JP4807529B2 - 固体高分子電解質膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
更に、得られた固体高分子電解質膜は、プロトン伝導性が高く、低湿度状態においても高い導電性を有するゴム弾性膜であり、フッ素を含まないため環境上安全・安価に製造できることを知見した。
なお、(部分)加水分解・縮合とは、アルコキシシリル基の一部又は全部が加水分解・縮合されたことを示す。
〔請求項1〕
(A)分子内に1個以上のアルコキシシリル基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有するアルコキシシリル基含有不飽和モノマーと、(B)分子内に1個以上のケイ素原子と直接に結合したエチレン性不飽和結合と1個以上のケイ素原子と直接には結合しないエチレン性不飽和結合とを有するアルケニルシリル基含有不飽和モノマーと、(C)分子内に1個以上の酸基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有する酸基含有不飽和モノマーとを含む不飽和モノマーを共重合してなるイオン伝導性高分子物質及び/又はその誘導体と、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体とを含むEPDM組成物を製膜、硬化してなることを特徴とする固体高分子電解質膜。
〔請求項2〕
イオン伝導性高分子物質の誘導体が、イオン伝導性高分子物質のアルコキシシリル基の一部又は全部を加水分解・縮合することにより得られた水不溶性のものであることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子電解質膜。
〔請求項3〕
(A)アルコキシシリル基含有不飽和モノマーが、下記一般式(I)で表されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体高分子電解質膜。
〔請求項4〕
(B)アルケニルシリル基含有不飽和モノマーが、下記一般式(II)で表されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜。
〔請求項5〕
(C)酸基含有不飽和モノマーが、スルホン酸基含有不飽和モノマー及び/又はホスホン酸基含有不飽和モノマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜。
〔請求項6〕
スルホン酸基含有不飽和モノマーとホスホン酸基含有不飽和モノマーが、モル比で(ホスホン酸基含有不飽和モノマー)/(スルホン酸基含有不飽和モノマー)=0/100〜90/10の割合で使用されてなることを特徴とする請求項5に記載の固体高分子電解質膜。
〔請求項7〕
ホスホン酸基含有不飽和モノマーが、下記一般式(III)で表されるものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の固体高分子電解質膜。
〔請求項8〕
EPDM組成物が、
(a)エチレン−プロピレン−ジエン共重合体:100質量部、
(b)請求項1〜7のいずれか1項に記載のイオン伝導性高分子物質及び/又はその誘導体:100〜500質量部、
(c)架橋剤:(a)、(b)成分の合計100質量部に対して0.1〜10質量部
を含有してなるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜。
〔請求項9〕
EPDM組成物が、更に(d)酸性基を含有する粉体としてスルホン酸基含有シランで処理したシリカ(a)成分100質量部に対して10〜150質量部を含有してなるものであることを特徴とする請求項8に記載の固体高分子電解質膜。
〔請求項10〕
請求項8又は9に記載のEPDM組成物を、120℃〜180℃の温度の熱プレスにより架橋・製膜した後、酸基がアミン塩、アンモニウム塩又はアルカリ金属塩を形成している場合は酸処理することで酸型にもどすことにより、プロトン伝導性とゴム弾性を有する膜にすることを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。
(1)イオン伝導性高分子物質の原料
本発明のイオン伝導性高分子物質は、(A)分子内に1個以上のアルコキシシリル基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有するアルコキシシリル基含有不飽和モノマーと、(B)分子内に1個以上のケイ素原子と直接に結合したエチレン性不飽和結合と1個以上のケイ素原子と直接には結合しないエチレン性不飽和結合とを有するアルケニルシリル基含有不飽和モノマーと、(C)分子内に1個以上の酸基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有する酸基含有不飽和モノマーとを含む不飽和モノマーを共重合した高分子物質である。
(A)分子内に1個以上のアルコキシシリル基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有するアルコキシシリル基含有不飽和モノマーは、以後アルコキシシリル基含有不飽和モノマーと略記する。
