JP4195797B2 - 複合硬質焼結体およびこれを用いた切削工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長尺状の芯材が表皮部材で被覆された複合硬質焼結体およびこれを用いた切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、材料の硬度および強度とともに靱性を改善するために、金属の酸化物、炭化物、窒化物、炭窒化物等の焼結体で形成される長尺状の芯材の外周面を他の焼結体で形成される表皮部材で被覆した複合硬質焼結体の研究がなされている。この複合硬質焼結体としては、例えば米国特許第6063502号明細書、米国特許第5645781号明細書、特表2001−506930等に記載されたものが挙げられる。
【0003】
しかしながら、上記のような従来の複合硬質焼結体では、例えばドリル等の切削工具等に必要とされる充分な耐摩耗性または耐欠損性が得られないことがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、優れた耐摩耗性および耐欠損性を備えた複合硬質焼結体およびこれを用いた切削工具を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、硬質焼結体またはセラミックスからなる長尺状の芯材の外周面を、圧縮残留応力を付与した硬質焼結体またはセラミックスからなる表皮部材で被覆することによって、耐摩耗性および耐欠損性の優れた複合硬質焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明にかかる複合硬質焼結体は、硬質焼結体またはセラミックスからなる長尺状の芯材の外周面が、前記芯材とは異なる組成の硬質焼結体またはセラミックスからなる表皮部材で被覆された複合硬質焼結体であって、前記表皮部材が圧縮残留応力を有することを特徴とする。このように、表皮部材に圧縮応力が残留していることによって、表皮部材が芯材の方向に収縮しようとする力が働き、芯材を被覆する表皮部材が芯材から剥離しにくくなるので、表皮部材および複合硬質焼結体全体の耐摩耗性および耐欠損性が向上する。
【0007】
上記のような表皮部材における圧縮残留応力は、例えば芯材中に結合金属が含有しないようにし表皮部材中に結合金属が含有するようにするか、あるいは表皮部材中の結合金属の含有量が芯材中の結合金属の含有量よりも多くなるようにすることによって得られる。したがって、本発明の複合硬質焼結体では、前記芯材がセラミックスからなり、前記表皮部材が硬質焼結体からなるものや、前記芯材および表皮部材が硬質焼結体からなり、表皮部材中の結合金属の含有量が芯材中の結合金属の含有量よりも多いものであるのが好ましい。ここで、前記硬質焼結体は硬質粒子を結合金属にて結合したものであり、前記セラミックスはセラミック粒子を焼結助剤にて結合したものである。
【0008】
また、本発明の複合硬質焼結体は、シングルフィラメント構造およびマルチフィラメント構造のどちらであってもよいが、好ましくはシングルフィラメント構造であるのがよい。マルチフィラメント構造であっても、耐摩耗性および耐欠損性は向上するが、マルチフィラメント構造の場合には、隣接する複数の表皮部材同士が相互に引き合う力が生じるため、表皮部材が芯材の方向に収縮しようとする圧縮残留応力が弱まる傾向にある。したがって、マルチフィラメント構造よりもシングルフィラメント構造の方が、より耐摩耗性および耐欠損性の優れたものとなる。ここで、シングルフィラメント構造とは、1本の芯材とこれを被覆する表皮部材とからなる複合硬質焼結体の構造をいい、マルチフィラメント構造とは、表皮部材で被覆された芯材を複数本集束した集束体からなる複合硬質焼結体の構造をいう。
【0009】
上記の複合硬質焼結体は、例えばドリル等の切削工具等の材料として使用した場合に、充分な耐摩耗性および耐欠損性が得られる。したがって、本発明にかかる切削工具は、前記複合硬質焼結体からなることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複合硬質焼結体の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の複合硬質焼結体11を示す斜視図である。同図に示すように、複合硬質焼結体11は長尺状の芯材12の外周面が表皮部材13で被覆された構造を有している。
【0011】
