JP4144877B2 - アミン変性リン酸基を含有する固体高分子電解質膜及びその原料単量体組成物、並びにその固体高分子電解質膜の製造方法及び用途 - Google Patents
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Description
(但しR31は4価の芳香族基であり、R32は脂肪族基、脂環族基又は芳香族基であり、R33及びR34はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数2〜5のアルキルリン酸基であり、かつ繰り返し構造単位中に0.1〜2個のアルキルリン酸基を含み、kは10〜10,000である。)により表されるポリベンズイミダゾールのアルキルリン酸塩からなるリン酸基含有重合体を提案している。
(B) リン酸基含有ジエステル系不飽和単量体(c)と
を少なくとも共重合してなる固体高分子電解質膜であって、
(a)は下記一般式(1):
(b)は下記一般式(2):
(c)は下記一般式(7):
下記一般式(13):
(B) リン酸基含有ジエステル系不飽和単量体(c)と
を少なくとも含む固体高分子電解質用単量体組成物であって、
前記(A)の四級アンモニウム塩基を有する不飽和単量体は、下記一般式(16):
(c)は下記一般式(7):
本発明の固体高分子電解質用単量体組成物は、(a) 分子内にリン酸基及びエチレン性不飽和結合を各々1個以上有するリン酸基含有不飽和単量体を、(b) 分子内に置換又は無置換のアミノ基及びエチレン性不飽和結合を各々1個以上有するアミノ基含有不飽和単量体で変性させることにより得られ、リン酸基中の水酸基の一部乃至大部分がアミノ基と反応した四級アンモニウム塩基を有する不飽和単量体(以下単に「四級アンモニウム塩基含有不飽和単量体」とよぶ)を含む。
リン酸基含有不飽和単量体は下記一般式(1):
(ただしR1は水素又はアルキル基であり、R2は水素又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、nは1〜6の整数である。)により表すことができる。R1はH又はCH3であり、R2はH、CH3又はCH2Clであるのが好ましい。
(2) 単位は質量%。
アミノ基含有不飽和単量体は、分子内に置換又は無置換のアミノ基及びエチレン性不飽和結合を各々1個以上有するものである限り特に制限はない。アミノ基含有不飽和単量体として、例えば(a) 下記一般式(2):
(ただしR3は水素基又はメチル基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、X1は−O−基又は−NH−基であり、Y1は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜16のアリーレン基である。)により表される化合物、(b) 下記一般式(3):
(ただしR6は水素基又はメチル基であり、R7及びR8はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)により表される化合物、(c) 下記一般式(4):
(ただしR9は水素基又はメチル基であり、R10及びR11はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Y2は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜16のアリーレン基である。)により表される化合物、(d) 下記一般式(5):
(ただしR12は水素基又はメチル基であり、R13及びR14はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)により表される化合物、(e) 下記一般式(6):
(ただしR15及びR16はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R17は水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Y3及びY4はそれぞれ独立に置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜16のアリーレン基である。)により表される化合物、及び(f) 1個以上のビニル基を有するヘテロ環状アミン化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種が挙げられる。
リン酸基含有不飽和単量体とアミノ基含有不飽和単量体の配合割合は、上記リン酸基含有不飽和単量体が一リン酸基当り2個の水酸基を有するため、リン酸基に対するアミノ基の割合が50〜180モル%となる範囲であるのが好ましい。この割合を50モル%未満とすると、架橋性を有する四級アンモニウム塩基含有不飽和単量体の生成割合が少なくなり、得られる重合体の耐溶剤性が悪化する。一方この割合を180モル%超とすると、リン酸基が中和される割合が高くなり過ぎ、得られる重合体の酸性リン酸基の割合が少なくなるためプロトン伝導性が不十分となる。この比は60〜150モル%の範囲とするのがより好ましい。
本発明の固体高分子電解質用単量体組成物は、例えば溶媒中において、リン酸基含有不飽和単量体に対して、所定の配合割合のアミノ基含有不飽和単量体、水及び必要に応じて添加する触媒を滴下し、0℃〜溶媒の沸点以下の温度で処理することにより調製できる。水の添加量はリン酸基含有不飽和単量体に対して約1質量%とする。溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールが挙げられる。溶媒の使用量に特に制限はなく、反応混合物の粘度が高くなり過ぎない程度であればよい。必要に応じて反応後の溶液を加熱減圧し、溶媒を留去する。