(B)分子内に1個以上のケイ素原子と直接に結合したエチレン性不飽和結合と1個以上のケイ素原子と直接には結合しないエチレン性不飽和結合とを有するアルケニルシリル基含有不飽和モノマーは、以後アルケニルシリル基含有不飽和モノマーと略記する。
(C)分子内に1個以上の酸基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有する酸基含有不飽和モノマーは、以後酸基含有不飽和モノマーと略記する。
イオン伝導性高分子物質は、この酸基含有不飽和モノマーを共重合して生まれるものであり、酸基としては、(C−1)ホスホン酸(リン酸)基と、(C−2)スルホン酸基と、(C−3)その他の酸基に大別できる。
ホスホン酸基を含有する不飽和モノマーとしては、メタクリロキシ基又はアクリロキシ基を含有するホスホン酸エステル、あるいはメタクリロキシ基又はアクリロキシ基を含有するホスホン酸アミド及びその誘導体が挙げられる。ホスホン酸基含有不飽和モノマーは、リン酸が三価の酸であることを反映してイオン交換容量の大きいものが多く、例えばユニケミカル社製のホスマーシリーズを挙げることができる。
とりわけ、(C−1)ホスホン酸基含有不飽和モノマーの望ましい構造は、下記一般式(III)により表されるものである。
スルホン酸基を含有する不飽和モノマーとしては、不飽和基として、ビニル基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、メタクリルアミド基又はアクリルアミド基を含有するスルホン酸基含有モノマー又はその誘導体が挙げられる。
上記ホスホン酸基、スルホン酸基以外の他の酸基を含有する不飽和モノマーとしては、カルボキシル基を含む不飽和モノマーがあり、この例示化合物としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸無水物等が挙げられる。
本発明のイオン伝導性高分子物質は、その他の不飽和モノマーを共重合成分として含んでもよい。その他の不飽和モノマーとしては、酸基を含有しない不飽和モノマーが挙げられ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド類;非置換又は置換のスチレン類;塩化ビニル、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン等のビニル類等が挙げられる。
アルコキシシリル基含有不飽和モノマー(A)と、アルケニルシリル基含有不飽和モノマー(B)との使用割合は、モル比で(アルコキシシリル基含有不飽和モノマー)/(アルケニルシリル基含有不飽和モノマー)=90/10〜10/90で、好ましくは75/25〜25/75、最も好ましくはほぼ等モルに設定することができる。アルコキシシリル基含有不飽和モノマーがこれよりも多い場合、重合中にゲル化を起こしやすくなり、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体との配合時に分散性が悪くなるため膜強度が低下するおそれがあり、これよりも少ない場合、水溶性になり、ゴム膜の耐水性が悪くなるおそれがある。
本発明のイオン伝導性高分子物質は、上述した各種の不飽和モノマーの混合物をラジカル重合により共重合させることによって製造できる。
アルコキシシリル基含有不飽和モノマーと、アルケニルシリル基含有不飽和モノマーと、酸基含有不飽和モノマーを含有する不飽和モノマーの共重合体は、アルコキシシリル基含有不飽和モノマー及びアルケニルシリル基含有不飽和モノマーが親油性であり、酸基含有不飽和モノマーが親水性であるため、この違いによりこれらの不飽和モノマーの共重合化が難しく、とりわけアルコキシシリル基含有不飽和モノマーは、重合する際にゲル化を起こし易く、溶媒不溶となってしまい、工業的に製造することが困難であった。本発明においては、親水性重合触媒と、親油性重合触媒を併用する重合方法をとることにより、ゲルの生成を伴わずに共重合することが可能となる。
重合手順について述べる。まず撹拌器、還流冷却器付き反応器に、上記各種不飽和モノマー及び溶媒からなる溶液を投入し、40℃〜90℃、好ましくは50℃〜80℃に昇温する。所定温度到達直後に重合開始剤(親水性重合触媒及び親油性重合触媒)を添加する。この時若干の発熱があり、重合開始を確認することができる。所定温度に到達してから1〜10時間程度重合反応を継続する。反応温度は最初から最後まで一定である必要はなく、重合末期に温度を上げて未反応モノマーを極力少なくする方法をとってもよい。
得られた共重合体の分子量は、1質量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が10,000〜1,000,000、特に10,000〜100,000であることが好ましい。
本発明は、更に上記イオン伝導性高分子物質を(部分)加水分解・縮合して得られるイオン伝導性高分子誘導体を提供する。ここで、イオン伝導性高分子誘導体とは、イオン伝導性高分子物質のアルコキシシリル基の一部又は全部を加水分解・縮合することにより得られるもので、該イオン伝導性高分子物質の(部分)加水分解・縮合物からなる水不溶性のものである。