芯材12は、例えば硬質粒子を結合金属にて結合した硬質焼結体またはセラミック粒子を焼結助剤にて結合したセラミックスからなるものである。硬質粒子としては、例えば周期律表4a、5aおよび6a族金属の炭化物、窒化物および炭窒化物からなる群より選ばれる少なくとも1種等が挙げられる。硬質粒子の具体例としては、例えばWC、TiC、TiCN、TiN、TaC、NbC、ZrC、ZrN、VC、Cr2CおよびMo2Cからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、特にWC、TiCまたはTiCNを主成分とするのが好ましい。芯材中における硬質粒子は、平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは1〜3μmであるのがよい。また、結合金属としては、例えばFe、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、特にCoおよび/またはNiを主成分とするのが好ましい。上記の硬質粒子を結合金属にて結合した硬質焼結体のうち、特に超硬合金またはサーメットが好適に使用可能である。
【0012】
また、セラミック粒子としては、例えば周期律表4a、5aおよび6a族金属、Al、Si並びにZnの酸化物、炭化物、窒化物、炭窒化物および硼化物からなる群より選ばれる少なくとも1種等が挙げられる。セラミック粒子の具体例としては、例えばAl2O3−TiC(TiCN)、SiC、Si3N4、ZrO2、TiB2、ZnO−TiC等が挙げられる。これらのうち、特にAl2O3−TiC(TiCN)および/またはSiCが好適に使用可能である。芯材12中におけるセラミック粒子は、平均粒径が0.05〜10μm、好ましくは0.5〜3μmであるのがよい。また、焼結助剤としては、例えばAl2O3 、Y2O3等が挙げられる。硬質焼結体またはセラミックスとしては、上記した材質の他、多結晶ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、cBNをも用いることができる。
【0013】
表皮部材13は、例えば硬質粒子を結合金属にて結合した硬質焼結体またはセラミック粒子を焼結助剤にて結合したセラミックスからなるものである。これらの硬質粒子、結合金属、セラミック粒子および焼結助剤としては、上記の芯材12用として例示したものと同様のものを使用することができる。表皮部材13中における硬質粒子は、平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.5〜3μmであるのがよく、セラミック粒子は、平均粒径が0.05〜10μm、好ましくは0.1〜3μmであるのがよい。
【0014】
本発明では、上記表皮部材13が圧縮残留応力を有していることが大きな特徴である。表皮部材13に圧縮残留応力を付与する手段としては、特に限定されないが、例えば表皮部材13中における結合金属の含有量(以下、「表皮部材の結合金属含有量」という。)を、芯材12中における結合金属の含有量(以下、「芯材の結合金属含有量」という。)よりも多くする方法が挙げられる。したがって、芯材12の材質と表皮部材13の材質との組み合わせとしては、 (1) 芯材12がセラミックスからなり、表皮部材13が硬質焼結体からなるものであるか、または (2)芯材12および表皮部材13が硬質焼結体からなり、表皮部材の結合金属含有量が芯材の結合金属含有量よりも多いものであるのが好ましい。硬質粒子およびセラミック粒子と比較して結合金属は焼成後の収縮が大きいので、焼結体中における結合金属の含有量が多いほど焼結体の収縮もより大きくなり、圧縮残留応力も大きくなる。
【0015】
上記(1)の場合、芯材12中には結合金属は含まれていないので、表皮部材の結合金属含有量は、特に限定されないが、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは5〜10重量%であるのがよい。また、上記(2)の場合、芯材の結合金属含有量および表皮部材の結合金属含有量は、芯材の結合金属含有量よりも表皮部材の結合金属含有量の方が多ければ特に限定されないが、好ましくは表皮部材の結合金属含有量が芯材の結合金属含有量の1.05〜5倍、より好ましくは1.5〜3倍であるのがよい。具体的には、芯材の結合金属含有量が2〜5重量%で、表皮部材の結合金属含有量が5〜15重量%であるのがよい。
【0016】
また、表皮部材13に圧縮残留応力を付与する他の手段としては、例えば硬質相粒子の粒径を調節する方法が挙げられる。具体的には、表皮部材の原料中の硬質粒子粉末の粒径を芯材の原料中の硬質粒子粉末の粒径よりも小さくして、焼成によって表皮部材が芯材よりもより焼成収縮しようとせしめることにより、表皮部材に所定の残留応力を生ぜしめることができる。さらに、他の手段としては、表皮部材および芯材の粒子形状や粒子の表面処理などによって焼結性に差を持たせてやることにより焼成収縮差により所定の残留応力を生ぜしめることができる。
【0017】
表皮部材13に付与する圧縮残留応力の値は、特に限定されないが、ドリル等の切削工具の用途で使用する場合には、5MPa以上、好ましくは5〜500MPa、より好ましくは10〜200MPaであるのがよい。圧縮残留応力が5MPa未満となると、切削工具として要求される程度の耐摩耗性および耐欠損性が得られないおそれがある。
