%とするのが好ましい以外、上記導電性高分子の熱重合による調製方法と同じでよい。ただし重合速度が異なる2種以上の不飽和単量体を共重合させる場合、各単量体を個別に重合開始剤とともに粘度低下に必要な溶剤に溶解させた複数の溶液を調製し、これらを同時に十分な時間をかけて溶媒に滴下しながら共重合させるのが好ましい。
ラジカル重合は、(a) 難燃剤用不飽和原料及び生成する重合体の双方がケトン類及び/又はアルコール類溶媒に溶解する溶液重合、又は(b) ケトン類及びアルコール類溶媒に難燃剤用不飽和原料は溶解するが、生成する重合体は溶解しない析出重合のいずれであってもよい。
難燃剤用不飽和原料が上記リン酸基含有不飽和単量体と、上記式(5)により表される(メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸及びN, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれた少なくとも一種とからなる場合、通常は析出重合となる。
析出重合により得られた反応液から、難燃剤を単離するには、析出した重合体を濾別するのみでよい。このように、析出重合の場合、溶液重合に比べて重合体の単離が格段に容易であるという利点がある。濾別により得られた重合体は、上記のケトン及び/又はアルコールを用いて洗浄するのが好ましい。
溶液重合により得られたポリマーはアンモニウム塩、アミン塩又は金属塩にすることにより析出させる。使用可能なアミンとしては、下記一般式(7):
Figure 0004197706
(但し、R14〜R16はそれぞれ独立に水素、アルキル基又は芳香族基である)により表される第一級〜第三級アミン類が挙げられる。具体的には、例えばトリエチルアミン等が挙げられる。析出したアミン変性重合体は濾別すればよい。
析出重合により得られた反応液から単離したリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド系粉末重合体、又は溶液重合により得られた反応溶液からアンモニウム塩、アミン塩又は金属塩として析出させた重合体は、減圧下40〜120℃の温度で1〜10時間加熱し、乾燥させる。析出重合により得られた重合体は、乾燥させるのみで白色粉末状となる。このように析出重合の場合、粉末状の重合体が容易に得られ、粉砕を要しないという利点もある。アンモニウム塩、アミン塩又は金属塩として析出させた重合体が塊状である場合、粉砕すればよい。
[G] 難燃剤の使用対象及び使用方法
本発明の難燃剤の使用対象として、プラスチック、紙製品(障子紙、襖紙、壁紙、板紙、合成紙等)等のセルロース系材料、布等の繊維材料、木材系建築材料等が挙げられる。本発明の難燃剤は白色粉末状であり、プラスチック中に容易に溶解又は分散するので、特にプラスチック用難燃剤として有用である。特にアミン変性したものは耐熱性が高く、耐熱性プラスチック用難燃剤に好適である。プラスチックは特に限定されず、熱可塑性及び熱硬化性のいずれの合成樹脂でもよいが、熱可塑性樹脂への使用が一般的である。熱可塑性樹脂として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;ポリ(スチレン);ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリアセタール;ポリアミド等が挙げられる。熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
難燃剤のプラスチックへの配合量は特に制限されず、プラスチックの特性を低下させない限り、任意に設定できる。通常は難燃剤添加後のプラスチックの質量を100質量%として、3〜50質量%、好ましくは30〜50質量%の配合量とすれば、十分な難燃性が得られる。
熱可塑性樹脂に本発明の難燃剤を添加するには、原料熱可塑性樹脂とともに難燃剤を溶融混練した後、成形すればよく、配合が容易である。必要に応じて、本発明の難燃剤を溶媒に溶解又は分散した上で、原料熱可塑性樹脂に添加してもよい。熱硬化性樹脂に本発明の難燃剤を添加するには、未硬化の樹脂に、本発明の難燃剤を溶解又は分散した後硬化させればよい。必要に応じて、本発明の難燃剤を溶媒に溶解又は分散した上で、未硬化の熱硬化性樹脂に添加すればよい。
セルロース系材料、繊維材料、木材系建築材料等の基材に本発明の難燃剤を使用するには、例えば基材を難燃剤の水溶液に浸漬後乾燥する方法、難燃剤の水溶液を用いてサイズプレスする方法、難燃剤の水溶液を塗布する方法等が挙げられる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1〜4
(アシッド・ホスホオキシブチルアクリレートの調製)
還流冷却管、粉末投入口及び温度計を接続した自動合成反応装置(内容積1L、ユニケミカル株式会社製)に、576 g(4モル)の4-ヒドロキシブチルアクリレート、及び0.2 gのハイドロキノンモノメチルエーテルを入れ、2,120 rpmで攪拌しながら30℃(液温)で61 g(0.43モル)のP2O5を投入した。反応液は70℃まで上昇したが、20分間かけて36℃まで冷却後、8g(0.44モル)の水を添加し、5分間以上冷却しながら攪拌した。反応液を35〜78℃の温度範囲に調整し、上記P2O5及び水の添加操作を合計5回繰り返した後[P2O5の合計添加量:312g(2.2モル)、水の合計添加量:43g(2.4モル)]、70℃で1時間熟成反応を行った。得られた生成物の100℃不揮発分は99.3質量%であり、酸価(1gの反応溶液を100gの50質量%メタノール水に溶解し、1NのKOH水溶液により測定。)は432 mg/g(理論酸価:500 mg/g)であり、屈折率は1.4654(20℃)であった。