本発明の電解質膜は、特に、(a)エチレン−プロピレン−ジエン共重合体と、(b)イオン伝導性高分子物質及び/又はその誘導体と、(c)硬化させるに十分な量である架橋剤を含むEPDM組成物を製膜・硬化してなるものとすることができる。
また、(d)酸性基を含有する粉体、とりわけ、スルホン酸基含有シランで処理したシリカを加えることは、イオン伝導性を更に向上させたり安定的に発現させたりするために望ましい。
(b)イオン伝導性高分子物質及び/又はその誘導体
イオン伝導性高分子物質又はその誘導体は、アンモニアのような塩基性化合物により中和して酸基を塩としてあることが好ましく、かかる場合、中性−弱塩基性の固体又はその溶液である。なお、水の存在下でアンモニア等の塩基性化合物によりイオン伝導性高分子物質を中和すると、アルコキシシリル基の一部又は全部は加水分解・縮合し、誘導体に変化しているものである。
本発明で用いられる(a)エチレン−プロピレン−ジエン共重合体は、不飽和基を有する高分子で組成物の主剤であり、ゴム弾性を有し、膜としての強度のみならずイオン伝導性に大きな影響を与えるものである。
具体的に、非共役ジエンの使用量は、共重合させるエチレン、プロピレン及び非共役ジエンの合計量に対して0.2〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%であることが好ましい。
(c)成分は、本組成物を硬化させるための架橋剤である。エチレン−プロピレン−ジエン共重合体組成物の架橋に使用されるラジカル反応等を利用して架橋、硬化させるものであれば、その硬化機構に制限はなく、従来公知の種々の硬化剤を用いることができる。とりわけラジカル反応では有機過酸化物が使用される。
シリカは、平均粒子径3〜20μm、吸油量30〜400ml/100gの球状粒子、例えば、サンスフェアH又はLシリーズ(AGCエスアイテック(株)製、商品名)は、内部に細孔を持ち、スルホン酸基含有シランを内部に保持でき、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体への混合を良好に行うことができる。
スルホン酸基含有シランとしては、KBM−803(信越化学工業(株)製、商品名)、KBE−803(信越化学工業(株)製、商品名)のようなメルカプト基を持つアルコキシシランを他のシラン、例えば、メチルトリメトキシシランやテトラメトキシシランの共存在下に過酸化水素水アルコール溶液で酸化することで合成したスルホン酸プロピルシリル基含有シランを好適に使用することができる。
また、処理方法としては、アルコール中に分散したシリカ中にスルホン酸基含有シランのアルコール溶液を混合し、溶媒を除くことで処理することができる。
なお、スルホン酸基含有シランのシリカ処理量としては、シリカ100質量部に対し、スルホン酸基含有シラン10〜150質量部とすることが好ましい。
本発明の組成物には、上記必須成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ、他の導電剤、補強剤、発泡剤、難燃剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤等を加えることができる。
また、ベンガラ等の着色剤、粉砕石英、炭酸カルシウムなどの増量剤を添加してもよい。難燃剤は、本発明の組成物を難燃性、耐火性にするために、白金含有材料、白金化合物と二酸化チタン、白金と炭酸マンガン、白金とγ−Fe2O3、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。
本発明の組成物において、成分の配合量は(a)エチレン−プロピレン−ジエン共重合体100質量部に対して(b)イオン伝導性高分子物質及び/又はその誘導体が100〜500質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは200〜400質量部の範囲である。(b)成分の配合量が100質量部未満であると、得られた膜の導電性が著しく低下する場合があり、また500質量部を超えると、得られた組成物の流動性が著しく低下し、その組成物の取り扱い作業性が著しく困難となる場合がある。
(a)〜(c)成分を含有するシリコーン組成物を製造するに当たり、(a)エチレン−プロピレン−ジエン共重合体に、(b)イオン伝導性高分子物質及び/又はその誘導体を混合させた後、(b)イオン伝導性高分子物質及び/又はその誘導体が含有している水やアルコールのような溶剤を除去する。この場合、上記した成分を2本ロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練り機を用いて均一に混合することができる。また、(d)、(e)成分を配合する場合は、(a)、(b)成分を混合する時に同時に混合する。