【0018】
以下、本発明の複合硬質焼結体11の製造方法について図2の模式図を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、芯材12および表皮部材13がともに硬質焼結体からなる場合(上記(2)の場合)を例に挙げて説明する。
【0019】
<芯材用成形体の成形工程>
まず、粒子平均粒径が1〜10μmの前記硬質粒子85〜95重量%、好ましくは90〜95重量%と、平均粒径が1〜5μm程度の結合金属粉末5〜15重量%、好ましくは5〜10重量%とを混合して混合物を得、必要に応じて、さらにこの混合物に焼結助剤成分粉末、有機バインダ、可塑剤、溶剤、分散剤、滑剤等を添加し混練した後、得られた混合物をプレス成形または鋳込み成形等の成形法により円柱形状に成形して芯材用成形体12aを作製する(図2(a)参照)。ここで、後述する共押出成形によって均質な複合成形体を得るためには、前記有機バインダの添加量を30〜70体積%、特に40〜60体積%とするのが望ましい。
【0020】
有機バインダ、可塑剤としては、パラフィンワックス、ポリスチレン、ポリエチレン、エチレン‐エチルアクリレート、エチレン‐ビニルアセテート、ポリブチルメタクリレート、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート等を使用することができる。溶剤、分散剤および滑剤としてはポリエチレングリコール、ミネラルオイル、ブチルオリエート、ステアリン酸等を使用することができる。
【0021】
<表皮部材用成形体の成形工程>
また、粒子平均粒径が0.5〜1.5μmの前記硬質粒子80〜90重量%、好ましくは85〜90重量%と、平均粒径が0.5〜3μm程度の結合金属粉末10〜20重量%、好ましくは10〜15重量%とを混合して混合物を得、必要に応じて、さらにこの混合物に上記した焼結助剤成分粉末、有機バインダ、可塑剤、溶剤等を添加し、得られた混合物をプレス成形または鋳込み成形等の成形法により半割円筒形状に成形して2つの表皮部材用成形体13a,13aを作製する(図2(b)参照)。得られた表皮部材用成形体13a,13aを芯材用成形体12aの外周面を覆うように配置して成形体11aを作製する(図2(c)参照)。
【0022】
<押出成形工程>
ついで、図2(d)に示すように、押出機100を用いて、上記成形体11aを押出成形(芯材用成形体12aと表皮部材用成形体13a,13aを共押出成形)することによって、芯材用成形体12aの周囲に表皮部材用成形体13aが被覆され、細い径に伸延された複合成形体11bを作製する。このとき、複合成形体11bの断面は、押出機100の出口形状を変えることによって、円形の他、三角形、四角形、五角形、六角形、楕円形等の任意形状に成形することもできる。
【0023】
<焼成工程>
ついで、上記複合成形体11bを300〜700℃で10〜200時間昇温または保持して脱バインダ処理した後、真空中または不活性雰囲気中において、使用する材質に応じた所定温度および所定時間で焼成することにより、図1に示すようなシングルフィラメント構造の複合硬質焼結体11を作製することができる。
【0024】
<マルチフィラメント構造を有する焼結体の作製>
また、本発明の複合硬質焼結体は、上記した複合硬質焼結体11が複数本集束された構造のものであってもよく、また、複合硬質焼結体11または集束された複合硬質焼結体がシート状に複数本配列されたものであってもよく、さらに、このシート状の複合硬質焼結体が複数枚積層されたものであってもよい。このようなマルチフィラメント構造を有する焼結体は、以下のようにして作製する。
【0025】
すなわち、前記焼成工程の前に、複合成形体11bを複数本集束して集束体を得、この集束体を上記した押出成形工程と同様にして再度共押出成形してマルチフィラメント構造の複合成形体を得、この複合成形体を上記焼成工程と同様にして焼成することによって、複合硬質焼結体11が複数本集束されたマルチフィラメント構造の複合硬質焼結体14を得ることができる(図3参照)。
【0026】
また、前記焼成工程の前に、複合成形体11bまたはマルチフィラメント構造の複合成形体をシート状に複数本配列してシートを得、このシートを上記焼成工程と同様にして焼成することによって、複合硬質焼結体11がシート状に複数本配列された複合硬質焼結体を得ることもできる。
【0027】
さらに、上記シートを焼成する前に、シートを複数枚積層して積層成形体を得、この積層成形体を上記焼成工程と同様にして焼成することによって、シート状の複合硬質焼結体が複数枚積層された複合硬質焼結体を得ることもできる。ここで、複数枚のシートを積層する際には、隣接するそれぞれのシートを構成する複合硬質焼結体の軸方向(芯材の軸方向)を任意の角度(例えば0°、45°、90°等)で配置することができる。