上述の調製方法により得られる固体高分子電解質用単量体組成物が含む四級アンモニウム塩基含有不飽和単量体は、リン酸基含有不飽和単量体のリン酸基中の水酸基の一部乃至大部分が、アミノ基含有不飽和単量体のアミノ基と反応したものであるので、一分子中に水酸基と四級アンモニウム塩基とが共存している。具体的には、リン酸基含有不飽和単量体として上記式(1)に示すものを用い、アミノ基含有不飽和単量体として上記式(2)〜(6)に示すもの及び上記ヘテロ環状アミン化合物を用いて、上述のような調製方法により得られる固体高分子電解質用単量体組成物は、(a) 下記一般式(16):
(但しR1は水素基又はアルキル基であり、R2は水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、R3は水素基又はメチル基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、X1は−O−基又は−NH−基であり、Y1は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数6〜12のアリーレン基であり、nは1〜6の整数である。)により表される化合物、(b) 下記一般式(17):
(但しR1は水素基又はアルキル基であり、R2は水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、R6は水素基又はメチル基であり、R7及びR8はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜6の整数である。)により表される化合物、(c) 下記一般式(18):
(但しR1は水素基又はアルキル基であり、R2は水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、R9は水素基又はメチル基であり、R10及びR11はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Y2は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜16のアリーレン基であり、nは1〜6の整数である。)により表される化合物、(d) 下記一般式(19):
(但しR1は水素基又はアルキル基であり、R2は水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、R12は水素基又はメチル基であり、R13及びR14はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜6の整数である。)により表される化合物、(e) 下記一般式(20):
(但しR1は水素基又はアルキル基であり、R2は水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、R15及びR16はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R17は水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Y3及びY4はそれぞれ独立に置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜16のアリーレン基であり、nは1〜6の整数である。)により表される化合物、及び(f) (i) 下記一般式(1):
(ただしR1は水素基又はアルキル基であり、R2は水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、nは1〜6の整数である。)により表されるリン酸基含有不飽和単量体を、(ii) 1個以上のビニル基を有するヘテロ環状アミンで変性した化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の四級アンモニウム塩基含有不飽和単量体を含む。
本発明の固体高分子電解質膜は、(a) リン酸基含有不飽和単量体を、(b) アミノ基含有不飽和単量体で変性した上記の四級アンモニウム塩基含有不飽和単量体を重合してなる。固体高分子電解質膜は、四級アンモニウム塩基含有不飽和単量体と共重合し得る他の不飽和単量体を共重合してなるものであってもよい。
共重合し得る他の不飽和単量体は次の2群(1)、(2)に大別できる。
(1) 官能基を含有する不飽和単量体
官能基を含有する不飽和単量体は、分子内に少なくとも1つの官能基と、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物である。官能基としては、酸性基、アルコール性水酸基、アルキルアミノ基(アミド基も有するものも含む)等を挙げることができる。酸性基としてリン系酸残基、スルホン酸基及びカルボン酸基からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する骨格としては、(メタ)アクリレート骨格、(メタ)アリルエステル骨格等を挙げることができる。
リン系酸残基含有不飽和単量体としては、下記式(7):
(ただしR18及びR21はそれぞれ独立に水素基又はアルキル基であり、R19及びR20はそれぞれ独立に水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、m及びpはそれぞれ独立に1〜6の整数である。)により表されるリン酸基含有ジエステル系不飽和単量体が好ましい。このリン酸基含有ジエステル系不飽和単量体を用いることにより、得られる固体高分子電解質膜の耐溶剤性が向上する。リン酸基含有ジエステル系不飽和単量体としては、下記式(21);