本発明の高分子電解質膜の強度は高いものであるが、それはエチレン−プロピレン−ジエン共重合体のアルケニル基やイオン伝導性高分子誘導体のアルケニルシリル基の架橋と、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体のシラノール基、イオン伝導性高分子誘導体のアルコキシシリル基に由来するシラノール基や未反応の加水分解によってなくなっていないアルコキシシリル基の加水分解・縮合反応による架橋に主に起因するものと考えられ、その他に、特に組成物中にシリカを配合した場合は、シリカのシラノール基と、イオン伝導性高分子誘導体のアルコキシシリル基由来のシラノール基や未反応の加水分解によってなくなっていないアルコキシシリル基の加水分解・縮合反応による架橋に主に起因するものと考えられる。そのイオン伝導性高分子誘導体の酸基が、アルコキシシリル基やシラノール基の架橋触媒として作用し、アルコキシシリル基、シラノール基が架橋することも寄与しているものと考えられ、これが耐水性の向上に寄与する面もあると考えられる。
〔イオン伝導性高分子物質の重合とその物性〕
還流冷却管、滴下漏斗、温度計及び窒素ガス導入管を接続した反応装置に、アルコキシシリル基含有不飽和モノマーとしてトリエトキシプロピルアクリルアミド(KBE−AA)22g(2mol%)と、ビニルシリル基含有不飽和モノマーとしてトリス(ジメチルビニルシロキシ)スチリルシラン(Sty−ViSi)18g(1mol%)と、スルホン酸基含有不飽和モノマーとして2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AASO3H)392g(48.5mol%)と、ホスホン酸基含有不飽和モノマーとしてアクリルアミドビスホスフェート(ユニケミカル社製、ホスマーN2P)444g(48.5mol%)と、エタノール(EtOH)4,500gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌し、オイルバスの温度を重合温度となる80℃まで昇温した。
また、この溶液は、1質量%DMF溶液 GPCでのポリスチレン換算重量平均分子量が68,000で、重合しなかった残留モノマーと考えられる分子量が300以下のエリア面積は3%であり、重合は良好に進行したと考えられる。
〔スルホン基含有酸シランで処理したシリカの合成とその物性〕
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:KBM−803)156.8質量部(0.8mol)とテトラエトキシシラン(信越化学工業(株)製:KBE−04)166.4質量部(0.8mol)に対して、エタノール260質量部、蒸留水40質量部を室温で加えて溶解させた。これに、30質量%過酸化水素水溶液288質量部(2.54mol)を3時間かけて撹拌しながら滴下すると、徐々に温度が65℃まで上昇すると同時に粘度が上昇し、メルカプト基の酸化とアルコキシシリル基の加水分解が同時に進行し、ゲル状物になった。ゲル状物は、オイルバスを用いて80℃で加熱を続けると再溶解が起こり、80℃で3時間加熱撹拌を行ったところ、低粘度の均一な透明溶液が得られた。この溶液を更に80℃で3時間加熱撹拌を行って無色透明の均一溶液840gを得た。
このシリカは、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体に配合し、実施例4のプロトン伝導材料として使用した。
〔エチレン−プロピレン−ジエン共重合体組成物の製造〕
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体は、三井化学社製Px−52を用いた。これは、エチレン成分69mol%−プロピレン成分31mol%−エチリデンノルボルネン0.4mol%の共重合体で、ムーニー粘度(100℃)38、ヨウ素価4、重量平均分子量173,000の高分子である。
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体Px−52 100質量部に、合成例1の固体(アンモニア中和品の高分子)300〜400質量部(不揮発成分換算として)を、また、実施例4においては合成例2のシリカ80質量部を混合し、二本ロールで混練して混合物を調製した。この混合物は、105℃の熱オーブン中で2時間熱処理し、溶媒を完全に除いて組成物とした。
この電解質膜を1N硫酸水溶液に、室温下5時間浸漬処理後、水洗することによって、電解質膜中の酸基中のアンモニウムイオンをプロトンと交換させた。
〔シリコーンゴム用コンパウンドの製造〕
(CH3)2SiO単位99.50モル%、(CH3)(CH2=CH)SiO単位0.475モル%及び(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2単位0.025モル%からなるジオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、アエロジル R−972(フュームドシリカ、日本アエロジル社製)40質量部、末端水酸基ジメチルシリコーンオイル(重合度10、分散助剤)5質量部をニーダーにて配合し、160℃で2時間熱処理した。これに、合成例1の固体(アンモニア中和品の高分子)200質量部(不揮発成分換算として)を、二本ロールで混練して混合物を調製した。この混合物は、105℃の熱オーブン中で2時間熱処理し、溶媒を完全に除いてシリコーンゴム用コンパウンド(以下KE−MUと略記する)とした。
この電解質膜を1N硫酸水溶液に、室温下5時間浸漬処理後、水洗することによって、電解質膜中の酸基中のアンモニウムイオンをプロトンと交換させた。