(膜の調製)
得られたアシッド・ホスホオキシブチルアクリレートを用い、表3に示す配合割合の不飽和組成物を調製し、これらを各々フッ素系樹脂フィルムを付着した2枚のガラス平板間に挟んだ状態とした。高圧水銀灯(東芝電材株式会社製トスキュア400,HC-0411型)を用いて、100 mW/cm2の強度で裏表からそれぞれ5分間ずつ紫外線を組成物に照射し(照射距離:10 cm)、光重合させることにより膜を作製した。
得られた膜の物性を以下の方法で測定した。結果を表3に示す。
(1) 耐水性:縦1cm×横4cmの帯状サンプルを切り出し、縦×横の面積を測定し、これを基準とした。切り出したサンプルを室温の水に浸漬し、30分後に取り出し、縦横の長さをそれぞれ測定し、かかる縦×横の面積を算出し、基準面積に対する増加率を膨潤率とした。
(2) 耐メタノール性:縦1cm×横4cmの帯状サンプルを切り出し、縦×横の面積を測定し、これを基準とした。切り出したサンプルを室温のメタノールに浸漬し、30分後に取り出し、縦横の長さをそれぞれ測定し、かかる縦×横の面積を算出し、基準面積に対する増加率を膨潤率とした。
(3) 表面固有抵抗:表面固有抵抗測定器(東亜電波工業株式会社製 SME-8310)により、RH 55%/25℃の条件で測定した。
(4) プロトン伝導性:複素インピーダンス法を用いて測定した。3cm×1cmの矩形状サンプルを切り出し、開放系インピーダンスセルに設置した。このセルを恒温恒湿器内に設置し、相対湿度:90%、測定温度範囲:35〜80℃でのインピーダンス測定を行った。得られたデータを平面複素インピーダンス解析し、その結果をcole-cole プロット図形処理をして得られたサンプルの抵抗値から導電率を求めた。
Figure 0004197706
表3から、本発明の共重合体からなる膜は、水、メタノール及び熱水への浸漬により、僅かな膨潤が起こるものの、溶解はせず、実用上問題ないレベルである。表面固有抵抗値は、25℃/RH 55%の測定において、1×107 Ω以下であった。プロトン導電率は、35〜80℃の温度及び90%の相対湿度の測定条件において、10-3〜10-2 S・cm-1のオーダーにあり、リン系酸残基を電解質基とする高分子電解質として格段に優れていた。
実施例5
(難燃剤の調製及び評価)
実施例1と同様にして調製した24.6 g(0.11モル)のアシッド・ホスホオキシブチルアクリレートと、23.2 g(0.33モル)のアクリルアミドとを、250 gのイソプロパノールに溶解し、自動合成反応装置(内容積1L、ユニケミカル株式会社製)に入れた。Nガスの流通下、60〜65℃の温度に保持しながら60〜90 rpmで1時間攪拌した。次いで、2, 2 ’-アゾビス(2, 4-ジメチルバレロニトリル)(商品名「V-65」、和光純薬株式会社製)の1質量%イソプロパノール(IPA)液(触媒液)を9mL調製し、分割投入した。まず3mLの触媒液を、攪拌下60℃で反応溶液に滴下すると、反応溶液は一時的に67℃まで上昇し白濁した。60〜65℃で1時間攪拌を持続した。次いで攪拌下60℃で3mLの触媒液を滴下し、1時間後同条件下でさらに同量の触媒液を滴下した。全量の触媒液を滴下後、70℃で2時間熟成反応を持続した。得られた反応溶液は上澄み液と樹脂沈降物とに分離した。
上澄み液にアセトンを添加しても透明であったことから、上澄み液には不飽和原料も重合物も溶解していないことが確認された。得られた白濁沈殿物を濾過し、アセトンによる洗浄を2回繰り返した後、3時間加熱減圧乾燥し(温度:60℃、真空度:10 mmHg以下)、29 gの白色の粉末重合体を得た(収率:61%)。この重合体の酸価[1gの樹脂を100 gのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、1NのKOH水溶液により測定。滴定終点:pH=11。以下同じ。]は、183.6 mg/g(リン酸当量:610g/eq.)であり、理論酸価(256.3 mg/g、理論リン酸当量:437 g/eq.)に近いことから、この重合体はアシッド・ホスホオキシブチルアクリレートとアクリルアミドの共重合体であるといえる。この白色粉末重合体の5質量%水溶液は粘性粥状エマルジョン水溶液であった。得られた白色粉末重合体をガスバーナーの先端に設置し、炎に20秒間曝し、着火の有無を調べたが(検体数:3個)、着火しなかった。
実施例6
(難燃剤の調製及び評価)
実施例1と同様にして調製した15.7 g(0.07モル)のアシッド・ホスホオキシブチルアクリレートと、15.5 g(0.22モル)のアクリルアミドと、7.4 g(0.07モル)のトリエチルアミンとを、220 gのイソプロパノールに溶解し、自動合成反応装置(内容積1L、ユニケミカル株式会社製)に入れた。Nガスの流通下、60〜65℃の温度に保持しながら60〜90 rpmで1時間攪拌した後、実施例5と同様にして9mLの2, 2 ’-アゾビス(2, 4-ジメチルバレロニトリル)の1質量%イソプロパノール(IPA)液を分割投入した。全量の触媒液を滴下後、70℃で2時間熟成反応を持続した。得られた反応溶液は上澄み液と樹脂沈降物とに分離した。