により表されるジ(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェートが好ましい。
(ただしR26及びR29はそれぞれ独立に水素基又はアルキル基であり、R27及びR28はそれぞれ独立に水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、s及びtはそれぞれ独立に1〜6の整数である。)により表されるピロリン酸基含有不飽和単量体を用いてもよい。式(22)により表されるピロリン酸基含有不飽和単量体としては、下記式(23);
により表されるジ(メタクリロイルオキシエチル)アシッド・ピロホスフェートが好ましい。
により表されるメタクロイル・オキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミン塩が挙げられる。この錯塩は、ユニケミカル(株)から商品名「Phosmer MH」として販売されている。
スルホン酸基を含有する不飽和単量体の例示化合物としては、下記一般式(8):
(ただしR22は水素基又はメチル基である。)により表される化合物、下記一般式(9):
(ただしR23は水素基又はメチル基であり、Y5は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数6〜12のアリーレン基である。)により表される化合物、及び下記一般式(10):
(ただしR24は水素基又はメチル基であり、X2は−O−基又は−NH−基であり、Y6は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数6〜12のアリーレン基である。)により表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
カルボン酸基を含有する不飽和単量体の例示化合物としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸無水物等が挙げられる。これらは単独でもよいし、2種以上を併用しても良い。
アルコール性水酸基を含有する不飽和単量体としては、グリセロールジメタクリレート[例えば商品名「ブレンマーGMR」、「ブレンマーGMR-R」(日本油脂(株)製)等]、グリセロールメタクリレートアクリレート[例えば商品名「ブレンマーGAM」、「ブレンマーGAM-R」(日本油脂(株)製)等]、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート[例えば商品名「NK オリゴ EA-5521」(新中村化学工業(株)製)等]、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルアクリレート[例えば商品名「NK オリゴ EA-5520」(新中村化学工業(株)製)等]、ビスフェノールA型エポキシアクリレート[例えば商品名「NK オリゴ EA-1020」(新中村化学工業(株)製)等]、及び2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート類が挙げられる。中でも、グリセロールジメタクリレート、グリセロールメタクリレートアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルアクリレート及びビスフェノールA型エポキシアクリレートは、エチレン性不飽和基を分子中に2個有する観点から好ましい。
官能基を含有しない不飽和単量体としては、(1)に記載した以外の、常温で気体でない、分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する不飽和単量体はすべて対象になるが、中でも(メタ)アクリロニトリル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド類;置換又は無置換のスチレン類;塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル類が好適に使用される。1分子内に複数個のエチレン性不飽和結合を含有するエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレンジオールジ(メタ)アクリレートやジビニルベンゼンなども共重合体の耐化学薬品性を改良する目的をもって使用される。
(ただしX4は少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有メチル基又はフッ素基である。)により表されるものが好ましい。上記一般式(12)においてX4はパーフルオロメチル基又はフッ素基であるのがより好ましい。フッ素基含有(メタ)アクリル酸類としては、α−(トリフルオロメチル)アクリル酸が特に好ましい。
(但しRf1は上記式(13)と同じである。)により表されるものが、より好ましい。
(ただしRf2は少なくとも1個のフッ素基を含有するフッ素基含有アルキレン基であり、X12、X13、X14、X15、X16及びX17はそれぞれ独立に水素基又はフッ素基である。)により表されるものが好ましい。
(但しRf2は上記式(15)と同じである。)により表されるものが、より好ましい。
固体高分子電解質用単量体組成物(イ)と、他の不飽和単量体(ロ)との重量比(イ)/(ロ)は、100/0〜20/80の範囲であるが、好ましくは(イ)/(ロ) = 80/20〜40/60である。また他の不飽和単量体(ロ)の中で、官能基を含有する不飽和単量体(1) とそれ以外の不飽和単量体(2) のモル比は、プロトン伝導性にプラス効果をもたらす不飽和単量体(1)が支配的になるように、不飽和単量体(1)/不飽和単量体(2)=100/0〜50/50の範囲とするのが好ましい。従って、特に酸基を含有する不飽和単量体(1)としてスルホン酸基含有不飽和単量体を使用する場合、固体高分子電解質用単量体組成物/スルホン酸基含有不飽和単量体の重量比は100/0〜20/80、好ましくは80/20〜40/60であり、スルホン酸基含有不飽和単量体/他の酸基含有不飽和単量体の重量比は100/0〜50/50である。