【0028】
上記のようにして得られた複合硬質焼結体は、さらに公知のラピッドプロトダイビング法等の成形方法によって任意の形状に成形することも可能である。また、上記したシートまたはこのシートを断面方向にスライスしたものを従来の超硬合金等の硬質焼結体の表面に貼り合わせ、または接合することも可能である。
【0029】
複合硬質焼結体11を構成する芯材12の直径dcは表皮部材13の厚さdsに対して、dc/dsの比が5〜100、好ましくは10〜50、より好ましくは 20〜30であるのがよい。
【0030】
なお、芯材12がセラミックスからなり、表皮部材13が硬質焼結体からなる場合(上記(1)の場合)には、芯材用成形体12aの成形工程において、粒子平均粒径が0.1〜3μmの前記セラミック粒子90〜99重量%、好ましくは95〜99重量%と、平均粒径が0.1〜5μm程度の焼結助剤粉末1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%とを混合して混合物を得る他は、上記(2)の場合と同様にして複合硬質焼結体11および複合硬質焼結体14を作製することができる。
【0031】
本発明の複合硬質焼結体は、耐摩耗性および耐欠損性に優れているので、例えばドリル、フライス、エンドミル、ドリルビット等の切削工具等の材料として使用した場合であっても、充分な耐摩耗性および耐欠損性が得られ、特にドリルの材料として好適である。これらの切削工具は、例えば上記した手順で円柱形状や直方体形状に成形された複合硬質焼結体を、公知の方法により切削加工して切削工具形状に成形することにより製造することができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
実施例1(請求項に係る発明の具体例ではない)
芯材がセラミックスで、表皮部材が硬質焼結体である複合硬質焼結体からなるドリルを以下の手順で作製した。
まず、下記の芯材用のセラミック粒子と焼結助剤粉末とを下記の割合で混合し、これに有機バインダ30体積%と溶剤20体積%の割合で添加して混合物を得た。この混合物を円柱形状に押出成形して図2(a)に示すような芯材用成形体12aを作製した。
<芯材の材料>
芯材用のセラミック粒子:平均粒径1μmのAl2O3粉末(96重量%)
焼結助剤粉末:平均粒径1μmのY2O3粉末(4重量%)
有機バインダ:セルロース、ポリエチレングリコール
溶剤:ポリビニルアルコール
【0034】
ついで、下記の表皮部材用の硬質粒子と結合金属粉末とを下記の割合で混合し、これに有機バインダ30体積%と溶剤20体積%の割合で添加、混練して混合物を得た。この混合物を半割円筒形状に押出成形して図2(b)に示すような表皮部材用成形体13aを2つ作製した。
<表皮部材の材料>
表皮部材用の硬質粒子:平均粒径0.5μmのWC粉末(90重量%)
結合金属粉末:平均粒径1.2μmのCo粉末(10重量%)
有機バインダ:セルロース、ポリエチレングリコール
溶剤:ポリビニルアルコール
【0035】
得られた2つの表皮部材用成形体13a,13aを上記芯材用成形体12aの外周面を覆うように配置して、図2(c)に示すような成形体11aを作製した。ついで、この成形体11aを共押出成形して、図2(d)に示すような伸延された複合成形体11bを作製した。
【0036】
ついで、この複合成形体11bを300〜700℃まで72時間で昇温させることによって脱バインダ処理を行った後、昇温速度2.5℃/分でさらに昇温し、真空中、1500℃で2時間焼成し、さらに3℃/分で降温することにより、図1に示すような形状で、長さ100mm、芯材12の直径5.5mm、表皮部材13の厚さ0.5mmの複合硬質焼結体11を作製した。
【0037】
得られた複合硬質焼結体11をドリル形状に切削し、さらにこの表面に2μmのTiN膜をPVD法によりコーティングすることによりドリル径6mmのドリルを得た。
【0038】
参考例
芯材および表皮部材が硬質焼結体である複合硬質焼結体からなるドリルを以下の手順で作製した。
下記の芯材用の硬質粒子と結合金属粉末、および下記の表皮部材用の硬質粒子と結合金属粉末とを下記の割合でそれぞれ混合し、これに有機バインダ30体積%と溶剤20体積%の割合をそれぞれ添加して混合物をそれぞれ得た。ついで、実施例1と同様の脱バインダ処理の後、昇温速度2.5℃/分でさらに昇温し、真空中、1500℃で2時間焼成し、さらに3℃/分で降温して複合硬質焼結体を作製し、実施例1と同形状のドリルを得た。
<芯材の材料>
芯材用の硬質粒子:平均粒径5μmのWC粉末(94重量%)
結合金属粉末:平均粒径3μmのCo粉末(6重量%)
有機バインダ:セルロース、ポリエチレングリコール
溶剤:ポリビニルアルコール
<表皮部材の材料>
表皮部材用の硬質粒子:平均粒径0.5μmのWC粉末(84重量%)
結合金属粉末:平均粒径0.5μmのCo粉末(16重量%)