上澄み液にアセトンを添加しても透明であったことから、上澄み液には不飽和原料も重合物も溶解していないことが確認された。得られた白濁沈殿物を濾過し、アセトンによる洗浄を2回繰り返した後、3時間加熱減圧乾燥し(温度:60℃、真空度:10 mmHg以下)、28.6 gの白色の粉末重合体を得た(収率:72.8%)。この重合体の酸価は、118.1 mg/g(リン酸当量:474.2 g/eq.)であり、理論酸価に近いことから(理論酸価:104 mg/g、理論リン酸当量:538 g/eq.)、この重合体はアシッド・ホスホオキシブチルアクリレートとアクリルアミドの共重合体のトリエチルアミン塩であるといえる。この白色粉末重合体の5質量%水溶液は粘性粥状エマルジョン水溶液であった。得られた白色粉末重合体をガスバーナーの先端に設置し、炎に20秒間曝し、着火の有無を調べたが(検体数:3個)、着火しなかった。

Claims (5)

  1. 少なくとも(a) 下記一般式(1):
    Figure 0004197706
    (ただしR1H又はCH 3 であり、R2は直鎖状又は分岐状のブチレン基であり、nは1〜6の整数である。)により表され、アンモニウム塩、アミン塩又は金属塩を形成していてもよいリン酸基含有不飽和単量体と、
    (b) (i) 各々分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するブタジエンオリゴマー、イソプレンオリゴマー及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種の共役ジエン系液状オリゴマー、(ii) 各々分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する水素化ブタジエンオリゴマー、水素化イソプレンオリゴマー及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種の水素化共役ジエン系液状オリゴマー、並びに(iii) 少なくともビニル芳香族単位及び共役ジエン単位を有し、かつ分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するビニル芳香族−共役ジエン共重合系液状オリゴマー又はその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種と
    (c) 下記一般式(2):
    Figure 0004197706
    (ただしR 3 〜R 6 はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R 7 はアルキレン基である。)により表されるウレタンアクリレートと
    を共重合してなり、プロトン伝導性を有することを特徴とする固体高分子電解質膜。
  2. 請求項1に記載の固体高分子電解質膜において、前記ウレタンアクリレートはR 3 及びR 5 としてHを有し、R 4 及びR 6 としてCH 3 を有し、かつ596の分子量を有することを特徴とする固体高分子電解質膜。
  3. 請求項1又は2に記載の固体高分子電解質膜において、前記共役ジエン系液状オリゴマーは、下記一般式(3):
    Figure 0004197706
    (但しR 8 及びR 9 はそれぞれ独立に(i) エチレン性不飽和結合を1個以上有し、かつ他の原子団もしくは官能基を有してもよい炭化水素基、(ii) エチレン性不飽和結合を有さず、かつ他の原子団もしくは官能基を有してもよい炭化水素基又は(iii) 水素基であり、かつR 8 及びR 9 の少なくとも一方は前記(i) エチレン性不飽和結合を有する炭化水素基であり、R 10 及びR 11 はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、かつR 10 及びR 11 の少なくとも一方は水素基であり、mは重合度を示す。)により表される化合物であり、前記水素化共役ジエン系液状オリゴマーは、下記一般式(4):
    Figure 0004197706
    (ただしR 8 R 11 は式(3)と同じであり、mは重合度を示す。)により表される化合物であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子電解質膜において、前記リン酸基含有不飽和単量体、前記共役ジエン系液状オリゴマー、前記水素化共役ジエン系液状オリゴマー前記ビニル芳香族−共役ジエン共重合系液状オリゴマー及び前記ウレタンアクリレート以外に、(d) リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基及びアルコール性水酸基からなる群から選ばれた少なくとも一種の酸性基を有する不飽和化合物、及び/又は(e) (メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有不飽和単量体、置換又は無置換のスチレン、ハロゲンビニル、脂肪酸ビニルエステル及びフッ素基含有不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種の酸性基を有しない不飽和化合物も共重合してなることを特徴とする固体高分子電解質膜。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子電解質膜を用いたことを特徴とする燃料電池。
JP2006075345A 2005-06-07 2006-03-17 リン酸基含有不飽和単量体及び不飽和液状オリゴマーを共重合してなる固体高分子電解質膜及びそれを用いた燃料電池 Expired - Fee Related JP4197706B2 (ja)

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