固体高分子電解質膜を製造する際の造膜性や、得られる固体高分子電解質膜の強度、疎水性、耐溶剤性等を一層向上させるために、固体高分子電解質膜が含む共重合体と相溶し得るその他の重合体を混合することができる。その他の重合体としてはポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、メラミン樹脂、セルロース及びその変性物等を挙げることができる。ポリアミド樹脂としては特開2003-138088号に記載のN-アルコキシアルキル化ポリアミドが好ましい。
本発明の固体高分子電解質膜は、(a) リン酸基含有不飽和単量体を、(b) アミノ基含有不飽和単量体で変性した上記の四級アンモニウム塩基含有不飽和単量体を含む組成物を調製し、これに光増感剤を添加し、不飽和単量体が付着しない材料(フッ素系重合体等)により被覆された板に流延し、紫外線透過性板で覆った後、紫外線を照射して不飽和単量体を(共)重合させることにより、製造することができる。混合組成物として、上記固体高分子電解質用単量体組成物を調製するのが好ましい。
(i) R-(CO)x -R’(R,R’=水素基又は炭化水素基、x = 2〜3)で表される隣接ポリケトン化合物類(例えば、ジアセチル、ジベンジル等)、
(ii) R-CO-CHOH-R’(R,R’=水素基又は炭化水素基)で表されるα-カルボニルアルコール類(例えば、ベンゾイン等)、
(iii) R-CH(OR”)-CO-R’(R,R’,R”=炭化水素基)で表されるアシロイン・エーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル等)、
(iv) Ar-CR(OH)-CO-Ar(Ar=アリール基、R=炭化水素基)で表されるα-置換アシロイン類(例えば、α-アルキルベンゾイン等)、及び
(v) 多核キノン類(例えば、9,10-アンスラキノン等)がある。
これらの光増感剤は、それぞれ単独で使用できるが、複数のものを併用してもよい。
(i) 無機質繊維からなる補強材
ガラス繊維、アルミナ繊維、ロックウール繊維、スラグ繊維などからなる織布、不織布、紙等が挙げられる。無機質繊維からなる補強材の坪量は10〜60 mg/cm2、好ましくは10〜40 mg/cm2で、厚さは1μm〜60μm、好ましくは5μm〜40μmの範囲である。
通常、衣料用に用いられるナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等や、産業用に用いられるアラミド繊維からなる織布、不織布、紙等が挙げられる。不織布としてはポリプロピレン不織布が挙げられる。ただし紫外線照射時に複合系の温度が〜100℃まで上昇することがあり得るので、それに耐える耐熱性を有するものであることが必要である。有機質繊維からなる補強材の坪量と厚さは、(i)の場合と同じである。ただし含浸させる不飽和単量体組成物がスルホン酸基などの強酸基を有する不飽和単量体を含む場合は、ナイロン繊維からなる織布、不織布、紙等は耐酸性が弱いため不適である。
汎用樹脂であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ3−メチルペンテン樹脂、ナイロン−6樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂などや、耐熱性樹脂であるポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素系樹脂などから製膜したフィルムが好ましい。樹脂フィルムは、微孔を有するフィルムでもよいし、微孔を有しないフィルムのどちらでもよいが、前者が好ましい。ただし含浸させる不飽和単量体組成物がスルホン酸基などの強酸基を有する不飽和単量体を含む場合は、ナイロンフィルムは、耐酸性が強くないため不適である。
本発明の固体高分子電解質膜は、室温/24時間でのメタノール抽出率が、室温乾燥した膜で12%以下であり、130℃で乾燥した膜で7%以下であり、耐溶剤性に優れている。本発明の固体高分子電解質膜が耐溶剤性に優れているのは、固体高分子電解質膜を構成する四級アンモニウム塩基含有不飽和単量体が、一分子中に(a) リン酸基含有不飽和単量体に由来するエチレン性不飽和結合と、(b) アミノ基含有不飽和単量体に由来するエチレン性不飽和結合とを有するので、これらの不飽和結合により形成された架橋構造を部分的に有することによるものと推測される。本発明の固体高分子電解質膜では、アミノ基がエチレン性不飽和結合由来の炭化水素骨格に直接又はアルキレン基等を介して結合しており、かつリン酸基に結合しているため、リン酸基とアミノ基の結合は強く、解離し難い。このため比較的高温においても耐溶剤性に優れている。
(固体高分子電解質用単量体組成物の調製)