有機バインダ:セルロース、ポリエチレングリコール
溶剤:ポリビニルアルコール
【0039】
比較例1
芯材が硬質焼結体で、表皮部材がセラミックスである複合硬質焼結体からなるドリルを以下の手順で作製した。
下記の芯材用の硬質粒子と結合金属粉末とを下記の割合で混合し、これに有機バインダ30体積%と溶剤20体積%とを添加して混合物を得、さらに、表皮部材用としてセラミック粒子と焼結助剤粉末とを下記の割合で混合し、これに有機バインダ30体積%と溶剤20体積%とを添加して混合物を得た。この後、実施例1と同様の脱バインダ処理の後、昇温速度2.5℃/分でさらに昇温し、真空中、1500℃で2時間焼成し、さらに3℃/分で降温して複合硬質焼結体を作製し、実施例1と同形状のドリルを得た。
<芯材の材料>
芯材用の硬質粒子:平均粒径0.5μmのWC粉末(90重量%)
結合金属粉末:平均粒径1.2μmのCo粉末(10重量%)
有機バインダ:セルロース、ポリエチレングリコール
溶剤:ポリビニルアルコール
<表皮部材の材料>
表皮部材用のセラミック粒子:平均粒径1μmのAl2O3粉末(96重量%)
焼結助剤粉末:平均粒径1μmのY2O3粉末(4重量%)
有機バインダ:セルロース、ポリエチレングリコール
溶剤:ポリビニルアルコール
【0040】
比較例2
下記の硬質粒子と結合金属粉末とを下記の割合で混合し、これに有機バインダ体積15%を添加して、円柱形状に圧粉成形し、これを実施例1と同様の条件で焼成して硬質焼結体を得た。この硬質焼結体から実施例1と同様にしてドリルを得た。
<材料>
セラミック粒子:平均粒径1μmのWC粉末(90重量%)
焼結助剤粉末:平均粒径1.5μmのCo粉末(10重量%)
有機バインダ:パラフィンワックス
【0041】
実施例1、参考例および比較例1,2で得たドリルの表皮部材の圧縮残留応力をX線残留応力測定法(2θ−sin2φ法)により測定した。また、実施例1、参考例および比較例1,2で得た各ドリルを取り付けた金属加工用電動工具を用いて、下記条件にて、ワーク(鋼種:SUS304)に200個の穴を開け、穴開け終了後のドリルの刃先を顕微鏡で観察し、切れ刃の摩耗幅および欠損の有無をそれぞれ調べた。圧縮残留応力測定結果および観察結果を表1に示す。
<穴開け条件>
速度:v=40m/分
送り:f=0.12mm/rev
切り込み:d=10mm
【0042】
【表1】
【0043】
表1から、表皮部材に引張残留応力を有する比較例1、および単一の材質からなる比較例2には欠損が生じていた。これに対して、表皮部材に圧縮残留応力を有する実施例1および参考例には欠損は見られなかった。
また、磨耗幅は、高い圧縮残留応力を有する実施例1のドリルが最も小さく特に優れていた。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた耐摩耗性および耐欠損性を備えた複合硬質焼結体を得ることができるという効果がある。
したがって、この複合硬質焼結体を用いた本発明の切削工具は、耐摩耗性が良好で、しかも欠損が生じにくいので、耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合硬質焼結体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の複合硬質焼結体の製造工程を説明するための模式図である。
【図3】本発明の複合硬質焼結体の他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
11 複合硬質焼結体(シングルフィラメント構造)
12 芯材
13 表皮部材
14 複合硬質焼結体(マルチフィラメント構造)
Claims (5)
- 硬質焼結体からなる長尺状の芯材の外周面が、前記芯材とは異なる組成の硬質焼結体からなる表皮部材で被覆された複合硬質焼結体であって、前記表皮部材が芯材の半径方向に10〜200MPaの圧縮残留応力を有するとともに、表皮部材中の結合金属の含有量が芯材中の結合金属の含有量よりも多く、前記芯材の直径dcと前記表皮部材の厚さdsの比率dc/dsが5〜100である、ことを特徴とする複合硬質焼結体。
- 前記芯材の直径dcと前記表皮部材の厚さdsの比率dc/dsが10〜50である、請求項1記載の複合硬質焼結体。
- 前記芯材の直径dcと前記表皮部材の厚さdsの比率dc/dsが20〜30である、請求項1に記載の複合硬質焼結体。
- 前記結合金属が、Fe、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の複合硬質焼結体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の複合硬質焼結体からなることを特徴とする切削工具。
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