フッ素系電解質膜として、デュポン社より購入したNafion117をそのまま用いた。
実施例1〜4で作製したEPDM電解質膜、比較例1で作製したシリコーンゴム電解質膜、及び比較例2のNafion117について、ゴム弾性、引張強度、膨潤度(水又は硫酸浸漬1日)、導電率(硫酸浸漬直後、105℃乾燥後、3日放置後)(プロトン伝導性)を測定した。結果を表1に示す。
膜厚は、ミツトヨ社製のシックネスゲージ(Model ID C112B)で測定した。
ゴム物性の膜強度は、JIS K6251に準拠した引張強さ(kgf/cm2)として測定した。
膨潤度は、上記電解質膜を3cm×1cmの短冊状に切り出し、1N硫酸又は水に、室温下24時間(1日)浸漬処理後、長さの変化により算出した。
また、プロトン伝導性は、複素インピーダンス法を用いて測定した。得られた薄膜状のゴムシートを、金メッキを施したステンレス電極に挟むことにより評価用セルを作製し、交流インピーダンス法(日置電機製LCRハイテスタ、測定周波数0.1Hz〜5MHz)により、プロトン伝導度を測定した。
2)原料シリカ:サンスフェアH122、スルホン酸処理量:38%
3)1N H2SO4 5時間浸漬後すぐに測定
4)105℃,1時間処理(脱水)後、30%RH雰囲気下に保持して測定
5)総合評価基準
◎:電解質膜として良好な特性
×:電解質膜として不良な特性
表1の結果より、実施例1〜4の電解質膜は、いずれも相対湿度100%(硫酸浸漬直後)での導電率が10-2〜10-1S/cmのオーダーであり、比較例2のナフィオン膜と同等かそれ以上の導電率のオーダーにある。また、シリコーンゴム電解質膜と比較して120℃、150℃で3日後も分解することがなく、フッ素系電解質膜と比較してゴム弾性を持つため、引張歪に対する弾性変形領域が際立って大きくなり、燃料電池用電解質膜として利用したとき、変形応力を受けても元の形状に復元することができ、長期間のストレスに対する耐久性に優れる。
このように、比較例と実施例を対比することにより、本発明の高分子電解質膜は、シリコーンゴムやフッ素系電解質膜と比較して、膜強度、耐久性、イオン伝導性のバランスのとれた特性を持つゴム膜であることがわかった。
Claims (10)
- (A)分子内に1個以上のアルコキシシリル基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有するアルコキシシリル基含有不飽和モノマーと、(B)分子内に1個以上のケイ素原子と直接に結合したエチレン性不飽和結合と1個以上のケイ素原子と直接には結合しないエチレン性不飽和結合とを有するアルケニルシリル基含有不飽和モノマーと、(C)分子内に1個以上の酸基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有する酸基含有不飽和モノマーとを含む不飽和モノマーを共重合してなるイオン伝導性高分子物質及び/又はその誘導体と、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体とを含むEPDM組成物を製膜、硬化してなることを特徴とする固体高分子電解質膜。
- イオン伝導性高分子物質の誘導体が、イオン伝導性高分子物質のアルコキシシリル基の一部又は全部を加水分解・縮合することにより得られた水不溶性のものであることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子電解質膜。
- (C)酸基含有不飽和モノマーが、スルホン酸基含有不飽和モノマー及び/又はホスホン酸基含有不飽和モノマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜。
- スルホン酸基含有不飽和モノマーとホスホン酸基含有不飽和モノマーが、モル比で(ホスホン酸基含有不飽和モノマー)/(スルホン酸基含有不飽和モノマー)=0/100〜90/10の割合で使用されてなることを特徴とする請求項5に記載の固体高分子電解質膜。
- EPDM組成物が、
(a)エチレン−プロピレン−ジエン共重合体:100質量部、
(b)請求項1〜7のいずれか1項に記載のイオン伝導性高分子物質及び/又はその誘導体:100〜500質量部、
(c)架橋剤:(a)、(b)成分の合計100質量部に対して0.1〜10質量部
を含有してなるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜。 - EPDM組成物が、更に(d)酸性基を含有する粉体としてスルホン酸基含有シランで処理したシリカ(a)成分100質量部に対して10〜150質量部を含有してなるものであることを特徴とする請求項8に記載の固体高分子電解質膜。
- 請求項8又は9に記載のEPDM組成物を、120℃〜180℃の温度の熱プレスにより架橋・製膜した後、酸基がアミン塩、アンモニウム塩又はアルカリ金属塩を形成している場合は酸処理することで酸型にもどすことにより、プロトン伝導性とゴム弾性を有する膜にすることを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。
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