77.3 g(0.157モル)のアシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコールメタクリレート(商品名「Phosmer PP」、ユニケミカル(株)製)、及び0.77 gの水を350 mLのメタノールに室温で溶解させ、得られた溶液に28.3 g(0.180モル)のN, N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を滴下し、pHが5.5となるまで撹拌した。得られた反応溶液を40℃で減圧濃縮し、100.3 gの生成物を得た。生成物の二重結合純度(臭素付加法)は86.4%であり、酸価(1NのKOH水溶液を使用)は127.0 mgであった[Phosmer PP及びDMAEMAからなるハーフ塩(下記式(27)参照)の理論酸価:87.4 mg/g。強塩基であるKOHを使用しているため、Phosmer PPと塩を形成したDMAEMAの一部がKOHに置換され、本来の酸価より高い値として測定されると推測される(以下同様)。]。このことから下記式(27):
得られたハーフ塩を含む単量体組成物(以下「PP-DM(I)」とよぶ)を用いて、固体高分子電解質膜を作製した。用いた不飽和単量体の原料、及びそれらの配合割合を表3に示す。まず表3に記載の単量体組成物に、光増感剤として[イルガキュア651(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン) +イルガキュア500(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン) = 1 wt% + 0.5 wt%](対全単量体)を溶解させた。次いで図2及び図3に示すように、得られた組成物1を、フッ素系樹脂フィルムを付着したガラス平板2にキャストし、その上にフッ素系樹脂フィルムを付着したガラス平板2を被せ、2枚のガラス平板2,2間に組成物1を挟んだ状態とし、高圧水銀灯(セン特殊光源(株)製キュアラブHLR-1000F-22、波長:365 nm)を用いて、紫外線照射強度15〜30μW/cm2で片面から7〜8分間照射して(照射距離:25 cm)光重合させることにより固体高分子電解質膜を作製した。得られた膜に対して130℃で5分間の熱処理を施した。作製した固体高分子電解質複合膜のメタノール抽出率等を表3に示す。
(2) メタクリロイルオキシエチルホスフェート(Phosmer M、分子量:210)及びジ(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート(分子量:322)を理論モル比1:1で含む組成物。
(3) スチレン(分子量:104)。
(4) アクリロニトリル(分子量:53)。
(5) p-スチレンスルホン酸(分子量:184)。
(6) 2,2,2−トリフルオロエチルメタクリート(分子量:168)。
(7) 膜を大過剰のメタノールに室温で24時間浸漬した後の質量減少を測定。
(固体高分子電解質形成用組成物の調製)
Phosmer PP、DMAEMA及び水を参考例1と同量用いて、pHが5.3となるまで撹拌した以外は参考例1と同様にして反応させた。得られた反応溶液を40℃で減圧濃縮し、100.1 gの生成物を得た。生成物の二重結合純度(臭素付加法)は84.6%であり、酸価(1NのKOH水溶液を使用)は134.1 mgであった(上記式(27)により表されるハーフ塩の理論酸価:87.4 mg/g。)。このことから上記式(27)により表されるハーフ塩を主成分とする組成物が得られたと判断した。
得られたハーフ塩を含む単量体組成物(以下「PP-DM(II)」とよぶ)を用いて、実施例1〜3と同様にして固体高分子電解質膜を作製した。用いた不飽和単量体の原料、及びそれらの配合割合を表4に示す。作製した固体高分子電解質複合膜のメタノール抽出率等を表4に示す。
(2)〜(7):表3と同じ。
(固体高分子電解質形成用組成物の調製)
77.3 g(0.157モル)のPhosmer PP、53.2 g(0.34モル)DMAEMA及び0.77 gの水を用いて、pHが7.0となるまで撹拌した以外は参考例1と同様にして反応させた。得られた反応溶液を40℃で減圧濃縮し、124.0 gの生成物を得た。pHが7.0とほぼ中和したことから、リン酸基がアミノ基により中和された不飽和単量体を主成分とする組成物が得られたと判断した。なお生成物の二重結合純度(臭素付加法)は100%であり、酸価(1NのKOH水溶液を使用)は69.6 mgであった。
得られた単量体組成物(以下「PP-DM(III)」とよぶ)を用いて、実施例1〜9と同様にして固体高分子電解質膜を作製した。用いた不飽和単量体の原料、及びそれらの配合割合を表5に示す。作製した固体高分子電解質複合膜のメタノール抽出率等を表5に示す。
表5に示す不飽和単量体を用い、参考例1と同様にして固体高分子電解質膜を作製した。作製した固体高分子電解質複合膜のメタノール抽出率等を表5に示す。
(2)〜(7):表3と同じ。
プロトン伝導率は複素インピーダンス法を用いて測定した。上述の方法により作製した参考例1〜3,実施例1〜9及び比較例1〜4の膜から切り出したサンプルを2枚の白金電極に挟み、(株)東陽テクニカ製のエレクトロケミカル・インターフェースポテンショスタットのセルに充填した。測定周波数範囲:1 MHz、相対湿度:90%、測定温度範囲:20〜80℃で、セルのインピーダンスを測定した。得られたデータを平面複素インピーダンス解析し、その結果をcole-cole プロット図形処理をして得られたサンプルの抵抗値からプロトン伝導率を求めた。結果を図4〜8に示す。
2・・・ガラス平板
3・・・クリップ
Claims (13)
- (A) 分子内にリン酸基及びエチレン性不飽和結合を各々1個有し、一リン酸基当り2個の水酸基を有するリン酸基含有不飽和単量体(a)、並びに分子内に置換又は無置換のアミノ基及びエチレン性不飽和結合を各々1個以上有するアミノ基含有不飽和単量体(b)を、(a)のリン酸基に対する(b)のアミノ基の割合が50〜180モル%となる範囲で反応させてなる単量体組成物であって、(a)が(b)で変性されて(a)のリン酸基が(b)のアミノ基と反応した四級アンモニウム塩基を有する不飽和単量体を含む単量体組成物と、
(B) リン酸基含有ジエステル系不飽和単量体(c)と
を少なくとも共重合してなる固体高分子電解質膜であって、
(a)は下記一般式(1):
(b)は下記一般式(2):
(c)は下記一般式(7):
- 請求項1に記載の固体高分子電解質膜において、(a)のR1はH又はCH3であり、R2はH、CH3又はCH2Clであり、(c)のR18及びR21はそれぞれ独立にH又はCH3であり、R19及びR20はそれぞれ独立にH、CH3又はCH2Clであることを特徴とする固体高分子電解質膜。
- 請求項1又は2に記載の固体高分子電解質膜において、(a)〜(c)以外の不飽和単量体(d)を共重合成分として含み、(d)は分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合と官能基とを有する不飽和単量体(d-1)、及び分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有するが官能基を有しない不飽和単量体(d-2)の一方又は両方であり、(d-1)はスルホン酸基、カルボン酸基及びアルコール性水酸基からなる群から選ばれた少なくとも一種の官能基を有し、(d-2)は(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、置換又は無置換のスチレン類、ビニル類、及び分子内に1個以上のフッ素基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有するフッ素基含有不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
- 請求項3に記載の固体高分子電解質膜において、(前記(A)の単量体組成物)/((c)及び(d)の合計)の重量比は80/20〜40/60であり、((c)及び(d-1)の合計)/(d-2)の重量比は100/0〜50/50であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
- 請求項3又は4に記載の固体高分子電解質膜において、(d-1)として、下記一般式(8):
- 請求項3〜5のいずれかに記載の固体高分子電解質膜において、(d-2)として、(i) 少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有(メタ)アクリル酸エステル類、(ii) 少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有(メタ)アクリル酸類、(iii) 少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有アルキル基及び/又は少なくとも1個のフッ素基と1個のエチレン性不飽和結合とを有するフッ素基含有オレフィン系不飽和単量体、並びに(iv) 少なくとも1個のフッ素基を含有するフッ素基含有アルキレン基と2個のエチレン性不飽和結合とを有するフッ素基含有ジエン系不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種のフッ素基含有不飽和単量体を少なくとも共重合成分として含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。
- 請求項6に記載の固体高分子電解質膜において、前記フッ素基含有(メタ)アクリル酸エステル類は下記一般式(11):
下記一般式(13):
- 請求項6又は7に記載の固体高分子電解質膜において、前記フッ素基含有不飽和単量体として2,2,2−トリフルオロエチルメタクリートを共重合成分として含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。
- (A) 分子内にリン酸基及びエチレン性不飽和結合を各々1個有し、一リン酸基当り2個の水酸基を有するリン酸基含有不飽和単量体(a)、並びに分子内に置換又は無置換のアミノ基及びエチレン性不飽和結合を各々1個以上有するアミノ基含有不飽和単量体(b)を、(a)のリン酸基に対する(b)のアミノ基の割合が50〜180モル%となる範囲で反応させてなる単量体組成物であって、(a)が(b)で変性されて(a)のリン酸基が(b)のアミノ基と反応した四級アンモニウム塩基を有する不飽和単量体を含む単量体組成物と、
(B) リン酸基含有ジエステル系不飽和単量体(c)と
を少なくとも含む固体高分子電解質用単量体組成物であって、
前記(A)の四級アンモニウム塩基を有する不飽和単量体は、下記一般式(16):
(c)は下記一般式(7):
- 請求項9に記載の固体高分子電解質用単量体組成物において、未反応の(a)、未反応の(b)、及び(a)のリン酸基中の水酸基の全てが(b)のアミノ基と反応した不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むことを特徴とする固体高分子電解質用単量体組成物。
- 請求項9又は10に記載の固体高分子電解質用単量体組成物を調製し、得られた固体高分子電解質用単量体組成物を重合するか、前記固体高分子電解質用単量体組成物及び共重合可能な他の不飽和単量体を共重合することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。
- 請求項11に記載の固体高分子電解質膜の製造方法において、紫外線を照射することにより(共)重合することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の固体高分子電解質膜を用いたことを特徴とする燃料電池。
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